JP2013019450A - 軸受メタル - Google Patents

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Abstract

【課題】軸線方向に対して傾斜した複数の潤滑油溝が内周面に形成された軸受メタルにおいて、軸受面圧をあまり増加させることなく、幅中心位置近傍のオイル切れを抑制する。
【解決手段】ステータシャフト53を相対回転可能に軸支し、軸線方向に対して傾斜して形成された複数の潤滑油溝11,12を内周面に有するものを前提とし、潤滑油溝11,12の中央近傍に周方向両側に向かって延設された拡張部14を有する。
【選択図】図5

Description

本発明は、軸受メタルに関し、特に軸受メタルと軸との焼き付きを防止するために、軸受メタルの内周面に潤滑油溝が形成されたものに関する。
例えば、特許文献1には、この種の軸受メタルが開示されている。同文献に開示されている軸受メタルは、オイルポンプの駆動軸を同ポンプのフロントハウジング内に回転可能に軸支するものであって、当該軸受メタルの内周面には、その両側部を連通する潤滑油溝が形成されている。この潤滑油溝は2本形成されており、これらの潤滑油溝は軸線方向に対して同じ角度で傾斜している(特許文献1の第7図を参照)。上記オイルポンプでは、軸受メタルの両側部に圧力差を設けることで、潤滑油溝に潤滑油を流すようにしている。上記潤滑油溝に供給された潤滑油は、駆動軸と軸受メタルとのクリアランスに導入されて油膜を形成し、軸受メタルと駆動軸との焼き付きを防止する。
また、その他に、以下に説明する軸受メタルも従来より知られている。図1は、車両の無段変速機(CVT)30、トルクコンバータ40等を示す断面図である。この車両では、トルクコンバータ40の後段にトルクコンバータ40、無段変速機30等に油圧を供給する内接歯車式オイルポンプ20Aが設けられている。このオイルポンプ20Aは、ポンプボデー21およびポンプカバー22により形成されるギア室に、内歯を有するドリブンギヤ24と、このドリブンギヤ24の内径側に配設された、外歯を有するドライブギヤ23とを備えている。ドライブギヤ23の軸穴には、軸受メタル10Aが圧入されており、この軸受メタル10Aは、ステータシャフト53を軸支している。
上記軸受メタル10Aにも内周面に潤滑油溝が形成されている。図8および図9に示すように、軸受メタル10Aの内周面には2本の潤滑油溝16,17が形成されており、何れも軸線Nに対して傾斜している。軸受メタル10Aの回転に伴って、傾斜した潤滑油溝16,17に潤滑油が流れるようになっており、潤滑油溝16,17を流れる潤滑油の一部は、ステータシャフト53と軸受メタル10Aとのクリアランスに導入されて油膜を形成し、ステータシャフト53と軸受メタル10Aとの焼き付きを防止する。
特許第4423988号公報
ところで、上記軸受メタル10Aでは、幅寸法(軸方向長さ)を大きくすると、図8中一点鎖線Cで示す幅中心位置近傍の潤滑状態が悪化し、オイル切れを起こし易くなるという問題があった。オイル切れを起こすと、焼き付きを起こしたり、発熱による酸化現象が発生する。一方、特許文献1に開示されている軸受メタルでは、その幅中心位置近傍に、2本の潤滑油溝を連通する連通溝(特許文献1では「連絡溝」と称している。)が形成されているため、幅中心位置近傍での潤滑状態は比較的良好となる。しかし、連通溝が2本の潤滑油溝に亘って形成されている分、軸受面圧(PV値)が高くなり、オイル切れを起こし易い。
本発明はかかる問題に鑑みて創案されたものであり、軸線方向に対して傾斜した複数の潤滑油溝が内周面に形成された軸受メタルにおいて、軸受面圧をあまり増加させることなく、幅中心位置近傍のオイル切れを抑制できる軸受メタルを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の軸受メタルは、以下のように構成されている。すなわち、本発明の軸受メタルは、軸を相対回転可能に軸支し、軸線方向に対して傾斜して形成された複数の潤滑油溝を内周面に有するものを前提とし、前記潤滑油溝の中央近傍に周方向に向かって延設された拡張部を有することを特徴とするものである。
