JP2015096645A - アルミニウム合金導体、アルミニウム合金撚線、被覆電線およびワイヤーハーネス - Google Patents

アルミニウム合金導体、アルミニウム合金撚線、被覆電線およびワイヤーハーネス Download PDF

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Abstract

【課題】室温時の導電率や強度、伸び等の性能を従来と同等に維持しつつ、高温強度および高温衝撃吸収性を向上させたアルミニウム合金導体を提供する。
【解決手段】本発明のアルミニウム合金導体は、Mg:0.10〜1.50質量%、Si:0.10〜1.50質量%、Fe:0.002〜0.100質量%、元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Y、Co、Cu、Sr、Ni]の中から選ばれる1種または2種以上の元素を合計で0.01〜0.10質量%、Ti:0.000〜0.100質量%、B:0.000〜0.050質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金導体であって、前記アルミニウム合金導体の長手方向に垂直な断面において、Al−Fe系およびAl−Fe−Si系化合物の面積率が2.0%以下であり、かつ、元素群Xの元素を含む化合物の面積率が1.0%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気配線体の導体として用いられるアルミニウム合金導体およびアルミニウム合金撚線に関する。特に、高導電率、高い耐屈曲疲労特性、更には高い伸び性を実現するアルミニウム合金導体に関するものである。
従来、自動車、電車、航空機等の移動体の電気配線体、または産業用ロボットの電気配線体として、銅又は銅合金の導体を含む電線に銅又は銅合金(例えば、黄銅)製の端子(コネクタ)を装着した、いわゆるワイヤーハーネスと呼ばれる部材が用いられてきた。昨今では、自動車の高性能化や高機能化が急速に進められており、これに伴い、車載される各種の電気機器、制御機器などの配設数が増加すると共に、これらの機器に使用される電気配線体の配設数も増加する傾向にある。また、その一方で、環境対応のために自動車等の移動体の燃費を向上するため、軽量化が強く望まれている。
こうした近年の移動体の軽量化を達成するための手段の一つとして、例えば、電気配線体の導体を、従来から用いられている銅又は銅合金より軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金に変更する検討が進められている。アルミニウムの比重は銅の比重の約1/3、アルミニウムの導電率は銅の導電率の約2/3(純銅を100%IACSの基準とした場合、純アルミニウムは約66%IACS)であり、純アルミニウムの導体線材に純銅の導体線材と同じ電流を流すためには、純アルミニウムの導体線材の断面積を、純銅の導体線材の約1.5倍と大きくする必要があるが、そのように断面積を大きくしたアルミニウムの導体線材を用いたとしても、アルミニウムの導体線材の質量は、純銅の導体線材の質量の半分程度であることから、アルミニウムの導体線材を使用することは、軽量化の観点から有利である。なお、上記の%IACSとは、万国標準軟銅(International Annealed Copper Standard)の抵抗率1.7241×10−8Ωmを100%IACSとした場合の導電率を表したものである。
しかし、送電線用アルミニウム合金導体(JIS規格によるA1060やA1070)を代表とする純アルミニウムでは、一般に引張耐久性、耐衝撃性、屈曲特性などが劣ることが知られている。そのため、例えば、車体への取付け作業時に作業者や産業機器などによって不意に負荷される荷重や、電線と端子の接続部における圧着部での引張や、ドア部などの屈曲部で負荷される繰り返し応力などに耐えることができない。また、種々の添加元素を加えて合金化した材料は引張強度を高めることは可能であるものの、アルミニウム中への添加元素の固溶現象により導電率の低下を招くこと、アルミニウム中に過剰な金属間化合物を形成することで伸線加工中に金属間化合物に起因する断線が生じることがあった。そのため、添加元素を限定ないし選択することにより、十分な伸び特性を有することで断線しないことを必須とし、さらに、従来レベルの導電率と引張強度を確保しつつ、耐衝撃性、屈曲特性を向上する必要があった。
移動体の電気配線体に用いられるアルミニウム合金導体として代表的なものに、特許文献1や2に記載のものがある。これらは極細線であって、高強度・高導電率を有しながら、伸びにも優れるアルミニウム合金導体、及びアルミニウム合金撚線を実現するものである。
特開2012−229485公報 特開2008−112620号公報
しかしながら、高強度化が進むにつれ、近年ではアルミニウム合金導体の耐熱性も求められるようになってきている。アルミニウムの融点は660.5℃であり、金属の中では比較的低温で軟化しやすい。そのため、例えば特許文献1や2のアルミニウム合金導体からなる電線に何らかの要因で局所的な入熱があった場合、その部分をもとに電線が破断してしまう恐れがある。このため、アルミニウム合金導体の高温環境下での機械強度を上げることが求められている。
