JP2013031257A - 回転電機制御装置 - Google Patents

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スブラタ サハ
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Abstract

【課題】インバータを備えた回転電機駆動装置と直流電源部との接続が遮断された場合に、回転電機からインバータを介して回生される回生電力を迅速に低減させる。
【解決手段】回転電機の回転に同期して回転する2軸の直交ベクトル空間において、各軸に沿った界磁電流と駆動電流との合成ベクトルである電機子電流を制御してインバータを制御するインバータ制御部を備える。インバータ制御部は、直流電源部とインバータとの接続が遮断状態であると判定した場合には、回転電機の回生トルクがゼロとなるようにインバータを制御するゼロトルク制御を実行すると共に、遮断状態でのゼロトルク制御の実行に際して、回転電機の回生トルクをゼロに低下させていく際のトルク変化率ΔTの制限値を、直流電源部とインバータとの接続が維持されている状態でのトルク変化率ΔTの制限値LT1よりも大きい値に設定する。
【選択図】図4

Description

本発明は、蓄電装置を備えた直流電源部と交流の回転電機との間に介在されて、直流電源部の直流電力と回転電機の交流電力との間で電力変換するインバータを備えた回転電機駆動装置を制御する回転電機制御装置に関する。
化石燃料の消費による環境負荷を軽減するべく、交流の回転電機により駆動される電気自動車や、交流の回転電機及び内燃機関により駆動されるハイブリッド自動車が提案されている。このような電気自動車やハイブリッド自動車では、回転電機と、回転電機に電力を供給するバッテリとが接続される。回転電機は、車両の駆動源となる電動機としての機能に留まらず、車両や内燃機関などの運動エネルギーにより発電を行う発電機としての機能も併せ持っている。回転電機により発電された電力は、バッテリに回生されて蓄電される。尚、このようなバッテリは直流電源であるから、バッテリと回転電機との間には、一般的に、直流電力と交流電力との間で電力変換を行うインバータが備えられる。
ところで、バッテリと回転電機の間、より具体的にはバッテリとインバータとの間には、開閉装置(コンタクタ)が備えられている場合がある。コンタクタが閉状態においてバッテリとインバータ(及び回転電機)とが電気的に接続され、コンタクタが開状態においてバッテリとインバータ(及び回転電機)との電気的接続が遮断される。例えば、車両のメインスイッチがオフ状態となった場合や、車両の安全を確保する必要が生じた場合などに、このコンタクタが開状態となる。この場合、回転電機からインバータを介してバッテリへ回生される電力がコンタクタによって遮断される。このため、例えばコンタクタとインバータとの間に備えられる平滑コンデンサに当該電力が蓄えられ、インバータに印加される直流電圧が上昇する。特開2009−232652号公報(特許文献1)には、バッテリと回転電機との間の接続が解除された際に、回転電機のトルクがゼロとなるようにインバータを制御して回生電力を低下させ、平滑コンデンサの電圧上昇を抑制する回転電機制御装置が開示されている(第52段落等)。
一方、近年、回転電機制御装置の省スペース化や低コスト化を実現するため、平滑コンデンサの容量を小さくすることが要求されている。平滑コンデンサの容量が小さくなると、コンタクタが開状態となった際に電圧が速く上昇することになる。従って、特許文献1に比べてさらに回生電力を抑制することが望まれる。
特開2009−232652号公報
上記背景に鑑みて、インバータを備えた回転電機駆動装置と直流電源部との接続が遮断された場合に、回転電機からインバータを介して回生される回生電力を迅速に低減させることが望まれる。
上記課題に鑑みた本発明に係る回転電機制御装置の特徴構成は、
蓄電装置を備えた直流電源部と交流の回転電機との間に介在されて前記直流電源部の直流電力と前記回転電機の交流電力との間で電力変換するインバータを備えた回転電機駆動装置を制御する回転電機制御装置であって、
前記回転電機の回転に同期して回転する2軸の直交ベクトル空間において、当該直交ベクトル空間の各軸に沿った界磁電流と駆動電流との合成ベクトルである電機子電流を制御して前記インバータを制御するインバータ制御部を備え、
前記インバータ制御部は、前記直流電源部と前記インバータとの接続が遮断状態であることを判定し、当該遮断状態と判定した場合には、前記回転電機の回生トルクがゼロとなるように前記インバータを制御するゼロトルク制御を実行すると共に、前記遮断状態での前記ゼロトルク制御の実行に際して、前記回転電機の回生トルクをゼロに低下させていく際のトルク変化率の制限値を、前記直流電源部と前記インバータとの接続が維持されている状態でのトルク変化率の制限値よりも大きい値に設定する点にある。
回転電機の回生トルクがゼロとなるようにインバータを制御するゼロトルク制御を実行することによって回生電力を抑制することができる。ここで、ゼロトルク制御を実行する際には、当該ゼロトルク制御の開始時にはゼロではない回転トルクの指令(トルク指令)を、ゼロまで変移させる必要がある。一般的に、トルク指令を変動させる場合には、制御の追従性を確保したり、急激な変化に伴う振動を抑制したりするためにトルク変化率に制限が設けられる。しかし、直流電源部とインバータとの接続が遮断状態となった場合は、速やかに回生電力を低下させるために、回生トルクも速やかに低下することが好ましい。このため、制御が追従可能な範囲内で大きいトルク変化率が許容されると好適である。本発明に係る回転電機制御装置の前記インバータ制御部は、前記遮断状態での前記ゼロトルク制御の実行に際して、前記回転電機の回生トルクをゼロに低下させていく際のトルク変化率の制限値を、前記直流電源部と前記インバータとの接続が維持されている状態でのトルク変化率の制限値よりも大きい値に設定する。従って、回生トルクを速やかに低下させることが可能となる。このように、本特徴構成によれば、インバータを備えた回転電機駆動装置と直流電源部との接続が遮断された場合に、回転電機からインバータを介して回生される回生電力を迅速に低減させることが可能となる。
