以下、本発明に係るドア開閉装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るドア開閉装置1をバックドアDに取り付けた状態での側面断面図であり、図2は、図1に示すドア開閉装置1の正面図である。また、図3は、図1に示すドア開閉装置1の要部を示す斜視図であり、ラッチ20がハーフラッチ位置での状態を示している。
図1に示すように、本実施形態に係るドア開閉装置1は、四輪自動車の車両本体(車体)Bに設けたストライカSに噛合機構LMを係合させることにより、車両本体Bに対してテールゲートと称されるバックドアDを閉じた状態に維持するものであり、電動のクローズ機構100A及びオープン機構100B(以下、まとめて「クローズ/オープン機構(開閉機構)100」ともいう)を有する電動開閉式のロック装置である。バックドアDは、車両本体Bの後端上縁部に支持してあり、左右方向に沿った軸心回りに回転させることにより、車両本体Bの後端部開口を開閉する(図4参照)。
なお、以下では、図1に示すドア開閉装置1のバックドアDへの取付方向における車内側(車両前方側)を前方、車外側(車両後方側)を後方、高さ方向を上下方向(上方及び下方)と規定して説明する。これらの方向の定義は説明の便宜上のものであり、車両本体Bにおけるドア開閉装置1の向きは、その取り付け位置等によって勿論変化する。
図1〜図3に示すように、本実施形態のドア開閉装置1は、カバープレート10と、カバープレート10の収容部14内に設けられる本体ボディ40と、カバープレート10の収容部14を蓋するバックプレート50と、カバープレート10の背面側に立設されるブラケット70とを備える。噛合機構LMは、カバープレート10の収容部14に配設され、クローズ/オープン機構100は、ほとんどの構成要素がブラケット70に保持される。
カバープレート10は、ドア開閉装置1のベースとなるもので、比較的板厚の大きな金属板によって成形されている。カバープレート10は、前端から後端に向かって次第に浅くなる矩形凹状の収容部14を形成するプレート基部10aにストライカ進入溝11が設けられ、ストライカ進入溝11を挟む両側にラッチ軸12及びラチェット軸13が設けられる(図5参照)。
収容部14は、その内部に噛合機構LMを構成するラッチ20及びラチェット30を収容する凹部である(図1及び図5参照)。ストライカ進入溝11は、プレート基部10aの前端中央部から奥部に向けて形成された切欠であり、ストライカSが挿通できる幅に形成されている。ラッチ軸12及びラチェット軸13は、プレート基部10aの内面から突出して互いに平行に配置されている。ラッチ軸12にはラッチ20が回転可能に支持され、ラチェット軸13にはラチェット30が回転可能に支持されている(図5参照)。
ラッチ20は、図5に示すように、略中央に形成された貫通孔にラッチ軸12が挿通される板状の部材である。ラッチ20は、外周面に開口する係合溝21と、係合溝21の右側に位置するフック部22と、係合溝21の左側に位置するストライカ当接部(フルラッチ係止部)23と、ストライカ当接部23の左側に位置する外周爪部(ハーフラッチ係止部)24とを有し、ラッチ軸12を挟んだ係合溝21の反対側の上面には、ラッチ軸12を中心として周方向に延びる凸条20bが形成されている。ラッチ20は、係合溝21がストライカ進入溝11と交差するようにラッチ軸12の軸心回りに回転する。ラッチ20は、本体ボディ40との間に配置したラッチばね(図示せず)によってラッチ軸12を中心として図5の反時計回り方向へ付勢されている。凸条20bには、収容部14内に配置された検出スイッチ(図示せず)の検出部が接触することにより、後述するラッチ20の回転位置(アンラッチ位置、ハーフラッチ位置及びフルラッチ位置)が検出される。
図3及び図5に示すように、ラッチ20の上部におけるバックプレート50の上面には、ラッチ軸12の上端付近に回転可能に軸支されるラッチレバー110が設けられている。ラッチレバー110は、ラッチ20の上面から鉛直方向に突出する連係ピン109を回転可能(摺動可能)に把持することにより、ラッチ20と連係して一体的に回転する。ラッチレバー110は、クローズ機構100Aを構成するものであり、詳細は後述する。
