JP2013010874A - 複合金属石ケン及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱安定効果や着色防止効果が向上し、塩素含有重合体用の安定剤として好適に使用される複合金属石ケンを提供する。
【解決手段】この複合金属石ケンは、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩との固溶体からなり、亜鉛/周期表第二族金属原子比が99/1乃至40/60の範囲にあり、(亜鉛+周期表第二族金属)/脂肪酸当量比が1〜1.05の範囲にあり、酸価が1.0mgKOH/g以下を有していることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、塩素含有重合体用の安定剤として有用な複合金属石ケン及びその製造方法に関する。
ポリ塩化ビニル等の塩素含有重合体は、熱及び光等に曝されると、分子鎖内で脱HClが生じ、分解、変色等を生ずる。このような熱分解等を抑制するための安定剤として、Pb、Cd、Sn等の金属塩乃至金属酸化物などが広く使用されていたが、環境に対する悪影響の点から、これらの金属塩乃至金属酸化物の使用が避けられるようになってきた。
上記の金属塩乃至金属酸化物の代わりの安定剤としては、脂肪酸亜鉛や周期表第二族金属の脂肪酸塩などの金属石ケンが代表的であり、特に、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属脂肪酸塩とを併用したときに、優れた熱安定効果が発揮されることが知られている。
このような金属石ケンによる安定化は、主として、塩化ビニル樹脂等の塩素含有重合体からの脱HClにより生成した不安定塩素を含む構造を置換し、安定な構造に転換する機能と、塩素含有重合体から発生したHClを捕捉する機能によるものであり、特に脂肪酸亜鉛(Zn(COOR))を例にとると、例えば下記式で表される。
不安定塩素の置換;
−CH−CH=CH−CH(Cl)−CH− + 1/2Zn(COOR)
→ −CH−CH=CH−CH(OCOR)−CH− + 1/2ZnCl
HClの捕捉;
Zn(COOR) +2HCl → 2RCOOH + ZnCl
ところで、上記で副生した塩化物(ZnCl)は、塩素含有重合体からの脱HClを促進する作用を有しているが、Ca等の周期表第二族金属の脂肪酸塩は、この塩化物を、脱HCl促進作用を示さない形態に転換させると同時に、該塩化物(ZnCl)から脂肪酸金属亜鉛を復活させる機能を有している。この反応は下記式で表される。
ZnCl +Ca(COOR) → Zn(COOR) + CaCl
また、金属石ケン等の安定剤は、加熱により塩素含有重合体を着色する傾向があるが、このような着色傾向が、脂肪酸亜鉛は寒色系(青色、紫、緑色系)であり、周期表第二族金属肪酸塩は暖色系(黄色、橙色、赤色系)である。即ち、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属脂肪酸塩とは互いに補色関係にある着色傾向を示すため、両者が混合されたときに無彩色(灰色)の着色傾向を示すこととなり、塩素含有重合体の着色を効果的に防止するという利点もある。
このように脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属脂肪酸塩との組み合わせは、優れた熱安定効果を発揮し且つ着色を抑制するという点でも優れている。
例えば、特許文献1には、脂肪族カルボン酸を主体とする酸を溶融した後、二種以上の金属化合物を添加し、減圧下で加熱、脱水をさせながら反応を行うことにより金属石ケンを製造することが提案されており、その実施例4では、ステアリン酸と酸化亜鉛を反応させてステアリン酸亜鉛を製造した後、水酸化カルシウムを反応させてステアリン酸カルシウムを製造した例が示されており、得られた金属石ケンは塩素含有重合体用の安定剤として使用され得ることも教示されている。
また、特許文献2には、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の酸化物または水酸化物とを加熱直接反応させて得られる塩基性脂肪族カルボン酸塩が提案されており、これを塩素含有重合体用の安定剤として用いることが開示されている。
特開昭58−222200号公報 特開平6−287159号公報
しかるに、最近では、高温領域で塩素含有重合体の成形加工を行う場合が増えており、熱安定効果や着色防止効果のさらなる向上が求められている。
従って、本発明の目的は、熱安定効果や着色防止効果が向上し、塩素含有重合体用の安定剤として好適に使用される複合金属石ケン及びその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、金属石ケン系の塩素含有重合体用安定剤について鋭意研究した結果、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩とが固溶体の形態で存在する複合金属石ケンでは、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩との単なる混合物を安定剤として用いた場合に比して、より優れた熱安定性及び着色防止効果が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩との固溶体からなり、亜鉛/周期表第二族金属原子比が99/1乃至40/60の範囲にあり、(亜鉛+周期表第二族金属)/脂肪酸当量比が1〜1.05の範囲にあり、酸価が1.0mgKOH/g以下を有していることを特徴とする複合金属石ケンが提供される。
上記の複合金属石ケンにおいては、
(1)前記周期表第二族金属が、カルシウム、マグネシウム及びバリウムからなる群より選択された少なくとも1種であること、
