JP2012252813A - 正極活物質及びこれを用いたマグネシウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】正極におけるマグネシウムイオンの吸蔵放出反応の可逆性を向上し、大容量のマグネシウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】正極及び負極におけるマグネシウムイオンの吸蔵・放出によって作動するマグネシウムイオン二次電池において、ペロブスカイト型結晶構造を有する正極活物質を用いる。
【選択図】図1
【解決手段】正極及び負極におけるマグネシウムイオンの吸蔵・放出によって作動するマグネシウムイオン二次電池において、ペロブスカイト型結晶構造を有する正極活物質を用いる。
【選択図】図1
Description
本発明は、正極活物質及びこれを用いたマグネシウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度の二次電池として、携帯電話、携帯用情報端末機器、ノートパソコン、電動工具などの民生機器電源として普及している。また、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、さらに夜間電力や再生可能エネルギーの電力貯蔵システムの電源としても期待されている。すなわち、環境負荷の低減のキーデバイスとして大きな期待がもたれている。
しかしながら、将来、大容量の電源用途に二次電池を普及させていくためには、電池に用いられる材料の資源量を考慮し、大量普及のために必要な電池材料を確保可能であることが前提である。さらに、原料供給量がより安定で価格変動の可能性の低い材料を選択していくことが望ましいと考えられている。
リチウムは、塩湖などからリチウム化合物として採掘され、電気自動車等の普及があっても100年以上の埋蔵量を有していると報告されている。今後、リチウムの消費量が増大することが見込まれるため、リチウムイオン電池の次の世代となる二次電池が望まれている。その候補の一つとして、資源量の豊富なマグネシウムが注目され、このマグネシウムを二次電池の材料として利用するマグネシウムイオン二次電池(以下、マグネシウム二次電池とも呼ぶ。)の開発が国内外で徐々に進められている。
マグネシウムは、リチウムより安価であり、現状、リチウムの価格の約2/3である。一方、マグネシウムは、高い電気容量密度(2.21Ah/kg)を有している。これらの点で、マグネシウムは、リチウムに比べて有利である。マグネシウム二次電池を実用化するために、種々の正極活物質が開発されている。
特許文献1には、結晶構造が層状構造を有するマグネシウム二次電池正極活物質用マ
グネシウム複合酸化物が開示されている。
グネシウム複合酸化物が開示されている。
特許文献2には、マグネシウム二次電池に用いる電解活性を有する有機系アルカリ土類金属塩が開示されている。
特許文献3には、電解質がハロゲノフェニルマグネシウムとし、正極に五酸化バナジウム等のマグネシウムイオンのインターカレーションが可能な遷移金属化合物を用いたマグネシウム二次電池が開示されている。
特許文献4及び5には、マグネシウム塩がイミド塩又はスルホン酸塩である非水電解質を用い、イオウを含む化合物またはフッ化炭素を正極を利用した電池が開示されている。
特許文献6には、金属マグネシウムを負極として用い、CuxMgyMo6S8(式中、xは0〜1であり、yは0〜2である。)を正極として用い、M'(ZR'aRn-aXq-n)2(式中、M'はMg又はCaであり、ZはAl又はBであり、R及びR'はアルキル基、アルケニル基、アリール基、フェニル基、ベンジル基又はアミド基であり、Xはハロゲン(I,Br,Cl,F)であり、nは0〜3であり、qは4である。)を電解質として用い、300回以上の充放電サイクルを可能とした電気化学電池が開示されている。
上記の通り、マグネシウムは、リチウムに比べて有利な特徴を有することから、二次電池としての性能をリチウムイオン電池に近づけることにより、容量当たりの電池コストを削減することが可能となる。
マグネシウムイオン二次電池には、マグネシウム塩を十分な濃度で溶解した電解液と、マグネシウムイオンを可逆的に酸化還元することができる正極材料及び負極材料とが必須である。特に、マグネシウムイオンの可逆的な溶解・析出または吸蔵・放出が可能な正極活物質が求められている。
本発明は、正極におけるマグネシウムイオンの吸蔵放出反応の可逆性を向上し、大容量のマグネシウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明の正極活物質は、正極及び負極におけるマグネシウムイオンの吸蔵・放出によって作動するマグネシウムイオン二次電池に用いる正極活物質であって、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含むことを特徴とする。
本発明によれば、充放電の可逆性に優れ、大容量を有するマグネシウムイオン二次電池を製造することができる。
さらに、本発明によれば、二次電池を軽量化し、二次電池の設置可能箇所の範囲を拡大することができる。
本発明は、正極活物質及びこれを用いたマグネシウムイオン二次電池並びにこれを用いた電源及び機器システムに関する。
本発明者は、従来技術の内容を詳細に検討した結果、従来にない新規な正極活物質としてペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を見出した。そして、この化合物を、正極を構成する正極活物質として用い、非水溶媒に電解質を溶解した電解液、及び負極と組み合わせることにより、充放電特性に優れたマグネシウムイオン二次電池を提供可能であることに見出し、本発明に至った。
以下、本発明の一実施形態に係る正極活物質並びにこれを用いた正極材料、正極合剤、正極、マグネシウムイオン二次電池、電池システム及び機器について説明する。
前記正極活物質において、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、化学式MgME1 3(式中、Mは、Al、Mn、Fe及びSiからなる群から選択される一種類以上の元素を含み、E1は、O、S、Se及びTeからなる群から選択される一種類以上の元素である。)で表される。原子の比率は、上記化学式の左から順に、1、1、3である。Mは、ホスト金属であり、Mgイオンを結晶内に吸蔵するときは還元され、逆に結晶からMgイオンを放出する際に酸化される。
