JP2012255457A - 直動装置 - Google Patents

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和史 山本
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Abstract

【課題】転動体転走路と転動体との間で発生した微粒子が装置外に漏れ出る量を極力抑制できる、半導体製造装置や液晶表示パネル製造装置等のクリーン環境に好適な直動装置を提供する。
【解決手段】直動装置1において、1対のシール部材7の各々は、移動部材3に取り付けられた状態で、軌道部材2の軸方向に対して直交する方向に沿って切断した際に、軌道部材2に対して0.025〜0.15mmの範囲の隙間δを有する形状に形成され、転動体転走路5と転動体4との間には混和ちょう度250以下のグリースが塗布してある。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体製造装置や液晶表示パネル製造装置等のクリーン環境に用いられるボールねじやボールスプライン、リニアガイド等の直動装置に関する。
半導体のウエハーや液晶パネルは、超精密部品であることから非常に微細な塵埃等により不良となる。そのため、ウエハーや液晶パネルの製造ラインまたは製造ラインの各装置内は清浄度の高い空間にある。ところで、半導体製造装置や液晶パネル製造装置等の駆動部には、ボールねじやリニアガイドなどの直動装置が数多く使用されている。
このボールねじやリニアガイドなどの直動装置は、転動体転走部を外周面に有する軌道部材と、転動体転走部に対向する負荷転動体転走部を内周面に有し、軌道部材に対して相対的に移動可能な移動部材と、転動体転走部と負荷転動体転走部とにより形成される転動体転走路内に転動自在に装填された複数の転動体と、転動体転走路の始点と終点とを連通させて無端状の転動体通路を形成する転動体循環路とを備えている。
ボールねじを例に説明すると、軌道部材がねじ軸、移動部材がナット、転動体がボールとなる。ボールねじは、螺旋状のボール転走溝(転動体転走部)を外周面に有するねじ軸と、ねじ軸のボール転走溝(転動体転走部)と対向する負荷ボール転走溝(負荷転動体転走部)を内周面に有するナットと、ボール転走溝(転動体転走部)と負荷ボール転走溝(負荷転動体転走部)とにより形成される螺旋状のボール転走路(転動体転走路)内に転動自在に装填された複数のボールとを備えている。そして、ボールを介してねじ軸に螺合されているナットとねじ軸とを相対回転運動させると、ボールの転動を介してねじ軸とナットとが軸方向に相対移動するようになっている。そして、ボールねじには、ボール転走路の始点と終点とを連通させて無端状のボール通路(転動体通路)を形成するボール循環路(転動体循環路)が備えられている。
ところで、このボールねじにおいて、ナットとねじ軸とが相対回転運動するときには、ボールは回転方向と軸方向の合成力を受けて滑りを伴いながら転動するため、ボールとボール転走路との接触部では転がり摩擦と滑り摩擦とが同時に生じる。また、ボール同士が接触すると、隣接しているボール同士の回転方向が逆になるため、ボール間の相対滑り速度が2倍となって大きな摩擦力を生じる。このため、グリースや油などの潤滑剤をボール転走路と転動体との間に塗布し、前記摩擦力の軽減を図ってきた。
ここで、転動体の転がり運動によりボール転走路と転動体との間に塗布されたグリース中の油分が微粒子となり飛散する。この飛散した微粒子はウエハーや液晶パネルなどの製品にとって不良の原因となる。このため、半導体製造設備や液晶パネル製造装置等のような清浄度が必要とされる場合には、クリーン用のグリース、真空用のグリース(流体潤滑剤)や固体潤滑剤などが使用され、これにより、ボールとボール接触部にある潤滑剤から発生する微粒子(油分)の量を抑制している。
