JP2021073409A - シリンダブロックとそれを備えた斜板形液圧回転装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】シリンダボア数や回転数などに応じて摺動面の冷却効果を向上させることができるシリンダブロックを提供する。【解決手段】ピストン挿入側端面12cに開口を有する複数のシリンダボア20が形成され、回転させるとシリンダボアにそれぞれ挿入されたピストン13が往復摺動するようになっているシリンダブロック12Aであって、シリンダブロックは冷却部50を備え、冷却部は、隣り合うシリンダボアの間に形成されたピストン挿入側端面からシリンダブロックの軸線方向に延在する複数の冷却用穴51を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、回転軸の周囲に形成された複数のシリンダボアに挿入されたピストンがシリンダボア内を往復摺動するようになっているシリンダブロックと、それを備えた斜板形液圧回転装置に関するものである。
建設機械を含む産業機械において、様々な油圧モータや油圧ポンプなどの液圧装置が用いられている。このような液圧装置のシリンダブロックには、ピストン挿入側端面にある開口からピストンをそれぞれ挿入可能な複数のシリンダボアが形成され、シリンダブロックが回転すると挿入されているピストンがシリンダボア内を往復摺動するものがある。
この種の液圧装置として、例えば特許文献1のような斜板形液圧装置が知られている。特許文献1の斜板形液圧装置(以下、「斜板型油圧回転装置」として説明する)は、回転軸を備えており、回転軸には、シリンダブロックが一体的に取付けられている。シリンダブロックの端面には、周方向に等間隔でシリンダボアが形成されて、各シリンダボアには、ピストンが挿入されている。このシリンダボアから突出している端部には、シューが取付けられており、このシューは、傾倒させて配置された斜板の支持面上に配置されている。
このように構成されている斜板形油圧回転装置は、シリンダボア内でピストンを往復運動させることでシリンダブロックが回転するようになっている。そして、シリンダボアに高圧の作動油を供給してピストンを往復運動させることでシリンダブロックが回転し、シリンダブロックが一体的に設けられた回転軸を回転させるようになっている。つまり、斜板形油圧回転装置は油圧モータとして働く。また、斜板形油圧回転装置は、シリンダブロックを回転させることでピストンがシリンダボア内を往復運動するようにもなっている。そして、回転軸によりシリンダブロックを回転させることで、低圧の作動油を吸入して高圧の作動油を吐出できるようになっている。つまり、斜板形油圧回転装置を油圧ポンプとしても働かせることができる。
なお、他の先行技術として、シリンダブロックの周囲に、電磁ピックアップ式の回転センサで検出するための被検出凹部を設けた液圧回転機がある(特許文献2参照)。
特許第5444462号公報 特開2002−267679号公報
特許文献1のような構成を有する斜板形油圧回転装置は、主に低速度、中速度の回転で使用されていたが、建設機械や産業機械の駆動装置における高回転化に対応すべく、斜板形油圧回転装置を高速回転でも使用できるようにすることが望まれている。しかし、斜板形油圧回転装置のシリンダブロックを高速回転させると、ピストン及びシューに作用する遠心力の影響が大きくなり、低回転時と異なり遠心力の影響を無視することができなくなる。
例えば、シリンダボアにてピストンが往復運動する際、ピストンが摺動するシリンダブロックの摺動面では、摺動することにより熱が発生する。この摺動面での発熱量は、シリンダブロックとピストンの接触圧力に依存している。従来のような遠心力が非常に小さい低回転仕様では、接触圧力が主に供給される又は吐出する作動油の圧力と対応しているため、摺動面で生じる発熱量は比較的小さい。それ故、摺動面とピストンとの間に作動油を逃がすためのクリアランスを形成し、そのクリアランスから漏れ出る作動油だけで摺動面を十分冷却することができる。
しかし、シリンダブロックを高速回転させる場合、油圧による影響よりも遠心力の方が接触圧力に影響を及ぼすようになり、回転速度が高くなればなるほど接触圧力が増加し、摺動面で生じる発熱量も大きくなる。これにより、摺動面の温度が上昇し、特にクリアランスから漏れ出る作動油による冷却がし難くなるため、シリンダボアの開口付近の温度上昇が著しくなる。また、遠心力が増加することにより、ピストンが外方に押されることで、シリンダブロックの半径方向内側に比べて半径方向外側のクリアランスの幅が狭くなる。そうすると、狭くなった外側のクリアランスにある作動油が流れにくくなり、そのクリアランスの部分で作動油が熱せられる。作動油が熱せられ続けて、作動油の転移温度を超えると、作動油の潤滑性能が低下する。クリアランスの幅を大きくすることで、作動油の潤滑性能の低下を防ぐことも可能であるが、クリアランスの幅を大きくすると作動油の漏れ量が増加するため、ポンプ又はモータとしての性能が低下し、また油圧装置の高圧化に限界が生じてしまう。
しかも、斜板形油圧回転装置のシリンダボア数や回転数、用途などによって冷却効果を期待するシリンダブロックの部分が異なり、それぞれの斜板形油圧回転装置に応じて冷却効果を期待できるシリンダブロックも望まれている。
なお、特許文献2にはシリンダブロックの周囲に凹部を設けることが記載されているが、この凹部は回転センサの被検出凹部としての機能のみでありシリンダブロックを冷却できるものではない。
そこで、本発明は、シリンダボア数や回転数などに応じて摺動面の冷却効果を向上させることができるシリンダブロックと、それを備えた斜板形液圧回転装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るシリンダブロックは、ピストン挿入側端面に開口を有する複数のシリンダボアが形成され、回転させると前記シリンダボアにそれぞれ挿入されたピストンが往復摺動するようになっているシリンダブロックであって、前記シリンダブロックは冷却部を備え、前記冷却部は、隣り合う前記シリンダボアの間に形成された前記ピストン挿入側端面から前記シリンダブロックの軸線方向に延在する複数の冷却用穴を有する。