前記正極活物質において、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、化学式MgM1 1-aM2 aE2 bO3-b(式中、M1は、Al、Mn、Fe及びSiからなる群から選択される一種類以上の元素であり、M2は、遷移元素であり、E2は、S、Se及びTeからなる群から選択される一種類以上の元素であり、0≦a≦1であり、0≦b≦3である。)で表される。
前記正極活物質は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒子の表面を導電性材料で被覆することが望ましい。
前記正極材料は、前記正極活物質を用いたものである。
前記正極合剤は、前記正極材料と、バインダとを含む。
前記正極は、前記正極合剤を集電体に塗工した構成を有する。
前記マグネシウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解液とを含み、正極は、前記正極活物質を含む。
前記電池システムは、前記マグネシウムイオン二次電池を含み、前記マグネシウムイオン二次電池に電気エネルギーを貯蔵し、又は、利用する構成を有する。
前記機器は、前記電池システムを含む。
前記マグネシウムイオン二次電池は、マグネシウムイオンの吸蔵放出反応を担う負極及び正極と、これらの負極及び正極の間においてMg2+を伝達する媒体としての電解液とを含む。
以下、図を用いて詳細に説明する。
図1は、マグネシウムイオン二次電池の正極活物質の単位格子を示す模式図である。
本図において、単位格子10は、ホスト金属イオン11、酸素イオン12及びマグネシウムイオン13を含むペロブスカイト型結晶構造を有する。ここで、ペロブスカイト型結晶構造は、立方晶系の単位格子10を有するものである。
本図においては、立方晶の各頂点にマグネシウムイオン13を、体心にホスト金属イオン11を配置し、ホスト金属イオン11を中心として立方晶の各面心に酸素イオン12を配置している。
図2は、マグネシウムイオン二次電池の正極活物質の微視的構造を示す模式図である。
本図において、結晶格子20は、図1に示す単位格子10を構成要素とするものであり、ホスト金属イオン21、酸素イオン22及びマグネシウムイオン23が複数の単位格子の結合体を形成している。マグネシウムイオン23は、酸素イオン22が各頂点を構成する複数の八面体の間隙を拡散現象等により移動することができるようなっている。矢印24は、マグネシウムイオン23が移動する方向の一例を示すものである。
図3は、マグネシウムイオン二次電池の断面を模式的に示したものである。
本図において、マグネシウムイオン二次電池101は、正極107と、負極108と、正極107と負極108との間に挟まれたセパレータ109とで構成された電極群(積層体とも呼ぶ。)、及びこの電極群を収納した電池容器102を含む。
正極107は、正極活物質とバインダとを含む正極合剤を金属箔、炭素フェルト等で形成された集電体の表面に塗工することにより作製されたものである。正極合剤には、導電助剤を添加してもよい。負極108は、負極活物質とバインダとを含む負極合剤を金属箔、炭素フェルト等で形成された集電体の表面に塗工することにより作製されたものである。負極合剤には、導電助剤を添加してもよい。ここで、塗工とは、集電体の表面を覆うように膜状に付着させることをいい、集電体の表面に塗布し、乾燥して固定することも含む。
本明細書においては、正極活物質とバインダを除く導電助剤等とを混合したものを正極材料と呼ぶ。また、正極材料とバインダとを混合したものを正極合剤と呼ぶ。一方、負極活物質とバインダを除く導電助剤等とを混合したものを負極材料と呼ぶ。また、負極材料とバインダとを混合したものを負極合剤と呼ぶ。
電池容器102の上部は、蓋103によって密閉されている。蓋103には、正極外部端子104、負極外部端子105及び注液口106が設けてある。正極107は、正極リード部110を介して正極外部端子104に接続されている。負極108は、負極リード部111を介して負極外部端子105に接続されている。正極外部端子104及び負極外部端子105は、絶縁性シール112を介して蓋103に固定してある。これにより、正極外部端子104と負極外部端子105とが短絡しないようにしている。
絶縁性シール112に用いる材料は、フッ素樹脂、熱硬化性樹脂、ガラスハーメチックシールなどから選択することができる。絶縁性シール112に用いる材料に求められる条件は、正極活物質、負極活物質、水素及び水と反応せず、気密性に優れていることである。
蓋103は、電池容器102に電極群を収納した後、電池容器102に被せ、蓋103の外周を溶接して電池容器102と一体にしてある。電池容器102に蓋103を取り付ける方法としては、溶接の他に、かしめ、接着などがある。
正極リード部110及び負極リード部111に求められる条件は、電気抵抗が小さく、かつ、電解液と反応しないことである。この条件を満たせば、正極リード部110及び負極リード部111の形状及び材質は任意である。
なお、蓋103を省略し、電池容器102の上部に絶縁部材112、正極外部端子104及び負極外部端子105を設置して固定してもよい。
また、正極107と正極外部端子104との間、又は負極108と負極外部端子105との間の電流経路に正温度係数抵抗素子(PTC:Positive Temperature Coefficient)を利用した電流遮断機構を設けると、電池内部の温度が高くなったときに、マグネシウムイオン二次電池101の充放電を停止し、マグネシウムイオン二次電池101を保護することが可能となる。
さらに、マグネシウムイオン二次電池101の内部の圧力が所定の値よりも大きくなったときにその内部の圧力を解放する圧力弁を蓋103に設けてもよい。
電池容器102の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼製など、非水電解質に対して耐食性を有する材料から選択される。
対向する正極107と負極108との間においては、充放電時にマグネシウムイオンが移動する。電極群(積層体)の構造は、本図に示す短冊状電極の積層したものに限定されるものではなく、円筒状、扁平状などの任意の形状に捲回したものなど、種々の形状にすることができる。電池容器102の形状は、電極群の形状に合わせ、円筒型、偏平長円形状、角型などの形状を選択してもよい。