上述したように、トルク指令を変動させる場合には、制御の追従性を確保したり、急激な変化に伴う振動を抑制したりするためにトルク変化率に制限が設けられる場合が多い。このトルク変化率は、回転電機の回転速度に応じて異なる値を採り得るが、通常の制御においては定数値が用いられることが多い。しかし、直流電源部とインバータとの接続が遮断状態となった場合は、速やかに回生電力を低下させることが好ましい。従って、制御が追従可能な範囲内で大きいトルク変化率で回転電機の回生トルクがゼロとなるようにインバータを制御することが好適である。1つの態様として、本発明に係る回転電機制御装置の前記インバータ制御部は、前記遮断状態での前記ゼロトルク制御の実行に際して、前記回転電機の回生トルクをゼロに低下させていく際のトルク変化率を、前記回転電機の回転速度に応じて可変設定すると好適である。
ところで、ゼロトルク制御を実行すると共に高損失制御を実行した場合であっても、回生電力の大きさが回転電機駆動装置の許容量に達する可能性がある。この許容量は、例えば、インバータの直流電圧(正負両極間電圧)によって判定することが可能である。そして、その判定結果に応じて、回転電機駆動装置の安全が確保されると好適である。1つの態様として、本発明に係る回転電機制御装置は、前記インバータが、複数のスイッチング素子を有すると共に前記スイッチング素子のそれぞれに並列接続されたフリーホイールダイオードを有して構成され、前記インバータ制御部は、前記遮断状態となった後にも前記インバータの直流正負両極間における接続が維持されている平滑コンデンサの端子間電圧が、所定の過電圧しきい値以上となった場合に、前記インバータを構成する全ての前記スイッチング素子をオフ状態とするシャットダウン制御を実行すると好適である。
回転電機駆動装置の構成例を模式的に示すブロック図 ゼロトルク制御及び回生電力抑制処理の原理を電流ベクトル空間において模式的に示す説明図 回生電力抑制処理を含む制御全体の処理の流れを示すフローチャート 回生電力抑制処理の流れを示すフローチャート 高損失制御処理の流れを示すフローチャート 収束処理の流れを示すフローチャート 回転電機駆動装置の他の構成例を模式的に示すブロック図 回転電機駆動装置の他の構成例を模式的に示すブロック図
以下、いわゆる2モータスプリット方式のハイブリッド車両用の駆動装置(回転電機駆動装置)を制御する回転電機制御装置に本発明を適用した場合を例として、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。このハイブリッド車両は、駆動力源として不図示の内燃機関と一対のモータ(回転電機)MG1,MG2とを備える。また、ハイブリッド車両の駆動装置は、当該内燃機関の出力を、第1モータMG1側と、車輪及び第2モータMG2側とに分配する動力分配用の差動歯車装置(不図示)を備えて構成されている。本実施形態において、駆動装置1(回転電機駆動装置)は、2つのモータMG1,MG2を駆動するための装置として構成されている。ここで、第1モータMG1及び第2モータMG2は、いずれも多相交流(ここでは3相交流)により動作する交流のモータであって、埋込磁石構造の同期モータ(IPMSM : interior permanent magnet synchronous motor)である。これらのモータMG1,MG2は、必要に応じてモータとしても発電機(ジェネレータ)としても動作する。以下、特に両モータを区別する必要がある場合を除き、単にモータMGと称して説明する。
第1モータMG1及び第2モータMG2は、図1に示すように、駆動装置1を介してバッテリ3(直流電源部)に電気的に接続されている。また、駆動装置1とバッテリ3とは、コンタクタ2(開閉装置)を介して電気的に接続されている。コンタクタ2が閉状態において駆動装置1とバッテリ3とが電気的に接続され、コンタクタ2が開状態においてバッテリ3と駆動装置1との電気的接続が遮断される。例えば、車両のメインスイッチがオフ状態となった場合や、車両の安全を確保する必要が生じた場合などに、このコンタクタ2が開状態となる。
駆動装置1は、第1モータMG1に対応する第1インバータ5Aと、第2モータMG2に対応する第2インバータ5Bとの2つのインバータを備えている。以下、特に2つのインバータ5A,5Bを区別する必要がある場合を除き、インバータ5と称して説明する。また、本実施形態では、駆動装置1は、2つのインバータ5(5A,5B)に共通の1つのコンバータ4を備えている。コンバータ4は、2つのインバータ5(5A,5B)に共通のシステム電圧Vdcとバッテリ3の電圧との間で直流電力(電圧)を変換するための電圧変換装置である。また、駆動装置1は、バッテリ3の正負両極間の電圧を平滑化する第1平滑コンデンサQ1と、インバータ5の直流電圧であるシステム電圧Vdcを平滑化する第2平滑コンデンサQ2とを備えている。