この構成により、シリンダブロックが回転することで、シリンダブロックの高温となるピストンの摺動面であるシリンダボアの間に備えさせた冷却部の冷却用穴に、周囲の比較的温度の低い冷却液(作動油)が導かれる。冷却用穴に導かれた冷却液は、シリンダブロックの熱を奪って冷却用穴から出ていき、この冷却液でシリンダブロックを適切に冷却できる。これにより、シリンダブロックの冷却性能を向上させ、摺動面の温度上昇を抑えることができる。しかも、シリンダボアの開口があるピストン挿入側端面から冷却用穴が延在しているため、最も温度上昇が著しい摺動面のピストン挿入側端面近傍において、その温度上昇を特に抑えることができる。
また、前記冷却用穴は、前記ピストン挿入側端面から前記シリンダブロックの外周面に向けて貫通するよう斜めに形成されていてもよい。
このように構成すれば、ピストン挿入側端面から冷却用穴に入った冷却液がシリンダブロックの回転によって生じる遠心力でシリンダブロックの外周面へと排出される。よって、冷却液に強制的な流れが生じてシリンダブロックの冷却効果を高めることができる。
また、前記冷却用穴は、前記シリンダボアと平行に延在する直線部と、前記直線部の前記ピストン挿入側端面から離れた位置から前記シリンダブロックの外周面に向けて開放する抜き穴部と、を有していてもよい。
このように構成すれば、ピストン挿入側端面から冷却用穴の直線部に入った冷却液が、シリンダブロックの回転によって生じる遠心力で抜き穴部からシリンダブロックの外周面へと排出される。よって、冷却液に強制的な流れが生じてシリンダブロックの冷却効果を高めることができる。
また、本発明に係るシリンダブロックは、ピストン挿入側端面に開口を有する複数のシリンダボアが形成され、回転させると前記シリンダボアにそれぞれ挿入されたピストンが往復摺動するようになっているシリンダブロックであって、前記シリンダブロックは冷却部を備え、前記冷却部は、前記シリンダブロックの外周面から隣り合う前記シリンダボアの間を通って半径方向に延在する複数の冷却用穴を有していてもよい。
この構成によれば、シリンダブロックが回転することで、シリンダブロックの外周面から隣り合うシリンダボアの間を通って延在する冷却用穴に周囲の比較的温度の低い冷却液(作動油)が導かれる。冷却用穴に導かれた冷却液は、シリンダブロックの熱を奪って冷却用穴から出ていき、この冷却液でシリンダブロックを適切に冷却することができる。
また、本発明に係るシリンダブロックは、ピストン挿入側端面に開口を有する複数のシリンダボアが形成され、回転させると前記シリンダボアにそれぞれ挿入されたピストンが往復摺動するようになっているシリンダブロックであって、前記シリンダブロックは冷却部を備え、前記冷却部は、前記シリンダブロックの外周面から半径方向に延在する複数の冷却用穴を有していてもよい。
この構成によれば、シリンダブロックが回転することで、シリンダブロックの外周面から半径方向に延在する冷却用穴に周囲の比較的温度の低い冷却液(作動油)が導かれる。冷却用穴に導かれた冷却液は、シリンダブロックの熱を奪って冷却用穴から出ていき、この冷却液でシリンダブロックを適切に冷却することができる。
また、前記シリンダボアはインサートブッシュを備え、前記冷却用穴は、前記シリンダブロックの外周面から前記インサートブッシュの外面位置まで形成されていてもよい。
このように構成すれば、シリンダボアにインサートブッシュを備える構成において、シリンダボアのインサートブッシュの位置まで冷却液を導き、高温となるシリンダボアに近い位置を適切に冷却することができる。
また、本発明に係るシリンダブロックは、ピストン挿入側端面に開口を有する複数のシリンダボアが形成され、回転させると前記シリンダボアにそれぞれ挿入されたピストンが往復摺動するようになっているシリンダブロックであって、前記シリンダブロックは冷却部を備え、前記冷却部は、前記シリンダブロックの前記ピストン挿入側端面の縁部に形成された環状の切欠き部と、前記環状の切欠き部から前記シリンダブロックの軸線方向に延在するように前記シリンダブロックの外周面に形成された複数の冷却用溝と、を有していてもよい。
この構成によれば、シリンダブロックが回転することで、シリンダブロックのピストン挿入側端面の縁部に形成された環状の切欠き部によって周囲の比較的温度の低い冷却液(作動油)をピストン挿入側端面のシリンダブロック外周部分に導き、この冷却液を切欠き部からシリンダブロックの外周面に形成された複数の冷却用溝に導いて、この冷却液でシリンダブロックの熱を奪うことでシリンダブロックを適切に冷却することができる。
また、本発明に係るシリンダブロックは、ピストン挿入側端面に開口を有する複数のシリンダボアが形成され、回転させると前記シリンダボアにそれぞれ挿入されたピストンが往復摺動するようになっているシリンダブロックであって、前記シリンダブロックは冷却部を備え、前記冷却部は、隣り合うシリンダボアの間に位置し、且つ、前記ピストン挿入側端面から前記シリンダブロックの軸線方向に延在するように前記シリンダブロックの外周面に形成された複数の冷却用溝と、を有していてもよい。
この構成によれば、シリンダブロックが回転することで、シリンダブロックのピストン挿入側端面からシリンダブロックの軸線方向に延在する冷却用溝に周囲の比較的温度の低い冷却液(作動油)が導かれる。冷却用溝に導かれた冷却液は、シリンダブロックの熱を奪って冷却用溝から出て行き、この冷却液でシリンダブロックを適切に冷却することができる。
