図1は、本発明の実施の形態に係る通信システムによる近傍探索サービスアプリケーション(以下、単に近傍探索サービスと表記する)の概要を説明するための図である。当該通信システムは、車両100に搭載される無線装置(以下適宜、車載器という)と人が所持または携帯する無線装置(以下適宜、歩行者端末という)により構成される。図1では、車両100に図示しない車載器が搭載される。車両100の周辺には第1歩行者201、第2歩行者202、第3歩行者203および第4歩行者204がいる。第1歩行者201、第2歩行者202、第3歩行者203および第4歩行者204はそれぞれ歩行者端末を所持している。本実施の形態では、歩行者端末を所持する歩行者として、主に子供を対象とするが、高齢者や病人など判断力や身体機能が低下している人、運転者からの死角になりやすい身長の低い人を対象に加えてもよい。もちろん、成人の健常者を対象に加えてもよい。
図1にて、死角ゾーンZ1は車両100の運転者から死角となる領域を示す。第1歩行者201および第3歩行者203は死角ゾーンZ1内にいる。運転者がこのまま車両100を前進または後進させた場合、第1歩行者201または第3歩行者203と接触する可能性がある。第2歩行者202は車両100の近傍にいるが、運転者から見える位置にいる。第4歩行者204は車両100から比較的離れた安全な位置にいる。
図1の例では、車両100から半径5〜10m圏内にいる歩行者を検知することを目的としている。したがって、各歩行者が保持する歩行者端末は、半径5〜10m圏内に届く電波強度で自己の存在を示す信号を送出すればよい。図1にて、第1エリアAc1、第2エリアAc2、第3エリアAc3および第4エリアAc4はそれぞれ、第1歩行者201、第2歩行者202、第3歩行者203および第4歩行者204がそれぞれ保持する歩行者端末の近距離送信時の電波圏内を示す。近距離送信とは通常送信より送信電力を落として送信することをいう。近距離送信の詳細は後述する。
図1では、第4歩行者204が保持する歩行者端末の近距離送信による電波は、車両100に搭載される車載器に届かない。一方、第1歩行者201、第2歩行者202および第3歩行者203が保持する歩行者端末の近距離送信による電波は、車両100に搭載される車載器に届く。したがって、当該車載器は車両100から半径5〜10m圏内に3人の歩行者がいることを検知できる。当該車載器はこの事実を運転者に通知することにより、注意を喚起することができる。
図2は、本発明の実施の形態に係る、車両100に搭載されるべき無線装置10の構成を示す図である。当該無線装置10には、例えば、ITS(Intelligent Transport Systems)で使用される車載器を用いることができる。ITSでは、IEEE802.11などの規格に準拠した無線LANを用いることが検討されている。そのような無線LANでは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御機能が使用されている。そのため、当該無線LANでは、複数の車載器および複数の歩行者端末(図3参照)によって同一の無線チャネルが共有される。このようなCSMA/CAでは、キャリアセンスによって他のパケット信号が送信されていないことを確認した後に、パケット信号がブロードキャストにより送信される(以下、パケット信号のブロードキャストによる送信を「報知」という)。
図2にて、無線装置10は、アンテナ11、RF部12、変復調部13、処理部14、ステータス情報取得部15、ユーザインタフェース16および制御部17を備える。処理部14は、探索信号生成部141、存在信号解析部142、アクション指示信号生成部143および距離算出部144を含む。
RF部12、変復調部13、処理部14、ステータス情報取得部15および制御部17の構成は、ハードウエア的には、任意のプロセッサ、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
RF部12は、受信処理として、他の無線装置からのパケット信号をアンテナ11にて受信する。RF部12は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。RF部12は、ベースバンドのパケット信号を変復調部13に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるため、二つの信号線が示されるべきであるが、図を簡略化するため、図2では一つの信号線だけを示している。RF部12は、受信系の構成要素として、図示しないLNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部などを含む。
RF部12は、送信処理として、生成したパケット信号を本無線装置10から送信する。本実施の形態では、送信電力は固定とし、その送信電力は半径数100mを受信範囲とする電力とする。RF部12は、変復調部13から入力されるベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。RF部12は、無線周波数のパケット信号をアンテナ11から送信する。RF部12は、送信系の構成要素として、図示しないPA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部などを含む。
変復調部13は、受信処理として、RF部12からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。変復調部13は、復調後のパケット信号を処理部14に出力する。また、変復調部13は、送信処理として、処理部14からのパケット信号に対して、変調を実行する。変復調部13は、変調後のパケット信号をベースバンドのパケット信号としてRF部12に出力する。
