JP2013023590A - 高絶縁性フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】主たる成分として熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂を用いた厚み方向の屈折率が、1.640以下である二軸延伸フィルムと、その少なくとも片面に設けられた表面の水接触角が85°以上、120°以下である塗布層を有する高絶縁性フィルム。
【選択図】なし
Description
[二軸延伸フィルム]
本発明における二軸延伸フィルムは、熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂を主たる成分とするものである。ここで「主たる」とは、二軸延伸フィルムを基準として51質量%以上、好ましくは59質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上、特に好ましくは92質量%以上が熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂であることを表わす。
また、本発明における熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)は、温度380℃、見かけの剪断速度1000sec−1の条件における見かけの溶融粘度が500〜10000ポイズ、さらには1000〜5000ポイズの範囲にあるものが、製膜性に優れるため好ましい。
本発明においては、前記熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)を主たる構成成分とする二軸延伸フィルムが特定の量の酸化防止剤(C)を含有することによって、電気的特性をより高いものとすることができる。
かかる酸化防止剤としては、生成したラジカルを捕捉して酸化を防止する一次酸化防止剤、あるいは生成したパーオキサイドを分解して酸化を防止する二次酸化防止剤のいずれであってもよく、一次酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤があげられ、二次酸化防止剤としてはリン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤があげられる。
ができる。
本発明における二軸延伸フィルムは、高絶縁性フィルムでの取り扱い性を向上させるため、発明の効果を損なわない範囲で不活性粒子を含有することが好ましい。フィルムが不活性粒子を含有する態様とするためには、例えば熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂にあらかじめ不活性粒子を含有することが挙げられ、好ましい。その他、熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂を溶融押出する工程において不活性粒子を添加するなど、公知の方法を採用することができる。
このような不活性粒子は、種類や平均粒径の異なるものを2種以上併用することができ、ハンドリング性向上の観点から好ましい。また、そのような態様とした方が取り扱い性と絶縁破壊電圧との両立が容易となる。
本発明における熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂には、流動性改良などの目的でポリアリーレンポリエーテル、ポリスルフォン、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂をブレンドしても良い。また、耐熱性、他の特性向上などの目的で、後述するガラス転移温度(Tg)の高い樹脂成分、例えばポリイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂等をブレンドしても良い。また、安定剤、紫外線吸収剤等の如き添加剤を含有させても良い。