一方、本発明に係る斜板形液圧回転装置は、低圧の作動液が流れる低圧側通路と高圧の作動油が流れる高圧側通路に接続されており、前記作動液が前記高圧側通路から前記シリンダボアに供給されて前記シリンダボアから前記低圧側通路に排出することでシリンダブロックを回転させ、又は前記シリンダブロックを回転させることで前記低圧側通路から前記シリンダボアに前記作動液を吸入し、さらに圧縮してから前記高圧側通路へと吐出する斜板形液圧回転装置であって、前記いずれかのシリンダブロックを備えている。
この構成によれば、シリンダボアの摺動面とピストンの外周面との間にクリアランスが設けられ、このクリアランスから漏れる作動油を潤滑油として利用する斜板形液圧回転装置において、シリンダブロックのピストン摺動面における温度上昇を抑えることができる。よって、クリアランスから漏れる潤滑油の油温の上昇を抑え、潤滑油が転移することを防ぐことができる。これにより、潤滑油の潤滑性能の低下を防ぎ、ピストンを円滑に動かすことを維持することができる。
本発明によれば、ピストンがシリンダボア内を往復摺動するようになっているシリンダブロックにおいて、シリンダボア数や回転数、用途などの条件に応じて、シリンダブロックの冷却効果を適切に向上させることが可能となる。
図1は、本発明の第1実施形態に係るシリンダブロックを備えた斜板形液圧回転装置を示す断面図である。 図2は、図1に示す第1実施形態に係るシリンダブロックのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図、(C)は作動油の流れを示す模式図である。 図3は、図1に示す斜板形液圧回転装置における第2実施形態に係るシリンダブロックのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。 図4は、図1に示す斜板形液圧回転装置における第3実施形態に係るシリンダブロックのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。 図5は、図1に示す斜板形液圧回転装置における第4実施形態に係るシリンダブロックのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。 図6は、図1に示す斜板形液圧回転装置における第5実施形態に係るシリンダブロックのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。 図7は、図1に示す斜板形液圧回転装置における第6実施形態に係るシリンダブロックのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。 図8は、図1に示す斜板形液圧回転装置における第7実施形態に係るシリンダブロックのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。 図9は、図1に示す斜板形液圧回転装置における第8実施形態に係るシリンダブロックのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。 図10は、図1に示す斜板形液圧回転装置における第9実施形態に係るシリンダブロックのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、斜板形液圧回転装置1におけるシリンダブロック12A〜12Iを例に説明する。なお、以下の実施形態においては、図1に示す左方向を「前方向」、右方向を「後方向」として説明する。
(斜板形液圧回転装置)
図1は、第1実施形態に係るシリンダブロック12Aを備えた斜板形液圧回転装置1を示す断面図である。油圧ショベル、クレーン及びブルドーザ等の建設機械や、油圧ユニット、プレス機、製鉄機械、及び射出成形機等の陸用装置等の産業機械や船舶には、そこに備わる機器やアクチュエータを駆動するために斜板形液圧回転装置1が設けられている。斜板形液圧回転装置1は、いわゆる斜板形モータ・ポンプであり、産業機械や船舶に備わる回転対象物を回転させる液圧モータの機能、又は産業機械や船舶に備わるアクチュエータに圧液を供給して該アクチュエータを動かす液圧ポンプの機能を有している。なお、以下の説明では、説明の便宜上、扱う作動液を作動油とし、斜板形液圧回転装置1を油圧モータ10として説明する。
油圧モータ(斜板形液圧回転装置1)10は、回転軸11を備え、高速の回転数で回転軸11を回転させることができる高速回転型の油圧モータである。この油圧モータ10は、回転軸11の他に、シリンダブロック12A、複数のピストン13、複数のシュー14、斜板15、及びバルブプレート16も備えており、これらの部品がケーシング17に収容されている。回転軸11は、ケーシング17を貫通するように前後方向に延在しており、ケーシング17の前端部及び後端部にてベアリング18,19によって回転可能に支持されている。回転軸11の中間部分には、シリンダブロック12Aが嵌挿されている。
シリンダブロック12Aは、大略的に円筒状に形成されている。シリンダブロック12Aの軸線は、回転軸11の軸線L1と一致している。シリンダブロック12Aは、回転軸11とスプライン結合により一体的に結合され、回転軸11と一体的に回転する。シリンダブロック12Aには、複数のシリンダボア20が形成されている。シリンダボア20は、軸線L1を中心としてシリンダブロック12Aの周方向に等間隔で配置され(図2)、軸線L1に平行に延在している。シリンダボア20は、断面円形の摺動面と底面とによって規定される孔であり、シリンダブロック12Aのピストン挿入側端面12c(前側端面)に開口を有している。各シリンダボア20には、開口からピストン13が挿入されて嵌まり込んでいる。