本実施例に係る通信システムでは、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を採用する。この場合、変復調部13は受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)を実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)を実行する。
処理部14は、受信処理として、変復調部13から出力されたパケット信号に含まれるアプリケーションデータを処理する。また、処理部14は、送信処理として、生成したアプリケーションデータを含むパケット信号を変復調部13に出力する。また、処理部14には、ステータス情報取得部15により取得されたステータス情報が入力される。また、処理部14は、車両100内の人(運転者および同乗者)に通知すべき情報をユーザインタフェース16に出力する。
ステータス情報取得部15は、車両100内の各種センサやECU(Electronic Control Unit)から車両100内のステータス情報を取得する。たとえば、エンジンの始動情報、ドアの開閉情報などを取得する。
ユーザインタフェース16は、表示部、入力部、音声出力部などにより構成される。本実施の形態では、ユーザインタフェース16は、処理部14により生成された車両100の近傍に存在する歩行者情報などを表示および/または音声出力する。制御部17は、無線装置10全体の処理を制御する。
以下、処理部14についてより具体的に説明する。探索信号生成部141は、車両100の周囲に存在する歩行者が所持する無線装置20を探索するための探索信号を生成する。探索信号生成部141は、探索信号に少なくとも送信元を示す車載器IDおよび近傍探索サービスに関する信号である旨の情報を含める。探索信号生成部141により生成された探索信号は、パケット信号のアプリケーションデータ領域に格納され、各レイヤのヘッダおよびフッタが付加された後、RF部12からアンテナ11を介して報知される。
当該探索信号は、近傍探索サービスが発動したときに生成される。当該近傍探索サービスは、車両100の動きが変化すると予測されるときに発動する。より具体的には、当該近傍探索サービスは、ステータス情報取得部15から入力されるステータス情報により特定される車両100の状態変化に起因して発動する。当該状態変化は、車両100が停止状態から走行状態への変化を予測させるものであってもよい。当該状態変化の例として、エンジンの始動、ドアクローズ、トランスミッションのパーキングからドライブまたはバックへの変更、サイドブレーキの解除などが挙げられる。これらは、発進の前段階の操作であり、その操作による車両100の状態変化は、発進を予測させる。また、上述の状態変化は、走行速度の変化(すなわち、低速から高速への変化または高速から低速への変化)を予測させるものであってもよい。当該状態変化の例として、アクセルの踏み込み角度の変化、速度計の出力変化などが挙げられる。また、当該近傍探索サービスは、ユーザインタフェース16を介した運転者の指示にもとづき、発動されてもよい。
存在信号解析部142は、上記探索信号を受信した歩行者端末から報知されたパケット信号に含まれる、歩行者の存在を示す存在信号を解析する。当該存在信号には少なくとも送信元を示す歩行者端末IDが含まれる。存在信号解析部142は、近傍探索サービス中に受信できた歩行者端末IDを一時的に保持する。具体的には、当該近傍探索サービスが終了するまで保持する。存在信号解析部142は、当該近距離送信モード中に受信できた存在信号の数をカウントする。
後述するように、歩行者端末は車載器から探索信号を受信すると、近距離送信モードで存在信号を送信する。したがって、存在信号解析部142は、近傍探索サービス中に受信できた存在信号の数をカウントすることにより、車両100の近傍(本実施の形態では半径5〜10m)に存在する歩行者の人数を特定できる。なお、上記探索信号を受信した歩行者端末から存在信号を含むパケット信号が報知されても、その歩行者端末が車両100近傍に存在しない場合、車載器まで電波が届かないため、カウントの対象外となる。
図示しない通知情報生成部は、当該歩行者の人数をもとに、表示用および/または音声出力用の通知情報を生成し、ユーザインタフェース16に出力する。ユーザインタフェース16は、当該通知情報を車両100内の人(運転者および同乗者)に向けて通知する。
アクション指示信号生成部143は、歩行者端末に実行させるべきアクションを指示するための信号を生成する。当該アクションとして、振動、警告音(警告メッセージを含む)の出力、所定の情報表示(例えば、車載器までの推定距離表示)などが挙げられる。アクション指示信号生成部143は、アクション指示信号に少なくとも送信先を示す歩行者端末IDおよび歩行者端末に実行させるべきアクション内容に関する情報を含める。この歩行者端末IDは、存在信号解析部142により保持される歩行者端末IDである。
アクション指示信号生成部143により生成されたアクション指示信号は、パケット信号のアプリケーションデータ領域に格納され、各レイヤのヘッダおよびフッタが付加された後、RF部12からアンテナ11を介して送信される。この送信は、ユーザインタフェース16による通知とともに実行される。また、この送信はユニキャスト送信であってもよいし、ブロードキャスト送信であってもよい。歩行者端末は、パケット信号に含まれる歩行者端末IDにより、当該アクション指示信号が自己宛であるか否かを判断できる。