第2平滑コンデンサQ2の端子間電圧、即ちインバータ5の直流電圧(システム電圧Vdc)は、電圧センサ62により検出されて制御装置10(回転電機制御装置)のインバータ制御部11へ提供される。バッテリ3は、コンバータ4及び2つのインバータ5A,5Bを介してモータMG1,MG2に電力を供給可能であると共に、モータMG1,MG2が発電して得られた電力を蓄電可能に構成されている。即ち、本実施形態におけるバッテリ3は、本発明における「蓄電装置を備えた直流電源部」に相当する。このようなバッテリ3としては、例えば、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等の各種二次電池、キャパシタ、或いはこれらの組合せ等が用いられる。尚、バッテリ3とコンバータ4とを合わせて、本発明における「蓄電装置を備えた直流電源部」に対応させてもよい。この場合、コンバータ4を構成するスイッチング素子をオフ状態とすることで実質的にバッテリ3及びコンバータ4と、インバータ5との電気的な接続を遮断することが可能であるから、コンタクタ2に加えてコンバータ4もコンタクタ(開閉装置)の機能を備えることになる。
コンバータ4は、バッテリ3の直流電圧を変換して所望のシステム電圧Vdcを生成するDC−DCコンバータとして構成されている。なお、モータMG1,MG2が発電機として機能する際には、システム電圧Vdcを降圧してバッテリ3に供給し、当該バッテリ3を充電する。コンバータ4は、リアクトルL1と、スイッチング素子E1,E2と、スイッチング素子E1,E2に対してそれぞれ整流部の通流方向が互いに逆方向となるように並列接続された(逆並列接続された)フリーホイールダイオードD1,D2とを備えて構成されている。ここでは、コンバータ4は、スイッチング素子として、直列に接続された一対の上アーム素子E1及び下アーム素子E2を備えている。これらのスイッチング素子E1,E2として、本例では、IGBT(insulated gate bipolar transistor)を用いる。IGBTの他に、バイポーラ型、電界効果型、MOS型など種々の構造のパワートランジスタを用いることができる。これは、以下で説明するインバータ5のスイッチング素子E3〜E14についても同様である。
スイッチング素子E1,E2のそれぞれは、制御装置10から出力される制御信号S1,S2に従って動作する。本実施形態では、制御信号S1、S2は、各スイッチング素子E1,E2のスイッチングを制御するスイッチング制御信号、より詳しくは、各スイッチング素子E1,E2のゲートを駆動するゲート駆動信号である。これにより、コンバータ4は、バッテリ3の出力電圧を所望のシステム電圧Vdcまで昇圧し、インバータ5に供給する。尚、コンバータ4による昇圧を行わない場合には、システム電圧Vdcはバッテリ3の電圧と等しくなる。
第1インバータ5Aは、システム電圧Vdcを有する直流電力と第1モータMG1の交流電力との間の電力変換を行う。第2インバータ5Bは、システム電圧Vdcを有する直流電力と第2モータMG2の交流電力との間の電力変換を行う。第1インバータ5A及び第2インバータ5Bは、ブリッジ回路により構成され、それぞれ複数組のスイッチング素子E3〜E8、及びE9〜E14を備えている。
第1インバータ5A及び第2インバータ5Bは、それぞれ第1モータMG1及び第2モータMG2の各相(U相、V相、W相の3相)のそれぞれのレッグについて一対のスイッチング素子を備えて構成されている。具体的には、U相は、上アーム素子E3及び下アーム素子E4からなるレッグ、上アーム素子E9及び下アーム素子E10からなるレッグにより構成される。V相は、上アーム素子E5及び下アーム素子E6からなるレッグ、上アーム素子E11及び下アーム素子E12からなるレッグにより構成される。W相は、上アーム素子E7及び下アーム素子E8からなるレッグ、上アーム素子E13及び下アーム素子E14からなるレッグにより構成される。これらのスイッチング素子E3〜E14として、本実施形態ではIGBTを用いる。また、各スイッチング素子E3〜E14には、それぞれフリーホイールダイオードD3〜D14が、逆並列接続されている。
スイッチング素子E3〜E14のそれぞれは、制御装置10のインバータ制御部11から出力されるスイッチング制御信号S3〜S14に従って動作する。本実施形態では、スイッチング制御信号S3〜S14は、各スイッチング素子E3〜E14のゲートを駆動するゲート駆動信号である。インバータ5は、システム電圧Vdcの直流電力を交流電力に変換してモータMGに供給し、不図示の走行制御ECU(electronic control unit)などの上位の制御装置から提供される目標トルクTM(TM1,TM2)に応じたトルクをモータMGに出力させる。この際、各スイッチング素子E3〜E14は、スイッチング制御信号S3〜S14に従って、後述するパルス幅変調制御モード(以下適宜「PWM制御モード」と称す。)や矩形波制御モード等の制御モードに従ったスイッチング動作を行う。また、インバータ5は、モータMGが発電機として機能する際には、発電により得られた交流電力を直流電力に変換してコンバータ4を介してバッテリ3へ回生する。
インバータ5とモータMGの各相のコイルとの間を流れる実電流Iu1,Iv1,Iw1,Iu2,Iv2,Iw2は電流センサ63(63A,63B)により検出され制御装置10へ出力される。尚、本例では、3相全ての電流を検出する構成を示しているが、3相は平衡状態にあり、電流の瞬時値の総和は零であるので2相のみの電流をセンサで検出し、制御装置10において残りの1相の電流を演算により求めてもよい。また、モータMGのロータの各時点での磁極位置θ(θ1,θ2)は、回転センサ65(65A,65B)により検出され、制御装置10へ出力される。回転センサ65は、例えばレゾルバ等により構成される。ここで、磁極位置θ1、θ2は、電気角上でのロータの回転角度を表している。