セパレータ109には、非水電解液(以下、単に「電解液」とも呼ぶ。)が含浸されている。この電解液には、マグネシウムを構成要素として含む電解質が溶解されている。
電解質の例としては、過塩素酸マグネシウム、トリフロロメタンスルホン酸マグネシウム及びハロゲン化マグネシウムを挙げることができる。電解質の種類は、これらに限定されず、正極および負極の上で電気化学的に酸化または還元されないで、化学的に安定な物質であれば良い。
負極活物質としては、金属マグネシウム、又はマグネシウムイオンを吸蔵・放出することの可能な炭素を用いることができる。
負極活物質として炭素を用いる場合、グリニャール試薬等の不安定なマグネシウム化合物を使う必要がなくなる。したがって、負極の表面においてマグネシウムイオンの溶解析出反応が生じない。このため、金属マグネシウムを負極材料として用いた場合に生じる金属マグネシウムの表面における不動態化反応を回避することができる。
有機酸マグネシウム塩も電解質に用いることができる。例としては、安息香酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどの芳香族系化合物や酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウムなどを用いることができる。さらに、o-フルオロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-fluorobenzoate))、m-フルオロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-fluorobenzoate))、p-フルオロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-fluorobenzoate))、o-クロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-chlorobenzoate))、m-クロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-chlorobenzoate))、p-クロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-chrorobenzoate))、2,3-ジクロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(2,3-dichlorobenzoate))、3,4,5-トリクロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(3,4,5-trichlorobenzoate))、o-ブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-bromobenzoate))、m-ブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-bromobenzoate))、p-ブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-bromobenzoate))、2,3-ジブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(2,3-dibromobenzoate))、o-ヨード安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-iodobenzoate))、 m-ヨード安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-iodobenzoate))、p-ヨード安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-iodobenzoate))、3-クロロフタル酸マグネシウム(Magnesium di(3-chlorophthalate))、3,6-ジクロロフタル酸マグネシウム(Magnesium di(3,6-dichlorophthalate))、テトラクロロフタル酸マグネシウム(Magnesium di(tetrachlorophthalate))、o-フルオロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-fluorobenzoate))、m-フルオロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-fluorobenzoate))、p-フルオロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-fluorobenzoate))、o-クロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-chlorobenzoate))、m-クロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-chlorobenzoate))、 p-クロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-chlorobenzoate))、2,3-ジクロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(2,3-dichlorobenzoate))、3,4,5-トリクロロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(2,4,5-trichlorobenzoate))、o-ブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-bromobenzoate))、m-ブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-bromobenzoate))、p-ブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-bromobenzoate))、2,3-ジブロモ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(2,3-dibromobenzoate))、o-ヨード安息香酸マグネシウム(Magnesium