ピストン13は、大略円柱状になっており、シリンダボア20を規定する摺動面12b上を摺動しながら前後方向に往復摺動するようになっている。なお、シリンダボア20には、銅ブッシュ等の円筒状のスリーブ(図示せず)が嵌合される場合がある。この場合、ピストン13がスリーブの内周面上を摺動するようになっており、ピストン13が摺動する摺動面とは、このスリーブの内周面を意味する。以下では、スリーブが嵌合されていない場合について説明するが、スリーブが嵌合されている場合であっても同様である。
ピストン13の外径は、シリンダボア20の内径より若干小径に形成されており、ピストン13の周りには、ピストン13と摺動面12bと間にクリアランスが形成されている。さらに、ピストン13は、その前端部に球面保持部13aを有しており、球面保持部13aは、ピストン13の位置に関わらずシリンダボア20から突出している。球面保持部13aの外表面は、略球面状に形成されており、この球面保持部13aにシュー14が取付けられている。
シュー14は、大略有底円筒状になっており、その内表面が球面保持部13aに対応させて部分球面状になっている。このシュー14内にピストン13の球面保持部13aが嵌まり込んでおり、ピストン13は、球面保持部13aの中心を中心点として回動可能になっている。また、シュー14は、その底部に半径方向外方に突出するフランジ14aを有しており、その底部を斜板15に当接させてその上に配置されている。
斜板15は、大略円板状に形成されている。斜板15は、その上側を後方に傾倒させた状態でケーシング17内に設けられており、その中心付近を回転軸11が貫通している。斜板15は、シリンダブロック12Aよりも前側に配置されており、シリンダブロック12A側に支持板21を有している。支持板21は、円環状になっており、支持板21には複数のシュー14が周方向に等間隔で配置されている。また、複数のシュー14には、これらのシュー14を支持板21に押え付けるべく押え板22が設けられている。
押え板22は、大略円環状になっており、その中心を回転軸11が相対回転可能に挿通されている。押え板22には、シュー14と同数の取付け孔22aが形成されており、取付け孔22aは、周方向に等間隔で配置されている。押え板22は、取付け孔22aにシュー14の開口側を挿通させ、フランジ14aに当たるようになっており、支持板21と協働してフランジ14aを挟持するようになっている。また、押え板22は、その内孔に球面ブッシュ23が挿通されている。球面ブッシュ23は、大略円筒状になっており、回転軸11及びシリンダブロック12Aに外装されている。球面ブッシュ23は、シリンダブロック12Aに設けられている複数の押付ばね27により支持板21に向かって付勢されており、押え板22は、この球面ブッシュ23により支持板21に押え付けられている。
このように複数のシュー14が配置された斜板15は、その上部がケーシング17の上部に設けられたレギュレータ24に連結されている。レギュレータ24は、前後方向に可動するプランジャ25を有しており、このプランジャ25に斜板15が連結されている。それ故、プランジャ25を前後方向に動かすことで斜板の傾斜角を変更してピストン13のストロークを調整することができ、シリンダボア20の油室20aの容量を変更することができる。油室20aとは、シリンダボア20内において、ピストン13の後端面より後側の空間である。
シリンダブロック12Aには、この油室20aに連通するシリンダポート26が形成されている。シリンダポート26は、1つのシリンダボア20に1つずつ設けられており、シリンダボア20と一対一で対応している。また、シリンダポート26は、シリンダブロック12Aの後側端面で開口しており、この後側端面には、バルブプレート16が設けられている。
バルブプレート16は、円環状の板状部材であり、シリンダブロック12Aとケーシング17の後端部との間に位置している。バルブプレート16は、図示しないピン部材によってケーシング17に相対回転不能に固定されている。バルブプレート16の内孔には、回転軸11が挿通されており、回転軸11とバルブプレート16とは、互いに相対回転可能に構成されている。このように位置するバルブプレート16には、吸入ポート16a及び吐出ポート16bが形成されている。
吸入ポート16a及び吐出ポート16bは、大略円弧状になっており、互いに周方向に間隔をあけて位置している。これら吸入ポート16a及び吐出ポート16bは、バルブプレート16をその厚み方向に貫通しており、シリンダブロック12A側の開口が幾つかのシリンダポート26に接続されている。シリンダブロック12Aを回転させることで、シリンダポート26の接続先が吸入ポート16aと吐出ポート16bとで交互に切換わるようになっている。吸入ポート16aの開口は、図示しない高圧側通路に接続され、吐出ポート16bの開口は、図示しない低圧側通路に接続されている。これにより、シリンダブロック12Aを回転させることで、シリンダボア20が高圧側通路と低圧側通路とに交互に接続されるようになっている。なお、図1では、説明の便宜上、実際のものに対して吸入ポート16aと吐出ポート16bの位置を周方向にずらして記載している。
このような構成を有する油圧モータ10では、ピストン13がシリンダボア20に最も縮退して最奥部に位置する上死点からピストン13がシリンダボア20から最も突出する下死点に移動するまでの間、高圧側通路を流れる作動油が油室20aに吸入ポート16aを介して吸入する。これにより、ピストン13が作動油により前方に押圧され、その結果、シュー14が斜板15に押し付けられる。斜板15が傾倒しているため、押し付けられるシュー14は、斜板15上を下側に向かって摺動し、軸線L1を中心に周方向一方に公転する。これにより、シリンダブロック12Aに軸線L1回りの回転力が与えられ、シリンダブロック12A及び回転軸11が軸線L1回りに回転する。
