以下、本発明に係る車両シート1用のシート乗員判定装置10の第1の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書中において使用する「前後、左右、上下」の方向は車両シート1に着座した乗員から見た車両の各方向を基準として記述している。また本実施形態において車両は左ハンドルとし、チャイルドシート5は助手席に設置するものとする。
図1に示すように、助手席用の車両シート1は、乗員が着座するシートクッション11と、シートクッション11の後端部において前後方向に回動可能に取り付けられ、乗員の背もたれとなるシートバック12とを備えている。また、シートバック12の上端には、乗員の頭部を支持するヘッドレスト13が取り付けられている。
シートクッション11は、シートフレーム111、シートフレーム111の上方に配置されたパッド部材112、およびパッド部材112の表面を覆う表皮113により形成されている。シートフレーム111の下面には、左右一対のアッパレール14R、14Lが取り付けられている。アッパレール14R、14Lは、車両のフロア4上に固定された一対のロアレール41R、41L上に、それぞれ前後方向に移動可能に係合している。これにより車両シート1は、フロア4上を前後方向に移動して、乗員の所望する位置に固定可能に形成されている。
次にシート乗員判定装置10について図1乃至図3に基づいて説明する。シート乗員判定装置10は、ALR機構(図略)を備えた3点式のシートベルト装置6(図3参照)を有し、バックルスイッチ65(本発明のシートベルト装着検出手段に該当する)と、前方荷重センサFL(本発明の前方荷重検出手段に該当する)および後方荷重センサRL(本発明の後方荷重検出手段に該当する)と、コントローラ3(本発明のチャイルドシート固縛判定手段に該当する)と、を有している。
シートベルト装置6は、車両シート1を前方から見た図3に示すように、一端部がタングプレート63により互いに接続されたショルダストラップ61、ラップストラップ62、およびタングプレート63と着脱されることによりバックルスイッチ65を形成するバックル64を備えている。車両シート1の右方に位置する図示しないピラー内にはリトラクタ(本発明の巻取り装置に該当する)が配置されている。ショルダストラップ61の上端はリトラクタと接続されており、ショルダストラップ61は、リトラクタによる巻き取り力に抗して引き出される。
一方、ラップストラップ62の他端部は、車両シート1の右側において車両フロア4と接続され固定されている。バックル64は、支持部64aが車両シート1の後方左側に支持され後述するタングプレート63を挿入するための開口穴が上方に向いて固定されている。ショルダストラップ61とラップストラップ62とに接続されたタングプレート63は、バックル64の開口穴から挿入され係合して固定される。なお、以降においてショルダストラップ61およびラップストラップ62をまとめて言う場合、シートベルト66という。
シートベルト装置6のタングプレート63とバックル64とが非係合状態にある時、バックルスイッチ65は開状態(オフ)にある。タングプレート63とバックル64とが係合することにより、バックルスイッチ65は閉状態(オン)となり、コントローラ3はシートベルト装置6が装着されたことを検出する。
シートベルト装置6はALR(Automatic Locking Retractor)機構を有している。ALR機構はシートベルト66がリトラクタから所定量引き出された状態においてシートベルト66の引き出し作動をロックしシートベルト66の巻き取り方向の作動のみを許容する装置である。ALR機構は主に車両シート1上にチャイルドシート5を取付ける際に利用される機構である。ALR機構については公知であるため詳細な説明は省略する。
前後一対の前方荷重センサFL、および後方荷重センサRLは、シートフレーム111とアッパレール14Lとの間に、前後に所定距離だけ隔離配置され介装されている。図1に示すように、前方荷重センサFLは、シートクッション11の前後中心よりも前方部に設けられている。また、後方荷重センサRLは、シートクッション11の前後中心よりも後方部に設けられている。
前方荷重センサFL、および後方荷重センサRLは、いずれも歪ゲージ等により形成された荷重センサである。前方荷重センサFL、および後方荷重センサRLは共に車両出荷状態において各荷重値Ff、Rfが0にリセットされ、車両シート1への乗員の着座あるいは荷物の載置等によりシートクッション11に対し下方に加わる荷重を検出する。尚、本発明は、前方荷重センサFL、および後方荷重センサRLの種類、型式、検出原理を、特定のものに限定するものではない。