かかる構成を備える軸受メタルによれば、潤滑油溝の中央近傍に周方向に向かって拡張部が延設されていることから、軸受メタルの幅中心位置近傍に十分な油量が供給されるようになり、当該幅中心位置近傍のオイル切れを抑制することができる。しかも、潤滑油溝同士を連通する油溝を設ける必要がないため、軸受面圧をさほど大きくすることなく、上記のオイル切れ抑制効果が得られる。
本発明の軸受メタルによれば、軸受メタルの内周面の潤滑油溝同士を連通する油溝を設けることなく、軸受メタルの幅中心位置近傍のオイル切れを抑制することができる。
オイルポンプを搭載した車両の無段変速機(CVT)、トルクコンバータ等を示す断面図である。 オイルポンプの要部を示す図であって、ポンプボデーに嵌め込まれたドライブギヤ、ドリブンギヤ等を示す図である。 本発明の実施の形態に係る軸受メタルの内周面の展開図である。 (a)は図3のA矢視図、(b)は図3のB−B断面図である。 本発明の実施形態の変形例に係る軸受メタルの内周面の展開図である。 本発明の実施形態の変形例に係る軸受メタルの内周面の展開図である。 本発明の実施形態の変形例に係る軸受メタルの内周面の展開図である。 従来例に係る軸受メタルの内周面の展開図である。 図8のD矢視図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る軸受メタル10を構成部品として有するオイルポンプ20を搭載した車両の無段変速機(CVT)30、トルクコンバータ40等を示す断面図である。
トルクコンバータ40は、ポンプインペラ41、タービン42、ステータ43等を有している。ポンプインペラ41はエンジンのクランクシャフト51に繋がっており、タービン42はトランスミッション側へ動力を伝達する出力軸52に繋がっている。ポンプインペラ41とタービン42とは互いに向かい合って配置されており、これらの間にステータ43が配置されている。
タービン42の軸側部分は、出力軸60にスプライン嵌合されている。ステータ43は、ワンウェイクラッチ44を介して、中空状のステータシャフト53に支持されている。ステータシャフト53は、トランスミッションケース60に対して回転不能に固定されており、その内部には、ベアリングを介して上記出力軸52が回転自在に挿通されている。なお、上記ワンウェイクラッチ44のインナーレース44aは、ステータシャフト53にスプライン嵌合されている。
上記オイルポンプ20は、無段変速機30、トルクコンバータ40等の各部に潤滑油を供給するために設けられている。このオイルポンプ20は、図1又は図2に示すように、主に、ポンプボデー21、ポンプカバー22、ドライブギヤ23、ドリブンギヤ24、軸受メタル10等を備えている。
ポンプボデー21とポンプカバー22とは互いに接合されて、ドライブギヤ23およびドリブンギヤ24を収容するギヤ室25を形成している。すなわち、ポンプボデー21の接合部側には、ドリブンギヤ24が回転自在に嵌め込まれる凹部21aが形成されており、ポンプボデー21の凹部21aの開口をポンプカバー22で閉塞することで、ギヤ室25が形成されている。
図2に示すように、ポンプボデー21の凹部21aには、潤滑油をギヤ室25内に導入するための吸入口26と、ギヤ室25から潤滑油を吐出するための吐出口27が形成されている。吸入口26は、図示しない吸入油路を介してオイルパンに通じており、吐出口27は、図示しない吐出油路を介してバルブボディなどに通じている。一方、ポンプカバー22には、前記吐出口27および吸入口26に対応する位置にそれぞれ、図示しない、吐出チャンバ、吸入チャンバが形成されている。
