JP2013001978A - Fe−Al合金素材の製造方法、及び棒状あるいは線状のFe−Al合金素材 - Google Patents

Fe−Al合金素材の製造方法、及び棒状あるいは線状のFe−Al合金素材 Download PDF

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Abstract

【課題】制振性や強度、絶縁性、加工性、透磁性、耐酸化性、耐腐食性、耐熱性など様々な面において優れた特性を示し、実用的価値が高いFe−Al合金素材の製造方法、及びFe−Al合金素材の提供を目的とした。
【解決手段】棒状あるいは線状のFe−Al合金素材は、(1)塑性加工工程、(2)冷間加工工程、及び(3)焼鈍工程の3工程を経て形成される。塑性加工工程において塑性加工された合金素材が、冷間加工工程において引き抜き加工等により断面減少率が10〜50%の範囲内となるように加工することにより棒状あるいは線状とされ、歪みが加えられた状態になる。その後、この合金素材を焼鈍工程において焼鈍することにより、表面に酸化アルミニウムを主成分とし、粒径が小さく均一であって緻密な被膜が形成される。
【選択図】図4

Description

本発明は、Fe−Al合金素材の製造方法、及び当該製造方法によって製造された棒状あるいは線状のFe−Al合金素材に関する。
従来、制振性や加工性を備えた金属として、Fe−Cr−Al合金や、Mn−Cu合金、Cu合金、Mg合金等が知られており、様々な用途に使用されている。例えば、特許文献1に開示されているように、これらの合金のうちでもAl含有量が6〜10重量%であり、かつ平均結晶粒径が300〜700μmであるFe−Al合金素材は、優れた制振性を有しており、制振合金として有用であることが知得されている。このFe−Al合金素材は、塑性加工及び焼鈍処理を行った後に、所定の冷却速度で冷却することにより製造されている。
本発明者らは、Fe−Al合金素材の実用的価値の向上を図るべく、Al含有量が12重量%程度以下であるFe−Al合金素材の製造方法が提供されていないことに着目して鋭意研究を行った。この結果、下記特許文献2に開示されているようなFe−Al合金素材の製造方法を開発し、提供している。この製造方法により製造されたFe−Al合金素材は、制振性や強度、絶縁性、加工性、透磁性など様々な面において従来の製造方法により製造されたものよりも優れた特性を示し、他の合金に比べて実用的価値が高いものである。
特開2001−59139号公報 国際公開第2006/085609号
上述したように、特許文献2に開示されている製造方法によれば、制振性をはじめとする様々な特性に優れたFe−Al合金素材を提供することが可能であるが、さらに優れた特性を示すFe−Al合金素材を提供できれば、より一層実用的価値が向上するものと想定される。また、耐酸化性や耐腐食性、耐熱性などの特性をさらに改善させることができれば、実用的価値がさらに付加され、様々な分野において好適に使用可能なものとしてFe−Al合金素材を提供することが可能となる。
そこで、本発明は、制振性や強度、絶縁性、加工性、電磁性、透磁性、耐酸化性、耐腐食性、耐熱性など様々な面において優れた特性を示し、実用的価値が高いFe−Al合金素材の製造方法、及びFe−Al合金素材の提供を目的とした。
上述した課題を解決すべく提供される本発明のFe−Al合金素材の製造方法は、下記の工程(1)〜(3)を含むことを特徴としている。
(1)Al含有量2〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物からなる合金素材を塑性加工する工程。
(2)前記工程(1)において塑性加工した合金素材を、冷間において断面減少率が1回10〜50%の範囲内となるように加工することにより、合金素材を棒状あるいは線状に加工する工程。
(3)前記工程(2)において棒状あるいは線状に加工した合金素材を焼鈍する工程。
