JP2012255421A - 液圧回転機 - Google Patents

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和朗 横山
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Abstract

【課題】厳しい運転状況下でも十分な潤滑性を確保することができ、しかも、加工コストを抑制することもできる液圧回転機を提供する。
【解決手段】シリンダ10の内周面10Bには、ショットピーニング処理を施すことにより多数の第1凹陥部21を形成する。この第1凹陥部21は、その長さ方向一側が傾斜の緩やかな緩斜面21Aとなり、長さ方向他側が傾斜の急な急斜面21Bとなるように形成する。さらに、各第1凹陥部21内には、該各第1凹陥部21に比較して小さな第2凹陥部23を複数個形成する。これら各第2凹陥部23の容積分、各第1凹陥部21内全体に保持できる作動油の量を多くすることができ、十分な潤滑性を確保することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えばアキシャルピストン式、ラジアルピストン式の油圧ポンプ、油圧モータ等として好適に用いられる液圧回転機に関する。
一般に、例えば油圧ショベル等の建設機械には、油圧機器の油圧源として用いられる油圧ポンプ、走行用または旋回用の駆動源として用いられる油圧モータ等の液圧回転機が搭載されている。これらの液圧回転機は、例えば斜板式、斜軸式またはラジアルピストン式の液圧回転機等により構成されている。
この種の従来技術による液圧回転機は、ケーシングと、該ケーシング内に回転可能に設けられた回転軸と、該回転軸と一体に回転するように前記ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダを有するシリンダブロックと、該シリンダブロックの各シリンダ内に往復動可能に挿嵌された複数のピストンとにより大略構成されている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、特許文献1による液圧回転機は、各シリンダの内周面と各ピストンの外周面とのうちの少なくとも一方の周面に、該周面を被加工面として多数の微小な凹陥部を形成している。この場合、これら各凹陥部は、その長さ方向一側が傾斜の緩やかな緩斜面となり、長さ方向他側が傾斜の急な急斜面となるように形成している。これにより、各凹陥部内に保持(貯溜)される作動油の油膜によって、シリンダの内周面とピストンの外周面との間でくさび膜効果(流体軸受としての機能)を発揮させることができる。この結果、ピストンの直進性を確保することができ、シリンダとピストンの耐摩耗性および耐かじり性を向上することができる。
一方、エンジンのシフトフォークの摺動部に、うねり幅が200ないし400μmのうねりと0.5ないし2μmのマイクロディンプルとを設けると共に、その表面を硬質皮膜により覆った構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2008−51072号公報 特開2001−280494号公報
上述した特許文献1による従来技術では、例えばピストンが高速・高負荷で往復動するような厳しい運転状況下でも、シリンダとピストンとの間で良好な潤滑状態(潤滑性能)を確保できるようにするためには、各凹陥部の容積を大きくし、これら各凹陥部内で保持(貯溜)できる作動油の量を多くする(保油性を向上させる)ことが好ましい。一方、凹陥部内の作動油によるくさび膜効果を十分に発揮させるためには、ピストンの進行方向(荷重方向)に向けて凹陥部の深さを浅くすることが好ましい。このため、各凹陥部内に保持できる作動油の量を多くすべく、各凹陥部を単に深くするだけでは、これら各凹陥部内の作動油の油膜によるくさび膜効果が低下する虞がある。