di(o-iodobenzoate))、m-ヨード安息香酸マグネシウム(Magnesium di(m-iodobenzoate))、p-ヨード安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-iodobenzoate))、3-クロロフタル酸マグネシウム(Magnesium di(3-chlorophalate))、3,6-ジクロロフタル酸マグネシウム(Magnesium di(dichlorophalate))、テトラクロロフタル酸マグネシウム(Magnesium di(tetrachlorophalate))、4-ニトロ安息香酸マグネシウム(Magnesium di(p-nitrobenzoate))、3,5-ジニトロサリチル酸マグネシウム(Magnesium di(3,5-dinitrosalicylate))、5-スルホサリチル酸マグネシウム(Magnesium di(5-sulfosalicylate))などが例として挙げられる。これらの他、非水溶媒に溶解するものであれば、複数の芳香族環を有していてもよい。
また、これらの電解質を溶解可能な非水溶媒としては、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの溶媒、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネートなどの炭酸エステルなどを用いることができる。
上記の電解質は、一種類または二種類以上混合して溶媒に溶解して用いる。電解質の添加量は、電解質が100%電離したと仮定した場合、マグネシウムイオンの濃度が0.1モル/リットル以上とすることが望ましい。更に望ましくは0.5モル/リットル以上であり、特に望ましくは0.8〜2.0モル/リットルである。マグネシウムイオンの濃度が2.0モル/リットル以下であることが望ましいとした理由は、電解質の添加量が多い場合、電解液の粘度が低下し、低温におけるマグネシウムイオンの移動速度が低下するためである。すなわち、マグネシウムイオン二次電池の低温特性が低下する。
後述の実施例においては、過塩素酸マグネシウムをアセトニトリルに溶解した電解液を主に用いるが、これに限定されるものではない。過塩素酸マグネシウムの添加量は、全量が電離したと仮定して、マグネシウムイオン濃度が1モル/リットルになるようにした。なお、以下では、濃度の単位であるモル/リットルは「M」と表記する。
セパレータ109としては、マグネシウムイオン透過性を有する固体電解質ポリマー、又は構成する分子中に電解質として作用する官能基を有するポリマーを用いてもよい。これにより、マグネシウムイオン二次電池101の構造を簡易とし、製造コストを削減することが可能となる。また、有機溶媒を含む電解液を用いないで済むため、電解液が着火する危険性を排除することができる。
後述の実施例においては、セパレータ109として厚さ50μmのセルロース系不織布を用いた。電解液が濡れやすい他の材料を用いてもよい。
正極107には、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物を正極活物質として含んでいる。その化学組成を示す一般式は、MgME3である。ここで、Mは、マグネシウムイオンの吸蔵・放出に伴って酸化数が4価から6価に変化するホスト金属である。Mは、複数の元素を含んでいてもよい。Eは、O、S、Se又はTeであり、異なる元素の混合であってもよい。通常、Eは−2価の価数を有しているが、マグネシウムイオンの放出に伴い、その価数が−2価〜0価の範囲で正方向に増加するように動作してもよい。Eの一部の酸化数が変化し、平均酸化数が変動する場合があるからである。本発明のペロブスカイト型結晶構造が安定であることが、マグネシウムイオンの吸蔵・放出に必要な条件である。
正極活物質の例としては、MgAlO3、MgMnO3、MgFeO3及びMgSiO3が挙げられる。Mに相当するホスト金属は、Al、Mn、Fe及びSiからなる群から選択された1種類以上の元素である。これらの元素に限定されず、MがTi、Zr、Mo、Ni、Co、Cuなどの遷移金属を含んでいてもよい。
正極活物質にペロブスカイト型化合物を応用することに着目した理由は、このペロブスカイト型化合物に含まれるマグネシウム及びホスト金属Mの個数に対して、元素Eの個数が多いためである。すなわち、金属元素Mg及びホスト金属Mの原子数の和が2であるのに対して、元素Eの原子数が3であるため、金属元素1個当たりの元素Eの原子数が3/2と多い。このため、負の価数を有する元素Eが2価のマグネシウムイオンとホスト金属Mとの静電的反発力を抑制し、マグネシウムイオンの吸蔵量及び放出量を増大させる。さらに、元素Eの原子数に対するホスト金属Mの原子数が少ないため、マグネシウムイオンの吸蔵・放出の際にMが高い酸化数の状態まで酸化される。その結果、正極活物質の作動電位が高くなり、電池の作動電圧を増加させる効果も得られる。なお、上で説明した元素Eは、前出のE1またはE2を含む元素である。
さて、本発明のペロブスカイト型化合物以外の正極活物質を用いた場合、例えばスピネル型結晶構造のMgMn2O4を正極活物質に用いた場合、結晶中の金属Mg及びMnの原子数の合計3個に対し、酸素Oの原子数は4個である。平均すると、金属原子1個に対して酸素原子は4/3個となり、上記のペロブスカイト型化合物の平均値3/2個よりも小さい。さらに、酸素の原子数に対するMnの原子数が上記のペロブスカイト型化合物よりも大きくなるため、マグネシウムイオンを吸蔵する際にマンガンイオンは3価から4価に変化するだけであって、高い電圧を得ることができない。
これに対して、ペロブスカイト型MgMnO3を正極活物質に用いると、金属の原子数が金属Mg及びMnの原子数の合計2個に対し、酸素Oの原子数は3個である。このため、マグネシウムイオンを吸蔵する際、マンガンイオンは4価から6価の高い酸化状態で変化する。このような高酸化状態で酸化還元反応が進行するため、高い電位で正極が動作する。
また、ホスト金属M及びマグネシウムの原子数に対する酸素原子数が多いことは、酸素イオンによる電荷の遮蔽効果が高まり、ホスト金属のイオン(陽イオン)とマグネシウムイオンとの間、ならびにマグネシウムイオン同士の間との静電的な反発力を低減する。その結果、正極活物質の内部におけるマグネシウムイオンの拡散速度を向上させ、マグネシウムイオンの吸蔵量及び放出量を増大させる効果も得られる。これにより、大容量の正極を得ることができる。
