JP2010255820A - 車両用変速機の制御装置 - Google Patents

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将人 清水
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Abstract

【課題】クラッチ機構に不要な負荷をかけずに同期機構の耐久性を向上させることができる車両用変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】ECUは、ギヤ抜きを行った後(ステップS14)、オフアップ条件が成立したか否かを判定する(ステップS15)。ECUは、オフアップ条件が成立したと判定した場合に(ステップS15でYES)、入力軸回転数Nin−換算出力軸回転数Noutγ3がギヤ入れ判定値α以下となってから(ステップS16でYES)、クラッチハブスリーブのスプラインを、シンクロナイザリングのスプラインおよび変速ギヤのクラッチギヤと係合させるギヤ入れを行う(ステップS17)。ECUは、オフアップ条件が成立していないと判定した場合には(ステップS15でNO)、シンクロナイザリングにより同期動作を行った後(ステップS20)、ギヤ入れを行う(ステップS22)。
【選択図】図6

Description

本発明は、車両用変速機の制御装置に関する。
車両に搭載される車両用変速機として、所謂マニュアルトランスミッションを構成するクラッチと変速機構とを電気的に制御することによって、自動的に変速が実行されるAMT(Automated-Manual-Transmission)と呼ばれるものが知られている。
このようなAMTは、運転者の変速要求としてシフトレバーからの変速指示や、アクセルペダルからの負荷要求に応じて、変速が行われている。
また、AMTの変速機構には、平行歯車式の変速機構が採用されており、具体的には、次のように構成されている。すなわち、平行歯車式の変速機構は、互いに平行に配置された入力軸および出力軸に、複数の変速ギヤ対が設けられている。この変速ギヤ対は、一方の軸と一体回転する変速ギヤと、他方の軸に相対回転可能な変速ギヤと、により構成され、一方の軸の変速ギヤと他方の軸の変速ギヤとが常時噛み合うようになっている。AMTは、このような常時噛み合い式の変速機構を有し、変速段の切り替えの際に、他方の軸に相対回転可能な変速ギヤにおいて、切り替え前の変速ギヤから切り替え後の変速ギヤへの掴み替えを行うようになっている。
ここで、全ての変速ギヤ対が、出力軸と一体回転する変速ギヤと、入力軸と相対回転可能な変速ギヤと、を有している場合について説明する。出力軸に設けられた変速ギヤは出力軸と一体回転するため、それぞれ同一回転で回転する。一方、変速ギヤ対毎に変速比が異なるため、入力軸と相対回転可能な変速ギヤは、それぞれ異なる回転数で回転する。したがって、変速段の切り替えの際には、切り替え前の入力軸側の変速ギヤの回転数と、切り替え後の入力軸側の変速ギヤの回転数とが異なるため、このまま変速ギヤの掴み替えを行うと、変速ショックが発生する。
このため、変速機構は、変速段の切り替えの際に、入力軸の回転と、切り替え後の変速ギヤ対のうち入力軸側の変速ギヤの回転と、を同期させる同期機構を備えている。同期機構は、入力軸と一体回転するクラッチハブスリーブおよびシンクロナイザリングを有している。変速機構は、変速段の切り替えの際に、クラッチハブスリーブを入力軸の軸線方向に移動させてシンクロナイザリングと入力軸側の変速ギヤとを摩擦接触させ、シンクロナイザリングの回転を入力軸側の変速ギヤの回転に同期させる。
これにより、変速機構は、変速ショックを低減させつつ変速段を切り替えるようになっている。
このような変速ショックを低減する車両用変速機の制御装置として、エンジン回転数を調整するとともに、クラッチ機構の係合作用を利用することにより、AMTにおける変速段の切り替えを行う車両用変速機の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この従来の特許文献1に記載の車両用変速機の制御装置は、例えば、高速段側への変速段の切り替えを行う場合において、クラッチ機構の解放後、スロットル開度を調整してエンジン回転数を低下させる。そして、エンジン回転数が切り替え後の変速段に対応するエンジン回転数まで低下したときにクラッチ機構を係合することにより、変速機構の入力軸の回転数を切り替え後の変速段に対応する回転数まで急激に低下させ、再度クラッチ機構を解放するとともに、クラッチハブスリーブを切り替え後の変速段を形成する変速ギヤに係合させるようにしている。
このように上記車両用変速機の制御装置は、クラッチ機構の係合により、入力軸の回転数を急激に低下させた後に、クラッチハブスリーブを変速ギヤに係合させるので、変速段の切り替えに要する時間を短縮するとともに、クラッチハブスリーブと変速ギヤとの係合時における変速ショックを低減するようになっている。
特開2008−256067号公報
しかしながら、上記車両用変速機の制御装置にあっては、変速段の切り替えに要する時間を短縮することができるものの、同期機構の代わりにクラッチ機構の係合によって入力軸の回転数を低下させるので、クラッチ機構に負荷をかけてしまう。特に、アクセルペダルの踏み込み解除に伴う高速段側への変速(以下、オフアップ変速という)を行う場合のように、迅速な変速が必要とされない場合にもクラッチ機構の係合により入力軸の回転数を低下させるので、クラッチ機構に不要な負荷をかけてしまうという問題があった。
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、クラッチ機構に不要な負荷をかけずに同期機構の耐久性を向上させることができる車両用変速機の制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る車両用変速機の制御装置は、上記目的達成のため、(1)駆動源からの回転動力を入力する入力軸と、前記入力された回転動力を駆動輪に伝達する出力軸と、前記入力軸と前記出力軸との間に設けられ、前記回転動力を設定変速比で変速する常時噛み合う複数の変速ギヤ対と、前記入力軸および前記出力軸のうちいずれか一方の軸と前記複数の変速ギヤ対のうちいずれかの変速ギヤ対との同期を行う複数の同期機構と、を有する変速機構と、変速条件に従って前記複数の変速ギヤ対から前記回転動力を伝達する変速ギヤ対を選択する変速ギヤ対選択手段と、前記選択された変速ギヤ対と前記一方の軸とが完全同期する完全同期位置と、前記選択された変速ギヤ対と前記一方の軸とを設定された差分回転数まで同期させる同期位置と、前記選択された変速ギヤ対と前記一方の軸とが同期しない非同期位置との間で前記同期機構を移動させる移動手段と、を備え、前記移動手段は、前記変速ギヤ対選択手段によって変速ギヤ対が選択された際に、前記同期機構を前記同期位置に待機させた後に前記完全同期位置に移動させる車両用変速機の制御装置において、前記動力源の回転動力を増加させずに前記変速比が小さい変速ギヤ対への切り替えを行うオフアップ条件が成立したか否かを判定するオフアップ条件判定手段と、を備え、前記移動手段は、前記オフアップ条件が成立した場合に、前記完全同期位置にある同期機構を前記非同期位置に移動させた後、前記変速ギヤ対選択手段に選択された変速ギヤ対に対応する同期機構を前記非同期位置に待機させたまま、前記選択された変速ギヤ対を構成する変速ギヤと前記一方の軸の差分回転数が予め定められた値以下となった場合に、前記選択された変速ギヤ対に対応する同期機構を、前記完全同期位置に移動させて前記変速比を切り替えることを特徴とした構成を有している。
この構成により、本発明に係る車両用変速機の制御装置は、オフアップ条件が成立した場合に、ギヤ入れ位置にある同期機構を中立位置に移動させた後、選択された変速ギヤ対に対応する同期機構を非同期位置に待機させたまま、選択された変速ギヤ対を構成する変速ギヤと一方の軸の差分回転数が予め定められた値以下となった場合に、選択された変速ギヤ対に対応する同期機構を、完全同期位置に移動させて変速比を切り替えるので、クラッチ機構を係合させることなく、また、同期機構によって差分回転数を低下させずに変速比を切り替えることができ、クラッチ機構に不要な負荷をかけずに同期機構の耐久性を向上させることができる。
なお、動力源が車両の前部に配置されるとともに変速機構が車両の後部に配置され、動力源と変速機構の入力軸とがプロペラシャフトで結合される車両においては、プロペラシャフトが長くなり質量が増大するため、プロペラシャフトおよび入力軸の慣性モーメントが大きくなる。このため、同期機構と変速ギヤとを同期させる際の摩擦が増大するとともに、摩擦音も増大する。このような車両においても、本発明に係る車両用変速機の制御装置は、上記差分回転数が予め定められた値以下となった場合に、同期機構を完全同期位置に移動させるので、摩擦力および摩擦音の増大を抑制することができる。