しかしながら、近年、半導体分野ではハイスループット(高生産性)による高速搬送や更なる清浄度の要求が高まり、現状のクリーン用のグリース、真空用のグリースや固体潤滑剤などを用いる手段で当該微粒子の発生を抑制したとしてもその抑制量が不充分なものとなってきた。つまり、近年、半導体分野では高集積化が進み、導電パターンがますます微細化してきている。前工程(半導体の製造工程の中で、シリコンを切断し、ウエハーを製作する工程からウエハー中に、回路を形成し、その回路の通電パターンを検査するまでの工程)における半導体ウエハーや液晶パネル上への微粒子の付着は製品不具合の原因となりますます敬遠される。さらに、高集積化に加えて、スループット(生産性)の向上を目的としたウエハー搬送装置の高速化に伴う微粒子量の増加に対する対策が不可欠となっているのである。
ここで、従来、真空環境で使用されるリニアガイドとして、例えば、図7に示すものが知られている(特許文献1参照)。
図7に示すリニアガイド101は、転動体転走部102aを有する軌道部材102と、転動体転走部102aに対向する負荷転動体転走部(図示せず)を含む転動体循環路を有し、軌道部材102に対して相対的に移動可能な移動部材103と、転動体循環路に配列される複数の転動体(図示せず)と、移動部材103に設けられ、軌道部材102に接触することなく、軌道部材102と移動部材103との間の隙間を塞ぐすきまシール104,105とを備えている。すきまシール104は、取付ねじ106により移動部材103の軸方向端部に取り付けられる。
そして、移動部材103の軸方向端部に取り付けられるすきまシール104は、交互に積層された薄板状の複数枚の第1及び第2プレート107,108と、これら第1及び第2プレート107,108が取り付けられる押えプレート109とで構成されている。すきまシール104を構成する第1及び第2プレート107,213は、軌道部材102に接触することなく、僅かな隙間を保ちながら案内レール軌道部材102に沿って移動する。この隙間について述べると、図8に示すように、第2プレート218と軌道部材102との隙間βは第1プレート107と軌道部材102との隙間αよりも大きく凹凸形状をなしている。このように、すきまシール104と軌道部材102との隙間を凹凸形状にすることにより、すきまシール104と軌道部材102との間を潤滑油が蒸発した気体が流れるとき、平面形状に形成する場合に比べてより大きな抵抗が生じることになり、直動案内装置内部の潤滑剤が気化し、リニアガイドの外部に漏れ出るのをより抑制することができる。
また、従来、クリーン環境で使用可能なボールねじとして、例えば、図9に示すものも知られている(特許文献2参照)。
図9に示すボールねじ201において、ナット203の凹部204内に、軸方向内側から順に、環状のスペーサ205、非接触シール206、環状のスペーサ205、非接触シール206を配置し、これらをボルト207で凹部204の端面204aに固定する。これにより、隣り合う非接触シール206とスペーサ205とねじ軸202で囲まれた空間208と、内側の非接触シール206とスペーサ205と凹部204の端面204aとで囲まれた空間209とが生じ、これら空間208,209がグリース溜まり空間となるものである。
このように、軸方向でナット203の最も外側に配置される外側シールを非接触シール206とし、グリース溜まり空間208,209を設けたため、外側シールを接触シールとしてグリース溜まり空間を設けた場合と比較して、接触シールの摩耗による発塵が軽減される。また、外側シールを非接触シールとしてグリース溜まり空間を設けない場合と比較して、グリースの飛散による発塵が軽減され、潤滑性能も良好となる。
国際公開第2006/054439号パンフレット 特開2010−169114号公報
しかしながら、図7に示すリニアガイド101及び図9に示すボールねじ201にあっては、以下の問題点があった。
即ち、図7に示すリニアガイド101の場合、すきまシール104を移動部材103に取り付けた状態で、図8に示す第1のプレート107と軌道部材102との間の隙間αは、第1プレート107が軌道部材102に最も接近した位置で0.25mm以下に設定される、とされている。そして、隙間αは小さければ小さいほど、通路に気体が流れるときの抵抗が大きくなるので、隙間αの目標値を0.05〜0.06mm程度あるいはそれ以下に設定するのが望ましい、とされている。
