本願発明者等は、印刷プロセスが終了した後、スポットされた核酸の運命を決定すること、及びスポットされたプローブの品質を評価することが可能であることを見出した。
本発明は特定の実施の形態に関して説明されるが、この説明は限定的な意味に解釈されるべきではない。
本発明の例示的な実施の形態を詳細に説明する前に、本発明を理解するために重要な定義が与えられる。
この明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる限りでは、「a」及び「an」の単数形は、文脈がそれ以外のことを明らかに規定する場合を除いて、対応する複数形も含んでいる。
本発明に関しては、「約」という用語は、当業者が当該特徴の技術的効果を依然として確実にすると理解する正確さの幅を意味している。この用語は、示された数値からの±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、更に好ましくは±5%のずれを示すものである。
「有する」という用語は限定的ではないことを理解されたい。本発明のために、「より成る」という用語は、「有する」という用語の好ましい形態であるとみなされる。以下において、あるグループが少なくともある数の具体的表現を有するように規定される場合、これは、好ましくはこれらの具体的表現のみより成るグループを含むことも意味する。
更にまた、明細書及び特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」等の用語及びこれらに類する用語は、類似する要素を区別するために用いられており、必ずしも連続する順序又は発生順を説明するために用いられるものではない。そのように用いられている用語は適切な状況下において置き換え可能であり、本明細書で説明されている本発明の実施の形態は、本明細書中に説明されている又は示されている順序ではない他の順序で動作可能であることを理解されたい。
「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」等の用語が使用又は方法のステップに関係がある場合、本明細書で以下に記載の適用においてそれ以外のことが示されていない限り、時間又は時間間隔の統一性は存在しない。すなわち、各ステップは、同時に行われてもよいし、そのようなステップの間に秒、分、時間、日、週、月又は更には年の時間間隔が存在してもよい。
上述したように、本発明は、一観点では、支持体上の核酸を検査する方法であって、(a)熱若しくは光による架橋又は化学的固定化を介して固体支持体上に1つ又はそれ以上の核酸を固定化することであって、固定化される上記核酸のそれぞれは専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間を含む当該固定化と、(b)上記専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間に相補的な標識オリゴヌクレオチドを与えることであって、上記標識オリゴヌクレオチドは、上記専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間において上記固定化される核酸のそれぞれと複合体を形成することができる当該供給と、(c)上記固定化される核酸と複合した標識オリゴヌクレオチドの量によって上記核酸の状態を示す値を決定することとを有する当該方法と関係がある。
「基板上に核酸を固定化する」という用語は、支持的な基板の特定の領域において核酸を適切な場所に配置する分子間相互作用を介した支持的な基板への核酸分子の会合に関係があり、これは、付随して、例えば、洗浄、リンス又は化学的なハイブリダイゼーションステップの間、核酸の分離を防ぐ。典型的には、そのような分子間相互作用は、当業者に知られているように、支持体材料の構造的要素又は官能基と固定化される核酸、例えば核酸の対応する官能基との共有化学結合に基くものである。
「固体支持体」という用語は、支持体材料が、主に非液体の粘稠度であることを意味しており、それにより支持体材料上の核酸の正確な、追跡可能な位置決めが可能になる。
「熱又は光による架橋」という用語は、熱又は光のようなエネルギー源により与えられるエネルギーによる影響下における又はそれにより動かされる分子間相互作用又は両方の構造的要素を結びつける結合の形成を介した上記支持体材料と上記核酸との相互作用に関係がある。
典型的には、熱による架橋は、ある温度における基板上の核酸分子の乾燥及びその後の焼成により行われる。結合の正確な性質はよく理解されていないが、乾燥及び焼成は、疎水性の相互作用により基板に付着する核酸をもたらすと考えられている。この手順は、物理的吸着のサブフォームとして分類される。「物理的吸着」という用語は、初めの分離ステップ及び引力ステップを含むプロセスに関係があり、それにより、核酸は物理的吸着プロセスに基づいて反応基と接近した状態になる。任意のそのような支持体材料がほぼどんな表面とも相互作用することが確認されているので、固体支持体への生態分子、例えば核酸の吸着は、ほぼ任意の支持体材料と起こり得る。典型的には、支持体材料と核酸分子との相互作用の程度は、支持体材料の性質及び形態と核酸の大きさ及び化学的特性とに依存して変化する。上記相互作用は、典型的には、(i)表面への分子の輸送、(ii)表面への吸着、(iii)吸着した分子の再配列、(iv)吸着した分子の潜在的脱離及び(v)表面から離れた脱離した分子の輸送のステップを含む5段階の工程である。
上記手順は、ある程度までは脱離の可能性は固有であることを意味しているが、結合は、分子の大きさに依存して、典型的には不可逆である。吸着相互作用に関する中で「分子の大きさ」という用語は、存在する結合サイトの数に関係がある。任意の1つの結合サイトは、原理的にはいつでも基板の表面から解離し得るが、多数の結合サイトの効果は、分子が全体として結合されたままであることである。例えば約40ないし150℃、好ましくは50ないし120℃、より好ましくは60ないし110℃、更に好ましくは70ないし100℃、最も好ましくは80ないし90℃の温度における熱の形でエネルギーを与えることにより、支持体材料への核酸分子の物理的吸着が高められ、効率的な固定化のために必要な時間が短縮される。熱による架橋は、当業者には知られている任意の適切な期間、例えば、2分ないし12時間、好ましくは10分ないし8時間、より好ましくは30分ないし6時間、更に好ましくは45分ないし4時間、更により好ましくは1時間ないし3時間、最も好ましくは2時間行われる。熱又は焼成による架橋は、当業者に知られている任意の適切な手段、例えば、乾燥チャンバ又はオーブンにより行われる。温度に加えて、湿度、通気又は換気のような他のパラメータも当業者に知られている適切な値に調整され得る。熱又は焼成による架橋は、また、光による架橋又は化学的固定化のような固定化の他の形態と組み合わせられもする。
光による架橋は、分子と支持体材料との相互作用を引き起こすために、典型的な波長の光、例えば、150ないし550nm、好ましくは200ないし500nmの範囲の光を核酸分子に与えることにより行われる。典型的には、分子と支持体材料との間に引き起こされる相互作用は、上記材料との核酸の共有結合である。光による架橋は、例えば紫外線を用いることにより行われる。紫外線架橋は、核酸プローブとの支持体材料の共有結合を確実にするための最も簡単なやり方の1つである。典型的には、結合は、当業者に知られているように、支持体材料上の対応する適切な官能化学基と反応する核酸分子の塩基、例えば、チミン、グアニン、アデニン、シトシン又はウラシルの残基を介して進む。
支持体材料上又は支持体材料中の官能化学基の存在及び数は、適切な化学的活性化プロセスを経て制御及び調整され得る。そのような活性化プロセスは、例えば、支持体材料上又は支持体材料内の特定の局在した官能基を与え、これらの局在した官能基に関する中で核酸と材料との特異的な相互作用を促進する。
支持体材料上又は支持体材料中の官能基の存在及び数は、また、固定化される核酸の配向及び自由に影響を及ぼす。例えば、より多数の官能基の存在は、核酸分子内のいろいろな点における固定化につながる。更に、核酸分子内の対応する反応要素の存在は、支持体材料上の核酸分子の配向の制御、例えば、核酸分子のヘッド若しくはテイル領域又は5´若しくは3´領域における固定化、又は中央領域のみにおける若しくは同時に中央及び領域における固定化のために用いられ得る。
光による支持体材料への核酸分子の架橋の際に重要な更なるパラメータは、照射のために用いられるエネルギーの量である。一般に、当業者は照射装置の製造業者により与えられる指示に従うことにより好適及び最適な照射線量を決定することができる。例えば、基板に与えられる合計の線量は、式D=P・T(Dは基板に与えられる合計の線量(単位はmJ/cm2)であり、Pは支持体材料に与えられる光のパワー(単位はmW/cm2)であり、Tは線量が与えられる時間(単位は秒)である。)を用いて計算される。支持体材料に与えられる光のパワーは、光源及び光源と照射される支持体材料との距離に依存する。
光源は、当業者に知られている任意の好適な光源、例えば、水銀ランプ、好ましくは低圧水銀UVランプ又は高圧水銀UVランプである。光源は、また、LEDランプ、例えばUV−LEDランプであってもよい。
光源は、例えば254nm又は365nmにおいて支配的な輝線を伴う波長のスペクトルを発する。光源は、また、特定の輝線のみを発するために特定のフィルタ素子と組み合わせられ得る。このフィルタは、また、支持体材料に与えられるエネルギーの量を抑制するためにも用いられ得る。
光による架橋を行う際、用いられるエネルギーの波長及び量に加えて、湿度、通気又は換気のような他のパラメータも当業者に知られている適切な値に調整され得る。支持体材料の照射と関連している1つの重要な問題は、それらの水分含量である。水は光照射、特にUV照射を吸収するので、乾燥プロセス中の変動は、架橋プロセスの結果に影響を及ぼす。支持体材料の水分含量は、当業者に知られている任意の適切な手段によって調整される。好ましくは、光による架橋は、存在する液体の水の量を調整するためにある期間予備乾燥(pre-drying)工程と組み合わせられる。
