JP2013032561A - 金属アルコキシド含有組成物およびこれを用いた表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属アルコキシド(A)とアルコール(B)と酢酸(C)を含有し、金属アルコキシド(A)のアルコキシ基が、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、およびノルマルブトキシ基からなる群から選ばれる1種以上であり、金属アルコキシド(A)の含有量を1質量部とするときの酢酸(C)の含有量の比が0.05〜0.20質量部であり、金属アルコキシド含有組成物における金属アルコキシド(A)の固形分濃度が2.5〜3.5質量%であることを特徴とする金属アルコキシド含有組成物。
【選択図】 なし
Description
かかる酸化金属膜の形成方法として、例えば化成処理、電着塗装、めっき処理等が用いられるが、これらの方法は、大規模な装置を使用する、工程が長い等の問題がある。
しかしながらこの方法で、防錆効果を発揮するような緻密な酸化金属膜を形成するためには、200℃以上で数時間の熱処理を行う必要があり、生産性が良くない。
この方法は、化成処理、電着塗装、めっき処理等のように大規模な装置を必要とせず、短時間で酸化チタン膜を形成することができるが、本発明者等の知見によれば、この方法では、良好な防錆効果を発揮する酸化チタン膜は得られない。
本発明の基材の表面処理方法によれば、基材表面に良好な防錆性を付与することができる。
本発明の金属アルコキシド含有組成物は、金属アルコキシド(A)とアルコール(B)と酢酸(C)を含有する。
[金属アルコキシド(A)]
金属アルコキシド(A)は下記一般式(I)で表すことができる。
M(OR)n…(I)
式中Mは金属元素、Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数である。
金属アルコキシド(A)のアルコキシ基(OR)は、良好な成膜性と良好な防錆効果が得られやすい点から、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、およびノルマルブトキシ基からなる群から選ばれる1種以上である。金属アルコキシド(A)の一分子中にアルコキシ基(OR)が2個以上存在する場合、それらは互いに同じでもよく、異なってもよい。互いに同じであることが好ましい。
金属アルコキシド(A)は市販品から入手可能である。金属アルコキシド含有組成物を調製する際に、金属アルコキシド(A)のアルコール溶液を用いてもよい。
金属アルコキシド含有組成物中の金属アルコキシド(A)の濃度(固形分濃度)は2.5〜3.5質量%であり、2.7〜3.0質量%が好ましい。金属アルコキシド(A)の濃度が上記範囲の下限値以上であると、良好な成膜性が得られやすい。上記範囲の上限値を超えると、活性エネルギー線を照射して硬化させる前に白化を生じるなど、良好な膜が得られないおそれがある。かかる白化が生じるのは、金属アルコキシド(A)と空気中の水分との加水分解反応速度が大きくなるためと考えられる。
金属アルコキシド含有組成物は、溶媒としてアルコール(B)を含む。アルコール(B)は、金属アルコキシド(A)を溶解できれば良く、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;クレゾール等のフェノール系溶媒;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系溶媒などが挙げられ、これらの中から1種でも2種以上併用してもよい。特に金属アルコキシド(A)の溶解性と成膜性に優れる点でノルマルブタノールとイソプロパノールとの混合溶媒が好ましい。
ノルマルブタノールとイソプロパノールとの混合溶媒において、ノルマルブタノール:イソプロパノールの質量比は、9:1〜1:9が好ましく、6.5:3.5〜7.5:2.5がより好ましい。この範囲であると、金属アルコキシド(A)の加水分解反応を抑えつつ、良好な成膜性が得られやすい。
金属アルコキシド含有組成物は、水は含まないことが好ましい。
金属アルコキシド含有組成物に酢酸を含有させることにより、後述の実施例に示されるように良好な防錆効果を発揮する膜が得られる。