さらに、後輪駆動で変速機構が車両の後部に配置されている車両においては、駆動輪としての後輪に変速機構の荷重がかかり、後輪のトラクションが増大する。そのため、同期機構と変速ギヤとを完全同期させる際に、プロペラシャフトおよび入力軸の慣性モーメントの影響が出力軸を介して駆動輪に伝達され、変速ショックとして車両の挙動に現れやすくなる。このような車両においても、本発明に係る車両用変速機の制御装置は、上記差分回転数が予め定められた値以下となった場合に、同期機構を完全同期位置に移動させるので、変速ショックも抑制することができる。
本発明によれば、クラッチ機構に不要な負荷をかけずに同期機構の耐久性を向上させることができる車両用変速機の制御装置を提供することができる。
本発明の実施の形態に係る車両用変速機の制御装置を備えた車両の概略構成を表す骨子図である。 本発明の実施の形態に係る自動クラッチの構成を示す骨子図である。 本発明の実施の形態に係る同期機構を含む変速機構の一部断面図である。 本発明の実施の形態に係る車両用変速機の制御装置の制御系統を表すブロック線図である。 本発明の実施の形態に係る変速時の動作を説明するためのタイムチャートである。(a)〜(c)は、オフアップ条件成立時のタイムチャートであり、(d)〜(f)は、オフアップ不成立時のタイムチャートである。 本発明の実施の形態に係る変速制御処理を表すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る車両用変速機の制御装置を備えた車両10の概略構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る車両10は、FR(Front engine-Rear Drive)車両である。車両10は、駆動源としてのエンジン11と、エンジン11が出力した回転動力の断接を切り替える自動クラッチ20と、自動クラッチ20により伝達された回転動力を所定の変速比で変速するとともにドライブシャフト75L、75Rに分配して伝達するトランスアクスル40と、車両10を駆動させる駆動輪77L、77Rと、を備えている。
エンジン11は、ガソリンあるいは軽油といった炭化水素系の燃料と空気との混合気を、図示しないシリンダの燃焼室内で燃焼させることによって動力を出力する公知の動力装置により構成されている。エンジン11は、燃焼室内で混合気の吸気、燃焼および排気を断続的に繰り返すことによりシリンダ内のピストンを往復動させ、ピストンと動力伝達可能に連結されたクランクシャフト13を回転させることにより、自動クラッチ20および減速ギヤ対38を介してトランスアクスル40に動力を伝達するようになっている。
ここで、減速ギヤ対38は、クラッチ出力軸36とプロペラシャフト39との間に配設されており、クラッチ出力軸36の回転を減速してプロペラシャフト39に伝達し得るよう、径の異なる複数の歯車を有している。また、プロペラシャフト39は、減速ギヤ対38とトランスアクスル40の入力軸42とにそれぞれスプライン嵌合し、減速ギヤ対38によって減速されたエンジン11の回転動力をトランスアクスル40に伝達するものである。なお、プロペラシャフト39は、円筒形のトルクチューブに内装されていてもよい。
トランスアクスル40は、車両10の後部に搭載されており、変速機構50と、ディファレンシャル機構70と、を有している。また、トランスアクスル40は、入力軸42から入力されるエンジン11の回転動力を、後述する複数の変速ギヤ対の係合の組み合わせを切り替えることにより変速し、ドライブシャフト75L、75Rを介して駆動輪77L、77Rに伝達するようになっている。
次に、変速機構50の構成について説明する。
変速機構50は、平行歯車式の有段変速機であり、トランスアクスル40内に入力軸42と出力軸57とが平行に配置されている。また、変速機構50は、エンジン11からの回転動力を自動クラッチ20を介して入力する入力軸42と、入力された回転動力を駆動輪77L、77Rに伝達する出力軸57と、入力軸42と出力軸57との間に設けられ、入力された回転動力をそれぞれ設定された変速比γで変速する常時噛み合う変速ギヤ対51〜55と、入力軸42または出力軸57と変速ギヤ対51〜55のうちいずれかの変速ギヤ対との同期を行う同期機構58〜60と、を備えている。
変速ギヤ51a〜53aは、入力軸42に相対回転するようになっており、変速ギヤ54a、55aは、入力軸42に一体回転するようになっている。変速ギヤ51b〜53bは、出力軸57に一体回転するようになっており、変速ギヤ54b、55bは、出力軸57に相対回転するようになっている。また、変速機構50は、後進変速段を形成するための後進用変速ギヤ対56も有している。このように、変速ギヤ対51〜55は、入力軸42と一体回転する変速ギヤ51b〜53b、出力軸57と一体回転する変速ギヤ54a、55aと、上記変速ギヤ51b〜53bおよび変速ギヤ54a、55aとそれぞれ係合する変速ギヤ51a〜53aおよび変速ギヤ54b、55bと、によりそれぞれ構成され、入力軸42から入力された回転動力をそれぞれ異なる変速比で変速するようになっている。
さらに、変速機構50は、後述するECUによってセレクトアクチュエータ7およびシフトアクチュエータ8が作動させられることにより、変速ギヤ対51〜55の切り替えを行い、変速段を切り替えるようになっている。これにより、変速機構50は、各変速段に応じた動力伝達経路を形成するとともに、各変速段に応じた変速比でエンジン11の回転動力を変速するようになっている。
また、変速機構50は、ディファレンシャル機構70とともにトランスアクスル40のケース41内に配設され、トランスアクスル40の一部を構成している。また、変速機構50は、ケース41内に所定量充てんされるとともに、図示しないオイルポンプによって循環される潤滑油によって、ディファレンシャル機構70とともに潤滑されるようになっている。
また、変速機構50は、変速ギヤ対51に対応して同期機構58を、変速ギヤ対52、53に対応して同期機構59を、変速ギヤ対54、55に対応して同期機構60を有している。さらに、変速機構50は、同期機構58〜60の作動状態を完全同期状態、同期状態および非同期状態を取り得るように切り替えるクラッチハブスリーブ61〜63と、クラッチハブスリーブ61〜63のいずれかを入力軸42または出力軸57の軸線方向に移動させるシフト・セレクトシャフト64と、を有している。
シフト・セレクトシャフト64は、後述する3つの回転位置で3つの図示しないフォークシャフトを選択可能になっており、選択されたフォークシャフトを軸線方向に移動可能になっている。また、フォークシャフトには、それぞれシフトフォーク43〜45が連結されており、シフトフォーク43〜45が同期機構58〜60を構成するクラッチハブスリーブ61〜63に形成された溝にそれぞれ係合するようになっている。シフト・セレクトシャフト64を軸線方向に移動することにより、選択されたフォークシャフトが軸線方向に移動すると、クラッチハブスリーブ61〜63もシフト・セレクトシャフト64に連動して軸線方向に移動可能になっている。
ここで、図1に示すトランスミッション40においては、シフト・セレクトシャフト64が、シフトフォーク43〜45に直接連結されているが、実際には、各フォークシャフトを介してシフトフォーク43〜45にそれぞれ連結されている。図1は、実線で示すように、シフト・セレクトシャフト64によって、シフトフォーク44が選択されている状態を示している。
シフト・セレクトシャフト64は、電動式のセレクトアクチュエータ7によって回転させられ、クラッチハブスリーブ61〜63のうちいずれかを選択する軸線周りの3つの回転位置に位置決めされるようになっており、電動式のシフトアクチュエータ8によって軸線方向の5つの位置に位置決めされるようになっている。このように位置決めされたシフト・セレクトシャフト64によって、各クラッチハブスリーブ61〜63が後述する非同期位置Pn、同期位置Ps1、Ps2、完全同期位置Pg1、Pg2のいずれかの位置に移動させるようになっている。
したがって、本実施形態におけるセレクトアクチュエータ7、シフトアクチュエータ8、シフト・セレクトシャフト64、各フォークシャフト、シフトフォーク43〜45は、後述するECUと協働して、本発明に係る移動手段を構成している。
なお、セレクトアクチュエータ7およびシフトアクチュエータ8は、電動式のものに限られず、油圧式のものを用いてもよい。