「化学的固定化」という用語は、化学反応に基づく支持体材料と核酸との相互作用に関係がある。そのような化学反応は、典型的には熱又は光によるエネルギーの投入に依存しないが、本明細書で上述したような熱、例えば、ある化学反応に最適な温度又はある波長の光を与えることにより促進される。例えば、化学的固定化は、支持体材料の官能基と核酸分子の対応する機能要素との間で起こる。そのような核酸分子の対応する機能要素は、分子中に、例えば核酸分子の化学物質インベントリの一部として存在するか、又は追加として取り入れられる。そのような官能基の例は、アミン基である。典型的には、核酸分子は、官能アミン基を有するか、又は官能アミン基を有するように化学的に修飾される。そのような化学的修飾の方法及び手段は、当業者に既知であり、例えば、Hart等によるOrganische Chemie, 2007, Wiley-Vch又はVollhardt等によるOrganische Chemie, 2005, Wiley-Vchのような有機化学のテキストから得られる。
上記分子中の上記官能基の局在化は、結合の挙動及び/又は分子の配向を制御する及び作るために用いられ、例えば、官能基は、分子の5´及び/又は3´領域において末端若しくはテイル領域に配されるか、又は分子の中央に配される。
核酸分子の典型的な反応相手は、核酸、特にアミン官能基化された核酸に結合することができる部分を有している。そのような支持体材料の例は、アルデヒド、エポキシ又はNHS基板である。そのような材料は、当業者に既知である。アミン基の導入により化学反応性の高い核酸分子と支持体材料との連結反応を与える官能基は、当業者に既知である。
核酸分子の代替の反応相手は、例えば、支持体材料上で利用可能な官能基の活性化により化学的に活性化される必要がある。「活性化された支持体材料」という用語は、相互作用する又は反応性の化学官能基が当業者に既知の化学的修飾の手順により使用可能になった又は確立された材料に関係がある。例えば、カルボキシレート基を有する基板は、使用する前に活性化されなければならない。
また、核酸中に既に存在する特定の部分と反応する官能基を含む利用可能な基板が存在する。これらの反応には、熱又は紫外線により促進されるものもある。一例は、基板の表面のアミン基であり、これはDNAの特定の塩基に結合され得る。
上述した官能基は、別々に局在化又は分散してもよく、例えば、支持体材料はアミン基を有し、核酸分子はエポキシ、アルデヒド又はカルボキシレート基のような対応する化学反応性の高い官能基を含むように修飾され得る。
支持体材料上又は支持体材料中の、核酸分子を結合及び固定化することができる官能化学基の存在、数及び局在化は、核酸分子の結合の挙動を制御及び調整するために用いられる。支持体材料中の反応性の化学基の特定の配置は、これらの局在化された官能基に関する中で核酸と材料との特異的な相互作用を容易するために用いられる。そのような配置プロセスは、例えば、液体スポッティング装置、好ましくはインクジェット装置の使用により特異的に配置された核酸分子の規則正しい配列のアレイを与えるために用いられる。支持体材料上又は支持体材料中の反応性の化学的要素は、ブロッキング剤によりマスクされ、ブロック除去又はマスク除去工程の後、核酸分子との化学反応に利用可能になる。代替として、そのような化学的要素は、当業者に既知である対応する適切な活性化剤を与えることにより活性化される。
本発明に関する中で「専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間」という用語は、専ら1つの塩基、例えば、チミン、グアニン、アデニン、シトシン若しくはウラシル、又は相補的塩基と相互作用することができる当業者には既知の任意のその化学的誘導体によって構成される核酸分子の部分に関係がある。核酸分子の上記部分は、数塩基のみから100塩基よりも多くまで長さを変えられる。「専ら1つの塩基の種類」という用語は、全く同じ塩基だけではなく、相補的塩基との相互作用の観点から同等の化学的挙動を示す塩基又はその誘導体も含んでいる。従って、この用語は、具体的にチミンの場合には、チミンのみの塩基の種類又はヌクレオチドだけではなく、その機能的に同等な誘導体又は修飾体にも関係がある。「機能的に同等な」という用語は、得られるヌクレオチド又は塩基の非共有結合に化学的に類似した相補的塩基と非共有結合を確立するための塩基の能力に関係がある。そのような機能的に同等な又は修飾された塩基は、相補的塩基と結合するハイブリダイゼーションをやはり行うことができる。
「標識オリゴヌクレオチドを与える」という用語は、化学的又は物理的要素を有するオリゴヌクレオチドの供給に関係があり、これは、そのような要素を有していないバックグラウンドからのオリゴヌクレオチドの区別を可能にする。そのような区別は、好ましくは光学的な違いに基づき、例えば、刺激若しくは化学的活性化後の標識からの光の放出、又は放射性放射物の放出に基づく。好ましくは、そのような放出される光は、特定の色から成り、対照的なバックグラウンドから容易に検出可能である。「与える」という用語は、そのようなオリゴヌクレオチドと本発明に係る支持体材料上に固定化される1つ以上又は好ましくは全ての核酸分子との相互作用工程の開始及び実行のことも指している。そのような相互作用工程の詳細は、当業者に既知であり、Sambrook等のMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 2001、 Cold Spring Harbor Laboratory Pressのような分子生物学のテキストから得られる。
本発明に関する中で「専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間に相補的なオリゴヌクレオチド」という用語は、好ましくは約2ないし約100ヌクレオチドの区間の、より好ましくは約3ないし約70ヌクレオチドの区間の、更に好ましくは4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64又は65ヌクレオチドの区間の、最も好ましくは16ヌクレオチドの区間の中位の数の一本鎖核酸分子に関係があり、これは、本明細書で上述したような核酸のハイブリダイゼーション又は水素結合による非共有結合を介して固定化される核酸に結合することができるヌクレオチド配列を与える。「相補的な」という用語は、存在する塩基に依存する2又は3個の水素結合によるオリゴヌクレオチドと固定化される核酸との非共有結合を確立するためのオリゴヌクレオチドの能力に関係がある。典型的には、アデニン及びチミン塩基は2個の水素結合により非共有結合し、グアニン及びシトシン塩基は3個の水素結合により非共有結合する。ウラシル及びアデニンは、典型的には2個の水素結合により非共有結合する。従って、例えば、専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間がチミンヌクレオチド又は機能的に同等なその誘導体によって構成される場合、標識オリゴヌクレオチドはアデニンヌクレオチド又は機能的に同等なその誘導体によって構成される。
本発明に関しては、「専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間に相補的な」という用語は、本明細書で上述したような相補性の化学的相互作用の規則に対して1つ又はそれ以上のミスマッチを示す核酸分子の部分又はオリゴヌクレオチドも含んでいる。上記ミスマッチの数は、オリゴヌクレオチドの区間及び核酸分子の大きさ又は長さに依存して変化する。例えば、オリゴヌクレオチドは、相補的な区間内において、1%から35%のミスマッチ塩基、好ましくは1%,2%,3%,4%、5%、6%,7%,8%,9%,10%,11%,12%,13%,14%、15%、16%,17%,18%,19%,20%,21%,22%,23%,24%、25%、26%,27%,28%,29%又は30%のミスマッチ塩基を有する。「ミスマッチ塩基」という用語は、二次相互作用する一本鎖核酸分子上の反対側の場所に位置する塩基との水素結合により非共有結合を確立することができない塩基又はヌクレオチドに関係がある。そのようなミスマッチ塩基は、オリゴヌクレオチド全体にわたって存在するか、又はオリゴヌクレオチドの両末端のどちらか一方若しくはオリゴヌクレオチドの中央に存在する。本発明によれば、そのようなミスマッチ塩基は、本明細書で上述したような固定化される核酸と標識オリゴヌクレオチドとの相互作用全体に影響を及ぼす。典型的には、上記ミスマッチ塩基は、両方の分子の相互作用の強さを低減し得る。「低減」という用語は、約1から約50%の相互作用の低下に関係がある。しかしながら、この用語は、本発明に係るオリゴヌクレオチドと固定化される核酸分子との相互作用の完全な阻害又は防止(obviation)を含んでいない。
本発明に関する中で「専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間において固定化される核酸のそれぞれと複合体を形成する」という用語は、本明細書で上述した固定化される核酸中の相補性塩基とオリゴヌクレオチドとの水素結合による非共有結合に基づいた相互作用に関係がある。そのような複合体の形成は、相補性の領域を有する全ての分子に対して特異的である。この特異性は、含まれる塩基の化学的性質と、分子の長さと、相補性領域の長さ及び形態と、温度、pH、塩類含有量及び塩濃度又は当業者に既知の他の化合物の存在及び濃度のような環境のパラメータとに依存する。上述したパラメータ及び因子は、本発明により変更及び調整され得る。好ましくは、上記パラメータは、両分子間に0%から35%のミスマッチ塩基が存在する場合、より好ましくは0%,1%,2%,3%,4%、5%、6%,7%,8%,9%,10%,11%,12%,13%,14%,15%,16%,17%,18%,19%,20%,21%,22%,23%,24%,25%,26%,27%,28%,29%又は30%のみのミスマッチ塩基が両分子間に存在する場合、本明細書で上述したようなオリゴヌクレオチドが専ら核酸分子中の相補的な区間と結合するように調整される。
従って、上記複合体の形成は、分子の相補的な領域間の検出可能な相互作用が起こる限りにおいては相補的ではない両分子の部分も含む。「固定化される核酸のそれぞれ」という用語は、本明細書で上述したようなオリゴヌクレオチドの配列に相補的である1つの塩基の種類の区間のヌクレオチド又は塩基を有する全ての固定化される核酸に関係がある。
本発明に関する中で「上記核酸の状態を示す値を決定する」という用語は、本明細書で上述したような固定化される核酸と相補的オリゴヌクレオチドとの相互作用の程度の測定に関係がある。そのような相互作用の程度は、幾つかのパラメータに関する結論を導き出すことを可能にする。例えば、上記相互作用の程度は、支持体材料のある領域又は特定の場所において相補的な配列を有する核酸が存在するか否かを調べることを可能にする。相互作用の程度が極めて低い場合又は支持体材料のある領域又は特定の場所において相互作用が存在しない場合、そのような結果は、核酸分子が完全に存在しないこと若しくは少なくとも上記分子中に相補的領域が存在しないこと、又は核酸分子の官能性が存在しないことを示す。