また、被膜を形成する際に活性エネルギー線が照射されると、酢酸は揮発して膜中から除去されやすい点で好ましい。これに対して、例えば、塩酸や硫酸等の無機酸は膜中に残りやすく、これらが膜中に残存すると、膜と接している金属基材の腐食の原因となるため好ましくない。また蟻酸やプロピオン酸は成膜反応が遅い点で好ましくなく、ジカルボン酸は水溶性なので本発明に適さない。
したがって本発明では、酸として酢酸のみを用いることが好ましい。
金属アルコキシド含有組成物において、金属アルコキシド(A)の含有量を1質量部とするときの酢酸(C)の含有量の比は0.05〜0.20質量部であり、0.06〜0.18質量部が好ましい。酢酸(C)の含有量が上記範囲の下限値以上であると、酢酸の添加効果が十分に得られやすい。上記範囲の上限値よりも大きいと、金属アルコキシド含有組成物が不安定になって白濁等を生じやすくなる。かかる白濁が生じるのは、金属アルコキシド含有組成物中の金属アルコキシド(A)と空気中の水分との加水分解反応速度が大きくなるためと考えられる。
金属アルコキシド含有組成物を製造する方法は、まず、金属アルコキシド(A)をアルコール(B)に溶解させ、これらの混合液に酢酸(C)を加えて均一に混合して、目的の金属アルコキシド含有組成物法を得る方法が好ましい。
本発明の表面処理方法は、基材上に、本発明の金属アルコキシド含有組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射して被膜を形成する工程を有する。
好ましくは、基材上に、金属アルコキシド含有組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射する前に、加熱して予備乾燥を行う。
金属基材の材質としてはアルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、鋼等の金属またはこれらの合金が挙げられる。これらのうちでも、軽量性の観点からアルミニウム基材またはマグネシウム基材がより好適である。
本発明の表面処理方法は、ガラス基材にも適用することができ、干渉膜による意匠性、または防汚性を付与することができる。
また本発明の表面処理方法は、ポリエチレンテレフレートフィルム等のプラスチック基材にも適用することができ、プライマー効果が得られる。
活性エネルギー線として、紫外線、電子線、ガンマ線などを使用できる。簡便である点で紫外線が好ましい。紫外線の照射条件は、例えば2.0〜15J/cm2(日本電池社)製「UVR−N1」による測定値)の光量で3.0〜60.0秒間程度照射することが好ましい。紫外線の照射装置としては、フュージョンランプ(HバルブまたはDバルブ)、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
活性エネルギー線を照射した後の被膜の厚さは特に限定されないが、15〜20μm程度が好ましい。
一般に、有機酸は金属アルコキシドの加水分解反応の触媒として作用することが知られているが、本発明者等の知見によれば、本発明において酢酸の代わりに酢酸以外の有機酸や無機酸を用いた場合、膜は形成されるが十分な防錆効果が得られない。このことから、本発明における金属アルコキシド(A)の成膜反応は、一般的に想定される金属アルコキシドの加水分解反応ではなく、金属アルコキシド(A)の金属に配位した酢酸と、活性エネルギー線により発生したオゾンのラジカル成分とが、金属アルコキシド(A)の成膜反応に関与していると推定される。
以下の例で使用した各成分は以下の通りである。
[金属アルコキシド(A)]
TA−10:マツモトファインケミカル社製、チタンテトライソプロポキシド、固形分99質量%。
TA−25:マツモトファインケミカル社製、チタンテトラノルマルブトキシド、固形分99質量%。
TA−30(比較例):マツモトファインケミカル社製、チタンテトラ2−エチルヘキソキシド、固形分99質量%。
ZA−45:マツモトファインケミカル社製、ジルコニウテトラノルマルプロポキシド、固形分75質量%、1−プロパノール溶液。
ZA−65:マツモトファインケミカル社製、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、固形分85質量%、1−ブタノール溶液。
アルコール(B1):ノルマルブタノール70質量部とイソプロパノール30質量部の混合溶液。
[酢酸(C)]
酢酸溶液(C1):1規定に調製した酢酸のイソプロパノール溶液。
表1に示す配合で金属アルコキシド含有組成物を製造した。
