JP2012520942A - 鉄バナジウム粉末合金 - Google Patents

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Abstract

Vを0.05〜0.4重量%、Mnを0.09〜0.3重量%、Crを0.1重量%未満、Moを0.1重量%未満、Niを0.1重量%未満、Cuを0.2重量%未満、Cを0.1重量%未満、Oを0.25重量%未満、不可避の不純物を0.5重量%未満、その残分として鉄を含む、水噴霧プレ合金化クロムフリー鉄系鋼粉末。

Description

本発明は、クロム、モリブデン、及びニッケルを本質的に含まない鉄系バナジウム含有粉末、並びにその粉末及びその他の添加剤を含有する粉末組成物、そして、その粉末組成物から作製された粉末鍛造部材に関する。粉末及び粉末組成物は、粉末焼結或いは鍛造部品の費用効果のある製造に向けて設計される。
工業において、金属粉末組成物の圧縮及び焼結により製造された金属製品の使用は、益々普及しつつある。様々な形状及び厚さの異なる多くの製品が製造されており、その品質要件は、コストの削減が望まれるのと同時に高まりつつある。完成形状に達するために最小限の機械加工を必要とするネットシェイプ部材(net shape component)又は、ニアネットシェイプ部材(near net shape component)は、高度の材料利用と組み併せた鉄粉組成物のプレス及び焼結によって得られるので、この技法には、棒材又は鍛造品からの成型又は機械加工など、金属部品を形成するための従来の技法にも勝る、大きな利点がある。
しかしながら、プレス及び焼結方法に関連する1つの問題は、焼結した部材が、ある量の細孔を含有し、この部材の強度を低下させることである。基本的に、部材の多孔性により引き起こされた機械的性質への悪影響を克服する、2つの方法がある。1)焼結した部材の強度は、炭素、銅、ニッケル、モリブデンなどの合金元素を導入することによって高めることができる。2)焼結した部材の多孔性は、粉末組成物の圧縮性を増大させることによって、且つ/又はより高いグリーン密度を得るために圧縮圧力を高めることによって、又は焼結中の部材の収縮を増大させることによって、低下させることができる。実際に、合金元素の添加による部材の強化と、多孔性を最小限に抑えることの組合せが適用される。
クロムは、固溶体の硬化によって母材を強化し、焼結した本体の硬化性、耐酸化性、及び耐磨耗性を増大させる働きをする。しかしながら、クロム含有鉄粉は、高温及び非常にうまく制御された雰囲気を必要とすることが多いので、焼結するのが難しくなる可能性がある。
本発明は、クロムを除外した合金、即ち意図的な含有量のクロムを持たない合金に関する。この結果、クロム含有材料を焼結する場合に比べ、焼結炉設備及び雰囲気制御に関してより低い要件が得られる。
粉末鍛造は、鍛造ストライクを使用した焼結プリフォームの急速な稠密化を含む。その結果、高性能の適用例に適切な、完全に稠密なネットシェイプ部品又はニアネットシェイプ部品が得られる。典型的には、粉末鍛造物品は、銅及び黒鉛と混合した鉄粉から製造されている。提示されるその他のタイプの材料には、安定な酸化物を発生させることなく鉄硬化性を高めるために、ニッケル及びモリブデン及び少量のマンガンとプレ合金化された鉄粉が含まれる。MnSなどの機械加工性増強剤も、一般に添加される。
完成した部材中の炭素は、強度及び硬度を増大させることになる。銅は、焼結温度に達する前に溶融し、したがって拡散速度が上昇し且つ焼結ネックの形成が促進される。銅の添加は、強度、硬度、及び硬化性を改善することになる。