本発明の目的は、室温時の導電率や強度、伸び等の性能を従来と同等に維持しつつ、高温強度および高温衝撃吸収性を向上させたアルミニウム合金導体、およびアルミニウム合金撚線を提供することにある。
本発明者らは、アルミニウム合金導体の成分と析出物に着目し、高温時に固溶して強化に寄与する元素を添加しつつ、室温での諸特性に影響を及ぼしにくい析出形態となるような合金組織を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、上記課題は以下の発明により達成される。
(1)Mg:0.10〜1.50質量%、Si:0.10〜1.50質量%、Fe:0.002〜0.100質量、元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Co、Cu、Y、Sr、Ni]の中から選ばれる1種または2種以上の元素を合計で0.01〜0.10質量%、Ti:0.000〜0.100質量%、B:0.000〜0.050質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金導体であって、
前記アルミニウム合金導体の長手方向に垂直な断面において、Al−Fe系およびAl−Fe−Si系化合物の面積率が2.0%以下であり、かつ、元素群Xの元素を含む化合物の面積率が1.0%以下であることを特徴とするアルミニウム合金導体。
(2)Feと元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Y、Co、Cu、Sr、Ni]の中から選ばれる1種または2種以上の元素とを合計で0.10質量%未満含有することを特徴とする、上記(1)に記載のアルミニウム合金導体。
(3)Ti:0.005〜0.100質量%、B:0.001〜0.050質量%を有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載のアルミニウム合金導体。
(4)MgとSiの質量比Mg/Siが0.80未満であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のアルミニウム合金導体。
(5)450℃における引張強度が10MPa以上であることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のアルミニウム合金導体。
(6)450℃における高温衝撃吸収エネルギーが200J/cm以上であることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のアルミニウム合金導体。
(7)素線の直径が0.1〜0.5mmであるアルミニウム合金線である上記(1)〜(6)のいずれかに記載のアルミニウム合金導体。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のアルミニウム合金導体からなる線を複数本撚り合わせて構成される、アルミニウム合金撚線。
(9)上記(7)のアルミニウム合金導体または上記(8)のアルミニウム合金撚線の外周に被覆層を有する被覆電線。
(10)上記(9)の被覆電線と、該被覆電線の、前記被覆層を除去した端部に装着された端子とを具えるワイヤーハーネス。
本発明のアルミニウム合金導体は高温強度および高温衝撃吸収性に優れるため、予期せぬ入熱等でアルミニウム合金導体が高温になった場合でも破断等の不具合の発生を低減させることができる。また、本発明のアルミニウム合金導体は、上記特性に加えて、室温導電率、室温強度および室温伸びが従来と同等であるので、ドア部やトランクなどの屈曲部のワイヤーハーネスを含めた配線体等に用いることができる。
本発明のアルミニウム合金導体は、Mg:0.10〜1.50質量%、Si:0.10〜1.50質量%、Fe:0.002〜0.100質量%、元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Y、Co、Cu、Sr、Ni]の中から選ばれる1種または2種以上の元素を合計で0.01〜0.10質量%、Ti:0.000〜0.100質量%、B:0.000〜0.050質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金導体であって、アルミニウム合金導体の長手方向に垂直な断面において、Al−Fe系およびAl−Fe−Si系化合物の面積率が2%以下であり、かつ、元素群Xの元素を含む化合物の面積率が1%以下である。
以下に、本発明のアルミニウム合金導体の化学組成等の限定理由を示す。
(1)化学組成
<Mg:0.10〜1.50質量%>
Mg(マグネシウム)は、アルミニウム母材中に固溶して強化する作用を有すると共に、その一部はSiと化合して析出物を形成して引張強度、耐屈曲疲労特性および耐熱性を向上させる作用を有する元素である。しかしながら、Mg含有量が0.1質量%未満だと、上記作用効果が不十分であり、また、Mg含有量が1.5質量%を超えると、結晶粒界にMg濃化部分を形成する可能性が高まり、引張強度、伸び、耐屈曲疲労特性が低下するとともに、Mg元素の固溶量が多くなることによって導電率も低下する。したがって、Mg含有量は0.10〜1.50質量%とする。なお、Mg含有量は、高強度を重視する場合には0.50〜1.50質量%にすることが好ましく、また、導電率を重視する場合には0.10〜0.50質量%とすることが好ましく、このような観点から総合的に0.30〜0.70質量%が好ましい。