ラチェット30はラッチ20の回転位置を規制するものであり、図5に示すように、略中央に形成された貫通孔にラチェット軸13が挿通される板片状の部材である。ラチェット30は、ラチェット軸13が挿通される貫通孔の外周に半径方向外方へ延出するラッチ噛合部31と、解除操作部32と、ストップ片34とを有する。ラチェット30は、ラチェット軸13の軸心回りに回転し、本体ボディ40との間に配置したラチェットばね(図示せず)によってラチェット軸13を中心として図5の時計回り方向へ付勢されている。ラッチ噛合部31は、ラチェット軸13から半径方向外方に延出し、ラッチ20のストライカ当接部23又は外周爪部24に噛合することにより、図5(b)及び図5(c)に示すように、ラッチ20の反時計回り方向の回転を規制する。ストップ片34は、ラッチ噛合部31や解除操作部32に対してラチェット軸13を挟んだ反対側の半径方向外方に延出しており、プレート基部10aの上面に突設された弾性部材等のストッパ16に当接することで、図5におけるラチェット30の時計回り方向への回転を規制する。
ここで、噛合機構LMとストライカSとの係合動作について図5を参照して説明する。図5は、車両本体Bに設けたストライカSとラッチ20との係合状態及びそのときのラッチ20とラチェット30との噛合状態と、その状態でのラッチレバー110の回転位置とを模式的に示す平面図であり、図5(a)は、ラッチ20がアンラッチ位置にある状態を示し、図5(b)は、ラッチ20がハーフラッチ位置にある状態を示し、図5(c)は、ラッチ20がフルラッチ位置にある状態を示している。
先ず、図5(a)に示すように、係合溝21の開口がプレート基部10aに形成したストライカ進入溝11の開口に合致し、係合溝21よりも右方側に位置するフック部22がストライカ進入溝11から退避した状態の場合、ラッチ20は、ストライカSと係合していない。以下、ラッチ20がストライカSと係合していない図5(a)に示す位置にある場合をラッチ20の「アンラッチ位置」という。ラッチ20がアンラッチ位置の場合、バックドアDは、バックドアDに設けた操作ハンドル(図示せず)等を操作しなくとも、開閉することができる。
次いで、バックドアDを閉じると、ドア開閉装置1が車両本体Bに設けたストライカSに係合するように接近する。これにより、ラッチ20は、ストライカSと係合するのに従ってラッチ軸12を中心として時計回り方向(以下、「係合方向」という)に回転し、図5(b)に示すように、フック部22がストライカ進入溝11の前端側から奥部側へと漸次移動しながらこれを横切る状態となる。この状態の場合、ラッチ20は、ストライカSと後述するフルラッチ位置手前にて係合しているが、ラチェット30のラッチ噛合部31が外周爪部24に噛合しているので、反時計回り方向(以下、「開放方向」という)への回転が規制される。以下、ラッチ20が図5(b)に示す位置にある場合をラッチ20の「ハーフラッチ位置」という。ラッチ20がハーフラッチ位置の場合、バックドアDは、操作ハンドル等を操作してラッチ20をアンラッチ位置へ切り換えなければ開くことができない。このとき、前記検出スイッチの検出部が凸条20bを検出することでラッチ20がハーフラッチ位置にあることを検出し、ハーフラッチ位置検出信号を出力する。
そして、ラッチ20がハーフラッチ位置から更に時計回り方向へ回転すると、フック部22がストライカ進入溝11の奥部を横切ることによりストライカ進入溝11の開口が閉塞される。この状態の場合、ラッチ20は、ストライカSと完全に係合すると共に、ラッチ噛合部31がストライカ当接部23に当接しているので、開放方向への回転が規制される。以下、ラッチ20が図5(c)に示す位置にある場合をラッチ20の「フルラッチ位置」という。このとき、前記検出スイッチの検出部が凸条20bを検出することでラッチ20がフルラッチ位置にあることを検出し、フルラッチ位置検出信号を出力する。ラッチ20がフルラッチ位置の場合、バックドアDは、操作ハンドル等を操作してオープン機構100Bを駆動し、ラッチ20をアンラッチ位置へ切り換えなければ開くことができない。