本発明においては、ガラス転移温度(Tg)の高い、好ましくはTgが180℃以上である樹脂成分(B)を含有することが好ましい。このような高Tg樹脂成分(B)を添加することによって、耐熱性および電気絶縁性の向上効果をより高くすることができる。また、高温環境下における絶縁破壊電圧の向上効果を高くすることができる。樹脂成分(B)のTgが180℃未満である場合は、電気絶縁性の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、樹脂成分(B)のTgは、190℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、210℃以上であることがさらに好ましい。また樹脂成分(B)のTgは、高くなりすぎると熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)のTgとの差が大きくなりすぎる傾向にあり、溶融時の相溶性・混錬性が悪くなる傾向にある。このような観点からは、樹脂成分(B)のTgは、300℃以下であることが好ましく、260℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることがさらに好ましい。また、相溶性・混錬性の観点からは、かかる樹脂成分(B)は非結晶性であることが好ましい。
本発明において高Tgの樹脂成分として好ましく使用できるポリエーテルイミドの具体例としては、下記一般式で示されるポリマーを例示することができる。
本発明の高絶縁性フィルムは、その少なくとも片面に、表面の水接触角が85°以上、120°以下である塗布層を有する。このような塗布層を有することにより、絶縁破壊電圧を高くすることができる。この理由は定かではないが、二軸延伸フィルムと電極の間に薄層の塗布層が存在することで、電荷集中を緩和でき、絶縁破壊電圧が向上するものと考えられる。また、さらに二軸延伸フィルムよりも表面エネルギーの小さい薄層である塗布層が存在すると、放電が発生しても、二軸延伸フィルムから塗布層が剥離し、誘電体である二軸延伸フィルムの破壊を防ぎ、結果的に絶縁破壊電圧が向上するものと考えられる。すなわち、本発明においては、塗布層表面の水接触角が上記数値範囲にあると、電圧印加して放電起こると同時に塗布層がフィルムから剥離し、かかる剥離した塗布層のみが破壊され、フィルムは破壊されず、結果的に絶縁破壊電圧が向上すると考えられる。
ワックス成分として、ポリオレフィン系ワックス、エステル系ワックスなどの合成ワックスが挙げられ、また、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等の天然ワックスが挙げられる。ポリオレフィン系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。また、エステル系ワックスとしては、例えば炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなるエステル系ワックス等が挙げられ、具体的には、ソルビタントリステアレート、ペンタエリスリットトリペヘネート、グリセリントリパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレートが例示される。かかるワックスの中でも、ポリオレフィン系ワックスを用いることが、本発明が規定する接触角を満足しやすく好ましい。特に好ましくは、ポリエチレンワックスである。
また、塗布層中で良好な分散性を示し、それにより絶縁破壊電圧の向上効果を高くできるという観点から、ワックスは水溶性または水分散性のものが好ましい。
シリコーン成分としては、反応性基を有するシリコーン化合物から主に形成されてなるシリコーン組成物であることが好ましい。ここで「主に」とは、例えば、シリコーン成分中において70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上のことを示す。このような態様とすることにより、絶縁破壊電圧の向上効果を高くすることができる。反応性基を有しないシリコーン化合物は、シリコーン成分中に含んでいてもよいが、その含有量が多すぎる場合(例えば、シリコーン成分中において30質量%以上の場合)には、蒸着層の形成が難しくコンデンサーとしての評価ができなくなる。そのため、反応性基を有しないシリコーン化合物は、シリコーン成分中に、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
塗布層を形成するための塗液の取り扱い易さや、塗布層中で良好な分散性を示し、それにより絶縁破壊電圧の向上効果を高めるという観点から、シリコーン化合物、ポリジメチルシロキサンは、水溶性または水分散性であることが好ましい。
フッ素成分としては、フルオロエチレン系モノマーを用いた重合体、フッ化アルキル(メタ)アクリレート系モノマーを用いた重合体などが挙げられる。フルオロエチレン系モノマーを用いた(共)重合体として、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、モノフルオロエチレン、ジフルオロジクロロエチレン等の(共)重合体が挙げられる。