(2)前記脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩とは、共通の脂肪酸の塩であり、該脂肪酸の炭素数は12以上であること、
(3)前記共通の脂肪酸がステアリン酸であること、
(4)示差熱分析において、前記固溶体が、125℃よりも低い温度領域に融解吸熱ピークを有していること、
(5)250μm以上の粗粒分含量が10重量%以下であり且つ106μm以下の微粒分含量が30重量%以上である粒度分布を有していること、
(6)0.45g/ml以上の嵩比重を有していること、
が好ましい。
このような複合金属石ケンは、塩素含有重合体用安定剤として好適に使用される。
また、上記の複合金属石ケンは、炭素数が8以下の多価カルボン酸の存在下で、溶融状態にあり且つ過剰量の脂肪酸に、亜鉛化合物を常圧下で反応させて脂肪酸亜鉛を生成させ、引き続いて、生成した脂肪酸亜鉛と共存する残存脂肪酸に、周期表第二族金属水酸化物を反応させて周期表第二族金属の脂肪酸塩を生成せしめることにより製造される。
上記の製造方法においては、140乃至160℃の温度で、亜鉛化合物と脂肪酸との反応、及び周期表第二族金属水酸化物と脂肪酸との反応が行われることが好適である。
本発明の複合金属石ケンにおいては、これを塩素含有重合体に配合したとき、優れた熱安定性を付与することができる。例えば、後述する実施例にも示されているように、この複合金属石ケンが配合された塩素含有重合体組成物は、着色防止効果に優れ、高温雰囲気に保持した場合において、黒色に変色するまでの時間が長い。
これらの効果は、何れも、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属塩との混合粉末を塩素含有重合体に配合した場合よりも優れており、さらに、特許文献2に開示されているような塩基性脂肪族カルボン酸塩と比較しても、優れた熱安定性及び着色防止効果が得られる。
本発明の複合金属石ケンが、上記のように優れた熱安定性及び着色防止能を示す理由は、明確に解明されたわけではないが、おそらく、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩とが固溶しているため、両成分が均一に一体化された状態で存在し、塩素含有重合体中に分散させたとき、両者が一体となって挙動し、脂肪酸亜鉛の特性と周期表第二族金属の脂肪酸塩の特性とが十分に発揮されるためではないかと考えられる。特に、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩との固溶は、融点降下を生じ、このような融点降下により、この複合金属石ケンを塩素含有重合体に溶融混練したとき、該複合金属石ケンが直ちに均一に分散し、この結果、熱による着色を効果的に防止できるものと思われる。
例えば、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩との単なる混合体では、これを塩素含有重合体中に分散したとき、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩とが分離されてしまい、例えば脂肪酸亜鉛による塩素含有重合体の安定化に伴って発生する塩化物(ZnCl)を周期表第二族金属の塩化物に転換し、ZnClによる脱塩化水素を抑制するという周期表第二族金属の脂肪酸塩に特有の効果が十分に発揮されず、従って、その安定化性能は、後述する比較例に示されているように、本発明の複合金属石ケンに比して劣ったものとなるのである。さらには、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩とが一体化されていないため、その補色関係による着色防止も本発明の複合金属石ケンほど発揮されない。
また、CaO等の周期表第二族金属酸化物が複合化した塩基性脂肪族カルボン酸亜鉛では、周期表第二族金属の脂肪酸塩が示すZnClによる脱塩化水素を抑制するという機能を示さないため、やはり、本発明の複合金属石ケンに比して、その安定化機能は劣ったものとなる。
更に、本発明の複合金属石ケンでは、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩とが固溶体を形成しているため、その嵩比重が0.45g/ml以上と高く、従って、ハンドリング性にも優れている。
また、上述した複合金属石ケンは、いわゆる乾式直接法により製造され、具体的には、単に溶融状態を維持しながら、過剰の脂肪酸に亜鉛化合物を反応させ、次いで、引き続いて周期表第二族金属の水酸化物を反応させることにより製造される。即ち、減圧や加圧等の格別の操作が不要であるため、格別の反応装置を使用する必要が無く、さらには溶媒も使用せず、直接反応により脂肪酸亜鉛及び周期表第二族金属脂肪酸塩を生成せしめるため、排水処理にかかる負担も少ないばかりか、ろ過や乾燥等の処理も必要がないため、生産コストが極めて安価であり、これは、本発明の製造方法の大きな利点である。
また、かかる方法によれば、従来、乾式直接法で製造が困難であった高融点のステアリン酸バリウムを含む複合金属石ケンも容易に製造できる。
尚、脂肪酸亜鉛や周期表第二族金属の脂肪酸塩は、それぞれ市販されており、これらを直接溶融混合して固溶体を製造することも考えられるが、脂肪酸亜鉛の融点に比して周期表第二族金属の脂肪酸塩の融点が高いことも関連して、両成分が高温でかなり長時間の熱履歴を受けることになり、このような熱履歴によって分解や変色を生じ、前述した原子比での複合金属石ケンを製造することは実質上不可能である。また、仮に製造できたとしても、その品質が低く、安定化効果や着色防止効果が低く且つ不安定なものとなってしまう。
実施例2で調製された複合金属石ケンについて示差熱分析で得られたDTA曲線を示す図。 参考例1で調製されたステアリン酸亜鉛について示差熱分析で得られたDTA曲線を示す図。
