始めに、実施例1の車両用シート1の構成について、図1〜図18を用いて説明する。本実施例の車両用シート1は、図1に示すように、図示しない3列シートを備えた車両の助手席シート後側の2列目のシートとして構成されている。この車両用シート1は、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭部を支えるヘッドレスト4と、を備える。シートバック2は、図2〜図3に示すように、その骨格を成す逆U字形状に組まれたシートバックフレーム2Aの左右両サイドの下端部が、それぞれ、シートクッション3の骨格を成す平面視U字形状に組まれたシートクッションフレーム3Aの左右両サイドの後端部に対して、回転止め可能な回転軸装置として機能するリクライニング装置5,5を間に介して連結されている。
上述した各リクライニング装置5,5は、常時は、シートバック2のシートクッション3に対する背凭れ角度を固定したロック状態とされて保持されている。これらリクライニング装置5,5のロック状態は、シートクッション3の車両外側(乗降ドアに近い側)の側部に設けられた解除レバー6の引き上げ操作や、シートバック2の車両外側の側部に設けられたサイドレバー7の押し下げ操作を、それぞれ途中位置まで行うことによって解除されるようになっている。ここで、上記解除レバー6及びサイドレバー7が、それぞれ本発明の「操作レバー」に相当し、これらの操作によりロックの解除操作がされる後述する車両内側のリクライニング装置5が本発明の「第1の機構」に相当し、上記リクライニング装置5のロック状態を解除操作する「途中位置」が本発明の「第1の所定位置」に相当する。上記操作によって各リクライニング装置5,5のロック状態が解除されることにより、シートバック2は、各リクライニング装置5,5の軸心まわりに前後に傾動することができる状態となる。そして、シートバック2が任意の傾動位置に調節されたところで、上述した各操作を解くことにより、各リクライニング装置5,5が再び附勢によりロック状態に戻されて、シートバック2がその調節された背凭れ角度の位置に固定された状態となる。
ここで、図2に示すように、上記シートバックフレーム2Aの車両外側の側部とシートクッションフレーム3Aの車両外側の側部との間には、渦巻きばね2A3が掛着されている。この渦巻きばね2A3は、その内側の端部がシートクッションフレーム3Aの車両外側の側部に掛着されており、外側の端部が、シートバックフレーム2Aの車両外側の側部に結合されたL字板2A2の車両外側に突出した片部に後側から掛着されている。この渦巻きばね2A3により、シートバック2は、常時、前倒れ回転する方向に附勢力をかけられた状態とされている。したがって、シートバック2は、車両用シート1に人が着座していない状態で、使用者がその車両外側の乗降ドアの外側に立った位置から上記解除レバー6やサイドレバー7を操作することにより、上述した渦巻きばね2A3の附勢力によって通常使用位置から前へと倒し込まれるようになっている。
ここで、上記シートバック2の前倒れ回転は、図3〜図4に示すように、シートクッションフレーム3Aの車両外側の側部の内側面に設けられた係止機構10のストッパピン12Bによって、図6に示す前傾位置にて係止されるようになっている。ここで、上記係止機構10が本発明の「第2の機構」に相当する。そして、このシートバック2の前傾位置までの傾倒に伴って、図2及び図9に示すように、シートクッションフレーム3Aの車両内側(乗降ドアから遠い側)の側部の内側面に設けられたスライド解除機構8が押し蹴られる形で操作されて(図10〜図11参照)、ケーブル8Cを介して車両用シート1とフロアとの間に設けられた各スライダ装置30,30のスライドロック状態が解除されるようになっている。この解除操作によって、車両用シート1は、フロアに対して車両前後方向にスライドすることができる状態となる。したがって、この状態(シートバック2が前傾位置まで傾倒した状態)で車両用シート1を車両前方側へスライドさせることにより、その後列側の座席シートに対して乗り降りする乗員の乗降スペースを広く確保して、その乗降性を向上させることができる。
また、車両用シート1は、上記図6に示したシートバック2が前傾位置まで傾倒された状態から、図1にて前述した解除レバー6やサイドレバー7を更に大きく操作することにより、係止機構10による係止状態が解除されて、シートバック2が上記前傾位置を越えてシートクッション3の上面部に重なる大倒し位置まで倒し込まれるようになっている。詳しくは、上記シートバック2の大倒れ回転は、図2〜図3に示すようにシートバックフレーム2Aの左右両サイドの下部の外側部に結合された各L字板2A2,2A2の外側に突出した各片部が、それぞれ、シートクッションフレーム3Aの左右両サイドの後ろ側上縁部に前方側に角状に突出して形成された各ストッパ面3A1,3A1に当接して係止する位置にて止められるようになっている(図8及び図12参照)。そして、このシートバック2の大倒れに伴って、上述したスライド解除機構8がシートバック2によって押し蹴られていた状態が解除されて、各スライダ装置30,30が再びスライドロックした状態に戻されるようになっている(図12参照)。これにより、車両用シート1は、シートバック2が大きく倒し込まれてコンパクトに畳み込まれた状態となり、車室内空間を広く拡張させることができると共に、その大倒しされたシートバック2の背面を各種荷物置きやテーブル等の載置面として使用できる状態となり、車室内の利便性を向上させることができる。