一方、特許文献2による従来技術では、摺動部にマイクロディンプルを設ける構成としているが、このマイクロディンプルでは作動油を十分に保持することができない虞がある。しかも、摺動面は硬質皮膜で覆われているため、摺動面の面粗さ(面粗度)を高精度に規制しないと、相手部材の摩耗を増大させる虞がある。このため、硬質皮膜を形成することと面粗さを高度に規制することとが相まって、加工コストが過度に嵩むという問題もある。
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、厳しい運転状況下でも十分な潤滑性を確保することができ、しかも、加工コストを抑制することもできる液圧回転機を提供することを目的としている。
本発明による液圧回転機は、ケーシングと、該ケーシング内に回転可能に設けられた回転軸と、該回転軸と一体に回転するように前記ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダを有するシリンダブロックと、該シリンダブロックの各シリンダ内に往復動可能に挿嵌された複数のピストンとを備え、前記各シリンダの内周面と前記各ピストンの外周面とのうちの少なくとも一方の周面には、該周面を被加工面として多数の第1凹陥部を形成し、該各第1凹陥部は、その長さ方向一側が傾斜の緩やかな緩斜面となり、長さ方向他側が傾斜の急な急斜面として形成してなる。
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記各第1凹陥部内には、該各第1凹陥部に比較して小さな第2凹陥部を複数個形成する構成としたことにある。
請求項2の発明は、前記各第2凹陥部は、その長さ方向一側が傾斜の緩やかな緩斜面となり、長さ方向他側が傾斜の急な急斜面として形成したことにある。
請求項3の発明は、前記各第1凹陥部の長さ寸法は、50μm以上で100μm以下の範囲内に設定したことにある。
請求項4の発明は、前記各第2凹陥部の長さ寸法は、10μm以上で20μm以下の範囲内に設定したことにある。
請求項5の発明は、前記各第1凹陥部と各第2凹陥部は、それぞれショットピーニング処理を施すことにより形成したことにある。
請求項1の発明によれば、厳しい運転状況下でも十分な潤滑性を確保することができ、しかも、加工コストを抑制することもできる。
即ち、各第1凹陥部は、その長さ方向一側が傾斜の緩やかな緩斜面となり長さ方向他側が傾斜の急な急斜面として形成しているので、これら各第1凹陥部内に保持(貯溜)される作動油の油膜によって、シリンダの内周面とピストンの外周面との間でくさび膜効果(流体軸受としての機能)を発揮させることができる。しかも、各第1凹陥部内には、該各第1凹陥部に比較して小さな第2凹陥部を複数個形成する構成としているので、該各第2凹陥部の容積分、各第1凹陥部内全体に保持できる作動油の量を多くすることができる(保油性を向上できる)。
これにより、くさび膜効果(流体軸受としての負荷容量)を向上することと保油性を確保することとを高い次元で両立することができ、ピストンが高速・高負荷で往復動するような厳しい運転状況でも、良好な潤滑性(潤滑性能)を確保することができる。この結果、液圧回転機の負荷容量、耐久性を高めることができ、例えば液圧回転機が搭載される各種機器の性能の向上、信頼性の確保を図ることができる。
さらに、上述した従来技術のような硬質皮膜を形成しなくても、各第1凹陥部と各第2凹陥部とにより潤滑性を確保することができる。この場合、各第1凹陥部と各第2凹陥部は、例えばショットピーニング処理を施すことにより形成することができるため、硬質皮膜を形成する従来技術と比較して加工コストを抑制することができる。
請求項2の発明によれば、各第2凹陥部は、その長さ方向一側が傾斜の緩やかな緩斜面となり長さ方向他側が傾斜の急な急斜面として形成しているので、くさび膜効果をより一層高めることができる。
請求項3の発明によれば、各第1凹陥部の長さ寸法を50μm以上で100μm以下の範囲内に設定しているので、これら各第1凹陥部内に保持される作動油によって、十分なくさび膜効果を発揮することができる。