本発明のFe−Al合金素材の製造方法では、工程(1)において塑性加工された合金素材を、冷間において断面減少率が10〜50%という大きな値になる条件下において棒状あるいは線状に加工する。これにより、棒状あるいは線状に加工された合金素材に対して、大きな歪み(ストレス)が作用した状態になる。また、合金素材が線状あるいは棒状であり、断面形状が略円形であることから、工程(2)において合金素材の全周に亘って略均等に歪みが加わった状態になる。このような状態のFe−Al合金素材を、工程(3)において焼鈍すると、結晶粒が小さく、均一な組織が内部に発現して、表面には酸化アルミニウム(Al)を主成分とし、略均一であって、素地との密着性に優れた、緻密な被膜が全周に亘って形成される。これにより、制振性や強度、絶縁性、加工性、透磁性、耐酸化性、耐腐食性、耐熱性など様々な面において優れた特性を示し、実用的価値が高いFe−Al合金素材を提供することが可能となる。
本発明のFe−Al合金素材の製造方法は、上記工程(2)において、引き抜き加工あるいは押出加工により、合金素材を棒状あるいは線状に加工するものであることが好ましい。
上述したように、工程(2)において引き抜き加工あるいは押出加工を施すこととすれば、合金素材を容易に棒状あるいは線状に加工することが可能であるとともに、棒状あるいは線状に加工する過程において合金素材の略全周に亘って略均一に歪みを加えることが可能となる。
本発明のFe−Al合金素材の製造方法は、上記工程(2)及び工程(3)の組み合わせを、複数回に亘って実施するものであっても良い。
本発明の製造方法によれば、断面径の大きな棒状のFe−Al合金素材から、断面径の小さな線状のFe−Al合金素材まで、いかなる断面径のFe−Al合金素材であっても同様に結晶粒が小さく、均一な組織が内部に発現させ、表面には酸化アルミニウム(Al)を主成分とし、略均一であって、素地との密着性に優れた、緻密な被膜が全周に亘って形成することが可能となる。
本発明のFe−Al合金素材の製造方法では、工程(3)において、400〜1200℃の温度条件下において焼鈍を行うことが望ましい。
本発明のFe−Al合金素材の製造方法では、上記工程(2)において合金素材に対して大きな歪みを加えたことによる影響により、工程(3)における焼鈍温度を低下させることが可能となる。また、焼鈍温度を低下させることにより、Fe−Al合金素材の内部に形成する組織の結晶粒を小さくさせることが可能となる。本発明においては、工程(3)における焼鈍温度を400〜1200℃程度に抑制することが可能であることから、合金素材の内部に形成する組織の結晶粒を小さくさせることが可能となる。
本発明のFe−Al合金素材は、上述した本発明の製造方法によって棒状あるいは線状となるように製造されたものであり、結晶粒が小さく、均一な組織が内部に発現して、表面には酸化アルミニウム(Al)を主成分とし、略均一であって、素地との密着性に優れた、緻密な被膜が全周に亘って形成されていることを特徴とするものである。また、本発明のFe−Al合金素材は、前記被膜形成部分におけるAl含有量が、前記被膜に対して径方向中心側の部分におけるAl含有量よりも多いことを特徴としている。すなわち、本発明のFe−Al合金素材は、結晶粒が小さく、均一な組織が内部に発現して、表面には酸化アルミニウム(Al)を主成分とし、略均一であって、素地との密着性に優れた、緻密な被膜が全周に亘って形成されたものである。このような被膜を有することにより、本発明のFe−Al合金素材は、制振性や強度、絶縁性、加工性、電磁性、透磁性、耐酸化性、耐腐食性、耐熱性など様々な面において優れた特性を示し、実用的価値が高い。
本発明のFe−Al合金素材は、内部には、結晶粒が小さく、均一な組織が内部に発現して、表面において酸化アルミニウムを主成分とする被膜をなす結晶の平均結晶粒子径が10〜40μmの範囲内にあることを特徴としている。なお、本発明において、Fe−Al合金素材の平均結晶粒径は、JIS G0551に規定されている「鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法」に従って測定される値である。