内燃機関用の連接棒は、粉末鍛造技法によって首尾良く製造されてきた。粉末鍛造を使用して連接棒を製造する場合、圧縮及び焼結部材のビッグエンドは、通常、破断スプリット作業に供される。ビッグエンドボルト用の穴及びねじ山が機械加工される。内燃機関の連接棒の本質的な特性は、高圧縮降伏強さであり、したがって連接棒は、引張り負荷よりも3倍高い圧縮負荷を受ける。別の本質的な材料特性は、取付け後にスプリットビッグエンドに接続するために穴及びねじ山を機械加工しなければならないので、適切な機械加工性にある。しかしながら、連接棒の製造は、厳格な性能、設計、及び耐久性要件を有する大量及び価格に敏感な適用例である。したがって、より低いコストを提供する材料又はプロセスが、非常に望ましい。
米国特許第3,901,661号、米国特許第4,069,044号、米国特許第4,266,974号、米国特許第5,605,559号、米国特許第6,348,080号、及びWO03/106079は、モリブデン含有粉末について記述している。プレス及び焼結部品を製造するのに、モリブデンとプレ合金化された粉末を使用する場合、ベイナイトが、焼結部品に容易に形成される。特に、低量のモリブデンを有する粉末を使用する場合、形成されたベイナイトは粗く機械加工性を損ない、良好な機械加工性が望ましい連接棒で特に問題となる。またモリブデンは、合金元素として非常に高価である。
米国特許第5,605,559号では、Mnを非常に低く保つことによって、Mo合金粉末で微細なパーライトのミクロ構造が得られている。しかしながら、Mn含有量を低く保つことは、特に安価な鋼スクラップを製造に使用するときに、この鋼スクラップが0.1重量%以上のMnを含有することが多いので、費用がかかる可能性がある。さらに、Moは高価な合金元素である。したがって、このように生成された粉末は、Mn含有量が低いこと及びMoのコストが原因で、比較的費用がかかることになる。
US2003/0033904、US2003/0196511、及びUS2006/086204は、粉末鍛造された連接棒の製造に有用な粉末について記述している。粉末は、銅粉及び黒鉛と混合された、プレ合金化鉄系マンガン及び硫黄含有粉末を含有する。US2006/086204は、鉄粉、黒鉛、硫化マンガン、及び銅粉の混合物から作製された連接棒について記述している。圧縮降伏強さの最高値775MPaは、Cu 3重量%及び黒鉛0.7重量%を有する材料に関して得られた。硬度に関する対応値は34.7HRCであり、これは約340HV1に相当する。銅及び炭素の含有量の低下は、低い圧縮降伏強さ及び硬度ももたらすことになる。
米国特許第5,571,305号は、優れた機械加工性を有する粉末について記述している。硫黄及びクロムは、合金元素として積極的に使用される。
本発明の目的は、クロム、モリブデン、及びニッケルを本質的に含んでおらず、且つ連接棒などの焼結したままの及び任意選択で粉末鍛造された部材を製造するのに適している、合金鉄系バナジウム含有粉末を提供することである。
本発明の別の目的は、比較的低いビッカース硬度と併せて高圧縮降伏応力CYSを有する粉末鍛造部材を形成することが可能であり、焼結したままの及び任意選択で粉末鍛造された部品を十分強力にするまで容易に機械加工することが可能になる粉末を提供することである。2.25を超えるCYS/硬度(HV1)比が望まれており、好ましくは2.30を超えるが、一方で、少なくとも830MPaのCYS値及び最大で420の硬度HV1を有している。
本発明の別の目的は、上述の性質を有する粉末焼結或いは鍛造された部品、好ましくは連接棒を提供することである。
これらの目的の少なくとも1つは、下記により達成される。
− Vを0.05〜0.4重量%、Mnを0.09〜0.3重量%、Crを0.1重量%未満、Moを0.1重量%未満、Niを0.1重量%未満、Cuを0.2重量%未満、Cを0.1重量%未満、Oを0.25重量%未満、不可避の不純物を0.5重量%未満、及びその残分として鉄を含む、水噴霧低合金鋼粉末。