しかし、半導体分野で考えられている微粒子の粒子径はサブミクロンというオーダーであるため、0.25mmの隙間量は非常に大きい。また、隙間αの目標値を0.05〜0.06mm程度あるいはそれ以下に設定するのが望ましいとしているが、実際にシール単体と軌道部材との隙間を0.05mmあるいはそれ以下に設定すると、シール部材の取付けによっては(特にボールねじの場合)、シール部材が軌道部材に接触する可能性が高い。シール部材が軌道部材に接触すると、逆にそれによって微粒子が発生してしまうという問題がある。従って、移動部材やシール部材の加工上の公差を考慮すると、実際にはシール部材と軌道部材との隙間は0.05mm以上となり、半導体分野で考えられている微粒子が外部に漏れ出てしまう可能性がある。
また、図9に示すボールねじ201の場合、非接触シール206とねじ軸との隙間量がいかほどか明記されていない。このため、グリース溜まり空間208,209を設けたとしても、半導体分野で考えられている微粒子が外部に漏れ出てしまう可能性がある。
従って、本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、転動体転走路と転動体との間で発生した微粒子が装置外に漏れ出る量を極力抑制できる、半導体製造装置や液晶表示パネル製造装置等のクリーン環境に好適な直動装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明のうち請求項1に係る直動装置は、軸方向に延び、転動体転走部を外周面に有する軌道部材と、前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部を内周面に有し、前記軌道部材に対して相対的に移動可能な移動部材と、前記転動体転走部と前記負荷転動体転走部とにより形成される転動体転走路内に転動自在に装填された複数の転動体と、前記転動体転走路の始点と終点とを連通させて無端状の転動体通路を形成する転動体循環路と、前記移動部材の軸方向両端に取り付けられた1対のシール部材とを備えた直動装置において、前記1対のシール部材の各々は、前記移動部材に取り付けられた状態で、前記軌道部材の軸方向に対して直交する方向に沿って切断した際に、前記軌道部材に対して0.025〜0.15mmの範囲の隙間を有する形状に形成され、前記転動体転走路と前記転動体との間に混和ちょう度250以下のグリースを塗布したことを特徴としている。
また、本発明のうち請求項2に係る直動装置は、請求項1記載の直動装置において、前記軌道部材の軸方向に沿う前記1対のシール部材の各々の厚さが、0.1mm以上1.2mm未満であることを特徴としている。
更に、本発明のうち請求項3に係る直動装置は、請求項1又は2記載の直動装置において、前記1対のシール部材の各々の材質が、樹脂材料又は金属材料であることを特徴としている。
加えて、本発明のうち請求項4に係る直動装置は、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の直動装置において、前記1対シール部材の各々が、複数枚のシール体で構成され、該複数枚のシール体が、前記移動部材の軸方向に沿って前記各シール体の厚さ以上の間隔をあけたピッチで配置されることを特徴としている。
本発明のうち請求項1に係る直動装置によれば、1対のシール部材の各々は、移動部材に取り付けられた状態で、軌道部材の軸方向に対して直交する方向に沿って切断した際に、軌道部材に対して0.025〜0.15mmの範囲の隙間を有する形状に形成され、転動体転走路と転動体との間に混和ちょう度250以下のグリースを塗布したので、転動体を介して移動部材と軌道部材とが相対回転運動すると、軌道部材とシール部材との間に硬いグリース層(シール膜)が形成される。このため、シール部材単体で軌道部材に対して隙間を設ける場合と比較してシール部材と軌道部材との間の隙間が極めて小さくなり、転動体転走路と転動体との間に発生した微粒子を移動部材内に密封でき、転動体転走路と転動体との間で発生した微粒子が装置外に漏れ出る量を極力抑制できる。このため、半導体製造装置や液晶表示パネル製造装置等のクリーン環境に好適な直動装置とすることができる。