他方、ピストン13が下死点から上死点の間に位置するとき、油室20aは、吐出ポート16bを介して低圧側通路に接続される。シリンダブロック12Aが回転することでシュー14が斜板15上を上側に向かって摺動し、やはり軸線L1を中心に周方向一方に公転する。シュー14が斜板15上を上側に向かって摺動することにより、ピストン13が後方に押し戻され、それに伴って油室20aの作動油が吐出ポート16bを介して低圧側通路に排出される。このように油圧モータ10では、作動油を吸入及び吐出することによってピストン13を前後方向に往復摺動させ、シリンダブロック12A及び回転軸11を軸線L1回りに回転させる。
なお、斜板形液圧回転装置1が油圧ポンプの場合、シリンダブロック12Aを回転させることで低圧側通路からシリンダボア20の内部に作動油が吸入され、シリンダボア20の内部で圧縮された作動油が高圧側通路へと吐出される。
そして、上記シリンダブロック12Aに、このシリンダブロック12Aを冷却する構造が備えられている。図示する第1実施形態のシリンダブロック12Aは、冷却部50として複数の冷却用穴51を有している。冷却部50としては、冷却用穴51の他、後述する図8〜図10に示すような冷却用溝55なども含む。以下、冷却部50を備えたシリンダブロックの実施形態について説明する。なお、以下の実施形態においては、シリンダブロック12Aの軸線を、軸線L1として説明する。また、各実施形態における同一の構成には同一符号を付して説明する。
(第1実施形態に係るシリンダブロック)
図2は、図1に示す第1実施形態に係るシリンダブロック12Aのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図、(C)は作動油の流れを示す模式図である。このシリンダブロック12Aは、冷却部50としての冷却用穴51を有している。(B)の断面図は、冷却用穴51の部分の断面を上部に示し、シリンダボア20の部分の断面を下部に示している。
この実施形態のシリンダブロック12Aには、隣り合うシリンダボア20の間における外周面12aに近い位置に、ピストン挿入側端面12cから軸線L1の方向に延在する冷却用穴51が設けられている。この実施形態の冷却用穴51は、隣り合う各シリンダボア20の間において、シリンダボア20の中心よりもシリンダブロック12Aの外周面12aに近い位置に設けられている。
この冷却用穴51の軸線方向深さH1は、ピストン挿入側端面12cからピストン13がシリンダボア20に入り込む最奥部の位置までの深さH2の範囲に形成される。つまり、冷却用穴51は、ピストン挿入側端面12cから、ピストン13がシリンダボア20に入り込む最奥部(ピストン13が上死点に位置するときのピストン13の最奥部)の位置までの範囲に形成される。この実施形態における軸線方向深さH1は、ピストン挿入側端面12cからピストン13がシリンダボア20に入り込む最奥部までの位置H2の範囲において、ピストン挿入側端面12cから約1/2程度の範囲に形成されている。
また、冷却用穴51の直径Dは、ピストン13の直径に対して5%〜100%の範囲で形成することができる。冷却用穴51の直径Dをピストン13の直径に対して5%〜100%の範囲で形成することで、様々な条件において、シリンダブロック12Aを適切に冷却できる冷却用穴51を形成することができる。この冷却用穴51の直径Dとしては、ピストン挿入側端面12cから冷却用穴51に入った作動油が冷却用穴51の内部を移動してシリンダブロック12Aを冷却し、ピストン挿入側端面12cから出る大きさに設定される。例えば、冷却用穴51は、3mm〜10mm程度の直径Dでもよい。
この実施形態のシリンダブロック12Aによれば、図2(C)に示すように、シリンダブロック12Aが回転することで、シリンダブロック12Aの高温となるピストン13の摺動面12bに近い位置に備えた冷却用穴51に周囲の比較的温度の低い作動油Oが導かれる。そして、その作動油Oが冷却用穴51の内部における作動油Oに流れを生じさせてシリンダブロック12Aの温度を奪った作動油Oが冷却用穴51から出ることで、シリンダブロック12Aを適切に冷却することができる。
これにより、シリンダブロック12Aの冷却性能を向上させ、摺動面12bの温度上昇を抑えることができる。しかも、シリンダボア20の開口があるピストン挿入側端面12cから冷却用穴51が延びているため、最も温度上昇が著しい摺動面12bのピストン挿入側端面12cの近傍において、その温度上昇を特に抑えることができる。
(第2実施形態に係るシリンダブロック)
図3は、上記油圧モータ(斜板形液圧回転装置1)10における第2実施形態に係るシリンダブロック12Bのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。このシリンダブロック12Bは、冷却部50として冷却用穴51を有している。(B)の断面図は、冷却用穴51の部分の断面を上部に示し、シリンダボア20の部分の断面を下部に示している。
この実施形態のシリンダブロック12Bには、隣り合うシリンダボア20の間の半径方向外方に、ピストン挿入側端面12cからシリンダブロック12Bの軸線L1の方向に延びる冷却用穴51が設けられている。この実施形態では、シリンダブロック12Bの外周面12aに近い位置で、隣り合うそれぞれのシリンダボア20の間の外方に2本の冷却用穴51がそれぞれ設けられている。
この実施形態のシリンダブロック12Bによれば、上記シリンダブロック12Aと同様に、シリンダブロック12Bの高温となるピストン13の摺動面12bに近い位置に備えさせた冷却用穴51に比較的温度の低い作動油を導いてシリンダブロック12Bを適切に冷却できる。これにより、シリンダブロック12Bの冷却性能を向上させ、摺動面12bの温度上昇を抑えることができる。しかも、上記第1実施形態のシリンダブロック12Aに比べてよりシリンダボア20に近い位置を冷却することができる。
(第3実施形態に係るシリンダブロック)