正極活物質は、酸化物等の高抵抗材料である。したがって、正極活物質の粒子間の電子の授受を速やかに行う必要がある。そのために、導電性の材料(導電助剤ともいう。)、例えば、炭素粉末や炭素繊維、あるいは耐食性の金属や炭化物からなる粉末や繊維を正極活物質に添加して、正極材料としてもよい。このほか、炭素繊維とともに比表面積が大きい炭素材料、例えば、カーボンブラックや活性炭を用いてもよい。これにより、正極107の導電性を更に向上することができる。
上記一般式MgME3におけるEの組成を化学量論値(Mの原子数1個に対してEの原子数3個)にしないで、わずかに多く、あるいは少なくしてペロブスカイト結晶内部に正電荷(ホール)または負電荷を生成させ、ペロブスカイト結晶に導電性を付与することができる。また、ペロブスカイト結晶を構成するEの化学量論組成3に対して、酸素Oの組成を1.8〜2.2の範囲とすることにより、ペロブスカイト結晶を半導体的な性質を持つ結晶に変化させることができる。
上記一般式MgME3は、化学式MgM1 1-aM2 aE2 bO3-bで表して限定してもよい。この化学式において、M1は、Al、Mn、Fe及びSiからなる群から選択される一種類以上の元素であり、M2は、遷移元素であり、E2は、S、Se及びTeからなる群から選択される一種類以上の元素であり、0≦a≦1であり、0≦b≦3である。S、Se又はTeを構成元素とすることにより、結晶の導電性を高めることができる。
酸素の組成の制御は、Mg若しくは金属Mの塩又はMg若しくは金属Mの酸化物の混合物に熱処理を施し、その熱処理におけるガス雰囲気を調整することにより実現される。ガス雰囲気は、酸素濃度の低い条件あるいは水素等の還元ガスを添加した還元雰囲気、または酸素分圧を21%以上に高くした酸化雰囲気にする。前者は酸素不足の結晶、後者は酸素過剰の結晶の製造に適している。
更に好適な方法は、正極活物質の粒子を細かくすることである。粒径は、1μm以下が望ましく、0.1μm以下が更に望ましい。粒径制御は、ボールミルなどの機械的な粉砕手段と、風流分級などの分級手段とを組み合わせてもよい。また、MgまたはMを含有する塩を液相中で沈殿させる方法(液相反応法)、及びその後の熱処理法を適用すれば、0.1μm以下の粒径を有する正極活物質を合成することができる。さらに、噴霧熱分解法によって0.1μm以下の粒径を有する正極活物質を得ることも可能である。
例えば、硝酸マグネシウムと硝酸アルミニウム等の金属Mの硝酸塩とを水に溶解し、アンモニア水溶液を添加して、マグネシウム及び金属Mの水酸化物を形成させる。これをろ過し、多量の水で水酸化物を洗浄し、アンモニアを除去する。これを大気中500℃で熱処理を行って、マグネシウム及び金属Mの酸化物である正極活物質を合成する。
正極活物質の表面に炭素質材料、金属材料等の導電性材料で被覆をすると、粒子の導電性が向上し、マグネシウムイオンの吸蔵・放出が促進される。
ポリビニルアルコール等の有機化合物を正極活物質と混合し、熱処理をすることにより、有機化合物が分解し、厚さ10nm以下の極薄導電層が正極活物質表面に形成される。熱分解の環境は、正極活物質の表面における酸素等の濃度が変化しないように、不活性雰囲気あるいは還元雰囲気に調整することができる。
後述の実施例の電池には、ポリビニルアルコールを熱分解させた厚さ10nmの炭素層を形成した正極活物質を用いている。熱分解温度は300℃とした。
バインダには、フッ素系バインダやゴム系バインダなどの公知の材料を用いることができる。前者の代表例としては、テトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデンがあり、後者の代表例としては、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリアクリル酸またはそのアルカリ塩などがある。必要に応じて、分散性や粘度を調製するための添加剤(例えば、カルボキシメチルセルロース)を添加してもよい。
正極活物質と、バインダと、必要に応じて導電助剤とを十分に混合し、なめらかな正極合剤のスラリを調製する。このスラリを正極集電体に塗布し、乾燥することによって正極107を製造する。
正極集電体には、厚さが10〜100μmの多孔質炭素フェルト、孔径0.1〜10mmの穿孔を有する炭素シートなどを用いることができる。なお、正極集電体の材料は、炭素に限定されるものではなく、アルミニウム、ステンレス鋼、チタンなどの耐食性材料も適用可能である。正極107が作動する電位で、正極集電体の溶解が起こらず、酸化物層が正極集電体の内部を侵食しない材料であれば適用可能である。これらの条件を満たせば、正極集電体は、材質、形状、製造方法などに制限はなく、任意の材料を使用することができる。
正極合剤のスラリの塗布においては、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法などの既知の方法を採ることができる。また、正極合剤のスラリを正極集電体に塗布した後、有機溶媒を乾燥し、ロールプレスによって正極107を加圧成形することにより、正極107を作製することができる。また、塗布から乾燥までを複数回行うことにより、複数の正極合剤層を重ねて塗工することも可能である。
後述の実施例においては、平均粒径1μmのペロブスカイト型正極活物質に、アセチレンブラックを導電助剤として添加し、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)をバインダとした正極を製造した。その正極活物質の粒子表面には、厚さ10nmの炭素層が形成されている。各材料の重量組成は、正極活物質:アセチレンブラック:SBR=85:12:3とした。
負極108は、金属マグネシウムとした。負極108の種類は、これに限定されず、アルミニウムやジルコニウムなどを微量に添加したマグネシウム合金、Mg2Si、Mg2Bなどのマグネシウム化合物、さらにはマグネシウムイオンを吸蔵・放出する炭素材料を用いることが可能である。炭素材料には、膨張黒鉛や易黒鉛化炭素などのグラフェン層間距離(単原子層間距離)を拡張した炭素材料が好適である。また、グラフェン(単原子層)の炭素原子の一部をホウ素(B)、リン(P)又はケイ素(Si)(以下、「ホウ素等」ともいう。)で置換したものであってもよい。充電時にマグネシウムイオンを析出または吸蔵し、放電時にマグネシウムイオンを溶解または放出する機能を有する材料であれば、負極108に用いることが可能である。