塗布層は、その他、界面活性剤、架橋剤、滑剤などを含んでいてもよい。
界面活性剤は、フィルムへの、塗布層を形成するための塗液の濡れ性を高めたり、かかる塗液の安定性を向上させる目的で使用され、例えば、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、塗布層の質量を基準として1〜60質量%含まれていることが好ましい。
本発明の高絶縁性フィルムは、例えば少なくとも片面に金属層を積層することでコンデンサーとなる。金属層の材質については、特に制限はないが、例えばアルミニウム、亜鉛、ニッケル、クロム、錫、銅およびこれらの合金が挙げられる。さらにこれらの金属層は若干量酸化されていてもよい。また、金属層を簡便に形成できるため、金属層は蒸着法により形成された蒸着型金属層であることが好ましい。
本発明の高絶縁性フィルムは、機械軸方向(以下、縦方向、長手方向またはMDと呼称する場合がある。)と、機械軸方向及び厚み方向に直交する方向(以下、横方向、幅方向またはTDと呼称する場合がある。)の二軸方向に延伸された二軸延伸フィルムに前述の塗布層を形成したものである。塗布層を形成するフィルムを、このように二軸延伸することにより機械特性(破断強度、破断伸度、ヤング率等)が向上し、また電気絶縁用、とりわけコンデンサー用の電気絶縁用としての高い耐熱性および電気絶縁性を発現することができ、高温環境下において高い絶縁破壊電圧を発現することができる。かかる二軸延伸は、同時二軸延伸、逐次二軸延伸の何れでも良いが、厚み斑をより良好にできるという観点から、逐次二軸延伸が好ましく、延伸の順序は、先に縦延伸を実施し、次いで横延伸を実施するのが、厚み斑をより良好にでき、また生産性の点からも好ましい。
以下、本発明における二軸延伸フィルムの製造方法について説明する。
熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)と必要に応じて樹脂(B)との混合のペレットを押出機に投入し、(Tm+20)℃以上(Tm+90)℃以下の温度で加熱溶融し、シート状に押し出した後、冷却ロールに接触させる等により冷却固化して未延伸フィルムを得る。ここでTmは、示差走査熱量計(DSC)により求められる熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)と必要に応じて混合される樹脂(B)との樹脂混合の組成物の融点(単位:℃)を表わす。
なお、フィルムが高Tg樹脂成分(B)、酸化防止剤(C)や他の添加剤を含有する態様とするためには、例えば、ペレットを押出機に投入する前に熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂にあらかじめ高Tg樹脂成分(B)、酸化防止剤(C)や他の添加剤を含有させる方法が挙げられ、好ましい。その他、ペレットを押出機に投入した後に熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂を溶融押出する工程において酸化防止剤他を添加するなど、公知の方法を採用することができる。
次いで、得られた未延伸フィルムを縦方向および横方向の二軸に延伸する。
縦方向の延伸(以下、縦延伸と呼称する場合がある。)は、温度(Tg−10)℃以上(Tg+45)℃以下、倍率1.5倍以上5.0倍以下で延伸する。延伸温度は、好ましくは(Tg)℃以上(Tg+30)℃以下であり、延伸倍率は、好ましくは2.0倍以上4.0倍以下、さらに好ましくは2.4倍以上3.5倍以下である。
なお、本発明においては、後述のように、未延伸シート、かかる未延伸シートを、好ましくは縦方向に一軸延伸した一軸延伸フィルムに、塗布層を形成するための塗液を塗布することで、塗布層を形成することが好ましい。
次いで、上記にて二軸延伸されたフィルムに熱処理を施し、熱固定する。かかる熱固定は、(Tg+27)℃以上(Tm)℃以下、好ましくは(Tg+60)℃以上(Tm−20)℃以下、さらに好ましくは(Tg+90)℃以上(Tm−30)℃以下の温度で、1秒〜10分、好ましくは2秒〜5分、好ましくは3〜120秒、さらに好ましくは5〜60秒の時間行う。熱固定は、二軸延伸フィルム製膜時の延伸工程の後に連続して行われる熱処理と、二軸延伸フィルム製膜後、別途に行われる熱処理とに分けるなど、2回以上に分離して実施してもよい。
熱固定条件(熱固定温度および熱固定時間)を上記のような態様とすることによって、耐熱性および電気絶縁性の向上効果を高くすることができる。また、厚み斑をより良好な範囲とすることができる。また、熱収縮率を本発明が好ましく規定する数値範囲とすることができる。熱固定温度が高すぎると耐熱性および電気絶縁性の向上効果が低くなる傾向にあり、また厚み斑が悪くなる傾向にあり、他方、低すぎると熱収縮率が高くなる傾向にある。