本発明のFe−Al合金素材は、結晶粒が小さく、均一な組織が内部に発現して、表面には酸化アルミニウム(Al)を主成分とし、略均一であって、素地との密着性に優れた、緻密な被膜が全周に亘って形成されているため、制振性や強度、絶縁性、加工性、電磁性、透磁性、耐酸化性、耐腐食性、耐熱性等、様々な面において優れた特性を示す。従って、本発明のFe−Al合金素材は、例えば、モーターのコア材料等に使用される絶縁合金としての用途、電磁材料等に使用される透磁性合金としての用途、調理器具等としての用途、制振合金としての用途等、様々な用途に対して有効利用できる。
本発明によれば、制振性や強度、絶縁性、加工性、電磁性、透磁性、耐酸化性、耐腐食性、耐熱性など様々な面において優れた特性を示し、実用的価値が高いFe−Al合金素材の製造方法、及びFe−Al合金素材を提供することができる。
実施例1に係る引っ張り試験の実験結果を示すグラフである。 実施例1に係る破断伸びについての実験結果を示すグラフである。 冷間加工を行わず、焼鈍工程において焼鈍を行ったサンプル1の走査型電子顕微鏡写真であり、(a)は表層部、(b)は中層部、(c)は中心部を示す。 冷間加工工程において所定の断面減少率となるように冷間加工を行った後、焼鈍工程において焼鈍を行ったサンプル2の走査型電子顕微鏡写真であり、(a)は表層部、(b)は中層部、(c)は中心部を示す。 実施例3に係る試験結果を示す写真である。 実施例4に係る複合サイクル腐食試験の試験結果を示す写真である。
本発明のFe−Al合金素材の製造方法、及び当該方法により製造されたFe−Al合金素材について詳細に説明する。
本発明において製造されるFe−Al合金素材は、Al含有量2〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物(Si 0.1重量%以下;Mn 0.1重量%以下、;その他C,N,S,Oなど併せて0.1重量%以下)からなるものである。
Al含有量は、2〜12重量%の範囲内であればよいが、好ましくは6〜10重量%であり、さらに好ましくは7〜9重量%である。Al含有量は、上記範囲内で、強度、加工性、絶縁性、電磁性、透磁性、制振性等に応じて適宜設定される。また、その他の組成についても、強度等を考慮して適宜調整することが可能である。具体的には、炭素含有率を向上させることにより、Fe−Al合金素材の強度を向上させることが可能となる。
続いて、本発明のFe−Al合金素材の製造方法、及び当該Fe−Al合金素材の特性等について、以下に説明する。
≪Fe−Al合金素材の製造方法≫
本発明のFe−Al合金素材は、以下の工程(1)〜(3)を経て製造される。
工程(1) 塑性加工工程
工程(2) 冷間加工工程
工程(3) 焼鈍工程
以下、上記工程(1)〜(3)について、さらに詳細に説明する。
≪工程(1) 塑性加工工程について≫
塑性加工工程は、Al含有量2〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物からなる合金を塑性加工する工程である。具体的には、まず、Fe−Al合金素材中のAl含有量が所定値となる割合に予め調整したAlとFe素材とを、窒素、酸素及びその他の不純物の侵入を防止するために適切な方策を講じつつ溶融した後、鋳型に流し込んで、Fe−Al合金鋳塊を得る。窒素や酸素の侵入を防止するために方策としては、例えば0.1〜0.01Pa程度の減圧下においてAl及びFeを溶融する等の方策が考えられる。Al及びFeを溶融させた後、得られた合金鋳塊を塑性加工及び機械加工することによって所定の形状に仕上げる。
また、塑性加工工程では、必要に応じて、上述した塑性加工後の合金を焼鈍処理に供してもよい。このように、塑性加工後に焼鈍処理することにより、加工性、制振性、高強度等の合金性能を高めることができる。塑性加工後に焼鈍処理を行う場合、その焼鈍条件については特に制限されないが、具体的には、得られた塑性加工後の合金を700〜1000℃程度の温度に30分〜2時間程度保持する条件が例示される。焼鈍処理時の温度及び時間は、合金の組成、塑性加工条件等を考慮して、上記の範囲から適宜選択すればよい。
≪工程(2) 冷間加工工程について≫