図2に示すように、ギヤ室25内では、ドライブギヤ23とドリブンギヤ24とが噛み合った状態で配置されている。ドライブギヤ23は、複数(図2に示す例では9葉)の外歯23aと軸穴23bとを有し、点Oを中心に矢印Pの方向へ回転される。軸穴23aには、ロックアップクラッチON/OFF用の油圧を供給するための油路23cと、ポンプインペラ41に回転一体に設けられた爪41a(図1参照)が係合される一対の切欠部23dとが形成されている。これにより、エンジンの動力がクランクシャフト51、ポンプインペラ41を介してオイルポンプ20のドライブギヤ23に伝達される。また、ドライブギヤ23の軸穴23bには、軸受メタル10が圧入されている。軸受メタル10の内側には、ステータシャフト53が微小隙間を介して挿通されており、更にステータシャフト53の中空部には、出力軸52が挿通されている。
ドリブンギヤ24は、ドライブギヤ23の外歯23aより多数(図2に示す例では10葉)の内歯24aを有し、その内径側に偏芯状態でドライブギヤ23が噛合している。また、ドリブンギヤ24は、その外径側が円筒面を形成しており、ポンプボデー21の凹部21aに回転自在に嵌入されている。エンジンが始動すると、その動力によりドライブギヤ23が点Oを中心に矢印Pの方向へ回転され、ドライブギヤ23と噛合したドリブンギヤ24は点Oを中心にドライブギヤ23と同方向に回転する。
前記吸入口26(吸入チャンバ)は、ドライブギヤ23およびドリブンギヤ24の歯間内容積の拡大領域(図2において右側の領域)に形成され、前記吐出口27(吐出チャンバ)は、歯間内容積の縮小領域(図2において左側の領域)に形成されている。これにより、吸入口26からギヤ室25内に潤滑油が導入され、ギヤ室25内の潤滑油が吐出口27から排出されるようになっている。
軸受メタル10は、ドライブギヤ23の軸穴23bに圧入されており、ステータシャフト(軸)53を相対回転可能に軸支している。なお、本実施形態では、ステータシャフト53はトランスミッションケース60に固定されて回転せず、軸受メタル10は、ドライブギヤ23とともに回転するようになっている。
図3は軸受メタル10の内周面の展開図であり、図4(a)は図3のA−A断面図、図4(b)は図3のB−B断面図である。軸受メタル10は、軸線N方向に対して角度θだけ傾斜し、軸受メタル10の両端面を連通する2つの潤滑油溝11,12を内周面に有している。これらの潤滑油溝11,12は互いにハの字を形成しており、軸受メタル10がドライブギヤ23とともに一方(矢印Pの方向)に回転することで、潤滑油溝11では矢印Q1に示す方向に、また、潤滑油溝12では矢印Q2に示す方向に潤滑油が流れるようになっている。なお、軸受メタル10の接合部13には、クリンチ用凸部13a、クリンチ用凹部13bが形成されている。
上記軸受メタル10においては、上記潤滑油溝11,12の中央近傍(軸受メタル10の幅中心位置近傍)に周方向に向かって延設された拡張部14が形成されている。この拡張部14は、軸受メタル10の内周面に対して凹んでおり、潤滑油溝11,12の底部11b,12bから連続した底部14bを有している。また、潤滑油溝11,12の底部11b,12bと拡張部14の底部14bとは同一深さとなっているが、図4に示すように、拡張部14の底部14bの幅寸法W2は、潤滑油溝11,12の底部11b,12bの幅寸法W1より、小さくなっている。例えば、上記幅寸法W2は、上記幅寸法W1の半分程度である。また、潤滑油溝11,12の側壁11a(12a)の開口角度αよりも拡張部14の側壁14aの開口角度βの方が大きくなっている。例えば、開口角度αを120°±5°とし、開口角度βを140°±5°とすることができる。
拡張部14の周方向への延出長さは、軸受メタル10の幅中心位置近傍のオイル切れを防止でき、かつ、潤滑油溝11,12を連通しない程度とされることが望ましい。このような延出長さは、実験等により求めることができる。例えば、拡張部14は、図5に示すように、図3の例と比較して更に延出した溝であってもよい。また、図6に示すように、潤滑油溝11,12の一部が周方向に僅かに膨出したもの、例えば、潤滑油溝11,12の中央近傍の側壁11a,12aの開口角度が単に潤滑油溝11,12のその他の部分の開口角度αよりも大きくなった程度のものであってもよい。