請求項4の発明によれば、各第2凹陥部の長さ寸法を10μm以上で20μm以下の範囲内に設定しているので、第2凹陥部により得られる容積の増大と第1凹陥部により得られるくさび膜効果との関係を最適化することができる。
請求項5の発明によれば、各第1凹陥部と各第2凹陥部とをそれぞれショットピーニング処理を施すことにより形成するので、各第1凹陥部と各第2凹陥部とを低コストで形成することができる。
本発明の第1の実施の形態による斜板式の油圧ポンプを示す縦断面図である。 シリンダブロック、ピストン等を第1凹陥部と第2凹陥部とを誇張して示す図1中の(II)部の拡大断面図である。 シリンダ、ピストン等を第1凹陥部と第2凹陥部とを誇張して示す図2中の(III)部に相当する拡大断面図である。 シリンダの内周面を第1凹陥部と第2凹陥部とを誇張して示す図3中の矢示IV−IV方向からみた拡大図である。 シリンダの内周面に第1凹陥部を形成するためのショットピーニング加工を施している状態を誇張して示す図3と同方向からみた拡大断面図である。 シリンダの内周面に第2凹陥部を形成するためのショットピーニング加工を施している状態を誇張して示す図3と同方向からみた拡大断面図である。 本発明の第2の実施の形態による第2凹陥部を形成するためのショットピーニング加工を施している状態を誇張して示す図6と同様な位置の拡大断面図である。 本発明の変形例によるシリンダ、ピストン等を第1凹陥部と第2凹陥部とを誇張して示す図3と同様な位置の拡大断面図である。
本発明の実施の形態に適用される液圧回転機は、斜軸式液圧回転機、斜板式液圧回転機等のアキシャルピストン式液圧回転機、ラジアルピストン式液圧回転機があるが、以下、一例として、斜板式油圧ポンプを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は液圧回転機としての斜板式油圧ポンプ(以下、油圧ポンプ1という)で、該油圧ポンプ1は、後述のケーシング2、回転軸6、シリンダブロック9、複数のピストン11、シュー13、弁板12および斜板14等により構成されている。
2は油圧ポンプ1の外殻をなす中空なケーシングで、該ケーシング2は、有底筒状に形成されたケーシング本体3と、該ケーシング本体3の開口部3A側を施蓋する蓋体4と、ケーシング本体3の底部3B側に取付けられたフランジ部材5とにより大略構成されている。ここで、ケーシング本体3の底部3Bの中央部とフランジ部材5の中央部には、それぞれ軸挿通孔3C,5Aが設けられている。また、ケーシング本体3の底部3Bには、後述する回転軸6の軸中心に対して傾斜した傾斜面3Dが形成されている。
一方、蓋体4の中心部には、軸挿通孔3C,5Aと同心状に有底の軸収容穴4Aが設けられている。また、蓋体4には、一対の給排通路4B(一方のみ図示)が設けられ、これらの給排通路4Bは、作動油の吸込側,吐出側の配管(いずれも図示せず)等に接続されている。
6はケーシング2内に回転可能に設けられた回転軸で、該回転軸6の一端側はケーシング本体3の軸挿通孔3Cとフランジ部材5の軸挿通孔5Aとに挿通され、フランジ部材5の軸挿通孔5Aに設けられた軸受7によって回転可能に支持されている。また、回転軸6の他端側は蓋体4の軸収容穴4A内へと延び、該軸収容穴4Aに設けられた軸受8によって回転可能に支持されている。
そして、回転軸6の軸方向の中間部には軸スプライン部(雄スプライン部)6Aが設けられ、この軸スプライン部6Aには、後述のシリンダブロック9、リテーナガイド16が挿嵌(スプライン結合)されている。また、回転軸6は、フランジ部材5の軸挿通孔5Aから軸方向に突出する突出端6B側が、例えばディーゼルエンジン等の原動機(図示せず)により回転駆動されるものである。
9は回転軸6と一体に回転するようにケーシング2内に設けられたシリンダブロック(ロータ)で、該シリンダブロック9は、全体として段付き円筒状に形成され、その内周側は回転軸6の軸スプライン部6Aにスプライン結合されている。ここで、シリンダブロック9は、その一方の端面が後述の斜板14に対向して配置され、他方の端面は後述の弁板12に摺接するものである。そして、シリンダブロック9は、後述のシリンダ10を有し、これら各シリンダ10内には後述のピストン11が挿嵌されている。