冷間加工工程は、前記塑性加工した合金を冷間にて引き抜き加工あるいは押出加工により加工する工程である。冷間引き抜き加工あるいは冷間押出加工を実施する際の温度条件としては、Fe−Al合金素材の再結晶温度以下であれば特に制限されないが、通常、常温で行うことができる。また、冷間引き抜き加工あるいは冷間押出加工における加工条件は、断面減少率が10〜50%の範囲内となるような条件であれば良いが、断面減少率が25〜30%となる条件であることが好ましい。このような断面減少率となるような条件下において引き抜き加工あるいは押出加工を実施することにより、棒状あるいは線状に形成されたFe−Al合金素材に対して、周方向に略均等に大きな歪み(ストレス)が作用した状態となる。
工程(2)において、1回の冷間引き抜き加工あるいは冷間押出加工により上記断面減少率で断面積が減少するように加工することにより、Fe−Al合金素材の内部に結晶粒が小さく、均一な組織を発現して、表面には酸化アルミニウム(Al)を主成分とし、略均一であって、素地との密着性に優れた、緻密な被膜が全周に亘って形成させるために必要な歪み(ストレス)を確実に作用させることが可能となる。なお、ここで、「断面減少率」とは、引き抜き加工あるいは押出加工を施す前の合金の断面積に対して加工後に減少した断面積の割合(%)を指し、下記の(式1)により算出することができる。
断面減少率(%)={1−(加工後断面積)/(加工前断面積)}×100
・・・(式1)
≪工程(3) 焼鈍工程について≫
焼鈍工程は、上記工程(2)において引き抜き加工あるいは冷間押出加工がなされた後のFe−Al合金素材を焼鈍する工程である。本校邸において焼鈍を行うことにより、Fe−Al合金素材の内部に結晶粒が小さく、均一な組織を発現させることが可能である。また、表面には酸化アルミニウム(Al)を主成分とし、略均一であって、素地との密着性に優れた、緻密な被膜が全周に亘って形成させることができる。焼鈍工程において用いられる加熱方法は、輻射加熱、高周波加熱等の手法から適宜選択することが可能である。工程(3)における焼鈍は、400〜1200℃の温度条件下において実施されれば良いが、600〜1000℃の温度条件下で行われることが好ましく、600〜850℃の温度条件下において行われることがさらに好ましい。また、焼鈍処理時の温度及び時間は、焼鈍する際の加熱方法、Fe−Al合金素材の組成、あるいは塑性加工条件等を考慮して適宜設定することが可能である。
Fe−Al合金素材の内部に結晶粒が小さく、均一な組織を発現させるためには、焼鈍時間を可能な限り短時間であることが望ましい。棒状あるいは線状に形成されたFe−Al合金素材の中心部と外周部とが略一定の温度となるのに必要な時間にあわせて焼鈍時間を設定することにより、焼鈍時間を最小限に抑制し、結晶粒径が小さく均一な組織を形成することが可能となる。
焼鈍処理後におけるFe−Al合金素材の冷却速度については、特に制限されず、焼鈍処理温度や合金の内部歪みの程度等に応じて適宜設定することができる。得られるFe−Al合金素材に、強度や制振性等においてより一層優れた特性を備えさせるという観点から、600℃までの温度域における冷却速度を10℃/分以下とすることが好ましく、1〜5℃/分とすることがさらに好ましい。また、600℃未満の温度域においては、自然冷却(放冷)を行うことが望ましい。
上記工程(2)及び工程(3)の組み合わせの実施回数は1回に限定されず、複数回であっても良い。このように複数回に亘って冷間加工工程及び焼鈍工程を繰り返すことにより、所望の径を有する棒材あるいは線状体を得ることが可能となる。
続いて、本発明のFe−Al合金素材の特性について、詳細に説明する。