すなわち、金属アルコキシド(A)としてチタンテトライソプロポキシド(前記TA−25)の3.0質量部(固形分量2.97質量部、溶媒量0.03質量部)を、アルコール(B1)の100質量部に加えて均一に攪拌し混合した。その混合液に酢酸溶液(C1)2.5質量部(酢酸を0.177g含む)を加え、攪拌して均一に混合し、金属アルコキシド含有組成物(X1)を得た。
金属アルコキシド含有組成物(X1)における、酢酸と金属アルコキシドの含有量の質量比(酢酸/金属アルコキシド)、および金属アルコキシドの固形分濃度を表1に示す。
すなわち、基材上に金属アルコキシド含有組成物をスプレー法で塗布し、100℃×3分間の条件で予備乾燥させた後、直ちに、高圧水銀灯により10J/cm2(日本電池社製、UVR−N1による測定値)の紫外線を60秒間照射して、被膜(厚さ1μm)を形成した。
それぞれの基材上に形成した被膜について、下記の方法で初期外観と防錆効果を評価した。結果を表3に示す。
予備乾燥後、紫外線照射前の膜を目視で観察し、下記の基準で初期外観を評価した。
○:透明で白化は見られない。
×:白化が見られる。
スガ試験機社製の塩水噴霧試験装置を用い、紫外線照射後の被膜に対して、濃度5.0質量%の塩化ナトリウム水溶液を700時間噴霧した。
(2−1)塩水噴霧後の外観
700時間後、被膜を100マスになるようにカッターナイフでクロスカットし、カット面からのアルミニウムの溶出の有無を観察した。
○:溶出なし。
×:溶出が見られる。
(2−2)塩水噴霧後の密着性
700時間後、被膜を100マスになるようにカッターナイフでクロスカットした被膜にセロテープ(登録商標)を貼り付けて垂直方向にひき剥がし、被膜の剥がれ具合を下記の基準で評価した。
○:剥がれ無し。
×:剥がれが生じた。
配合を表1、2に示すとおりに変更したほかは例1と同様にして、金属アルコキシド含有組成物(X2)〜(X14)を製造し、例1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
例9〜14は比較例である。
これに対して、酢酸溶液(C1)を含有させなかった例9、10は、成膜できたものの、得られた被膜の防錆効果が不十分であった。
酢酸/金属アルコキシドの質量比が大きい例11は、金属アルコキシド含有組成物が白濁したため、被膜の形成は行わなかった。
金属アルコキシドの固形分濃度が低い例12は、被膜が形成されなかった。
金属アルコキシドの固形分濃度が高い例13は、予備乾燥後に膜に白化が見られたため、被膜の防錆効果の評価は行わなかった。
金属アルコキシド(A)のアルコキシ基が2−エチルヘキシル基である例14は、被膜が形成されなかった。
例4において、アルミニウム基材上に形成した被膜について、蛍光エックス線分析装置(島津製作所社製、型番:EDX700HS)を用いて蛍光エックス線分析を行った。得られた蛍光エックス線スペクトルを図1、2に示す。図1はTi〜Uのスペクトルであり、図2はNa〜Scのスペクトルである。これらのスペクトルのピークリストを表4に示す。
[参考分析例1]
参考分析例として、例4において被膜を形成する前のアルミニウム基材について、上記分析例1と同様にして蛍光エックス線分析を行った。
得られた蛍光エックス線スペクトルを図3、4に示す。図3はTi〜Uのスペクトルであり、図4はNa〜Scのスペクトルである。これらのスペクトルのピークリストを表5に示す。
Claims (2)
- 被膜の形成に用いられる金属アルコキシド含有組成物であって、
金属アルコキシド(A)とアルコール(B)と酢酸(C)を含有し、
金属アルコキシド(A)のアルコキシ基が、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、およびノルマルブトキシ基からなる群から選ばれる1種以上であり、
金属アルコキシド(A)の含有量を1質量部とするときの酢酸(C)の含有量の比が0.05〜0.20質量部であり、金属アルコキシド含有組成物における金属アルコキシド(A)の固形分濃度が2.5〜3.5質量%であることを特徴とする金属アルコキシド含有組成物。 - 基材上に、請求項1に記載の金属アルコキシド含有組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射して被膜を形成する工程を有する、表面処理方法。
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