距離算出部144は、歩行者端末からの受信電波強度または受信電波強度の時間変化などにもとづいて、当該歩行者端末と車載器との推定距離を算出する。この推定距離はアクション指示信号に含めることができる。
なお、処理部14は近傍探索サービス中、歩行者端末ではなく車載器から報知されたパケット信号を受信した場合、そのパケット信号を破棄する。処理部14は当該パケット信号に含まれる送信元IDが車載器IDである場合、歩行者端末ではなく車載器から報知されたパケット信号であると判定できる。
図3は、本発明の実施の形態に係る、歩行者が保持すべき無線装置20の構成を示す図である。本実施の形態では、小型、軽量、低消費電力の専用端末を想定する。例えば、首にかけたり、キーフォルダに下げられたり、ポケットに入れられる程度の端末を想定する。図3にて、無線装置20は、アンテナ21、RF部22、変復調部23、処理部24、ユーザインタフェース25および制御部26を含む。処理部24は、存在信号生成部241、探索信号解析部242、アクション指示信号解析部243、アクション実行部244および送信電力制御部245を含む。
RF部22、変復調部23、処理部24および制御部26の構成は、ハードウエア的には、任意のプロセッサ、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
アンテナ21、RF部22および変復調部23は、図2のアンテナ11、RF部12および変復調部13の構成および動作と基本的に共通する。以下、これらの構成要素については、相違点を中心に説明する。本実施の形態では、歩行者端末の送信電力は、車載器と異なり可変構成とする。
処理部24は、受信処理として、変復調部23から出力されたパケット信号に含まれるアプリケーションデータを処理する。また、処理部24は、送信処理として、生成したアプリケーションデータを含むパケット信号を変復調部23に出力する。また、処理部24は、受信したパケット信号に上記アクション指示信号が含まれるとき、所定のアクションを実行するための情報をユーザインタフェース25に出力する。
ユーザインタフェース25は、振動部および/または音声出力部を含むことが好ましい。本実施の形態では、基本的に、車両100が動き出すことを歩行者に認識させることが主目的であるため、歩行者がより認識しやすい態様でその情報を歩行者に通知することが好ましい。したがって、振動または警告音(警告メッセージを含む)でその情報を通知することが有効である。また、ユーザインタフェース25に表示部が設けられてもよい。車載器から、車載器と歩行者端末の推定距離が送信されてくる場合、その推定距離を表示部に表示させることができる。なお、コストなどの観点から表示部を設けない場合、その推定距離は音声出力部により読み上げられる。制御部26は、無線装置20全体の処理を制御する。
以下、処理部24についてより具体的に説明する。存在信号生成部241は、歩行者の存在を周囲に認識させるための存在信号を生成する。存在信号生成部241は、存在信号に少なくとも送信元を示す歩行者端末IDおよび送信モードを含める。本実施の形態では、送信モードとして、通常送信モードと近距離送信モードとの2種類を想定する。前者は半径数100mを受信範囲とする送信電力を用いて送信するモードとし、後者は半径5〜10mを受信範囲とする送信電力を用いて送信するモードとする。
なお、本実施の形態では歩行者端末にGPS(Global Positioning System)などの位置検出システムは搭載されないため、存在信号に位置情報(例えば、緯度経度情報)は含まれない。
存在信号生成部241により生成された存在信号は、パケット信号のアプリケーションデータ領域に格納され、各レイヤのヘッダおよびフッタが付加された後、RF部22からアンテナ21を介して報知される。この報知は通常送信モードで実行される。この報知は定期的に実行されてもよいし、CSMA/CAにしたがって実行されてもよい。また、時計や照度計を設けて夜間帯を検出し、夜間帯だけ実行されてもい。また、振動検出センサを設け、歩行者が移動しているときだけ実行されてもよい。通常送信モードで報知される、存在信号を含むパケット信号は、走行中の車両に搭載された車載器や、信号機などに設置された路側機、その他のアクセスポイントにより受信され、様々なアプリケーションに活用される。例えば、走行中の車両に対して歩行者の存在を通知するアプリケーションや迷子を探索するアプリケーションなどに活用される。
探索信号解析部242は、車載器から報知されたパケット信号に含まれる探索信号を解析する。当該探索信号を含むパケット信号を受信できたことは、本歩行者端末が車載器から半径数100mの範囲内に位置することを意味する。探索信号解析部242は、上記探索信号に含まれる車載器IDを一時的に保持する。具体的には、当該近傍探索サービスが終了するまで保持する。探索信号解析部242は、当該探索信号を受信した旨を送信電力制御部245に通知する。
送信電力制御部245は、その通知を受けると、上記存在信号を含むパケット信号の送信電力を低下させる。具体的には、当該送信電力を、車両100と歩行者との間の安全距離に対応した送信距離の送信電波を生成する電力に低下させる。当該安全距離は、車両100を中心に形成される安全エリアの半径と考えてもよい。本実施の形態では、送信電力制御部245は、上記通知を受けると、送信モードを通常送信モードから近距離送信モードに切り替える。存在信号生成部241は、送信モードが近距離送信モードの場合、存在信号に宛先を示す車載器IDをさらに含める。この車載器IDは探索信号解析部242に保持される車載器IDである。