このように、車両用シート1は、上記解除レバー6やサイドレバー7を途中位置(第1の所定位置)まで操作することにより、シートバック2を前傾位置まで傾倒させられるようになっていると共に、傾倒後に解除レバー6やサイドレバー7を更に大きく操作して上記途中位置を越えた位置(本発明の「第2の所定位置」に相当する。)まで更に大きく操作することにより、シートバック2を更に前に傾倒させて大倒し位置まで倒し込めるようになっている。次に、上記解除レバー6及びサイドレバー7の構成について説明する。解除レバー6は、図4に示すように、シートクッションフレーム3Aの車両外側のサイドフレームの外側の面部に連結軸6Bにより回転可能に軸連結されて設けられている。詳しくは、上記連結軸6Bは、シートクッションフレーム3Aに一体的に結合されて設けられており、解除レバー6は、上記連結軸6Bに対して回転可能に軸連結されて設けられている。
上記解除レバー6は、シートバック2の直下位置となる後方部位置で上記連結軸6Bにより軸支されており、この軸支部位からシート前方側に向かって操作部となるアーム片を延ばす形に形成されている。この解除レバー6は、上記連結軸6Bとの間に掛着された捩りばね6Cの附勢力によって、常時は、その前方側に延出するアーム片を下方側へ回す方向(図4に示す反時計回り方向)に附勢された状態として、その下面部に形成された係止片6A2が、シートクッションフレーム3Aに切り起こし形成された係止板3A2の上面に当接する位置にて係止された状態とされている。上記解除レバー6は、上記捩りばね6Cの附勢力に抗して引き上げ操作されることにより、その途中位置(第1の所定位置)までの操作により同解除レバー6に繋がれたケーブル6Aを牽引操作して、図3に示すように、ケーブル6Aに繋がれた動力伝達の中継部20を介して車両内側に配されたリクライニング装置5の操作軸5Hに連結された解除アーム5Lを回転操作して、各リクライニング装置5,5のロック状態を解除するようになっている。
この解除操作により、シートバック2が、図6及び図11にて前述したように前傾位置まで傾倒されて係止機構10により係止された状態となる。そして、上記傾倒後に、解除レバー6を更に大きく引き上げ操作して(第2の所定位置まで操作して)、上記ケーブル6Aを更に牽引操作することにより、図3に示す前述した動力伝達の中継部20が更に操作されて、図7に示すように、シートバック2を前傾位置に係止させている係止機構10の係止状態が解除される。そしてこの解除操作により、シートバック2が、更に前に傾倒することができる状態となり、大倒し位置まで倒し込まれてその位置で係止された状態となる(図8及び図12参照)。なお、上述した動力伝達の中継部20の構成については、後に詳しく説明することとする。
サイドレバー7は、図2に示すように、シートバックフレーム2Aの車両外側のサイドフレームに上下方向に回転操作可能な状態にヒンジ連結されており、常時は、シートバックフレーム2Aとの間に掛着された図示しないばねの附勢力によって、上側に跳ね上げられた位置に保持された状態とされている。上記サイドレバー7は、上記図示しないばねの附勢力に抗して押し下げ操作されることにより、その途中位置(第1の所定位置)までの操作によって、同サイドレバー7に繋がれたケーブル7Aを牽引操作して、図3に示すように、ケーブル7Aに繋がれた動力伝達の中継部20を介して車両内側に配されたリクライニング装置5の操作軸5Hに連結された解除アーム5Lを回転操作して、各リクライニング装置5,5のロック状態を解除するようになっている。
この解除操作により、シートバック2が、図6及び図11にて前述したように前傾位置まで傾倒されて係止機構10により係止された状態となる。そして、上記傾倒後に、サイドレバー7を更に大きく押し下げ操作して(第2の所定位置まで操作して)、上記ケーブル7Aを更に牽引操作することにより、図3に示す前述した動力伝達の中継部20が更に操作されて、図7に示すように、シートバック2を前傾位置に係止させている係止機構10の係止状態が解除される。そしてこの解除操作により、シートバック2が、更に前に傾倒することができる状態となり、大倒し位置まで倒し込まれてその位置で係止された状態となる(図8及び図12参照)。ここで、上記サイドレバー7の操作によってシートバック2を前傾位置まで傾倒させたり、大倒し位置まで倒し込んだりする操作時には、使用者が、サイドレバー7を掴む操作の手でシートバック2を持ちながら、シートバック2を上述した前傾位置や大倒し位置まで倒し込むことができるようになっている。したがって、シートバック2の倒れ込み速度が急激的となり過ぎないように、上記シートバック2を掴んだ手でその倒れ込み速度の抑制を行うことができる。
以下、上述した車両用シート1に搭載された各機構の構成について詳しく説明する。なお、上述したシートバック2は、図1に示すように、前述した図2や図3に示したシートバックフレーム2Aの表面部にウレタン樹脂の発泡成形体より成るクッションパッド2Bが被せ付けられており、更にその表面全体を覆うように布製のカバー2Cが被せ付けられた構成とされている。また、シートクッション3も同様に、前述した図2や図3に示したシートクッションフレーム3Aの表面部にウレタン樹脂の発泡成形体より成るクッションパッド3Bが被せ付けられており、更にその表面全体を覆うように布製のカバー3Cが被せ付けられた構成とされている。