<Si:0.10〜1.50質量%>
Si(ケイ素)は、Mgと化合して析出物を形成して引張強度、耐屈曲疲労特性、及び耐熱性を向上させる作用を有する元素である。Si含有量が0.10質量%未満だと、上記作用効果が不十分であり、また、Si含有量が1.50質量%を超えると、結晶粒界にSi濃化部分を形成する可能性が高まり、引張強度、伸び、耐屈曲疲労特性が低下するとともに、Si元素の固溶量が多くなることによって導電率も低下する。したがって、Si含有量は0.10〜1.50質量%とする。なお、Si含有量は、高強度を重視する場合には0.50〜1.50質量%にすることが好ましく、また、導電率を重視する場合には0.10〜0.50質量%とすることが好ましい。このような観点を総合的に勘案すると、Si含有量は0.30〜0.70質量%が好ましい。
<Fe:0.002〜0.100質量%>
Fe(鉄)は、Al中に655℃で0.05質量%程度しか固溶できない。室温では更に固溶量が少ないため、Al中に固溶できない残りのFeは、Al−Fe系、Al−Fe−Si系などの金属間化合物として晶出又は析出する。これらの金属間化合物は、アルミニウム合金導体の母相の結晶粒の微細化に寄与し得るものの、その粒子自体は室温での機械的特性にはあまり影響を与えない。しかしながら、アルミニウム合金導体が高温環境下に置かれた場合、これらの金属間化合物が多すぎるとFeが過剰に固溶して粒界に濃化し、粒界強度を低くする。従って、本発明ではAl−Fe系、Al−Fe−Si系の化合物の晶出や析出を極力避けるために、Feの成分を低く設定する。ただし、溶解原料とするAl地金には一定量のFeが含まれているため、完全にその添加量を0とすることはできない。また、わずかながら固溶するFeが固溶強化によって強度を増す影響もあるため、Feは0.002%以上とする。0.100%以上となると晶出物または析出物が多くなり、高温環境下でFeが過剰に固溶して粒界に濃化し、粒界強度を低くして破断等の不具合が発生する可能性が高くなる。したがって、Fe含有量は0.002〜0.100質量%とし、好ましくは0.010〜0.090質量%、更に好ましくは0.010〜0.050質量%とする。
<元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Y、Co、Cu、Sr、Ni]の1種または2種以上の元素を合計で0.01〜0.10質量%>
元素群X[Be(ベリリウム)、Hf(ハフニウム)、Mn(マンガン)、Zr(ジルコニウム)、Cr(クロム)、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、Co(コバルト)、Cu(銅)、Sr(ストロンチウム)、Ni(ニッケル)]の元素は、上記成分範囲においていずれも低温、あるいは室温(10〜35℃)時にはアルミニウム中に何らかの化合物として析出するが、高温(400〜500℃)時には、アルミニウム母相中に固溶して強化に寄与しやすい元素である。0.10質量%を超えて添加すると、アルミニウム合金導体が高温環境下に置かれた場合、これらの元素が過剰に固溶して粒界に濃化し、粒界強度を低くして破断等の不具合が発生する可能性が高くなる。0.01質量%以下では固溶しても強化への寄与が薄い。したがって、元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Y、Co、Cu、Sr、Ni]の元素の添加量は、1種または2種以上の元素を合計で0.01〜0.10質量%とする。
また、本発明のアルミニウム合金導体において、MgとSiの質量比Mg/Siは0.80未満とするのが好ましい。強度物性の観点からは、MgとSiはアルミニウム合金導体中でMgSiとして存在するのが好ましいとされる。このMgSiの化学量論組成におけるMg/Siの質量比は1.73である。しかし、Siは他の金属の析出物(Feや元素群Xによる析出物)中に取り込まれやすい。したがって、SiはMg/Siが小さくなるように添加しておくのが好ましい。MgとSiの質量比において0.8未満とすると、特に強度に対する寄与が大きいため好ましい。ただし、過剰に添加しすぎると、導電率の低下と意図しない析出物の析出を助長してしまうため、MgとSiの質量比は0.40以上が好ましい。
本発明のアルミニウム合金導体は、Mg、Si、Feおよび元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Y、Co、Cu、Sr、Ni]の1種または2種以上の元素を必須の含有成分とするが、必要に応じて、さらに、TiおよびBを含有させることができる。
<Ti:0.005〜0.100質量%>