グリースとして混和ちょう度が250よりも大きいものを使用すると、グリースが軟らかく、軌道部材とシール部材との間にグリース層(シール膜)が形成されづらい。このため、グリースとして混和ちょう度が250以下のものを使用する。
また、混和ちょう度250以下のグリースを使用すると、シール部材と軌道部材との間の隙間が0から0.025mmに至るまで装置外に漏れ出る微粒子の量が減少し、当該隙間が0.025mmから0.15mmの状態までは装置外に漏れ出る微粒子の量がほぼ変動はなく、当該隙間が0.15mmよりも大きくなると隙間量の増加にほぼ比例して装置外に漏れ出る微粒子の量が増加する。このため、シール部材の各々を、移動部材に取り付けられた状態で、軌道部材の軸方向に直交する切断面で切断した際に、軌道部材に対して0.025〜0.15mmの範囲の隙間を有する形状に形成した。なお、シール部材と軌道部材との間の隙間が0.025mmよりも小さいと、シール部材等の加工精度や組立精度を考慮すると、シール部材が軌道部材に接触する可能性が高く、シール部材が軌道部材に接触すると、それによって微粒子が発生してしまうおそれがある。
また、本発明のうち請求項2に係る直動装置によれば、請求項1記載の直動装置において、前記軌道部材の軸方向に沿う前記1対のシール部材の各々の厚さが、0.1mm以上1.2mm未満であるので、直動装置をボールねじとし、軌道部材をねじ軸とした場合に、シール部材とねじ軸の溝底との間の隙間を適切な大きさに維持できるとともに、シール部材の加工が容易で適度な剛性が確保できシール性も安定する。つまり、シール部材の各々の厚さが1.2mmよりも厚いと、シール部材とねじ軸の溝底との間の隙間が0.15mmよりも大きくなってしまう。一方、シール部材の各々の厚さが0.1mmよりも薄いと、シール部材の加工が困難になるとともに、その剛性も低下してしまい、シール性が安定しない。
更に、本発明のうち請求項3に係る直動装置によれば、請求項1又は2記載の直動装置において、前記1対のシール部材の各々の材質が、樹脂材料又は金属材料であるので、機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性、機械加工性及びコスト面を考慮して、適宜、樹脂材料あるいは金属材料を選定すればよい。
また、本発明のうち請求項4に係る直動装置によれば、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の直動装置において、前記1対のシール部材の各々が、複数枚のシール体で構成され、該複数枚のシール体が、前記移動部材の軸方向に沿って前記各シール体の厚さ以上の間隔をあけたピッチで配置されるので、転動体転走路と転動体との間で発生した微粒子が装置外に漏れ出る量をより抑制することができる。
本発明に係る直動装置の実施形態を示す軌道部材の軸方向に沿って切断した断面図である。 図1における2−2線に沿って切断(軌道部材の軸方向に対して直交する方向に沿って切断)した状態の断面図である。 シール部材と軌道部材との間の隙間近辺を模式的に表した図である。 シール部材と軌道部材との間の隙間量と、装置外に漏れ出る微粒子の量との関係を示すグラフである。 シール部材の厚さの違いによるシール部材と軌道部材との間の隙間量の違いを示し、(A)はシール部材が厚い場合の模式図、(B)はシール部材が薄い場合の模式図である。 シール部材の取付け方法を示し、(A)はシール部材を止輪により移動部材に取り付ける場合の断面図、(B)はシール部材を止めねじにより移動部材に取り付ける場合の断面図である。 従来例の真空環境で使用されるリニアガイドを示す分解斜視図である。 図7に示すリニアガイドにおけるシール部材と軌道部材との間の隙間の状態を示す図である。 従来例のクリーン環境で使用可能なボールねじを示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る直動装置の実施形態を示す軌道部材の軸方向に沿って切断した断面図である。図2は、図1における2−2線に沿って切断(軌道部材の軸方向に対して直交する方向に沿って切断)した状態の断面図である。図3は、シール部材と軌道部材との間の隙間近辺を模式的に表した図である