また、上述した軸線周りの3つの回転位置とは、シフトフォーク45を介してクラッチハブスリーブ63を出力軸57の軸線方向に移動可能とする第1セレクト位置、シフトフォーク44を介してクラッチハブスリーブ62を入力軸42の軸線方向に移動可能とする第2セレクト位置、およびシフトフォーク43を介してクラッチハブスリーブ61を入力軸42の軸線方向に移動可能とする第3セレクト位置をいう。
軸線方向の5つの位置とは、同期機構58〜60を非同期状態にする非同期シフト位置、同期機構58〜60のうちいずれか1つの同期機構を奇数の変速段に対応する変速ギヤと完全同期状態にする第1完全シフト位置および偶数の変速段に対応する変速ギヤと完全同期状態にする第2完全シフト位置、同期機構58〜60のうちいずれか1つの同期機構を奇数の変速段に対応する変速ギヤと同期状態にする第1同期シフト位置および偶数の変速段に対応する変速ギヤと同期状態にする第2同期シフト位置である。
同期機構60は、シフト・セレクトシャフト64が第1セレクト位置における第1完全シフト位置に位置決めされると、完全同期状態となり第1変速段が形成される。ここで、第1変速段における変速比γ1は最も大きい。
同期機構60は、シフト・セレクトシャフト64が第1セレクト位置における第2完全シフト位置に位置決めされると、完全同期状態となり第2変速段が形成される。ここで、第2変速段における変速比γ2は、第1変速段における変速比γ1に次いで、2番目に大きい。
同期機構59は、シフト・セレクトシャフト64が第2セレクト位置における第1完全シフト位置に位置決めされると、完全同期状態となり第3変速段が形成される。ここで、第3変速段における変速比γ3は、第2変速段における変速比γ2に次いで、3番目に大きい。
同期機構59は、シフト・セレクトシャフト64が第2セレクト位置における第2完全シフト位置に位置決めされると、完全同期状態となり第4変速段が形成される。ここで、第4変速段における変速比γ4は、第3変速段における変速比γ3に次いで、4番目に大きく、略1である。
同期機構58は、シフト・セレクトシャフト64が第3セレクト位置における第1完全シフト位置に位置決めされると、完全同期状態となり第5変速段が形成される。ここで、第5変速段における変速比γ5は、最も小さい。
同期機構58は、シフト・セレクトシャフト64が第3セレクト位置における第2完全シフト位置に位置決めされると、完全同期状態となり後進変速段が形成される。
ディファレンシャル機構70は、駆動輪77Lと駆動輪77Rとの回転数の差を許容するものであり、リングギヤ71を介して出力ギヤ66から入力されたエンジン11の回転動力を、サイドギヤ72L、72Rを介してドライブシャフト75L、75Rに分配して出力するようになっている。
なお、ディファレンシャル機構70は、ドライブシャフト75L、75Rを同一回転とし、駆動輪77Lと駆動輪77Rとの回転数の差を許容しないデフロック状態をとることができるものであってもよい。
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態に係る自動クラッチ20の構成について説明する。
自動クラッチ20は、エンジン11と減速ギヤ対38との間に配設されたクラッチ機構21と、クラッチ機構21の作動状態を切り替えるためのクラッチアクチュエータ30と、を有している。
クラッチ機構21は、所謂乾式単板式の摩擦クラッチである。クラッチ機構21は、クランクシャフト13と一体的に回転する円板形状のフライホイール22と、フライホイール22と同軸上に相対回転可能に配設されるとともに、減速ギヤ対38を介してプロペラシャフト39に連結されたクラッチ出力軸36と一体回転するクラッチディスク23と、クラッチディスク23と同軸上に相対回転可能かつ軸線方向に移動可能に配設されたプレッシャプレート26と、クラッチディスク23と同軸上にプレッシャプレート26を付勢可能に配設された皿ばねとしてのダイヤフラムスプリング27と、これらを収容するようフライホイール22に一体的に固設されたクラッチカバー28と、を有している。
クラッチアクチュエータ30は、ねじ歯車(ウォーム)とはすば歯車(ウォームホイール)とを組み合わせたウォームギヤを内蔵するとともに後述するECUによってウォームギヤを作動させられるクラッチモータ31と、クラッチモータ31に連結されるとともに軸線方向に往復動可能に配設された出力ロッド33と、出力ロッド33に連結されるとともに回動可能に配設されたレリーズフォーク34と、クラッチ出力軸36が貫挿するよう円環状に形成されるとともにクラッチ出力軸36と同軸上を移動可能に配設されたレリーズスリーブ35と、を有している。
ここで、自動クラッチ20におけるクラッチ機構21の係合状態と解放状態との切り替えについて説明する。
図2は、クラッチ機構21の作動状態が係合状態である場合を表している。係合状態においては、ダイヤフラムスプリング27の外周部27cによってプレッシャプレート26およびクラッチディスク23がX方向に押圧されている。そのため、クラッチディスク23とフライホイール22とは、摩擦係合することにより一体回転している。したがって、クラッチ機構21は、クランクシャフト13から入力されたエンジン11の回転動力を、クラッチ出力軸36から出力している。
図2の状態において、ECUによってクラッチモータ31が作動させられることにより出力ロッド33がY方向に移動させられると、レリーズフォーク34が時計回りに回動する。これにより、レリーズスリーブ35はレリーズフォーク34によってX方向に移動させられるとともに、ダイヤフラムスプリング27の中央部27aを押圧することとなる。そのため、中央部27aを押圧されたダイヤフラムスプリング27は、支持部27bを支点に外周部27cをY方向に移動させる。これにより、クラッチディスク23に対するプレッシャプレート26の押圧が解除されるので、クラッチディスク23とフライホイール22との摩擦係合が解除されて離間し、クラッチ機構21の作動状態は解放状態となる。このとき、クラッチ出力軸36へのエンジン11の回転動力の伝達が遮断される。
次に、クラッチ機構21の作動状態を係合状態に移行させる場合には、クラッチモータ31を作動させることによって出力ロッド33をX方向に移動させる。これにより、レリーズフォーク34が反時計回りに回動する。これにより、レリーズフォーク34がレリーズスリーブ35を介して中央部27aを押圧する力が解放される。このため、ダイヤフラムスプリング27の中央部27aがY方向に移動するとともに外周部27cがX方向に移動し、プレッシャプレート26をX方向に押圧するので、クラッチディスク23とフライホイール22とが摩擦係合することとなり、クラッチ機構21の作動状態が係合状態となる。
ここで、クラッチモータ31には、クラッチストロークセンサ84が設けられている。クラッチストロークセンサ84は、Y方向に対する出力ロッド33のストロークを検出するためのものである。クラッチストロークセンサ84は、クラッチモータ31に内蔵されたはすば歯車の回転角を検出する公知のロータリーエンコーダによって構成されている。クラッチストロークセンサ84は、はすば歯車の回転角を検出し、検出信号をECU100に出力するようになっている。ECU100は、クラッチストロークセンサ84の検出信号に基づいて、出力ロッド33のストロークを算出し、クラッチストロークScとして取得するようになっている。
次に、図3を参照して、同期機構58〜60の構成について説明する。
ここで、同期機構58〜60は同様の構成であるので、同期機構59を例に説明する。
図3に示すように、同期機構59は、所謂キー式シンクロメッシュ機構により構成され、入力軸42と、変速ギヤ対52の変速ギヤ52aまたは変速ギヤ対53の変速ギヤ53aと、の同期を行うようになっている。同期機構59は、入力軸42にスプライン嵌合され、一体回転するクラッチハブ161と、クラッチハブ161に固定されたキースプリング162と、キースプリング162に付勢されたシンクロナイザキー163と、シンクロナイザキー163によって変速ギヤ52aおよび53aと当接するよう押圧されるシンクロナイザリング165および166と、クラッチハブ161と一体回転するとともに、シンクロナイザリング165および166をシンクロナイザキー163を介して押圧するクラッチハブスリーブ62と、により構成されている。
クラッチハブスリーブ62は、シフトアクチュエータ8によって入力軸42の軸線方向における完全同期位置Pg1およびPg2、同期位置Ps1およびPs2、並びに非同期位置Pnで位置決めされる。
クラッチハブ161は、その外周面に軸線方向の切溝を複数有しており、この切溝にキースプリング162とシンクロナイザキー163とが設けられている。これにより、キースプリング162およびシンクロナイザキー163は、クラッチハブ161と一体回転するようになっている。
