JP2013032438A - シール材 - Google Patents

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Abstract

【課題】600℃を超える温度領域であっても優れた弾性を有するシール材を提供する。
【解決手段】600℃における復元率が25%以上であるナノシートを含有するシール材。
【選択図】なし

Description

本発明は、シール材に関する。さらに詳しくは、600℃を超えるような高温に曝される配管フランジ等に使用できるシール材に関する。
各種産業の配管フランジ等には、ガスケットやパッキン等のシール材が使用されている。配管は熱膨張等により伸縮するため、シール材には配管の伸縮に追従するための弾性が要求されている。
シール材には、用途や使用条件等により様々な材料が使用されている。例えば、高温領域で使用されるシール材として、膨張黒鉛からなるシール材が知られている(例えば、特許文献1参照)。膨張黒鉛からなるシール材は、十分な弾性を有し、かつ耐熱性に優れている。しかしながら、膨張黒鉛は酸素存在下で500℃を超える温度領域において、膨脹黒鉛の酸化消失が促進されるため、長期に亘る安定したシール性を維持することが困難であった。
また、バーミキュライトよりなるシール材も知られている(例えば、特許文献2参照)。バーミキュライトを使用したシール材は、弾性を有するものの、膨張黒鉛と比べて弾性が低く、また、600℃を超える温度では、構造水の消失や焼結により弾性が失われるという問題があった。
特開平06−101763号公報 特表2008−527101号公報
本発明の目的は、600℃を超える温度領域であっても優れた弾性を有するシール材を提供することである。
本発明者らは、ナノシートと呼ばれる無機薄膜からシール材を作製することにより、高温においても優れた弾性を有するシール材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下のシール材が提供される。
1.600℃における復元率が25%以上であるナノシートを含有するシール材。
2.前記ナノシートの厚さと面方向の長さが、下記式(1)を満たす1に記載のシール材。
(d/t)≧2500 (1)
[式中、dはナノシートの面方向の長さであり、tはナノシートの厚さである。]
3.前記ナノシートの弾性率が、30GPa以上である1又は2に記載のシール材。
4.前記ナノシートが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、カルシア、マグネシア及びチタニアから選択される1種又は2種類以上の酸化物からなる1〜3のいずれかに記載のシール材。
5.前記ナノシートが、アルミナ、シリカ又はこれらの混合酸化物からなる4に記載のシール材。
6.前記ナノシートが、アルミナとシリカの混合酸化物であり、アルミニウム元素とケイ素元素のモル比(Al:Si)が、99:1〜1:99である5に記載のシール材。
7.前記ナノシートが結晶化されている6に記載のシール材。
本発明によれば、高温においても優れた弾性を有するシール材を提供できる。
実施例1で作製したナノシートの電子顕微鏡写真である。 実施例1で作製したナノシートの断面の電子顕微鏡写真である。 実施例1、7、8で作製したナノシートのX線回折チャートである。 実施例5で作製したナノシートの電子顕微鏡写真である。 実施例5で作製したナノシートの断面の電子顕微鏡写真である。
本発明のシール材は、600℃における復元率が25%以上であるナノシートを含有することを特徴とする。ナノシートとは、厚さがナノメートルオーダーであるシート状物で、その面方向の長さが厚さの数十倍から数百倍以上という高い異方性を持つ2次元物質である。本発明は、ナノシートを使用して作製したシール材が、高温においても優れた弾性を有することを見出したものである。
本願において復元率は、ナノシートを所定の密度となるように円筒状の測定金型内に充填した時の厚さ(初期厚さ)と、所定の厚さ(負荷厚さ)に圧縮されるまで負荷をかけた後、負荷を除いて負荷が無くなった時の厚さ(回復厚さ)から、下記式により求めた値を意味する。
復元率(%)=100×(回復厚さ−負荷厚さ)/(初期厚さ−負荷厚さ)
具体的には以下のとおりである。
外径50mm、内径25.5mmの円筒状金型に、測定試料であるナノシートを初期厚さ1.0mm、密度1.0g/cmになるように充填する。尚、金型の材質はインコネル625である。
次に、金型をサーボパルサー(株式会社島津製作所製)の圧縮板上に配置し、試験温度まで加熱し、約30分保持する。保持後、測定試料に加圧速度3.3KN/minで加圧して圧縮した。試料の厚さが0.7mmとなった時点で加圧を止め、その直後から、加圧速度と同速度で除圧した。サーボパルサーによる加圧が0となったときの試料の厚さ(t:mm)を測定し、以下の式より復元率を求めた。