次いで、上記にて熱固定されたフィルムについて、熱収縮率を調整するために幅方向に熱弛緩処理を行うことが好ましく、具体的には温度180℃以上320℃以下で、弛緩率1%以上7%以下の熱弛緩処理を行うことが好ましい。弛緩率が高すぎると、熱収縮率は低くなる傾向にあるが、フィルムの平面性に劣る傾向にある。他方、低すぎると、熱収縮率が高くなる傾向にある。このような観点から、弛緩率は、さらに好ましくは2%以上6%以下である。
本発明において塗布層は、前記した塗布層を構成する各成分を配合して得られた塗布層を形成するための塗液を、フィルムにおいて塗布層を形成したい表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて硬化し、形成する。なお、かかる塗液は、適当な溶媒を用いて希釈し、濃度や粘度を調整することができる。かかる溶媒としては、水を用いることが、取り扱い易さの点で好ましいため、各成分は、水溶性または水分散性であることが好ましい。
かくして本発明の高絶縁性フィルムを得ることができる。
<フィルム厚み>
本発明の高絶縁性フィルムの厚みは、好ましくは0.3μm以上250μm以下である。フィルム厚みが薄すぎる場合は、製膜時に破断が生じ易くなり生産効率が悪くなる傾向にある。他方、フィルム厚みが厚すぎる場合は、延伸応力が高くなる傾向にあり、延伸倍率を高くすることが困難となる傾向にあり、その結果厚み斑が悪くなる傾向にある。また、耐熱性および電気絶縁性の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、高絶縁性フィルム厚みの下限は、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上、特に好ましくは1.2μm以上である。他方、高絶縁性フィルム厚みの上限は、好ましくは128μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは13μm以下、特に好ましくは5.5μm以下である。また、コンデンサー用途に用いる場合は、0.4〜6.5μmが好ましく、0.5〜3.5μmが好ましく、良好な電気特性とすることができる。
本発明の高絶縁性フィルムは、厚み斑が10%以下であることが好ましく、電気絶縁性の向上効果を高くできる。厚み斑が悪くなると電気絶縁性の面内バラツキが大きくなる傾向にあり、結果的に電気絶縁性、絶縁破壊電圧特性の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、厚み斑は、好ましくは9%以下、より好ましくは6%以下、さらに好ましくは3%以下である。厚み斑の下限は小さいほど好ましく、理想的には厚み斑が0%であるが、実際には0.1%以上程度である。
厚み斑を上記数値範囲とするためには、延伸条件を前述した態様とすれば良い。とりわけ横延伸条件を上記した態様、すなわち複数の温度領域に分けて実施することが重要である。
本発明における二軸延伸フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が135℃以上180℃未満であることが好ましい。Tgが上記数値範囲にあると、高温環境下においてもフィルムの剛性を維持することが容易となり、自動車用のコンデンサー用としてより好適に用いることができる。また、耐熱性の向上効果が高くなり、結果として高温環境下における絶縁破壊電圧を高くすることができる。このような観点から、Tgの下限は、より好ましくは145℃以上であり、さらに好ましくは150℃以上であり、また、Tgの上限は175℃以下がより好ましく、165℃以下がさらに好ましく、155℃以下が特に好ましい。特に前述の樹脂成分(B)を含有させる場合は、Tgの下限は、145℃以上、さらに150℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は、ポリエーテルケトンや樹脂成分(B)の種類、配合量を調整することなどにより達成される。
本発明の高絶縁性フィルムは、23℃における絶縁破壊電圧(BDV23)が330kV/mm以上であることが好ましい。BDV23が上記数値範囲にあると、ハイブリッド型自動車のコンデンサー用として好適に用いることができる。BDV23が低い場合は、ハイブリッド型自動車のコンデンサー用として用いた場合において、大電流によりコンデンサー内における短絡が生じ、コンデンサーが破壊されるなどの問題が生じ易くなる。このような観点から、BDV23は、350kV/mm以上がより好ましく、380kV/mm以上がさらに好ましく、410kV/mm以上が特に好ましい。