アクション指示信号解析部243は、車載器から報知されたパケット信号に含まれるアクション指示信号を解析し、その解析結果をアクション実行部244に通知する。アクション実行部244は、その解析結果をもとにアクションをユーザインタフェース25に実行させる。例えば、ユーザインタフェース25としてバイブレータを振動させたり、警告音を出力させたりする。
図4は、本発明の実施の形態に係る通信システムによる近傍探索サービスの具体例を説明するための図である。この例では、2台の車両(車両A、車両B)および3人の歩行者(歩行者A1、歩行者A2、歩行者B1)が存在する。2台の車両にはそれぞれ上述の車載器が搭載され、3人の歩行者は上述の歩行者端末を保持している。車両A、歩行者A1および歩行者A2は比較的近距離に位置している。また、車両Bおよび歩行者B1も比較的近距離に位置している。車両A、歩行者A1および歩行者A2のAグループと、車両Bおよび歩行者B1のBグループとは数10m離れて位置している。
車両Aのエンジン始動またはドアクローズにより、車両Aに搭載される車載器(以下、車載器Aと表記する)において近傍探索サービスが発動する。当該車載器の探索信号生成部141は探索信号を生成する。その探索信号を含むパケット信号はRF部12からアンテナ11を介して報知される。本実施の形態では、車載器の送信電力は固定であり、歩行者端末の通常送信モードの送信電力と対応しているため(一致していてもよい)、以下、車載器からのパケット信号の報知をすべて通常送信と表記する。車載器から送信される電波は半径数100mまで届くため、歩行者A1、歩行者A2および歩行者B1のそれぞれが保持する歩行者端末(以下、歩行者端末A1、歩行者端末A2、歩行者端末B1とそれぞれ表記する)および車両Bに搭載される車載器(以下、車載器Bと表記する)のすべてで受信される。
車載器は車載器IDを含む探索信号には応答しないため(すなわち、無視するため)、車載器Bは当該探索信号を含むパケット信号を破棄する。歩行者端末A1、歩行者端末A2および歩行者端末B1では、そのパケット信号の受信に伴い、送信モードが通常送信モードから近距離送信モードに切り替わる。
図5(A)は、図4に示す通常送信aのデータ構造例を示す。図5(B)は、図4に示す近距離送信のデータ構造例を示す。図5(A)に示す通常送信aは、車載器から探索信号を送信する際のデータ構造例である。この例では、項目として、「サービス種別」、「送信モード」、「送信元ID」および「宛先ID」が規定され、その内容として、「近傍探索(要求)」、「通常」、「車載器ID」および「any」が設定される。この通常送信aは探索信号を送信するものである。図4の通常送信bはアクション指示信号を送信するためのものである。通常送信bのデータ構造例は、図示しないが「サービス種別」の内容に「近傍探索(アクション指示)」が、「宛先ID」の内容に「歩行者端末ID」が設定される。なお、「歩行者端末ID」は存在信号を受信できた歩行者端末の歩行者端末IDである。さらに、項目として「アクション内容」が追加され、その内容として「具体的アクション」が設定される。図4の例では「振動」が設定される。
図5(B)に示す近距離送信は、探索信号を受信した歩行者端末から存在信号を送信する際のデータ構造例である。この例では、項目として、「サービス種別」、「送信モード」、「送信元ID」および「宛先ID」が規定され、その内容として、「近傍探索(応答)」、「近距離」、「歩行者端末ID」および「車載器ID」が設定される。なお、歩行者端末の通常送信のデータ構造例は、図示しないが「サービス種別」の内容に「存在通知」が、「宛先ID」の内容に「any」が設定される。
図4に戻り、歩行者端末A1、歩行者端末A2および歩行者端末B1は、近距離送信により存在信号を含むパケット信号を送信する。このうち、歩行者端末A1および歩行者端末A2からの電波は車載器Aに到達するが、歩行者端末B1からの電波は車載器Aに到達しない。歩行者端末B1からの電波は車載器Bに到達するが、車載器Bは近傍探索サービスの実行主体ではないため、歩行者端末B1からの近距離送信によるパケット信号は無視される。より具体的には、車載器Bの車載器IDと、近距離送信に含まれる宛先IDである車載器IDとが一致しない場合、その近距離送信は無視される。
車載器Aは、歩行者端末A1および歩行者端末A2からの近距離送信によるパケット信号を受信すると、その近距離送信で受信できた存在信号の数をカウントし、車両A近傍に位置する歩行者の人数を特定する。図4の例では2人である。
図6は、車載器Aのユーザインタフェース16から通知される警告メッセージの一例を示す。図6では、ユーザインタフェース16としての表示部に「危険 近くに人が2人います。」と警告メッセージが表示される例を示している。
図4に戻り、車載器Aは通常送信bによりアクション指示信号を含むパケット信号を送信する。この通常送信bはユニキャスト送信でもよいし、ブロードキャスト送信でもよい。この通常送信bに含まれる宛先IDには、歩行者端末A1の歩行者端末IDおよび歩行者端末A2の歩行者端末IDが設定されているため、通常送信bによるパケット信号は歩行者端末A1および歩行者端末A2のみにより解析される。このパケット信号に含まれるアクション内容には振動が設定されているため、歩行者端末A1および歩行者端末A2は振動することにより、歩行者Aおよび歩行者Bに車両Aの発進を警告する。その後、車両Aが所定の距離移動すると、処理部14は近傍探索サービスを終了させる。車両Aが所定の距離移動したということは、運転者が安全を確かめた上で発進したことを示しており、近傍探索サービスを終了してもよいことを示している。なお、車両Aが所定の距離移動したことは、ステータス情報取得部15が速度計などから取得したステータス情報により判定できる。