また、上記相互作用の程度は、固定化された核酸の品質を調べることを可能にする。相互作用の程度が低い又は少なくとも最適ではない場合、そのような結果は、少なくとも上記核酸に存在する相補性の領域の構造的な障害(impairment)又は変化(modification)を意味する。その結果、そのような構造的な障害は、固定化された核酸の全体の構造的な問題を意味する。本発明により特定されるそのような構造的に損なわれた又は変更された核酸を有する支持体材料、バイオチップ又はマイクロアレイは、例えば、本明細書で以下に説明するように、更なる使用から退けられるか又は本発明による二次的な検査を行う手法において詳細に調べられる。
「相互作用の程度」という用語は、本発明に係る標識オリゴヌクレオチドが本明細書で上記に規定されているように与えられた後、すなわち、複合体の形成を可能にするためにオリゴヌクレオチドが固定化される核酸の近くにある状態にされた後の核酸が固定化された基板の領域又は区域内における物理的、例えば光学的又は化学的信号の測定を、核酸が固定化されなかった領域、すなわちバックグラウンド領域のそのような信号の測定と比較することにより導き出せる数値を意味する。従って、オリゴヌクレオチド中の標識された要素の存在は、当業者に既知の対応する適切な方法により測定及び検出され得る。そのため、標識オリゴヌクレオチドと固定化される核酸との相互作用が起こる領域においてのみ、そのような物理的又は化学的信号が検出され得る。測定される数値は、オリゴヌクレオチドに用いられる標識要素に、すなわち信号の絶対強度に依存する。上記値は、また、基板の1つ又はそれ以上の領域、好ましくは固定化される核酸を有していない支持体材料の幾つかの別個の場所において、バックグラウンド信号に対して調整される信号強度も参照する。
また、上記値は、標識オリゴヌクレオチドが固定化される核酸と最適に相互作用する、例えば、オリゴヌクレオチドの全ての塩基が固定化される核酸分子と結合する又はハイブリダイズする及び/又は実質的にオリゴヌクレオチドの脱結合が起こらない相互作用反応において得られる制御値に調整され得る。
本明細書で上記に定義されたような制御値に対して計算される約0%ないし約5%の、好ましくは約0%ないし約3%の支持体材料のある特定の領域における相互作用の程度は、支持体材料の上記ある領域又はスポットに核酸が全く存在しないこと又は上記核酸中に相補性の領域が存在しないことを表すとみなされ得る。約5%ないし約80%の、好ましくは約10%ないし約70%の相互作用の程度は、少なくとも上記核酸に存在する相補性の領域において構造的に損なわれた又は上記領域のサブポーションのみを有する支持体材料の特定の領域又はスポットにおける核酸分子の存在を表すとみなされ得る。そのような相互作用の程度は、更に、堆積又は固定化プロセスの間に起こった問題に関して表す。本明細書で上記に定義されたような相互作用の程度は、専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間に関する中でのみ計算されるので、本発明に係る約5%ないし約80%の、好ましくは約10%ないし約70%の中位の相互作用の程度を示す核酸は、専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間以外の特定のヌクレオチドの区間に相補的な第2のオリゴヌクレオチドとやはり最適に相互作用し得る。そのような中位の相互作用の程度を示す核酸は、特定のヌクレオチドの区間がより高い相互作用の程度で結合することができるかどうか、すなわち、上記中位の相互作用の程度が専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間内の制約のためであるのか、それとも同様にそのような第2の部位における構造的な障害のためであるのかを算定するために、追加として、第2の特異的に結合するオリゴヌクレオチド、例えば、専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間以外の特定のヌクレオチドの区間に相補的なオリゴヌクレオチドを用いて検査される。そのような第2の相互作用の検査は、非常に低い相互作用の程度又は全く相互作用のないことのみが専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間に相補的なオリゴヌクレオチドを用いて測定され得る場合においても行われ得る。対応する第2の相互作用の詳細は、本明細書で以下に説明される。
本明細書で上記に定義されたような制御値に対して計算される約80%ないし約100%の、好ましくは約90%ないし約100%の支持体材料のある特定の領域における相互作用の程度は、少なくとも上記核酸に存在する相補性の領域において構造的に損なわれていない支持体材料の上記特定の領域又はスポットにおける核酸分子の存在を表すとみなされる。あるケースでは、相互作用の程度は、100%を上回っている場合もあり、例えば、約100%から約150%の間であることもある。そのような結果は、例えば、制御値が検出領域における最強の信号よりも強くない信号に由来する場合、又は、制御値が平均信号値が検出領域における最強の信号よりも低い平均化又は正規化された信号に由来する場合に得られる。
「信号」という用語は、支持体材料の表面上の又は支持体材料中の2点間又は2領域間の任意の化学的又は物理的、好ましくは光学的に区別可能な違いを意味する。任意のそのような信号の測定又は検出は、当業者に既知の任意の好適な手段を用いて行われ得る。例えば、信号はマイクロアレイスキャナ装置又はCCD光学装置を用いて検出される。検出された信号を分析及び比較するために、適切なコンピュータ装置及びプログラムが必要に応じて用いられる。そのようなコンピュータ装置及びプログラムは、当業者に既知である。
「核酸の状態」という用語は、固定化された核酸の有無に関係があるとともに、相補性の領域内における構造的な制約及び障害の観点から固定化された核酸の品質にも関係がある。従って、本明細書で上記に定義されたような本発明の核酸を検査する方法は、基板上の存在する堆積及び存在しない堆積と固定化パターンとの「全か無か」の識別と、本明細書で上記に定義されたような固定化された核酸分子と標識オリゴヌクレオチドとの幾つかの相互作用の程度の間の「品質制御」の識別との両方を可能にする。低い又は中位の相互作用の程度は、固定化された核酸のより低い品質を表すとみなされ、これは、特異的に結合するオリゴヌクレオチドとの相互作用工程の間のその後の問題につながる。
また、本明細書で上述したような本発明の核酸を検査する方法のステップ(a)、(b)及び(c)は、各ステップ間のいかなる時間又は時間間隔の整合性を伴うことなく実行され得る。すなわち、全てのステップ又はあるステップのサブグループは、同時に実行されてもよいし、ステップ(a)及び/又はステップ(b)及び/又はステップ(c)の間に任意の適切な時間間隔が存在してもよい。例えば、ステップ(b)は、ステップ(a)の実行後数秒、数分、数日、数週間、数か月又はそれどころか数年の時間間隔の後に実行され得る。同じことがステップ(a)及びステップ(b)に対してステップ(c)にも当てはまる。
具体的な実施の形態では、ステップ(a)が最初に実行され、その後にステップ(b)及びステップ(c)が続く。
好ましくは、続いて起こるステップ(b)ないし(c)が、ステップ(a)が開始又は終了した後約1時間ないし約12か月後に実行される。
更なる観点では、本発明は、基板上の核酸を検査するキットに関係がある。このキットは、本明細書で上記に定義されたような熱若しくは光による架橋又は化学的固定化を介して固体支持体上に固定される核酸のアレイであって、固定化される上記核酸のそれぞれは専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間を含む当該アレイと、上記専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間に相補的な標識オリゴヌクレオチドであって、上記専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間において上記固定化される核酸のそれぞれと複合体を形成することができる当該標識オリゴヌクレオチドとを有する。このキットは、本明細書で上記に定義されたような検査反応に必要な成分又は構成要素、例えば、ハイブリダイゼーションバッファのようなバッファ、洗浄液及び/又は標識要素を検出することができる成分、又は当該キットの使用に関する情報を有するひとまとめの情報リーフレットを更に有し得る。上記キットは、当業者に既知の任意の好適な形態で与えられる。例えば、上記キットは、開放系(open)又は閉鎖系(closed)カートリッジとして与えられる。閉鎖系カートリッジのキットは、上記に示された成分の1つ又はそれ以上が保管される幾つかの部分を有し得る。
他の観点では、本発明は、本明細書で上記に定義されたような熱若しくは光による架橋又は化学的固定化を介して固体支持体上に固定化される核酸の状態を検査するための本明細書で上記に定義されたような専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間に相補的な本明細書で上記に定義されたような標識オリゴヌクレオチドの使用であって、上記固定化される核酸のそれぞれは専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間を含み、上記標識オリゴヌクレオチドは、上記専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間において上記固定化される核酸のそれぞれと複合体を形成することができる、当該標識オリゴヌクレオチドの使用に関係がある。
架橋を介して固体支持体上に固定化される核酸の状態を検査するための専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間に相補的である上記標識オリゴヌクレオチドは、本明細書で上記に定義されたような固定化される核酸と複合した標識オリゴヌクレオチドの量を示す値の決定を有する。
本発明の好ましい実施の形態に係る核酸は、一本鎖DNA、RNA、PNA、CNA、HNA、LNA又はANAである。上記DNAは、例えば、A−DNA、B−DNA又はZ−DNAの形態である。上記RNAは、例えば、p−RNA、すなわちピラノシル−RNAの形態又はヘアピン型RNA若しくはステムループ型RNAのような構造的に変更された形態である。