<複合金属石ケン>
本発明の複合金属石ケンは、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩との固溶体とからなる。
亜鉛及び周期表第二族金属と塩を形成する脂肪酸は、亜鉛や周期表第二族金属と形成する塩が従来から塩素含有重合体用安定剤として公知のものであればよく、一般には、炭素数が12以上、特に12乃至22の飽和乃至不飽和脂肪酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸等を例示することができる。これらの中でも飽和脂肪酸、特に、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好適である。
また、固溶体を形成するという製造上の観点から、脂肪酸亜鉛を形成する脂肪酸と、周期表第二族金属の脂肪酸塩を形成する脂肪酸とは共通していることが必要である。
また、周期表第二族金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウムを挙げることができる。
このような複合金属石ケンにおいて、亜鉛/周期表第二族金属原子比は99/1乃至40/60、好ましくは90/10乃至60/40の範囲にあることが必要である。この原子比が上記範囲外であると、脂肪酸亜鉛に特有の熱安定化能と周期表第二族金属脂肪酸塩に特有の熱安定化能とのバランスが崩れ、この結果、この複合金属石ケンが有する熱安定化能が低下してしまう。また、この原子比が上記範囲よりも大きい場合(即ち、周期表第二族金属量が少ない場合)には、少ない量の脂肪酸に亜鉛化合物を反応させることになるため、その反応に著しく長時間を要し、この複合金属石ケン(固溶体)の製造が困難となってしまう。
本発明において、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩とが固溶体を形成していることは、周期表第二族金属の脂肪酸塩よりも融点が低い脂肪酸亜鉛よりもさらに低い融点を有していることから確認することができる。例えば、後述する実施例に示されているように、この複合金属石ケンについて測定される融点は最大で121℃であり、例えば市販のステアリン酸亜鉛について測定した融点(122℃)よりも低い。
このような融点降下は、特に着色防止の点で極めて有利である。即ち、溶融混練により複合金属石ケンを塩素含有重合体に分散させると、この複合金属石ケンが直ちに塩素含有重合体中に均一に分散することとなり、この着色防止機能が直ちに発現し、塩素含有重合体の初期着色を効果的に防止することが可能となる。
また、本発明の複合金属石ケンは、上記のような融点降下を生じているため、示差熱分析によっても、固溶体の形成を確認することができる。即ち、この複合金属石ケンについて示差熱分析を行うと、そのDTA曲線には融解に由来する吸熱ピークが複数観測されるが、これらの吸熱ピークは、125℃よりも低い温度領域に存在する。即ち、脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩との単なる混合物(即ち、固溶体を形成していない)についての示差熱分析では、125℃以上の温度領域に吸熱ピークが存在している。即ち、脂肪酸亜鉛の融解による吸熱ピークは、周期表第二族金属脂肪酸塩の吸熱ピークよりも低い温度領域に発現するが、このような低温側吸熱ピークであっても、125℃以上の温度に発現する。従って、示差熱分析により、125℃より低温領域に吸熱ピークが存在することにより、固溶体の形成を確認することができる。
尚、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸亜鉛は、通常、不純物含量が多く、従って、測定される融点にかなりのバラツキを生じることがある。従って、固溶体の生成の確認等は示差熱測定により行うことが確実である。
また、本発明の複合金属石ケンは、(亜鉛+周期表第二族金属)/脂肪酸当量比が1〜1.05の範囲にある。特許文献2記載の金属石ケンはこの値が0.1〜2.0の範囲にあり、塩基性カルボン酸亜鉛とは本発明の複合金属石ケンは相違している。
また、本発明の複合金属石ケンにおいては、その酸価が1.0mgKOH/g以下であり、0.4mgKOH/g以下であることが更に好ましい。即ち、後述するように、この複合金属石ケンは脂肪酸を亜鉛化合物及び周期表第二族金属の水酸化物と反応させることにより製造されるため、当然、未反応の脂肪酸が残存することがある。しかるに、このような脂肪酸の残存は、歩留まりの低下や複合金属石ケンの安定剤としての性能低下を引き起こすため、脂肪酸の残存を極力避け、酸価を上記範囲内とすることが好適となる。
また、本発明の複合金属石ケンは、固溶化によって嵩比重が高められており、0.45g/ml以上、特に0.50乃至0.55g/mlの嵩比重を有しており、従って、取り扱いが容易であり、例えば、その搬送等に要する負担も少ない。
上述した本発明の複合金属石ケンは、塩素含有重合体用の安定剤として好適であり、塩素含有重合体に配合されて使用されるが、このために、乾式で粉砕し、所定の粒度に分級されるが、その粒度分布は、250μm以上の粗粒分含量が10重量%以下であり且つ106μm以下の微粒分含量が30重量%以上であることが好ましい。即ち、粗粒分が必要以上に多いと、この複合金属石ケンを塩素含有重合体に均一に分散させることが困難となり、また、微粒分を過度に多くすると、粉砕が過酷となってしまい、着色や分解を生じ易く、この複合金属石ケンの品質の点で問題を生じてしまうからである。
<複合金属石ケンの製造>