Tiは、溶解鋳造時の鋳塊の組織を微細化する作用を有する元素である。鋳塊の組織が粗大であると、鋳造において鋳塊割れや線材加工工程において断線が発生して工業的に望ましくない。Ti含有量が0.005質量%未満であると、上記作用効果を十分に発揮することができず、また、Ti含有量が0.100質量%を超えると導電率が著しく低下する。したがって、Ti含有量は0.005〜0.100質量%とし、好ましくは0.005〜0.050質量%、より好ましくは0.005〜0.030質量%とする。
<B:0.001〜0.050質量%>
Bは、Tiと同様、溶解鋳造時の鋳塊の組織を微細化する作用を有する元素である。鋳塊の組織が粗大であると、鋳造において鋳塊割れや線材加工工程において断線が発生しやすくなるため工業的に望ましくない。B含有量が0.001質量%未満であると、上記作用効果を十分に発揮することができず、また、B含有量が0.050質量%を超えると導電率が低下する。したがって、B含有量は0.001〜0.050質量%とし、好ましくは0.001〜0.020質量%、より好ましくは0.001〜0.010質量%とする。
また、本発明のアルミニウム合金導体は、Feと元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Y、Co、Cu、Sr、Ni]の1種または2種以上の元素とを合計で0.10質量%未満含有するのが好ましい。アルミニウム合金導体が高温環境下に置かれた場合、これらの元素が過剰に固溶して粒界に濃化し、粒界強度を低くして破断等の不具合が発生する可能性が低くなるため、好ましい。
<残部:Alおよび不可避不純物>
上述した成分以外の残部はAl(アルミニウム)および不可避不純物である。ここでいう不可避不純物は、製造工程上、不可避的に含まれうる含有レベルの不純物を意味する。不可避不純物は、含有量によっては導電率を低下させる要因にもなりうるため、導電率の低下を加味して不可避不純物の含有量をある程度抑制することが好ましい。
(2)アルミニウム合金導体の長手方向に垂直な断面において、Al−Fe系およびAl−Fe−Si系化合物の面積率が2.0%以下であること
本発明のアルミニウム合金導体は、Al−Fe系およびAl−Fe−Si系化合物の面積率が、アルミニウム合金導体の長手方向に垂直な断面において2.0%以下であることを要する。前述の通り、Al中に固溶できないFeは、Al−Fe系、Al−Fe−Si系などの金属間化合物として晶出又は析出する。これらの金属間化合物は、アルミニウム合金導体の母相の結晶粒の微細化に寄与し得るものの、その粒子自体は室温での機械的特性にはあまり影響を与えない。しかしながら、アルミニウム合金導体が高温環境下に置かれた場合、これらの金属間化合物が多すぎるとFeが過剰に固溶して粒界に濃化し、粒界強度を低くする。また、Al−Fe−Si系の化合物はSiを含むために、析出強化に必要なMgSiの析出を阻害する。よって、これらの晶出物および析出物は可能な限り低減させたい。したがって、これらの化合物の面積率がアルミニウム合金導体(アルミニウム合金線)の長手方向に垂直な断面において2.0%以下であることを要する。Al−Fe系、Al−Fe−Si系の化合物の量は好ましくは0であるが、現実的にはAl地金中に不可避的に含まれるFeによって化合物が形成されてしまうため、これを低減する。
本発明におけるAl−Fe系およびAl−Fe−Si系の化合物の面積率は、常温状態でその面積率を測定する。面積率とは、アルミニウム合金導体の長手方向に垂直な断面の「断面積」に対する「上記化合物の面積の総和」を指す。ただし、通常500μmの視野の範囲で見れば足りる。
また、FeがAl−Fe系およびAl−Fe−Si系化合物とならずに過飽和にアルミニウム母相に固溶する状態は、導電率の観点から好ましくない。電気伝導はアルミウムが主に担うため、アルミニウム母相中に固溶している元素が少ない方が導電率を高くできるためである。よって、Al−Fe系、Al−Fe−Si系の化合物の量を0にするために、Feが過飽和なアルミニウム母相を形成することは避けるべきである。
(3)アルミニウム合金導体の長手方向に垂直な断面において、元素群Xの元素を含む化合物の面積率が1.0%以下であること
本発明のアルミニウム合金導体は、元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Y、Co、Cu、Sr、Ni]の元素を含む化合物の面積率が、アルミニウム合金導体の長手方向に垂直な断面において1%以下であることを要する。前述の通り、元素群Xの元素は特定の成分範囲においていずれも低温〜室温(10〜35℃)時にはアルミニウム中に何らかの化合物として析出するが、高温(400〜500℃)時には、アルミニウム母相中に固溶して強化に寄与しやすい元素である。よって、アルミニウム合金導体の長手方向に垂直な断面において元素群Xの元素を含む化合物の面積率が1.0%以上となると、アルミニウム合金導体が高温環境下に置かれた場合、これらの元素が過剰に固溶して粒界に濃化し、粒界強度を低くして破断等の不具合が発生する可能性が高くなる。面積率は、好ましくは0であるが、現実的にはAl地金中に不可避的に含まれる元素群Xの元素よって化合物が形成されてしまうため、これを低減する。