復元率(%)=(t×100)/0.3
上記の方法で測定した復元率について、膨張黒鉛の復元率は常温(25℃)において33%である。本発明で使用するナノシートは、600℃というきわめて高い温度においても、復元率が25%以上あり、膨張黒鉛と同程度がそれ以上の復元率を有する。
本発明で使用するナノシートは、例えば、ナノシートの厚さと面方向の長さが下記式(1)を満たすことにより得ることができる。
(d/t)≧2500 (1)
[式中、dはナノシートの面方向の長さであり、tはナノシートの厚さである。]
上記の式は、直方体の曲げたわみ量より導いたものである。即ち、直方体の最大曲げたわみ量は下記式(2)で表わされる。
δ=PL/48EI・・・・(2)
[P:荷重、L:支点間距離、E:弾性率、I:断面2次モーメント]
ここで断面2次モーメントは、下記式(3)で表わされる。
I=dt/12・・・(3)
[d:直方体の幅、t:直方体の厚さ]
ナノシートの面方向の長さをd、厚さをtに置き換え、支点間距離をdと規定して、式(3)を式(2)に代入すると、下記式(4)が得られる。
σ=Pd/4Et・・・(4)
式(4)から、d/tが大きいほど、曲げたわみ量が大きく、ナノシートが割れにくくなるため、高い弾性を示すことがわかる。d/tが2500以上であれば、膨張黒鉛と同等以上の復元率を示す。好ましくは3000以上である。
尚、d/tが大きくなるほど、ナノシートの弾性がより大きくなるため、d/tの上限は特に規定しない。ナノシートの製造費用等を考慮して適宜設定すればよい。
ナノシートの面方向の長さは、シートの面方向の長径を示し、レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製)で測定したメディアン径(D50)の値である。厚さは、ナノシートの厚み部分の長さを示し、電解放射型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により10点測定し、その平均値を示したものである。
ナノシートの厚さと面方向の長さは、例えば、ゾル−ゲルでナノシートを作製する場合、原料溶液の原料濃度や粘度を調製することにより制御できる。
上記式(1)の関係から、厚さ(t)は薄いほどよく、面方向の長さ(d)は大きいほどよい。しかしながら、ナノシートの製造容易性から、ナノシートの厚さは10nm〜1000nmが好ましく、面方向の長さは5μm〜1000μmが好ましい。特に、ゾル−ゲル法でナノシートを作製する場合、生産性を考慮するとナノシートの厚さは100nm以上であることが好ましく、上限は1000nm以下、(さらに、好ましくは800nm以下、特に好ましくは400nm以下、最も好ましくは200nm以下)が好ましい。
本発明で使用するナノシートは、その弾性率が30GPa以上であることが好ましく、特に、100GPa以上あることが好ましい。弾性率が30GPa以上であれば、シール材に成形した後の弾性復元率がより大きくなる。尚、弾性率の上限は特に規定しないが、無機酸化物の理論値である。
ナノシートの弾性率は、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス製)を使い、押し込み荷重制御モードで10点測定した平均値である。
本発明で使用するナノシートは、ゾル−ゲル法、スパッタ法、CVD、PVD法等、公知の方法で作製できる。具体的には、以下の文献を参照できる。
・「金属アルコキシドからの化学量論組成ムライト超微粉体の合成」
鈴木久男 他,日本セラミックス協会学術論文誌,96,67-73,(1988)
・「Robust free-standing nanomembranes of organic/inorganic
interpenetrating networks」Richard Vendamme, et al., Nature Materials, 5, 494-501(2006)
・特開2008−31010
・特開2004−224623
・特開2007−230797
・WO2003−095193
本発明のシール材は、上述したナノシートを公知の方法により加工、成形することにより製造できる。例えば、ナノシートを水中に分散させ、これに有機バインダーや無機バインダー等を混合したものを、抄造法等の湿式法によりシート状に加工することで作製できる。
シール材の厚さは、用途等により適宜設定することができるが、通常0.5〜3.0mmである。
シール材全体におけるナノシートの含有率は、90重量%以上であることが好ましく、さらに、95重量%以上であることが好ましい。特に、各種バインダー等、成形に必要な添加剤を除き、実質的にナノシートのみからなることが好ましい。シール材におけるナノシートの含有率が高いほど、ナノシートに起因する弾性復元率の向上が大きくなる。