シンクロナイザキー163は、その外周に突起部164を有しており、突起部164は、非同期位置Pnでクラッチハブスリーブ62の内周面に形成された凹部62hと嵌合している。クラッチハブスリーブ62は、同期位置Ps1およびPs2で、凹部62hに形成された傾斜部が突起部164の傾斜部と係合することにより、シンクロナイザリング165および166を変速ギヤ53aおよび52aにそれぞれ押圧するようになっている。
また、図示は省略するが、クラッチハブスリーブ62の内周面とクラッチハブ161の外周面とがスプライン嵌合しているため、クラッチハブスリーブ62はクラッチハブ161と一体回転するようになっている。さらに、クラッチハブスリーブ62の外周面には、シフトフォーク44が係合するための溝部62mが形成されている。クラッチハブスリーブ62には、スプライン62sが形成されており、このスプライン62sは、クラッチハブ161の外周面に形成された図示しないスプラインと嵌合するようになっているので、クラッチハブスリーブ62は、クラッチハブ161と一体回転するようになっている。
シンクロナイザリング165は、変速ギヤ53aに形成されたコーン部53kの外周面に相対回転可能かつ入力軸42の軸線方向に相対移動可能に配設されている。また、シンクロナイザリング165には、シンクロナイザキー163との対向面における周方向の複数箇所に溝が形成されており、この溝にはシンクロナイザキー163が係合している。そのため、シンクロナイザキー163とシンクロナイザリング165は一体回転する。すなわち、入力軸42とシンクロナイザリング165は一体回転するようになっている。また、シンクロナイザリング165は、外周面にスプライン165sを有している。同様に、シンクロナイザリング166は、外周面にスプライン166sを有している。
変速ギヤ52aは、変速ギヤ52bと係合する係合歯とは別に、クラッチギヤ52gを有している。また、変速ギヤ53aは、変速ギヤ53bと係合する係合歯とは別に、クラッチギヤ53gを有している。
クラッチハブスリーブ62のスプライン62sと、シンクロナイザリング165のスプライン165sおよび変速ギヤ53aのクラッチギヤ53gと、が互いに当接する方向の先端部には、テーパ面が形成されており、これにより、スプライン62sと、スプライン165sおよびクラッチギヤ53gの周方向における各位相が揃っていない場合であっても、クラッチハブスリーブ62のスプライン62sが、スプライン165sおよびクラッチギヤ53gと係合可能になっている。同様に、クラッチハブスリーブ62のスプライン62sと、シンクロナイザリング165のスプライン165sおよび変速ギヤ52aのクラッチギヤ52gと、が互いに当接する方向の先端部には、テーパ面が形成されており、これにより、スプライン62sと、スプライン165sおよびクラッチギヤ52gの周方向における各位相が揃っていない場合であっても、クラッチハブスリーブ62のスプライン62sが、スプライン165sおよびクラッチギヤ52gと係合可能になっている。
次に、図4を参照して、本発明に係る車両用変速機の制御装置の制御系統について説明する。
ECU100は、中央演算処理装置としてのCPU(Central-Processing-Unit)101と、一時的にデータを記憶するRAM(Random-Access-Memory)102と、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically-Erasable-Programmable-Read-Only-Memory)103と、各種センサの検出信号を入力する入力ポート104と、CPU101によって出力された信号を制御対象に出力する出力ポート105と、を有している。また、これらは双方向性バス106を介して互いに接続されている。
ECU100は、RAM102の一次記憶領域を利用しつつ、予めEEPROM103に記憶されたプログラムにしたがって、入力ポート104から入力された各種検出信号の処理を実行することにより、エンジン11の出力調節、自動クラッチ20の作動状態の切り替えおよび変速機構50における変速段の切り替えを行うようになっている。また、出力ポート105から出力された信号は、図示しないADC(Analog Digital Converter)を介して、スロットルアクチュエータ5、エンジン11、クラッチモータ31、セレクトアクチュエータ7およびシフトアクチュエータ8に入力されるようになっている。
EEPROM103は、アクセルペダル3の操作量と車速との関係を変速段毎に設定した変速線図と、本発明の実施の形態に係る変速制御処理を実現するためのプログラムと、クラッチハブスリーブの完全同期位置への移動の可否を判定するためのギヤ入れ判定値αと、スロットル開度θthを調節するための係合判定値βと、を記憶している。
また、ECU100は、エンジン11の出力軸回転数を検出するためのエンジン回転数センサ80と、入力軸42の回転数を検出するための入力軸回転数センサ81と、エンジン11への吸入空気量を調整するスロットルバルブ6の開度を検出するためのスロットルセンサ82と、車両10の車速Vを検出するための車速センサ83と、上述したクラッチストロークセンサ84と、アクセルペダル3の操作量を検出するためのアクセルセンサ85と、セレクトストロークを検出するためのセレクトストロークセンサ86と、シフトストロークを検出するためのシフトストロークセンサ87と、シフトレバー89の操作位置を検出するためのシフトセンサ88と、に接続されている。
エンジン回転数センサ80は、クランクシャフト13に設けられた図示しないタイミングロータの所定の回転角毎に、出力信号としてのパルスを発生し、検出信号としてECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号に基づいて、エンジン回転数Neを算出するようになっている。
入力軸回転数センサ81は、入力軸42(図1参照)に設けられた図示しないタイミングロータの所定の回転角毎に、出力信号としてのパルスを発生し、検出信号としてECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号に基づいて入力軸回転数Ninを算出するようになっている。
スロットルセンサ82は、スロットルバルブ6のスロットル開度θthに応じた出力電圧が得られるホール素子により構成されており、この出力電圧を表す検出信号をECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号に基づいてスロットル開度θthを算出するようになっている。
車速センサ83は、変速機構50の出力軸57に設けられた図示しないタイミングロータの所定の回転角毎に、出力信号としてのパルスを発生し、検出信号としてECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号に基づいて車速Vおよび出力軸回転数Noutを算出するようになっている。
アクセルセンサ85は、アクセルペダル3の操作量Qaccを、ホール素子を用いて検出し、アクセルペダル3の操作量Qaccに応じた検出信号をECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号に基づいて、アクセルペダル3の操作量Qaccを算出することができる。
セレクトストロークセンサ86は、セレクトアクチュエータ7の駆動量に応じた電気信号を検出信号としてECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号に基づいて、セレクトアクチュエータ7の駆動量に対応するセレクトストロークSseを算出するようになっている。
シフトストロークセンサ87は、シフトアクチュエータ8の駆動量に応じた電気信号を検出信号としてECU100に出力するようになっている。ECU100は、この検出信号に基づいて、シフトアクチュエータ8の駆動量に対応するシフトストロークSshを算出するようになっている。
シフトセンサ88は、シフト操作装置90に設けられた複数のセンサ91〜97によって、シフトレバー89を検出するようになっている。すなわち、シフトセンサ88は、シフトレバー89がいずれかの操作位置に操作されたときに、複数のセンサ91〜97のうち対応するセンサによってシフトレバー89を検出し、検出信号をECU100に出力するようになっている。
ここで、シフトレバー89は、車両10の駐車のための駐車位置(P)、後進走行のための後進走行位置(R)、変速機構50における動力伝達経路を遮断する中立位置(N)、自動変速モードを実現するための前進走行位置(D)、手動変速モードにおいてシフト操作するための手動変速位置(M)、手動変速モードにおいてアップ変速を指示するためのアップ変速指示位置(+)およびダウン変速を指示するためのダウン変速指令位置(−)の操作位置のうち、いずれかに切り替えられるようになっている。