ラチェット30の解除操作部32は、図5においてラチェット30を反時計回り方向であるラッチ20から離反する方向へ回転させてラッチ20への噛合状態を解除し、ラッチ20をアンラッチ位置へ戻す際の操作部として機能する。つまり、解除操作部32を操作することにより、図5(b)及び図5(c)に示される噛合機構LMとストライカSとの係合状態(ラッチ20とラチェット30との噛合状態)を解除することができる。解除操作部32は、ラチェット軸13が挿通される貫通孔の外周から半径方向外方に延出しており、ラッチ噛合部31に隣接している。
図1〜図3に示すように、本体ボディ40は、プレート基部10aの上面に配設されたラッチ20及びラチェット30の上方から収容部14内に嵌合固定されるものであり、ラッチ軸12及びラチェット軸13に対応する位置にそれぞれ形成された2つの軸挿通孔(図示せず)と、ストライカ進入溝11に対応する位置に形成された緩衝溝43とを有する。前記軸挿通孔は、ラッチ軸12及びラチェット軸13が嵌合する内径を有した貫通孔である。緩衝溝43は、本体ボディ40の前端中央部から基端に向けて設けた切欠であり、ストライカ進入溝11よりもわずかに狭い幅を有するように形成されている。緩衝溝43は、開口端部がストライカSを挿通させることができる大きさを有し、奥部に向けて幅が漸次狭くなるように形成されている。緩衝溝43の最奥部には、クッション用の弾性部44が設置されている。
バックプレート50は、本体ボディ40を配設した収容部14の前端部から中央部やや後方までを覆う板状の部材であり、カバープレート10よりも薄い金属板によって成形されている。図3に示すように、バックプレート50は、ラッチ軸12及びラチェット軸13に対応する位置にそれぞれ軸取付孔51、52が形成され、ラッチ軸12を嵌挿する軸取付孔51の前方から側方にかけて収容部14を露出させるように角部を切除した矩形状の切欠部54が形成されている。バックプレート50は、軸取付孔51、52にラッチ軸12の先端部及びラチェット軸13の先端部をそれぞれかしめることによってカバープレート10に取り付けられ、収容部14の一部(前端から中間部まで)を覆う。切欠部54は、ラッチ20の回転と連係し、ラッチ軸12を中心として回動する連係ピン109の移動範囲を確保するための逃げ部である。この切欠部54による収容部14の露出部分をカバーするため、その内側の本体ボディ40には、連係ピン109の円弧状の回動範囲に沿って円弧縁部45aを有するカバー部45が設けられている(図3参照)。
次に、クローズ/オープン機構100について、図3及び図6〜図9を参照して説明する。図6は、ラッチ20がアンラッチ位置でのクローズ/オープン機構100の状態を示す説明図であり、図6では、セクタギア120、オープンレバー130、ラッチレバー110の当接部114、及びピニオンギア140を正面図で示し、ラッチレバー110を平面図で示しており、図7〜図10についても同様である。図7は、ラッチ20がハーフラッチ位置でのクローズ/オープン機構100の状態を示す説明図であり、図8は、図7に示す状態からセクタギア120を回動させた状態を示す説明図である。図9は、ラッチ20がフルラッチ位置でのクローズ/オープン機構100の状態を示す説明図である。
クローズ/オープン機構100は、ハーフラッチ位置にあるラッチ20を回動させてフルラッチ位置へと移動させるクローズ機構100Aとしてのクローズ機能と、ラッチ20と噛合しているラチェット30を回動させることでラッチ20とラチェット30との噛合状態を解除するオープン機構100Bとしてのオープン機能とを有するものであり、噛合機構LMの上部位置に設けられている。
図2、図3及び図6〜図9に示すように、クローズ/オープン機構100は、ラッチレバー110と、セクタギア120と、オープンレバー130と、ピニオンギア140と、モータ(駆動源)150とを備える。クローズ/オープン機構100は、セクタギア120とピニオンギア140がブラケット70の前面に設けられ、モータ150がブラケット70の背面に設けられ、ラッチレバー110がバックプレート50の上面に設けられ、オープンレバー130がバックプレート50の後端から上方に突設された取付部材(取付片)56の背面に設けられている。
ブラケット70は、噛合機構LMの後方において上下方向に起立した板状の部材であり、カバープレート10と同様な薄い金属板によって成形されている。ブラケット70は、図2及び図3に示すように、正面視で略三角形状をなしており、下部両側部に設けられた折曲部71a、71bが、カバープレート10及びバックプレート50の両側部にそれぞれ設けられた車体取付部の間に挟持されることにより、カバープレート10及びバックプレート50と一体的に固定されている。