− 鋼粉末をベースにした鉄系鋼粉末組成物であって、この組成物に対して、黒鉛の形のCを0.35〜1重量%、及び任意選択で潤滑剤を0.05〜2重量%、及び/又は銅粉の形のCuを1.5〜4重量%、及び/又はニッケル粉の形のNiを1〜4重量%と;任意選択で硬質相材料及び機械加工性増強剤とを有する組成物。
− a)上記組成の鉄系鋼粉末組成物を調製するステップ、
b)この組成物を、400から2000MPaの間の圧縮に付して、未加工の部材を製造するステップ、
c)得られた未加工の部材を、1,000〜1,400℃の間の温度の還元雰囲気中で焼結するステップ、及び
d)任意選択で、500℃を超える温度で、加熱した部材を鍛造し、又は得られた焼結部材を熱処理に供するステップ
を含む、焼結され及び任意選択で粉末鍛造された部材を製造するための方法。
− 該組成物から作製された部材。
鋼粉末は、低量の及び定められた含有量のマンガン及びバナジウムを有しており、クロム、モリブデン、及びニッケルを本質的に含んでおらず、圧縮降伏応力対硬度の比が2.25よりも高く、一方でCYS値が少なくとも830MPaであり且つ硬度HV1が最大で420である部材を提供できることが示されている。
鉄系合金鋼粉末の調製
鋼粉末は、定められた量の合金元素を含有する鋼溶融体の水噴霧によって生成される。噴霧された粉末は、さらに、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,027,544号に記載されるような還元アニーリングプロセスに付される。鋼粉末の粒度は、プレス及び焼結又は粉末鍛造プロセスに適合する限り、任意のサイズにすることができる。適切な粒度の例は、150μmよりも大きい粒子を約10重量%、及び45μmよりも小さい粒子を約20重量%有する、Hoganas AB、スウェーデンから入手可能な公知の粉末ABC100.30の粒度である。
鋼粉末の含有量
マンガンは、クロムの場合のように、鋼粉末の強度、硬度、及び硬化性を増大させる。また、マンガン含有量が低すぎる場合、鋼製造の過程で還元に関する特定の処理が実施されない限り、安価なリサイクルスクラップを使用することは可能ではなく、コストが増大する。さらに、マンガンは、存在する酸素の一部と反応する可能性があり、それによって、酸化バナジウムのいかなる形成も減少する。したがって、マンガン含有量は、0.09重量%以上であるべきであり、好ましくは0.1重量%以上である。0.3重量%を超えるマンガン含有量は、鋼粉末中のマンガン含有介在物の形成を増加させる可能性があり、固溶体の硬化及び高いフェライト硬度に起因して圧縮性に悪影響を及ぼす可能性もあり、好ましくはマンガンの含有量は、最大で0.20重量%、より好ましくは最大で0.15%である。
バナジウムは、析出硬化によって強度を増大させる。バナジウムは、粒度精製作用も有し、この文脈では、望ましい細粒パーライト/フェライトミクロ構造の形成に寄与すると考えられる。より高いバナジウム含有量で、バナジウムの炭化物及び窒化物の沈殿物のサイズが増大し、それによって粉末の特性が損なわれる。さらに、より高いバナジウム含有量は、酸素の獲得を容易にし、それによって粉末により製造される部材中の酸素レベルが増加する。これらの理由で、バナジウムは最大で0.4重量%でなければならない。0.05重量%よりも低い含有量は、所望の性質にあまり影響を及ぼさないことになる。したがって、バナジウムの含有量は、0.05重量%から0.4重量%の間であるべきであり、好ましくは0.1重量%から0.35重量%の間、より好ましくは0.25から0.35重量%の間であるべきである。
酸素含有量は、最大で0.25重量%であり、酸素の含有量が高すぎると、焼結され及び任意選択で鍛造された部材の強度を損ない、粉末の圧縮性も損なう。これらの理由で、酸素は好ましくは最大で0.18重量%である。