また、負極108に導電性材料を添加して、負極108の内部の導電性を高め、大電流の充放電を可能にすると更に望ましい。導電性材料には、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズ炭素、膨張黒鉛、炭素繊維、気相成長法炭素繊維、ピッチ系炭素質材料、ニードルコークス、石油コークス、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、カーボンブラックなどの微粉末、あるいは五員環または六員環の環式炭化水素または環式含酸素有機化合物を熱分解によって合成した非晶質炭素材料の微粉末、炭素繊維やカーボンナノチューブなども使用することができる。また、金属や半導体のような材料を添加してもよい。ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子材料を負極108の導電性材料に用いることもできる。導電性を有し、負極108の充放電時に分解等の副作用を生じなければ、使用可能である。ただし、必要以上に添加すると、負極108の体積が増大し、電池のエネルギー密度が低下するため、適切な量の導電性材料を用いる。
上記の導電性材料と、グラフェン構造を有する炭素材料とを組み合わせて、負極108を構成することができる。
負極活物質は、シート状であってもよいし、粉末状であってもよい。一般には、後者の方が反応面積を増大させることが容易であり、高性能な二次電池にすることができる。
粉末状の負極活物質を用いる場合は、それにバインダを混合して、粉末同士を結合させるとともに負極集電体に固定する。負極108においては、負極活物質の粒径を合剤層の厚さ以下にすることが望ましい。負極活物質の粉末中に合剤層厚さ以上のサイズを有する粗粒がある場合、予めふるい分級、風流分級などにより粗粒を除去する。
負極108の集電体には、厚さ10〜100μmの銅箔、厚さ10〜100μm、孔径0.1〜10mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板などが用いられる。集電体の材質は、銅の他に、ステンレス鋼、チタン、ニッケルなども適用可能である。本発明においては、材質、形状、製造方法などに特に制限はなく、任意の集電体を選択することができる。
負極活物質、バインダおよび有機溶媒を混合した負極合剤のスラリは、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法などによって負極集電体に塗布した後、有機溶媒を乾燥し、ロールプレスによって負極を加圧成形することにより、負極108を作製する。また、塗布から乾燥までを複数回行うことにより、多層合剤層を集電体の表面に形成することも可能である。なお、後述の実施例においては、マグネシウム合金(AZ61)を用いた。
後述の実施例で用いた正極活物質は、ペロブスカイト型結晶構造を有するマグネシウム化合物である。
電解液(1M Mg(ClO4)2+アセトニトリル)に0.1Mの水を添加した液を用いてもよい。水を共存させることにより、マグネシウムイオンが水和され、マグネシウム塩(電解質)の溶解度が向上する効果が得られる。水の添加量は、0.01〜1Mの範囲とする。添加量が少ない場合、マグネシウムイオンに溶媒和される水が不足し、溶解度を増加させる効果がなくなる。逆に添加量が多すぎる場合、負極上で水の還元反応が進行し、電池容量が低下する。よって、高い溶解度と優れた電池性能とを両立させるためには、0.01〜0.5Mの範囲が好適である。本実施例では、電解液をモレキュラーシーブで脱水し、水分量を50ppm以下としたものを用いた。
上記の方法で製作した正極107とセパレータ109と負極108とを順に積層することにより、積層体(電極群)を製作する。対向する正極107と負極108との間で充放電時にマグネシウムイオンが移動する。積層体の構造は、図3に示す短冊状電極の積層したもの、あるいは円筒状、扁平状などの任意の形状に捲回したものなど、種々の形状にすることができる。電池容器の形状は、電極群の形状に合わせ、円筒型、偏平長円形状、角型などの形状を選択する。
電池の初期エージングは、室温にて実施した。
まず、開回路の状態より5時間率に相当する電流(0.2A)にて定電流の放電を開始し、0.8Vに達するまで放電させた。次いで30分の休止を経て、充電を開始させた。電池電圧が3.5Vに到達した後に、120分の定電圧充電を行った。その後、30分の休止を経て、電池電圧が0.8Vに達するまで0.2Aの定電流放電を行い、30分の休止を設けた。この一連のサイクルを3回行って、初期エージングを終了した。最後の充放電サイクルの際に得られた放電容量から、正極活物質の重量当たりの電気量(単位はmAh/g)を計算し、その値を初期放電容量とした。また、最後の充電容量に対する放電容量の比率を初期充放電効率(充放電効率とも呼ぶ。)と定義し、その値を計算した。
その後、室温にて20サイクルの充放電試験を行った。開回路の状態より5時間率に相当する電流(0.2A)にて充電を開始し、3.5Vに到達した後に、120分の定電圧充電を行った。その後、30分の休止を経て、電池電圧が0.8Vに達するまで0.2Aの定電流放電を行い、30分の休止を設けた。
この一連のサイクル試験の最後の放電容量を正極活物質の重量当たりの電気量(単位はmAh/g)として算出し、上記の初期放電容量に対する比率を容量維持率として導出した。
以下、実施例について具体的に説明する。
下記の実施例1及び2並びに比較例1においては、正極活物質だけを変えて電池を作製し、性能を比較した。負極にはマグネシウム合金(AZ61)を用い、電解液には1M Mg(ClO4)2+アセトニトリル(1MのMg(ClO4)2をアセトニトリルに溶解した溶液)を用いて、図1に示す角型電池を製作した。
硝酸マグネシウム及び硝酸アルミニウムを水に溶解し、アンモニア水溶液を添加して、マグネシウム及びアルミニウムの水酸化物を形成させた。これをろ過し、多量の水で水酸化物を洗浄し、アンモニアを除去した。これを、大気中、500℃で熱処理を行って、正極活物質MgAlO3を合成した。一次粒径は0.01〜0.1μmとした。