駆動装置1の制御を行う制御装置10の各機能部は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うためのハードウエア又はソフトウエア(プログラム)或いはその両方により構成されている。本実施形態では、制御装置10は、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ5A,5Bを介してモータMG1,MG2を制御するインバータ制御部11を備えて構成される。制御装置10は、他の機能部として、例えばコンバータ4を制御して所望のシステム電圧Vdcを生成する直流電圧変換制御を行う不図示のコンバータ制御部も有している。
インバータ制御部11は、インバータ5を構成するスイッチング素子E3〜E14のスイッチングパターンの形態(電圧波形制御の形態)として、少なくともパルス幅変調(PWM:pulse width modulation)制御と矩形波制御(1パルス制御)との2つの制御形態を有している。また、インバータ制御部11は、ステータの界磁制御の形態として、モータ電流に対して最大トルクを出力する最大トルク制御や、モータ電流に対して最大効率でモータを駆動する最大効率制御などの通常界磁制御、及び、トルクに寄与しない界磁電流を流して界磁磁束を弱める弱め界磁制御や、逆に界磁磁束を強める強め界磁制御などの界磁調整制御を有している。
本実施形態では、モータMGの回転に動機して回転する2軸の直交ベクトル空間における電流ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を実行してモータMGを制御する。電流ベクトル制御法では、例えば、永久磁石による界磁磁束の方向に沿ったd軸と、このd軸に対して電気的にπ/2進んだq軸との2軸の直交ベクトル空間において電流フィードバック制御を行う。インバータ制御部11は、制御対象となるモータMGの目標トルクTMに基づいてトルク指令Tを決定し、d軸及びq軸の電流指令Id,Iqを決定する。そして、インバータ制御部11は、電流指令Id,IqとモータMGの各相のコイルとの間を流れる実電流Iu1,Iv1,Iw1,Iu2,Iv2,Iw2との偏差を求めて比例積分制御演算(PI制御演算)や比例積分微分制御演算(PID制御演算)を行い、最終的に3相の電圧指令を決定する。この電圧指令に基づいて、スイッチング制御信号S3〜S14が生成される。モータMGの実際の3相空間と2軸の直交ベクトル空間との間の相互の座標変換は、回転センサ65により検出された磁極位置θに基づいて行われる。また、モータMGの回転速度ω(角速度)や回転数N[rpm]は、回転センサ65(65A,65B)の検出結果より導出される。
ところで、上述したように、本実施形態では、インバータ5のスイッチング形態には、PWM制御モードと矩形波制御モードとがある。PWM制御は、U,V,Wの各相のインバータ5の出力電圧波形であるPWM波形が、上アーム素子がオン状態となるハイレベル期間と、下アーム素子がオン状態となるローレベル期間とにより構成されるパルスの集合で構成されると共に、その基本波成分が一定期間で略正弦波状となるように、各パルスのデューティが設定される制御である。公知の正弦波PWM(SPWM : sinusoidal PWM)や、空間ベクトルPWM(SVPWM : space vector PWM)、過変調PWM制御などが含まれる。本実施形態においては、PWM制御では、直交ベクトル空間の各軸に沿った界磁電流(d軸電流)と駆動電流(q軸電流)との合成ベクトルである電機子電流を制御してインバータ5を駆動制御する。つまり、インバータ制御部11は、d−q軸ベクトル空間における電機子電流の電流位相角(q軸電流ベクトルと電機子電流ベクトルとの為す角)を制御してインバータ5を駆動制御する。従って、PWM制御は、電流位相制御とも称される。
これに対して、矩形波制御(1パルス制御)は、3相交流電力の電圧位相を制御してインバータ5を制御する方式である。3相交流電力の電圧位相とは、3相の電圧指令値の位相に相当する。本実施形態では、矩形波制御は、インバータ5の各スイッチング素子のオン及びオフがモータMGの電気角1周期に付き1回ずつ行われ、各相について電気角1周期に付き1パルスが出力される回転同期制御である。本実施形態においては、矩形波制御は、3相電圧の電圧位相を制御することによってインバータ5を駆動するので、電圧位相制御と称される。
また、上述したように、本実施形態では界磁制御の形態として、通常界磁制御と、界磁調整制御とを有している。最大トルク制御や最大効率制御などの通常界磁制御は、モータMGの目標トルクTMに基づいて設定される基本的な電流指令値(d軸電流指令、q軸電流指令)を用いた制御形態である。これに対して、弱め界磁制御とは、ステータからの界磁磁束を弱めるために、この基本的な電流指令値の内のd軸電流指令を調整する制御形態である。また、強め界磁制御とは、ステータからの界磁磁束を強めるために、この基本的な電流指令値の内のd軸電流指令を調整する制御形態である。弱め界磁制御や強め界磁制御などの際には、このようにd軸電流が調整されるが、ここでは、この調整値を界磁調整電流と称する。