なお、元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Y、Co、Cu、Sr、Ni]の元素を含む化合物には、X−Al系、X−Si系、X−Al−Si系に限らず、X−Fe系やX−Mg系、X−Si系、あるいは元素群Xに含まれる複数の元素同士で形成される化合物等も含まれる。
本発明における元素群Xの元素を含む化合物の面積率も、常温状態でその面積率を測定する。面積率とは、アルミニウム合金導体の長手方向に垂直な断面の「断面積」に対する「上記化合物の面積の総和」を指す。ただし、通常500μmの視野の範囲で見れば足りる。
また、元素群Xが室温で析出物とならずに過飽和でアルミニウム母相に固溶する状態は、やはり導電率の観点から好ましくない。電気伝導はアルミウムが主に担うため、アルミニウム母相中に固溶している元素が少ない方が導電率を高くできるためである。
(本発明に係るアルミニウム合金導体の製造方法)
本発明のアルミニウム合金導体は、例えば[1]溶解処理、[2]鋳造処理、[3]熱間または冷間加工処理、[4]第1伸線加工処理の各工程を経て製造することができる。なお、選択的に[2]もしくは[3]の直後に均質化処理を行っても良いし、[4]の直後に[5]第1熱処理、[6]第2伸線加工処理、[7]第2熱処理、[8]時効熱処理を行っても良い。また、[6]もしくは[7]の直後に、アルミニウム合金導体の線を撚線とする工程を設けてもよい。また、[8]の後に電線に樹脂被覆を行う工程を設けてもよい。以下、[1]〜[8]の工程について説明する。
[1]溶解処理
溶解は、後述するアルミニウム合金組成のそれぞれの実施態様の濃度となるような分量で溶製する。本合金は、アルミニウム地金に元々含まれているFeの含有量をなるべく少なくするため、アルミニウムの純度が99.9%以上のアルミ地金を用いるのが好ましい。
[2]鋳造処理、[3]熱間または冷間加工処理、均質化熱処理
鋳造軸とベルトを組み合わせたプロペルチ式の連続鋳造圧延機を用いて、溶湯を水冷した鋳型で連続的に鋳造しながら圧延を行い、φ5.0〜13.0mm程度の棒材とする。このときの鋳造時の冷却速度は、Fe系晶出物の粗大化の防止とFeの強制固溶による導電率低下の防止の観点から、好ましくは5〜20℃/sである。鋳造及び熱間圧延は、ビレット鋳造及び押出法などにより行ってもよい。また、鋳造後や圧延後に均質化処理を行っても良い。均質化処理を行うと、添加成分が均質化され、特性ばらつきの抑制に効果がある。均質化処理は、通常480〜620℃、1〜10hで行う。
[4]第1伸線加工処理
次いで、必要に応じて表面の皮むきを実施して、好ましくはφ7.5〜12.5mmの適宜の太さの棒材とし、ダイス引きによって伸線加工する。表面の皮むきは実施することで線材表層の清浄化がなされるが、実施しなくてもよい。
[5]第1熱処理
次に、冷間伸線した被加工材に第1熱処理を施す。本発明の第1熱処理は、被加工材の柔軟性を取り戻し、伸線加工性を高めるために行うものである。伸線加工性が十分であり、断線が生じなければ第1熱処理は行わなくても良い。
[6]第2伸線加工処理
さらに、被加工材をダイス引きによって伸線加工する。
[7]第2熱処理
次に、被加工材に第2熱処理を施す。本発明の第2熱処理は、被加工材の柔軟性を取り戻し、室温での伸び性を高めるために行うものである。室温での伸び性が不要な用途であれば必要ない。第2熱処理の温度は、300〜620℃とする。300℃より低いと、被加工材の柔軟性を取り戻すことが出来ず、室温での伸び性が十分に向上できない。620℃より高いと、線材が部分的に溶融してしまい、引張強度、伸びが低下するため好ましくない。
また、本発明の第2熱処理は、溶体化処理を兼ねる工程であってもよい。この場合、その後に時効熱処理を施すことで高強度の線材を得ることも可能である。溶体化処理は、被加工材にランダムに含有されているMg、Si化合物をアルミ母相中に溶け込ませるために行うものである。第2熱処理を溶体化熱処理とする場合は、加熱温度を480〜620℃とする。620℃よりも高いと、添加元素を含んでいるアルミニウム合金線は部分的に溶融してしまい、引張強度、伸びが低下し、また、480℃よりも低いと、溶体化が十分に達成できずに、その後の時効熱処理工程での引張強度の向上効果が十分に得られない。
上記の第2熱処理を行う方法としては、高周波加熱、連続通電加熱、連続走間加熱などの連続熱処理でも良いし、バッチ式熱処理でもよい。高周波加熱や通電加熱を用いた場合、通常は線材に電流を流し続ける構造になっているため、時間の経過と共に線材温度が上昇する。そのため、電流を流し続けると線材が溶融してしまう可能性があるため、適正な時間範囲にて熱処理を行う必要がある。走間加熱を用いた場合においても、短時間の焼鈍であるため、通常、走間焼鈍炉温度は線材温度より高く設定される。長時間の熱処理では線材が溶融してしまう可能性があるため、適正な時間範囲にて熱処理を行う必要がある。また、すべての熱処理において被加工材の柔軟性を取り戻し、室温での伸び性を高めるために所定の時間以上が必要である。
高周波加熱による連続熱処理は、高周波による磁場中を線材が連続的に通過することで、誘導電流によって線材自体から発生するジュール熱により熱処理するものである。急熱、急冷の工程を含み、線材温度と熱処理時間で制御し線材を熱処理することができる。冷却は、急熱後、水中又は窒素ガス雰囲気中に線材を連続的に通過させることによって行う。この熱処理時間は0.01〜2s、好ましくは0.05〜1s、より好ましくは0.05〜0.5sで行う。