「PNA」という用語は、ペプチド核酸、すなわち、生物学的研究及び治療に用いられるが、天然に存在することは知られていないDNA又はRNAと類似した人工的に合成されたポリマに関係がある。PNAの骨格(backbone)は、典型的には、ペプチド結合により連結されたN−(2−アミノエチル)−グリシンの繰り返し単位によって構成されている。種々のプリン及びピリミジン塩基が、メチレンカルボニル結合により上記骨格に連結されている。PNAは、一般に、最初の(左側の)位置のN末端及び右側のC末端を伴ってペプチドのように表される。
「CNA」という用語は、アミノシクロヘキシルエタン酸核酸に関係がある。また、この用語は、シクロペンタン核酸、すなわち、例えば2´−デオキシカルバグアノシンを有する核酸分子に関係がある。
「HNA」という用語は、ヘキシトール核酸、すなわち、標準的な核酸塩基とリン酸化1,5−アンヒドロヘキシトールの骨格とから構築されるDNAアナログに関係がある。
「LNA」という用語は、固定された核酸に関係がある。典型的には、固定された核酸は、修飾された、従って近づき難い(inaccessible)RNAヌクレオチドである。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2´位及び4´位の炭素を接続する追加のブリッジで修飾される。そのようなブリッジは、3´-endo形の構造的な配座においてリボースを固定する。固定されたリボースの配座は、塩基の積み重ね及び骨格の事前組織化(pre-organization)を強化する。これは、熱的安定性、すなわちオリゴヌクレオチドの溶融温度を著しく高める。
「ANA」という用語は、アラビノ核酸又はその誘導体に関係がある。本発明に関する中で好ましいANAの誘導体は、2´−デオキシ−2´−フロロ−β−D−アラビノヌクレオシド(2´F−ANA)である。
他の好ましい実施の形態では、核酸分子は、一本鎖DNA、RNA、PNA、CNA、HNA、LNA及びANAの任意の1つの組み合わせを有し得る。LNAヌクレオチドのDNA又はRNA塩基との混合が特に好ましい。他の好ましい実施の形態では、本明細書で上記に定義されたような核酸分子は、短いオリゴヌクレオチド、長いオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの形態である。
本発明の好ましい実施の形態に係る1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間は、チミン、ウラシル、グアニン、アデニン又はシトシン塩基のみによって構成されている。上記1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間は、更に、本明細書で上記に定義されたようなチミン、ウラシル、グアニン、アデニン又はシトシン塩基の機能的等価物によって構成されてもよいし、チミン及びその機能的等価物、ウラシル及びその機能的等価物、グアニン及びその機能的等価物、アデニン及びその機能的等価物又はシトシン及びその機能的等価物の組み合わせによって構成されてもよい。「機能的等価物」という用語は、得られるヌクレオチド又は塩基の非共有結合に化学的に類似している相補性塩基と非共有結合を確立することができる塩基に関係がある。
特に好ましい実施の形態では、専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間は、対応する機能的等価物を含むチミン、ウラシル若しくはグアニン又はその組み合わせの区間である。チミン又は組み合わせ又は対応する機能的等価物の状態のチミンによって構成される専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間が更により好ましい。
本発明の更に好ましい実施の形態に係る専ら1つの塩基の種類の核酸は、約2から約200ヌクレオチドまで、より好ましくは約2から約100ヌクレオチドまで、特に好ましくは約2から約50ヌクレオチドまで、更により好ましくは約2から約20ヌクレオチドまでの長さを有する。2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39又は40ヌクレオチドの区間も好ましい。16ヌクレオチドの区間が最も好ましい。
本発明の他の好ましい実施の形態に係る固体支持体上における1つ又はそれ以上の核酸の固定化に用いられる架橋は、約200ないし300nmの範囲又はその部分的な範囲、例えば、200ないし220nm、220ないし240nm、240ないし260nm、260ないし280nm、280ないし300nmのサブレンジ内の波長において行われる光による架橋である。そのような架橋は、古典的な紫外線架橋であるとみなされる。用いられる光の波長は、ランプの選択により主に決定される。例えば、200ないし300nmのスペクトルの波長を作るために、低圧水銀UVランプが用いられ得る。そのようなランプは、当業者が知っているように、典型的には1つの波長だけではなく、複数の波長のスペクトルを発する。代替として、光は、異なる発光スペクトルを有するUVLED、又は発せられる波長の大部分が200ないし300nmの範囲内である当業者に知られている任意の他のランプ若しくは光源からも発せられる。特に好ましい実施の形態では、顕著な輝線は、200ないし300nmの上記発光スペクトルの範囲内の254nmにおいてである。全ての波長のスペクトルではなく、特定の波長のみ、特に好ましくは254nmの波長を発する光源が用いられる架橋の手法が、更に好ましい。そのような制限は、当業者が知っているように、特定のランプ若しくはLEDモデルを用いること又は定義された波長の通過のみを許可するフィルタ素子を使用することにより実現される。
200ないし300nmの波長、特に254nmにおける核酸の架橋は、ウラシル、チミン、グアニン、シトシン又はアデニン塩基を有する核酸分子、より好ましくはウラシル、チミン、グアニン、シトシン又はアデニン塩基によって構成される専ら1つの塩基の種類の区間を有する核酸を固定化するために好ましく用いられる。より好ましい実施の形態では、200ないし300nmの波長、特に254nmにおける核酸の架橋は、ウラシル、チミン又はグアニン塩基によって構成される専ら1つの塩基の種類の区間を有する核酸、更に好ましくはウラシル又はチミン塩基によって構成される専ら1つの塩基の種類の区間を有する核酸を固定化するために好ましく用いられる。ウラシルによって構成される専ら1つの塩基の種類の区間は、チミンによって構成される専ら1つの塩基の種類の区間よりも254nmの波長において支持体材料に効果的に固定化されることが分かっており、その結果、グアニン、シトシン又はアデニンによって構成される専ら1つの塩基の種類の区間よりも上記波長において支持体材料に効果的に固定化されるので、ウラシル塩基によって構成される専ら1つの塩基の種類の区間を有する核酸分子が最も好ましい。
本発明の他の好ましい実施の形態に係る固体支持体上における1つ又はそれ以上の核酸の固定化に用いられる架橋は、約300ないし500nmの波長又はその部分的な範囲、例えば、300ないし320nm、320ないし340nm、340ないし360nm、360ないし380nm、380ないし400nm、400ないし420nm、420ないし440nm、440ないし460nm、460ないし480nm、480ないし500nmのサブレンジにおいて行われる光による架橋である。そのような架橋は、非古典的な紫外線架橋又は長波長の架橋であるとみなされる。用いられる光の波長は、ランプの選択により主に決定される。例えば、300ないし500nmのスペクトルの波長を作るために、高圧水銀UVランプが用いられ得る。そのようなランプは、当業者が知っているように、典型的には1つの波長だけではなく、複数の波長のスペクトルを発する。「300ないし500nmのスペクトル」という用語は、高圧水銀UVランプから発せられるそのような典型的なスペクトルに関係がある。代替として、光は、異なる発光スペクトルを有するLED、又は発せられる波長の大部分が300ないし500nmの範囲内である当業者に知られている任意の他のランプ若しくは光源からも発せられる。特に好ましい実施の形態では、顕著な輝線は、300ないし500nmの上記発光スペクトルの範囲内の365nmにおいてである。全ての波長のスペクトルではなく、特定の波長のみ、特に好ましくは365nmの波長を発する光源が用いられる架橋の手法が、更に好ましい。そのような制限は、当業者が知っているように、特定のランプ若しくはLEDモデルを用いること又は定義された波長の通過のみを許可するフィルタ素子を使用することにより実現される。
300ないし500nmの波長、特に365nmにおける核酸の架橋は、ウラシル、チミン、グアニン、シトシン又はアデニンヌクレオチドを有する核酸分子、より好ましくはウラシル、チミン、グアニン、シトシン又はアデニンヌクレオチドによって構成される専ら1つの塩基の種類の区間を有する核酸を固定化するために好ましく用いられる。より好ましい実施の形態では、300ないし500nmの波長、特に365nmにおける核酸の架橋は、グアニン、ウラシル又はチミン塩基によって構成される専ら1つの塩基の種類の区間を有する核酸分子、更に好ましくはグアニン又はウラシル塩基によって構成される専ら1つの塩基の種類の区間を有する核酸を固定化するために好ましく用いられる。グアニンによって構成される専ら1つの塩基の種類の区間は、ウラシルによって構成される専ら1つの塩基の種類の区間よりも365nmの波長において支持体材料に効果的に固定化されることが本願発明者等によって見出されており、その結果、チミンによって構成される専ら1つの塩基の種類の区間よりも上記波長において支持体材料に効果的に固定化され、そしてまた、シトシン又はアデニンによって構成される専ら1つの塩基の種類の区間よりも上記波長において支持体材料に効果的に固定化されるので、グアニン塩基によって構成される専ら1つの塩基の種類の区間を有する核酸分子が最も好ましい。
本発明の他の好ましい実施の形態に係る固体支持体上における1つ又はそれ以上の核酸の固定化に用いられる架橋は、約0.05から約1.5ジュール/cm2、より好ましくは約0.075から約1.0ジュール/cm2、更に好ましくは約0.1から約0.6ジュール/cm2の範囲のエネルギー量、最も好ましくは0.3ジュール/cm2のエネルギー量を用いることにより実行される約200ないし300nmの波長において行われる光による架橋である。特に好ましい実施の形態では、架橋は、0.3ジュール/cm2のエネルギー量を用いることにより254nmの波長において行われる。