ニッケルは、0.1重量%未満であるべきであり、好ましくは0.05重量%未満、より好ましくは0.03重量%未満であるべきである。銅は、0.2重量%未満であるべきであり、好ましくは0.15重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満であるべきである。クロムは、0.1重量%未満であるべきであり、好ましくは0.05重量%未満、より好ましくは0.03重量%未満であるべきである。ベイナイトが形成されるのを防止すると同時にコストを低く保つには、モリブデンが非常に高価な合金元素であるので、モリブデンは0.1重量%未満であるべきであり、好ましくは0.05重量%未満、より好ましくは0.03重量%未満であるべきである。これらの元素(Ni、Cu、Cr、Mo)の中に必要なものはなく、上述のレベルよりも低い値が許容可能である。
鋼粉末中の炭素は、最大で0.1重量%であるべきであり、好ましくは0.05重量%未満、より好ましくは0.02重量%未満、最も好ましくは0.01重量%未満であるべきであり、窒素は、最大で0.1重量%であるべきであり、好ましくは0.05重量%未満、より好ましくは0.02重量%未満、最も好ましくは0.01重量%未満であるべきである。より高い含有量の炭素及び窒素は、粉末の圧縮性を、容認し難いほど低下させることになる。
上述の元素に加えて、リン、ケイ素、アルミニウム、及び硫黄などの不可避の不純物の総量は、鋼粉末の圧縮性を劣化させないために又は有害な介在物の形成体として働かせないために、0.5重量%未満であるべきであり、好ましくは0.3重量%未満であるべきである。不可避の不純物の中で、硫黄は0.05重量%未満であるべきであり、好ましくは0.03重量%未満、最も好ましくは0.02重量%未満であるべきであるが、それは、鋼の融点を変化させるFeSが形成されるおそれがあり、したがって鍛造プロセスを損なう可能性があるからである。さらに硫黄は、鋼中の遊離黒鉛を安定化させることが公知であり、したがって焼結部材のフェライト/パーライト構造に影響を及ぼす可能性がある。その他の不可避の不純物は、鋼粉末の圧縮性を劣化させないために又は有害な介在物の形成体として働かせないために、それぞれ0.10重量%未満であるべきであり、好ましくは0.05重量%未満、最も好ましくは0.03重量%未満であるべきである。
粉末組成物
圧縮前に、鉄系鋼粉末を、黒鉛、及び任意選択で銅粉及び/又は潤滑剤及び/又はニッケル粉、及び任意選択で硬質相材料及び機械加工性増強剤と混合する。
焼結した部材の強度及び硬度を高めるために、炭素を母材に導入する。炭素Cは、組成物の0.35〜1.0重量%の量で、好ましくは0.5〜0.8重量%の量で、黒鉛として添加する。Cが0.35重量%未満の量であると、非常に低い強度が得られることになり、Cが1.0重量%を超える量であると、炭化物の過剰な形成が行われ、非常に高い硬度が得られ、機械加工特性が損なわれることになる。同じ理由で、黒鉛の好ましい添加量は、0.5〜0.8重量%である。焼結又は鍛造後に、部材が、浸炭を含めた熱処理プロセスによって熱処理される場合、添加される黒鉛の量は0.35%未満であってもよい。
潤滑剤は、圧縮された部材の圧縮及び突出し(ejection)を容易にするために、組成物に添加される。組成物の0.05重量%未満である潤滑剤の添加は、あまり影響を及ぼさないことになり、2重量%よりも多い組成物の添加は、非常に低い密度の圧縮体をもたらすことになる。潤滑剤は、金属ステアレート、ワックス、脂肪酸及びその誘導体、オリゴマー、ポリマー、及びその他の有機物質であって潤滑作用を有するものの群から選択してもよい。
銅Cuは、粉末冶金技法で一般に使用される合金元素である。Cuは、固溶体の硬化を通して強度及び硬度を高めることになる。Cuは、焼結温度に達する前に銅が溶融して、固体状態での焼結よりも速いいわゆる液相焼結をもたらすことになるので、焼結中の焼結ネックの形成も促進させることになる。粉末は、好ましくはCuが1.5〜4重量%の量で、より好ましくはCuの量が2.5〜3.5重量%で、好ましくはCuと混合され又はCuと拡散結合される。