10はシリンダブロック9に形成された複数(通常は奇数個)のシリンダで、該各シリンダ10は、回転軸6を中心にしてシリンダブロック9の周方向に一定の間隔をもって離間し、夫々がシリンダブロック9の軸方向に延びるものである。そして、各シリンダ10は、後述の斜板14と対向する一端側がシリンダブロック9の端面に開口している。また、シリンダ10の他端側には、シリンダポート10Aが形成され、これら各シリンダポート10Aは、後述の弁板12の給排ポート12Aを介して蓋体4の給排通路4Bに対して間欠的に連通,遮断されるものである。さらに、各シリンダ10の内周面10Bには、後述の第1凹陥部21と第2凹陥部23が形成されている。
11はシリンダブロック9の各シリンダ10内に往復動可能に挿嵌された複数のピストン(2個のみ図示)で、これら各ピストン11は、シリンダブロック9が一回転する間にシリンダ10内を往復動するものである。ここで、各ピストン11の軸方向の一端側はシリンダ10から突出し、このシリンダ10から突出したピストン11の突出端部には後述のシュー13が装着される構成となっている。そして、各ピストン11は、往復動に伴って、後述の弁板12側から各シリンダ10内に作動油を吸込みつつ、これを高圧の圧油として吐出させるものである。
12はケーシング2の蓋体4とシリンダブロック9との間に設けられた弁板で、該弁板12は、シリンダブロック9の各シリンダ10と間欠的に連通する一対の給排ポート12A(一方のみ図示)を有している。そして、弁板12の各給排ポート12Aは、蓋体4に設けられた給排通路4Bに連通する構成となっている。
13は各ピストン11の突出端部に揺動可能に装着されたシューで、該各シュー13は、ピストン11によって後述する斜板14の摺動面14Aに押付けられることにより、シリンダブロック9の回転に伴って当該摺動面14A上を環状の軌跡を描くように摺動するものである。
14はシリンダブロック9と対向してケーシング2内に設けられた斜板を示している。この斜板14は、その中心部に回転軸6を挿通した状態で、ケーシング本体3の底部3Bとシリンダブロック9との間に斜めに(底部3Bの傾斜面3Dに沿って傾斜した状態で)配置されている。そして、斜板14は、シリンダブロック9と対向する面が摺動面14Aとなり、この摺動面14A上を各シュー13が摺動する構成となっている。
15は各シュー13と各ピストン11の突出端部との間に位置して回転軸6に挿通されたリテーナで、該リテーナ15は、各シュー13を斜板14の摺動面14Aに当接させるものである。ここで、リテーナ15は、全体として環状な板体からなり、その中心部には軸挿通孔15Aが形成され、該軸挿通孔15Aの内周面には後述するリテーナガイド16の外周面が当接する構成となっている。また、リテーナ15のうち軸挿通孔15Aの周囲には、一定の角度間隔をもって複数個のシュー保持孔15B(1個のみ図示)が設けられ、該各シュー保持孔15Bによって、各シュー13を斜板14の摺動面14Aに当接した状態に保持する構成となっている。
16はリテーナ15とシリンダブロック9との間に位置して回転軸6に挿嵌されたリテーナガイドで、該リテーナガイド16は、リテーナ15の内周面に当接する外周面を有し、この外周面によってリテーナ15を斜板14に向けて押圧するものである。ここで、リテーナガイド16の内周側は、回転軸6の軸スプライン部6Aに軸方向に移動可能にスプライン結合され、リテーナガイド16とシリンダブロック9との間には、複数のばね(図示せず)が設けられている。そして、リテーナガイド16は、シリンダブロック9と一体に回転しつつ、各ばねのばね力によりリテーナ15を斜板14に向けて常時押圧する構成となっている。