本発明の複合金属石ケンは、亜鉛化合物を、多価カルボン酸の存在下で脂肪酸と反応させて脂肪酸亜鉛を生成させ、引き続いて、脂肪酸亜鉛と共に存在している脂肪酸(即ち、未反応の脂肪酸)に、周期表第二族金属水酸化物を反応させて周期表第二族金属の脂肪酸塩を生成せしめることにより製造される。これらの反応は、全て常圧下、即ち、開放系で行われる。
原料として用いる亜鉛化合物は、前述した脂肪酸と反応して脂肪酸亜鉛を形成するものであれば特に制限されず、酸化物、水酸化物、塩化物等を使用することができるが、一般的には酸化亜鉛が使用される。
また、多価カルボン酸は、亜鉛化合物と脂肪酸との反応を促進させるための反応触媒として使用されるものであり、炭素数が8以下のもの、例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、フタル酸等が使用される。このような多価カルボン酸を使用しない場合には、亜鉛化合物と脂肪酸との反応が迅速に進行せず、この複合金属石ケンの製造が困難となってしまう。
このような多価カルボン酸の使用量は、所謂触媒量でよく、例えば、反応に用いる脂肪酸量に対して、0.01乃至1重量%程度の量で使用すればよい。
上記の多価カルボン酸の存在下で亜鉛化合物と反応させる脂肪酸は、前述したとおりのものであるが、かかる脂肪酸は、亜鉛化合物及び後添される周期表第二族金属水酸化物の全量と反応するに足る量で、亜鉛化合物との反応段階から使用される。即ち、亜鉛化合物との反応後に使用される周期表第二族金属水酸化物は、前述した範囲の亜鉛/周期表第二族金属原子比を確保する量で使用されるが、このような量で使用される周期表第二族金属水酸化物とも反応するに足る量で使用される。このため、本発明では、脂肪酸は、亜鉛化合物に比して過剰量に使用される。
即ち、本発明では、亜鉛化合物及び周期表第二族金属水酸化物の反応に供する脂肪酸の全量を、初期段階(亜鉛化合物と反応させる時点)から使用されるため、過剰の脂肪酸の存在下で亜鉛化合物が脂肪酸と反応することとなる。所謂、乾式直接反応法では、酸化亜鉛等の亜鉛化合物と脂肪酸とは極めて反応し難いが、前述した多価カルボン酸の使用及び亜鉛化合物に比して過剰量の脂肪酸の使用により、この反応を遅延なく進行させ、酸化亜鉛に加え、周期表第二族金属水酸化物の実質全量を反応させることが可能となる。従って、用いる周期表第二族金属水酸化物の量が少なく、亜鉛/周期表第二族金属原子比が所定の範囲よりも大きくなるような場合には、亜鉛化合物と脂肪酸との反応が著しく困難となってしまうこととなる。
尚、上記で述べたように、脂肪酸は、亜鉛化合物及び周期表第二族金属との全量と反応し得る量で使用されるが、必要以上の脂肪酸の使用は、得られる複合金属石ケンの不要成分量の増大を招き、安定剤としての性能低下をもたらす。従って、先に述べたように、最終的に得られる複合金属石ケンの酸価が1.0mgKOH/g以下の範囲に維持される量で使用するのがよい。
また、亜鉛化合物と脂肪酸との反応及び引き続いて行われる周期表第二族金属水酸化物と脂肪酸との反応は、脂肪酸が溶融した状態、即ち、脂肪酸の融点以上の温度の攪拌下で行われるが、その加熱温度範囲は、何れの反応も140℃乃至160℃の範囲であることが好ましい。
即ち、上記の温度範囲は、大まかに言って、生成する脂肪酸亜鉛の融点(脂肪酸よりも高融点である)よりも高い温度であって、且つ生成する周期表第二族金属の脂肪酸塩の融点よりもやや低い温度域となっている。このため、増粘による反応の長期化を防止し、短時間で反応を完結させ、生成する脂肪酸亜鉛や周期表第二族金属の脂肪酸塩の変質乃至分解を有効に防止し、安定した性能の固溶体を得ることが可能となる。
例えば、脂肪酸が溶融した状態で反応が行われたとしても、上記範囲よりも低い温度で反応が行われる場合には、脂肪酸と亜鉛化合物との反応が迅速に進行せず、また溶融粘度の増大などによって反応を完結させることが困難となる傾向がある。また、上記温度よりも高温領域で反応を行うと、熱履歴による各成分の変質や分解を生じるおそれがある。また、周期表第二族金属水酸化物が急激に反応し、溶融物の急激な増粘によって攪拌効率が大幅に低下してしまい、反応の進行が困難となり、未反応物の含有量が増大したり、亜鉛/周期表第二族金属原子比を所定の範囲に設定することができなくなるおそれも生じる。
上記のような反応は、何れも常圧、開放系で行われ、副生する水分は、そのまま揮散する。従って、亜鉛化合物と脂肪酸との反応及び周期表第二族金属水酸化物と脂肪酸との反応は、何れも、溶融物が透明になることにより反応の完結を認識することができる。
また、複数種の周期表第二族金属水酸化物を用いることもでき、この場合には、複数種の周期表第二族金属水酸化物を同時に添加して反応せしめてもよいし、反応が完結する毎に、順次、周期表第二族金属水酸化物を添加することもできる。
尚、上述した本発明の製造方法においては、始めに亜鉛化合物と脂肪酸とを反応せしめ、次いで周期表第二族金属水酸化物と脂肪酸との反応を行うことが重要であり、この逆に、周期表第二族金属水酸化物と脂肪酸との反応後に、亜鉛化合物と脂肪酸とを反応せしめることはできない。即ち、亜鉛化合物と反応する脂肪酸の量が当量程度となってしまうため、その反応が殆んど進行しなくなってしまうからである。この場合、大過剰で脂肪酸を使用すれば、亜鉛化合物との反応を完結させることができるが、不要成分量が著しく多くなってしまい、目的とする特性の複合金属石ケンを得ることはできない。
また、本発明の製造方法は、後述する実施例に示されているように、上記のようにして複合金属石ケンを製造する場合には、ステアリン酸バリウム等の高融点のバリウム塩も容易に生成することができるという利点を有する。即ち、ステアリン酸バリウム等のバリウム塩は、融点が約200℃と極めて高いため、乾式直接法により製造することが極めて困難であったが、本発明では、バリウム塩の生成の際の急激な増粘を有効に抑制しているため、このようなバリウム塩を含む複合金属石ケンも効果的に製造することが可能となる。