先ず、各リクライニング装置5,5の構成について説明する。なお、各リクライニング装置5,5は、互いに左右対称の向きに配置されているが、双方の基本的な構成は同じものとなっている。したがって、以下では、これらを代表して、図4に示されている車両外側に配されたリクライニング装置5の構成についてのみ説明することとする。このリクライニング装置5は、図5に示すように、シートバックフレーム2Aのサイドフレームの外側の面部に面当接されて一体的に溶着される円盤形状のラチェット5Aと、シートクッションフレーム3Aのサイドフレームの内側の面部に面当接されて一体的に溶着される円盤形状のガイド5Bと、を有し、これらラチェット5Aとガイド5Bとが、互いに軸方向に嵌合されて同軸まわりに相対回転可能となる状態に組まれて、外周リング5Cにより互いに軸方向に外れ止めされた状態に組まれた構成となっている。
上記ラチェット5Aとガイド5Bとは、これらの間に組み込まれた外歯を有する2個のポール5D,5Dが、ガイド5Bの中心部に軸支されたヒンジカム5Fの軸回転に伴って、同ヒンジカム5Fによりスライド操作されるスライドカム5Eを介してラチェット5Aと噛合するよう押圧されたり、ラチェット5Aとの噛合状態から外されるように操作されることで、互いの相対回転がロックされたり解除されたりするように切り替えられる構成となっている。
上記ヒンジカム5Fは、常時は、ガイド5Bとの間に掛着された渦巻きばね5Gの附勢力により回転附勢されて、各ポール5D,5Dをラチェット5Aと噛合させた状態に保持した状態となっている。これにより、リクライニング装置5は、常時は、ラチェット5Aとガイド5Bとの相対回転がロックされた状態(回転止め状態)として、シートバック2の背凭れ角度を固定した状態となっている。しかし、上記ヒンジカム5Fは、その軸心部に挿通されて回転方向に一体的とされた操作軸5Hが、上述した解除レバー6やサイドレバー7(図1参照)の操作によって回転操作されることにより、上記渦巻きばね5Gの附勢力に抗して回転操作されて、各ポール5D,5Dをラチェット5Aとの噛合状態から外すように引き戻す操作をする。これにより、ラチェット5Aとガイド5Bとの回転止めされた状態(ロック状態)が解除されて、シートバック2の背凭れ角度の固定状態が解かれる。
また、上記ヒンジカム5Fは、上記解除レバー6やサイドレバー7の操作状態が解かれることにより、上記渦巻きばね5Gの附勢力によって、再び各ポール5D,5Dをラチェット5Aと噛合させた状態に戻して保持するようになっている。以上が、各リクライニング装置5,5の基本構造となっている。なお、車両外側に配されたリクライニング装置5の操作軸5Hは、車両内側に配されたリクライニング装置5の操作軸5Hと連結ロッド5Rを介して互いに一体的に連結されており、車両内側の操作軸5Hが後述する解除アーム5Lにより回転操作される動きに連動して、双方のロック・解除の切替え操作が一斉に行われるようになっている。
次に、図9〜図12を参照して、スライド解除機構8の構成について説明する。スライド解除機構8は、図9に示すように、操作リンク8Aと、蹴リンク8Bと、ケーブル8Cと、によって構成されている。操作リンク8Aは、連結軸8A1によりシートクッションフレーム3Aの車両内側のサイドフレームの内側の面部に回転可能に軸連結されている。蹴リンク8Bは、操作リンク8Aに連結軸8A2により回転可能に軸連結されている。上記操作リンク8Aは、径方向の二方向にアーム片を延出させる形状とされており、図9に示す初期状態においてシート後下方向に延出するアーム片上に、上記連結軸8A2により蹴リンク8Bの下端部が回転可能に軸連結されている。また、操作リンク8Aのシート前方向に延出するアーム片には、各スライダ装置30,30のスライドロック状態の解除操作を行う後述するロック解除アーム33を操作するためのケーブル8Cが繋がれている。ここで、上記操作リンク8Aは、連結軸8A1に対して回転可能に軸連結されており、連結軸8A1が、シートクッションフレーム3Aに対して一体的に結合されている。そして、上記操作リンク8Aとシートクッションフレーム3Aに形成された係止板3A3との間には、操作リンク8Aを図示反時計回り方向に回転附勢する捩りばね8A3が掛着されている。これにより、操作リンク8Aは、常時は、上記捩りばね8A3の附勢力によって、上記シート後下方向に延出するアーム片が上記係止板3A3の下面に当接する位置にて係止された状態とされている。
蹴リンク8Bは、シート後方向に向かってU字状に湾曲した形に形成されており、その図示下端部が、連結軸8A2により上記操作リンク8Aのシート後下方向に延出するアーム片に回転可能に軸連結されている。詳しくは、上記連結軸8A2は、蹴リンク8Bに対して一体的に結合されており、操作リンク8Aに対して回転可能に軸連結されている。そして、上記連結軸8A2と操作リンク8Aとの間には、連結軸8A2と一体的となっている蹴リンク8Bを常時図示時計回り方向に回転附勢する捩りばね8A4が掛着されている。これにより、蹴リンク8Bは、常時は、上記捩りばね8A4の附勢力によって、そのU字の湾曲した凹面を操作リンク8Aの回転軸たる連結軸8A1に押し当てて係止された状態として保持されている。
上記蹴リンク8Bの図示上端部には、軸方向に突出する丸棒状の脚ピン8B1が設けられている。この脚ピン8B1は、図9に示すように、その初期状態では、シートバックフレーム2Aの前下側の周縁部に突出して設けられた内側蹴部2A1bがシートバック2の前倒れ回転によって移動してくる軌跡上の位置に露呈した状態とされている。これにより、上記脚ピン8B1を備えた蹴リンク8Bは、図10〜図11に示すように、シートバック2が前傾位置まで倒し込まれる動作によって、脚ピン8B1が内側蹴部2A1bによって押し蹴られる格好で連結軸8A1を支点に連結軸8A2を介して操作リンク8Aと一体的となって図示時計回り方向に押し回されるようになっている。そして、この操作リンク8Aの回転により、ケーブル8Cが牽引操作されて、前述した各スライダ装置30,30に連結されて設けられたロック解除アーム33が操作されて、各スライダ装置30,30のスライドロック状態が解除される。上記蹴リンク8Bが内側蹴部2A1bによって押し回された状態は、図11に示すように、シートバック2が前傾位置に係止された状態では、脚ピン8B1が内側蹴部2A1bの周面上に乗り上がった状態に保たれることで、押し回された状態に保持されるようになっている。