なお、軸受メタル10の潤滑油溝11,12およびクリンチによる接合部13は、図2に示すように、ドライブギヤ23の軸穴23bに形成された油路23c、切欠部23dと周方向位置が重ならないようにすることが望ましい。軸受メタル10の潤滑油溝11,12および接合部13は、その他の部分と比較して強度が低いため、外周側からの支持が無い油路23c、切欠部23dと周方向位置が重なると、当該部分において変形を起こすおそれがあるからである。
以上に説明した軸受メタル10を有するオイルポンプ20が駆動され、ドライブギヤ23とともに軸受メタル10がステータシャフト53に対して回転すると、軸受メタル10の両側に満たされた潤滑油が潤滑油溝11,12内に導入され、拡張部14にも潤滑油が導入される。その結果、拡張部14からステータシャフト53と軸受メタル10とのクリアランスの軸受メタル10の幅中心位置近傍に供給される油量が多くなり、当該幅中心位置近傍のオイル切れが抑制されるようになる。また、従来例で説明したように、潤滑油溝11,12同士を連通する油溝などが存在しないことから、そのような油溝が設けられたものと比較して軸受面圧を低く抑えることができる。
また、潤滑油溝11,12の側壁11a(12a)の開口角度αよりも拡張部14の側壁14aの開口角度βの方が大きくなっているため、拡張部14にある潤滑油は、拡張部14が形成されていない潤滑油溝11,12にある潤滑油よりも、周方向のステータシャフト53と軸受メタル10とのクリアランスに供給され易くなっている。これにより、更に一層、軸受メタル10の幅中心位置近傍のオイル切れが抑制される。
既述の実施形態では、拡張部14は、潤滑油溝11,12の中央近傍に周方向両側に向かって延設されているが、ステータシャフト(軸)53に対する軸受メタル10の回転方向が一方に定まっている場合は、拡張部14を周方向片側のみに向かって延設したものとしてもよい。上記「片側」は、ステータシャフト(軸)53に対する軸受メタル10の相対的な回転方向(図3において矢印Pで示す方向)と反対側となる。例えば図7に示す軸受メタル10がそのような軸受メタルに相当する。
なお、ステータシャフト(軸)53に対する軸受メタル10の回転方向が一方に定まっている場合であっても、拡張部14を潤滑油溝11,12の中央近傍に周方向両側に向かって延設したものを採用することが望ましい。そうすれば、軸受メタル10をドライブギヤ23の軸穴23bに組み付ける際に、軸受メタル10の周方向の向きが一方に制限されることがなくなり、組付け作業の効率化が図られるからである。
以上の説明より明らかなように、本発明の実施形態に係る軸受メタル10では、幅中心位置近傍でのオイル切れが抑制されることから、軸受メタルの幅寸法(軸方向長さ)を積極的拡大することができる。例えば、軸受メタル10とともに、オイルポンプ20のドライブギヤ23およびドリブンギヤ24等の幅寸法を拡張し、両ギヤ20,23の径寸法を小さくすることで、オイルポンプの吐出能力を維持したまま、オイルポンプの駆動トルクを低下させることが可能となる。その結果、このオイルポンプを搭載した車両の燃費低減が図られる。
本発明は、例えば、トルクコンバータ、自動変速機(無段変速機)等に潤滑油を供給するオイルポンプのロータの軸穴に圧入される軸受メタルに適用可能である。
10 軸受メタル
11,12 潤滑油溝
14 拡張部
53 ステータシャフト(軸)

Claims (1)

  1. 軸を相対回転可能に軸支し、軸線方向に対して傾斜して形成された複数の潤滑油溝を内周面に有する軸受メタルにおいて、
    前記潤滑油溝の中央近傍に周方向に向かって延設された拡張部を有することを特徴とする軸受メタル。
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