<複合金属石ケンの用途>
上記のようにして製造される本発明の複合金属石ケンは、既に述べたように、粉砕・分級により所定の粒度分布(250μm以上の粗粒分が10重量%以下、106μm以下の微粒分が30重量%以上)に粒度調整し、塩素含有重合体用の安定剤として使用される。
安定剤としての複合金属石ケンは、一般に、塩素含有重合体100重量部当り、0.1乃至5重量部、特に0.5乃至3重量部の量で使用され、溶融混練により塩素含有重合体中に配合される。
この複合金属石ケン安定剤が配合される塩素含有重合体としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩素化ビニル−塩化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、内部可塑化ポリ塩化ビニル等の重合体、及びこれらの塩素含有重合体とポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−3−メチルブテンなどのα−オレフィン重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、などのポリオレフィン及びこれらの共重合体、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレンと他の単量体(例えば無水マレイン酸、ブタジエン、アクリロニトリルなど)との共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体とのブレンド品などを挙げることができる。
このような塩素含有重合体に本発明の複合金属石ケンが安定剤として配合された塩素含有重合体組成物は、優れた熱安定性を示し、加熱による分解や変質が有効に抑制されているばかりか、着色防止能にも優れ、溶融混練時の着色が有効に防止されているばかりか、高温に保持された場合においても、長時間にわたって、変色の程度が小さく抑えられている。
このような塩素含有重合体組成物には、それ自体公知の添加剤を配合することができ、例えば有機系の安定剤として知られているエポキシ樹脂や、初期着色防止能を示すアミン系安定剤、耐熱性向上成分として知られている多価アルコールなど、他の安定剤や安定化助剤等が前述した複合金属石ケンと共に配合されていてもよく、さらに、可塑剤、フェノール系酸化防止剤、滑剤、難燃剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、改質用樹脂乃至ゴム、衝撃強化剤、その他有機配合剤等の公知の樹脂配合剤を、それ自体公知の処方に従って配合できる。
本発明を次の実験例で説明する。
尚、以下の実験での各種の測定は、以下の方法で行った。
(1)酸価
日本油化学協会偏「基準油脂分析方法」(2.4.1−87)により求めた。
(2)融点
柳本製作所製微量融点測定器MP−S3型により測定した。
(3)示差熱分析
島津製DTG−60A型にて、下記条件で測定した。
セル:アルミニウム
雰囲気ガス:窒素(流量:50ml/min)
加熱速度:5℃/min
(4)粒度分布
ロータップ式フルイ振とう機により、下記条件で測定した。
フルイ網:径200mm JIS
Z8801標準フルイ(106,250μm)
試料の量:50g
振とう時間:5分
(5)嵩比重
筒井理化学器械(株)製カサ比重測定器により、JIS K−6720−2に準拠して測定した。
<試料の調製>
(実施例1)
反応容器として容量1Lのステンレス製ビーカーを用意し、この容器に直径4cmの攪拌羽根を有するラボスターラをセットした。
上記の反応容器に、ステアリン酸(中和価(NV)204mg・KOH/g (1mol=275g))330g(1.2モル)、アジピン酸0.33gを仕込み、電気コンロ及び温調器を用いて150℃に調温した。
次いで、回転速度720rpmでの攪拌下に、酸化亜鉛39.15g(0.48モル)を約10分かけて徐々に投入した。投入後約5分の熟成を置き、溶融物が透明となり、酸化亜鉛が完全に反応したことを確認した。
次いで、上記の状態のまま、即ち、引き続き加熱及び攪拌を行いながら、水酸化カルシウム9.15g(0.12モル)を約5分かけて徐々に投入した。約40分の熟成後、溶融物がほぼ透明になり反応終了とした。反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
上記で得られた溶融物をステンレス製バットにあけ、冷却固化させたのち、サンプルミル(東京アトマイザー(株)製)で粉砕し、さらに篩を用いて、250μm以上の粗粒分含量が10重量%以下であり且つ106μm以下の微粒分含量が30重量%以上となるように粒度調整を行い、白色粉末の試料(Ex1)を得た。
上記の試料(Ex1)について、組成分析の結果、塩基性ステアリン酸亜鉛は生成しておらず、未反応残渣の少ない良質なZn/Ca原子比80/20の複合金属石ケン(固溶体)が生成したことを確認した。
上記試料の酸価は0.3mgKOH/gであり、嵩比重は0.53g/mlであり、融点は121℃であった。比較のため、市販のステアリン酸亜鉛について融点を測定したが122℃であった。
さらに、上記の試料について、示差熱分析を行った結果、その主吸熱ピークのピーク温度は121℃であった。
以上の結果は、表1にまとめて示した。
(実施例2)
酸化亜鉛の量を34.26g(0.42モル)、水酸化カルシウムの量を13.73g(0.18モル)に変更した以外は実施例1と全く同様の条件で反応を行い、白色粉末の試料(Ex2)を得た。
反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
上記の試料について、実施例1と同様に各種分析及び測定を行い、塩基性ステアリン酸亜鉛は生成しておらず、未反応残渣の少ない良質なZn/Ca原子比70/30の複合金属石ケン(固溶体)が生成したことを確認した。また、各測定結果は、表1に示した。