ニッケル(Ni)は、粉末冶金技法で一般に使用される合金元素である。Niは、良好な延性を提供しながら強度及び硬度を増大させる。銅とは異なり、ニッケル粉は、焼結中に溶融しない。このため、より微細な粉末であると固相拡散を介したより良好な分布が可能になるので、混合する場合にはより微細な粒子を使用することが必要になる。粉末は、任意選択でNiと混合することができたり、Niに拡散結合することができ、そのような場合には、好ましくはNiの量が1〜4重量%である。しかしながら、ニッケルは、特に微細な粉末の形をとる場合にコストがかかる元素であるので、粉末は、本発明の好ましい実施形態では、Niと混合させず、又、Niと拡散結合もさせない。
硬質相材料及び機械加工性増強剤などのその他の物質、例えばMnS、MoS、CaF、異なる種類の鉱物などを、添加してもよい。
焼結
鉄系粉末組成物を型に移し、約400〜2000MPaの圧縮圧力をかけて、約6.75g/cmを超える圧粉密度にする。得られた未加工の部材をさらに、約1000〜1400℃の温度、好ましくは約1100〜1300℃の間の温度の還元雰囲気中で焼結に付する。
焼結後処理
焼結した部材は、完全密度に到達させるため、鍛造操作に供してもよい。鍛造操作は、部材の温度が約500〜1400℃である場合には焼結操作の直後に、又は焼結した部材を冷却した後に行ってもよく、次いで冷却した部材を約500〜1400℃の温度に再加熱した後に、鍛造操作を行う。
焼結又は鍛造部材は、熱処理によって及び制御された冷却速度によって、所望のミクロ構造を得るために、硬化プロセスに付してもよい。硬化プロセスは、表面硬化、窒化、及び誘導硬化など、公知のプロセスを含んでいてもよい。熱処理が浸炭を含む場合、添加される黒鉛の量は0.35%未満であってもよい。
その他のタイプの焼結後処理は、ローラ仕上げ又はショットピーニングなどを利用してもよく、疲れ寿命を高める圧縮残留応力が導入される。
完成した部材の性質
PM工業で一般に使用される鉄−銅−炭素系をベースにし且つ特に粉末鍛造に向けた部材を焼結したときに得られるフェライト/パーライト構造とは対照的に、本発明による合金鋼粉末は、より微細なフェライト/パーライト構造が得られるように設計される。
いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、このより微細なフェライト/パーライト構造は、同じ硬度レベルにある鉄/銅/炭素系から得られた材料に比べ、より高い圧縮降伏強さに寄与すると考えられる。改善された圧縮降伏強さに対する需要は、粉末鍛造連接棒などの連接棒の場合に特に顕著である。同時に、経済的な手法で連接棒材料を機械加工することが可能とされ、したがって、この材料の硬度は比較的低くなければならない。本発明は、高い降伏強さと併せて低い硬度値を有し、その結果、2.25を超えるCYS/HV1比をもたらすと共に、少なくとも830MPaのCYS値及び最大で420の硬度HV1を有する、新しい低合金材料を提供する。
さらに、部材中の高すぎる酸素含有量は、機械的性質に悪影響を及ぼすことになるので望ましくない。したがって、0.1重量%未満の酸素含有量を有することが好ましい。
プレ合金化鉄系鋼粉末を、鋼溶融体の水噴霧によって生成した。得られた原料粉末を、還元雰囲気中でさらにアニールし、その後、焼結した粉末ケークを崩壊させるために穏やかな研削プロセスを実施した。粉末の粒度は150μmよりも小さかった。表1は、種々の粉末の化学組成を示す。
Figure 2012520942
得られた鋼粉末A〜Gを、表2に指示される量に従うKropfmuhl製の黒鉛UF4と、Hoganas AB、スウェーデンから入手可能な0.8重量%のアミドワックスPMと混合した。A Cu Powder、米国製の銅粉Cu−165を、表2で特定される量に従い添加した。