本発明の高絶縁性フィルムは、縦方向および横方向のそれぞれにおいて、23℃における破断強度(破断強度23)が200MPa以上であることが好ましい。破断強度23が上記数値範囲にあるとフィルムの腰が強くなり屈曲性が良くなり、コンデンサー用等の電気絶縁用としてより好適に用いることができる。このような観点から破断強度23は、220MPa以上がより好ましく、250MPa以上がさらに好ましく、270MPa以上が特に好ましい。
本発明の高絶縁性フィルムは、温度150℃で30分間熱処理した後の縦方向および横方向の熱収縮率の絶対値がいずれも1.0%以下であることが好ましい。熱収縮率の絶対値は、さらに好ましくは0.7%以下、特に好ましくは0.5%以下である。すなわちかかる熱収縮率は、0に近い程好ましい。熱収縮率が上記数値範囲にあると、熱寸法安定性に優れ、加工時に反り、カールなどが起りにくいなど、加工性に優れ、また取り扱い性も良好となる。
熱収縮率を上記のような態様とするには、二軸延伸フィルムを構成する主たる成分として熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)を用い、前述した製造条件によりフィルムを製造すればよい。特に、延伸倍率を高くすると熱収縮率は高くなる傾向にあり、熱固定温度を高くすると熱収縮率は低くなる傾向にあり、弛緩率を高くすると熱収縮率は低くなる傾向にあり、これらを調整することが重要である。
本発明の高絶縁性フィルムは、二軸延伸フィルムの厚み方向の屈折率の上限が1.640以下である。また、屈折率の下限は1.570以上であることが好ましい。
屈折率が上記数値範囲にあると、絶縁性の向上効果を高くすることができる。厚み方向の屈折率は、低すぎるとフィルムの延伸性に劣る傾向にあり、他方高すぎると絶縁性の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、厚み方向の屈折率の下限は、1.590以上がより好ましく、1.600以上がさらに好ましく、1.605以上が特に好ましく、厚み方向の屈折率の上限は、1.634以下がより好ましく、1.628以下がさらに好ましく、1.622以下が特に好ましい。厚み方向の屈折率は、樹脂成分(B)の種類・配合量や延伸条件等の製膜条件を調整することで達成することができる。
本発明の高絶縁性フィルムは、その少なくとも片面にある塗布層の表面の中心線平均表面粗さRaが7nm以上89nm以下であることが好ましい。中心線平均表面粗さRaを上記数値範囲とすることによって、巻き取り性の向上効果を高くすることができる。また、耐ブロッキング性が向上し、ロールの外観を良好なものとすることができる。中心線平均表面粗さRaが低すぎる場合は、滑り性が低くなりすぎる傾向にあり、巻き取り性の向上効果が低くなる。このような観点から、中心線平均表面粗さRaは、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上、特に好ましくは17nm以上である。他方、中心線平均表面粗さRaが高すぎる場合は、滑り性が高くなりすぎる傾向にあり、巻き取り時に端面ズレを起こしやすくなる等巻き取り性の向上効果が低くなる。このような観点から、中心線平均表面粗さRaは、より好ましくは79nm以下、さらに好ましくは69nm以下、特に好ましくは59nm以下、最も好ましくは29nm以下である。
上記のようなRaおよびRzは、本願が規定する不活性微粒子を採用することで達成することができる。
本発明の高絶縁性フィルムは、耐熱性および電気絶縁性に優れ、高温環境下においても優れた絶縁破壊電圧特性が要求される電気絶縁用として好適に用いることができる。特に移動体用、特にハイブリッド自動車用、電気自動車用、燃料自動車用等のコンデンサー用のごとく、より高い耐熱性および電気絶縁特性(絶縁破壊電圧)が要求される用途に好適に使用することができる。
フィルムを150mm長×10mm幅に切り出した試験片を用い、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用いて、温度23℃、湿度60%RHに調節された室内において、チャック間100mm、引張速度20mm/分、チャート速度50mm/分で引張試験を実施し、破断時の伸度から23℃における破断伸度(破断伸度23)、破断時の応力から23℃における破断応力(破断応力23)を求めた。なお、縦方向の破断伸度および破断応力とはフィルムの縦方向(MD)を測定方向としたものであり、横方向の破断伸度および破断応力とはフィルムの横方向(TD)を測定方向としたものである。各破断伸度および破断応力はそれぞれ10回測定し、その平均値を用いた。