以上説明したように本実施の形態に係る車載器および歩行者端末を用いた通信システムを用いて近傍探索サービスを提供できる。当該近傍探索サービスによれば、運転者が車両周囲の状況を的確に把握できる。すなわち、探索信号を受信した歩行者端末が近距離送信に切り替わることにより、車両を中心に好適な範囲(本実施の形態では半径5〜10m)に位置する歩行者の存在のみを把握できる。また、その人数を正確に把握できるため、運転者が目視できている歩行者以外の死角にいる歩行者の存在も的確に認識できる。これに対し、歩行者端末が通常送信のままの場合、安全性に影響がない位置にいる歩行者の存在によっても警告が発せられてしまい、円滑な運転の妨げになる。
また、車載器から歩行者端末にアクション指示信号を送信することにより、歩行者に危険を通知することができる。また、歩行者端末の存在信号に位置信号を含めないことにより、GPSなどの位置検出システムを不要とし、歩行者端末の低コスト化、小型化、軽量化、低消費電力化を図ることができる。
図7は、本発明の実施の形態に係る通信システムによる待ち合わせサービスアプリケーション(以下、単に待ち合わせサービスと表記する)の概要を説明するための図である。当該待ち合わせサービスを利用する前提として、待ち合わせすべき車両と歩行者の間で、その車両の車載器とその歩行者が保持する歩行者端末とがペアリングされている必要がある。より具体的には、当該車載器の車載器IDと当該歩行者端末の歩行者端末IDを相互に保持している必要がある。
図7では、車両100の車載器は、第1歩行者201が保持する歩行者端末とはペアリングされているが、第2歩行者202が保持する歩行者端末とはペアリングされていない例を描いている。第1エリアAn1は第1歩行者201が保持する歩行者端末の通常送信時の電波圏内を示す。
待ち合わせサービス利用時において、車載器の探索信号生成部141は、少なくとも送信元を示す車載器ID、ペアリングした歩行者端末の歩行者端末IDおよび待ち合わせサービスに関する信号である旨の情報を含む探索信号を生成する。当該探索信号は、パケット信号のアプリケーションデータ領域に格納され、各レイヤのヘッダおよびフッタが付加された後、RF部12からアンテナ11を介して報知される。歩行者端末の探索信号解析部242は、当該パケット信号に含まれる探索信号を解析し、ペアリングされている車載器の車載器IDが含まれる場合、存在信号生成部241にその旨、通知する。
存在信号生成部241は、少なくとも送信元を示す歩行者端末ID、ペアリングされている車載器IDおよび送信モードを含む存在信号を生成する。当該存在信号は、パケット信号のアプリケーションデータ領域に格納され、各レイヤのヘッダおよびフッタが付加された後、RF部22からアンテナ21を介して報知される。本実施の形態では、通常送信と近距離送信を交互に報知する。
図8は、本発明の実施の形態に係る通信システムによる待ち合わせサービスの具体例1を説明するための図である。図8には、ペアリングしている車載器と歩行者端末との間による信号のやりとりが示されている。当該車載器を搭載している車両の運転者がユーザインタフェース16から待ち合わせサービスの開始を指示すると、当該車載器において待ち合わせサービスが発動する。当該車載器の探索信号生成部141は探索信号を生成し、その探索信号を含むパケット信号は通常送信により報知される。ペアリングしている歩行者端末までの距離が数100mを越えている場合、歩行者端末からの応答信号を受信できない。車載器は当該パケット信号の通常送信による報知を続ける。ペアリングしている歩行者端末までの距離が数100m未満(すなわち、通常信号到達圏内)になると、当該歩行者端末はそのパケット信号を受信できる。当該歩行者端末は当該パケット信号を受信すると、存在信号を含むパケット信号を通常送信により報知する。
その通常送信による報知とともに、当該歩行者端末のアクション実行部244は、所定のアクションをユーザインタフェース25に実行させてもよい。例えば、「もうすぐお迎えがきます。」と音声出力させてもよい。これにより、当該歩行者端末を保持する歩行者は、お迎えが近くまで来ていることを認識できる。
当該車載器が当該歩行者端末から通常送信により報知された存在信号を含むパケット信号を受信したとき、当該車載器の図示しない通知情報生成部は、迎えを待っている人が近くにいることを示すメッセージを生成し、ユーザインタフェース16から通知してもよい。
当該歩行者端末は、上記存在信号を含むパケット信号を通常送信により報知した後、同じパケット信号を近距離送信により報知する。なお、当該存在信号に含まれる送信モードの内容は異なる。以下、当該車載器は、探索信号を含むパケット信号を通常送信により報知し、当該歩行者端末は、存在信号を含むパケット信号の通常送信による報知と近距離送信による報知の両方を実行する。当該車載器が当該歩行者端末から近距離送信により報知されたパケット信号を受信できた場合、当該車載器と当該歩行者端末との距離が5〜10m未満(すなわち、近距離信号到達圏内)になったことを示すため、お互いに目視することができるようになる。したがって、車載器の処理部14は待ち合わせサービスを終了させる。なお、近距離送信により報知されたパケット信号の受信ではなく、ドアオープンに起因して待ち合わせサービスを終了させてもよい。