上述したように、モータMGは、目標トルクに応じて電流位相制御、電圧位相制御により駆動制御される。ところで、モータMGが駆動中に車両のメインスイッチがオフ状態となったり、車両の安全を確保する必要が生じたりした場合には、コンタクタ2が開状態となり、バッテリ3(直流電源部)とインバータ5との接続が遮断される。また、この際、コンバータ4がシャットダウンされ、上アーム素子E1、下アーム素子E2が共にオフ状態となる。ここで、モータMGの回転が続くと、モータMGにより発電された電力がバッテリ3まで回生されず、インバータ5の直流電圧(システム電圧Vdc)を平滑する第2平滑コンデンサQ2に充電される。この充電により、第2平滑コンデンサQ2の端子間電圧、つまりシステム電圧Vdcが上昇する。システム電圧Vdcがインバータ5の耐圧、つまりスイッチング素子E3〜E14の耐圧を超えないように、以下に詳述する回生電力抑制処理が実行される。
本実施形態では、第1モータMG1、第2モータMG2の少なくとも一方が回生運転中であり、その回生電力が力行電力を上回ってインバータ5を介してバッテリ3の方向へ回生されている状態で、コンタクタ2が開状態となった場合を例として説明する。また、ここでは、回生運転中のモータMGが、PWM制御モードで制御されている場合を例として説明する。
図2は、電流ベクトル空間を示している。図2において、曲線100(101〜103)は、それぞれモータMGが、あるトルクを出力する電機子電流のベクトル軌跡を示す等トルク線である。等トルク線101よりも等トルク線102の方が低トルクであり、さらに等トルク線102よりも等トルク線103の方が低トルクである。曲線200(201〜204)は、定電流円を示しており、曲線300は電圧速度楕円(電圧制限楕円)を示している。低電流円は、電機子電流が一定値となるベクトル軌跡である。電圧速度楕円は、モータMGの回転速度及びインバータ5の直流電圧(システム電圧Vdc)の値に応じて設定可能な電流指令の範囲を示すベクトル軌跡である。電圧速度楕円300の大きさは、システム電圧VdcとモータMGの回転速度ω(又は回転数N)とに基づいて定まる。具体的には、電圧速度楕円300の径はシステム電圧Vdcに比例し、モータMGの回転速度ωに反比例する。電流指令Id,Iqは、このような電流ベクトル空間において電圧制限楕円200内に存在する等トルク線100の線上の動作点における値として設定される。後述する電流指令マップは、このような電流ベクトル空間に基づいて規定されたマップである。
ここで、モータMGが等トルク線101上の動作点P1で回生動作しており、コンタクタ2が閉状態から開状態となり、コンバータ4もシャットダウンしたとする。インバータ制御部11は、第2平滑コンデンサQ2の端子間電圧の上昇が予測されると、回生電力抑制処理を実行する。インバータ制御部11は、回生電力抑制処理として、まず、目標トルクTMをゼロに設定してモータMGの回生トルクがゼロとなるようにインバータ5を制御するゼロトルク制御を実行する。回生トルクがゼロの際の動作点は、図2に示すように、定電流円200の中心(動作点P0)である。従って、図2に破線矢印で示すように、動作点P1から動作点P0まで、d軸電流及びq軸電流の絶対値(電流量)を減少させることになる。
但し、第2平滑コンデンサQ2への回生電力を抑制する上では、トルクに寄与しないd軸電流については、電流量を減らすことなく、より多く流し続けて損失を増大させることが好ましい。そこで、回生電力抑制処理として、さらにd軸電流を利用した高損失制御が実行される。具体的には、現在の動作点P1からゼロトルク制御の目標となる動作点P0までの遷移と同様に、q軸電流を減少させてトルクをゼロに近づけていきながら、d軸電流を増加させる。つまり、図2にブロック矢印で示すように、現在の動作点P1から、q軸電流がゼロでd軸電流の絶対値が動作点P1よりも大きい動作点P2まで遷移させる。ここでは、動作点P2は電圧制限楕円300の中心である。動作点P2に達した後は、図2にブロック矢印で示すように、トルクに寄与するq軸電流をゼロに維持したままd軸電流の絶対値を減少させ、最終的にゼロトルク制御の目標となる動作点P0まで遷移させる。
以下、図3〜図6のフローチャートも利用して、回生電力抑制処理について詳述する。図3は、回生電力抑制処理を含む全体の処理の流れを示すフローチャートである。はじめに、コンタクタ2の開閉状態を示す不図示のセンサやスイッチの検出信号に基づいて、コンタクタ2の開閉状態が判定される(#101)。インバータ制御部11は、コンタクタ2が開状態(コンタクタオープン)であると判定すると、次に第2平滑コンデンサQ2の端子間電圧、つまりシステム電圧Vdcが、回生電力抑制処理の要否を判定する判定しきい値TH1を超えているか否かを判定する(#102)。システム電圧Vdcが判定しきい値TH1を超えていると、図4〜図6を用いて以下に詳述する回生電力抑制処理#200が実行される。
ステップ#101においてコンタクタ2が閉状態と判定された場合や、ステップ#102においてシステム電圧Vdcが判定しきい値TH1以下であると判定された場合には、通常ベクトル制御処理が実行される(#106)。つまり、上述した電流位相制御や、電圧位相制御が実行される。尚、この通常ベクトル制御に対しては、目標トルクTMに応じて制御のために設定されるトルク指令Tの単位時間当たりの変化率の制限値LT[N/s]は、通常トルク変化率制限値LT1[N/s]に設定される(#104)。また、目標トルクTMに応じて設定される最終目標トルクT**は、目標トルクTMに設定される(#105)。通常ベクトル制御処理が、電流位相制御(PWM制御モード)により実行される場合には、d軸電流指令であるIdは、トルク特性に基づいて予め生成された電流指令マップから取得される。つまり、d軸電流指令Idは、現在のトルクから最終目標トルクT**に向かってトルク変化率の制限値LTの範囲内で設定されたトルク指令Tに応じて、電流指令マップから取得される。尚、通常ベクトル制御処理におけるd軸電流指令Idは、詳細を後述する回生電力抑制処理#200において変数Id_tmpとして利用される。