図3及び図6〜図9に示すように、ラッチレバー110は、平面視で略くの字形状の部材であり、屈曲部の中心に形成された軸孔111にラッチ軸12の上端付近が挿通され、これによりバックプレート50の上面上でラッチ軸12を中心として回転可能である。すなわち、ラッチ軸12は、ラッチレバー110の回転軸であるラッチレバー軸12として兼用されている。
ラッチレバー110は、軸孔111を中心として半径方向外方に向けて突出する第1アーム112及び第2アーム113を有する。
第1アーム112は、図3及び図7に示すラッチ20のハーフラッチ位置において軸孔111から後方へと延在し、その先端部に上方へと突出する当接部114が設けられている。当接部114は、図2及び図3に示すように、セクタギア120のギア部121よりも多少下方となる位置まで起立した円柱形のピン(シャフト)である。第2アーム113は、図3及び図7に示すラッチ20のハーフラッチ位置において軸孔111から前方やや側方へと延在し、その先端部に平面視で略U字状の凹部115が設けられた二股形状である。第2アーム113は、軸孔111からの長さが第1アーム112よりも短尺に構成されている。凹部115には、ラッチ20の上面に突設された連係ピン109の上部が回転可能(摺動可能)に把持され、これによりラッチレバー110は、ラッチ軸12(ラッチレバー軸12)を中心としてラッチ20と連係して一体的に回転することができる(図5参照)。
セクタギア120は、図2及び図3に示すように、バックプレート50の上面と同程度の高さ位置でブラケット70に固着されたセクタギア軸122に対して回転可能に軸支されている。セクタギア120は、バックプレート50とブラケット70の間に配設され、前後方向(板厚方向)に段差を有する扇形形状の薄板部材であり、その外周面に形成されたギア部121と、正面視で前面の左側方位置から前方へと突出する押圧部(押動部、突部)124と、押圧部124の側方から背面側に多少突出して成形されたガイド片126とを有する。
ギア部121には、モータ150からの駆動力が図示しないギア機構等を介して伝達されて回転するピニオンギア140が噛合している。押圧部124は、図2及び図3に示すように、セクタギア120の前面から前方へと水平方向に突出した円形状のピン(シャフト)である。押圧部124は、ラッチレバー110の回転位置(後述するアンラッチレバー位置、ハーフラッチレバー位置及びフルラッチレバー位置)にかかわらず当該ラッチレバー110の当接部114の周面に当接可能な長さに設定されている。ガイド片126は、セクタギア120の背面側に多少突出した矩片であり、ブラケット70に形成された円弧状のガイド孔72に挿入配置される。図2及び図3から諒解されるように、ガイド孔72は、セクタギア軸122を中心としたセクタギア120の回動動作に伴って回動するガイド片126がスライド可能な寸法に形成されており、ガイド片126がガイド孔72の端部に当接してセクタギア120の回転量が規制される。
図1及び図2に示すように、セクタギア120の前面においてガイド片126の上部には、ブラケット70に取り付けられたセクタスイッチ127の検出部127aが摺接する検出片128が突設されている。セクタスイッチ127は、セクタギア120に取り付けられた検出片128を検出することにより、セクタギア120が図6や図7に示す初期位置(中立位置、待機位置)にあることを検出する。
モータ150は、図2に示すように、ブラケット70の背面側でその長手方向が水平方向(左右幅方向)に沿った状態で固定されている。モータ150の駆動力は、ギアケース151に収容された図示しないギア機構等を介してピニオンギア140に伝達される。図2及び図3に示すように、ピニオンギア140は、ブラケット70の上部中央から前方に突出し下方へと屈曲した取付部141の背面側で、ピニオン軸142に回転可能に軸支され、これによりセクタギア120の外周面にあるギア部121に噛み合いしている。つまり、モータ150からの駆動力によってピニオンギア140を回転させることで、セクタギア70をセクタギア軸122を中心として回動させることができる。なお、モータ150の長手方向(例えば、出力軸方向)が水平方向に沿っているとは、モータ150が当該ドア開閉装置1のバックドアDへの取付方向において上下方向ではなく左右方向に沿った横臥姿勢で配置されることであり、水平方向とは厳密なものではなく、多少傾斜した姿勢であってもよく、要はモータ150の上下方向の取付寸法を抑えることができる姿勢であればよい。