図9(A)は、図8に示す車載器の通常送信のデータ構造例を示す。図9(B)は、図8に示す歩行者端末の通常送信のデータ構造例を示す。図9(C)は、図8に示す歩行者端末の近距離送信のデータ構造例を示す。図9(A)に示す通常送信のデータ構造例では、項目として、「サービス種別」、「送信モード」、「送信元ID」および「宛先ID」が規定され、その内容として、「待ち合わせ(要求)」、「通常」、「車載器ID」および「歩行者端末ID」が設定される。この歩行者端末IDはペアリングしている歩行者端末の歩行者端末IDである。図9(B)に示す通常送信のデータ構造例では、項目として、「サービス種別」、「送信モード」、「送信元ID」および「宛先ID」が規定され、その内容として、「待ち合わせ(応答)」、「通常」、「歩行者端末ID」および「車載器ID」が設定される。この車載器IDはペアリングしている車載器IDである。図9(C)に示す近距離送信のデータ構造例では、項目として、「サービス種別」、「送信モード」、「送信元ID」および「宛先ID」が規定され、その内容として、「待ち合わせ(応答)」、「近距離」、「歩行者端末ID」および「車載器ID」が設定される。この車載器IDはペアリングしている車載器の車載器IDである。
上述の図8に示す具体例1では、車載器が歩行者端末から近距離送信により報知されたパケット信号を受信できるか否かにより、歩行者端末が近距離に存在するか否かを判定した。この点、車載器は歩行者端末から通常送信により報知されたパケット信号の受信強度(RSSI;Received Signal Strength Indication)から、車載器と歩行者端末との距離を推測してもよい。
図10(A)は、車載器と歩行者端末との間の距離を推測する第1手法を説明するための図である。第1手法は上述の図8に示す具体例1で採用した手法である。歩行者端末は近距離通信により存在信号を含むパケット信号を送信する。例えば、小電力電波または微弱電波でパケット信号を送信する。車載器は、歩行者端末から近距離通信により送信されたパケット信号を受信できた場合、歩行者端末が近隣に存在すると判定し、受信できない場合、近隣に存在しないと判定する。歩行者端末から半径5〜10m圏内を受信エリアとする電波強度でパケット信号が送信された場合にて、車載器がそのパケット信号を受信できた場合、車載器から半径5〜10m圏内に歩行者端末が存在すると判定できる。
図10(B)は、車載器と歩行者端末との間の距離を推測する第2手法を説明するための図である。歩行者端末は通常通信により存在信号を含むパケット信号を送信する。なお、通常通信の送信電力より高い送信電力で送信してもよい。この場合、送信距離が長くなり、より遠方の車載器にも信号が届くことになる。車載器は、歩行者端末から通常通信により送信されたパケット信号を受信する。その際、受信強度を検出する。この受信強度はRF部12により検出され、処理部14の距離算出部144に出力される。
距離算出部144は、受信強度と閾値とを比較して、受信強度が閾値を超えるとき受信強度が「強」と判定し、超えないとき受信強度が「弱」と判定する。受信強度が「強」のとき歩行者端末が近隣に存在すると判定し、受信強度が「弱」のとき歩行者端末が近隣に存在しないと判定する。
なお、閾値は複数、設定されてもよい。例えば、閾値が2つ設定される場合、距離算出部144は受信強度と、第1閾値および第2閾値とをそれぞれ比較して、受信強度が第1閾値を超えるとき受信強度が「強」と判定し、第1閾値と第2閾値との間のとき受信強度が「中」と判定し、第2閾値を超えないとき受信強度が「弱」と判定する。これにより、車載器と歩行者端末との距離を「近」、「中」、「遠」に3分類できる。
また、距離算出部144は、受信強度/距離変換式または受信強度/距離変換テーブルを用いて、RF部12により検出された受信強度を距離に変換してもよい。
図11は、本発明の実施の形態に係る通信システムによる待ち合わせサービスの具体例2を説明するための図である。具体例2では上述の第2手法を採用する。図11には、ペアリングしている車載器と歩行者端末との間による信号のやりとりが示されている。当該車載器を搭載している車両の運転者がユーザインタフェース16から待ち合わせサービスの開始を指示すると、当該車載器において待ち合わせサービスが発動する。当該車載器の探索信号生成部141は探索信号を生成し、その探索信号を含むパケット信号は通常送信により報知される。ペアリングしている歩行者端末までの距離が数100mを越えている場合、歩行者端末からの応答信号を受信できない。車載器は当該パケット信号の通常送信による報知を続ける。ペアリングしている歩行者端末までの距離が数100m未満(すなわち、通常信号到達圏内)になると、当該歩行者端末はそのパケット信号を受信できる。当該歩行者端末は当該パケット信号を受信すると、存在信号を含むパケット信号を通常送信により報知する。具体例2では具体例1と異なり、当該歩行者端末は当該パケット信号を近距離送信では報知しない。
以下、当該車載器は、探索信号を含むパケット信号を通常送信により報知し、当該歩行者端末も、存在信号を含むパケット信号を通常送信による報知する。当該車載器の距離算出部144は、当該歩行者端末から報知されたパケット信号の受信強度により当該歩行者端末との距離を算出する。算出された距離は、ユーザインタフェース16から通知される。上述したように、この距離は「近」、「中」、「遠」のように直感的な分類で規定されてもよいし、「100m」等、具体的な数値で規定されてもよい。これにより、運転者は待ち合わせ相手が車両100からどれくらい離れた距離にいるかを認識できる。