連続通電熱処理は、2つの電極輪を連続的に通過する線材に電流を流すことによって線材自体から発生するジュール熱により熱処理するものである。急熱、急冷の工程を含み、線材温度と熱処理時間で制御し線材を熱処理することができる。冷却は、急熱後、水中、大気中又は窒素ガス雰囲気中に線材を連続的に通過させることによって行う。この熱処理時間は0.01〜2s、好ましくは0.05〜1s、より好ましくは0.05〜0.5sで行う。
連続走間熱処理は、高温に保持した熱処理炉中を線材が連続的に通過して熱処理させるものである。急熱、急冷の工程を含み、熱処理炉内温度と熱処理時間で制御し線材を熱処理することができる。冷却は、急熱後、水中、大気中又は窒素ガス雰囲気中に線材を連続的に通過させることによって行う。この熱処理時間は0.5〜120s、好ましくは0.5〜60s、より好ましくは0.5〜30sで行う。
バッチ式熱処理は、焼鈍炉の中に線材を投入し、所定の設定温度、設定時間にて熱処理される方法である。線材自体が所定の温度にて数十秒程度加熱されればよいが、工業使用上、大量の線材を投入することになるため、線材の熱処理ムラを抑制するために30分以上は行った方が好ましい。熱処理時間の上限は、2次再結晶が生成しなければ特に制限は無いが、工業使用上、短時間で行った方が生産性が良いため、10時間以内、好ましくは6時間以内にて熱処理される。
第2熱処理が溶体化熱処理である場合には、冷却速度は、少なくとも150℃の温度までは10℃/s以上の平均冷却速度で行うことが好ましい。前記平均冷却速度が10℃/s未満であると、冷却中にMg、Siなどの析出物が生じてしまい、溶体化が十分になされずに、その後の時効熱処理工程での引張強度の向上効果が制限され、十分な引張強度が得られないからである。なお、前記平均冷却速度は、好ましくは50℃/s以上であり、更に好ましくは100℃/s以上である。
[8]時効熱処理
前記第2熱処理において溶体化熱処理を行ったアルミニウム合金導体に、時効熱処理を施してもよい。時効熱処理は、針状のMgSi析出物を析出させ、引張強度を向上させるために行う。時効熱処理における加熱温度は、140〜250℃、加熱時間は、0.5〜15時間である。前記加熱温度が140℃未満であると、針状のMgSi析出物を十分に析出させることができず、強度、耐屈曲疲労特性および導電率が不足しがちである。また、前記加熱温度が250℃よりも高いと、MgSi析出物のサイズが大きくなるため、導電率は上昇するが、強度および耐屈曲疲労特性が不足しがちである。
(本発明に係るアルミニウム合金導体)
本発明のアルミニウム合金導体は、素線の直径が、特に制限はなく用途に応じて適宜定めることができるが、細物線の場合はφ0.1〜0.5mm、中細物線の場合はφ0.8〜1.5mmが好ましい。
また、本アルミニウム合金導体は、室温時の導電率が45%IACS以上である。本アルミニウム合金導体は、450℃における引張強度が10MPa以上である。本アルミニウム合金導体は、450℃における高温衝撃吸収エネルギーが200J/cm以上である。本アルミニウム合金導体は、好ましくは、室温時の導電率が45%IACS以上である。本アルミニウム合金導体は、好ましくは、450℃における引張強度が15MPa以上である。本アルミニウム合金導体は、好ましくは、450℃における高温衝撃吸収エネルギーが250J/cm以上である。本アルミニウム合金導体は、さらに好ましくは、室温時の導電率が50%IACS以上である。本アルミニウム合金導体は、さらに好ましくは、450℃における引張強度が15MPa以上である。本アルミニウム合金導体は、さらに好ましくは、450℃における高温衝撃吸収エネルギーが350J/cm以上である。
なお、本発明の衝撃吸収エネルギーは、アルミニウム合金導体がどれほどの衝撃に耐えられるかの指標であり、アルミニウム合金導体が断線する直前の(錘の位置エネルギー)/(アルミニウム合金導体の断面積)で算出される。衝撃吸収エネルギーが大きい程、高い衝撃吸収性を有しているといえる。また、高温衝撃吸収エネルギーは、高温環境下、例えば400〜600℃の温度下での衝撃吸収エネルギーをいう。
以上、上記実施形態に係るアルミニウム合金導体について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、アルミニウム合金導体を複数本撚り合わせて構成されるアルミニウム合金撚線に、本発明のアルミニウム合金導体を適用してもよい。また、上記アルミニウム合金導体またはアルミニウム合金撚線を、その外周に被覆層を有する被覆電線に適用することができる。また、被覆電線とその端部に取り付けられた端子とからなる構造体の複数で構成されるワイヤーハーネス(組電線)に適用することも可能である。
また、上記実施形態に係るアルミニウム合金導体の製造方法は、記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
本発明を以下の実施例に基づき詳細に説明する。なお本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
