JP2013011063A - 木質耐火被覆材 - Google Patents
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Abstract
【課題】木質部材(集成材)による耐火被覆材で鉄骨造の耐火被覆が実現でき、建物の耐火構造化と木質化が同時に無駄なく容易に実現可能となるので、工事時間の短縮とコスト削減が図れるものである。また、木材を耐火被覆材として使うことは、新たな分野での活用となり、森林資源の活用範囲が広がり、林業の活性化が図れ、CO2削減に貢献できる。
【解決手段】集成材によるもので、加熱時間に応じた被覆厚さを確保した木質部材8を柱、梁等の構造材である鉄骨部材の耐火被覆とした。
【選択図】 図1
【解決手段】集成材によるもので、加熱時間に応じた被覆厚さを確保した木質部材8を柱、梁等の構造材である鉄骨部材の耐火被覆とした。
【選択図】 図1
Description
本発明は、柱、梁等の構造材である鉄骨部材の耐火被覆として木質の部材を用いる木質耐火被覆材に関するものである。
鉄骨造の柱および梁を木質化するためには、従来技術である石膏ボードなどの耐火被覆を施してから、または、岩綿等を原材とした吹き付け材により被覆してから、木材で覆い木造のように見せるのが一般的である。
前記技術では耐火被覆の施工後に下地を組み木材で仕上げるため、施工が二度手間となり、時間、コストを要していた。
下記特許文献は、岩綿等の吹き付けが必要でなく、また、従来に比較して施工性およびコスト面において有利な耐火構造として、構造材である鉄骨部材を木材からなる耐火被覆材で被覆した構成が提案されている。
特開2000−17752号公報
これは図5に示すように、梁1は、H型鋼(鉄骨部材)2を備えて構成されていて、H型鋼2は、その上フランジ3が床スラブ5を支持する構成とされており、また、床スラブ5を支持する面以外の三方が耐火被覆材6,…で覆われた構成となっている。
耐火被覆材6は、木材によって形成されており、その厚さ寸法が、火災により所定時間の加熱を受けた場合にも一定の健全な部分が残っているようなものとされている。
このような構成とされた梁1においては、火災を受けた場合に、耐火被覆材6の表面が燃焼したとしても、その部分に形成される炭化層が遮熱力を有するため、耐火被覆材6の深部にまで急速に燃焼が及ぶことが無く、形成される炭化層より内方は比較的低温に保たれることとなり、H型鋼2が焼損したり、加熱による耐力低下を生じることが無く、安全性が保たれる。
また、下記特許文献は、同様に木材を利用した耐火被覆構造であるが、耐火被覆を構成する木材として、燃焼して炭化層を形成しうるに足る断面を有するものであるとしている。
特開平2−58651号公報
前記特許文献1や2は、耐火被覆材は、木材によって形成されており、その厚さ寸法が、火災により所定時間の加熱を受けた場合にも一定の健全な部分が残っているようなものとされているとあるだけであり、これが十分耐火に適するものであるか、否かが不明である。
さらに、耐火被覆材を仕上げ材として用いるようにすれば、劇場や寺社建築等、主要構造部が鉄骨造で内部デザインが木質系の建物に、この耐火構造を好適に用いることができ、この場合、耐火被覆材が仕上げ材兼用となるので、コストダウンを図ることができるとあるが、該耐火被覆材が仕上げ材として適するものであるとの根拠がない。
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、鉄骨造の柱および梁の耐火被覆と木質化が同時に行え、工事時間の短縮とコスト削減が図れる木質耐火被覆材を提供することにある。
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、集成材によるもので、加熱時間に応じた被覆厚さを確保した木質部材を柱、梁等の構造材である鉄骨部材の耐火被覆としたことを要旨とするものである。
請求項1記載の本発明は、木質部分(集成材)に耐火性能を付与する技術があること、あるいは、木質部分(集成材)は加熱時間に応じた被覆厚さを確保すれば十分な耐火性能を有することに着目し、木質部分を鉄骨等の耐火被覆材として使用するものである。
請求項1記載の本発明によれば、鉄骨造建物の柱や梁を木質部材(集成材)で被覆することで、耐火被覆と同時に木質化が可能となり、工期の短縮、コスト削減が可能になる。
請求項2記載の本発明は集成材からなる木質部材は、難燃薬剤等の塗布・注入を行わない無処理集成材であること、請求項3記載の本発明は集成材からなる木質部材は、木質部材(集成材)に難燃薬剤等の塗布・注入を行った難燃処理集成材であることを要旨とするものである。
請求項2記載の本発明によれば、内装を兼ねた木質部材(集成材)に難燃薬剤等の塗布・注入を行わない無処理集成材を用いて、被覆した鉄骨の温度上昇を抑制することが可能となり、木質部材(集成材)が耐火被覆としての役割を果たす。請求項3記載の本発明によれば、前記作用に加えて、内装を兼ねた木質部材(集成材)に難燃薬剤等の塗布・注入を行った難燃処理集成材を用いた仕様であれば、無処理集成材より木質部分の厚さを薄くすることが可能である。