しかし、蹴リンク8Bは、図12に示すように、シートバック2が上記前傾位置を越えた大倒し位置まで倒し込まれることにより、内側蹴部2A1bが脚ピン8B1との干渉を抜ける位置まで通り過ぎて、捩りばね8A3,8A4の両作用によって、操作リンク8Aと共に、回転操作される前の初期位置に戻されるようになっている。これにより、操作リンク8Aに繋がれたケーブル8Cの牽引操作状態が解かれて、各スライダ装置30,30が再びスライドロックされた状態に戻されるようになっている。上記初期位置に戻された蹴リンク8Bは、シートバック2が大倒し位置から元の使用位置に戻される動きによって、再び、脚ピン8B1が内側蹴部2A1bによって押し蹴られる関係となるが、この時には、蹴リンク8Bは、捩りばね8A4の附勢力に抗して連結軸8A2を中心に図示反時計回り方向に単独で回されるようになっており、連結軸8A1まわりの同方向への回転が係止されている操作リンク8Aとは一緒には回らないようになっている。この蹴リンク8Bの単独回転により、操作リンク8Aに繋がれたケーブル8Cに無理な引張り力や曲げ力をかけないように、シートバック2が起こし上げられる動きを逃がせるようになっている。
ここで、図2〜図3に示すように、各スライダ装置30,30は、シートクッションフレーム3Aの両サイドフレームの下部とフロアとの間に左右一対で配置されて設けられている。これらスライダ装置30,30は、それぞれ、フロア上に固定されてシート前後方向に延設されたロアレール31と、シートクッションフレーム3Aに固定されてロアレール31に対して前後スライド可能な状態に組み付けられたアッパレール32と、アッパレール32に設けられてロアレール31との係合によりアッパレール32のスライドをロックする図示しないロック爪と、を有する。上記図示しない各ロック爪は、常時はアッパレール32との間に掛着されたばね(図示省略)の附勢力によりロアレール31と係合してアッパレール32のスライドをロックした状態に保持されており、この附勢力に抗して回転操作されることによりロアレール31との係合から外されて上記したスライドロック状態を解除する構成となっている。
上記図示しない各ロック爪は、互いの間に連結ロッド34が架け渡されて一体的に連結されており、互いのロック解除の作動が同期して行われるようになっている。この連結ロッド34の車両内側の端部には、ロック解除アーム33が一体的に結合されており、前述したシートバック2の前倒れ回転に伴うスライド解除機構8の作動に伴って、ケーブル8Cを介してロック解除アーム33が回転操作されて、連結ロッド34を介して各ロック爪が回転操作され、各スライダ装置30,30のスライドロック状態が解除されるようになっている。
次に、図2〜図4及び図6〜図8を参照して、係止機構10の構成について説明する。係止機構10は、図4に示すように、支えアーム11と、ストッパアーム12と、操作アーム13と、を有する。支えアーム11とストッパアーム12は、図3に示すように、シートクッションフレーム3Aの車両外側のサイドフレームの内側の面部に配されており、操作アーム13は、図2に示すように、上記シートクッションフレーム3Aの車両外側のサイドフレームの外側の面部に配されている。
上記支えアーム11と操作アーム13は、連結軸13Aにより互いに一体的に結合された状態として、シートクッションフレーム3Aのサイドフレームに対して回転可能に軸連結されている。上記操作アーム13には、前述した図2〜図3に示した解除レバー6やサイドレバー7の操作力を伝達する動力伝達の中継部20の第2の出力ケーブル24Dが繋がれており、解除レバー6やサイドレバー7が操作されることにより、第2の出力ケーブル24Dを介して図示反時計回り方向に回転操作されるようになっている(図7参照)。支えアーム11は、図4に示すように、径方向の二方向にアーム片を延出させる形状とされており、そのシート上前方向に延出するアーム片は、後述するストッパアーム12のストッパピン12Bを受け止める機能をするものとなっており、シート下前方向に延出するアーム片には、シートクッションフレーム3Aとの間に、引張ばね11Aが掛着されている。この引張ばね11Aの附勢力により、支えアーム11及びこれと一体的とされた操作アーム13は、常時は連結軸13Aを中心に図示時計回り方向に回転附勢された状態として、支えアーム11のシート下前方向に延出するアーム片がシートクッションフレーム3Aに一体的に形成された係止板3A4の後面に当接する位置にて係止された状態とされている。
また、ストッパアーム12は、上記シートクッションフレーム3Aのサイドフレームに対し、連結軸12Aにより回転可能に軸連結されて設けられている。このストッパアーム12は、シートクッションフレーム3Aとの間に引張ばね12Cが掛着されており、常時はこの引張ばね12Cの附勢力によって図示時計回り方向に回転附勢された状態として、そのアームの先端部に軸方向に突出して設けられた丸棒状のストッパピン12Bを、上述した支えアーム11のシート上前方向に延出するアーム片の外周面に押し当てた状態に係止された状態とされている。このストッパピン12Bが上記支えアーム11のアーム片の外周面に押し当てられる力は、支えアーム11の外周面が連結軸13Aを中心に描かれる円弧の形に湾曲して形成されていることにより、連結軸13Aに向かって径方向に真っ直ぐに作用するようになっており、連結軸13Aにより強い支持力で支えられるようになっている。