(実施例)
Mg、Si、FeおよびAlと、選択的に添加するTi、B、および元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Y、Co、Cu、Sr、Ni]の1種以上の元素を、表1に示す含有量(質量%)になるようにプロペルチ式の連続鋳造圧延機を用いて、溶湯を水冷した鋳型で連続的に鋳造しながら圧延を行い、約φ9.5mmの棒材とした。なお、アルミニウム地金にはアルミニウムの純度が99.9%以上のものを用いた。このときの鋳造冷却速度は約15℃/sとした。次いで、第1伸線加工を行った。次いで、第1熱処理を熱処理温度400℃、熱処理時間1時間にて行って線材を軟化させ、第2伸線加工を行い、φ0.3mmの線材を得た。続いて、表2に示す条件で第2熱処理を施した。なお、バッチ式熱処理では、線材に熱電対を巻きつけて線材温度を測定した。連続通電熱処理では、線材の温度が最も高くなる部分での測定が設備上困難であるため、ファイバ型放射温度計(ジャパンセンサ社製)で線材の温度が最も高くなる部分よりも手前の位置にて温度を測定し、ジュール熱と放熱を考慮して最高到達温度を算出した。高周波加熱および連続走間熱処理では、熱処理区間出口付近の線材温度を測定した。第2熱処理後に、表2に示す条件で時効熱処理を施し、アルミニウム合金導体による線材を製造した。
作製した各々の発明例および比較例のアルミニウム合金線について、以下に示す方法により各特性を測定した。その結果を表2に示す。
(a)Fe系化合物の面積率A(Al−Fe系およびAl−Fe−Si系化合物の面積率)
実施例及び比較例のアルミニウム合金導体をFIB法にて薄膜にし、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて500μmの範囲を観察した。Al−Fe系およびAl−Fe−Si系化合物は、撮影された写真を基にEDXにて組成分析を行い、構成元素を同定し、Feの強度が母相のアルミの強度に対して10%以上である化合物を面積率のカウント対象とした。カウント対象とした化合物の面積を合計し、観察面積500μmにて割った値をAl−Fe系およびAl−Fe−Si系化合物の面積率Aとし、面積率Aが2.0%以下を合格とした。上記薄膜の試料厚さは、0.15μmを基準厚さとして算出している。試料厚さが基準厚さと異なる場合、試料厚さを基準厚さに換算して、つまり、(基準厚さ/試料厚さ)を撮影された写真を基に算出した面積率にかけることによって、面積率を算出できる。本実施例及び比較例では、FIB法によりすべての試料において試料厚さを約0.15μmに設定し作製した。
(b)元素群Xの元素を含む化合物の面積率B
実施例及び比較例のアルミニウム合金導体をFIB法にて薄膜にし、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて500μmの範囲を観察した。元素群Xの元素を含む化合物は、撮影された写真を基にEDXにて組成分析を行い、構成元素を同定し、元素群Xの元素1種以上の強度が母相のアルミの強度に対して10%以上である化合物を面積率のカウント対象とした。カウント対象とした化合物の面積を合計し、観察面積500μmにて割った値を元素群Xの元素を含む化合物の面積率Bとし、面積率Bが1.0%以下を合格とした。上記薄膜の試料厚さは、0.15μmを基準厚さとして算出している。試料厚さが基準厚さと異なる場合、試料厚さを基準厚さに換算して、つまり、(基準厚さ/試料厚さ)を撮影された写真を基に算出した面積率にかけることによって、面積率を算出できる。本実施例及び比較例では、FIB法によりすべての試料において試料厚さを約0.15μmに設定し作製した。
(c)高温引張強度
450℃恒温槽内において、JIS Z2241に準じて各3本ずつの供試材(アルミニウム合金線)について引張試験を行い、その平均値を求めた。高温引張強度は、10MPa以上を合格とした。
(d)高温衝撃吸収エネルギー
450℃恒温槽内において、アルミニウム合金導体線の一方の端に錘を付け、この錘を300mmの高さから自由落下させた。錘を重いものに順次変えていき、断線する直前の錘の重さから衝撃吸収エネルギーを計算した。高温衝撃吸収エネルギーは、200J/cm以上を合格とした。
(e)室温導電率(EC)
長さ300mmの試験片を20℃(±0.5℃)に保持した恒温漕中で、四端子法を用いて比抵抗を各3本ずつの供試材(アルミニウム合金線)について測定し、その平均導電率を算出した。端子間距離は200mmとした。導電率は、45%IACS以上を合格とした。
(f)室温引張強度および室温伸び
JIS Z2241に準じて各3本ずつの供試材(アルミニウム合金線)について引張試験を行い、その平均値を求めた。室温引張強度は、100MPa以上を合格とした。室温伸びは特に制限ないが、第2熱処理を施したものでは5%以上を合格とした
表2の結果より、次のことが明らかである。