本発明の他の好ましい実施の形態に係る固体支持体上における1つ又はそれ以上の核酸の固定化に用いられる架橋は、約0.5から約15ジュール/cm2、より好ましくは約2.0から約12ジュール/cm2、更に好ましくは約4から約10ジュール/cm2の範囲のエネルギー量、最も好ましくは5ジュール/cm2のエネルギー量を用いることにより実行される約300ないし500nmの波長において行われる光による架橋である。特に好ましい実施の形態では、架橋は、5ジュール/cm2のエネルギー量を用いることにより365nmの波長において行われる。
本明細書で上述したように、支持体材料上に与えられる光の量及び従って与えられるエネルギー量は、とりわけ、光源と照射される支持体材料との距離に依存する。用いられる光源と支持体材料との距離は、当業者に既知のパラメータに従って適宜調節され得る。好ましくは、5cmから1m、より好ましくは10cmから500cmの距離、更に好ましくは20cmから200cmの距離が用いられる。10cmから150cmの距離が更に好ましい。50cmの距離が最も好ましい。
本発明の他の好ましい実施の形態によれば、核酸分子の支持体材料への化学的固定化は、アミンで修飾された核酸と対応する官能基、すなわち、アミンで修飾された核酸分子と主に相互作用する官能化学基を有する支持体材料の要素との結合により行われる。「アミンで修飾された」という用語は、反応性の官能アミン基を確立するという目的での核酸分子内のアミン基の導入、活性化又は修飾に関係がある。そのようなアミン基は、例えば、分子の長さ全体にわたって導入される。好ましくは、上記アミン基は、分子の末端の両方若しくは一方又は分子の中央において導入される。そのような修飾は、支持体上の分子の結合の挙動を制御するため及び作り上げるために用いられる。アミンで修飾された核酸と主に相互反応する好適な官能化学基は、当業者に既知であり、有機化学のテキスト、例えば、Hart等によるOrganische Chemie,
2007, Wiley-Vch又はVollhardt等によるOrganische Chemie, 2005, Wiley-Vchから得られる。特に好ましい実施の形態では、支持体材料上にアミンで修飾された核酸分子の固定化は、核酸分子の上記アミン基と支持体材料のエポキシ、アルデヒド、カルボキシレート又はNHS基との相互作用を介して行われる。「NHS」という用語は、N−ヒドロキシスクシンイミドに関係があり、これはカルボン酸に対して活性化剤として用いられる化合物である。標準的なカルボン酸が単にアミンと塩を形成するのに対して、活性酸(基本的には優れた脱離基を有するエステル)は、例えばアミドを形成するためにアミンと反応する。典型的には、NHSで活性化された酸は、NHSを無水溶媒中の少量の有機塩基及び所望のカルボン酸と混合することにより合成される。その後、非常に不安定な活性酸の中間体を形成するために、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又はエチル(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のような脱水剤が加えられる。NHSは、不安定ではない活性酸を形成するように反応する。そのような塩及びNHSを有するエステル、すなわちコハク酸エステルは、水が無い状態で低温において精製され、保存されるのに十分に安定であり、そのようなものとして、後に洗浄及び/又はハイブリダイゼーション工程にかけられる支持体材料上における核酸の固定に適している。
更に好ましい実施の形態によれば、支持体材料上に固定化される核酸は、式I
5´−Yn−Xm−Br−Xp−Zq−3´
により表される
式Iにおいて、Y及びZは専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間であり、これらは同じ又は異なる塩基の種類より成り、Xはスペーサであり、Bは2以上の塩基の種類の配列であり、n、m、r、p及びqは核酸中のヌクレオチドの数であり、以下の条件、すなわち、n,m,p,q,r>1か、n,m,r>1かつp,q=0か、p,q,r>1かつn,m=0か、n,q,r>1かつm,p=0か、n,r>1かつm,p,q=0か、又はq,r>1かつn,m,p=0が当てはまる。「専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間」という用語は、本明細書で既に上記に定義されており、1種類の塩基のみ、例えば、チミン、グアニン、アデニン、シトシン若しくはウラシル又は任意の機能的に等価なその誘導体のみによって構成されたヌクレオチドに関係がある。
好ましくは、区間Y及び/又はZは、専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの存在のために核酸の固定化に用いられ得る。より好ましくは、区間Y及び/又はZは、固定化が200ないし300nmの波長、例えば254nmにおける架橋により行われることになっている場合には、ウラシル又はチミン塩基によって、更に好ましくはウラシルによって構成され、固定化が300ないし500nmの波長、例えば365nmにおける架橋により行われることになっている場合には、グアニン又はウラシルによって、より好ましくはグアニンによって構成される。
Y及びZは、同じ核酸分子に同時に存在し得る。そのような形式は、分子の両末端における専ら1つの塩基の種類の区間による同時架橋に用いられる。更なる好ましい実施の形態では、Y及びZは、異なる塩基の種類によって構成される。すなわち、例えば、Yは塩基の種類がウラシルであるのに対して、Zは塩基の種類がグアニンであり、その逆もまた同様である。そのような核酸は、例えば、異なる波長、好ましくは254nm及び365nmにおいて固定化され、従って、核酸の区別可能な配向をもたらす。そのような核酸は、本発明に係る相補性のオリゴヌクレオチドと複合体を形成することができる固定化の手法及び核酸の配向の影響を検査するためにも用いられ得る。
好ましい実施の形態では、Y及びZは、長さが同じであっても異なっていてもよい。Y及び/又はZは、約2ないし約100ヌクレオチド、より好ましくは約4ないし約50ヌクレオチド、更に好ましくは約8ないし約30ヌクレオチドの区間を有する。4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39又は40ヌクレオチドの区間も好ましい。16ヌクレオチドの区間が最も好ましい。
両方の末端に要素Y及びZを有する形式では、核酸分子は、本明細書で式Iにおいて上記に表された特異的ヌクレオチドBの領域をその中央に有する。代替として、領域Bは、Y又はZの1つのみに接続され、従って分子の末端に位置し得る。上記領域Bは、古典的なハイブリダイゼーション又はマイクロアレイの手法における特定の検出反応に、すなわち、要素B内に存在するオリゴヌクレオチドの相補性領域に特異的に結合する該オリゴヌクレオチドとの相互作用反応に用いられ得る。Y及び/又はZの長さ及び化学的性質は、区域Bの柔軟性に影響を及ぼし、従ってこの区域内における特異的な相互作用、例えば、相補的オリゴヌクレオチドを用いる特異的なハイブリダイゼーション反応を最適化するために用いられる。好ましい実施の形態では、Bは、約4ないし約90ヌクレオチドの区間、より好ましくは約4ないし約50ヌクレオチドの区間、更に好ましくは約20ないし約30ヌクレオチドの区間を有する。4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39又は40ヌクレオチドも好ましい長さである。25ヌクレオチドの区間が最も好ましい。
このように、本発明の特定の実施の形態によれば、本明細書で上記に定義されたような専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間は、核酸分子の両末端のいずれか一方に、すなわち、固定化される核酸の3´位又は5´位のいずれか一方に位置し得る。より好ましくは、専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間は、核酸分子の5´末端に位置する。
本発明の式Iの要素Xは、スペーサ要素として、すなわち、不確定の性質の配列を有する領域として更に存在する。より好ましくは、要素Xは、脱塩基ヌクレオチドによって構成される。「脱塩基」という用語は、塩基性残基が存在しない核酸分子の位置に関係がある。従って、脱塩基領域又は核酸の区間は、糖リン酸骨格要素のみによって構成される。そのような脱塩基構造は、分子全体の柔軟性に、特に分子の要素Bに対して良い影響を与える。本願発明者等は、脱塩基部位の存在が、標的プローブと特異的に相互作用する又は標的プローブにハイブリダイズする固定化される分子の能力に対して良い影響を与えることを示すことができた(実施例5及び図6参照。)。脱塩基部位を有するスペーサ要素の導入する目的で、特異的なハイブリダイゼーションに用いられる分子の部分、例えば、式IのBを形成するための固定化に用いられる分子の部分、例えば、式IのY又はZの分離は、非特異的なハイブリダイゼーション反応を著しく減少させ得る。
スペーサ要素Xm及びXpは、完全に又は部分的に脱塩基部位によって構成されている。部分的に脱塩基部位によって構成されたスペーサ要素では、スペーサ要素の塩基部分は、専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドによって構成されるか、又は異なる塩基の種類のヌクレオチドによって構成される。本明細書で上記に定義されたような脱塩基部位は、スペーサ要素内において一区間に集められてもよいし、分散してもよく、代替として、式Iに表された分子全体にわたって存在することもある。好ましくは、上記脱塩基部位は、スペーサ要素X内に位置し、一又は二区間に集められる。
好ましくは、式Iに表された分子中の脱塩基部位の数は、約1から約30の間、より好ましくは約1から約20の間であり、更に好ましくは、そのような分子は、1,2,3,4,5,6,7、8,9,10,11,12,13,14,15,16,17.18.19又は20の脱塩基部位を有する。
スペーサ要素Xm及びXpは、化学的性質及び長さが同一であってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、スペーサ要素XmとXpとは、約1ないし約50ヌクレオチド、より好ましくは1,2,3,4,5,6,7、8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29又は30ヌクレオチドの等しい長さである。他の実施の形態では、q=0の場合、すなわち、式Iに表されている配列要素Zが存在しない場合、末端のスペーサも省かれる。すなわち、p=0である。同様に、n=0の場合、すなわち、式Iに表されている配列要素Yが存在しない場合、末端スペーサも省かれる。すなわち、m=0である。