図1に示す直動装置1は、半導体製造装置や液晶表示パネル製造装置等のクリーン環境に好適なボールねじであり、軌道部材(ねじ軸)2と、移動部材(ナット)3と、複数の移動体(ボール)とを備えている。
軌道部材2は、中心軸CLに沿って軸方向に延びる円筒形状で、その外周面2bに、所定のリードを有する転動体転走部(転動体転走溝)2aが形成されている。転動体転走部(転動体転走溝)2aの溝底には、逃げを設けないことが好ましい。
移動部材3は、略円筒状をなし、その内径は軌道部材2の外径よりも大きく形成されており、移動部材2に所定の間隙をもって外嵌している。移動部材3の内周面には、軌道部材2の転動体転走部2aと等しいリードを有し、転動体転走部2aに対向する負荷転動体転走部(負荷転動体転走溝)3aが形成されている。そして、軌道部材2の転動体転走部2aと移動部材3の負荷転動体転走部3aとによって断面略円形状の転動体転走路5が形成されている。この転動体転走路5内に複数の転動体4が転動可能に充填配置されている。移動部材3には、転動体転走路5に給脂するための給脂穴3bが設けられている。
また、直動装置1は、転動体転走路5の始点と終点とを連通させて無端状の転動体通路を形成する転動体循環路6を有している。この転動体循環路6は、移動部材3の内部に形成され、軸方向に沿って直線状に延びる断面円形状の循環路6aと、循環路6aの軸方向一端に設けられたすくい上げ部材6bに形成された転動体転走路5の始点に接続される通路6cと、循環路6aの軸方向他端に設けられたすくい上げ部材6bに形成された転動体転走路5の終点に接続される通路6cとからなっている。この転動体循環路6により、転動体転走路5の終点に向かって転がってくる転動体4を軌道部材2の径方向にすくい上げ、さらに、軌道部材2のねじ山を乗り越えさせ、転動体転走路5の始点に戻すことで転動体4を循環可能になっている。そして、この転動体転走路5及び転動体循環路6によって軌道部材2の外側に略無限循環路が形成される。これにより、移動部材3に対す軌道部材2の相対的な回転に伴って、複数の転動体4が無限循環路内を無限循環することによって、移動部材3が軌道部材2に対して軌道部材2の軸方向に直線運動することが可能となる。
また、移動部材3の軸方向両端には、1対のシール部材7が取り付けられ、この1対のシール部材7により移動部材3の内部からの発塵を抑制している。特に、直動装置1の微粒子(パーティクル)は、転動体4と転動体転走路5との間で、転動体4が公転するときの摩擦で潤滑剤(グリースや油)が巻き上げられることにより発生する。移動部材3内の微粒子をいかに移動部材3内に密封するかが清浄度向上には欠かせない。特に、半導体製造装置や液晶表示パネル製造装置等のクリーン環境に使用される直動装置においては重要である。
ここで、各シール部材7は、1枚のシール体で構成され、図2に示すように、移動部材3に取り付けられた状態で、軌道部材2の軸方向に対して直交する方向に沿って切断した際に、軌道部材2に対して0.025〜0.15mmの範囲の隙間δを有する形状に形成されている。即ち、各シール部材7は、円環状に形成され、内部には軌道部材2が貫通する貫通孔7aを有し、この貫通孔7aは、シール部材7が移動部材3に取り付けられた状態で、軌道部材2の軸方向に対して直交する方向に沿って切断した際に、軌道部材2に対して0.025〜0.15mmの範囲の隙間δを有する形状となっている。
ここで、前記隙間δは、図3に示すように、軌道部材2(図3の場合は、軌道部材2の転動体転走部2aの溝面)からシール部材7の先端のどちらか一方の隅角部までの距離のうち幾何学的に最小となる距離を意味する。
このように、シール部材7と軌道部材2との間の隙間δが0.025mm以上なので、シール部材7が軌道部材2に接触せず、シール部材7自身からの微粒子は発生しない。シール部材7と軌道部材2との間の隙間δが0.025mmよりも小さいと、シール部材7等の加工精度や組立精度を考慮すると、シール部材7が軌道部材2に接触する可能性が高く、シール部材7が軌道部材2に接触すると、それによって微粒子が発生してしまうおそれがある。