発明例1〜45のアルミニウム合金線は、いずれも、面積率Aが2%以下、面積率Bが1%以下であり、高い高温引張強度および高い高温衝撃吸収エネルギーを実現することができた。また、導電率、室温引張強度および室温伸びが良好であった。特に、発明例2、6〜12、14〜16、20、22〜24、27、33、39〜41、45は、好ましい特性を示し、発明例21、32、42〜44は、より好ましい特性を示した。
一方、比較例1のアルミニウム合金線は、Fe含有量および面積率A、Bが本発明の範囲外であり、高温引張強度、高温衝撃吸収エネルギーおよび室温導電率が不足した。比較例2のアルミニウム合金線では、Mg、Fe含有量および面積率Aが本発明の範囲外にあり、高温引張強度、高温衝撃吸収エネルギーおよび室温引張強度が不足した。比較例3のアルミニウム合金線は、Si、Fe含有量および面積率Aが本発明の範囲外であり、高温引張強度、高温衝撃吸収エネルギーおよび室温引張強度が不足した。比較例4のアルミニウム合金線は、Mg、Si、Fe含有量および面積率Aが本発明の範囲外であり、高温引張強度、高温衝撃吸収エネルギー、室温導電率および室温伸びが不足した。比較例5、6のアルミニウム合金線は、Fe、Cr含有量および面積率A、Bが本発明の範囲外であり、高温引張強度および高温衝撃吸収エネルギーが不足した。また、比較例7〜9は、それぞれSc、Y、Hf含有量が本発明の範囲外であり、いずれも面積率Bが本発明の範囲外であり、高温引張強度、高温衝撃吸収エネルギーが不足しており、比較例8、9においてはさらに室温伸びも不足した。比較例10は、Mn、Zr含有量が本発明の範囲外であり、面積率Bが本発明の範囲外であり、高温引張強度および高温衝撃吸収エネルギーが不足した。比較例11は、Be、Sr、Ni、Cr含有量が本発明の範囲外であり、面積率Bが本発明の範囲外であり、高温引張強度および高温衝撃吸収エネルギーが不足した。
本発明のアルミニウム合金導体は、Al−Mg−Si系合金、例えば6000系アルミニウム合金において、直径がφ0.5mm以下である極細線として使用した場合であっても、高導電性、高い耐屈曲疲労特性および高い伸び性を示す、電気配線体の線材として用いることができる。また、アルミニウム合金撚線、被覆電線、ワイヤーハーネス等に使用することができ、移動体に搭載されるバッテリーケーブル、ハーネスあるいはモータ用導線、産業用ロボットの配線体として有用である。さらに、高い耐屈曲疲労特性が求められるドアやトランク、ボンネットなどに好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. Mg:0.10〜1.50質量%、Si:0.10〜1.50質量%、Fe:0.002〜0.100質量%、元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Y、Co、Cu、Sr、Ni]の中から選ばれる1種または2種以上の元素を合計で0.01〜0.10質量%、Ti:0.000〜0.100質量%、B:0.000〜0.050質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金導体であって、
    前記アルミニウム合金導体の長手方向に垂直な断面において、Al−Fe系およびAl−Fe−Si系化合物の面積率が2.0%以下であり、かつ、元素群Xの元素を含む化合物の面積率が1.0%以下であることを特徴とするアルミニウム合金導体。
  2. Feと元素群X[Be、Hf、Mn、Zr、Cr、Sc、Y、Co、Cu、Sr、Ni]の中から選ばれる1種または2種以上の元素とを合計で0.10質量%未満含有することを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム合金導体。
  3. Ti:0.005〜0.100質量%、B:0.001〜0.050質量%を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のアルミニウム合金導体。
  4. MgとSiの質量比Mg/Siが0.80未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金導体。
  5. 450℃における引張強度が10MPa以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金導体。
  6. 450℃における高温衝撃吸収エネルギーが200J/cm以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金導体。
  7. 素線の直径が0.1〜0.5mmであるアルミニウム合金線である請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金導体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金導体からなる線を複数本撚り合わせて構成される、アルミニウム合金撚線。
  9. 請求項7に記載のアルミニウム合金導体または請求項8に記載のアルミニウム合金撚線の外周に被覆層を有する被覆電線。
  10. 請求項9に記載の被覆電線と、該被覆電線の、前記被覆層を除去した端部に装着された端子とを具備するワイヤーハーネス。
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