この正極活物質とポリビニルアルコールとを混合して正極活物質の表面にポリビニルアルコールの膜を形成し、熱分解することにより、厚さ10nmの炭素層(被覆層)を形成した。この場合の熱分解温度は300℃とした。
この正極活物質MgAlO3を用いて電池B1を作製した。
実施例1とは異なる9種類の正極活物質を合成し、それぞれの正極活物質を用いて電池B2〜B10を作製した。
表1は、結果をまとめて示したものである。
本表より、実施例の電池B1〜B10の初期放電容量は、70mAh/g以上であることがわかる。また、容量維持率は93%以上であることがわかる。さらに、いずれの実施例の充放電効率も97.0%以上の高い値を示し、特にB2〜B12の電池の効率が高かった。
本発明の正極を用いると、正極におけるMgイオンの吸蔵及び放出が容易となり、Mgイオンが正極中の酸素に捕捉されることがないため、充放電効率が高くなったと推定される。なお、電池B1〜B12について20サイクルの充放電サイクル試験を行った結果、充放電効率は、サイクル数の増加に従って徐々に上昇し、10サイクル時点でほぼ100%に達することがわかった。
(比較例)
正極活物質として二酸化マンガン(MnO2)を用いた。導電剤、バインダ等のその他の正極の仕様は変更しなかった。
正極活物質として二酸化マンガン(MnO2)を用いた。導電剤、バインダ等のその他の正極の仕様は変更しなかった。
その結果、初期放電容量は25〜35mAh/g(30±5mAh/g)と小さく、容量維持率は70〜75%と低かった。
この理由は、MnO2正極の内部へのマグネシウムイオンの拡散速度が遅く、マグネシウムイオンの吸蔵・放出の反応抵抗がMgMnO3よりも大きいためと考える。
この比較例を電池B13とし、表1にその結果を示した。
電池B2及びB3で用いた実施例1及び2で用いた電解液(1M Mg(ClO4)2+アセトニトリル)に0.1Mの水を添加して電池を製作した。電解液の組成以外の仕様は、それぞれの電池B2、B3と同じである。電池B2の電解液に水を添加した電池をB11、電池B3の電解液に水を添加した電池をB12とした。
各電池B11、B12について、実施例1に記載した同一条件の初期エージングを行い、10サイクル目の放電容量及び充放電効率を測定した。
これらの結果を表1に示した。
いずれの電池B11、B12も、放電容量が大きく、電池B2及びB3よりも大きくなった。また、20サイクル経過後の容量維持率も98〜99%の高い値を示した。
本発明によれば、マグネシウムイオン二次電池の単位重量当たりの放電容量及び容量維持率を高めることができ、マグネシウムイオン二次電池を軽量化することができる。
以下、マグネシウムイオン二次電池を用いた電池システムについて説明する。
実施例1のB11と同一仕様の角型電池101を多数個製作した。電池の定格容量(設計値)は、5時間率放電条件にて1Ahであった。
図4は、2個のマグネシウムイオン二次電池を直列に接続した電池システムの例を示したものである。
この電池システムをS1とする。なお、電池の直列数及び並列数は、電池システムS1が要求される電力量に応じて、任意に設定することが可能である。
マグネシウムイオン二次電池201a、201bは、正極207、負極208及びセパレータ209で構成された同一仕様の積層体を有し、その上部に正極外部端子204及び負極外部端子205(以下、まとめて「外部端子」とも呼ぶ。)を設けている。各外部端子と電池容器202との間には、絶縁シール212を挿入し、外部端子同士が短絡しないようにしている。
マグネシウムイオン二次電池201aの負極外部端子205は、電力ケーブル213により充放電制御部216の負極入力ターミナルに接続されている。マグネシウムイオン二次電池201aの正極外部端子204は、電力ケーブル214を介して、マグネシウムイオン二次電池201bの負極外部端子205に連結されている。別のマグネシウムイオン二次電池201bの正極外部端子204は、電力ケーブル215により充放電制御部216の正極入力ターミナルに接続されている。このような配線構成によって、2個のマグネシウムイオン二次電池201a、201bを充電または放電することができる。
充放電制御部216は、電力ケーブル217、218を介して、外部機器219(外部に設置した機器)との間で電力の授受を行う。外部機器219には、充放電制御部216に給電するための外部電源や回生モータ等の各種電気機器、ならびに電池システムS1が電力を供給するインバータ、コンバータおよび負荷が含まれている。外部機器219が利用する交流又は直流の種類に応じて、インバータ等を設ければよい。これらの外部機器219は、公知のものを任意に適用することができる。
また、再生可能エネルギーを生み出す機器として風力発電機の動作条件を模擬した発電装置222を設置し、電力ケーブル220、221を介して充放電制御部216に接続した。発電装置222が発電する際には、充放電制御部216が充電モードに移行し、外部機器219に給電するとともに、余剰電力をマグネシウムイオン二次電池201a及び201bに充電する。また、発電装置222が風力発電機等のように発電量が安定しないものの場合、外部機器219の要求電力よりも少ないときには、マグネシウムイオン二次電池201a及び201bを放電するように充放電制御部216が動作する。なお、発電装置222は、他の発電装置、すなわち、太陽電池、地熱発電装置、燃料電池、ガスタービン発電機などの任意の装置に置換することができる。充放電制御部216は、上述の動作をするように自動運転可能なプログラムを記憶させておくことが望ましい。
マグネシウムイオン二次電池201a、201bは、定格容量が得られる通常の充電を行う。例えば、5時間率の充電電流にて各電池の電圧が3.5Vの定電圧充電を4時間、実行することができる。充電条件は、二次電池の材料の種類、使用量などの設計で決まるので、電池の仕様ごとに最適な条件とする。
マグネシウムイオン二次電池201a、201bを充電した後には、充放電制御部216を放電モードに切り替えて各電池を放電する。通常は、一定の下限電圧に到達したときに放電を停止する。
充電時においては、発電装置222が電力を供給し、放電時においては、外部機器219が電力を消費するようになっている。例えば、1時間率放電まで実施し、2時間率放電時の容量に対して90%の高い容量を得るようにした。