図4は、上記油圧モータ(斜板形液圧回転装置1)10における第3実施形態に係るシリンダブロック12Cのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。このシリンダブロック12Cは、冷却部50として冷却用穴51を有している。(B)の断面図は、冷却用穴51の部分の断面を上部に示し、シリンダボア20の部分の断面を下部に示している。
この実施形態のシリンダブロック12Cには、隣り合う各シリンダボア20の間における外周面12aに近い位置に、ピストン挿入側端面12cから軸線L1の方向に延びる冷却用穴51が設けられている。この実施形態の冷却用穴51は、ピストン挿入側端面12cからシリンダブロック12Cの外周面12aに向けて貫通するように傾斜した穴となっている。
この実施形態のシリンダブロック12Cによれば、上記シリンダブロック12Aと同様に、シリンダブロック12Cの高温となるピストン13の摺動面12bに近い位置に備えさせた冷却用穴51に比較的温度の低い作動油を導いてシリンダブロック12Cを適切に冷却できる。これにより、シリンダブロック12Cの冷却性能を向上させ、摺動面12bの温度上昇を抑えることができる。しかも、ピストン挿入側端面12cから冷却用穴51に入った作動油を、シリンダブロック12Cが回転することで生じる遠心力によってシリンダブロック12Cの外周面12aへ排出することができる。よって、冷却用穴51内の作動油に強制的な流れが生じて冷却効果を高めることができる。
(第4実施形態に係るシリンダブロック)
図5は、上記油圧モータ(斜板形液圧回転装置1)10における第4実施形態に係るシリンダブロック12Dのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。このシリンダブロック12Dは、冷却部50として冷却用穴51を有している。(B)の断面図は、冷却用穴51の部分の断面を上部に示し、シリンダボア20の部分の断面を下部に示している。
この実施形態のシリンダブロック12Dには、隣り合う各シリンダボア20の間における外周面12aに近い位置に、ピストン挿入側端面12cから軸線L1の方向に延びる冷却用穴51が設けられている。この実施形態の冷却用穴51は、シリンダボア20と平行に延在する直線部と、この直線部のピストン挿入側端面12cから離れた深部位置からシリンダブロック12Dの外周面12aに向けて開放する抜き穴部52と、を有している。
この実施形態のシリンダブロック12Dによれば、上記シリンダブロック12Aと同様に、シリンダブロック12Dの高温となるピストン13の摺動面12bに近い位置に備えさせた冷却用穴51に比較的温度の低い作動油を導いてシリンダブロック12Dを適切に冷却できる。これにより、シリンダブロック12Dの冷却性能を向上させ、摺動面12bの温度上昇を抑えることができる。しかも、ピストン挿入側端面12cから冷却用穴51に入った作動油を、シリンダブロック12Dが回転することで生じる遠心力によって抜き穴部52からシリンダブロック12Dの外周面12aへ排出することができる。よって、冷却用穴51内の作動油に強制的な流れが生じて冷却効果を高めることができる。
(第5実施形態に係るシリンダブロック)
図6は、上記油圧モータ(斜板形液圧回転装置1)10における第5実施形態に係るシリンダブロック12Eのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。このシリンダブロック12Eは、冷却部50として冷却用穴51を有している。(B)の断面図は、冷却用穴51の部分の断面を上部に示し、シリンダボア20の部分の断面を下部に示している。
この実施形態のシリンダブロック12Eには、シリンダブロック12Eの外周面12aから、シリンダブロック12Eの軸線L1と直交する半径方向に複数の冷却用穴51が設けられている。冷却用穴51は、隣り合うシリンダボア20の間で、外周面12aからシリンダボア20の間を通ってシリンダブロック12Eの軸線L1から所定距離の位置まで延在する半径方向深さH3で設けられている。冷却用穴51を設ける半径方向深さH3としては、軸線L1からシリンダボア20の最も軸線L1に近い位置までの所定距離が残る深さとすることができる。
また、この実施形態では、冷却用穴51をシリンダブロック12Eの軸線L1の方向に1本だけ設けた例を説明しているが、軸線L1の方向において冷却したい位置にさらに冷却用穴51を設けてもよく、冷却用穴51の本数は図示する例に限定されるものではない。
この実施形態のシリンダブロック12Eによれば、隣り合うシリンダボア20の間に延在する冷却用穴51によって、シリンダブロック12Eの高温となるピストン13の摺動面12bに近い位置を冷却用穴51に導いた比較的温度の低い作動油で適切に冷却できる。これにより、シリンダブロック12Eの冷却性能を向上させ、摺動面12bの温度上昇を抑えることができる。
(第6実施形態に係るシリンダブロック)
図7は、上記油圧モータ(斜板形液圧回転装置1)10における第6実施形態に係るシリンダブロック12Fのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。このシリンダブロック12Fは、冷却部50として冷却用穴51を有している。(B)の断面図は、冷却用穴51の部分の断面を上部に示し、シリンダボア20の部分の断面を下部に示している。
この実施形態のシリンダブロック12Fには、外周面12aからシリンダボア20の外周に向かって半径方向に延在する冷却用穴51が設けられている。冷却用穴51は、シリンダブロック12Fの外周面12aからシリンダボア20の外周と所定距離の位置まで半径方向に延在する半径方向深さH4で設けられている。この冷却用穴51の半径方向深さH4としては、例えば、インサートブッシュ(図示略)を設ける場合の、インサートブッシュの外面位置までの深さにすることができる。シリンダボア20がインサートブッシュを有していない場合、冷却用穴51はシリンダボア20の近傍位置まで設ければよい。