また、140℃の温度雰囲気下における破断伸度(破断伸度140)および破断応力(破断応力140)は、140℃の温度雰囲気に設定されたチャンバー内に試験片及びテンシロンのチャック部分をセットし、2分間静置後、上記の引張試験を行うことによって求めた。
樹脂サンプルにおいてはサンプル約10mgを、フィルムサンプルにおいてはサンプル約20mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(TA Instruments社製:商品名DSC2920 Modulated)に装着し、25℃から20℃/分の速度で370℃まで昇温させ、370℃で3分間保持した後取り出し、直ちに氷の上に移して急冷した。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度(単位:℃)と融点(単位:℃)を測定した。
温度150℃に設定されたオーブン中に、フィルムの縦方向および横方向がマーキングされ、あらかじめ正確な長さを測定した長さ30cm四方のフィルムを無荷重で入れ、30分間保持処理した後取り出し、室温に戻してからその寸法の変化を読み取る。熱処理前の長さ(L0)と熱処理による寸法変化量(ΔL)より、下記式(1)から縦方向および横方向の熱収縮率をそれぞれ求めた。
熱収縮率(%)=(ΔL/L0)×100 ・・・(1)
JIS C 2151に示される方法に従って測定した。なお、サンプルはJIS C 2151に従ってアルミ蒸着によって作成した。23℃相対湿度50%の雰囲気にて、直流耐電圧試験機を用い、上部電極は直径25mmの真鍮製円柱、下部電極は直径75mmのアルミ製円柱を使用し、100V/秒の昇圧速度で昇圧し、フィルムが破壊し短絡した時の電圧を読み取った。得られた電圧をフィルム厚みで除して、23℃における絶縁破壊電圧(BDV23、単位:kV/mm)とした。
測定は41回実施し、大きい方の値10点、および小さい方の値10点を除き、21点の値の中央値を絶縁破壊電圧の測定値とした。
130℃における絶縁破壊電圧(BDV130)の測定は、熱風オーブンに電極、サンプルをセットし、耐熱コードで電源に接続し、130℃のオーブンにサンプルを投入後1分で昇圧を開始して、上記と同様にして測定した。
高絶縁性フィルムを100万m製膜する間に破断の発生する回数により、以下の如く判断した。
延伸性◎ : 10万mの製膜当り 破断が1回未満
延伸性○ : 10万mの製膜当り 破断が1回〜2回未満
延伸性△ : 10万mの製膜当り 破断が2回〜4回未満
延伸性× : 10万mの製膜当り 破断が4回〜8回未満
延伸性××: 10万mの製膜当り 破断が8回以上
高絶縁性フィルムの厚みを、縦方向および横方向に電子マイクロメーターを用いて0.5mの区間をそれぞれ均等に10点を測定して、平均厚み(単位:μm)を算出した。また、かかる測定長のうち最高厚さ(単位:μm)と最低厚さ(単位:μm)との差の、平均厚み(単位:μm)に対する比(百分率)を求め、厚み斑(単位:%)として求めた。縦方向および横方向の厚み斑を、各々の測定値とした。
また、塗布層の厚さは、得られた高絶縁性フィルムの試料片を可視光硬化型樹脂に包埋し、室温で可視光にさらして硬化させ、得られた包埋ブロックから、ウルトラミクロトームを用いて70〜100μm程度の厚みの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡を用いて、塗布層の断面を観察して測定した。
ナトリウムD線(589nm)を光源としたアッベ屈折計を用いて23℃65%RHにて測定し、厚み方向の屈折率をnZとした。
熱重量分析計を用いて、窒素ガス中、昇温20℃/分の条件で室温から600℃まで昇温し、質量減少量が1質量%に達した時の温度を、1質量%減量温度とした。
非接触式三次元粗さ計(小坂研究所製、ET−30HK)を用いて波長780nmの半導体レーザー、ビーム径1.6μmの光触針で測定長(Lx)1mm、サンプリングピッチ2μm、カットオフ0.25mm、厚み方向拡大倍率1万倍、横方向拡大倍率200倍、走査線数100本(従って、Y方向の測定長Ly=0.2mm)の条件にて高絶縁性フィルムの塗布層の表面の突起プロファイルを測定する。その粗さ曲面をZ=f(x,y)で表わしたとき、次の式で得られる値をフィルムの中心線平均表面粗さ(Ra、単位:nm)とした。