次に、シリンダ10の内周面10Bに形成された第1凹陥部21と第2凹陥部23について説明する。なお、これら第1凹陥部21と第2凹陥部23は、シリンダ10の内周面10Bに後述するショットピーニング処理を施すことにより微細な凹陥として形成されるものである。そこで、図2ないし図6(後述する図7および図8も同様)では、各第1凹陥部21、各第2凹陥部23、ショットピーニング処理に用いる硬質球状粒子(ショット材)22,24等の大きさ、形状を誇張して示している。
21はシリンダ10の内周面10Bに略均一に形成された多数の第1凹陥部を示している。これら各第1凹陥部21は、その長さ方向一側(シリンダポート10A側、ピストン11の進行方向吐出側)が傾斜の緩やかな緩斜面21Aとなり、長さ方向他側(シリンダポート10Aと反対側、ピストン11の進行方向吸込側)が傾斜の急な急斜面21Bとなるように形成されている。
各第1凹陥部21は、図3および図4に示すように、その長さ寸法A1(シリンダ10の長さ方向に関する寸法A1)を50μm以上で100μm以下の範囲内に設定している。また、その幅寸法B1(シリンダ10の周方向に関する寸法B1)は、10μm以上で20μm以下の範囲内に設定している。さらに、その深さ寸法C1(シリンダ10の径方向に関する寸法C1)は、数μm程度(例えば3μm以上で8μm以下の範囲内)に設定している。
このために、第1凹陥部21は、図5に示すように、各シリンダ10の内周面10Bを被加工面としてショットピーニング処理を施すことにより形成している。具体的には、各第1凹陥部21は、図示しない噴射ノズルを用いて例えば金属製の硬質球状粒子(ショット材)22を圧縮空気と共に高速で噴出させ、これらの硬質球状粒子22をシリンダ10の内周面10Bに連続的に噴射して衝突させる。
このとき、硬質球状粒子22は、例えば外径(直径)D1が100μm以上で1mm以下のスチールショット材等を用いることができる。そして、このような硬質球状粒子22をシリンダ10の内周面10Bに対し斜めに、例えば30度以上60度未満、より好ましくは略45度の角度θ1をもって入射(衝突)させることにより、各第1凹陥部21に緩斜面21Aと急斜面21Bとが形成されるようにしている。
このように第1凹陥部21は緩斜面21Aと急斜面21Bとを有する構成としているので、これら各凹陥部21内に保持(貯溜)される作動油の油膜にくさび膜効果(流体軸受としての機能)を発揮させることができる。これにより、ピストン11の直進性を確保することができ、シリンダ10とピストン11の耐摩耗性および耐かじり性を向上することができる。
23は各第1凹陥部21内に複数個形成された第2凹陥部で、該各第2凹陥部23は、各第1凹陥部21に比較して小さなものである。具体的には、各第2凹陥部23は、図3および図4に示すように、その長さ寸法A2(シリンダ10の長さ方向に関する寸法A2)を10μm以上で20μm以下の範囲内に設定している。また、その幅寸法B2(シリンダ10の周方向に関する寸法B2)は、2μm以上で4μm以下の範囲内に設定している。さらに、その深さ寸法C2(シリンダ10の径方向に関する寸法C2)は、1μm以下(例えば0.5μm以上で1μm以下の範囲内)に設定している。
各第2凹陥部23は、第1凹陥部21と同様に、その長さ方向一側(シリンダポート10A側、ピストン11の進行方向吐出側)が傾斜の緩やかな緩斜面23Aとなり、長さ方向他側(シリンダポート10Aとは反対側、ピストン11の進行方向吸込側)が傾斜の急な急斜面23Bとなるように形成されている。
このために、第2凹陥部23は、各シリンダ10の内周面10Bに第1凹陥部21を形成した後、図6に示すように、第1凹陥部21を形成するための硬質球状粒子22よりも小さい硬質球状粒子(ショット材)24を用いて、各シリンダ10の内周面10Bにショットピーニング処理を施すことにより形成している。
硬質球状粒子24は、例えば外径(直径)D2が10μm以上で100μm未満のステンレスショット材やガラスショット材等を用いることができる。そして、このような硬質球状粒子24をシリンダ10の内周面10Bに対し斜めに、例えば第1凹陥部21を形成する硬質球状粒子22の衝突角度θ1と略同様に、30度以上60度未満、より好ましくは略45度の角度θ2をもって入射(衝突)させることにより、各第2凹陥部23に緩斜面23Aと急斜面23Bとが形成されるようにしている。