回生電力抑制処理#200では、モータMGの回生トルクをゼロ[Nm]とするゼロトルク制御が実行される。図4に示すように、回生電力抑制処理#200の実行に際して、まず、トルク変化率ΔT[N/s]が演算される(#201)。このトルク変化率ΔTは、モータMGが制御可能な範囲での回生電力の変化率の最大値である電力変化率ΔW[kW/s]と、現在のモータMGの回転数N[rmp](回転速度ω)とに基づいて演算される。
次に、このトルク変化率ΔTが、トルク変化率の通常トルク変化率制限値LT1を越えているか否かが判定される(#202)。トルク変化率ΔTが通常トルク変化率制限値LT1を越えている場合には、トルク変化率ΔTとして、上記で演算されたトルク変化率ΔTが採用される(#203)。一方、トルク変化率ΔTが通常トルク変化率制限値LT1以下の場合には、トルク変化率ΔTとして、通常トルク変化率制限値LT1が設定される(#204)。つまり、回生電力抑制処理においては、できるだけ速くトルクを下げてゼロトルク制御を実現することが好ましいので、可能な限り大きいトルク変化率ΔTが用いられる。尚、電力変化率ΔWと回転数Nとに基づいて演算されるトルク変化率ΔTの最大値は、実質的に電力変化率ΔWによって制限されることになる。本実施形態では、概ね、通常トルク変化率制限値LT1の5〜6倍程度の制限値となる。
一般的に、トルク指令Tを変動させる場合には、制御の追従性を確保したり、急激な変化に伴う振動を抑制したりするためにトルク変化率ΔTに制限が設けられる。しかし、バッテリ3とインバータ5との接続が遮断状態となった場合は、速やかに回生電力を低下させるために、回生トルクも速やかに低下することが好ましい。このため、制御が追従可能な範囲内で大きいトルク変化率ΔTが許容されると好適である。上述したように、ゼロトルク制御の実行に際して、トルク変化率の制限値LTが、バッテリ3とインバータ5との接続が維持されている状態でのトルク変化率の制限値LT1よりも大きい値に設定されると好適である。図4のステップ#201を参照して上述したように、トルク変化率ΔTは、モータMGが制御可能な範囲での回生電力の変化率の最大値である電力変化率ΔW[kW/s]と、現在のモータMGの回転数N[rmp](回転速度ω)とに基づいて演算される。従って、実用的な範囲内での所定の回転数Nと電力変化率ΔWとに基づくトルク変化率ΔTが、トルク変化率の制限値LTとなる。実質的には、電力変化率ΔWがトルク変化率の制限値LTを規定することになる。
また、トルク変化率ΔTは、モータMGの回転速度に応じて異なる値を採り得るが、通常の制御においては定数値が用いられることが多い。しかし、バッテリ3とインバータ5との接続が遮断状態となった場合は、速やかに回生電力を低下させることが好ましい。従って、制御が追従可能な範囲内で大きいトルク変化率ΔTでモータMGの回生トルクがゼロとなるようにインバータ5を制御することが好適である。上述したように、モータMGの回生トルクをゼロに低下させていく際のトルク変化率ΔTが、モータMGの回転数N(回転速度ω)に応じて可変設定されると好適である。図4のステップ#201を参照して、上述したように、トルク変化率ΔTは、モータMGが制御可能な範囲での回生電力の変化率の最大値である電力変化率ΔW[kW/s]と、現在のモータMGの回転数N[rmp](回転速度ω)とに基づいて演算される。つまり、トルク変化率ΔTは、回転数N(回転速度(ω)に反比例し、回転数Nが小さくなるに従って大きくなるように設定される。
続いて、現時点での最終目標トルクT**からトルクをゼロにするまで、トルク変化率ΔTでトルクを変化させる場合に要する遷移時間t[s]が演算される(#205)。実質的にこの値が利用されるのは、後述する高損失制御処理#300であるので、遷移時間tは、高損失制御処理#300の中で演算されてもよい。次に、現時点での制御モードが、PWM制御モードであるか否かが判定される(#206)。モータMGが、PWM制御モードではなく、例えば、矩形波制御モードで制御されている場合には、高損失制御処理#300へ移行せず、最終目標トルクT**をゼロに設定した上で、矩形波制御が実行される(#208,#209)。矩形波制御モードは電圧位相制御であり、電流位相を制御することによってd軸電流の絶対値を増加させる高損失制御を行うことができないからである。現時点での制御モードが、PWM制御モードである場合には、高損失制御処理#300が実行される。
図5に示すように、高損失制御処理#300のはじめに、変数として高損失d軸電流指令Id_lossが設定され、この変数に図3のステップ#106を参照して上述したId_tmp(現在のd軸電流指令Id)が代入される(#301)。次に、トルク指令Tと、回転数Nとの関係から、モータMGが回生運転中であるか否か、つまりゼロトルク制御が未達成であるか否かが判定される(#302)。ゼロトルク制御が達成されている場合には、後述する収束処理(図6の#351〜#356)へと移行する($1)。
ステップ#302において、ゼロトルク制御が未達成であると判定された場合には、d軸電流指令Idの単位時間当たりの変化量ΔIdが演算される(#303)。上述したように、回生電力抑制処理では、ゼロトルク制御が実行される。このため、電圧速度楕円300の中心(動作点P2)でのd軸電流の値Id_oと、現在のd軸電流指令の値であるId_lossとの差分を、上述した遷移時間t[s]で除して、単位時間当たりのd軸電流の変化量ΔIdを演算する。つまり、トルク変化率ΔTでトルクをゼロに変化させるまでに要する遷移時間t[s]に応じて変化させることが可能な単位時間当たりのd軸電流の変化量ΔIdが算出される。尚、動作点P1でのd軸電流の値と動作点P0でのd軸電流の値との差と、動作点P1でのd軸電流の値と動作点P2でのd軸電流の値との差が同じであるように動作点P2が設定される場合には、符号が適切に整合されればId_oとして定電流円200の中心(動作点P0)での値を用いてもよい。