上記の製造方法においては、棒状あるいは線状となるように成形する際に、10〜50%という大きな断面減少率となるような加工条件下において冷間引き抜き加工あるいは冷間押出加工を行うことにより大きな歪みを付与することができる。また、冷間加工工程において歪みが加えられた素材を焼鈍工程において焼鈍することにより、冷間加工工程において加えられた歪みを解消させることが可能である。また、冷間加工工程において素材が棒状あるいは線状に形成されるため、焼鈍工程において素材に対して周方向に略均等に熱を作用させることが可能である。これにより、Fe−Al合金素材のの内部に結晶粒が小さく、均一な組織を発現させ、表面には酸化アルミニウム(Al)を主成分とし、略均一であって、素地との密着性に優れた、緻密な被膜が全周に亘って形成させることが可能となる。具体的には、本発明のFe−Al合金素材の平均結晶粒子径は、10〜40μmの範囲内にある。これらの特徴的構成を備えていることにより、本発明のFe−Al合金素材は、高強度であると共に、加工性、絶縁性、電磁性、透磁性、制振性の点において優れた特性を示す。
また、本発明のFe−Al合金素材は、表面に被膜が形成されており、この被膜におけるAl含有量が、被膜に対して径方向中心側の部分におけるAl含有量よりも多い。表面に形成されている被膜は、酸化アルミニウム(Al)を主成分とするものであり、Fe−Al合金素材の耐酸化性や耐腐食性の特性を向上させる役割を果たしている。すなわち、本発明のFe−Al合金素材が耐酸化性や耐腐食性において優れた特性を示すのは、表面に形成された酸化アルミニウム(Al)を主成分とする緻密な被膜による保護効果に依拠するものであろうと推認される。
本発明のFe−Al合金素材は、例えば、その優れた絶縁性に基づいて、モーターのコア材料等に使用される絶縁合金として有用である。さらに、当該Fe−Al合金素材は、例えば、その優れた透磁性に基づいて、各種の電磁材料等に使用される透磁性合金として有用である。また当該Fe−Al合金素材は、熱しやすく冷めにくいという特性を備えており、IH(Induction Heating)用の調理器具としても有用である。そしてさらに、当該Fe−Al合金素材は、例えば、その優れた制振性に基づいて、自動車等のタイヤに編み込まれるワイヤ、軸受け、工具材、スピーカ部品、精密機器用部材、工具材、制振ブッシュ、ボルトナット、ワッシャ、スポーツ用具(例えば、ラケットあるいはゴルフクラブ等のグリップ、ゴルフクラブのヘッド等)等に使用される制振合金として有用である。
当該Fe−Al合金素材は、上記特性を有しており、従来報告されているAl含有量12重量%以下のFe−Al合金素材とは異なる特性を有している。冷間引き抜き加工あるいは冷間押出加工の後に焼鈍処理を行うことにより、合金中の原子の局所的な規則的配列が生じることを示唆する実験データが得られており、当該Fe−Al合金素材は、Al含有量12重量%以下である従来のFe−Al合金素材には備わっていない短範囲規則構造を有していると予測される。このような合金中の短範囲規則性を有することによって、当該Fe−Al合金素材は、従来のAl含有量12重量%以下のFe−Al合金素材とは異なる特性を具備していると類推される。
また、上記の製造方法により得られるFe−Al合金素材は、結晶粒子の平均粒径が250μm以下であり、従来のFe−Al合金素材に比べて、結晶粒子径が小さい組織構造を有している。このように平均粒子径が小さい結晶粒子の組織構造を有することによって、合金の強度が高まり、加工性、絶縁性、電磁性、透磁性、制振性等の特性が一層良好になる。さらに、上記製造方法によって得られる棒状あるいは線状のFe−Al合金素材の表面に形成される酸化アルミニウム(Al)を主成分とする緻密な被膜により、耐酸化性や耐腐食性等についても一層良好な特性を示す。
なお、当該Fe−Al合金素材の結晶粒子の平均粒径は、上記の製造方法において、工程(2)において実施される冷間引き抜き加工あるいは冷間押出加工の加工条件や、工程(3)における焼鈍条件等を適宜設定することにより調整される。例えば、工程(2)の冷間圧延において断面減少率を大きくする程、Fe−Al合金素材の結晶粒子の平均粒径が小さくなる。また、例えば、工程(3)の焼鈍において焼鈍温度が高い程、Fe−Al合金素材の結晶粒子の平均粒径が大きくなる。
続いて、本発明の製造方法により製造されたFe−Al合金素材について実施した実験結果について、図面を参照しつつ詳細に説明する。上述した本発明の製造方法において、冷間加工工程における断面減少率、及び焼鈍工程における焼鈍温度を変化させ、サンプルを準備し、各サンプルについてインストロン型万能材料試験機を用いて引っ張り試験を行った。その結果、各サンプルについての引っ張り強さは、下記表1及び図1に示すグラフの通りであった。