算出された距離が「近」または設定距離(例えば、5m)未満のとき、お互いに目視することができるようになっている可能性が高いため、処理部14は待ち合わせサービスを終了させる。具体的には、当該車載器からの探索信号を含むパケット信号の報知を終了させる。本具体例2では歩行者端末が送信電力制御部245を備える必要がない。したがって、送信電力制御部245を備えない簡素な歩行者端末と、車載器との間でも待ち合わせサービスを実現できる。
以上説明したように本実施の形態に係る車載器および歩行者端末を用いた通信システムを用いて待ち合わせサービスを提供できる。当該待ち合わせサービスによれば、待ち合わせをしている歩行者と車両の運転者が目視できない距離であっても、両者の距離が近づいた場合(本実施の形態では、数100m未満に近づいた場合)、お互いが近くにいることを認識しあうことができる。とくに、迎えを待っている歩行者が子供の場合、近くまできていることをできるだけ早く認識させることにより、できるだけ早く安心感を与えることができる。
以上、本発明の実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
また、上述した実施の形態では、車載器は歩行者端末が位置する方向を検出しなかったが、アンテナ11を指向性アンテナ(例えば、アダプティブアレイアンテナ)で構成することにより、電波を送出した歩行者端末が位置する方向を検出できる。この場合、ユーザインタフェース16に歩行者の人数だけでなく、各歩行者の位置に関する情報も通知できる。
図12は、指向性を利用した第1探索方法を説明するための図である。探索装置は探索信号を含むパケット信号を送信する装置である。上述した近傍探索サービスおよび待ち合わせサービスの例では、探索装置は車載器であった。この点、探索装置は歩行者端末であってもよい。後述する駐車車両探索サービスでは歩行者端末が探索信号を含むパケット信号を送信する。被探索装置は、探索装置が車載器のとき歩行者端末であり、探索装置が歩行者端末のとき車載器である。
まず、探索装置は探索信号を含むパケット信号を指向性を持たせて送信する(S11)。被探索装置はそのパケット信号を受信する(S12)。被探索装置はそのパケット信号の受信強度を検出する(S13)。探索装置と被探索装置との距離が一定と仮定すると、受信強度は、被探索装置の位置が探索装置から放射された電波の方向(以下、放射方向という)に近いほど強くなり、その方向から離れるほど弱くなる。
被探索装置はその受信強度を含む応答信号を含むパケット信号を送信する(S14)。探索装置はそのパケット信号を受信する(S15)。探索装置は受信したパケット信号から受信強度を取り出し、その受信強度から、被探索装置が存在する方向または方位を推測する(S16)。具体的には、受信強度が弱い場合、放射方向と逆方向に被探索装置が存在すると推測し、受信強度が強い場合、放射方向に被探索装置が存在すると推測する。
図13は、指向性を利用した第2探索方法を説明するための図である。探索装置は探索信号を含むパケット信号を送信する装置である。まず、探索装置は探索信号を含むパケット信号を無指向で送信する(S21)。被探索装置はそのパケット信号を受信する(S22)。被探索装置は応答信号を含むパケット信号を送信する(S23)。探索装置はそのパケット信号を指向性アンテナで受信する(S24)。受信の際、受信電波の指向性を検出する。探索装置は指向性アンテナでの受信状況から被探索装置が存在する方向を推測する(S25)。例えば、アダプティブアレイアンテナが用いられる場合、その複数のアンテナのそれぞれの受信強度を検出し、最も受信強度が強いアンテナが位置する方向を、被探索装置が存在する方向と推測する。
第1探索方法および第2探索方法では、探索装置が指向性アンテナを備えている必要があり、被探索装置は指向性アンテナを備えている必要はない。なお、探索装置が指向性アンテナを備えず、被探索装置が指向性アンテナを備えている場合、被探索装置は、探索装置から送信された探索信号を含むパケット信号を受信する際、その受信電波の指向性から探索装置が存在する方向を推測する。被探索装置はその方向を含む応答信号を含むパケット信号を送信する。
以下、第1探索方法の適用例について説明する。この適用例では探索装置が車載器、被探索装置が歩行者端末である。車載器と歩行者端末とは両者の識別情報(具体的には、車載器IDおよび歩行者端末ID)を保持し合っていることを前提とする。すなわち、両者はペアリングされていることを前提とする。この適用例は、車載器が搭載された車両の運転者が歩行者端末を保持する歩行者を探す例である。例えば、車載器が搭載された車両の運転者と、歩行者端末を保持する歩行者とが待ち合わせをしている場合や、歩行者端末を保持する歩行者が行方不明または迷子になっている場合が該当する。
車載器は、自己の車載器IDおよびペアリングしている歩行者端末の歩行者端末IDを含む探索信号を指向性を持たせて送信する。ペアリングしている歩行者端末は、その探索信号を受信すると、自己の歩行者端末IDおよびペアリングしている車載器の車載器IDに加えてその探索信号の受信強度を含む応答信号を送信する。車載器は、探索信号を一定時間ごとに放射方向を変えて繰り返し送信する。歩行者端末は、探索信号を受信する度に上記応答信号を送信する。
車載器はそれぞれの応答信号を受信し、それぞれの受信強度を取り出す。車載器はどの放射方向に探索信号を送信したときに、最も強い受信強度を含む応答信号を受信したか特定することにより、歩行者端末が存在する方向を特定できる。また、受信強度を含む応答信号を継続的に受信することにより、歩行者端末に近づいているか遠ざかっているかを認識できる。これらの情報はユーザインタフェース16(例えば、カーナビゲーション装置の表示部)に表示される。また、ユーザインタフェース16(例えば、カーナビゲーション装置の音声出力部)から音声出力される。例えば、受信強度が強いほど大きなブザー音を鳴らしてもよい。