本発明の更に好ましい実施の形態によれば、固定化される核酸及び/又は該核酸に相補的なオリゴヌクレオチドは、末端の一方又は両方、好ましくは5´末端において1つ又はそれ以上の標識を有する。代替として、上記核酸分子又はオリゴヌクレオチドは、分子全体にわたる任意の場所において1つ又はそれ以上の標識を有する。好ましくは、上記核酸分子又はオリゴヌクレオチドは、1から10個の標識を有しており、これは、同一であっても異なっていてもよく、また、その任意の組み合わせであってもよい。より好ましくは、上記核酸分子又はオリゴヌクレオチドは、1から5個の標識、更に好ましくは2個の標識、最も好ましくは1個だけの標識を有する。
上記標識は、放射性標識、蛍光標識又は化学発光による標識であり得る。「放射性標識」という用語は、好ましくは放射性同位体によって構成される放射性放射物を放出する標識に関係がある。標識に関して「放射性同位体」という用語は、当業者に既知の任意のそのような因子に関係がある。より好ましくは、この用語は、N−15、C−13、P−31又はI−131に関係がある。
「蛍光標識」という用語は、蛍光色素分子の化学反応性誘導体に関係がある。典型的には、広く知られている反応基は、FITC及びTRITC(フルオレセイン及びローダミンの誘導体)のようなアミン反応性イソチオシアネート誘導体、NHS−フルオレセインのようなアミン反応性スクシンイミジルエステル及びフルオレセイン−5−マレイミドのようなスルフヒドリル反応性マレイミド活性化蛍光体を含んでいる。これらの反応性色素の他の分子との任意の反応が、蛍光色素分子と標識分子との間に形成される安定な共有結合をもたらす。蛍光標識反応後に、標識された標的分子からあらゆる未反応の蛍光色素分子を取り除く必要があることが多い。これは、蛍光色素分子と標識された核酸又はオリゴヌクレオチドとの大きさの違いを利用して、サイズ排除クロマトグラフィにより達成され得る。蛍光色素分子は、分離マトリクスと相互作用し、分離の効率を低減する。このため、蛍光色素の疎水性の原因となる特殊化された色素の除去カラムが用いられる。蛍光標識の特別の利点は、蛍光標識からの信号が分散しないことである。蛍光信号における分散の欠如は、例えば、支持体上のプローブのより密度の高い間隔を許してしまう。蛍光プローブの他の利点は、簡単な多色ハイブリダイゼーション検出が行われ得ることであり、これは、支持体材料上に固定化される核酸分子と複合体を形成するオリゴヌクレオチドの相対存在量の直接的な定量的決定を可能にする。特に好ましい実施の形態では、蛍光標識のFITC、フルオレセイン、フルオレセイン−5−EX、5−SFX、ローダミングリーン−X、Bodipy FL−X、Cy2、Cy2−Osu、Fluor X、5(6)TAMRA−X、Bodipy TMR−X、ローダミン、ローダミンレッド−X、テキサスレッド、テキサスレッド−X、Bodipy TR−X、Cy3−Osu、Cy3.5−Osu、Cy5、Cy5−Osu、Alexa Fluor(登録商標)、Dylight Fluor及び/又はCy5.5−Osuが用いられる。これらの標識は、個々に又は任意の組み合わせのグループで用いられる。
「化学発光標識」という用語は、化学反応の結果として熱の限定された放出を伴う光(ルミネッセンス)を発することができる標識に関係がある。好ましくは、この用語は、ルミノール、サイリューム(登録商標)、塩化オキサリル、TMAE(テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン)、ピラゴロール(pyragollol)、ルシゲニン、アクリジヌメスタ(acridinumester)又はジオキセタンに関係がある。
特に好ましい実施の形態では、本明細書で上記に定義されたような核酸分子及びオリゴヌクレオチドの両方の実体(entity)は、異なる標識で、典型的には、光学的及び化学的に区別可能である2つの異なる標識でそれぞれ標識化される。そのような区別可能な標識は、異なる標識で、典型的には光学的又は化学的に区別可能である2つの異なる標識でそれぞれ標識化される。そのような区別可能な標識は、核酸分子及びオリゴヌクレオチド中の異なる場所に存在する。従って、ヌクレオチドが、例えばCy2で標識化されると、オリゴヌクレオチドはCy5で標識化される。これらの標識は、例えば、固定化される核酸分子と相補的な結合オリゴヌクレオチドとの相互作用の間の分子プロセスの決定に用いられる。
そのような異なる標識化は、固定化された核酸及び任意の結合オリゴヌクレオチドの両方を共存させる機会を更に与える。そのような手法は、本明細書で上記に定義されたような相互作用の程度に関する値を得るためにも用いられ得る。
更に好ましい実施の形態では、制御核酸(control nucleic acid)は、ある標識、好ましくは蛍光標識で標識化され、本発明に係る検査用オリゴヌクレオチドは、異なる光学的に区別可能な標識又は同じ標識で標識化される。上記制御核酸から得られる信号が100%と見なされる場合、固定化される核酸と上記標識オリゴヌクレオチドとの相互作用から得られる任意の信号は、相互作用の程度に関する代替の値を定義するために上記値に対して正規化される。更に、核酸が固定化されていない支持体材料の領域に由来するバックグラウンド信号は差し引かれる。
本発明の他の好ましい実施の形態に係る支持体材料は、官能化学基、好ましくはアミン基若しくはアミン官能性基を有する固体材料又は基板である。「アミン官能性基」という用語は、アミンにより官能基化された、すなわち、化学修飾によりアミンの機能を取り入れた基に関係がある。これらのアミン又はアミン基は、第一級又は第二級アミンである。また、上記支持体材料又は基板は、支持体材料と核酸分子との相互作用に用いられる光活性化可能な化合物を有する。当業者に知られているような好適な光活性の化学物質は、連結分子として用いられる。そのような分子の例は、フォトビオチン又は支持体材料中のスクシニミジル−6−[4´−アジド−2´−ニトロフェニルアミノ]ヘキサノアートのような反応性部分である。
フォトビオチンは、ビオチニル基、リンカー基及び光活性化可能なニトロフェニルアジド基によって構成される。このフォトビオチンは、一般に、固体基板上に分子をパターニングするために用いられる。典型的には、紫外線レーザがさまざまな表面に付着するようにフォトビオチンを刺激する。この付着工程は、通常、水溶液中で行われる。フォトビオチンはビオチン種であり、これは、光活性化可能であり、核酸及び分子、特に、結合するために存在するアミン又はスルフヒドリル基を持たない分子をビオチニル化するために用いられ得る。強い光に曝されると、ビオチンのアリルアジド基は、極めて反応性の高いアリルナイトレンに変わる。このプロセスは、ビオチンで分子、例えば核酸分子を標識化するために用いられ得る。
これらの上述した化合物は核酸分子と反応し、基板上において分子を固定化する。
更なる好ましい実施の形態では、上記支持体材料はソラレンを有する。ソラレンは、核酸に対する二官能性の光化学的架橋試薬である。これは、核酸中にらせんを挿入し、長波長(365nm)の紫外線で照射すると、ピリミジン塩基と共有結合を形成する。好ましくは、ソラレンは、300ないし500nmの波長、より好ましくは365nmの波長における光による架橋を介して核酸を固定化するために用いられる。
好ましい支持体材料は、多孔質支持体材料又は多孔質基板である。ナイロン、例えば、ナイトランN(登録商標)、ナイトランSPC(登録商標)又はバイオダインC(登録商標)が特に好ましい。更なる好ましい支持体材料又は基板の種類は、非多孔質基板である。非多孔質基板の中で特に好ましいものは、ガラス、ポリ−L−リシンでコーティングされた材料、ニトロセルロース、ポリスチレン、環状オレフィンコポリマ(COC)、環状オレフィンポリマ(COP)、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリカーボネートである。
ニトロセルロースメンブレンは、一般にサザンブロッティングのような転移技術に用いられる従来型のメンブレンである。一般に物理的吸着によってニトロセルロースと結合する核酸を得るための方法は、広く知られている形の先行技術である。ニトロセルロースの主な利点は、入手容易なこと及びよく知られていることである。放射能による信号検出の方法を伴うニトロセルロースメンブレンの使用は、十分に確立されている。
ニトロセルロースメンブレンの代替として、ナイロンが、より大きい物理的強度及び結合能力並びにより広い範囲の与えられる利用可能な表面化学物質のために核酸の結合用の基板として用いられ、これは核酸の付着を最適化する。ナイロンメンブレン上における固定化は、例えば、光による架橋、特に紫外線架橋又は化学的活性化を介して行われる。ナイロン上における固定化は、繰り返されるプローブの剥離の間、非常に耐久性があることが実証されている。
高分子が例えばポリスチレンのようなバルク材料に結合する手段は、よく理解されていない。バルク材料に対する結合能力の割り当て又はその強化は、例えば、コーティングプロセス、表面処理又は吹き付け等により利用される官能基、好ましくはアミン基を与えることによって実現され得る。好ましく用いられるコーティング材料はポリ−L−リシンであり、これはカチオン界面活性剤のグループに属する。この材料は、正に帯電した親水性の(アミノ)基と疎水性の(メチレン)基とを含んでおり、核酸分子と相互作用することが知られている。
バルク材料として、当業者に既知の任意の好適な材料が用いられ得る。典型的には、ガラス、ポリカーボネート、環状オレフィンコポリマ、環状オレフィンポリマ又はポリスチレンが用いられる。ポリスチレンは、通常、親水性の基をほとんど含んでいないので、負に帯電した巨大分子を結合するのに好適な疎水性の材料である。
スライドガラス上に固定化される核酸に関して、ガラス表面の疎水性を高めることにより、DNAの固定化が向上することが更に知られている。そのような強化は、相対的により高い密度に集積された構成を可能にする。
ポリ−L−リシンによるコーティング又は表面処理に加えて、バルク材料、特にガラスは、例えば、エポキシ−シラン若しくはアミノ−シランを用いたシラン化(silanation)により、シリン化(silynation)により又はポリアクリルアミドを用いた処理により処理され得る。
本発明の更に具体的な実施の形態では、バルク材料は、本明細書において上述したようなメンブレン材料で覆われるか又はコーティングされ得る。