尚、この試料粉末の融点は、115℃であり、市販のステアリン酸亜鉛の122℃よりも低かった。
さらに、示差熱分析で測定されたDTA曲線を図1に示した。
(実施例3)
酸化亜鉛の量を29.16g(0.36モル)、水酸化カルシウムの量を18.3g(0.24モル)に変更した以外は実施例1と全く同様の条件で反応を行い、白色粉末の試料(Ex3)を得た。
反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
上記の試料について、実施例1と同様に各種分析及び測定を行い、塩基性ステアリン酸亜鉛は生成しておらず、未反応残渣の少ない良質なZn/Ca原子比60/40の複合金属石ケン(固溶体)が生成したことを確認した。また、各測定結果は、表1に示した。
尚、この試料粉末の融点は、116℃であり、市販のステアリン酸亜鉛の122℃よりも低かった。
(実施例4)
水酸化カルシウムの代わりに、同モルの水酸化マグネシウム(0.12モル、7.14g)を用いた以外は、実施例1と全く同様にして反応を行い、白色粉末の試料(Ex4)を得た。
反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
上記の試料について、実施例1と同様に各種分析及び測定を行い、未反応残渣の少ない良質なZn/Mg原子比80/20の複合金属石ケン(固溶体)が生成したことを確認した。また、各測定結果は、表1に示した。
尚、この試料粉末の融点は、120℃であり、市販のステアリン酸亜鉛の122℃よりも低かった。
(実施例5)
酸化亜鉛の量を34.26g(0.42モル)及び水酸化マグネシウムの量を10.71g(0.18モル)に変更した以外は、実施例4と全く同様にして反応を行い、白色粉末の試料(Ex5)を得た。
反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
上記の試料について、実施例1と同様に各種分析及び測定を行い、未反応残渣の少ない良質なZn/Mg原子比70/30の複合金属石ケン(固溶体)が生成したことを確認した。また、各測定結果は、表1に示した。
尚、この試料粉末の融点は、115℃であり、市販のステアリン酸亜鉛の122℃よりも低かった。
(実施例6)
酸化亜鉛の量を29.16g(0.36モル)及び水酸化マグネシウムの量を14.28g(0.24モル)に変更した以外は、実施例4と全く同様にして反応を行い、白色粉末の試料(Ex6)を得た。
反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
上記の試料について、実施例1と同様に各種分析及び測定を行い、未反応残渣の少ない良質なZn/Mg原子比60/40の複合金属石ケン(固溶体)が生成したことを確認した。また、各測定結果は、表1に示した。
尚、この試料粉末の融点は、114℃であり、市販のステアリン酸亜鉛の122℃よりも低かった。
(実施例7)
アジピン酸を同量のフタル酸に変更した以外は、実施例1と全く同様にして反応を行い、白色粉末の試料(Ex7)を得た。
反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
上記の試料について、実施例1と同様に各種分析及び測定を行い、未反応残渣の少ない良質なZn/Mg原子比80/20の複合金属石ケン(固溶体)が生成したことを確認した。また、各測定結果は、表1に示した。
尚、この試料粉末の融点は、120℃であった。
(実施例8)
アジピン酸を同量のフタル酸に変更した以外は、実施例6と全く同様にして反応を行い、白色粉末の試料(Ex8)を得た。
反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
上記の試料について、実施例1と同様に各種分析及び測定を行い、未反応残渣の少ない良質なZn/Mg原子比60/40の複合金属石ケン(固溶体)が生成したことを確認した。また、各測定結果は、表1に示した。
尚、この試料粉末の融点は、114℃であった。
(実施例9)
反応容器に、ステアリン酸330g(1.2モル)、アジピン酸0.33gを仕込み、150℃に調温し、さらに実施例1と同様の攪拌下に、酸化亜鉛34.265g(0.42モル)を約10分かけて徐々に投入した。投入後約5分の熟成を置き、溶融物が透明となり、酸化亜鉛が完全に反応したことを確認した。
次いで、上記の状態のまま、即ち、引き続き加熱及び攪拌を行いながら、水酸化マグネシウム5.36g(0.09モル)を約3分かけて投入し、続けて水酸化カルシウム6.87g(0.09モル)を約3分かけて徐々に投入した。約40分の熟成後、溶融物がほぼ透明になり反応終了とした。反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
上記で得られた溶融物を、実施例1と同様にして冷却固化、粉砕及び粒度調整して白色粉末の試料(Ex9)を得た。
反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
上記の試料について、実施例1と同様に各種分析及び測定を行い、未反応残渣の少ない良質なZn/Ca/Mg原子比70/15/15の複合金属石ケン(固溶体)が生成したことを確認した。また、各測定結果は、表1に示した。
尚、この試料粉末の融点は、118℃であった。
(実施例10)
実施例2において、水酸化カルシウムの代わりに、同モルの水酸化バリウム8水塩(0.18モル、57.95g)を用い、この水酸化バリウム8水塩を約40分かけて反応容器に徐々に投入した。投入中は多量の結晶水のため激しく発泡した。約60分の熟成後、溶融物がほぼ透明になり反応終了とした。反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