シフトレバー89が、駐車位置(P)、後進走行位置(R)、中立位置(N)、前進走行位置(D)または手動変速位置(M)に操作されると、ECU100はシフトセンサ88の検出信号に基づいて、それぞれPレンジ、Rレンジ、Nレンジ、DレンジまたはSレンジのシフトレンジを設定する。ECU100は、設定したシフトレンジに応じた動力伝達経路が形成されるようセレクトアクチュエータ7、シフトアクチュエータ8およびクラッチモータ31を作動させるようになっている。
また、シフトレバー89が前進走行位置(D)に操作されると、シフトセンサ88は自動変速モードを表す検出信号をECU100に出力する。ECU100は、自動変速モードを表す検出信号を入力した場合に、変速モードを自動変速モードに設定し、車速センサ83によって検出された車速Vおよびアクセルセンサ85によって検出されたアクセルペダル3の操作量Qaccに基づいて、EEPROM103に記憶されている変速線図を参照して変速段の切り替えの要否を判断する。そして、ECU100は、変速段の切り替えが必要であると判断した場合に、変速段を車速Vおよびアクセルペダル3の操作量Qaccに応じた変速段に切り替える。
さらに、シフトレバー89が手動変速位置(M)に操作されたとき、シフトセンサ88は手動変速モードを表す検出信号をECU100に出力する。ECU100は、手動変速モードを表す検出信号を入力した場合に、変速モードを手動変速モードに設定し、シフトレバー89の手動操作に応じて変速段の切り替えを行うこととなる。この場合には、シフトレバー89がアップ変速指示位置(+)に1回操作されると、ECU100は、変速段を変速比γの小さい高速段側に1段切り替える。また、シフトレバー89がダウン変速指示位置(−)に1回操作されると、ECU100は、変速段を変速比γの大きい低速段側に1段切り替える。
また、ECU100は、アクセルセンサ85によって検出されたアクセルペダル3の操作量Qaccに応じてスロットル開度θthを調節するようになっている。
これにより、アクセルペダル3の操作量Qaccに応じた量の空気がエンジン11に導入され、エンジン11の出力する回転動力が調節される。
次に、本実施の形態に係る車両用変速機の制御装置を構成するECU100の機能について説明する。
ECU100は、変速条件に従って変速ギヤ対51〜55から回転動力を伝達する変速ギヤ対を選択するようになっている。
具体的には、ECU100は、変速モードが自動変速モードである場合に、車速センサ83によって検出された車速Vおよびアクセルセンサ85によって検出されたアクセルペダル3の操作量Qaccに基づいて、EEPROM103に記憶されている変速線図を参照して変速段の切り替えの要否を判断する。そして、ECU100は、変速段の切り替えが必要であると判断することにより変速条件が成立した場合に、切り替え後の変速段に応じた動力伝達経路を形成する変速ギヤ対を、変速ギヤ対51〜55から選択する。
一方、ECU100は、変速モードが手動変速モードである場合に、シフトレバー89がアップ変速指示位置(+)またはダウン変速指示位置(−)に操作されることにより変速条件が成立した場合に、切り替え後の変速段に応じた動力伝達経路を形成する変速ギヤ対を、変速ギヤ対51〜55から選択する。
例えば、ECU100は、変速モードが自動変速モードである場合に、車速センサ83によって検出された車速Vおよびアクセルセンサ85によって検出されたアクセルペダル3の操作量Qaccに基づいて、EEPROM103に記憶された変速線図を参照して、第2変速段から第3変速段への変速段の切り替えが必要であると判断することにより変速条件が成立した場合に、第3変速段に応じた変速ギヤ対53を選択する。
したがって、本実施の形態に係るECU100は、本発明に係る変速ギヤ対選択手段を構成している。
ECU100は、選択した変速ギヤ対51〜55のいずれかと入力軸42または出力軸57とが完全同期する完全同期位置と、選択した変速ギヤ対51〜55のいずれかと入力軸42または出力軸57との差分回転数をギヤ入れ判定値αまで同期させる同期位置と、選択した変速ギヤ対51〜55のいずれかと入力軸42および出力軸57とが同期しない非同期位置との間で、選択した変速ギヤ対51〜55のいずれかに対応する同期機構58〜60のいずれかを移動させるようセレクトアクチュエータ7およびシフトアクチュエータ8を制御するようになっている。例えば、ECU100は、変速ギヤ対53を選択した場合には、変速ギヤ対53と入力軸42とが完全同期する完全同期位置と、変速ギヤ対53と入力軸42との差分回転数をギヤ入れ判定値αまで同期させる同期位置と、変速ギヤ対53と入力軸42とが同期しない非同期位置との間で、同期機構59を移動させるようセレクトアクチュエータ7およびシフトアクチュエータ8を制御するようになっている。
したがって、本実施の形態に係るECU100は、本発明に係る移動手段を構成している。なお、上記完全同期位置および同期位置においては、変速ギヤ対51〜53と入力軸42とが完全同期または同期状態となり、変速ギヤ対54、55と出力軸57とが完全同期または同期状態となる。
さらに、ECU100は、上述したように変速条件に従って変速ギヤ対51〜55のうち回転動力を伝達する1つの変速ギヤ対を選択した際に、同期機構58〜60のうち選択された変速ギヤ対に対応する同期機構を、選択された変速ギヤ対と同期を行う同期位置に待機させた後に、さらに完全同期位置に移動させるようになっている。
ECU100は、切り替え後の変速段が第3変速段である場合には、第3変速段に応じた動力伝達経路を形成する変速ギヤ対として、変速ギヤ対53を選択する。ここで、シンクロナイザリング165は入力軸42と一体回転するため、ECU100は、シンクロナイザリング165の回転数については、入力軸回転数Ninと略同一であるものとして算出する。また、ECU100は、変速ギヤ53aの回転数については、出力軸回転数Noutに変速ギヤ対53の変速比γ3を乗じて、換算出力軸回転数Noutγ3として算出するようになっている。すなわち、ECU100は、入力軸回転数Nin、出力軸回転数Nout、および変速ギヤ対53の変速比γ3に基づいて、シンクロナイザリング165の回転数および変速ギヤ53aの回転数を算出するようになっている。
ECU100は、オフアップ変速を行うか否かのオフアップ条件が成立したか否かを判定するようになっている。なお、オフアップ変速とは、エンジン11の回転動力を増加させずに変速比γが小さい変速ギヤ対への切り替えを行う変速、すなわち、アクセルオフでのアップ変速をいう。
具体的には、ECU100は、変速モードが自動変速モードである場合に、アクセルセンサ85の検出信号に基づいてアクセルペダル3の踏み込みが解除されたと判定し、かつ、EEPROM103に記憶された変速線図に基づいて、現在の変速段から変速比γの小さい高速段側への切り替えであると判定した場合に、オフアップ条件が成立したと判定する。
一方、ECU100は、変速モードが手動変速モードである場合に、アクセルセンサ85の検出信号に基づいてアクセルペダル3の踏み込みが解除されたと判定し、かつ、シフトセンサ88の検出信号に基づいて、シフトレバー89がアップ変速指示位置(+)(図4参照)に操作されたと判定した場合に、オフアップ条件が成立したと判定する。
したがって、本実施の形態に係るECU100は、本発明に係るオフアップ条件判定手段を構成している。
また、例えば、ECU100は、第2変速段を形成する変速ギヤ対54から第3変速段を形成する変速ギヤ対53に切り替えるオフアップ条件が成立した場合に、完全同期位置にある同期機構60を非同期位置に移動させた後、選択した変速ギヤ対53に対応する同期機構59を非同期位置に待機させたまま、変速ギヤ対53を構成する変速ギヤ53aと入力軸42との差分回転数がギヤ入れ判定値α以下となった場合に、同期機構59を、完全同期位置Pg1に移動させて変速比γ2から変速比γ3に切り替えるようになっている。
ここで、ECU100は、上述したような変速段の切り替えを行う間は、クラッチモータ31を作動させることによりクラッチ機構21の作動状態を解放状態にしているが、変速段の切り替えを終えてクラッチ機構21の作動状態を係合状態に切り替えるときに、フライホイール22とクラッチディスク23との回転差が大きくならないよう、スロットルアクチュエータ5によりスロットルバルブ6を作動させて、スロットル開度θthを調節するようになっている。具体的には、ECU100は、変速段の切り替えの間は、アクセルペダル3の操作量Qaccにかかわらず、スロットル開度θthを零または略零に調節し、クラッチ機構21の作動状態を係合状態に切り替える直前に、入力軸回転数Ninに基づいて、フライホイール22の回転数とクラッチディスク23の回転数との差分が係合判定値β以下となるよう、スロットル開度θthを調節する。