上記ストッパピン12Bは、図4に示すように、その初期状態では、シートバックフレーム2Aの前下側の周縁部に突出して設けられた外側蹴部2A1aがシートバック2の前倒れ回転によって移動してくる軌跡上の位置に露呈した状態とされている。これにより、上記ストッパピン12Bは、図6に示すように、シートバック2が前傾位置まで倒し込まれることによって、上述した外側蹴部2A1aと当接し、上述した支えアーム11による支えを介して、シートバック2の前倒れ回転を前傾位置にて係止させるようになっている。このストッパピン12Bによるシートバック2の前倒れ回転の係止状態は、使用者が上述した第1の所定位置まで操作した解除レバー6やサイドレバー7を更に大きく操作した第2の所定位置まで操作することによって解除される。
具体的には、上記各操作が行われることにより、図7に示すように、動力伝達の中継部20の第2の出力ケーブル24Dを介して、操作アーム13が連結軸13Aを中心に図示反時計回り方向に回されて、支えアーム11がこれと一体的となって回転し、ストッパピン12Bとの当接状態から外される。この時、支えアーム11は、そのストッパピン12Bとの当接面が上記円弧面とされていることにより、比較的軽い力でストッパピン12Bとの当接から外すことができるようになっている。上記操作により、ストッパピン12Bを備えたストッパアーム12は、引張ばね12Cの附勢力によって図示時計回り方向に回転し、外側蹴部2A1aとは当たらなくなる位置まで退避して、シートバック2を前傾位置にて回転止めする機能が働かない状態となる。
そしてこれにより、図8に示すように、シートバック2が、その前倒れ回転力によって上記前傾位置を越えて前に倒し込まれ、シートバックフレーム2Aの左右両サイドの外側下部に設けられた各L字板2A2,2A2がシートクッションフレーム3Aの左右両サイド部に形成された各ストッパ面3A1,3A1に当接する大倒し位置まで倒し込まれて係止される。なお、上記解除レバー6やサイドレバー7の更なる操作によって退避操作されたストッパアーム12は、上記の各操作状態が解除されることによって、引張ばね12Cに打ち勝つ引張ばね11Aの強いばね力により初期位置に戻される支えアーム11の外周面形状(傾斜面形状)により案内されながら、図4に示した係止機能可能な元の初期位置状態に戻されるようになっている。
続いて、図2〜図3及び図13〜図17を用いて、上述した解除レバー6やサイドレバー7の操作力を、上記各リクライニング装置5,5のロックを解除する操作力や、係止機構10の係止状態を解除する操作力として伝達する動力伝達の中継部20の構成について説明する。図2〜図3に示すように、上記動力伝達の中継部20は、シートクッション3の着座面より下側に沈んだ位置にてシートクッションフレーム3Aに固定されて設けられており、上述した解除レバー6やサイドレバー7が操作されたことによる操作力を、これらに繋がれたケーブル6A,7Aから受けて、車両内側のリクライニング装置5や係止機構10へと伝達する中継部として構成されている。
具体的には、図13〜図14に示すように、上記動力伝達の中継部20は、ベース板21と、入力リンク22と、第1の出力リンク23と、第2の出力リンク24と、を有する。ベース板21は、シートクッションフレーム3Aに一体的に固定されて設けられ、入力リンク22は、連結軸22Aによりベース板21に回転可能に軸連結されて設けられ、第1の出力リンク23及び第2の出力リンク24は、共に、連結軸25によりベース板21に対して互いに同軸回りとなるように回転可能な状態に連結されて設けられている。上記入力リンク22は、連結軸22Aに対して回転可能に軸連結されており、連結軸22Aがベース板21に対して一体的に固定されている。また、第1の出力リンク23及び第2の出力リンク24は、それぞれ、連結軸25に対して回転可能に軸連結されており、連結軸25がベース板21に対して一体的に固定されている。上記各連結軸22A,25は、それぞれ、シートクッション3の高さ方向に軸方向が延びる向きに配されており、互いに平行向きで、かつ、径方向に離間した配置関係とされている。
上記入力リンク22は、径方向の二方向にアーム片を延出させる形状とされており、常時は、連結軸22Aとの間に掛着された捩りばね22Bの附勢力によって図示時計回り方向に回転附勢された状態とされている。この附勢力により、入力リンク22は、常時は、その図示下方側に延出するアーム片が、ベース板21に形成された第1ストッパ21Aと図示時計回り方向に当接して係止される位置にて保持された状態とされている。上記入力リンク22の図示下方側に延出するアーム片には、上述した解除レバー6に繋がれたケーブル6Aとサイドレバー7に繋がれたケーブル7Aとがそれぞれ繋がれている。なお、図14〜図17では、構成を簡単化して示すために、2つのケーブル6A,7Aを1本にして示してある。これにより、入力リンク22は、上記解除レバー6又はサイドレバー7が操作されることにより、これらに繋がれたケーブル6A,7Aを介して上記捩りばね22Bの附勢力に抗した図示反時計回り方向に回転操作されるようになっている。そして、この回転操作により、入力リンク22は、その図示上方側に延出するアーム片の端部に設けられた軸方向に突出する蹴ピン22Cにより、第1の出力リンク23や第2の出力リンク24のアーム片を蹴って押し回すようになっている。