また、直動装置1において、転動体転走路5と転動体4との間に混和ちょう度250以下のグリースが塗布されている。このグリースは、例えば、クリーン用のグリースあるいは真空用のグリースを用いるのが好適である。このように、転動体転走路5と転動体4との間に混和ちょう度250以下のグリースを塗布すると、転動体4を介して移動部材3と軌道部材2とが相対回転運動した際に、図3に示すように、軌道部材2とシール部材7との間に硬いグリース層(シール膜)Gが形成される。これにより、シール部材7単体で軌道部材2に対して隙間δを設ける場合と比較してシール部材7と軌道部材2との間の隙間が図3に示すようにグリース層Gの分だけ小さくなり、Δとなる。これにより、転動体転走路5と転動体4との間に発生した微粒子を移動部材3内に密封でき、転動体転走路5と転動体4との間で発生した微粒子が装置外に漏れ出る量を極力抑制できる。このため、半導体製造装置や液晶表示パネル製造装置等のクリーン環境に好適な直動装置1とすることができる。
グリースとして混和ちょう度が250よりも大きいものを使用すると、グリースが軟らかく、軌道部材2とシール部材7との間にグリース層(シール膜)Gが形成されづらい。このため、グリースとして混和ちょう度が250以下のものを使用する。
次に、シール部材7と軌道部材2との間の隙間δ量と、装置外に漏れ出る微粒子の量との関係を、図4を参照して説明する。図4は、シール部材と軌道部材との間の隙間量と、装置外に漏れ出る微粒子の量との関係を示すグラフである。
図4には、混和ちょう度280のグリースを用いて当該隙間量を0mm、0.025mm、0.05mm、0.1mm、0.15mm、0.3mm、0.5mmにした場合と、混和ちょう度250のグリースを用いて当該隙間量を0mm、0.025mm、0.05mm、0.1mm、0.15mm、0.3mm、0.5mmにした場合の、当該隙間量と装置外に漏れ出る微粒子の量との関係が示されている。
図4を参照すると、混和ちょう度280のグリースでは、混和ちょう度250のグリースよりも装置外に漏れ出る微粒子の量が多く、当該隙間量を大きくすると、比例して微粒子の量が増加している。これに対して、混和ちょう度250のグリースでは、当該隙間量が0から0.025mmに至るまで装置外に漏れ出る微粒子の量が減少し、当該隙間が0.025mmから0.15mmの状態までは装置外に漏れ出る微粒子の量がほぼ変動はなく、当該隙間が0.15mmよりも大きくなると、混和ちょう度280のグリースと同様に、隙間量の増加にほぼ比例して装置外に漏れ出る微粒子の量が増加している。この傾向は、混和ちょう度250のグリースのみならず、混和ちょう度250以下のグリースを用いた場合も同様の結果が得られている。このため、シール部材7の各々を、移動部材3に取り付けられた状態で、軌道部材2の軸方向に直交する切断面で切断した際に、軌道部材2に対して0.025〜0.15mmの範囲の隙間δを有する形状に形成した。
次に、軌道部材2の軸方向に沿う各シール部材7の厚さt(図3参照)について、図5を参照して説明する。図5は、シール部材の厚さの違いによるシール部材と軌道部材との間の隙間量の違いを示し、(A)はシール部材が厚い場合の模式図、(B)はシール部材が薄い場合の模式図である。
図5(A)、(B)において、軌道部材2の転動体転走部(転動体転走溝)2aは、曲率を持った2つの円弧で繋いだ形状であり、溝底で2つの円弧が繋がれている。シール部材7の厚さtを図5(A)に示すように厚くしてt1とすると、シール部材7と転動体転走部2aとの接触を回避するため、シール部材7と溝底までの距離が長くなり、シール部材7と軌道部材2との間の隙間量がδ1と大きくなる。一方、シール部材の厚さtを図5(B)に示すように薄くしてt2とすると、シール部材7の加工が困難になるとともに剛性が弱くなりシール性が安定しない。このため、シール部材7の厚さtを0.1mm以上1.2mm未満とした。これにより、直動装置1をボールねじとし、軌道部材2をねじ軸とした場合に、シール部材とねじ軸の溝底との間の隙間を適切な大きさに維持できるとともに、シール部材の加工が容易で適度な剛性が確保できシール性も安定する。シール部材7の各々の厚さtが1.2mmよりも厚いと、シール部材とねじ軸の溝底との間の隙間が0.15mmよりも大きくなってしまう。一方、シール部材7の各々の厚さtが0.1mmよりも薄いと、シール部材の加工が困難になるとともに、その剛性も低下してしまい、シール性が安定しない。