上記で得られた溶融物を、実施例1と同様にして冷却固化、粉砕及び粒度調整して白色粉末の試料(Ex10)を得た。
上記の試料について、実施例1と同様に各種分析及び測定を行い、未反応残渣の少ない良質なZn/Ba原子比70/30の複合金属石ケン(固溶体)が生成したことを確認した。また、各測定結果は、表1に示した。
尚、この試料粉末の融点は、融点が200℃以上のステアリン酸バリウムを多量に含有するにもかかわらず、ステアリン酸亜鉛よりも低い114℃であった。
(実施例11)
反応容器に、ラウリン酸(中和価(PV)279 mg・KOH/g (1mol=204g))285.6g(1.4モル)、アジピン酸0.29gを仕込み、150℃に調温し、さらに実施例1と同様の攪拌下に、酸化亜鉛40.68g(0.49モル)を約10分かけて徐々に投入した。投入後約5分の熟成を置き、溶融物が透明となり、酸化亜鉛が完全に反応したことを確認した。
次いで、上記の状態のまま、即ち、引き続き加熱及び攪拌を行いながら、水酸化カルシウム16.02g(0.21モル)を約10分かけて徐々に投入した。約40分の熟成後、溶融物がほぼ透明になり反応終了とした。反応中の溶融物粘度は十分に低く、操作は終始円滑で容易であった。
上記で得られた溶融物を、実施例1と同様にして冷却固化、粉砕及び粒度調整して白色粉末の試料(Ex11)を得た。
上記の試料について、実施例1と同様に各種分析及び測定を行い、未反応残渣の少ない良質なZn/Ca原子比70/30のラウリン酸複合金属石ケン(固溶体)が生成したことを確認した。また、各測定結果は、表1に示した。
尚、この試料粉末の融点は123℃であった。比較のために、市販のラウリン酸亜鉛の融点を測定したところ、130℃であった。
(比較例1)
実施例1と同様にして、反応容器に、ステアリン酸330g(1.2モル)、アジピン酸0.33gを仕込み、150℃に調温した。
次いで、実施例1と同様の攪拌下に、水酸化カルシウム9.15g(0.12モル)を約5分かけて徐々に投入した。投入後、溶融物が透明となり、水酸化カルシウムが完全に反応したことを確認した。
次いで、上記の状態のまま、即ち、引き続き加熱及び攪拌を行いながら、酸化亜鉛39.15g(0.48モル)を約20分かけて徐々に投入した。約40分の熟成を行ったが、溶融物は透明にはならず、酸化亜鉛の未反応が観察された。更に30分間の熟成を継続したが溶融物の状態には変化がなく反応終了とした。
溶融物を実施例1と同様、冷却固化、粉砕及び粒度調整して白色粉末の試料(Com1)を得た。このとき、粉砕機内部には遊離脂肪酸の影響と思われる試料の付着が見られた。
上記の試料を実施例1と同様に分析した結果、やや高い酸価で、品質の低い複合金属石ケンであることが判った。
尚、測定結果は、表1に併せて示した。
(比較例2)
実施例1と同様にして、反応容器に、ステアリン酸330g(1.2モル)、アジピン酸0.33gを仕込み、150℃に調温した。
次いで、実施例4と同様の攪拌下に、水酸化マグネシウム14.28g(0.24モル)を約10分かけて徐々に投入した。投入後、溶融物が透明となり、水酸化マグネシウムが完全に反応したことを確認した。
次いで、上記の状態のまま、即ち、引き続き加熱及び攪拌を行いながら、酸化亜鉛29.16g(0.36モル)を約20分かけて徐々に投入した。約40分の熟成を行ったが、溶融物は透明にはならず、酸化亜鉛の未反応が観察された。更に30分間の熟成を継続したが溶融物の状態には変化がなく反応終了とした。
溶融物を実施例1と同様、冷却固化、粉砕及び粒度調整して白色粉末の試料(Com2)を得た。このとき、粉砕機内部には遊離脂肪酸の影響と思われる試料の付着が見られた。
上記の試料を実施例1と同様に分析した結果、やや高い酸価で、品質の低い複合金属石ケンであることが判った。
尚、測定結果は、表1に併せて示した。
(比較例3)
実施例1と同様にして、反応容器に、ステアリン酸330g(1.2モル)、アジピン酸0.33gを仕込み、150℃に調温した。
次いで、上記の状態のまま、即ち、引き続き加熱及び攪拌を行いながら、酸化亜鉛29.16g(0.36モル)と水酸化カルシウム18.3g(0.24モル)との混合粉末を、約20分かけて徐々に投入した。約40分の熟成を行ったが、溶融物は透明にはならず、酸化亜鉛の未反応が観察された。更に30分間の熟成を継続したが溶融物の状態には変化がなく反応終了とした。
溶融物を実施例1と同様、冷却固化、粉砕及び粒度調整して白色粉末の試料(Com3)を得た。このとき、粉砕機内部には遊離脂肪酸の影響と思われる試料の付着が見られた。
上記の試料を実施例1と同様に分析した結果、やや高い酸価で、品質の低い複合金属石ケンであることが判った。
尚、測定結果は、表1に併せて示した。
(比較例4)
実施例1と同様にして、反応容器に、ステアリン酸330g(1.2モル)、アジピン酸0.33gを仕込み、150℃に調温した。
次いで、引き続き加熱及び攪拌を行いながら、酸化亜鉛14.75g(0.18モル)を約5分かけて徐々に投入した。投入後、約5分の熟成を行い、溶融物が透明となり、酸化亜鉛が完全に反応したことを確認した。
次いで、上記の状態のまま、水酸化カルシウム32.04g(0.42モル)を約20分かけて投入した。約60分の熟成後においても溶融物に白濁がみられたが反応終了とした。溶融物も粘度はかなり高く、流動性が極めて悪かった。
上記で得られた溶融物を、実施例1と同様にして冷却固化、粉砕及び粒度調整して白色粉末の試料(Com4)を得た。
(比較例5)
後述する参考例1で得られたステアリン酸亜鉛の粉末試料(Re1)と市販のステアリン酸カルシウムとを、Zn/Ca原子比70/30となる割合で混合して試料(Com5)を得た。