更に好ましい実施の形態では、本発明に係る複合体の形成はハイブリダイゼーション法である。ハイブリダイゼーション反応は、典型的には、とりわけハイブリダイゼーションバッファの性質及び濃度とハイブリダイゼーション温度とに依存する。
本発明に関する中で、例えば、検査する方法又は分析する方法に関する中で用いられる又は本発明のキットに含まれるハイブリダイゼーションバッファは、典型的には、負に帯電した捕捉プローブに対する負に帯電した核酸のハイブリダイゼーションを強化することができる塩を含んでいる。ハイブリダイゼーションバッファに用いられる典型的な塩は、SSC、SSPE又はPBSである。更に、上記バッファは、SDS(好ましくは0.01〜0.5%)又はTween20等の界面活性剤のような付加的成分を有し得る。また、上記バッファは、ニシン精子DNA(hsDNA)のような表面における特異的結合を低減するために典型的には加えられるバルクDNA又はBSAのような遮断剤を有し得る。本発明に係るハイブリダイゼーションバッファは、また、一本鎖の核酸を安定させる成分も有し得る。そのような成分の一例は、ホルムアミドである。好ましいバッファは、5×SSC、0.1%SDS及び0.1mg/mlhsDNAを有している。
そのようなバッファ及び本発明に関する中でも用いられ得る代替のバッファは、当業者に既知であり、例えば、Sambrook等のMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Pressから引き出せる情報に従って調製され得る。
好ましくは、ハイブリダイゼーション反応は、固定化される核酸分子と相補的なオリゴヌクレオチドとの間に形成される複合体の溶融温度よりも低い温度で行われる。より好ましくは、ハイブリダイゼーション反応は、30から65℃の温度で行われる。更なる実施の形態では、本明細書で上述したようなハイブリダイゼーションは、特異的に結合するオリゴヌクレオチドとのその後のハイブリダイゼーション反応の典型的な必要条件である洗浄又は遮断工程と組み合わされる。その一方、本発明に係るオリゴヌクレオチドは、特異的に結合するオリゴヌクレオチドよりも短く、従って、例えばハイブリダイゼーション反応の初期段階における必須の洗浄及び遮断工程の間、より低い温度で用いられ得る。その結果、オリゴヌクレオチドは、対応する洗浄又は遮断バッファ中で用いられ得る。そのような手法は、追加のステップ又は余分なバッファのセットが必要ないので、時間及びコストを節約することができる。
また、固定化される核酸分子と相補的オリゴヌクレオチドとの間に形成される複合体の溶融温度よりも高い温度、例えば50℃における特異的な検出反応のためのプレハイブリダイゼーションステップの間、上記固定化される核酸分子と本発明に係る相補的な検査用オリゴヌクレオチドとの間の複合体が分解され得る。従って、上記検査用オリゴヌクレオチドは、特異的に結合するプローブとの効率的なハイブリダイゼーション反応を可能にするために適切にそれに合わせて支持体材料から除去される。
本明細書で上述したようなプレハイブリダイゼーションステップの間に支持体材料から除去された本発明の検査用オリゴヌクレオチドは、本発明の他の好ましい実施の形態によれば、本発明に係るその後の相互作用又は制御反応に再利用される。「再利用する」という用語は、約1ないし約15回の、好ましくは約1ないし約5回のオリゴヌクレオチド溶液の繰り返しの使用に関係がある。これは、本発明の追加の有利な観点であり、限られた量の資源の投入により、コストを低減する可能性及びハイスループットの制御方式を可能にする可能性を与える。
更なる好ましい実施の形態では、本発明は、核酸を分析する方法であって、(a)熱若しくは光による架橋又は化学的固定化を介して固体支持体上に1つ又はそれ以上の核酸を固定化するステップであって、固定化される前記核酸のそれぞれは専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間を含む当該ステップと、(b)前記専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間に相補的な標識オリゴヌクレオチドを与えるステップであって、前記標識オリゴヌクレオチドは、前記専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間において前記固定化される核酸のそれぞれと複合体を形成することができる当該ステップと、(c)前記専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間以外の配列に相補的な特定の配列の存在を検出するステップと、(d)前記固定化される核酸と複合した前記専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間に相補的な標識オリゴヌクレオチドの量によって前記核酸の状態を示す値を決定するステップとを有する当該方法に関係がある。
対応する方法、特に、固定化される核酸の状態に関する情報を与えるステップ(b)と専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間以外の配列に相補的な特定の配列の存在の検出をもたらすステップ(c)との組み合わせは、支持体上に固定化される核酸分子の並列又はリアルタイム制御及び特定の使用を可能にする。そのような手法は、特異的なハイブリダイゼーション及び相互作用反応のリアルタイムの品質制御が特に有用である当業者に既知の任意の適切な環境において、好ましくは、病院若しくは他の医療施設の領域又は研究所において好ましく用いられる。それにより、例えば、出荷又は生産上の問題による支持体上に固定される核酸についての不具合が特異的なハイブリダイゼーション工程の間に検出され、従って、これは、固定化される核酸の統合的な時間を節約した品質制御、検査及び使用を可能にする。
本発明の核酸を検査する方法の各ステップの厳密な連続する順序又は発生順は、その後の相互作用ステップ及び検出ステップの必要条件である固定化ステップ(a)が最初に行われるという条件で存在しない。重要なことには、ステップ(b)及び(c)は、(b)が一番目で(c)が二番目の順で行われてもよいし、逆に(c)が一番目で(b)が二番目の順で行われてもよい。同じことが、ステップ(a)及び(b)の順序に従って適切な順序で用いられる方法の追加のステップ、例えば、検出ステップ又は画像化ステップについても当てはまる。
また、本発明の核酸を検査する方法のステップ(a)、(b)、(c)及び(d)は、各ステップ間の時間又は時間間隔の統一性を伴うことなく行われ得る。すなわち、ステップ(a)及び/又はステップ(b)及び/又はステップ(c)及び/又はステップ(d)間に任意の適切な時間間隔が存在し得る。「時間間隔」という用語は、任意の適切な期間に関係がある。例えば、ステップ(b)は、ステップ(a)の実行後、秒、分、時間、日、週、月又は更には年の時間間隔の後に実行され得る。同じことが、ステップ(a)及びステップ(b)に対してステップ(c)について、並びにステップ(a)、(b)及び(c)に対してステップ(d)についても当てはまる。
好ましい実施の形態では、本明細書で上記に定義されたような核酸を分析する方法のステップ(a)は、ステップ(b)、(c)又は(d)と異なる時点で行われる。例えば、ステップ(a)の固定化は、ステップ(b)、(c)又は(d)のような検査ステップ及び/又は特定の制御ステップが行われる数時間、数日、数週、数月又は更には数年前に行われ得る。好ましくは、ステップ(b)ないし(d)は、ステップ(a)が開始又は終了した後約1時間ないし約12か月後に実行される。ステップ(b)及び/又はステップ(c)及び/又はステップ(d)の間の好ましい「時間間隔」は、約1分ないし60分の周期であり、より好ましくは約1分ないし30分の周期である。
特に好ましい実施の形態では、上記核酸を分析する方法のステップ(b)及び(c)は、同時に行われる。
上述したようなステップ(a)、(b)及び(d)は、特異的なハイブリダイゼーション又は相互作用ステップであり、本明細書で上記に定義されたような支持体上の核酸を検査する方法に対応している。上記ステップ(c)は、相補的な核酸分子の、好ましくは約55%ないし100%の割合、より好ましくは、約70%ないし100%、約80%ないし100%、約85%ないし100%の割合、さらに好ましくは、約90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,99%又は100%の割合で合う分子の複合体化(complexing)を可能にする。これらの値は、全分子にわたって計算される全体の一致又は特異的相補性の領域、例えば本明細書で上記に定義された領域Bについての局所的な一致を意味している。特異的なハイブリダイゼーション行う手段及び方法並びにミスマッチの割合を計算する手段及び方法は、当業者に既知であり、例えば、Sambrook等のMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Pressから得られる。好ましくは、本明細書で上述したような又は実施例におけるバッファ溶液及び更なる成分が用いられる。
ステップ(b)、(c)及び/又は(d)に関して、同一のバッファ条件が用いられてもよいし、異なるバッファ条件が用いられてもよい。異なるバッファ条件が用いられるケースでは、ステップ(b)の後にステップ(c)が行われる場合、ステップ(c)は本明細書で上記に定義されたような時間間隔の後に行われてもよいし、その逆も同様に行われ得る。ステップ(b)及び(c)及び/又は(d)の間において、洗浄ステップ、好ましくは、固定化される核酸分子とハイブリダイズされるオリゴヌクレオチドの結合及び残りの部分を保証する好適な条件の下で行われるステップが行われる。
本明細書で上記に定義された核酸を分析する方法のステップ(b)において述べたような固定化される核酸に対するオリゴヌクレオチドの相互作用又はハイブリダイゼーションの検出に関して、上記方法のステップ(c)において用いられる標識と光学的又は化学的に区別可能である標識が用いられる。すなわち、制御の相互作用及び特異的なハイブリダイゼーション反応が、2つの異なる区別可能な標識を用いて行われる。好適な標識は、当業者に既知であり、本明細書で上述されている。好ましくは、2つの異なる蛍光標識が用いられる。
