JP2013000896A - 水圧転写シート製造用転写箔、水圧転写シート及び加飾成形品並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】剥離フィルムと、加飾層と、プライマー層とをこの順に有することを特徴とする水圧転写シート製造用転写箔、これを用いて得られる水圧転写シート及び加飾成形品、並びにそれらの製造方法。
【選択図】図1
Description
こうした装飾方法として、水圧を利用した水圧転写法が知られている。この水圧転写法は、水溶性あるいは水膨潤性の水溶性フィルムに、所望の装飾層を印刷した転写フィルムを用意し、該転写フィルムの装飾層に、有機溶剤を含む活性剤を塗布して、該装飾層を膨潤、粘着化させる(これを活性化という)。その前又は後に、前記転写フィルムを転写用の装飾層(印刷層)面を上面にして、水面上に浮遊させ、次いで、該転写フィルム上に被転写体となる物品を押圧して、水圧によって転写フィルムを被転写体の装飾処理をすべき被転写面に密着させた後、水溶性フィルムを除去して装飾層を転写する(例えば、特許文献1参照)。
すなわち、本発明は、
1.剥離フィルムと、加飾層と、プライマー層とをこの順に有することを特徴とする水圧転写シート製造用転写箔、
2.前記剥離フィルムと加飾層との間に剥離層を有する上記1に記載の水圧転写シート製造用転写箔、
3.前記加飾層に凹凸模様が形成されている上記1又は2に記載の水圧転写シート製造用転写箔、
4.前記プライマー層がポリビニルピロリドン樹脂を含む上記1〜3のいずれかに記載の水圧転写シート製造用転写箔、
5.上記1〜4のいずれかに記載の水圧転写シート製造用転写箔のプライマー層側及び/又は水溶性フィルムに活性剤を塗布する工程と、水圧転写シート製造用転写箔のプライマー層側に水溶性フィルムを積層する工程と、剥離フィルムを剥離する工程とを有することを特徴とする水圧転写シートの製造方法、
6.上記5に記載の水圧転写シートの製造方法によって水圧転写シートを得る工程と、該水圧転写シートの加飾層側に、活性剤を塗布して軟化させる工程と、該水圧転写シートを被転写体の被転写面に密着させる工程と、被転写体の被転写面に残留した水溶性フィルム及びプライマー層を除去する脱膜工程とを有することを特徴とする加飾成形品の製造方法、及び
7.水溶性フィルムと、プライマー層と、加飾層と、剥離層とをこの順に有することを特徴とする水圧転写シート。
を提供するものである。
以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の水圧転写シート製造用転写箔の構成の一例を示す概略断面図である。
本発明の水圧転写シート製造用転写箔1は、剥離フィルム2、加飾層4及びプライマー層5をこの順に有し、剥離フィルム2と加飾層4との間に剥離層3が形成されていてもよく、剥離層3と加飾層4との間に凹凸模様6が形成されていてもよい。
本発明の水圧転写シート製造用転写箔における剥離フィルム2は、剥離層3や加飾層4と接触しても後で剥離する(剥がす)ことができるフィルムであれば良く、特に制限されるものではないが、非水溶性のものや耐熱性の高いものが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなるフィルムや延伸フィルム、紙類、又はそれらをシリコーン等の離型剤でコーティングし、剥離処理したものが挙げられる。剥離フィルム2は、剥離処理されているものが剥がし易く好ましい。
本発明の水圧転写シート製造用転写箔における剥離層3は、剥離フィルム2と接触しても後で剥離することができる層であれば良く、例えば、剥離性に優れたアクリル樹脂、塩酢ビ樹脂(塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合物)、オレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、弗素樹脂、シリコーン或は弗素で変性した各種の樹脂を含むものが挙げられ、必要に応じてワックスを混合することができる。また、後述のプライマー層5に用いられるポリビニルピロリドン樹脂を含むものも好ましく用いられる。
本発明の水圧転写シート製造用転写箔における加飾層4は、後述の加飾成形品に加飾を施すものであって、具体的には、金属薄膜層を含むものが好ましく、さらに絵柄印刷層を含んでいてもよい。