但し、使用温度や用途によっては、上述したナノシート以外に、公知のシール材成分、例えば、バーミキュライトや膨張黒鉛等を配合してもよい。
本発明ではナノシートが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、カルシア、マグネシア及びチタニアから選択される1種又は2種類以上の酸化物からなることが好ましい。特に、アルミナ、シリカ又はこれらの混合酸化物からなることが好ましく、なかでも、アルミナとシリカの混合酸化物が好ましい。アルミナとシリカの混合酸化物としては、ムライト等が挙げられる。
上記の酸化物からなるナノシートは、600℃を超える温度において、膨張黒鉛よりもはるかに高い復元率を有する。従って、優れた弾性復元率を有するシール材が得られる。特に、アルミナとシリカの混合酸化物からなるナノシートからなるシール材は、800℃以上の高温下でも優れた弾性を維持できる。
アルミナとシリカの混合酸化物では、アルミニウム元素とケイ素元素のモル比(Al:Si)が99:1〜1:99であることが好ましく、特に、2.5:1〜4:1であることが好ましい。
アルミニウム元素とケイ素元素のモル比は、ナノシート作製時における原料酸化物の配合比を調製することにより制御できる。
ナノシートが、アルミナとシリカの混合酸化物の場合、結晶化していることが好ましい。結晶化していることにより、ナノシート間の焼結性が低下するため、シール材を高温で使用した際の復元率の低下を抑制できる。
このナノシートは、加熱処理することにより結晶化できる。例えば、1100〜1300℃程度で、6時間以上処理すればよい。結晶化しているかは、X線回折測定により確認することができる。
尚、結晶化の程度は特に限定しないが、例えば、粉末X線回折装置(株式会社リガク製)で測定したX線回折チャートより計算した結晶化度が10%以上であることが好ましく、さらに20%以上であることが好ましく、特に30%以上であることが好ましい。
実施例1
(1)アルミナとシリカの混合酸化物(ムライト)ナノシートの作製
(a)ムライト溶液の調製
Si源として、テトラエチルオルトシリケート[Si(OC](TEOS)を使用した。TEOS 23.4ml、エタノール 72.1ml、塩酸 3ml、及び水 0.86mlを混合し、70℃で50時間還流して、TEOS部分加水分解液を得た。
また、Al源としてアルミニウムイソプロポキシド[Al(OC](AIP)を使用した。AIP 62.5gをイソブタノール 239.6mlに投入し、95℃で6時間還流して、Alアルコキシド溶液を得た。
Alアルコキシド溶液を遠心分離した後、上記のTEOS部分加水分解液を混合し、100℃で24時間撹拌した。
得られた混合液に、水をAl元素1モル当たり4.5モル、分散剤(p−トルエンスルホン酸一水和物)をAl元素1モル当たり0.5モルとなるように加え、100℃で12時間撹拌し、ムライト溶液を得た(Al:Si=3:1(モル比))。
(b)ムライトナノシートの作製
ステンレス(SUS)板をポリビニルアルコール(PVA)溶液(10wt%水溶液)に浸漬し、引き上げることにより、PVA被膜を有するSUS板を作製した。
次に、PVA被膜を有するSUS板を上記(a)で調製したムライト溶液に浸漬し、引き上げることにより、PVA被膜上にムライト被膜が積層したSUS板を作製した。
ムライト被膜を有するSUS板を水に浸漬することにより、SUS板からムライト膜を剥離させた。水にムライト膜が浮遊している状態のまま凍結させた後、凍結乾燥法により乾燥させたムライト膜を、さらに、1100℃で6時間焼成することによりムライトナノシートを得た。
得られたナノシートの電子顕微鏡写真を図1a、図1bに示す。図1aはナノシートの平面写真であり、図1bはナノシートの断面の写真である。
このナノシートの厚さ(t)は150nm、面方向の長さ(d)は130μmであった。d/tは5×10であった。
また、結晶化度を粉末X線回折装置により測定した結果、36%であった。このナノシートのX線回折チャートを図2に示す。図2中、線Aが本実施例のチャートである。線Cは結晶化していない状態のX線回折チャートである。
弾性率は120GPaであった。
また、ナノシートの復元率を測定した結果、測定温度400℃で84%、測定温度600℃で92%、測定温度800℃で59%であった。
測定結果を表1に示す。
・測定方法
(1)ナノシートの面方向の長さ(d)及び厚さ(t)
ナノシートの面方向の長さ[メディアン径(D50)]は、レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製)で測定した。厚さは、電解放射型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により10点測定し、その平均値とした。
(2)復元率