上記表1及び図1のグラフに示すように、焼鈍工程においていかなる焼鈍温度によって焼鈍を行った場合についても、冷間加工を実施する際の断面減少率を向上させることにより、引っ張り強度が向上した。これにより、断面減少率が10〜50%の範囲内において冷間加工を行うことにより、引っ張り強度を向上させうることが判明した。
また、上記各サンプルについての破断伸びについては、下記表2及び図2のグラフに示すような結果が得られた。
上記実験結果の通り、冷間加工時の断面減少率によらず、破断伸びは高い値で推移した。また、焼鈍工程において、650℃〜800℃の間の焼鈍温度で焼鈍を行うことにより、焼鈍を行わない場合に比べて破断伸びが向上した。さらに、焼鈍温度の上昇に伴い、破断伸びが向上する傾向が見られた。これにより、断面減少率が10〜50%の範囲内において冷間加工を行い、焼鈍工程において焼鈍を行うことにより、引っ張り強度を向上させうることが判明した。
続いて、上記実施例1において試験のために準備したサンプルのうち、冷間加工を行わず(すなわち、断面減少率=0%)、焼鈍工程において800℃で焼鈍を行ったサンプル(以下、「サンプル1」とも称す)、及び冷間加工工程における断面減少率が30.8%のものであって焼鈍工程において800℃で焼鈍を行ったサンプル(以下、「サンプル2」とも称す)について、走査型電子顕微鏡 (SEM)を用い、表層部、中層部、及び中心部の組織の均一性を調べた。その結果、サンプル1については図3、サンプル2については図4に示すような結果が得られた。
図3及び図4を比較することにより、表層部、中層部、及び中心部のいずれについても、断面減少率が30.8%の条件で冷間加工を行ったサンプル2の方が、サンプル1よりも結晶粒が小さく、均一な組織が内部に発現していることが判明した。従って、冷間加工工程を実施し、断面減少させることにより結晶粒が小さく、均一な組織を内部に発現させうることが判明した。
冷間加工工程における断面減少率が耐食性及び耐熱性に及ぼす影響について検討すべく、断面減少率が相違するサンプルを準備し、焼鈍工程後の表面状態を比較する試験を行った。本試験においては、上記実施例1において作成したサンプルと同様に、冷間加工工程において断面減少率が0%、10.9%、22.6%、30.8%、及び39.8%となるように加工したものを電気炉を用いて焼鈍することにより得られたものをサンプルとした。本実施例において用いたサンプルは、常温において加熱炉に投入し、850℃まで昇温して1時間保持した後550℃まで炉冷し、その後空冷により常温まで降温することにより焼鈍を行うことにより得られた。
上記条件により850℃の温度条件下において焼鈍したところ、各サンプルの表面状態は図5に示すような状態であった。具体的には、断面減少率が0%であるサンプルについては、図5(a)に示すように、他のサンプルに比べてスス状の黒色部が多く発現した。これに対し、図5(b)〜(e)に示すように、冷間加工工程において10%〜50%の範囲内の断面減少率となるように加工を施したサンプルについては、図5(a)のサンプルに比べてスス状の黒色部の発生量が少なかった。また、図5(b)〜(e)を比較することにより、断面減少率を高めることにより、スス状の黒色部の発生量が少なくなることが見いだされた。これにより、断面減少率が上昇するとサンプルの表面に緻密で均一な酸化アルミニウム(Al)を主成分とする被膜が形成され、耐熱性及び耐食性が向上することが判明した。
続いて、冷間加工時の断面減少率が耐食性に及ぼす影響について検討すべく実施した複合サイクル腐食試験(CCT試験/Cyclic Corrosion Tester)の実験結果について説明する。本実施例においては、断面減少率が39.8%となるように冷間加工した後、850℃の温度条件により焼鈍を行って得られたサンプルA、冷間加工を行わず(断面減少率=0%)にサンプルAと同一条件で焼鈍を行ったサンプルB、及び電磁ステンレス(SUS−C)からなるサンプルCの3つについて複合サイクル腐食試験を行った。
