JP2013036215A - ノックオフ型ボルト - Google Patents
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Abstract
【課題】想定荷重で確実にせん断破壊し、しかも破断面がボルト軸に対してほぼ直角な面となり、さらには破断までの伸びが小さいノックオフ型ボルトを提供する。
【解決手段】2つの部材を接合し、これらの部材にその接合面と平行な所定大きさ以上の荷重が加わったときにせん断破断するようにしたノックオフ型ボルトであって、ボルト軸部3にボルト頭部4から軸方向に沿って軸穴5を設けることによって、ボルト軸部3を中空とし、この中空部の外周に環状のノッチ部6が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図2
【解決手段】2つの部材を接合し、これらの部材にその接合面と平行な所定大きさ以上の荷重が加わったときにせん断破断するようにしたノックオフ型ボルトであって、ボルト軸部3にボルト頭部4から軸方向に沿って軸穴5を設けることによって、ボルト軸部3を中空とし、この中空部の外周に環状のノッチ部6が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図2
Description
この発明は、ノックオフ型ボルトに関し、より詳細には大地震時等に破断させ、その機能を失わせるボルトに関する。
この出願人は、先に橋梁における支承部を可動化する工法を提案した(特許文献1参照)。図5は、同文献記載の可動化施工を完了した状態を示している。図に示す既設支承は、固定支承の1つであるピン支承50であり、上沓51及び下沓52を備え、両者に形成された半円筒形ボス部にピン53が嵌まっている。下沓52は下部構造54に固定されている。上部構造55のフランジ60の下面には、可動化施工によりステンレス板からなる上部構造側すべりプレート56が取り付けられている。上沓51の上面に設けられたボスは、可動化施工により切断除去され、一部がボス残部57として残されている。上沓51の上面にはボス残部57が嵌まる穴を有する支承側すべりプレート58が載置されている。
支承側すべりプレート58は図6に拡大して示すように、上面に四フッ化エチレン(PTFE)板からなる、すべり材59が設けられている。これにより上部構造側すべりプレート56と支承側すべりプレート58との間で、すなわち上部構造55と既設支承50との間で水平方向全方向にすべりが生じるようになり、常時、レベル1地震時及びレベル2地震時のいずれにおいても支承部が可動化することになる。
上記のように可動化した支承部において、ノックオフ型のセットボルト61を用いて、上部構造55と既設支承50とを固定することにより、支承部をレベル1地震動までは固定、レベル2地震時には可動とすることができる。ノックオフ型セットボルト61は図5に示すように、その軸部62に外径を小さくしたノッチ部63を設けることにより、水平荷重によりせん断破壊するようにしたボルトである。符号64はせん断破壊面を示している。ノックオフ型セットボルト61は、せん断破壊面64が、上部構造側すべりプレート56と支承側すべりプレート58(具体的にはすべり材59)との接する面であるすべり面65近くに位置するように取り付けられる(以上、詳細は特許文献1参照)。
上記から理解されるように、ノックオフ型セットボルト61は、想定荷重でせん断破壊することが求められる。また、破断後にすべりプレート59に引っ掛かることがないように、水平に破断することが求められる。さらには、支承部の形態として、制震デバイスを付加し(特許文献1の段落0032参照)、地震時の水平荷重を制震デバイスで分担する場合は、ボルトの破断後、ただちに制震デバイスが作動することが求められる。そのためには、最大荷重に達した後のボルトの伸びはできる限り小さいことが必要である。
しかし、ボルト軸部外周に単にノッチ部を設けただけの従来のノックオフ型セットボルトは、破断荷重がばらつくことや、破断面がボルト軸に対して直角な平坦面とならず、かえりが出るなどの問題がある。そのため、このボルトが想定以上の破断耐力を示し、固定装置(支承)側を破壊させたり、ボルト破断面がすべり面を傷つけるなどの問題があった。さらには、最大荷重時から破断までの伸びが大きいため、制震デバイスがただちに作動せず、設計の想定と異なってしまうなどの問題があった。
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、想定荷重で確実にせん断破壊し、しかも破断面がボルト軸に対してほぼ直角な面となり、さらには破断までの伸びが小さいノックオフ型ボルトを提供することにある。