金属薄膜層の材料としては、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、コバルト、銅、金、銀、スズ、亜鉛、黄銅、ステンレス等の金属、合金、金属酸化物等を使用することができる。金属酸化物としては酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等が挙げられる。これらのうち、アルミニウムがクラック形成の観点から好ましい。金属薄膜層の厚さは通常100〜800Åであることがクラック形成の観点から好ましく、200〜600Åであることがさらに好ましい。
本発明の水圧転写シート製造用転写箔は、加飾層4に凹凸模様6を形成してもよい。凹凸模様6を形成する方法としては、剥離フィルム2上に剥離層3を形成した後、該剥離層3にエンボス加工を施し、次いで加飾層4を形成する方法(方法1)や、予め凹凸が形成されている剥離フィルム2上に剥離層3や加飾層4を形成する方法(方法2)や、剥離層3を形成する際にその厚みを変化させる方法(方法3)等が挙げられるが、上記方法1において本発明を適用すると、後述するように、凹凸模様6を形成するエンボス加工時に水溶性フィルムが存在しないため、エンボス加工時の熱条件によって水溶性フィルムが劣化することを防ぐことができ、加飾層4の転写性が良好となるため特に好ましい。
凹凸模様6としては、光輝性意匠表現に応じたものとすれば良く、特に限定されるものではない。例えば、万線状溝、木目導管溝、木目年輪模様、砂目模様、石目模様、金属結晶面模様、布目模様、梨地模様、皮絞模様、マット面模様、ヘアライン模様、スピン調模様、文字、記号、幾何学図形等が挙げられる。凹凸模様6の深さは3〜50μmとすることがクラック形成の観点から好ましい。
これに対し、本発明においては、基材(剥離フィルム2)として耐熱性の高いものを選択することができるため、剥離層3にエンボス加工を施して凹凸模様6を形成する際のエンボス温度(すなわち、凹凸模様の深さ)の自由度が高く、従って、さらに多様な光輝性意匠を表現することが可能である。
以上より、本発明は、剥離層3と加飾層4との間に凹凸模様6が形成されている態様や、加飾層4が金属薄膜層である態様において特に有用である。
絵柄印刷層(図示しない)は、プライマー層5と金属薄膜層との間に設けることができる。絵柄印刷層のバインダー樹脂はプライマー層5と同じ樹脂を用いることが好ましい。着色剤は、従来から通常使用されているものが用いられる。
プライマー層5は、後述の本発明の水圧転写シートを被転写体上に積層した場合、最表面に残存するため、これを水洗して除去する場合には、水溶性のものが好ましい。より具体的には、プライマー層5はポリビニルピロリドン樹脂を含むことが好ましい。その場合、ポリビニルピロリドン樹脂単独からなるものであっても良いし、ポリビニルピロリドン樹脂を含む樹脂組成物からなるものであっても良い。
ポリビニルピロリドン樹脂は、N−ビニル−2−ピロリドンを重合してなる高分子化合物であり、水に溶解し、良好な水膨潤性を有する。このポリビニルピロリドン樹脂を用いることにより、水圧転写時にプライマー層5が適度な速度で膨潤するので、金属薄膜層が不均一に割れ(クラック)を生じることがなく、均一な微細な割れ(クラック)を生じることとなる。これにより、プライマー層5と金属薄膜層との間に形成された凹凸模様6がくずれ難く、良好に維持されるので、被転写体である加飾成形品は優れた光輝性を奏することができる。
また、ポリビニルピロリドン樹脂は、水膨潤速度が早過ぎないので、水圧転写シートを水面上に浮遊させた後、活性化工程の適度な時間を確保して被転写体に転写することができる。
上記のポリビニルピロリドン樹脂を含む樹脂組成物には、ポリビニルピロリドン樹脂に、所望により、上記の水溶性ポリマーが添加されても良いし、マンナン、キサンタンガム、グアーガム等のゴム成分が添加されていてもよい。これらの添加により、水膨潤速度を所望する水圧転写工程に最適になるように調整することができる。
剥離層3やプライマー層5は、公知の塗布方法又は印刷方法、剥離フィルム2との共押出法、あるいは樹脂フィルムを剥離フィルム2や加飾層4上にラミネートすることにより積層することができる。
公知の塗布方法としては、グラビアコート、リバースコート等が挙げられ、公知の印刷方法としては、グラビア印刷等が挙げられる。
剥離層3の表面に施されるエンボス加工は、通常80〜125℃の温度で、20〜100ton/m2、好ましくは20〜60ton/m2の圧力を加えてエンボス加工装置により行なわれ、所望する凹凸模様6を形成することができる。