上述したサンプルA〜Cについて複合サイクル腐食試験を行ったところ、サンプルAについては図6(a)に示すように10サイクル終了時点において全面に錆が生じた。これに対し、冷間加工を施していないサンプルB、及び比較対象として用いられた電磁ステンレスからなるサンプルCについては、それぞれ5サイクル終了時点において全面に錆が生じた。このように、冷間加工工程において、所定の断面減少率となるように冷間加工を施したサンプルAは、冷間加工を施さなかったサンプルB、あるいは電磁ステンレスよりも耐食性の面において良好な結果が得られた。このような結果が得られたのは、焼鈍を行う前に冷間加工を施すことにより、表面に緻密で均一な酸化アルミニウム(Al)を主成分とする被膜が形成されたことによるものと想定される。
続いて、冷間加工時の断面減少率が耐熱性に及ぼす影響について検討すべく実施した連続酸化試験の結果について説明する。本実施例においては、断面減少率が39.8%となるように冷間加工した後、850℃の温度条件により焼鈍を行って得られたサンプルA、耐熱鋼であるSUH11からなるサンプルD、ステンレス鋼(SUS304)からなるサンプルEを試験に用いた。本実施例においては、各サンプルA,D,Eを1000℃の温度条件下に100時間に亘って配し、酸化減量を調べた。その結果、表3に記載の結果が得られた。
表3に示すように、断面減少率が39.8%となるように冷間加工を施し、その後850℃の温度条件下において焼鈍を行ったサンプルAは、比較対象であるサンプルD,Eに比べて極めて酸化減量が少ない。これにより、本発明の製造方法によって得られたサンプルAは、耐熱性の面において優れていることが判明した。
上述したように、本発明の製造方法によれば、結晶粒が小さく、均一な組織が内部に発現しつつ、表面に酸化アルミニウムを主成分とする略均一であって、素地との密着性に優れた、緻密な被膜が全周に亘って形成された棒状あるいは線状のFe−Al合金素材を提供することができる。このFe−Al合金素材は、上記実施例1〜5等に示すように、強度、耐酸化性、耐腐食性、耐熱性、制振性、絶縁性、加工性、電磁性、透磁性等、様々な面において優れた特性を示し、これらの特性が求められる装置類、機具類を構成する素材として有効利用することができる。

Claims (6)

  1. 下記の工程(1)〜(3)を含むことを特徴とするFe−Al合金素材の製造方法。
    (1)Al含有量2〜12重量%、残部Fe及び不可避的不純物からなる合金素材を塑性加工する工程。
    (2)前記工程(1)において塑性加工した合金素材を、冷間において断面減少率が10〜50%の範囲内となるように加工することにより、合金素材を棒状あるいは線状に加工する工程。
    (3)前記工程(2)において棒状あるいは線状に加工した合金素材を焼鈍する工程。
  2. 上記工程(2)において、引き抜き加工あるいは押出加工により、合金素材を棒状あるいは線状に加工することを特徴とする請求項1に記載のFe−Al合金素材の製造方法。
  3. 上記工程(2)及び工程(3)の組み合わせを、複数回に亘って実施することを特徴とする請求項1又は2に記載のFe−Al合金素材の製造方法。
  4. 工程(3)において、400〜1200℃の温度条件下において焼鈍を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のFe−Al合金素材の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって棒状あるいは線状となるように形成されたFe−Al合金素材であって、
    表面に酸化アルミニウムを主成分とする被膜が形成されており、
    前記被膜形成部分におけるAl含有量が、前記被膜に対して径方向中心側の部分におけるAl含有量よりも多いことを特徴とするFe−Al合金素材。
  6. 平均結晶粒子径が10〜40μmの範囲内にあることを特徴とする請求項5に記載のFe−Al合金素材。
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