オープンレバー130は、ラッチ20とラチェット30との噛合を解除する解除手段を構成するものであり、図2及び図3に示すように、取付部材(取付片)56の背面側に突出するオープンレバー軸101に軸支されることにより、取付部材56とセクタギア120との間で回転可能に設けられている。
図3及び図6に示すように、オープンレバー130は、出力アーム(作用部)131と、入力部132と、係止片134と、補助入力アーム136と、オープンレバー軸101が挿通する軸孔137とを有する。なお、出力アーム131の途中に形成されたフック状の引掛け部139(図6参照)は、当該ドア開閉装置1をバックドアDに組み付ける製造時に、オープンレバー130を手動で動作させるための図示しない引張り紐(ワイヤ)を引っ掛ける部位である。勿論、この引張り紐は、ドア開閉装置1の組み付け完了後には除去される。
出力アーム131は、軸孔137を中心として半径方向外方に向けて設けられ、端部に収容部14内に配置される出力部131aを有する(図5の2点鎖線参照)。図5及び図6に示すように、出力部131aは、ラチェット30の解除操作部32の右側に近接配置されている。図9中に2点鎖線で示すように、オープンレバー130がオープンレバー軸101の軸心回りに時計回り方向へ回転すると、出力部131aが解除操作部32を左方へ押圧し、ラッチ20を図5(a)に示すアンラッチ位置へと切り換える。
図2及び図3に示すように、オープンレバー130と取付部材56との間には、オープンレバー130を図3及び図6において常時反時計回り方向に回転させるオープンレバーばね138が介在している。オープンレバーばね138は、一端が取付部材56の引掛け部56aに引っ掛けられ、他端がオープンレバー130の係止片134に引っ掛けられている。
係止片134は、補助入力アーム136に隣接して設けられ、軸孔137を中心として半径方向外方へと短く突出した後、前方に向かって屈曲した部位である(図3参照)。取付部材56の上部には、係止片134が挿入される凹部56bが形成されており、係止片134が凹部56b内で移動し且つ係止されることで、オープンレバー130の回動範囲が規定されている。つまり、図2及び図3から諒解されるように、通常時には係止片134が凹部56bの上縁側に当接してオープンレバーばね138によるオープンレバー130の反時計回り方向への回動が規制される一方、オープンレバーばね138の付勢力に抗して回転される操作時には係止片134が凹部56bの下縁側に当接してその回転量が規制される。
入力部132は、軸孔137よりも出力部131a側に位置し、出力アーム131の基端部近傍に形成された円弧状の凹部である。入力部132は、その側方にあるセクタギア120の押圧部124が当接する部分であり、セクタギア120をドア開放方向(図9における反時計回り方向)に回動させた際、オープンレバー130を押圧部124によって安定して押圧動作させることができる形状となっている。
補助入力アーム136は、軸孔137を基準として出力アーム131の反対方向に延出されており、端部に補助入力部136aを有する。図3に示すように、補助入力部136aは、補助入力アーム136の先端を前方に屈曲させて形成されている。このような補助入力部136aを備えることにより、例えば、電気系統の故障やバッテリの消耗等によってモータ150に電源供給ができず、ドア開閉装置1をアンラッチすることができない非常時に、バックドアDの車内側から図示しない蓋体等を取り外して補助入力部136aを露呈させることにより、手動でオープンレバー130を回動操作して、ラッチ20とラチェット30との噛合状態を解除することができる。