本発明の要旨を変更しない範囲で、具体的な構成材料、部品などを変更してもよい。また、本発明の構成要素を含んでいれば、公知の技術を追加し、あるいは公知の技術で置き換えることも可能であり、発電装置222は、太陽光、地熱、波力エネルギーなどの任意の再生可能なエネルギー発電システムに置き換えることができる。
また、外部機器219は、電気モータなどの駆動装置に置き換えると、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、運搬機器、建設機械、介護機器、軽車両、電動工具、ゲーム機、映像機、テレビ、掃除機、ロボット、携帯端末情報機器などに利用することも可能である。
さらに、マグネシウムイオン二次電池と太陽光発電や燃料電池システムとを電力ケーブルで接続することにより、電力貯蔵システムを製造することができる。また、海底探索潜水艦や宇宙ステーションなどの電源としても利用可能である。
図5は、マグネシウムイオン二次電池を用いた電池システムの設置例を示す概略構成図である。
本図においては、ビル401の屋上402に複数個のマグネシウムイオン二次電池403が積み重ねて設置されている。
従来の鉛蓄電池は、電極に用いる鉛の重量(密度)が大きいため、多数個を積み重ねて設置することが困難である。また、従来の鉛蓄電池をビルの屋上等の上階に設置することは、建物の強度や耐震性の観点から問題があった。このため、従来の鉛蓄電池は、地階などに重ねずに設置する必要があった。
また、リチウムイオン二次電池は、1価のイオンであるリチウムイオンを利用する電池であるため、2価のイオンであるマグネシウムイオンを利用するマグネシウムイオン二次電池403に比べて単位重量当たり又は単位体積当たりの理論的な電池容量の限界値が小さい。すなわち、リチウムイオン二次電池をビルの屋上等の上階に設置する場合、同じ電池容量を有するマグネシウムイオン二次電池403に比べて重くなり、鉛蓄電池と同じ問題が生じる。
したがって、マグネシウムイオンを充分に吸蔵できるマグネシウムイオン二次電池403は、他の電池に比べて、電池容量当たりの重量を小さくすることができ、ビル401の屋上402等、重量制限のある場所に設置することが容易となる。
本発明によれば、単位重量当たり又は単位体積当たりの電池容量を大きくすることができるため、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、運搬機器、建設機械、介護機器、軽車両、電動工具、ゲーム機、映像機、テレビ、掃除機、ロボット、携帯端末情報機器などの移動可能な機器、又は電力貯蔵システムなどの電池システムにマグネシウムイオン二次電池を組み込んで使用することができる。
10:単位格子、11:ホスト金属イオン、12:酸素イオン、13:マグネシウムイオン、20:結晶格子、21:ホスト金属イオン、22:酸素イオン、23:マグネシウムイオン、101:マグネシウムイオン二次電池、102:電池容器、103:蓋、104:正極外部端子、105:負極外部端子、107:正極、108:負極、109:セパレータ、110:正極リード部、111:負極リード部、112:絶縁性シール、201a、201b:マグネシウムイオン二次電池、202:電池容器、204:正極外部端子、205:負極外部端子、207:正極、208:負極、209:セパレータ、212:絶縁性シール、213、214、215:電力ケーブル、216:充放電制御部、217、218:電力ケーブル、219:外部機器、220、221:電力ケーブル、222:発電装置、401:ビル、402:屋上、403:マグネシウムイオン二次電池。
Claims (10)
- 正極及び負極におけるマグネシウムイオンの吸蔵・放出によって作動するマグネシウムイオン二次電池に用いる正極活物質であって、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含むことを特徴とする正極活物質。
- 前記化合物は、化学式MgME1 3(式中、Mは、Al、Mn、Fe及びSiからなる群から選択される一種類以上の元素を含み、E1は、O、S、Se及びTeからなる群から選択される一種類以上の元素である。)で表されることを特徴とする請求項1記載の正極活物質。
- 前記化合物は、化学式MgM1 1-aM2 aE2 bO3-b(式中、M1は、Al、Mn、Fe及びSiからなる群から選択される一種類以上の元素であり、M2は、遷移元素であり、E2は、S、Se及びTeからなる群から選択される一種類以上の元素であり、0≦a≦1であり、0≦b≦3である。)で表されることを特徴とする請求項1記載の正極活物質。
- 前記化合物の粒子の表面を導電性材料で被覆したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の正極活物質。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の正極活物質を用いたことを特徴とする正極材料。
- 請求項5記載の正極材料と、バインダとを含むことを特徴とする正極合剤。
- 請求項6記載の正極合剤を集電体に塗工した構成を有することを特徴とする正極。
- 正極と、負極と、電解液とを含み、前記正極は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の正極活物質を含むことを特徴とするマグネシウムイオン二次電池。
- 請求項8記載のマグネシウムイオン二次電池を含み、前記マグネシウムイオン二次電池に電気エネルギーを貯蔵し、又は、利用する構成を有することを特徴とする電池システム。
- 請求項9記載の電池システムを含むことを特徴とする機器。
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JP2014143183A (ja) * | 2012-12-27 | 2014-08-07 | Showa Denko Kk | マグネシウムイオン二次電池用正極活物質及びその製造方法、マグネシウムイオン二次電池用正極並びにマグネシウムイオン二次電池 |
CN109659536A (zh) * | 2018-12-18 | 2019-04-19 | 中科廊坊过程工程研究院 | 一种镁离子电池正极材料及其制备方法和应用 |
-
2011
- 2011-06-01 JP JP2011122988A patent/JP2012252813A/ja not_active Withdrawn
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