第1の出力リンク23は、径方向の二方向にアーム片を延出させる形状とされており、常時は、ベース板21との間に掛着された引張ばね23Cの附勢力によって、図示反時計回り方向に回転附勢された状態とされている。この附勢力により、第1の出力リンク23は、常時は、その図示下方側に延出するアーム片が、入力リンク22の蹴ピン22Cに当たって係止される位置にて保持された状態とされている。上記第1の出力リンク23の初期状態時に蹴ピン22Cに当たって係止される押圧面23Aは、入力リンク22の回転中心(連結軸22A)に向かって面を延ばしていくように、第1の出力リンク23の図示左方側に延出するアーム片の下側縁面の一部が図示下方側に屈曲されて形成されている。上記第1の出力リンク23の図示右方側に延出するアーム片には、第1の出力ケーブル23Dが繋がれている。この第1の出力ケーブル23Dは、図3において前述した、車両内側に配されたリクライニング装置5の操作軸5Hに連結された解除アーム5Lと繋がれており、その牽引操作によって解除アーム5Lを回転操作して、各リクライニング装置5,5のロック状態を解除するようになっている。
上記図14に示した第1の出力リンク23は、入力リンク22が初期位置から図示反時計回り方向に回転操作される動きによって、その押圧面23Aが蹴ピン22Cにより押圧されて図示時計回り方向に回される(図15参照)。これにより、第1の出力ケーブル23Dが牽引操作されて、上述した各リクライニング装置5,5(図3参照)のロック状態が解除される。ここで、上記リクライニング装置5,5のロックの解除は、図15に示すように、蹴ピン22Cが第1の出力リンク23を押し回して上記押圧面23Aを越えた円弧面23B上の位置に完全に乗り上がる前の位置、すなわち蹴ピン22Cが押圧面23Aと円弧面23Bとの角面を押圧している途中段階の位置で完結するようになっている。しかし、第1の出力リンク23は、上記リクライニング装置5,5のロックが解除される位置まで押し回されても、入力リンク22の回転により、更にそこから僅かに蹴ピン22Cにより押圧面23Aと円弧面23Bとの角面が押圧されて回されるようになっており、第1の出力ケーブル23Dを余分に牽引操作するようになっている。この余分な操作量設定により、入力リンク22や第1の出力リンク23の組み付けに誤差が生じても、リクライニング装置5,5のロックの解除操作を確実に行うことができるようになっている。ここで、上述した入力リンク22を回転操作して、各リクライニング装置5,5のロックを解除する解除レバー6やサイドレバー7の操作の途中位置が、本発明の「第1の所定位置」に相当する。
そして、上記操作によって入力リンク22の蹴ピン22Cが第1の出力リンク23の円弧面23B上に完全に乗り上がった状態(図16の状態)となると、その後に入力リンク22が更に回転操作されても、第1の出力リンク23は、図16に示すように、蹴ピン22Cによってそれ以上蹴り回されることはなく、上記操作された一定の位置状態に保持されるようになる。ここで、上記円弧面23Bは、図15に示すように、入力リンク22の蹴ピン22Cが円弧面23B上に完全に乗り上がる位置まで第1の出力リンク23が押し回されることで、その円弧面23Bの向きが、入力リンク22の回転中心である連結軸22Aを中心とした円弧の形を描くように向けられた状態となる。これにより、第1の出力リンク23は、上記蹴ピン22Cが円弧面23B上に乗り上がった状態となってから入力リンク22が更に回転操作されても、蹴ピン22Cが円弧面23B上を摺動するのみで、蹴ピン22Cによって押し回されることなく一定の位置状態に保持されるようになっている。詳しくは、第1の出力リンク23は、上記蹴ピン22Cが円弧面23B上に位置している時には、その引張ばね23Cの附勢力によって初期位置に戻されようとする移動が、蹴ピン22Cにより規制されるため、蹴ピン22Cが円弧面23B上を移動しても、押しも引きもされない一定の位置状態に保持されるようになっている。これにより、第1の出力リンク23は、上記蹴ピン22Cが円弧面23B上に乗り上がった状態となった以降は、入力リンク22の回転移動がどんなに大きく進行しても、それ以上は回転操作されないようになっており、入力リンク22から伝達される回転操作力を逃がして、無理な負荷を受けないようになっている。ここで、上記円弧面23Bが本発明の「外周凹面」に相当する。
第2の出力リンク24は、径方向の二方向にアーム片を延出させる形状とされており、常時は、ベース板21に一体的に固定された連結軸25との間に掛着された渦巻きばね24Cの附勢力により、図示反時計回り方向に回転附勢された状態とされている。この附勢力により、第2の出力リンク24は、常時は、その図示下方側に延出するアーム片が、ベース板21に形成された第2ストッパ21Bに図示反時計回り方向に当たって係止される位置にて保持された状態とされている。これにより、第2の出力リンク24は、その初期状態時には、その図示前方側に延出して後から入力リンク22の回転により蹴ピン22Cにより押し蹴られて回されるアーム片の押圧面24Aが、蹴ピン22Cとの間を空けた状態位置に保持された状態とされている。上記押圧面24Aは、図14に示すように、上述した第1の出力アームの押圧面23Aと同様に、その初期状態時には、その面を入力リンク22の回転中心(連結軸22A)に向かって延ばしていくように、第2の出力リンク24の図示左方側に延出するアーム片の下側縁面の一部が図示下方側に屈曲されて形成されている。この第2の出力リンク24の押圧面24Aは、その初期状態では、上記第1の出力リンク23の押圧面23Aに対して、蹴ピン22Cの回転方向である図示反時計回り方向に離間した状態とされている。