このような第2凹陥部23が複数個形成された各第1凹陥部21は、各第2凹陥部23の容積分、第1凹陥部21内全体に保持(貯溜)される作動油の量を多くすることができる(保油性を向上できる)。これにより、作動油によるくさび膜効果(流体軸受としての負荷容量)を向上できると共に保油性を向上することができる。
次に、第1凹陥部21と第2凹陥部23を形成する工程を含むシリンダブロック9全体の製造工程(製造方法)について説明する。
シリンダブロック9は、例えば球状黒鉛鋳鉄(FCD材)等の鉄系材料からなるもので、まず、鋳造手段により、完成後のシリンダブロック9と略同形状の鋳物ブロック(図示せず)を形成する(鋳造工程)。そして、この鋳物ブロックに、必要な切削加工、研削加工を施してから(切削・研削工程)、続いて、ガス軟窒化処理等の熱処理を施す(熱処理工程)。これにより、所定寸法のシリンダブロック中間体9′を形成する。
このようにシリンダブロック中間体9′を形成したならば、シリンダブロック中間体9′のシリンダ10の内周面10Bに第1凹陥部21と第2凹陥部23を形成する。この場合、まず、図5に示すように、シリンダ10の内周面10Bに第1凹陥部21を形成するためのショットピーニング処理を施す(第1ショットピーニング工程)。このショットピーニング処理は、外径D1の硬質球状粒子22を、シリンダ10の内周面10Bに対し角度θ1をもって斜めに衝突させることにより行う。これにより、シリンダ10の内周面10Bに、緩斜面21Aと急斜面21Bとを有する第1凹陥部21が形成される。
このように第1凹陥部21を形成したならば、図6に示すように、シリンダ10の内周面10Bに第2凹陥部23を形成するためのショットピーニング処理を施す(第2ショットピーニング工程)。このショットピーニング処理は、外径D2の硬質球状粒子24を、シリンダ10の内周面10Bに対し角度θ2をもって斜めに衝突させることにより行う。これにより、第1凹陥部21内に、緩斜面23Aと急斜面23Bとを有する第2凹陥部23が形成され、シリンダブロック9が完成する。
本実施の形態による油圧ポンプ1は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
エンジン等の原動機によって回転軸6を回転駆動すると、ケーシング2内でシリンダブロック9が回転軸6と一体に回転される。これにより、斜板14の摺動面14Aに沿って複数のシュー13がリング状の円軌跡を描くように摺動変位し、これに伴って夫々のピストン11がシリンダブロック9の各シリンダ10内で往復動を繰返すようになる。
このため、シリンダブロック9が1回転する間に、各ピストン11はシリンダ10内を上死点から下死点に向けて摺動変位する吸入行程と、下死点から上死点に向けて摺動変位する吐出行程とを繰返す。そして、ピストン11の吸入行程では、例えば蓋体4の給排通路4B側からシリンダ10内に作動油を吸込み、ピストン11の吐出行程では、ピストン11が各シリンダ10内の油液を高圧の圧油として別の給排通路側から吐出させるものである。
ところで、ピストン11がシリンダ10内を往復動しているとき、シリンダ10の内周面10Bに形成された第2凹陥部23を含む第1凹陥部21内には、作動油が保持(貯溜)される。ここで、第1凹陥部21は、その長さ方向一側が傾斜の緩やかな緩斜面21Aとなり長さ方向他側が傾斜の急な急斜面21Bとして形成されているので、各第1凹陥部21に保持される作動油の油膜によって、シリンダ10の内周面10とピストンの外周面との間でくさび膜効果(流体軸受としての機能)を発揮させることができる。これにより、ピストン11の直進性を確保することができ、シリンダ10とピストン11の耐摩耗性および耐かじり性を向上することができる。