この発明の目的は、想定荷重で確実にせん断破壊し、しかも破断面がボルト軸に対してほぼ直角な面となり、さらには破断までの伸びが小さいノックオフ型ボルトを提供することにある。
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、2つの部材を接合し、これらの部材にその接合面とほぼ平行な想定荷重が加わったときにせん断破断するようにしたボルトであって、
ボルト軸部を中空とし、この中空部の外周に環状のノッチ部が設けられていることを特徴とするノックオフ型ボルトにある。
すなわち、この発明は、2つの部材を接合し、これらの部材にその接合面とほぼ平行な想定荷重が加わったときにせん断破断するようにしたボルトであって、
ボルト軸部を中空とし、この中空部の外周に環状のノッチ部が設けられていることを特徴とするノックオフ型ボルトにある。
より具体的には、前記中空部はボルト軸部にボルト頭部から軸方向に沿って軸穴を設けることによって形成されている。
上記ノックオフ型ボルトにおいて、前記ノッチ部を含む軸部断面の断面欠損率は40%以上であることが望ましい。上記ノックオフ型ボルトは、橋梁の可動支承部において、上面に支承側すべりプレートが設けられた支承と、下面に上部構造側すべりプレートが設けられた上部構造とを接合するためのセットボルトとして適用される。
この発明のノックオフ型ボルトによれば、想定荷重で確実にせん断破壊させることができる。また、破断面をボルト軸に対してほぼ直角な面とすることができ、さらには破断までの伸びを小さくすることができる。したがって、このノックオフ型ボルトを橋梁の可動支承部において、上面に支承側すべりプレートが設けられた支承と、下面に上部構造側すべりプレートが設けられた上部構造とを接合するためのセットボルトとして適用した場合には、ボルト破断後にすべり面を傷つけることがなく、また制震デバイスをただちに作動させることができる。
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1,図2に示すように、ノックオフ型ボルト1は、一般のボルトとの共通点として、雄ねじ2を有する軸部3と、軸部3の雄ねじ2と反対側の端部に設けられた頭部4とからなる。
この発明によるノックオフ型ボルト1は、軸部3にボルト頭部4から軸方向に沿って軸穴5が設けられている。すなわち、軸部3は中空部を有している。この軸穴5の断面形状は図示では円形であるが、多角形や楕円形としてもよい。しかし、加工しやすさの観点からは円形が望ましい。この軸穴5の外周に環状の溝であるノッチ部6が形成されている。ノッチ部6の形成位置は、破断面となる位置である。したがって、軸穴5は、破断面となる位置よりも幾分か下方に達する深さのものでよい。
ノッチ部6は、図3に示すように種々の断面形状をとることができる。(イ)は溝断面をV字形としたもの、(ロ)は溝断面の入口部を等幅とし、奥部をV字形としたもの、(ハ)は溝断面をコ字形としたもの、(ニ)は溝断面をU字形としたもの、(ホ)は溝断面を半椀形状としたものである。
図4は、従来のノックオフ型ボルト(以下、従来ボルト)(イ)と、この発明によるノックオフ型ボルト(以下、本発明ボルト)(ロ)の破断面を示している。単にボルト軸部にノッチ部のみを形成した従来ボルトは、荷重作用方向前方側に大きな引っ張り応力が作用しており、これが塑性変形時に、かえりRとなって破断面を形成してしまう。これに対し、ボルト軸部を中空としてノッチ部を設けた本発明ボルトは、曲げ剛性が増加し、引っ張り応力が減少することでせん断破壊が一気に進むこととなり、破断面がボルト軸部に対して直角な面となる。
また、有限要素解析結果によれば、破断面の起点になる応力集中箇所が、従来ボルトではノッチ部周辺に分散してしまうが、本発明ボルトでは応力がノッチ部先端に集中しており、ノッチ部の形成部分のボルト軸部を中空とすることによって確実に破断荷重を破断面に作用させることが可能となっている。
さらに、従来ボルトと本発明ボルト対し破断実験を行ったところ、以下のような結果が得られた。この破断実験は、ボルト径、ノッチ部形状、ノッチ部加工後の断面欠損率、強度区分をパラメータとして、最大耐力、破断耐力、変位量を計測した。
<最大耐力>
最大耐力のばらつきは、従来ボルトが平均値に対し98%〜103%であるのに対し、本発明ボルトは99%〜101%であり、ばらつきがほとんどなかった。
最大耐力のばらつきは、従来ボルトが平均値に対し98%〜103%であるのに対し、本発明ボルトは99%〜101%であり、ばらつきがほとんどなかった。
<変位量>
最大荷重時から破断までの変位量は、従来ボルトに対し本発明ボルトは54%以下で、早期に破断した。さらに、試験体の破断面を観察したところ、従来ボルトに比べ本発明ボルトは、かえりがほとんどなかった(図4参照)。これは先の解析と同様の結果であった。