この混合粉末の試料での示差熱分析では、亜鉛の粉末試料(Re1)と同様、126℃に吸熱ピークが存在していた。
(比較例6)
後述する参考例1で得られたステアリン酸亜鉛の粉末試料(Re1)と市販のステアリン酸マグネシウムとを、Zn/Mg原子比80/20となる割合で混合して試料(Com6)を得た。
この混合粉末の試料での示差熱分析では、亜鉛の粉末試料(Re1)とほぼ同様、125℃に吸熱ピークが存在していた。
(比較例7)
後述する参考例1で得られたステアリン酸亜鉛の粉末試料(Re1)と市販のステアリン酸バリウムとを、Zn/Ba原子比70/30となる割合で混合して試料(Com7)を得た。
この混合粉末の試料での示差熱分析では、亜鉛の粉末試料(Re1)と同様、126℃に吸熱ピークが存在していた。
(比較例8)
特許文献2(特開平6−287159号)の実施例2に記載の方法で合成を行い、塩基性ステアリン酸亜鉛(0.91CaO・ステアリン酸亜鉛)(Com8)を得た。得られた試料について各分析を行い、結果を表1に示す。
(参考例1)
実施例1と同様にして、反応容器に、ステアリン酸330g(1.2モル)、アジピン酸0.33gを仕込み、150℃に調温した。
次いで、引き続き加熱及び攪拌を行いながら、酸化亜鉛48.94g(0.6モル)を約15分かけて徐々に投入した。投入後、約40分の熟成を行ったが、溶融物の白濁が観察された。さらに30分の熟成を行ったが溶融物の状態に変化はなく反応終了とした。
上記で得られた溶融物を、実施例1と同様にして冷却固化、粉砕及び粒度調整して白色粉末の試料(Re1)を得た。
試料を分析した結果、各実施例よりもやや高い酸価が認められた。また、この試料についての示差熱分析により得られたDTA曲線を図2に示した。
Figure 2013010874
表2に示す配合条件により静的耐熱性の評価を行った。なお、各添加剤の配合量は、塩化ビニル樹脂(重合度1000)100重量部当りの量(重量部)で表している。
(混和物の作製条件)
混練ロール;3.5インチ径、温度160℃、
混練時間;5分間、
取り出しシート厚さ;約1mm
(熱安定性の試験条件)
JIS−K−6723に準拠し、オイルバス温度180℃にてコンゴレッド紙が変色するまでの時間を測定した。
(ギヤオーブン耐熱性の試験条件)
温度185℃に調温したギヤオーブンに上記条件で調製したシートを入れ、加熱経過時間毎の着色度を下記6段階で目視評価した。
1:白色
2:淡黄色
3:黄色
4:淡褐色
5:褐色
6:黒化
Figure 2013010874
表3に示す配合条件によりプレートアウト性の評価を行った。なお、各添加剤の配合量は、塩化ビニル樹脂(重合度1000)100重量部当りの量(重量部)で表している。
(プレートアウト性試験)
赤顔料(ウォッチングレッド)を入れて一定条件で混練した後、ロール表面の汚れをそのままに、次いで白色顔料(二酸化チタン)を入れたクリ−ナーコンパウンドで混練してロール表面の汚れをクリーナーコンパウンドに移行させてシートで取り出し、シートの赤味(a値)を測色して評価する。ロール表面の汚れが少ないほどa値が低くなり、プレートアウト性が良いと評価される。
(混和物の作製条件)
混練ロール;3.5インチ径、温度150℃、
混練時間;5分間、
取り出しシート厚さ;約1mm
(クリ−ナーコンパウンドの配合及び混練条件)
PVC(重合度1000)100(30g)、DOP50phr、Ca/Zn安定剤:2phr、二酸化チタン:1phr。混練条件は、混和物の作成条件と同様とした。
(測色)
日本電飾工業株式会社製色差計ZE−2000型にてa値を測定した。
Figure 2013010874

Claims (10)

  1. 脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩との固溶体からなり、亜鉛/周期表第二族金属原子比が99/1乃至40/60の範囲にあり、(亜鉛+周期表第二族金属)/脂肪酸当量比が1〜1.05の範囲にあり、酸価が1.0mgKOH/g以下を有していることを特徴とする複合金属石ケン。
  2. 前記周期表第二族金属が、カルシウム、マグネシウム及びバリウムからなる群より選択された少なくとも1種である請求項1に記載の複合金属石ケン。
  3. 前記脂肪酸亜鉛と周期表第二族金属の脂肪酸塩とは、共通の脂肪酸の塩であり、該脂肪酸の炭素数は12以上である請求項1または2に記載の複合金属石ケン。
  4. 前記共通の脂肪酸がステアリン酸である請求項3に記載の複合金属石ケン。
  5. 示差熱分析において、前記固溶体が、125℃よりも低い温度領域に融解吸熱ピークを有している請求項1乃至4の何れかに記載の複合金属石ケン。
  6. 250μm以上の粗粒分含量が10重量%以下であり且つ106μm以下の微粒分含量が30重量%以上である粒度分布を有している請求項1乃至5の何れかに記載の複合金属石ケン。
  7. 0.45g/ml以上の嵩比重を有していることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の複合金属石ケン。
  8. 請求項1乃至7の何れかに記載の複合金属石ケンからなる塩素含有重合体用安定剤。
  9. 炭素数が8以下の多価カルボン酸の存在下で、溶融状態にあり且つ過剰量の脂肪酸に、亜鉛化合物を常圧下で反応させて脂肪酸亜鉛を生成させ、引き続いて、生成した脂肪酸亜鉛と共存する残存脂肪酸に、周期表第二族金属水酸化物を反応させて周期表第二族金属の脂肪酸塩を生成せしめることを特徴とする請求項1に記載の複合金属石ケンの製造方法。
  10. 140乃至160℃の温度で、亜鉛化合物と脂肪酸との反応、及び周期表第二族金属水酸化物と脂肪酸との反応が行われる請求項9に記載の製造方法。
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