しかも、本実施の形態によれば、各第1凹陥部21内には、該各第1凹陥部21に比較して小さな第2凹陥部23を複数個形成する構成としているので、該各第2凹陥部23の容積分、各第1凹陥部21内全体に保持できる作動油の量を多くすることができる(保油性を向上できる)。これにより、くさび膜効果(流体軸受としての負荷容量)を向上することと保油性を確保することとを高い次元で両立することができ、ピストン10が高速・高負荷で往復動するような厳しい運転状況でも、良好な潤滑性(潤滑性能)を確保することができる。この結果、油圧ポンプ1の負荷容量、耐久性を高めることができ、例えば油圧ポンプ1が搭載される油圧ショベル等の各種機器の性能の向上、信頼性の確保を図ることができる。
さらに、本実施の形態によれば、従来技術のような硬質皮膜を形成しなくても、各第1凹陥部21と各第2凹陥部23とにより潤滑性を確保することができる。そして、これら各第1凹陥部21と各第2凹陥部23は、ショットピーニング処理を施すことにより低コストで形成することができるため、硬質皮膜を形成する従来技術と比較して加工コストを抑制することができる。
本実施の形態によれば、各第2凹陥部23は、その長さ方向一側が傾斜の緩やかな緩斜面23Aとなり長さ方向他側が傾斜の急な急斜面23Bとして形成しているので、くさび膜効果(流体軸受としての負荷容量)をより一層高めることができる。
本実施の形態によれば、各第1凹陥部21の長さ寸法を50μm以上で100μm以下の範囲内に設定しているので、これら各第1凹陥部21内に保持(貯溜)される作動油によって、十分なくさび膜効果を発揮することができる。
しかも、各第2凹陥部23の長さ寸法は、10μm以上で20μm以下の範囲内に設定しているので、第2凹陥部23により得られる容積の増大と第1凹陥部21により得られるくさび膜効果との関係を最適化することができる。
次に、図7は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、第2凹陥部を形成する硬質球状粒子をシリンダの内周面に対し略直角に衝突させる構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、31は各第1凹陥部21内に複数個形成された第2凹陥部で、該各第2凹陥部31は、上述した第1の実施の形態の第2凹陥部23に代えて、本実施の形態で形成されるものである。ここで、第2凹陥部31は、各シリンダ10の内周面10Bに第1凹陥部21を形成した後、硬質球状粒子(ショット材)24を用いて各シリンダ10の内周面10Bにショットピーニング処理を施すことにより形成している。
硬質球状粒子24は、例えば外径(直径)D2が10μm以上で100μm未満のステンレスショット材やガラスショット材等を用いることができる。そして、このような硬質球状粒子24をシリンダ10の内周面10Bに対し略直角に、例えば70度以上90度以下、より好ましくは略90度の角度θ3をもって入射(衝突)させることにより、各第1凹陥部21内に各第2凹陥部23が形成されるようにしている。
本実施の形態による油圧ポンプ1は、上述の如き第2凹陥部31を第1凹陥部21内に形成したもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
特に、本実施の形態の場合は、硬質球状粒子24をシリンダ10の内周面10Bに対し略直角に衝突させることにより第2凹陥部31を形成する構成としているので、第2凹陥部31を第1凹陥部21内全体にわたって略均一に形成することができる。即ち、上述した第1の実施の形態の場合は、第1凹陥部21を形成する硬質球状粒子22と第2凹陥部23を形成する硬質球状粒子24とを、シリンダ10の内周面10Bに対し略同じ角度θ1,θ2(30度以上60度未満、より好ましくは略45度)をもって入射(衝突)させることにより、第1凹陥部21と第2凹陥部23とを形成している。このため、第1の実施の形態の場合は、第2凹陥部23が第1凹陥部21の急斜面21B側に多く形成される傾向となっている。