加飾層4として金属薄膜層を設ける場合、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の金属蒸着方法、あるいは上記の金属薄膜層を形成する金属種の金属粉末とバインダー樹脂とを含む金属ペーストを塗布し、乾燥させることにより形成することができる。本発明においては、金属蒸着方法により形成することが好ましい。
上記のように、エンボス加工は剥離層3の表面に施されることが好ましいが、必要に応じ、加飾層4を形成した後、加飾層4の表面に施されても良い。
本発明の水圧転写シートは、水溶性フィルムと、プライマー層と、加飾層と、剥離層とを好ましくはこの順に有する。プライマー層、加飾層及び剥離層の詳細は、上述の水圧転写シート製造用転写箔におけるものと同様である。
本発明に係る水溶性フィルムとしては、水溶性又は水膨潤性を有するものであれば良く、従来水圧転写用フィルムとして一般に使用されている水溶性フィルムの中から、適宜選択して用いることができる。
水溶性フィルムを構成する樹脂としては、例えばポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の各種水溶性ポリマーが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられてもよい。なお、水溶性フィルムには、マンナン、キサンタンガム、グアーガム等のゴム成分が添加されていてもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコールの重合度、ケン化度、及び澱粉やゴム等の添加剤の配合量等を変えることにより、水溶性フィルムに対して転写用の印刷層を形成する際に必要な機械的強度、取り扱い中の耐湿性、水面に浮かべてからの吸水による柔軟化の速度、水中での延展又は拡散に要する時間、転写工程での変形のし易さ等を適宜調節することができる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは水溶性ではあるが、水に溶解する前段階では水に膨潤して軟化しつつもフィルムとして存続することが好ましい。フィルムとして存続している状態にあるときに水圧転写を行なうことにより、水圧転写時の転写用の印刷層の過度の流動、変形を防止することができるからである。
本発明の水圧転写シートの製造方法は、上述の水圧転写シート製造用転写箔のプライマー層側及び/又は水溶性フィルムに活性剤を塗布する工程(A)と、水圧転写シート製造用転写箔のプライマー層側に水溶性フィルムを積層する工程(B)と、剥離フィルムを剥離する工程(C)とを有することを特徴とする。
工程(A)における活性剤は、プライマー層や水溶性フィルムを活性化し得るものであれば特に限定されないが、水を用いることで、水溶性フィルムを容易に活性化することができる。
工程(B)は、水圧転写シート製造用転写箔のプライマー層側に水溶性フィルムを重ね合わせて加圧することで、積層することができる。具体的には、水溶性フィルムと水圧転写シート製造用転写箔とを重ね合わせた状態で2つのロール胴間に導入することで連続的に積層することができる。
このようにして得られる水圧転写シートは、上述の剥離層を有する水圧転写シートであっても、ここから剥離層を省略したものであってもよい。
本発明の加飾成形品の製造方法は、上述の水圧転写シートの製造方法によって水圧転写シートを得る工程(a)と、該水圧転写シートの加飾層4側を、活性剤を塗布して軟化させる工程(b)と、該水圧転写シートを被転写体の被転写面に密着させる工程(c)と、被転写体の被転写面に残留した水溶性フィルム及びプライマー層5を除去する脱膜工程(d)とを有する
工程(a)は、水圧転写シートを水面に浮遊させる前に、水圧転写シートの加飾層4側(水圧転写シートが剥離層3を有する場合には、剥離層3側)に、例えばスプレーコート法で活性剤を塗布し、スムージングロールで該活性剤を均一にし、剥離層3及び加飾層4の少なくとも一部を溶解又は膨潤して行うことができる。
本発明の加飾成形品の製造方法は、さらに必要に応じて、転写された加飾層4上に保護膜を形成する工程(e)を有していてもよい。
このようにして得られる加飾成形品は、被転写体上に、加飾層、プライマー層をこの順に有するものとなり、被転写体と加飾層との間に剥離層を有していてもよい。
なお、各例で得られた水圧転写シートについて、以下に示す性能評価を行った。
(1)転写安定性