図3及び図7に示すように、クローズ/オープン機構100(ドア開閉装置1)では、ラッチ20がハーフラッチ位置にある状態、つまりラッチレバー110がハーフラッチレバー位置にある状態で、セクタギア軸122の軸方向から見て、つまりクローズ/オープン機構100(ドア開閉装置1)の正面視で、セクタギア軸122と、ラッチレバー軸12(ラッチ軸12)と、ラッチレバー110の当接部114とが一直線上又は略一直線上にある。すなわち、図3及び図7に示すように、ハーフラッチ位置におけるクローズ/オープン機構100の正面視(又は平面視)で、セクタギア軸122と、ラッチレバー軸12と、当接部114とが直線L上にあるか又はこの直線Lに略一致するように近接配置される。換言すれば、当該クローズ/オープン機構100では、ラッチ20がハーフラッチ位置にある状態で、セクタギア軸122を含む直線L(又は平面Lと言い換えてもよい)に、ラッチレバー軸12と当接部114とが略一致して(又は含まれて)いる。さらに、この状態では、ラッチレバー110の第1アーム112が前後方向に沿った方向、つまりセクタギア軸122に沿う方向であってセクタギア120の回動方向に直交する方向に延在するように配置される。
また、本実施形態では、ラッチ20がハーフラッチ位置にある状態で、ピニオンギア140のピニオン軸142も、セクタギア軸122、ラッチレバー軸12及び当接部114と共に、直線Lに一致又は略一致する配置となっている(図3及び図7参照)。
なお、セクタギア軸122とラッチレバー軸12と当接部114と(ピニオン軸142)とが略一直線上にあるとは、各要素の軸心が略一直線上にあるということ以外にも、各要素の軸心から多少ずれた部位が略一直線上にあるような状態であってもよい。
以上のように構成されるクローズ/オープン機構100では、先ず、バックドアDが車両本体Bに対して開成状態にある場合、図6に示すように、ラッチレバー110は、ラッチ20のアンラッチ位置に対応するアンラッチレバー位置に配置され、セクタギア120も押圧部124がオープンレバー130に近接した初期位置にある。
次いで、開成状態にあるバックドアDを閉操作すると、上記したように、車両本体B側に設けたストライカSがストライカ進入溝11に進入し、やがて、ストライカSがラッチ20の係合溝21に当接することになる。その結果、ラッチ20は、図示しないラッチばねの付勢力に抗して係合方向に回転する。
この状態からさらにバックドアDを閉操作すると、ストライカ進入溝11へのストライカSの進入量が漸次増大するため、ラッチ20が係合方向へとさらに回転し、ラチェット30のラッチ噛合部31がラッチ20の外周爪部24に係合し、ハーフラッチ位置になる(図5(b)参照)。同時に、ラッチ20の回転に伴い、ラッチレバー110も図6において時計回り方向に回転し、図7に示すように、ラッチレバー110はラッチ20のハーフラッチ位置に対応するハーフラッチレバー位置になる。このとき、前記検出スイッチは、ラッチ20がハーフラッチ位置にあることを検出し、ハーフラッチ位置検出信号を出力する。
続いて、このハーフラッチ位置検出信号に基づき、クローズ/オープン機構100(クローズ機構100A)は、モータ150を駆動し、ピニオンギア140を図7において反時計回り方向に回転させ、図8に示すように、セクタギア120を時計回り方向(ドア閉塞方向)に回動させる。
そうすると、セクタギア120の押圧部124がラッチレバー110の当接部114に当接すると共にこれを押圧し(図8参照)、ラッチレバー110を図8において時計回り方向へと回動させる。その結果、ラッチレバー110と連係してラッチ20が係合方向にさらに回転し、ラッチ噛合部31がストライカ当接部23に当接してフルラッチ位置となり、フック部22がストライカ進入溝11の奥部を横切ってストライカ進入溝11の開口が閉塞される(図5(c)参照)。この際、ラッチレバー110は、図8において時計回り方向に回動した結果、図9に示すように、ラッチ20のフルラッチ位置に対応するフルラッチレバー位置になる。このとき、前記検出スイッチは、ラッチ20がフルラッチ位置にあることを検出し、フルラッチ位置検出信号を出力する。なお、フルラッチ位置が検出された場合には、モータ150を逆方向に回転させ、図9に示すように、セクタギア120を反時計周り方向に回動させて初期位置に戻す動作を行う。
このように、クローズ/オープン機構100では、主にモータ150、ピニオンギア140、セクタギア120(押圧部124)及びラッチレバー110(当接部114)がクローズ機構100Aとして機能し、ハーフラッチ位置にあるラッチ20をフルラッチ位置へと電動で移動させ、バックドアDを閉じることができる。