これに対し、本実施の形態の場合には、第1凹陥部21を形成する硬質球状粒子22を角度θ1(30度以上60度未満、より好ましくは略45度)をもって入射(衝突)させるのに対し、第2凹陥部31を形成する硬質球状粒子24を角度θ3(70度以上90度以下、より好ましくは略90度)をもって入射(衝突)させる構成としている。即ち、硬質球状粒子22の衝突角度θ1に比べて硬質球状粒子24の衝突角度θ3を急角度にする(互いの角度θ1とθ3とを異ならせる)ことにより、第2凹陥部31を第1凹陥部21内全体にわたって略均一に形成できるようにしている。これにより、各第1凹陥部21内に形成される第2凹陥部31の数を増大させることができ、その分(第2凹陥部31の数が増大する分)、保油性をより一層高めることができる。
なお、上述した各実施の形態では、第1凹陥部21と第2凹陥部23,31とをシリンダ10の内周面10Bに形成する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図8に示す変形例のように、シリンダ41の内周面41Aには第1凹陥部と第2凹陥部とを形成せずに、ピストン42の外周面42Aに第1凹陥部21と第2凹陥部23とを形成する構成としてもよい。また、図示は省略するが、シリンダの内周面とピストンの外周面との両方の周面に第1凹陥部と第2凹陥部とをそれぞれ形成する構成としてもよい。
また、上述した各実施の形態および変形例では、液圧回転機として固定容量型の斜板式油圧ポンプ1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば斜軸式油圧ポンプまたはラジアルピストン式油圧ポンプ等に適用してもよく、可変容量型の油圧ポンプに適用してもよい。また、可変容量型または固定容量型の油圧モータに対しても適用できるものである。
油圧モータに適用する場合には、第1凹陥部と第2凹陥部とを形成する緩斜面と急斜面の位置関係は、油圧ポンプの場合と反対にすることが好ましい。即ち、油圧モータの場合には、第1凹陥部と第2凹陥部は、その長さ方向一側(シリンダポートとは反対側、ピストンの進行方向圧油が供給される側)が傾斜の緩やかな緩斜面となり、長さ方向他側(シリンダポート側、ピストンの進行方向吐出側)が傾斜の急な急斜面となるように形成することが好ましい。
1 油圧ポンプ(液圧回転機)
2 ケーシング
6 回転軸
9 シリンダブロック
10,41 シリンダ
10B,41A 内周面
11,42 ピストン
21 第1凹陥部
21A 緩斜面
21B 急斜面
23,31 第2凹陥部
23A 緩斜面
23B 急斜面
42A 外周面

Claims (5)

  1. ケーシングと、該ケーシング内に回転可能に設けられた回転軸と、該回転軸と一体に回転するように前記ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダを有するシリンダブロックと、該シリンダブロックの各シリンダ内に往復動可能に挿嵌された複数のピストンとを備え、
    前記各シリンダの内周面と前記各ピストンの外周面とのうちの少なくとも一方の周面には、該周面を被加工面として多数の第1凹陥部を形成し、
    該各第1凹陥部は、その長さ方向一側が傾斜の緩やかな緩斜面となり、長さ方向他側が傾斜の急な急斜面として形成してなる液圧回転機において、
    前記各第1凹陥部内には、該各第1凹陥部に比較して小さな第2凹陥部を複数個形成する構成としたことを特徴とする液圧回転機。
  2. 前記各第2凹陥部は、その長さ方向一側が傾斜の緩やかな緩斜面となり、長さ方向他側が傾斜の急な急斜面として形成してなる請求項1に記載の液圧回転機。
  3. 前記各第1凹陥部の長さ寸法は、50μm以上で100μm以下の範囲内に設定してなる請求項1または2に記載の液圧回転機。
  4. 前記各第2凹陥部の長さ寸法は、10μm以上で20μm以下の範囲内に設定してなる請求項1,2または3に記載の液圧回転機。
  5. 前記各第1凹陥部と各第2凹陥部は、それぞれショットピーニング処理を施すことにより形成してなる請求項1,2,3または4に記載の液圧回転機。
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