係合判定値βとは、フライホイール22の回転数とクラッチディスク23の回転数との差分が係合判定値β以下である状態でフライホイール22とクラッチディスク23とを係合させた場合に、クラッチディスク23の発熱量や磨耗量といった負荷が予め定められた値以下となり、変速機構50に入力される回転動力の急激な増大による変速ショックを抑制し得るよう、予め実験的、理論的に求められた値である。
また、上述したギヤ入れ判定値αとは、例えば第2変速段から第3変速段に切り替える場合において、入力軸回転数Ninと換算出力軸回転数Noutγ3との差分回転数がギヤ入れ判定値α以下である状態でクラッチハブスリーブ62を非同期位置Pnから完全同期位置Pg1に移動させた場合には、シンクロナイザリング165の内周面とコーン部53kの外周面との摩擦によるシンクロナイザリング165の発熱量や磨耗量といった負荷が予め定められた値以下となり、さらに、変速ショックおよび摩擦音の増大を抑制し得るよう、予め実験的、理論的に求められた値である。なお、ギヤ入れ判定値αは、入力軸回転数Nin、出力軸回転数Nout、切り替え前後の変速段、同期機構58〜60の構成およびシフトアクチュエータ8の駆動力に応じた値を取る。
次に、動作について説明する。
まず、図3を参照して、同期機構の動作について説明する。ここでは、第2変速段から第3変速段への切り替えを例に説明する。
ここで、変速段の切り替え時には、クラッチ機構21を一旦解放状態にして車両10を惰性走行させるので、変速段の切り替えの前後で出力軸回転数Noutは略一定である。このとき、変速ギヤ53aは、変速段の切り替えの前後で略一定の換算出力軸回転数Noutγ3で回転している。ここで、換算出力軸回転数Noutγ3は、出力軸回転数Noutに第3変速段を形成する変速ギヤ対53の変速比γ3を乗じた回転数である。
一方、同期機構59は、常に入力軸回転数Ninで回転しているが、このときの入力軸回転数Ninは、同期機構60と変速ギヤ54bとが完全同期状態では、出力軸回転数Noutに第2変速段を形成する変速ギヤ対54の変速比γ2を乗じた換算出力軸回転数Noutγ2と等しくなっている。このため、同期機構60が変速ギヤ54bと非同期状態となったときには、同期機構59の回転と変速ギヤ53aの回転とは同期していない。
まず、シフトアクチュエータ8によって、第2完全シフト位置にあったシフト・セレクトシャフト64が非同期位置まで移動させられることにより、完全同期位置にあった同期機構60のクラッチハブスリーブ63(図1参照)が非同期位置まで移動し、第2変速段が解除される。なお、このとき、シフトフォーク45を介してクラッチハブスリーブ63が図3に示すB方向に移動させられて、クラッチハブスリーブ63のスプラインと、シンクロナイザリングのスプラインおよび変速ギヤ54bのクラッチギヤと、の係合が解除されて、ギヤ抜きが行われる。
次に、セレクトアクチュエータ7によって、第1セレクト位置にあったシフト・セレクトシャフト64が第2セレクト位置まで回動させられる。これにより、シフト・セレクトシャフト64によってシフトフォーク44を介してクラッチハブスリーブ62を入力軸42の軸線方向に移動させることが可能となる。
次に、シフトアクチュエータ8によってシフト・セレクトシャフト64が作動させられることにより、シフトフォーク44を介してクラッチハブスリーブ62がB方向に移動する。ここで、凹部62hと突起部164とが係合しているため、シンクロナイザキー163はクラッチハブスリーブ62とともにB方向に移動する。そして、クラッチハブスリーブ62が同期位置Ps1に位置決めされることにより、シンクロナイザキー163は、シンクロナイザリング165をコーン部53kに押圧することより、同期機構59の同期動作が開始される。
このとき、シンクロナイザキー163が、シンクロナイザリング165をコーン部53kに押圧すると、シンクロナイザリング165の内周面とコーン部53kの外周面とが摩擦接触することとなり、シンクロナイザリング165と変速ギヤ53aとの差分回転数が減少し始める。
そして、クラッチハブスリーブ62がB方向にさらに移動するようシフトアクチュエータ8によって力が加えられると、クラッチハブスリーブ62によってシンクロナイザリング165がさらに押圧され、シンクロナイザリング165とコーン部53kとの摩擦力がさらに増大する。そうすると、シンクロナイザリング165の回転数と変速ギヤ53aの回転数とが略等しくなり、同期機構59の同期動作が終了する。
次に、同期動作が終了すると、クラッチハブスリーブ62は、さらにB方向に移動させられて、図3(b)に示すような状態となる。そして、図3(c)に示すように、スプライン62sが、変速ギヤ53aのクラッチギヤ53gと係合するとともにシンクロナイザリング165のスプライン165sと係合する。このように、同期機構59が、同期状態から完全同期状態に移行することで、第3変速段が形成されて、ギヤ入れ動作が終了する。この結果、第3変速段を形成する変速ギヤ対53を介して回転動力が入力軸42から出力軸57を介して伝達され、第3変速段に対応する動力伝達経路が形成される。
なお、クラッチハブスリーブ62のスプライン62sが、変速ギヤ53aのクラッチギヤ53gと係合するとともにシンクロナイザリング165のスプライン165sと係合している状態が、同期機構59の完全同期状態であり、クラッチハブスリーブ62のスプライン62sが、変速ギヤ53aのクラッチギヤ53gと係合しておらずシンクロナイザリング165のスプライン165sとも係合していない状態で、かつ、シンクロナイザリング165の内周面とコーン部53kの外周面とが摩擦接触している状態が、同期機構59の同期状態であり、凹部62hと突起部164とが嵌合している状態が、同期機構59の非同期状態である。
以上、第2変速段から第3変速段への切り替え動作における同期機構60および同期機構59の動作について説明したが、これに限らず、各変速段への切り替え動作における各同期機構における動作も上記した動作と同様な動作となる。なお、本実施の形態における変速機構50の場合、第1変速段から第2変速段、第3変速段から第4変速段への切り替え時は、同一の同期機構においてギヤ抜きおよびギヤ入れが行われることとなる。
次に、図5を参照して、変速時のタイムチャートついて、第2変速段から第3変速段への切り替えを例に説明する。
ここで、図5(a)から(c)は、後述するオフアップ条件が成立時のタイムチャートを、図5(d)から(f)は、後述するオフアップ条件が不成立時のタイムチャートをそれぞれ表している。また、図5(a)、(b)、(d)および(e)において、一点鎖線は制御値を表し、実線は検出値を表す。さらに、図5(c)および(f)において、破線は換算出力軸回転数Noutγ3を表し、実線は入力軸回転数Ninを表す。
まず、オフアップ条件が成立時のタイムチャートについて説明する。
時刻t1より前は、(a)に示すように、シフトストロークSshは、第2完全シフト位置に対応するSsh2であり、(b)に示すように、セレクトストロークSseは、第1セレクト位置に対応するSse1となっている。このとき、変速機構50においては、同期機構60が完全同期状態であるため、第2変速段が形成されている。そして、第3変速段への切り替えのため、ECU100によってクラッチモータ31(図2参照)が作動させられることにより、クラッチ機構21の作動状態が一旦解放状態となる。
時刻t1においては、ECU100によってシフトアクチュエータ8(図1参照)が作動させられることにより、シフト・セレクトシャフト64が非同期シフト位置に移動し始める。これにより、同期機構60の完全同期状態が解除される。
時刻t2においては、シフト・セレクトシャフト64が非同期シフト位置に位置決めされて、同期機構60が非同期状態となる。このとき、シフトストロークSshは、(a)に示すように、シフト・セレクトシャフト64の非同期シフト位置に対応するSshnとなる。
また、時刻t2においてシフトストロークSshがSshnとなると、ECU100によってセレクトアクチュエータ7が作動させられることにより、シフト・セレクトシャフト64は、第2セレクト位置へ回動し始める。
時刻t3においては、シフト・セレクトシャフト64は、第2セレクト位置に位置決めされる。このとき、セレクトストロークSseは、(b)に示すように、第2セレクト位置に対応するSse2となる。