また、各シール部材7の材質は、機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性、機械加工性及びコスト面で優れたポリアセタールなどの樹脂材料または金属材料を使用する。各シール部材7の材質は、非吸水性や寸法安定性に優れたものが好ましい。
次に、各シール部材7の移動部材3への取付け方法について図6を参照して説明する。図6は、シール部材の取付け方法を示し、(A)はシール部材を止輪により移動部材に取り付ける場合の断面図、(B)はシール部材を止めねじにより移動部材に取り付ける場合の断面図である。
図6(A),(B)に示すように、1対のシール部材7は、移動部材3の軸方向両端部に取り付けられ、各シール部材7は移動部材3の軸方向端部に、図6(A)に示すように、止輪8で固定されるか、あるいは図6(B)に示すように、複数の止めねじ9により固定される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、直動装置1としては、ボールねじのみならず、リニアガイドやボールスプライン等に適用してもよい。リニアガイドに適用した場合には、軌道部材は案内レール、移動部材はスライダである。また、ボールスプラインに適用した場合には、軌道部材は円筒形状の軌道部材が用いられ、移動部材にはボールスプラインナットが用いられる。
また、1対のシール部材7の各々が1枚のシール体で構成されている例について説明したが、これに限定されず、1対のシール部材7の各々が、複数枚のシール体で構成され、該複数枚のシール体を、移動部材2の軸方向に沿って各シール体の厚さ以上の間隔をあけたピッチで配置してもよい。この場合、転動体転走路5と転動体4との間で発生した微粒子が装置外に漏れ出る量をより抑制することができる。
1 直動装置
2 軌道部材
2a 転動体転走部
2b 軌道部材の外周面
3 移動部材
3a 負荷転動体転走部
3b 給脂穴
4 転動体
5 転動体転走路
6 転動体循環路
6a 循環路
6b すく上げ部材
6c通路
7 シール部材
7a 貫通孔
8 止輪
9 止めねじ
δ 隙間
t シール部材の厚さ
G グリース層

Claims (4)

  1. 軸方向に延び、転動体転走部を外周面に有する軌道部材と、前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部を内周面に有し、前記軌道部材に対して相対的に移動可能な移動部材と、前記転動体転走部と前記負荷転動体転走部とにより形成される転動体転走路内に転動自在に装填された複数の転動体と、前記転動体転走路の始点と終点とを連通させて無端状の転動体通路を形成する転動体循環路と、前記移動部材の軸方向両端に取り付けられた1対のシール部材とを備えた直動装置において、
    前記1対のシール部材の各々は、前記移動部材に取り付けられた状態で、前記軌道部材の軸方向に対して直交する方向に沿って切断した際に、前記軌道部材に対して0.025〜0.15mmの範囲の隙間を有する形状に形成され、前記転動体転走路と前記転動体との間に混和ちょう度250以下のグリースを塗布したことを特徴とする直動装置。
  2. 前記軌道部材の軸方向に沿う前記1対のシール部材の各々の厚さが、0.1mm以上1.2mm未満であることを特徴とする請求項1記載の直動装置。
  3. 前記1対のシール部材の各々の材質が、樹脂材料又は金属材料であることを特徴とする請求項1又は2記載の直動装置。
  4. 前記1対シール部材の各々が、複数枚のシール体で構成され、該複数枚のシール体が、前記移動部材の軸方向に沿って前記各シール体の厚さ以上の間隔をあけたピッチで配置されることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の直動装置。
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