続いて、最終目標トルクT**がゼロに設定される(#304)。そして、インバータ制御部11は、現在のトルク指令Tから最終目標トルクT**(=0)に向かう方向にトルク変化率ΔTを減じて、トルク指令Tを更新する(#305)。インバータ制御部11は、更新されたトルク指令Tに基づいて、電流指令マップを参照し、d軸電流指令Id、q軸電流指令Iqの値を取得する(#306)。このd軸電流指令Idは、最大トルク制御や最大効率制御の場合の電流指令であるから低損失である。従って、損失を増大させて回生電力を消費させる高損失制御を実現するために、弱め界磁制御や強め界磁制御など同様に、d軸電流指令Idは、界磁調整電流によって調整される。
界磁調整に際して、インバータ制御部11は、まず、現時点のd軸電流指令Idの値である高損失d軸電流指令Id_lossに、ステップ#303で求めたd軸電流指令Idの変化量ΔIdを加えて、高損失d軸電流指令Id_lossの値を更新する(#307)。次に、更新された高損失d軸電流指令Id_lossと、電流指令マップを参照して得られたd軸電流指令Idとの差分が、d軸電流の界磁調整値Id_AFRとして求められる(#308)。この界磁調整値Id_AFRの値は、弱め界磁制御や強め界磁制御の際に利用される調整値と同様に扱うことができる。従って、高損失制御に際して界磁調整を行う場合に、新たな演算機能を付加することなく、弱め界磁制御や強め界磁制御のために用意された機能部を共用することができる。
d軸電流指令Idの値を調整することにより、等トルク線上の動作点が移動することになる。このため、q軸電流指令Iqの値にも変動が生じる。そこで、インバータ制御部11は、トルク指令Tとd軸電流の界磁調整値Id_AFRとに基づいて、再度、電流指令マップを参照し、高損失q軸電流指令Iq_lossを取得する(#309)。そして、ステップ#307で求めた高損失d軸電流指令Id_loss及びステップ#309で取得した高損失q軸電流指令Iq_lossが、それぞれd軸電流指令Id、q軸電流指令Iqとして設定される(#310)。以上、モータMGがゼロトルク制御を達成するまで、ステップ#302〜ステップ#310が繰り返される。
ステップ#302〜ステップ#310の繰り返しにより、モータMGのゼロトルク制御が達成されると、次に定電流円200の中心の動作点P0における電流値(ここでは、ゼロ)にd軸電流を変化させる収束処理#350へ移行する(#302→$1)。図6に示すように、収束処理#350の開始に際して、変数として、収束時d軸電流指令Id_0Nm_lossが設定される。この収束時d軸電流指令Id_0Nm_lossには、上述した高損失d軸電流指令Id_loss(現在のd軸電流指令Id)が代入される(#351)。そして、動作点が定電流円200の中心(動作点P0)に達しているか否かが判定される(#352)。本実施形態では、動作点P0のd軸電流はゼロであり、負の値からゼロに近づいてくるから、d軸電流指令Idがゼロ以上であるか否かが判定される。ステップ#352において、d軸電流指令Idがゼロ未満ではないと判定されると、No分岐から通常放電制御処理#357に移行する。通常放電制御処理#357とは、例えば、インバータ5のシャットダウン(全スイッチング素子のオフ)などである。通常放電制御処理#357を完了すると回生電力抑制処理#200を終了する。
ステップ#352において、d軸電流指令Id*がゼロに達していないと判定された場合には、収束時d軸電流指令Id_0Nm_lossが、上述したd軸電流指令Idの変化量ΔIdに相当する分、定電流円の中心(動作点P0)の方向へ更新される(#353)。次に、更新後の収束時d軸電流指令Id_0Nm_lossが、ゼロ未満であるか否かが判定される(#354)。更新後の収束時d軸電流指令Id_0Nm_lossが、ゼロ未満でない場合、例えばゼロを超えていれば正の値を持っていることになり、動作点P0を過ぎてしまったことになる。また、収束時d軸電流指令Id_0Nm_lossがゼロの場合には、ちょうど動作点P0に達していることになる。従って、収束時d軸電流指令Id_0Nm_lossがゼロ以上の場合には、d軸電流指令Id及びq軸電流指令Iqを共にゼロに設定して、動作点を定電流円の中心(動作点P0)とする。
ステップ#354において更新後の収束時d軸電流指令Id_0Nm_lossが、ゼロ未満であった場合には、定電流円の中心(動作点P0)に向かってさらに収束処理を継続する必要がある。従って、d軸電流指令Idに収束時d軸電流指令Id_0Nm_lossを設定して、ステップ#352〜#354を繰り返す(#355)。尚、q軸電流指令Iqは、既にトルクゼロ制御が達成されているのでゼロの値が設定される(#355)。尚、q軸電流指令Iqは、図5のステップ#309と同様に、トルク指令Tと収束時d軸電流指令Id_0Nm_loss(d軸電流指令Id)に基づいて電流指令マップを参照して設定されてもよい。