つぎに、第2探索方法の適用例について説明する。この適用例では探索装置が歩行者端末、被探索装置が車載器である。この適用例でも車載器と歩行者端末とはペアリングされていることを前提とする。この適用例は歩行者端末を保持する歩行者が、車載器が搭載された車両を探す例である。例えば、駐車場で自己の車両を探す場合が該当する。
歩行者端末は、自己の歩行者端末IDおよびペアリングしている車載器の車載器IDを含む探索信号を送信する。ペアリングしている車載器は、その探索信号を受信すると、自己の車載器IDおよびペアリングしている歩行者端末の歩行者端末IDを含む応答信号を送信する。歩行者は歩行者端末の向きを様々な方向に変えることにより、歩行者が意図する様々な放射方向に探索信号を送信できる。これにより、指向性を持つ探索信号が擬似的に生成される。車載器は、探索信号を受信する度に上記応答信号を送信する。
歩行者端末はそれぞれの応答信号を受信し、それぞれの応答信号の受信強度を検出する。歩行者端末はその受信強度により車両が存在する方向を特定する。例えば、立体駐車場では、受信強度の違いにより車両が駐車しているフロアを特定できる。歩行者が、特定されたフロアに移動後、受信強度の違いによりそのフロアでの駐車位置の方向を特定できる。なお、応答信号を受信するアンテナの指向性が、全方位と特定方向で切替可能に設定されていてもよい。歩行者は当該フロアを特定する際、全方位に設定し、特定されたフロアに移動後、特定方向に設定する。検出された受信強度および/または車両が存在する方向はユーザインタフェース25に表示されるか、ユーザインタフェース25から音声出力される。例えば、受信強度が強いほど大きなブザー音を鳴らしてもよい。歩行者は歩行者端末の向きを変えながらブザー音の大きさを確認し、ブザー音が大きな方向へ移動する。
また、立体駐車場で車両が駐車しているフロアをより正確に特定するために、各フロアの歩行者出入口に簡易な車載器を設置してもよい。車両から降りた歩行者が、駐車したフロアの歩行者出入口を通過する際、当該車載器と歩行者端末とがペアリングされる。歩行者が立体駐車場に戻った際、歩行者端末から探索信号を送信し、ペアリングしている車載器からの応答信号を受信することにより、どのフロアの車載器とペアリングしているか特定できる。歩行者端末は応答信号の受信強度で特定してもよいし、その応答信号にフロア特定情報が含まれる場合、その情報により特定してもよい。
つぎに、第2探索方法の別の適用例について説明する。この適用例では探索装置が車載器、被探索装置が歩行者端末である。この適用例でも車載器と歩行者端末とはペアリングされていることを前提とする。この適用例は車庫入れ時に先に降りた家族(とくに、子供)やペットの位置を確認する例である。
車庫入れ時近傍探索サービスは車両が後進したことを契機に発動する。車庫入れ時近傍探索サービスが発動すると、車載器は、自己の車載器IDおよび子供等が保持するペアリングしている歩行者端末の歩行者端末IDを含む探索信号を送信する。ペアリングしている歩行者端末は、その探索信号を受信すると、自己の歩行者端末IDおよびペアリングしている車載器の車載器IDを含む応答信号を送信する。
車載器は、歩行者端末から応答信号を受信し、その応答信号の受信強度を検出する。車載器はその受信強度が閾値を超えるとき車両の近傍に家族またはペットがいると判定する。また、その受信強度から家族またはペットがいる方向を特定できる。これらの情報はユーザインタフェース16(例えば、カーナビゲーション装置の表示部)に表示される。また、ユーザインタフェース16(例えば、カーナビゲーション装置の音声出力部)から音声出力される。以上の処理は、車庫入れ時近傍探索サービスが終了するまで、継続的に実行される。車庫入れ時近傍探索サービスは車両のエンジン停止により終了する。
上述した実施の形態では、説明を単純化するため歩行者端末の送信モードを、通常送信と近距離送信の2種類としたが、任意の送信電力でパケット信号を送出できる構成であってもよい。送信電力制御部245は送信電力を調整することにより、RF部12は任意の電波強度でパケット信号を送信できる。すなわち、送信電力制御部245は、アンテナ11を介してRF部12から送出される電波の受信範囲を調整できる。
車載器の距離算出部144は、歩行者端末と車載器との推定距離を算出できる。歩行者端末がこの推定距離を含むパケット信号を受信することにより、送信電力制御部245はその推定距離に応じて、送信電力を調整できる。例えば、近傍探索サービスにおいて送信電力制御部245は、車載器までの推定距離に対応する送信電力に調整してもよい。また、待ち合わせサービスにおいて、歩行者端末が距離算出部144により算出された推定距離を継続的に受信することにより、送信電力制御部245は送信電力を段階的に低下させてもよい。すなわち、車載器と歩行者端末との距離が近づくにつれ、その距離に応じた送信電力に調整してもよい。これらの処理によれば、より最適化された存在信号の送信を実現できる。
また、上述した実施の形態では、歩行者端末を専用端末としたが、既存の携帯電話機やスマートフォンに、上述した歩行者端末の機能を搭載してもよい。
また、上述した実施の形態では、無線装置10が搭載される車両100として四輪車を例に説明したが、オートバイや自転車などの二輪車であってもよい。また、無線装置20を人が保持する例を説明したが、犬や猫などの動物に身につけさせてもよい。