フィルムの塗布層表面において、(株)協和界面科学性接触角計(形式:CA−A)を用いて、5回測定を行い、その平均値をもって水接触角(°)とした。
なお、測定は、塗布層表面に5mmの高さから0.2mLの蒸留水をシリンジにてゆっくりと滴下し、30秒間放置後、その接触角(塗布層表面と液滴の接線が成す角)をCCDカメラで観察して測定した。そして、同様の操作を5回繰り返し、平均値を用いた。
フィルムの製造工程において、フィルムを500mm幅で5000mのロール状に170m/分の速度で巻き上げ、得られたロールの巻き姿、およびロール端面における端面ズレを次のように格付けした。
[巻き姿]
A :ロールの表面にピンプルがなく、巻き姿が良好。
B :ロールの表面に1個以上4個未満のピンプル(突起状盛り上がり)があり、巻き姿はほぼ良好。
C :ロールの表面に4個以上10個未満のピンプル(突起状盛り上がり)があり、巻き姿はやや不良であるが、製品として使用できる。
D :ロールの表面に10個以上のピンプル(突起状盛り上がり)があり、巻き姿が悪く、製品として使用できない。
[端面ズレ]
◎ :ロール端面における端面ズレが0.5mm未満であり、良好。
○ :ロール端面における端面ズレが0.5mm以上1mm未満であり、ほぼ良好。
△ :ロール端面における端面ズレが1mm以上2mm未満であり、やや劣るものであるが製品として使用できる。
× :ロール端面における端面ズレが2mm以上であり、劣るものであり製品として使用できない。
××:ロール巻き上げ中に端面ズレが大きくなり、5000mのロールが作成できない。
塗液1の調整として、以下の離形成分、界面活性剤、および架橋剤を、表1に示す重量比で、固形成分の重量が5質量%となるように水に分散させ、エマルジョン水溶液を作成した。
・離型成分: ポリエチレンワックス(高松油脂株式会社製 商品名:U3、ポリエチレン系ワックスのエマルジョンであり、エマルジョン中のポリエチレン系ワックス量が、表1における離型成分の含有量となるように記載した。)
・界面活性剤: ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ライオン株式会社製 商品名L950)
・架橋剤: 炭酸ジルコニルアンモニウム
表1に示すとおり、ポリエチレンワックスの含有量を変更し、さらに下記組成のバインダー樹脂aを表1に示す含有量となるように変更したほかは、参考例1と同様な操作を繰り返した。
<バインダー樹脂a>:アクリル変性ポリエステル
・ポリエステル成分: テレフタル酸50モル%/イソフタル酸45モル%/5-ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%//エチレングリコール75モル%/ジエチレングリコール25モル%
・アクリル成分: メチルメタクリレート90モル%/グリシジルメタクリレート10モル%
ポリエステル樹脂成分/アクリル樹脂成分の繰り返し単位のモル比=3/7
塗工液5の調整として、以下の離形成分、界面活性剤、および架橋剤を、固形成分の重量が5重量%となるように水に分散させ、エマルジョン水溶液を作成した。なお、シリコーン化合物については、予め界面活性剤と先に混合してから、塗工液に添加した。
・離型成分: カルボキシ変性シリコーン(信越化学工業株式会社製 商品名X22−3701E)
・界面活性剤: ポリオキシエチレン(n=8.5)ラウリルエーテル(三洋化成株式
会社製 商品名ナロアクティーN−85)
・架橋剤: オキサゾリン(株式会社日本触媒製 商品名エポクロスWS−300)
熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)としてのポリエーテルエーテルケトン樹脂(ビクトレックス社製:ポリエーテルエーテルケトン381G、Tg:142℃、Tm:343℃)に、不活性粒子として 不活性微粒子Aとして、平均粒径0.3μm、相対標準偏差0.16、粒径比1.09の球状シリカ粒子を0.4質量部(得られる二軸延伸フィルム100質量%中に0.4質量%となる)と、不活性微粒子Bとして、平均粒径1.2μm、相対標準偏差0.15、粒径比1.10の球状シリコーン樹脂粒子を0.1質量部(得られる二軸延伸フィルム100質量%中に0.1質量%となる)とを配合し、160℃で4時間乾燥した後、押出機により380℃で溶融押出し、80℃に保持したキャスティングドラム上へキャストして、未延伸フィルムを作成した。
次いで、次に示す条件で縦方向、次いで横方向に逐次二軸延伸を行い、更に熱固定および熱弛緩処理することにより、厚さ3μmの二軸延伸フィルムを得た。