尚、図3〜図6のフローチャートに示した各処理とは別に、第2平滑コンデンサQ2の端子間電圧、つまりシステム電圧Vdcが所定の過電圧しきい値以上となった場合には、インバータ制御部11がインバータ5のシャットダウン制御を実行するように構成されていてもよい。この際の過電圧しきい値は、図3のステップ#102に示す判定しきい値TH1よりも大きい値である。ここで、シャットダウン制御とは、インバータ5Aを構成するスイッチング素子E3〜E8の全て、インバータ5Bを構成するスイッチング素子E9〜E14の全てがオフ状態にスイッチングされる制御である。インバータ5がシャットダウンされた状態では、モータMGからの電流は、各スイッチング素子E3〜E14に対してそれぞれ逆並列接続されたフリーホイールダイオードD3〜D14を通って還流し、次第に減少する。
以上、説明したように、本発明によれば、インバータ5を備えた駆動装置1とバッテリ3との接続が遮断された場合に、モータMGからインバータ5を介して回生される回生電力を迅速に低減させることが可能となる。具体的には、インバータ制御部11は、ゼロトルク制御と共に界磁電流を用いた高損失制御を実行することによって、迅速に回生電力を低減することができる。また、さらにゼロトルク制御へ移行する際に、トルク変化率の制限値を大きくして通常の制御時よりも大きいトルク変化率を許容し、通常の制御時よりも大きいトルク変化率で迅速に回生トルクを低下させる。従って、従来の手法に比べてより迅速に回生電力を低減することが可能となる。例えば、制御装置10の省スペース化や低コスト化を実現するため、平滑コンデンサ(Q2)の容量を小さくしても、システム電圧Vdc(平滑コンデンサの両端電圧)の上昇を従来と同等以上に抑制することが可能となる。
〔その他の実施形態〕
以下、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記実施形態においては、2モータスプリット方式のハイブリッド車両用の駆動装置(回転電機駆動装置)を制御する回転電機制御装置を例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。図7に示すように、1つの回転電機を駆動する駆動装置を制御する回転電機制御装置であってもよい。また、上記実施形態においては、駆動装置1がコンバータ4を備える場合を例として説明したが、図8に示すようにコンバータを備えることなく駆動装置1が構成されてもよい。
(2)上記実施形態においては、高損失制御として、トルクに寄与しないd軸電流(界磁電流)を増加させて損失を増やす例を示して説明した。しかし、当業者であればその他の方法によって損失を増加させ、回生電力を低減させることも可能であろう。例えば、PWM制御の変調周波数(キャリア周波数)を上昇させると単位時間当たりのスイッチング回数が増加し、損失が増加する。本発明は、ゼロトルク制御と共に界磁電流を用いた高損失制御を実行することに技術的な特徴を備えるが、他の手法によって損失を増加させることを妨げるものではない。
本発明は、蓄電装置を備えた直流電源部と交流の回転電機との間に介在されて、直流電源部の直流電力と回転電機の交流電力との間で電力変換するインバータを備えた回転電機駆動装置を制御する回転電機制御装置に適用することができる。
ΔT :トルク変化率ω :回転速度
1 :駆動装置(回転電機駆動装置)
3 :バッテリ(直流電源部)
5 :インバータ
5A :第1インバータ
5B :第2インバータ
10 :制御装置(回転電機制御装置)
11 :インバータ制御部
D1〜D14:フリーホイールダイオード
E3、E5,E7,E9,E11,E13:上アーム素子(スイッチング素子)
E4、E6,E8,E10,E12,E14:下アーム素子(スイッチング素子)
MG :モータ(回転電機)
MG1 :第1モータ(回転電機)
MG2 :第2モータ(回転電機)
N :回転数
Q2 :第2平滑コンデンサ(平滑コンデンサ)
TM :目標トルク
:トルク指令
Vdc :システム電圧
TH1 :判定しきい値
LT :トルク変化率の制限値

Claims (3)

  1. 蓄電装置を備えた直流電源部と交流の回転電機との間に介在されて前記直流電源部の直流電力と前記回転電機の交流電力との間で電力変換するインバータを備えた回転電機駆動装置を制御する回転電機制御装置であって、
    前記回転電機の回転に同期して回転する2軸の直交ベクトル空間において、当該直交ベクトル空間の各軸に沿った界磁電流と駆動電流との合成ベクトルである電機子電流を制御して前記インバータを制御するインバータ制御部を備え、
    前記インバータ制御部は、前記直流電源部と前記インバータとの接続が遮断状態であることを判定し、当該遮断状態と判定した場合には、前記回転電機の回生トルクがゼロとなるように前記インバータを制御するゼロトルク制御を実行すると共に、前記遮断状態での前記ゼロトルク制御の実行に際して、前記回転電機の回生トルクをゼロに低下させていく際のトルク変化率の制限値を、前記直流電源部と前記インバータとの接続が維持されている状態でのトルク変化率の制限値よりも大きい値に設定する回転電機制御装置。
  2. 前記インバータ制御部は、前記遮断状態での前記ゼロトルク制御の実行に際して、前記回転電機の回生トルクをゼロに低下させていく際のトルク変化率を、前記回転電機の回転速度に応じて可変設定する請求項1に記載の回転電機制御装置。
  3. 前記インバータは、複数のスイッチング素子を有すると共に前記スイッチング素子のそれぞれに並列接続されたフリーホイールダイオードを有して構成され、
    前記インバータ制御部は、前記遮断状態となった後にも前記インバータの直流正負両極間における接続が維持されている平滑コンデンサの端子間電圧が、所定の過電圧しきい値以上となった場合に、前記インバータを構成する全ての前記スイッチング素子をオフ状態とするシャットダウン制御を実行する請求項1又は2に記載の回転電機制御装置。
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