時刻t3から時刻t4までは、シフトストロークSshがSshnに維持されることにより、クラッチハブスリーブ62は非同期位置Pnで待機させられる。そのため、変速機構50においては、動力伝達経路が遮断された状態となる。このとき、クラッチ機構21が解放状態であるため、入力軸42はクランクシャフト13の回転の影響を受けず、かつ、いずれの同期機構も非同期状態であるため、出力軸57の回転の影響も受けない。この場合には、専らトランスアクスル40内に充てんされた潤滑油を例えば変速ギヤ54aが攪拌する際の攪拌抵抗と図示しない軸受け部の摺動抵抗とを含む引き摺り抵抗によって、入力軸42の回転が徐々に減速される。
このため、時刻t3から時刻t4にかけて、入力軸回転数Ninは引き摺り抵抗によって後述するオフアップ条件不成立時と比較して緩やかに低下することとなる。
時刻t4においては、入力軸回転数Ninと、換算出力軸回転数Noutγ3との差分回転数が、EEPROM103に記憶されたギヤ入れ判定値α以下となる。
したがって、時刻t4においては、ECU100によってシフトアクチュエータ8が作動させられることにより、クラッチハブスリーブ62が入力軸42上をB方向へ移動し始める。
ここで、時刻t4において、入力軸回転数Ninと、換算出力軸回転数Noutγ3との差分回転数が、EEPROM103に記憶されたギヤ入れ判定値α以下となっていることから、シンクロナイザリング165の回転と変速ギヤ53aの回転とは略同期している。このため、同期機構59が同期動作を行うことなく、クラッチハブスリーブ62は、完全同期位置Pg1に移動する。
時刻t5においては、クラッチハブスリーブ62は、完全同期位置Pg1に位置決めされ(図3参照)、第3変速段が形成される。このとき、シフトストロークSshは、(a)に示すように、シフト・セレクトシャフト64の第1完全シフト位置に対応するSsh1となっている。
時刻t5を経過すると、ECU100によってクラッチモータ31が作動させられることにより、クラッチ機構21の作動状態が係合状態となり、変速段の切り替えが完了する。
次に、オフアップ条件が不成立時のタイムチャートについて説明する。
時刻t11より前に、第3変速段への切り替えのため、ECU100によってクラッチモータ31(図2参照)が作動させられることにより、クラッチ機構21の作動状態が一旦解放状態となる。
時刻t11においては、ECU100によってシフトアクチュエータ8(図1参照)が作動させられることにより、シフト・セレクトシャフト64が非同期シフト位置に移動し始める。これにより、同期機構60の完全同期状態が解除される。
時刻t12においては、シフト・セレクトシャフト64が非同期シフト位置に位置決めされて、同期機構60が非同期状態となる。このとき、シフトストロークSshは、(d)に示すように、シフト・セレクトシャフト64の非同期シフト位置に対応するSshnとなる。
また、時刻t12において、シフトストロークSshがSshnとなると、ECU100によってセレクトアクチュエータ7(図1参照)が作動させられることにより、シフト・セレクトシャフト64は、第2セレクト位置へ回動し始める。
時刻t13においては、シフト・セレクトシャフト64は、第2セレクト位置に位置決めされる。このとき、セレクトストロークSseは、(e)に示すように、第2セレクト位置に対応するSse2となる。
また、時刻t13においてセレクトストロークSseがSse2となると、ECU100によってシフトアクチュエータ8が作動させられることにより、シフト・セレクトシャフト64が第1同期シフト位置に移動し始める。これにより、非同期位置Pn(図3参照)にあったクラッチハブスリーブ62が、B方向(図3参照)へ移動し始める。
時刻t14においては、クラッチハブスリーブ62が同期位置Ps1に位置決めされるため、シフトストロークSshは、シフト・セレクトシャフト64の第1同期シフト位置に対応するSshs1となる。このとき、クラッチハブスリーブ62によってシンクロナイザリング165がコーン部53kに押圧されることとなり、同期機構59の同期動作が開始される(図3参照)。
時刻t15においては、入力軸回転数Ninと、換算出力軸回転数Noutγ3との差分回転数が、ギヤ入れ判定値α以下となる。すなわち、入力軸回転数Ninで回転するシンクロナイザリング165の回転数と、換算出力軸回転数Noutγ3で回転する変速ギヤ53aの回転数と、の差分回転数が、ギヤ入れ判定値α以下となる。
また、時刻t15においては、ECU100によってシフトアクチュエータ8が作動させられることにより、クラッチハブスリーブ62が入力軸42上をさらにB方向(図3参照)へ移動し始める。
時刻t16においては、クラッチハブスリーブ62は、完全同期位置Pg1に位置決めされ(図3参照)、クラッチハブスリーブ62のスプライン62sが、シンクロナイザリング165のスプライン165sおよび変速ギヤ53aのクラッチギヤ53gと係合し、変速機構50において第3変速段が形成される。このとき、シフトストロークSshは、(d)に示すように、シフト・セレクトシャフト64の第1完全シフト位置に対応するSsh1となっている。
時刻t16を経過すると、ECU100によってクラッチモータ31が作動させられることにより、クラッチ機構21の作動状態が係合状態となり、変速段の切り替えが完了する。
ここで、(f)に示すように、時刻t11から時刻t14までは、入力軸回転数Ninは、上述した引き摺り抵抗によって緩やかに低下している。
一方、時刻t14以降は、同期機構59の同期動作が開始されるため、入力軸回転数Ninは、出力軸57とともに回転する変速ギヤ53aの回転の影響を受けて、上述したオフアップ条件成立時と比較して急激に低下することとなる。
このように、オフアップ条件不成立時においては、シンクロナイザリング165の内周面とコーン部53kの外周面との摩擦を利用して同期機構59の同期動作を行っていた。このため、(f)に示すように、入力軸回転数Ninと換算出力軸回転数Noutγ3との差分回転数がギヤ入れ判定値αより大きい状態で同期を開始するため、シンクロナイザリング165の内周面とコーン部53k(図3参照)の外周面との摩擦力が大きくなり、シンクロナイザリング165に負荷をかけていた。
これに対し、オフアップ条件成立時においては、図5(a)から(c)に示すように、引き摺り抵抗によって入力軸回転数Ninと換算出力軸回転数Noutγ3との差分回転数がギヤ入れ判定値α以下となるまで、クラッチハブスリーブ62を非同期位置Pnで待機させ、上記差分回転数がギヤ入れ判定値α以下となってからギヤ入れを行うので、シンクロナイザリング165の内周面とコーン部53kの外周面との摩擦を抑制することができ、シンクロナイザリング165の耐久性を向上させることができる。
次に、図6を参照して、本発明の実施の形態に係る変速制御処理について説明する。
なお、図6に示すフローチャートは、ECU100によって、RAM102を作業領域として実行される同期制御のプログラムの実行内容を表す。また、この同期制御は、ECU100によって、予め定められた時間間隔で実行されるようになっている。
図6に示すように、まず、ECU100は、変速条件が成立したか否かを判定する(ステップS11)。ECU100は、変速条件が成立していないと判定した場合に(ステップS11でNO)、本処理を終了する。
以下、ECU100が第2変速段から第3変速段への変速段の切り替えを行う変速条件が成立したものとして説明する。
一方、ECU100は、変速条件が成立したと判定した場合に(ステップS11でYES)、スロットル閉弁を開始する(ステップS12)。具体的には、ECU100は、スロットル閉弁の実行フラグをONに設定するとともに、スロットルアクチュエータ5を作動させて、アクセルペダル3の操作量Qaccにかかわらずスロットル開度θthを略零に調節することにより、スロットル閉弁を開始する。
これにより、エンジン回転数Neは、緩やかに低下していくこととなる。
次に、ECU100は、クラッチ機構21の作動状態を解放状態に切り替える(ステップS13)。
次に、ECU100は、ギヤ抜きを行う(ステップS14)。具体的には、ECU100は、シフトアクチュエータ8を作動させてクラッチハブスリーブ63を非同期位置に移動させることにより、ギヤ抜きを行う。
ECU100は、ギヤ抜きを行った後、セレクトアクチュエータ7を作動させてシフト・セレクトシャフト64を第2セレクト位置に位置決めする。また、ECU100は、シフトアクチュエータ8を作動させずに、クラッチハブスリーブ62を非同期位置Pn(図3参照)で待機させる。
次に、ECU100は、オフアップ条件が成立したか否かを判定する(ステップS15)。
ECU100は、オフアップ条件が成立したと判定した場合に(ステップS15でYES)、入力軸回転数Ninと換算出力軸回転数Noutγ3との差分回転数(Nin−Noutγ3)が、ギヤ入れ判定値α以下であるか否かを判定する(ステップS16)。