一方、図9に示すフルラッチ位置(フルラッチレバー位置)からモータ150を逆方向に回転させて、ピニオンギア140を時計回り方向に回転させ、セクタギア120を反時計回り方向(ドア開放方向)に回動させる。そうすると、セクタギア120の押圧部124がオープンレバー130の入力部132を押圧するため、図9中に2点鎖線で示すように、オープンレバー130がオープンレバーばね138の付勢力に抗して時計回り方向に回動され、出力部131aがラチェット30の解除操作部32を図9中左方へ押圧し、ラッチ20とラチェット30との噛合が解除されることでラッチ20が図5(a)に示すアンラッチ位置に切り換わる。
このように、クローズ/オープン機構100では、主にモータ150、ピニオンギア140、セクタギア120(押圧部124)、ラッチレバー110(当接部114)及びオープンレバー130がオープン機構100Bとして機能し、フルラッチ位置やハーフラッチ位置にあるラッチ20をアンラッチ位置へと電動で移動させ、バックドアDを開くことができる。
この場合、本実施形態に係るドア開閉装置1によれば、ラッチ20がハーフラッチ位置にある場合に、モータ150によってセクタギア120を回転させ、セクタギア120の押圧部124でラッチレバー110の当接部114を押圧してラッチレバー110を回転させることにより、ラッチ20をフルラッチ位置に移動し、バックドアDを閉じることができるクローズ機構100Aを備える。そして、このクローズ機構100Aでは、図3及び図7に示すように、ラッチ20がハーフラッチ位置にある状態で、セクタギア120の回転軸であるセクタギア軸122と、ラッチレバー110の回転軸であるラッチレバー軸12と、ラッチレバー110の当接部114とが、セクタギア軸122の軸方向から見て略一直線(直線L)上にある。
これにより、ハーフラッチ位置(ハーフラッチレバー位置)でのラッチレバー110の当接部114の位置が、上記従来技術と比較してクローズ側に寄った配置(図7で右寄りの配置)となり、図7に示すように、初期位置(待機位置)にあるセクタギア120の押圧部124がハーフラッチ位置にあるラッチレバー110の当接部114に当接し押圧するまでの空走距離θを大きくし、セクタギア120が回動を開始してから実際にクローズ動作が開始されるまでの時間を長くすることができる。このため、バックドアDをハーフラッチ位置まで閉じた際、使用者がドアからゆっくりと手を離す時間が確保され、使い勝手が向上する。さらに、ハーフラッチ位置でセクタギア軸122とラッチレバー軸12と当接部114とが略一直線上にあることから、図8に示すように、押圧部124が当接部114に当接して押圧する際に、セクタギア120の回転力を効率よくラッチレバー110(当接部114)へと伝達することができ、クローズ動作開始から完了までの動作時間を短くすることができる。
すなわち、ドア開閉装置1では、ハーフラッチ位置でセクタギア軸122とラッチレバー軸12と当接部114とが略一直線上になるように配置したことにより、ハーフラッチ位置からフルラッチ位置へのクローズ動作全体に要する時間は従来と略同一であるが、クローズ動作開始までの待ち時間を長くすることができる反面、クローズ動作が開始してから完了するまでの時間を短くすることができ、その使い勝手や操作感を向上させることができる。
なお、セクタギア軸122とラッチレバー軸12と当接部114とが略一直線上にあるとは、上記したように、各要素の軸心が略一直線上にある場合や、各要素の軸心から多少ずれた部位が略一直線上にあるような場合以外であってもよく、例えば、図10に示すように、ラッチレバー110の当接部114を多少クローズ側にオフセットして配置した当接部114aとして構成してもよい。すなわち、当接部114aは、その外周面のうち、セクタギア120の押圧部124が当接する側部(左側部)の外形位置が直線L上に一致又は略一致するように配置される。これにより、押圧部124と当接部114との接触線(接触面)が直線Lに一致又は略一致することから、セクタギア120の回転力を一層効率よくラッチレバー110へと伝達することが可能になる。