請求項4記載の本発明は、木質部材の非加熱面に熱容量の大きい熱吸収材を配置したことを要旨とするものである。
請求項4記載の本発明によれば、内装を兼ねた木質部材(集成材)に難燃薬剤等の塗布・注入を行わない無処理集成材を用いて、木質部材(集成材)の非加熱面に熱容量の大きい熱吸収材を配置することで、木質部材(集成材)の温度上昇が抑制され、木質部材(集成材)で被覆した鉄骨の温度上昇も同時に抑制することが可能となり、木質部材(集成材)が耐火被覆としての役割を果たす。
請求項5記載の本発明は、鉄骨部材は鉄骨H型鋼であり、フランジ部分の耐火被覆は集成材によるもので、加熱時間に応じた被覆厚さを確保した木質部材、ウェブ部分の耐火被覆はこの木質部材の非加熱面に金属板等の熱容量の大きい熱吸収材を配置したものとすることを要旨とするものである。
請求項5記載の本発明によれば、鉄骨H型鋼を無処理集成材で被覆した場合、フランジ部分の耐火被覆は熱容量の大きい鋼材と密着することで熱量が吸収されるが、ウェブ部分は密着せず空洞になるため、そのまま貼ると耐火被覆の温度上昇により炭化し燃え抜けてしまうことが予測される。そこで、ウェブ部分の木質部材(集成材)の非加熱面側に熱容量の大きい熱量吸収材を配置することで、木質部材(集成材)の温度上昇が抑制されるので、鉄骨の温度上昇も同時に抑制することが可能となる。
以上述べたように本発明の木質耐火被覆材は、木質部分(集成材)による耐火被覆材で鉄骨造の耐火被覆が実現でき、建物の耐火構造化と木質化が同時に無駄なく容易に実現可能となるので、工事時間の短縮とコスト削減が図れるものである。
また、木材を耐火被覆材として使うことは、新たな分野での活用となり、森林資源の活用範囲が広がり、林業の活性化が図れ、CO2削減に貢献できる。
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の木質耐火被覆材の第1実施形態を示す縦断正面図で、図中2は鉄骨H型鋼である。
このH型鋼2は例えば、前記従来例を示す図5のように、梁1を構成していて、その上部フランジ3が床スラブ5を支持する。なお、H型鋼2を柱を構成する鉄骨部材として本発明を適用する場合もある。
図1に示すようにH型鋼2が梁1を構成する場合では、床スラブ5を支持する面以外の三方を耐火被覆材7,…で覆うものとするが、本発明は耐火被覆材7を、集成材によるもので、加熱時間に応じた被覆厚さを確保した木質部材8とした。
集成材(しゅうせいざい)とは、断面寸法の小さい木材(ラミナ)を接着剤で再構成して作られる木質材料で、製造工程は、断面寸法の小さい木材(ラミナ)を人工的に乾燥する。ラミナ同士をフィンガージョイントと呼ばれる接合方法で縦方向につなぐ。縦方向に接合されたラミナの広い面に接着剤を塗布する。接着剤が塗布されたラミナを何枚か重ね、圧力を掛けて貼り合せる。
かかる集成材の特徴としては、木材素材よりも強度のばらつきが小さい。そのため設計強度を大きく取ることができ、また規格品であるため数学的に構造強度を算定することが出来、通常の木材では得られない大きな断面のもの、湾曲した形状のものを作ることができる。スギなどの間伐材や歪みの出やすいカラマツなどを有効に活用できる。乾燥による変形・割れ等の狂いが生じにくい。
大きな断面の木材を作る際、普通の製材は大径木を使う必要があるが、集成材は小径木を接着することにより作る。そのため、比較的伐採期間が短い管理された人工林の木を有効に活用できるため、地球の「生態系の保全」と言う点で、他の条件が同じであれば、普通の製材に比べて環境に優しいとする。
日本農林規格(JAS規格)における「集成材」では、「集成材」を「ひき板又は小角材等をその繊維方向を互いにほぼ平行にして、厚さ、幅及び長さの方向に集成接着を施した一般材」と定義し、製造条件や試験方法を規定している。
この本発明の耐火被覆材7を形成する集成材による木質部材8には、難燃薬剤等の塗布・注入を行わない無処理集成材を用いた。
なお、「難燃薬剤等の塗布・注入を行わない」とは、全く難燃薬剤を含まない場合のほかに、難燃薬剤の難燃効果を発揮させる含有量よりも少ない量を含有させる場合をいう。木材そのものの風合いを保つ観点や製造作業性などの観点からは、表面層に難燃薬剤を積極的には注入処理しないことが、特に好ましい。
このように鉄骨H型鋼2を無処理集成材で被覆した場合、フランジ部分の耐火被覆は熱容量の大きい鋼材と密着することで熱量が吸収されるが、ウェブ10部分は密着せず空洞になるため、そのまま貼ると耐火被覆の温度上昇により炭化し燃え抜けでしまうことが予測される。