ECU100は、Nin−Noutγ3がギヤ入れ判定値α以下となるまで(ステップS16でYES)、Nin−Noutγ3がギヤ入れ判定値α以下であるか否かの判定処理を繰り返す(ステップS16)。
ECU100は、Nin−Noutγ3がギヤ入れ判定値α以下となったら(ステップS16でYES)、ギヤ入れを行う(ステップS17)。具体的には、ECU100は、シフトアクチュエータ8を作動させることにより、非同期位置Pn(図3参照)で待機させていたクラッチハブスリーブ62を完全同期位置Pg1に位置決めし、クラッチハブスリーブ62のスプライン62sを、シンクロナイザリング165のスプライン165sおよび変速ギヤ53aのクラッチギヤ53gと係合させることにより、ギヤ入れを行う。
次に、ECU100は、スロットル閉弁の実行フラグをOFFに設定することにより、スロットル閉弁を終了する(ステップS18)。
次に、ECU100は、クラッチ機構21の作動状態を係合状態に切り替える(ステップS19)。ここで、ECU100は、クラッチ機構21の作動状態を係合状態に切り替える直前に、入力軸回転数Ninに基づいて、フライホイール22の回転数とクラッチディスク23の回転数との差分が係合判定値β以下となるよう、スロットル開度θthを調節する。
一方、ECU100は、オフアップ条件が成立していないと判定した場合には(ステップS15でNO)、同期機構59に同期動作を行わせる(ステップS20)。具体的には、ECU100は、クラッチハブスリーブ62を同期位置Ps1に位置決めし、シンクロナイザリング165の内周面とコーン部53kの外周面との摩擦接触を利用した同期動作を行う。すなわち、ECU100は、シンクロナイザリング165の内周面とコーン部53kの外周面との摩擦接触により、シンクロナイザリング165の回転数を、変速ギヤ53aの回転数に近づくよう同期機構59を作動させる。
次に、入力軸回転数Ninと換算出力軸回転数Noutγ3との差分回転数(Nin−Noutγ3)が、ギヤ入れ判定値α以下であるか否かを判定する(ステップS21)。ECU100は、Nin−Noutγ3がギヤ入れ判定値α以下でなければ(ステップS21でNO)、Nin−Noutγ3がギヤ入れ判定値α以下となるまで(ステップS21でYES)、同期機構59による同期動作を継続する。
ECU100は、Nin−Noutγ3がギヤ入れ判定値α以下となったら(ステップS21でYES)、ギヤ入れを行う(ステップS22)。具体的には、ECU100は、シフトアクチュエータ8を作動させることにより、同期位置Ps1(図3参照)に位置決めされていたクラッチハブスリーブ62を完全同期位置Pg1に位置決めし、クラッチハブスリーブ62のスプライン62sを、シンクロナイザリング165のスプライン165sおよび変速ギヤ53aのクラッチギヤ53gと係合させることにより、ギヤ入れを行う。
以上のように、本実施の形態に係る車両用変速機の制御装置は、例えば第2変速段から第3変速段への切り替えを行うオフアップ条件が成立した場合に、ギヤ入れ位置にある同期機構60を非同期位置Pnに移動させた後、選択された変速ギヤ対53に対応する同期機構59を非同期位置Pnに待機させたまま、選択された変速ギヤ対53を構成する変速ギヤ53aと入力軸42との差分回転数がギヤ入れ判定値α以下となった場合に、選択された変速ギヤ対53に対応する同期機構59を、完全同期位置Pg1に移動させて変速比を切り替えるので、クラッチ機構21を係合させることなく、また、同期機構59によって差分回転数を低下させずに変速比を切り替えることができ、クラッチ機構21に不要な負荷をかけずに同期機構59の耐久性を向上させることができる。
なお、エンジン11が車両の前部に配置されるとともに変速機構50が車両の後部に配置され、エンジン11と入力軸42とがプロペラシャフト39で結合される車両10においては、プロペラシャフト39が長くなり質量が増大するため、プロペラシャフト39および入力軸42の慣性モーメントが大きくなる。このため、同期機構58〜60に同期動作をさせる際の摩擦が増大するとともに、摩擦音も増大する。このような車両10においても、本発明に係る車両用変速機の制御装置は、上記差分回転数がギヤ入れ判定値α以下となった状態でギヤ入れを行うため、摩擦力および摩擦音の増大を抑制することができる。
さらに、後輪駆動で変速機構50が車両10の後部に配置されている車両10においては、駆動輪77L、77Rに変速機構50の荷重がかかり、駆動輪77L、77Rのトラクションが増大する。そのため、同期機構58〜60に同期動作をさせる際に、プロペラシャフト39および入力軸42の慣性モーメントの影響が出力軸57を介して駆動輪77L、77Rに伝達され、変速ショックとして車両10の挙動に現れやすくなる。このような車両10においても、本発明に係る車両用変速機の制御装置は、上記差分回転数がギヤ入れ判定値α以下となった場合に、同期機構58〜60を完全同期位置Pg1または完全同期位置Pg2に移動させるので、変速ショックも抑制することができる。
上述した本発明に係る実施の形態においては、1つのECUを有するものとして説明したが、これに限らず、複数のECUによって構成されるものであってもよい。例えば、エンジン11の出力調節を行うE−ECU、変速機構50における変速段の切り替えを行うT−ECUによって、本実施の形態のECU100が構成されるものであってもよい。この場合に、各ECUは、必要な情報を相互に入出力する。
また、上述した本発明に係る実施の形態においては、炭化水素系の燃料を用いるエンジン11を動力源として採用する車両10について説明したが、これに限らず、車両10は、水素を燃料とするエンジンやモータを動力源として採用することもできる。この場合も上述した車両用変速機の制御装置と同様の効果が得られる。
以上説明したように、本発明に係る車両用変速機の制御装置は、クラッチ機構に不要な負荷をかけずに同期機構の耐久性を向上させることができるという効果を有し、車両用変速機の制御装置等として有用である。
3 アクセルペダル
6 スロットルバルブ
7 セレクトアクチュエータ(移動手段)
8 シフトアクチュエータ(移動手段)
10 車両
11 エンジン
20 自動クラッチ
21 クラッチ機構
40 トランスアクスル
42 入力軸
43〜45 シフトフォーク(移動手段)
50 変速機構
51〜55 変速ギヤ対
51a〜55a 変速ギヤ
51b〜55b 変速ギヤ
57 出力軸
58〜60 同期機構
61〜63 クラッチハブスリーブ
64 シフト・セレクトシャフト(移動手段)
70 ディファレンシャル機構
80 エンジン回転数センサ
81 入力軸回転数センサ
82 スロットルセンサ
83 車速センサ
84 クラッチストロークセンサ
85 アクセルセンサ
86 セレクトストロークセンサ
87 シフトストロークセンサ
88 シフトセンサ
91〜97 センサ
100 ECU(変速ギヤ対選択手段、移動手段、オフアップ条件判定手段)

Claims (1)

  1. 駆動源からの回転動力を入力する入力軸と、前記入力された回転動力を駆動輪に伝達する出力軸と、前記入力軸と前記出力軸との間に設けられ、前記回転動力を設定変速比で変速する常時噛み合う複数の変速ギヤ対と、前記入力軸および前記出力軸のうちいずれか一方の軸と前記複数の変速ギヤ対のうちいずれかの変速ギヤ対との同期を行う複数の同期機構と、を有する変速機構と、
    変速条件に従って前記複数の変速ギヤ対から前記回転動力を伝達する変速ギヤ対を選択する変速ギヤ対選択手段と、
    前記選択された変速ギヤ対と前記一方の軸とが完全同期する完全同期位置と、前記選択された変速ギヤ対と前記一方の軸とを設定された差分回転数まで同期させる同期位置と、前記選択された変速ギヤ対と前記一方の軸とが同期しない非同期位置との間で前記同期機構を移動させる移動手段と、を備え、
    前記移動手段は、前記変速ギヤ対選択手段によって変速ギヤ対が選択された際に、前記同期機構を前記同期位置に待機させた後に前記完全同期位置に移動させる車両用変速機の制御装置において、
    前記動力源の回転動力を増加させずに前記変速比が小さい変速ギヤ対への切り替えを行うオフアップ条件が成立したか否かを判定するオフアップ条件判定手段と、を備え、
    前記移動手段は、前記オフアップ条件が成立した場合に、前記完全同期位置にある同期機構を前記非同期位置に移動させた後、前記変速ギヤ対選択手段に選択された変速ギヤ対に対応する同期機構を前記非同期位置に待機させたまま、前記選択された変速ギヤ対を構成する変速ギヤと前記一方の軸の差分回転数が予め定められた値以下となった場合に、前記選択された変速ギヤ対に対応する同期機構を、前記完全同期位置に移動させて前記変速比を切り替えることを特徴とする車両用変速機の制御装置。
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