外径50mm、内径25.5mmの円筒状金型に、測定試料であるナノシートを初期厚さ1.0mm、密度1.0g/cmになるように充填した。尚、金型の材質はインコネル625である。
次に、金型をサーボパルサー(株式会社島津製作所製)の圧縮板上に配置し、試験温度まで加熱し、約30分保持する。保持後、測定試料に加圧速度3.3KN/minで加圧して圧縮した。試料の厚さが0.7mmとなった時点で加圧を止め、その直後から、加圧速度と同速度で除圧した。サーボパルサーによる加圧が0となったときの試料の厚さ(t:mm)を測定し、以下の式より復元率を求めた。
復元率(%)=(t×100)/0.3
(3)結晶化度
粉末X線回折装置(株式会社リガク製)で測定したX線回折チャートより計算した。
(4)弾性率
超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス製)を使い、押し込み荷重制御モードで10点測定した平均値とした。
実施例2〜4
表1に記載のムライトナノシートを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例5
(1)シリカナノシートの作製
(a)シリカ溶液の調製
Si源として、エチルシリケート加水分解液(HAS6、コルコート株式会社製)を使用した。HAS6 50g、エタノール50gを混合し、室温で12時間攪拌して、シリカ溶液を得た。
(b)シリカナノシートの作製
ステンレス(SUS)板をポリビニルアルコール(PVA)溶液(10wt%水溶液)に浸漬し、引き上げることにより、PVA被膜を有するSUS板を作製した。
次に、PVA被膜を有するSUS板を上記(a)で調製したシリカ溶液に浸漬し、引き上げることにより、PVA被膜上にシリカ被膜が積層したSUS板を作製した。
シリカ被膜を有するSUS板を水に浸漬することにより、SUS板からシリカ膜を剥離させた。水にシリカ膜が浮遊している溶液から減圧濾過によりシリカ膜を取り出した後、800℃で1時間焼成することによりシリカナノシートを得た。
得られたナノシートについて、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
得られたナノシートの電子顕微鏡写真を図3a、図3bに示す。図3aはナノシートの平面写真であり、図3bはナノシートの断面の写真である。
実施例6
ムライト溶液のAlとSi成分比を変更した他は、実施例1と同様にしてムライトナノシートを作製し、評価した。
実施例7
焼成温度を1300℃とした他は、実施例1と同様にしてムライトナノシートを作製し、シール材を得た。結果を表1に示す。
このナノシートのX線回折チャートを図2に示す。図2中、線Bが本実施例のチャートである。
実施例8
焼成温度を900℃とした他は、実施例1と同様にしてムライトナノシートを作製し、シール材を得た。結果を表1に示す。
このナノシートのX線回折チャートを図2に示す。図2中、線Cが本実施例のチャートである。
比較例1
膨張黒鉛からなるシート材(SGLカーボン社製、C−foil:厚さ1.0mm、密度1.0g/cm)について、復元率を測定した。結果を表1に示す。
比較例2
バーミキュライト(フレキシタリック社製 サーミキュライト#866)について、乳鉢で粉砕したものの復元率を測定した。結果を表1に示す。
比較例3
作製したムライトナノシートを乳鉢で粉砕した他は、実施例1と同様にしてムライトナノシートを作製し、評価した。結果を表1に示す。
本発明のシール材は、各種産業、自動車の排気管等、各種配管のシール材、例えば、ガスケット、パッキン等に使用できる。

Claims (7)

  1. 600℃における復元率が25%以上であるナノシートを含有するシール材。
  2. 前記ナノシートの厚さと面方向の長さが、下記式(1)を満たす請求項1に記載のシール材。
    (d/t)≧2500 (1)
    [式中、dはナノシートの面方向の長さであり、tはナノシートの厚さである。]
  3. 前記ナノシートの弾性率が、30GPa以上である請求項1又は2に記載のシール材。
  4. 前記ナノシートが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、カルシア、マグネシア及びチタニアから選択される1種又は2種類以上の酸化物からなる請求項1〜3のいずれかに記載のシール材。
  5. 前記ナノシートが、アルミナ、シリカ又はこれらの混合酸化物からなる請求項4に記載のシール材。
  6. 前記ナノシートが、アルミナとシリカの混合酸化物であり、アルミニウム元素とケイ素元素のモル比(Al:Si)が、99:1〜1:99である請求項5に記載のシール材。
  7. 前記ナノシートが結晶化されている請求項6に記載のシール材。
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