すなわち未延伸フィルムを155℃で縦方向(機械軸方向)に2.6倍延伸し、続いてテンターに導いた後、予熱開始部分の温度95℃、予熱終了部分の温度(延伸開始部分の温度)145℃の工程で20秒間予熱し、続いて、横方向(機械軸方向と厚み方向とに垂直な方向)に2.7倍延伸した。その際横方向の延伸速度は5000%/分とした。また、横方向の延伸の温度は、第1段階の温度を145℃、第2段階の温度を150℃、第3段階(最終段階)の温度を160℃とした。その後245℃で25秒間熱固定をし、さらに180℃まで冷却する間に横方向に3%弛緩処理をして、厚み3.0μmの二軸延伸フィルムを得てロール状に巻き取った。
得られた二軸延伸フィルムの特性を表2に示す。
比較例1において、未延伸フィルムを縦方向(機械軸方向)に延伸した後に、縦延伸後フィルムの一方の面に表1に記載の成分を含有する塗液1〜5(5質量%水分散性塗液)を、最終的に得られる塗布層としての厚みが40nmとなるように塗布し、その後、テンターに導いた以外は、比較例1と同様にして、厚さ3μmの高絶縁性フィルムを得た。得られた高絶縁性フィルムの特性を表2に示す。
熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)を、表3に示すとおり、熱可塑性ポリエーテルケトンと、樹脂成分(B)と酸化防止剤との混合物に変更し、さらに表3に示すとおり、塗液や製膜条件を変更し得られたフィルムおよび塗膜層の厚みが、それぞれ3μmと40nmになるように押出量と塗布量を調整したほかは、実施例1と同様な操作を繰り返した。
なお、比較例3は延伸をしていないものである。
得られたフィルムの特性を表3に示す。
Claims (10)
- 熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)を主たる構成成分とする厚み方向の屈折率が、1.640以下である二軸延伸フィルムと、その少なくとも片面に設けられた、表面の水接触角が85°以上、120°以下である塗布層とを有する高絶縁性フィルム。
- 前記塗布層が、ワックス成分、シリコーン成分およびフッ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を、塗布層の質量を基準として、41質量%以上、94質量%以下の範囲で含有する請求項1に記載の高絶縁性フィルム。
- 二軸延伸フィルムが、熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)とガラス転移温度(Tg)が180℃以上である樹脂成分(B)との樹脂組成物からなり、樹脂成分(B)の含有量が、二軸延伸フィルムの質量を基準として、5〜48質量%の範囲でである請求項1または2のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- 樹脂成分(B)が、ポリイミド系樹脂である請求項3に記載の高絶縁性フィルム。
- 二軸延伸フィルムが、1質量%減量温度が280℃以上である酸化防止剤(C)を、二軸延伸フィルムの質量を基準として、0.5質量%以上8質量%以下含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- 温度150℃で30分間熱処理したときの、機械軸方向およびそれと直交する方向(横方向)の熱収縮率の絶対値がそれぞれ1.0%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- 機械軸方向およびそれと直交する方向(横方向)において、23℃における破断強度(破断強度23)がそれぞれ200MPa以上であり、140℃における破断強度(破断強度140)と23℃における破断強度との比(破断強度140/破断強度23)がそれぞれ0.7以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- 140℃における絶縁破壊電圧(BDV140)と23℃における絶縁破壊電圧(BDV23)との比(BDV140/BDV23)が0.7以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- 電気絶縁用として用いられる請求項1〜8のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- 電気絶縁用がコンデンサー用であり、フィルム厚みが0.4μm以上6.5μm未満である請求項9記載の高絶縁性フィルム。
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