最大荷重時から破断までの変位量は、従来ボルトに対し本発明ボルトは54%以下で、早期に破断した。さらに、試験体の破断面を観察したところ、従来ボルトに比べ本発明ボルトは、かえりがほとんどなかった(図4参照)。これは先の解析と同様の結果であった。
<断面欠損率>
実験の結果より、ボルト軸部を中空とする場合の断面欠損率は40%以上とすることにより、かえりがなく、また最大耐力にばらつきがなく破断することが判明した。断面欠損率が40%に満たない場合は、荷重作用方向前方側に約1mm程度のかえりが残り、最大耐力のばらつき±2%程度であった。これは、かえりの出かたが、最大耐力にばらつきが生じる原因となっているものと考えられる。同様に、断面欠損率が40%に満たない場合は、最大荷重時から破断までの変位も0.45mm生じ、断面欠損率が60%の試験体に対し約6倍であった。
実験の結果より、ボルト軸部を中空とする場合の断面欠損率は40%以上とすることにより、かえりがなく、また最大耐力にばらつきがなく破断することが判明した。断面欠損率が40%に満たない場合は、荷重作用方向前方側に約1mm程度のかえりが残り、最大耐力のばらつき±2%程度であった。これは、かえりの出かたが、最大耐力にばらつきが生じる原因となっているものと考えられる。同様に、断面欠損率が40%に満たない場合は、最大荷重時から破断までの変位も0.45mm生じ、断面欠損率が60%の試験体に対し約6倍であった。
<強度区分>
JIS規格の強度区分が10.9及び8.8のボルトでは、最大耐力、変位量、断面欠損率に関し上述の結果が得られたが、強度区分4.6のボルトでは本発明ボルトであっても±3%以上の最大耐力のばらつきが生じ、最大荷重時からの伸びも2mm〜3mmと大きくなった。このため強度区分によっては本発明の適用は難しいと考えられる。
JIS規格の強度区分が10.9及び8.8のボルトでは、最大耐力、変位量、断面欠損率に関し上述の結果が得られたが、強度区分4.6のボルトでは本発明ボルトであっても±3%以上の最大耐力のばらつきが生じ、最大荷重時からの伸びも2mm〜3mmと大きくなった。このため強度区分によっては本発明の適用は難しいと考えられる。
上記本発明ボルトは、図5,図6に示した橋梁の可動支承部(既設支承を利用して可動化した支承部でもよいし、新設の支承を用いた支承部でもよい)おいて、上面に支承側すべりプレートが設けられた支承と、下面に上部構造側すべりプレートが設けられた上部構造とを接合するセットボルトとして適用される。この場合、本発明ボルトによれば、破断面がボルト軸に対して直角な面となるので、破断後にすべり面を傷つけることがない。また、破断までの変位量が小さいので、制震デバイスをただちに作動させることができる。
本発明ボルトは、特に橋梁において上部構造と支承とを接合するために開発されたものであるが、適用範囲はこれに限るものではない。
1 ノックオフ型ボルト
3 軸部
5 軸穴(中空部)
6 ノッチ部
50 既設支承
54 下部構造
55 上部構造
56 上部構造側すべりプレート
58 下部構造側すべりプレート
3 軸部
5 軸穴(中空部)
6 ノッチ部
50 既設支承
54 下部構造
55 上部構造
56 上部構造側すべりプレート
58 下部構造側すべりプレート
Claims (4)
- 2つの部材を接合し、これらの部材にその接合面とほぼ平行な想定荷重が加わったときにせん断破断するようにしたボルトであって、
ボルト軸部を中空とし、この中空部の外周に環状のノッチ部が設けられていることを特徴とするノックオフ型ボルト。 - 前記中空部はボルト軸部にボルト頭部から軸方向に沿って軸穴を設けることによって形成されていることを特徴とする請求項1記載のノックオフ型ボルト。
- 前記ノッチ部を含む軸部断面の断面欠損率は40%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のノックオフ型ボルト。
- 橋梁の可動支承部において、上面に支承側すべりプレートが設けられた支承と、下面に上部構造側すべりプレートが設けられた上部構造とを接合するためのセットボルトとして適用されることを特徴とする請求項1,2又は3記載のノックオフ型ボルト。
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2011
- 2011-08-08 JP JP2011172505A patent/JP2013036215A/ja active Pending
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