そこで、ウェブ10部分の木質部材(集成材)の非加熱面側に熱容量の大きい熱量吸収材11を配置することで、木質部材8(集成材)の温度上昇が抑制されるので、鉄骨の温度上昇も同時に抑制することが可能となる。図中9は下フランジであるが、これには木質部材8(集成材)のみのものを貼り付ける。
熱容量の大きい熱量吸収材11としては、コンクリート、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメントなどの無機質材料、鉄筋などの鉄、ステンレスなどの金属材料が利用可能であり、木質部材8(集成材)の断面及び長さに合わせて予め成形したものなどがあるほか、前記と同一断面の中空矩形状断面の鋼管等のパイプ内に前記無機材料、液体金属、水、無機水和塩、消石灰等の蓄熱材料を充填して一体化したものを採用することもできる。
このように、木質部材8(集成材)の非加熱面に熱容量の大きい熱吸収材11を配置することで、木質部材8(集成材)の温度上昇が抑制され、木質部材8(集成材)で被覆した鉄骨の温度上昇も同時に抑制することが可能となり、木質部材(集成材)が耐火被覆としての役割を果たす。
図中12は補強材で、ウェブ10部分の周囲の空洞にこれを配設して、熱容量の大きい熱量吸収材11を配した木質部材8(集成材)を支承する。
また、図示は省略するが、内装を兼ねた木質部材8(集成材)に難燃薬剤等の塗布・注入を行った難燃処理集成材を用いた仕様とすることができ、この場合は前記無処理集成材より木質部分8の厚さを薄くすることが可能である。
前記熱容量の大きい熱量吸収材11の配設も省略できる場合もある。
難燃薬剤等の塗布・注入を行った難燃処理集成材は、集成材を構成するスギの引き板材等の木材の薄板であるラミナに難燃薬剤を注入したものである。刃物インサイジング、ニードルインサイジング又はレーザインサイジング処理によって穿孔を形成し、該穿孔から難燃薬剤を注入して形成される。
また、前記難燃薬剤は、木材に注入されたときに、輻射熱強度50kW/m2でのコーンカロリーメータ試験(ISO−5660−1)で、建築基準法に定める準不燃材料級または不燃材料級の防火性能を示す薬剤で、リン系防火薬剤、窒素系防火薬剤、ホウ素系防火薬剤、ハロゲン系防火薬剤など一般な難燃薬剤を使用することができる。具体的には、ノンネンOK−201又はノンネンW2−50(リン系防火薬剤、丸菱油化工業社製)、SKO−5000S(リン系防火薬剤及びホウ素系防火薬剤を含む難燃薬剤、日本防災化学研究所製)などを挙げることができる。
図2、図3は鉄骨H型鋼2が柱材の場合であり、木質部材8(集成材)で四方を囲むようにしたものである。図2に示すように、木質部材8(集成材)のピースと熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付けた木質部材8(集成材)のピースとの2種を準備し、貼り込みにより取り付けるようにする。
図中13は鉄骨H型鋼2のフランジであり、このフランジ13には熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付けていない無処理集成材による木質部材8(集成材)を貼り、ウェブ10の部分の外側には密着せず空洞を存して熱容量の大きい熱量吸収材11を貼り付けた木質部材8(集成材)を貼る。
補強材12を配置する点は前記図1と同様である。
図4は、箱型鋼管柱14の場合で、熱容量の大きい熱量吸収材を貼り付けていない木質部材8(集成材)のみを耐火被覆として貼り付けた。
1…梁 2…H型鋼(鉄骨部材)
3…上フランジ 5…床スラブ
6…耐火被覆材 7…耐火被覆材
8…木質部材(集成材) 9…下フランジ
10…ウェブ 11…熱容量の大きい熱量吸収材
12…補強材 13…フランジ
14…箱型鋼管柱
3…上フランジ 5…床スラブ
6…耐火被覆材 7…耐火被覆材
8…木質部材(集成材) 9…下フランジ
10…ウェブ 11…熱容量の大きい熱量吸収材
12…補強材 13…フランジ
14…箱型鋼管柱
Claims (5)
- 集成材によるもので、加熱時間に応じた被覆厚さを確保した木質部材を柱、梁等の構造材である鉄骨部材の耐火被覆としたことを特徴とする木質耐火被覆材。
- 集成材からなる木質部材は、難燃薬剤等の塗布・注入を行わない無処理集成材である請求項1記載の木質耐火被覆材。
- 集成材からなる木質部材は、木質部材(集成材)に難燃薬剤等の塗布・注入を行った難燃処理集成材である請求項1記載の木質耐火被覆材。
- 木質部材の非加熱面に熱容量の大きい熱吸収材を配置した請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の木質耐火被覆材。
- 鉄骨部材は鉄骨H型鋼であり、フランジ部分の耐火被覆は集成材によるもので、加熱時間に応じた被覆厚さを確保した木質部材、ウェブ部分の耐火被覆はこの木質部材の非加熱面に熱容量の大きい熱吸収材を配置したものとする請求項4記載の木質耐火被覆材。
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