上記第2の出力リンク24の図示下方側に延出するアーム片には、第2の出力ケーブル24Dが繋がれている。この第2の出力ケーブル24Dは、図7において前述した係止機構10の操作アーム13と繋がれており、その牽引操作によって操作アーム13を回転操作して、係止機構10によるシートバック2の前傾位置での係止状態を解除するようになっている。図14に戻って、上記第2の出力リンク24は、入力リンク22が初期位置から図示反時計回り方向に回されて第1の出力リンク23が回転操作された後、蹴ピン22Cが第1の出力リンク23の円弧面23B上に乗り上がった状態(図15参照)となってから、更に入力リンク22の回転操作が進行されることにより、図16に示すように、その押圧面23Aに蹴ピン22Cが当てられた状態となる。そして、そこから入力リンク22が更に回転操作されることにより、図17に示すように、第2の出力リンク24は、その押圧面24Aが蹴ピン22Cにより押圧されて図示時計回り方向に回される。これにより、第2の出力ケーブル24Dが牽引操作されて、上述した係止機構10(図7参照)の係止状態が解除される。
ここで、図17に示すように、上記係止機構10の係止状態の解除操作は、蹴ピン22Cが第2の出力リンク24を押し回してその押圧面24Aを乗り越えた円弧面24B上の位置に完全に乗り上がる前の位置、すなわち蹴ピン22Cが押圧面24Aと円弧面24Bとの角面を押圧している途中段階の位置で完結するようになっている。しかし、第2の出力リンク24は、上記係止機構10の係止状態が解除される位置まで押し回されても、入力リンク22の回転により、更にそこから僅かに蹴ピン22Cにより押圧面24Aと円弧面24Bとの角面が押圧されて回されるようになっており、第2の出力ケーブル24Dを余分に牽引操作するようになっている。この余分な操作量設定により、入力リンク22や第2の出力リンク24の組み付けに誤差が生じても、係止機構10の解除操作を確実に行うことができるようになっている。ここで、上述した解除レバー6やサイドレバー7が、入力リンク22を回転操作して、係止機構10の係止状態を解除する各操作位置が、本発明の「第2の所定位置」に相当する。
そして、上記操作によって入力リンク22の蹴ピン22Cが第2の出力リンク24の円弧面24B上に完全に乗り上がった状態となると、その後に入力リンク22が更に回転操作されても、第2の出力リンク24は、蹴ピン22Cによってそれ以上蹴り回されることはなく、上記操作された一定の位置状態に保持されるようになる。ここで、上記円弧面24Bは、図17に示すように、入力リンク22の蹴ピン22Cが円弧面24B上に完全に乗り上がる位置まで第2の出力リンク24が押し回されることで、その円弧面24Bの向きが、入力リンク22の回転中心である連結軸22Aを中心とした円弧の形を描くように向けられた状態となる。これにより、第2の出力リンク24は、上記蹴ピン22Cが円弧面24B上に乗り上がった状態となってから入力リンク22が更に回転操作されても、蹴ピン22Cが円弧面24B上を摺動するのみで、蹴ピン22Cによって押し回されることなく一定の位置状態に保持されるようになっている。詳しくは、第2の出力リンク24は、上記蹴ピン22Cが円弧面24B上に位置している時には、その渦巻きばね24Cの附勢力によって初期位置に戻されようとする移動が、蹴ピン22Cにより規制されるため、蹴ピン22Cが円弧面24B上を移動しても、押しも引きもされない一定の位置状態に保持されるようになっている。これにより、第2の出力リンク24は、上記蹴ピン22Cが円弧面24B上に乗り上がった状態となった以降は、入力リンク22の回転移動がどんなに大きく進行しても、それ以上は回転操作されないようになっており、入力リンク22から伝達される回転操作力を逃がして、無理な負荷を受けないようになっている。
したがって、上記伝達構造により、解除レバー6やサイドレバー7を途中位置(第1の所定位置)まで操作することで、各リクライニング装置5,5のロック状態を解除して、シートバック2を前傾位置まで傾倒させて係止させた状態とすることができ、更に、解除レバー6やサイドレバー7を上記途中位置を越えた第2の所定位置まで操作することにより、上記係止機構10によるシートバック2の前傾位置での係止状態を解除して、シートバック2を大倒し位置まで倒し込むことができる。このとき、上記解除レバー6やサイドレバー7の操作により、入力リンク22から第1の出力リンク23に伝達される操作力や、入力リンク22から第2の出力リンク24に伝達される操作力は、それぞれ、一定以上回転操作された以降は伝達されずに逃がされるようになっているため、上記のように回転操作が順に行われる構成となっていても、先に操作が完了する第1の出力リンク23や、後に操作し始めれられる第2の出力リンク24に、それぞれ必要以上の負荷がかからないようになっている。
ところで、上述した動力伝達の中継部20には、解除レバー6やサイドレバー7の操作が、各リクライニング装置5,5のロック状態を解除する第1の所定位置から、係止機構10の係止状態を解除する第2の所定位置まで行われるまでの間の途中位置で、解除レバー6やサイドレバー7の操作荷重を急激的に重くして、解除レバー6やサイドレバー7の操作感に節度感となる急激的な抵抗感を付与する抵抗力付与構造20Aが設けられている。この抵抗力付与構造20Aにより、解除レバー6やサイドレバー7は、それらの操作を初期位置から途中止めすることなく一気にフルストローク位置まで操作する感覚で操作しても、その操作対象の変わり目となる第1の所定位置(図18に示す完了点C1)と第2の所定位置(図18に示す完了点C2)との間の途中位置(図18に示す開始点S2)で、操作感に節度感が付与されて操作を止めることが簡単に行えるようになっている。