固定化される核酸の制御に加えて、本発明は、また、追加の特異的に結合するオリゴヌクレオチドの使用により支持体材料上に固定化される核酸の品質を独立して制御する可能性を提供する。好ましい実施の形態では、上記方法は、専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間以外の所定のヌクレオチドの特定の区間に相補的である少なくとも1つの標識された検査用オリゴヌクレオチドの提供を見越している。更に、上記標識されたオリゴヌクレオチドは、上記ヌクレオチドの特定の区間を有する固定化される核酸と複合体を区別して形成することができる。その後、上記ヌクレオチドの特定の区間を有する固定化される核酸の専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間以外の上記所定のヌクレオチドの特定の区間と複合した上記検査用オリゴヌクレオチドの存在を介して上記核酸の状態を示す値が決定される。ここでは、制御オリゴと実質上全ての固定化される核酸との相互作用が検出されるだけではなく、(特異的配列が堆積された核酸中に存在する時間に依存する)1つ又はそれ以上の固定化される核酸と特異的な検査用オリゴヌクレオチドとの特異的な相互作用も検出されるので、そのような独立した検査は本明細書で上記に定義されたような方法に更なる制御層を与える。そのような二次制御反応は、1つ又は数個のはっきりと異なる特異的配列に関して行われる。異なる特異的配列の数は、支持体材料上に存在する異なるプローブの数に依存する。好ましい実施の形態では、特異的に結合する相補的なオリゴヌクレオチドと結合する固定化される核酸の能力に関して統計的に関連のあるフィードバックを得るために、全ての固定化される核酸の約0.1%から10%がそのような二次検査法で検査され得る。好ましくは、1,2,3,4,5又は6の数の特異的な二次制御反応が行われる。固定化される核酸分子中の同一の塩基の種類の区間に相補的であるオリゴヌクレオチドを用いる一次制御法の結果と、特異的に結合するオリゴヌクレオチドを用いる二次制御法の結果との間のいかなる相違もが、これらの制御法のどちらか一方に特に関係がある問題に関して示している。
好ましくは、そのような二次制御法は、一次制御法に用いられる標識と光学的又は化学的に区別可能である標識を用いることにより行われる。一次制御法と二次制御法との差別化を可能にするために、これらの標識は、例えば、一方は専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間を有し、他の一方はヌクレオチドの特定の区間を有する2つの別個の領域を有する1つの同じオリゴヌクレオチドに配されるべきではない。これは、そのような構成では、専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間を有する領域に対する結合反応とヌクレオチドの特定の区間を有する領域に対する結合反応との区別が実現されないからである。
本明細書で上述した方法に加えて、二次制御法の適用のためのキットも、追加の好ましい実施の形態として本発明に含まれる。そのようなキットは、上記の本発明に係る幾つかの又は全ての構成要素を有するとともに、専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間以外の所定のヌクレオチドの特定の区間に相補的な少なくとも1つの標識された検査用オリゴヌクレオチドを更に有しており、上記標識されたオリゴヌクレオチドは、上記ヌクレオチドの特定の区間を有する固定化される核酸と複合体を区別して形成することができる。
以下の実施例及び図面は、例示の目的のために与えられている。従って、実施例及び図面は限定するように解釈されるべきではないことが理解される。当業者は、明らかに本明細書で挙げられた原理の更なる変更を目論むことができるであろう。
実施例1−制御プローブアッセイ
254nmの波長の紫外線及び標準的なプレハイブリダイゼーション法を用いて、メンブレンを印刷し、後処理した。堆積した核酸の概要等は、図2Aから得られる。
後処理後、上記メンブレンの画像は、標識されたスポットのみを示している(図2B参照)。その後、50℃の温度で1時間、標識されたA16オリゴヌクレオチドを用いて上記メンブレンを培養した。標識として、Cy5を用いた。ハイブリダイゼーションバッファは、5×SSC、0.1%SDS、0.1mg/mlニシン精子DNAであった。ハイブリダイゼーションを50℃で1時間行った。ハイブリダイゼーションの後、2×SSC及び0.1%SDSを用いて短時間のリンスを行った。その後、メンブレンを乾燥させ、アレイを画像化した。
図2Cから導かれるように、ハイブリダイゼーションスポットははっきりと分かる。これは、DNAが堆積された全ての領域において固定化されたDNAが存在していることを意味している。また、堆積され、固定化されたDNAは、アデニン制御ハイブリダイゼーションプローブを用いてハイブリダイズすることができる。
これは、専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの区間に相補的な制御プローブに使用に基づいた方法が、例えばメンブレンの製造プロセスにおける品質制御手段に効果的に用いられ得ることを証明している。
実施例2−方法の非破壊性に関するメンブレンの試験
制御方法が非破壊的であることを証明するため、その後、制御プローブを除去するために実施例1において、すなわち、図2B及び図2Cに示されているような制御及び検査ハイブリダイゼーション法において用いられたメンブレンを加熱した。
捕捉プローブの各スポットから全ての制御オリゴヌクレオチドを除去するために加熱した直後のメンブレンの画像は、ハイブリダイゼーションスポットはもはや全くシグナルを有していないことを示している(図2D参照)。
実施例1において説明したような制御方法が、特異的ハイブリダイゼーション及び特異的オリゴヌクレオチドの結合に用いられるべきである固定化される核酸の配列に悪影響を与えていないことを証明するために、その後、10nMのスポット♯4に蒸着されたDNAに相補的である標識されたアンチセンス分子を用いて上記メンブレンを培養した。上記メンブレンは、50℃の温度で1時間培養した。ハイブリダイゼーションバッファは、5×SSC、0.1%SDS、0.1mg/mlニシン精子DNAであった。ハイブリダイゼーションの後、2×SSC及び0.1%SDSを用いて短時間のリンスを行った。その後、メンブレンを乾燥させ、アレイを画像化した。
メンブレンの培養後、ハイブリダイゼーションシグナルははっきりと分かる(図3参照;標識されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーション後のシグナルを示すスポットは太い四角形で印が付けられており、これは図2Aに示されているようなスポット♯4に対応している。)。
この結果は、固定化された核酸分子が一次制御ステップ中に損傷を受けず、特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドにより依然として結合されているという結論を与える。
実施例3−Tテイルを有する核酸の回収検査及び感度検査
感度、すなわち、単位時間当たりの捕捉された検体の数をリアルタイムハイブリダイゼーション試験(assay)において検査した。実験のためにナイトランN(登録商標)又はナイトランSPC(登録商標)のナイロンメンブレンを用いた。
上記試験は、Tテイルを有さない又はT16テイル(T16-tail)、すなわち16チミジンの区間を有する捕捉オリゴヌクレオチド(すなわち、固定化される堆積した核酸分子)を用いて行った。これらの実験は、メンブレンが固定され、ハイブリダイゼーション液がメンブレンを通ってポンプで汲み上げられる装置であるフローセル内で行った。図4Aにおいて、X軸にはサイクル数が示されており、これは時間と同等である(1サイクルは1分を要する。)。ハイブリダイゼーションは、相補的DNAを用いて行った。ハイブリダイゼーションバッファは、5×SSC、0.1%SDS、0.1mg/mlニシン精子DNAであった。温度は50℃に設定した。
図4Aから得られるように、T16テイルを有するオリゴヌクレオチドは、高められたハイブリダイゼーションシグナルを示しており、より高い回収率に寄与する。上記回収率は、固定化されたオリゴヌクレオチドと堆積したオリゴヌクレオチドとの比である。
この実験は、回収率及びその結果感度は、捕捉分子中の専ら1つの塩基の種類のヌクレオチドの数の増大に伴って高まることを示している。
図4Bから得られるように、塩基の種類(T又はA)及び塩基の数(2,4,8,16又は32)の関数としてT又はAを有する堆積した捕捉オリゴヌクレオチドの平均回収率を示す結果の正規化は、捕捉オリゴヌクレオチド中の専ら1つの塩基の種類の分子の数、すなわちTsの数が2から32まで増大すると、回収率が3〜4倍増大し得ることを明らかにする。
実施例4−固定化される核酸の特異性検査
固定化される核酸の特性、すなわち整合した標的とミスマッチ標的とを区別する能力を結合試験において検査した。
この試験は、0,4又は16Tを有する固定化される核酸(捕捉プローブ)を用いて行った。完全なマッチ、シングルミスマッチ((AG)mut)、及びダブルミスマッチ((AAGG)mut)を含む異なる捕捉プローブを用いた。ハイブリダイゼーションは、PCR産物を用いて行った。ハイブリダイゼーションは、メンブレンが固定され、ハイブリダイゼーション液がメンブレンを通ってポンプで汲み上げられる装置であるフローセル内で行った。温度は50℃に設定した。ハイブリダイゼーションは。1時間行った。ハイブリダイゼーションの後、溶融曲線を作成し、特異性を評価するために、バッファを2×SSCに変更し、温度は1℃/分で上昇させた。
異なる捕捉プローブに対しての相補的なシングルミスマッチ及びダブルミスマッチの脱結合曲線を示す図5から得られるように、増大する選択性が、ミスマッチプローブと比較して相補的プローブの高くなった溶融温度のために得られた。
実施例5−ハイブリダイゼーション強度に対する脱塩基部位の影響
完全なマッチ、シングルミスマッチ((AG)mut)及びダブルミスマッチ((AAGG)mut)を有するDNAからの核酸分子のハイブリダイゼーション強度に対する脱塩基部位の影響を結合試験において検査した。捕捉プローブは、0,2,4又は8個の脱塩基部位を含んでいた。上記結合試験は、ナイトランN(登録商標)のナイロンメンブレン上の相補的標的オリゴヌクレオチドを用いて行った。
図6から得られるように、ハイブリダイゼーション強度は、全ての検査されたシナリオ、すなわち、相補的標的オリゴヌクレオチド、ミスマッチ標的オリゴヌクレオチド又はダブルミスマッチ標的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにおいて脱塩基部位の数が大きくなるにしたがって増大した。影響は、特異的な固定化及び特異的なハイブリダイゼーションに用いられる配列のより効率的な分離に起因し、これは非特異的なハイブリダイゼーションを低減する。