この実施形態のシリンダブロック12Fによっても、シリンダブロック12Fの高温となるピストン13の摺動面12bに近い位置を冷却用穴51に導いた比較的温度の低い作動油で適切に冷却できる。これにより、シリンダブロック12Fの冷却性能を向上させ、摺動面12bの温度上昇を抑えることができる。この実施形態でも、必要に応じて、シリンダブロック12Fの軸線L1の方向にさらに冷却用穴51を設ければ冷却効果を高めることができる。冷却用穴51の本数は、図示する例に限定されるものではなく、軸線L1の方向において冷却したい位置にさらに冷却用穴51を設けてもよい。
(第7実施形態に係るシリンダブロック)
図8は、上記油圧モータ(斜板形液圧回転装置1)10における第7実施形態に係るシリンダブロック12Gのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。このシリンダブロック12Gは、冷却部50として冷却用溝55を有している。(B)の断面図は、冷却用溝55の部分の断面を上部に示し、シリンダボア20の部分の断面を下部に示している。
この実施形態のシリンダブロック12Gには、シリンダブロック12Gのピストン挿入側端面12cにおける縁部の周方向に、環状の切欠き部56が設けられている。切欠き部56は、シリンダブロック12Gのピストン挿入側端面12cにおける外周面12aの角部を環状に削り取ることで形成されている。
そして、この切欠き部56からシリンダブロック12Gの軸線L1の方向に延在するように、シリンダブロック12Gの外周面12aに複数の冷却用溝55が設けられている。シリンダブロック12Gの外周面12aにおける角部に環状の切欠き部56を設け、この切欠き部56から冷却用溝55が延在するようにしているため、作動油が切欠き部56から冷却用溝55へとスムーズに流れるようにできる。
冷却用溝55の軸線方向深さH1は、ピストン挿入側端面12cからピストン13がシリンダボア20に入り込む最奥部(ピストン13が上死点に位置するときのピストン13の最奥部)の位置までの深さH2の範囲に形成される。この実施形態における軸線方向深さH1は、ピストン挿入側端面12cからピストン13がシリンダボア20に入り込む最奥部の位置までの深さH2の範囲における、ピストン挿入側端面12cから約1/2程度の範囲に形成されている。また、冷却用溝55の幅寸法Wは、ピストン13の直径に対して2%〜100%の範囲で形成することができる。
さらに、この実施形態の冷却用溝55は、シリンダブロック12Gの外周面12aにおける周方向に等間隔で設けられている。これにより、シリンダブロック12Gの外周面12aには、凹状の冷却用溝55と、その間の凸状の外周面12aとが等間隔で形成された凹凸面が形成されている。そして、シリンダブロック12Gの外周面12aを、冷却用溝55に導いた比較的温度の低い作動油で適切に冷却することができる。これにより、シリンダブロック12Gの冷却性能を向上させ、摺動面12bの温度上昇を抑えることができる。しかも、この実施形態のシリンダブロック12Gによれば、凹状の冷却用溝55と凸状の外周面12aとによる凹凸面により、回転センサ(図示略)の検出部としての機能も備えさせることができる。この凹凸面を回転センサの検出部とする場合、冷却用溝55の本数を増やせば、高い精度で回転数を検出することができる。
(第8実施形態に係るシリンダブロック)
図9は、上記油圧モータ(斜板形液圧回転装置1)10における第8実施形態に係るシリンダブロック12Hのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。このシリンダブロック12Hは、冷却部50として冷却用溝55を有している。(B)の断面図は、冷却用溝55の部分の断面を上部に示し、シリンダボア20の部分の断面を下部に示している。
この実施形態のシリンダブロック12Hには、上記図8と同様に、シリンダブロック12Hのピストン挿入側端面12cにおける縁部の周方向に、外周面12aから凹む切欠き部56が設けられている。
そして、この切欠き部56からシリンダブロック12Hの軸方向に延びる複数の冷却用溝55が設けられている。この実施形態の冷却用溝55は、シリンダボア20の半径方向外方に、切欠き部56からシリンダブロック12Hの軸線L1の方向に延びるように設けられている。この冷却用溝55も、ピストン挿入側端面12cから、ピストン13がシリンダボア20に入り込む最奥部の位置までの範囲に設けることができる。なお、切欠き部56は、必ずしも設ける必要はない。
この実施形態のシリンダブロック12Hによれば、上記シリンダブロック12Gと同様に、シリンダブロック12Hの外周面12aに備えさせた冷却用溝55に比較的温度の低い作動油を導いてシリンダブロック12Hを適切に冷却できる。これにより、シリンダブロック12Hの冷却性能を向上させ、摺動面12bの温度上昇を抑えることができる。
(第9実施形態に係るシリンダブロック)
図10は、上記油圧モータ(斜板形液圧回転装置1)10における第9実施形態に係るシリンダブロック12Iのみを示す図面であり、(A)は斜視図、(B)は断面図である。このシリンダブロック12Iは、冷却部50として冷却用溝55を有している。(B)の断面図は、冷却用溝55の部分の断面を上部に示し、シリンダボア20の部分の断面を下部に示している。