参照として、Hoganas AB、スウェーデンから入手可能な鉄粉ASC100.29と、表2に指示される量に従う同量の黒鉛及び銅とをベースにした、鉄−銅炭素組成物を調製した。さらに、Hoganas AB、スウェーデンから入手可能なアミドワックスPM0.8重量%を、参照1、参照2、及び参照3にそれぞれ添加した。
得られた粉末組成物をダイに移し、490MPaの圧縮圧力で未加工の部材が形成されるように圧縮を行った。圧縮がなされた未加工の部材を、還元雰囲気中で、1120℃の温度の炉内に、約40分間置いた。焼結し加熱した部材を炉から取り出し、その直後に密閉キャビティ内で鍛造して完全密度にした。鍛造プロセス後、部材を室温の空気中でそのまま冷ました。
鍛造した部材を、ASTM E9−89cによる圧縮降伏強さの試験片に機械加工し、ASTM E9−89cにより圧縮降伏強さCYSに関して試験をした。
硬度HV1について、EN ISO 6507−1に従い同じ部材で試験をし、銅、炭素、及び酸素に関する化学分析を、圧縮降伏強さ試験片に関して行った。
下記の表2は、試験サンプルを生成する前の、組成物への黒鉛の添加量を示す。この表は、試験サンプルのC、Cu、及びOに関する化学分析も示す。試験サンプルの、分析されたCuの量は、組成物中の、混合したCu粉の量に対応する。この表は、サンプルに関するCYS及び硬度試験から得た結果も示す。
Figure 2012520942
A1からF2の全ての組成物から調製したサンプルは、B1及び参照1〜3以外、830MPaを超える十分なCYS値を、2.25を超えるCYS/HV1比及び420未満の硬度HV1と併せて提供した。添加した黒鉛が0.6重量%であるB1は、十分なCYS値を提供しなかった。しかしながら、添加する黒鉛の量を0.7重量%まで増加させる場合、CYS値は830MPaを超え、一方、CYS/HV1比はより広い目標値(2.25)に到達するが、好ましい比(2.30)よりも下になる。したがって、バナジウム含有量の下限は、0.05重量%付近と結論付けることができる。しかし、0.1重量%を超えるバナジウム含有量を有することが好ましい。
サンプルD1及びD2の場合、完成したサンプル中の酸素の量は0.1重量%よりも高く、高い酸素レベルでは機械的性質を損なう可能性があるので望ましくない。これは、バナジウムが酸素に対して高い親和性を有するので、0.4重量%を超えるバナジウム含有量によって引き起こされると考えられる。したがって、0.4重量%を超えるバナジウム含有量は望ましくない。
表からわかるように、サンプルF1及びF2は非常に良好な結果を示す。
サンプルG1及びG2は、0.17重量%のマンガン含有量によって許容される結果が得られる場合であっても、結果がより良好な、サンプルC1及びC2の場合のように、0.15重量%よりも低いレベルを保つことが好ましいことを実証する。
参照1〜3組成物から調製されたサンプルは、比較的高い炭素及び銅含有量であるにも関わらず、非常に低い圧縮降伏応力を示す。炭素及び銅をさらに増加させると、十分な圧縮降伏応力を与えることができるが、硬度が非常に高くなり、したがってCYS/HV1比をさらに低下させる。
別の実施例では、いずれも表1の粉末A及び参照粉末をベースにした粉末組成物を、Kropfmuhl製の黒鉛UF4、Hoganas AB、スウェーデンから入手可能な0.8重量%のアミドワックスPM、及び任意選択でA Cu Powder、米国製の銅粉Cu−165と、表3に指示される量に従い混合した。表1の参照粉末は、Hoganas AB、スウェーデンから入手可能な鉄粉ASC100.29である。組成物A3、A4、参照4、及び参照5は、銅粉の添加がなく、組成物A5、A6、参照6、及び参照7は、銅粉2重量%と混合した。
Figure 2012520942