また、ドア開閉装置1では、ハーフラッチ位置でセクタギア軸122とラッチレバー軸12と当接部114とが略一直線上になるように配置したことにより、図2に示すようにラッチレバー110とセクタギア120との配置を中央寄りに集中させることができ、左右幅方向での寸法を抑制し、装置を小型化することができる。しかも、ハーフラッチ位置においてセクタギア120の回転力を押圧部124からラッチレバー110の当接部114へと効率よく伝達することができることから、図7に示すように、セクタギア軸122から押圧部124までの距離R(半径方向距離)を小さくしても十分な力でラッチレバー110を押圧することができるため、セクタギア120の外形を小さくして装置を一層小型化することができる。
さらに、図7に示すように、ドア開閉装置1では、セクタギア120は、モータ150によって駆動されるピニオンギア140と噛み合うギア部121をセクタギア軸122の上方に有し、ピニオンギア140の回転軸であるピニオン軸142とセクタギア軸122とがセクタギア軸122の軸方向から見て略一直線(直線L)上に配置されている。つまり、ハーフラッチ位置でセクタギア軸122とラッチレバー軸12と当接部114に加えて、ピニオン軸142も略一直線上になるように配置されることにより、セクタギア120の周方向にギア部121を大きく延出させることなくピニオンギア140との間で十分な噛合量を確保できるため、セクタギア120の回動時における装置下方への突出長(出張り長)を可及的に抑えることができ、装置の左右幅方向寸法と共に、上下方向寸法も低減することができる。この際、モータ150はその長手方向が水平方向になるように配置されるため、装置上下方向での寸法を一層低減することができる。
ドア開閉装置1では、取付部材56に設けられたオープンレバー軸101を回転軸として回転可能であると共に、ラチェット30を押圧してラチェット30とラッチ20の噛合状態を解除する作用部として機能する出力アーム131が設けられたオープンレバー130を備える。そして、図6に示すように、ラッチ20がストライカSと係合していないアンラッチ位置にある状態において、セクタギア軸122の軸方向から見て、ラッチレバー110の当接部114がセクタギア軸122よりもオープンレバー130側の位置にあり且つ取付部材56がラッチレバー110の当接部114よりもオープンレバー130側であってセクタギア120と重なる位置にある(図2及び図3も参照)。すなわち、当該ドア開閉装置1では、ハーフラッチ位置でセクタギア軸122とラッチレバー軸12と当接部114とが略一直線上になるように配置したことにより、図6に示すように、ラッチレバー110がアンラッチレバー位置にある場合であっても該ラッチレバー110のオープン側(図6で左側)への突出量が少ないため、アンラッチレバー位置にあるラッチレバー110の当接部114の左側方に十分なスペースが確保できる。そこで、このスペースにオープンレバー130の取付部材56を配置したことにより、図2及び図3に示すようにセクタギア120やラッチレバー110と共に、オープンレバー130も中央寄りに配置でき、左右幅寸法を一層低減し、装置を一層小型化することができる。
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、ドア開閉装置1として、バックドアDをモータ150を用いた電動によってクローズし且つオープンするクローズ/オープン機構100を備えた構成を例示したが、本発明に係るドア開閉装置は、このような構成以外にも勿論適用可能である。例えば、ドアをクローズするクローズ機構のみを上記実施形態のクローズ機構100Aと同様に電動で行い、オープン機構は使用者が操作ハンドル等を手動で操作することでオープンレバーを動作させ、これによりラッチとラチェットとの噛合を解除するドア開閉装置として構成してもよい。換言すれば、本発明に係るドア開閉装置は、ドアを開閉するためにドアに取り付けられるラッチ装置であって、少なくともクローズ機構のみを駆動源からの駆動力によって動作させることができる構成を備えていればよく、さらに換言すれば、電動又は手動によって動作されるオープン機構は、当該ドア開閉装置とは別装置として構成してもよく、このような構成の場合、本発明に係るドア開閉装置は、クローズ機構(電動クローザ)を有するドア閉鎖装置と言うこともできる。