具体的には、この抵抗力付与構造20Aは、図16に示すように、入力リンク22が回転操作されて、第2の出力リンク24が蹴ピン22Cにより押し回され始める最初の領域で、第2の出力リンク24から入力リンク22に急激的な回転操作に対する抵抗力を付与して操作荷重を重くする構成となっている。より具体的には、上記抵抗力付与構造20Aは、蹴ピン22Cにより押圧される第2の出力リンク24の押圧面24Aの立ち上がり形状により抵抗力を作用させる要素と、この第2の出力リンク24に回転操作方向とは逆方向(図示反時計回り方向)の回転附勢力をかける渦巻きばね24Cにより抵抗力を作用させる要素と、から成っている。これら抵抗要素により、解除レバー6やサイドレバー7の操作荷重は、入力リンク22を回転操作して、第1の出力リンク23を第1の所定位置まで回転操作した後に、第2の出力リンク24を回転操作して係止機構10による係止状態を解除し始める(図11に示す支えアーム11をストッパピン12Bとの当接状態から外し始める)ピークP2の操作位置(図18参照)に向けての操作荷重が、急激的に大きく立ち上がるように設定されている。
ここで、上記図18に示すピークP2の操作荷重は、上記各抵抗要素により、上述した第1の出力リンク23を最初に回転操作して各リクライニング装置5,5のロック状態を解除し始めるピークP1の操作荷重よりも高く、かつ、立ち上がりの勾配も高く設定されている。また、上記ピークP2に向けて操作荷重が立ち上がる寸前には、操作荷重は、図15〜図16で前述したように、蹴ピン22Cが第1の出力リンク23の円弧面23B上に乗り上がった位置上を摺動することで、各リクライニング装置5,5のロックの解除操作が開始されるピークP1から解除操作が完了する第1の所定位置(完了点C1)に向けて、及び第1の所定位置(完了点C1)から更に第2の出力リンク24が回転操作され始める開始点S2までの間に向けて、漸次大きく下げられていくようになっている。このように、操作荷重が一旦大きく下げられてから急激的に大きく立ち上がる抵抗力がかけられるようになっていることにより、開始点S2から係止機構10の解除操作が開始されるピークP2に向けての操作荷重をより急激的に大きく増大させて、解除レバー6やサイドレバー7の操作感に急激的となる大きな抵抗感を付与することができる。したがって、この急激的に大きな抵抗感が付与される開始点S2の位置で、使用者は、解除レバー6やサイドレバー7の操作を簡単に止めることができる。
また、上記開始点S2まで操作した解除レバー6やサイドレバー7を、上記開始点S2からピークP2の操作荷重を越える大きな力で操作することにより、前述した係止機構10の解除操作が開始され、前述した第2の所定位置となる完了点C2まで操作することにより、係止機構10の解除操作が完了する。このとき、ピークP2から完了点C2にかけての操作荷重は、蹴ピン22Cが第2の出力リンク24の円弧面24B上に乗り上がった位置上を摺動することで、漸次大きく下げられていくようになっており、解除操作が開始され始めるピークP2を越えてからは、解除レバー6やサイドレバー7を、漸次操作荷重が低減されていく完了点C2を越えた所定のフルストローク位置まで比較的軽い力で操作していくことができるようになっている。
このように、本実施例の車両用シート1の構成によれば、解除レバー6やサイドレバー7を第1の所定位置(図18に示す完了点C1)まで操作することにより、各リクライニング装置5,5のロック状態が解除操作される。また、解除レバー6やサイドレバー7を更に操作して第2の所定位置(図18に示す完了点C2)まで操作することにより、係止機構10が解除操作される。このとき、解除レバー6やサイドレバー7は、第1の所定位置を越えた第2の所定位置までの操作の途中位置(図18に示す開始点S2)で、前述した抵抗力付与構造20Aにより操作荷重が急激的に重たくされ、その操作感に節度感が付与される。このように、1つのレバー操作によって2つの機構を順に操作する操作機構において、操作対象の変わり目に急激的な抵抗感を付与して操作感に節度感を持たせたことにより、一方の機構のみの操作にとどめたり、両方の機構を操作したりするといった、操作の使い分けを行いやすくすることができる。
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の「操作レバー」の操作によって操作される「第1の機構」及び「第2の機構」は、上記実施例で示した「リクライニング装置5」や「係止機構10」に限らず、車両用シートに備えられる各種のリンク機構等の作動機構を操作対象として適用することができるものである。また、動力伝達の中継部に設定される抵抗力付与構造は、上記実施例で示したような第2の出力リンク24の押圧面24Aの立ち上がり形状やばね(渦巻きばね24C)の附勢力を抵抗要素とする構造に限らず、第2の出力リンクの一定の回転領域に高い摺動摩擦抵抗を設定するなどしたものであってもよい。また、本発明の「操作レバー」は、上記実施例で示したような車両用シートの車両外側の側部に設定される回転操作式の解除レバー6やサイドレバー7に限らず、その他の部位に設定されるレバーや、スライド操作式、押しボタン式、引張り操作式等の種々の操作形態のレバーを採用することができるものである。