得られた粉末組成物をダイに移し、600MPaの圧縮圧力で未加工の部材が形成されるように圧縮を行った。圧縮がなされた未加工の部材を、還元雰囲気中、1120℃の温度の炉内に約30分間置いた。
試験片を、SS−EN ISO 2740に従い調製し、極限引張り強さ(UTS)及び降伏強さ(YS)に関してSS−EN 1002−1に従い試験をした。
参照4及び参照6の結果を比較した場合、YSは、参照4に比べて参照6のほうが160MPa高く、これは添加されたCu1%当たり80MPaに相当することがわかる。A3及び参照4を比較した場合、YSは、参照4に比べてA3のほうが109MPa高く、これは添加されたV0.1重量%当たり約80MPaに相当することがわかる。V添加によるこの強力な作用は、予測されていない。さらに、より高い炭素との粉末混合物(A4/参照5)と、銅及び炭素の両方との混合物(A5/参照6及びA6/参照7)とに関しても同様のことが言える。

Claims (13)

  1. Vを0.05〜0.4重量%、
    Mnを0.09〜0.3重量%、
    Crを0.1重量%未満、
    Moを0.1重量%未満、
    Niを0.1重量%未満、
    Cuを0.2重量%未満、
    Cを0.1重量%未満、
    Oを0.25重量%未満、
    不可避の不純物を0.5重量%未満、
    その残分として鉄
    を含む、水噴霧プレ合金化鉄系鋼粉末。
  2. Vの含有量が0.1〜0.35の範囲内にある、請求項1に記載の粉末。
  3. Vの含有量が0.2〜0.35の範囲内にある、請求項2に記載の粉末。
  4. Mnの含有量が0.09〜0.2重量%の範囲内にある、請求項1から3までのいずれか一項に記載の粉末。
  5. Sの含有量が0.05重量%未満である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の粉末。
  6. Crの含有量が0.05重量%未満であり、Niの含有量が0.05重量%未満であり、Moの含有量が0.05重量%未満であり、Cuの含有量が0.15重量%未満であり、Sの含有量が0.03重量%未満であり、付随的不純物の総量が0.3重量%未満である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の粉末。
  7. 0.35〜1重量%の黒鉛の組成物、及び任意選択で0.05〜2重量%の潤滑剤の組成物、及び/又は1.5〜4重量%の量の銅、及び/又は1〜4%の量のニッケル;及び任意選択で硬質相材料及び機械加工性増強剤と混合した、請求項1から6までのいずれか一項に記載の鋼粉末を含む、鉄系粉末組成物。
  8. 粉末がNiと混合されていない、請求項7に記載の鉄系粉末組成物。
  9. a)請求項7又は8に記載の鉄系鋼粉末組成物を調製するステップ、
    b)該組成物を、400から2000MPaの間の圧縮に付するステップ、
    c)得られた未加工の部材を、1000〜1400℃の間の温度の還元雰囲気中で焼結するステップ、
    d)任意選択で、500℃を超える温度で、加熱した部材を鍛造し、又は得られた焼結部材を熱処理ステップに供するステップ
    を含む、焼結され及び任意選択で粉末鍛造された部材を製造するための方法。
  10. 請求項7又は8に記載の鉄系粉末組成物から製造された、粉末鍛造部材。
  11. 実質的にパーライト/フェライトミクロ構造を有する、請求項10に記載の粉末鍛造部材。
  12. 連接棒である、請求項10又は11に記載の部材。
  13. 圧縮降伏強さ(CYS)が少なくとも830MPaであり、圧縮降伏応力(CYS)とビッカース硬度(HV1)との比が少なくとも2.25であり、比を計算するときの圧縮降伏応力の単位はMPaである、請求項10から12までのいずれか一項に記載の粉末鍛造部材。
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