得られた水圧転写シートの金属薄膜層表面に、下記組成の活性剤組成物を3g/m2塗布し、スムージングロールで該活性剤組成物を均一にし、プライマー層5及び金属薄膜層の活性化工程を経た後、水圧転写シートに被転写体を押圧し、水圧によって金属薄膜層を被転写体の被転写面に密着させる工程を経て、脱膜工程の後に得られた加飾成形品の表面状態を目視により観察し下記の基準で評価した。
(活性剤組成物の組成)
フタル酸系アルキッド樹脂 6質量部
マイクロシリカ(顔料) 2質量部
フタル酸ジブチル 17質量部
溶剤(ブチルカルビトールアセテート) 60質量部
溶剤(ブチルセロソルブ) 15質量部
(評価基準)
○: 均一に凹凸模様が転写されており、模様の歪みがない。
×: 転写された凹凸模様に模様歪みがあった。
得られた水圧転写シートの状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。
○: 水圧転写シートにカーリングが生じなかった。
×: 水圧転写シートにカーリングが生じた。
得られた水圧転写シート同士を重ね合わせ、1時間放置した後に剥離して、下記の基準で評価した。
○: 剥離時にブロッキングが確認できなかった。
×: 剥離時にブロッキングが確認された。
厚さ18μmの延伸ポリプロピレンフィルム(耐熱温度:140℃)の片面に、ポリビニルピロリドン樹脂を塗布量3g/m2で、グラビアコートし、厚さ2μmの剥離層を設けた。次に、エンボス加工装置を用いて、圧力100ton/m2、温度130℃で剥離層の表面側からエンボス加工して、深さ60μmの凹凸模様を形成した。次いで、真空蒸着方法にて、剥離層の凹凸模様の上にアルミニウム金属を厚さ350Åの蒸着金属層を形成した。さらに、剥離層と同様にして厚さ2μmのプライマー層を設けた。得られた水圧転写シート製造用転写箔を、気温25℃、相対湿度70%の環境下で1時間保管した後、表面に水を塗布した厚さ30μmのPVAフィルムを、水圧転写シート製造用転写箔のプライマー層側に重ね合わせて加圧し、剥離フィルムである延伸ポリプロピレンフィルムを剥離して水圧転写シートを得た。得られた水圧転写シートの転写安定性、耐カーリング性及び耐ブロッキング性を上記の方法で評価した。結果を第1表に示す。
延伸ポリプロピレンフィルムに代えて、厚さ25μmの延伸PETフィルム(耐熱温度:200℃)を用い、エンボス温度を190℃とした以外は、実施例1と同様にして水圧転写シート製造用転写箔及び水圧転写シートを製造し、その転写安定性、耐カーリング性及び耐ブロッキング性を評価した。結果を第1表に示す。
厚さ30μmのPVAフィルム[耐熱温度:80℃]上に、実施例1と同様にしてプライマー層を形成し、次いでその表面側から温度70℃でエンボス加工を施し、さらに蒸着金属層を形成して水圧転写シートを製造し、気温25℃、相対湿度70%の環境下で1時間保管した後に、その転写安定性、耐カーリング性及び耐ブロッキング性を評価した。結果を第1表に示す。
2 剥離フィルム
3 剥離層
4 加飾層
5 プライマー層
6 凹凸模様
Claims (7)
- 剥離フィルムと、加飾層と、プライマー層とをこの順に有することを特徴とする水圧転写シート製造用転写箔。
- 前記剥離フィルムと加飾層との間に剥離層を有する請求項1に記載の水圧転写シート製造用転写箔。
- 前記加飾層に凹凸模様が形成されている請求項1又は2に記載の水圧転写シート製造用転写箔。
- 前記プライマー層がポリビニルピロリドン樹脂を含む請求項1〜3のいずれかに記載の水圧転写シート製造用転写箔。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の水圧転写シート製造用転写箔のプライマー層側及び/又は水溶性フィルムに活性剤を塗布する工程と、水圧転写シート製造用転写箔のプライマー層側に水溶性フィルムを積層する工程と、剥離フィルムを剥離する工程とを有することを特徴とする水圧転写シートの製造方法。
- 請求項5に記載の水圧転写シートの製造方法によって水圧転写シートを得る工程と、該水圧転写シートの加飾層側に、活性剤を塗布して軟化させる工程と、該水圧転写シートを被転写体の被転写面に密着させる工程と、被転写体の被転写面に残留した水溶性フィルム及びプライマー層を除去する脱膜工程とを有することを特徴とする加飾成形品の製造方法。
- 水溶性フィルムと、プライマー層と、加飾層と、剥離層とをこの順に有することを特徴とする水圧転写シート。
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