この実施形態のシリンダブロック12Iには、ピストン挿入側端面12cからシリンダブロック12Iの軸線L1の方向に延在する複数の冷却用溝55が設けられている。この実施形態の冷却用溝55は、ピストン挿入側端面12cにおいては、隣り合うシリンダボア20の間で、外周面12aからシリンダボア20の間を通ってシリンダブロック12Iの軸線L1から所定距離の位置までの半径方向深さH3となっている。冷却用溝55を設ける半径方向深さH3としては、軸線L1からシリンダボア20の最も軸線L1に近い位置までの所定距離が残る深さとすることができる。そして、冷却用溝55は、ピストン挿入側端面12cから軸線L1の方向に延在するように、シリンダブロック12Iの外周面12aに形成されている。また、この実施形態の冷却用溝55は、ピストン挿入側端面12cからシリンダブロック12Iの外周面12aに向けて湾曲する円弧状に形成されている。冷却用溝55の軸線方向深さH1としては、ピストン挿入側端面12cからピストン13がシリンダボア20に入り込む最奥部の位置までの深さH2の範囲に形成される。なお、上記第8実施形態と同様に、切欠き部56を設けてもよい。
この実施形態のシリンダブロック12Iによれば、隣り合うシリンダボア20の間に設けられた冷却用溝55によって、シリンダブロック12Iの高温となるピストン13の摺動面12bに近い位置に比較的温度の低い作動油を導いてシリンダブロック12Iを適切に冷却することができる。これにより、シリンダブロック12Iの冷却性能を向上させ、摺動面12bの温度上昇を抑えることができる。しかも、円弧状の冷却用溝55によって、冷却用の作動油をピストン挿入側端面12cからシリンダブロック12Iの外周面12aに向けて排出することができる。よって、冷却用溝55内の作動油に強制的な流れが生じて冷却効果を高めることができる。
(総括)
以上のように、上記シリンダブロック12A〜12Iによれば、油圧モータ(斜板形液圧回転装置1)10のシリンダボア20の数や回転数などの仕様、その他、用途などの条件に応じて適したシリンダブロック12A〜12Iを採用することができる。これにより、シリンダブロック12A〜12Iに応じた適切な冷却が可能となる。そして、シリンダブロック12A〜12Iを適切に冷却することで、作動油の温度上昇を抑えて作動油の潤滑性能が低下することを防止することが可能となる。よって、斜板形液圧回転装置1などを計画的に安定して運用することが可能となる。
なお、上記した実施形態では、斜板形液圧回転装置1として油圧モータ10を例に説明したが、油圧ポンプ等、他の液圧装置に利用することは可能であり、液圧装置は上記した実施形態に限定されるものではない。
また、上記した実施形態は一例を示しており、各実施形態を組み合わせたりすることもでき、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
1 斜板形液圧回転装置
10 油圧モータ
12A〜12I シリンダブロック
12a 外周面
12b 摺動面
12c ピストン挿入側端面
13 ピストン
17 ケーシング
20 シリンダボア
50 冷却部
51 冷却用穴
52 抜き穴部
55 冷却用溝
56 切欠き部
L1 軸線
D 直径
H1、H2 軸線方向深さ
H3、H4 半径方向深さ

Claims (8)

  1. ピストン挿入側端面に開口を有する複数のシリンダボアが形成され、回転させると前記シリンダボアにそれぞれ挿入されたピストンが往復摺動するようになっているシリンダブロックであって、
    前記シリンダブロックは冷却部を備え、
    前記冷却部は、前記ピストン挿入側端面から前記シリンダブロックの軸線方向に延在し、隣り合う前記シリンダボアの間において、前記シリンダボアの中心よりも前記シリンダブロックの外周面に近い位置に形成された複数の冷却用穴を有する、
    ことを特徴とするシリンダブロック。
  2. 前記冷却用穴は、前記シリンダボアと平行に延在する直線部と、前記直線部の前記ピストン挿入側端面から離れた位置から前記シリンダブロックの外周面に向けて開放する抜き穴部と、を有している、
    請求項1に記載のシリンダブロック。
  3. ピストン挿入側端面に開口を有する複数のシリンダボアが形成され、回転させると前記シリンダボアにそれぞれ挿入されたピストンが往復摺動するようになっているシリンダブロックであって、
    前記シリンダブロックは冷却部を備え、
    前記冷却部は、前記ピストン挿入側端面から前記シリンダブロックの軸線方向に延在し、隣り合う前記シリンダボアの間において、前記シリンダボアの中心よりも前記シリンダブロックの外周面に近い位置に形成された複数の冷却用穴を有し、
    前記冷却用穴は、前記ピストン挿入側端面から前記シリンダブロックの外周面に向けて貫通するよう斜めに形成されている、
    ことを特徴とするシリンダブロック。
  4. 前記冷却用穴の軸線方向深さは、前記ピストン挿入側端面から前記ピストンが前記シリンダボアに入り込む最奥部の位置までの深さの範囲に形成される、
    請求項1に記載のシリンダブロック。
  5. 前記冷却用穴の軸線方向深さは、前記ピストン挿入側端面から前記ピストンが前記シリンダボアに入り込む最奥部の位置までの深さの範囲において、前記ピストン挿入側端面から1/2の範囲に形成される、
    請求項4に記載のシリンダブロック。
  6. 前記冷却用穴の直径は、前記ピストンの直径に対して5%〜100%の範囲で形成される、
    請求項1乃至5の何れか1項に記載のシリンダブロック。
  7. 前記冷却用穴の直径は3mm〜10mmである、
    請求項1乃至6の何れか1項に記載のシリンダブロック。
  8. 低圧の作動液が流れる低圧側通路と高圧の作動油が流れる高圧側通路に接続されており、前記作動液が前記高圧側通路から前記シリンダボアに供給されて前記シリンダボアから前記低圧側通路に排出することでシリンダブロックを回転させ、又は前記シリンダブロックを回転させることで前記低圧側通路から前記シリンダボアに前記作動液を吸入し、さらに圧縮してから前記高圧側通路へと吐出する斜板形液圧回転装置であって、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載される前記シリンダブロックを備えている、斜板形液圧回転装置。
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