前方荷重センサFLは、シートフレーム111の前方部分と左側のアッパレール14Lとの間に介装され、シートクッション11の前方左側部分が受け持つ前方荷重値Ffを検出する。同様に、後方荷重センサRLは、シートフレーム111の後方部分と左側のアッパレール14Lとの間で、且つ車両シート1に支持されるバックル64の支持部64aの近傍に介装され、シートクッション11の後方左側部分が受け持つ後方荷重値Rfを検出する。
図2に示すように、前方荷重センサFL、後方荷重センサRLは、それぞれセンサ部21F、21Rと、センサ部21F、21Rによって発生された検出信号を増幅するアンプ部22F、22Rと、を備えている。センサ部21F、21Rは、それぞれ4個の歪ゲージからなるホイートストンブリッジ回路によって形成されている。
前方荷重センサFL、後方荷重センサRLには、コントローラ3が接続されている。コントローラ3は、前方荷重センサFL、後方荷重センサRLからのアナログ検出信号をデジタル変換するA/D変換器31、該検出信号に基づき演算を行なう演算部32、着座状態を判定するために必要な演算部32での演算結果等、種々のデータを記憶する記憶部33、および演算部32の演算結果に基づき車両シート1へのチャイルドシートの固縛を判定する判定部34を備えている。
演算部32は本発明にかかる前後和荷重値演算手段35と前後差荷重値演算手段36とを有している。前後和荷重値演算手段35は、前方荷重センサFLで検出された前方荷重値Ffと後方荷重センサRLで検出された後方荷重値Rfとを加算して前後和荷重値(Ff+Rf)を演算する。前後差荷重値演算手段36は後方荷重値Rfから前方荷重値Ffを減算して前後差荷重値(Rf−Ff)を演算する。そして演算された前後和荷重値(Ff+Rf)および前後差荷重値(Rf−Ff)は記憶部33に記憶された後、判定部34に送信される。なお、本実施形態においては前後差荷重値を後方荷重値Rfから前方荷重値Ffを減算して求めた。これにより前後差荷重値(Rf−Ff)の変動は負の値となる。しかし、この形態に限らず前後差荷重値を前方荷重値Ffから後方荷重値Rfを減算して求めても良い。この場合には前後差荷重値(Ff−Rf)の変動は正の値となるため、その点に留意しておけばよい。
判定部34では、バックルスイッチ65によってシートベルト66の装着が検出された時点から計測される判定期間Tを監視している。そして判定期間Tが所定の期間Tm(例えば10分)内であり、かつ前後和荷重値(Ff+Rf)の値が所定値Ts以内である場合においてチャイルドシート5の固縛の判定を実行する。なお、所定値Tsとは、子供や大人が着座したときに発生する前後和荷重値(Ff+Rf)より小さな値である。よって、前後和荷重値(Ff+Rf)が所定値Ts以内であれば、子供や大人の着座可能性は排除でき、チャイルドシート5の装着を精度よく検出できる。
さらに、判定部34は判定期間Tが所定の期間Tm内である場合には、第1所定値Fm以上の前後和荷重値(Ff+Rf)の減少(本発明の変動に該当する)が第1所定時間trm(例えば1S)内で発生し、その後復帰することを確認する。また第2所定値Fn以上の前後差荷重値(Rf−Ff)の減少(本発明の変動に該当する)が第2所定時間trn(例えば1S)内で発生し、その後復帰することを確認する。そして第1所定時間trm内での前後和荷重値(Ff+Rf)の第1所定値Fm以上の減少および復帰と、第2所定時間trn内での前後差荷重値(Rf−Ff)の第2所定値Fn以上の減少および復帰とが所定期間Tp内に検出されたときに車両シート1にはチャイルドシート5が固縛されたと判定する。なお、この場合、所定期間Tpは、事前に実験等の結果に基づいて決定される値であり、前後和荷重値(Ff+Rf)の減少と、前後差荷重値(Rf−Ff)の減少との相互の作動の間隔がオーバーラップしている程度の期間をいい、完全に一致している必要はない。また上記において第1所定値Fm、第2所定値Fnは、誤判定を防止するための閾値であり、これらも事前の実験等によって、設定値を決定すべきものである。第1所定値Fm、第2所定値Fnは、実際にシートベルトを引張ったときの前後和荷重値(Ff+Rf)、および前後差荷重値(Rf−Ff)の変動量を参考にして決定すればよい。
バックルスイッチ65は、コントローラ3に接続されている。バックルスイッチ65には、直流抵抗71を介して車両のバッテリ72が接続されている。バックルスイッチ65が開状態にある時、直流抵抗71に電流が流れないため、コントローラ3はバッテリ72の正側端子電圧(ハイ)を検出している。バックルスイッチ65が閉状態になると直流抵抗71に電流が流れ、コントローラ3は直流抵抗71による電圧降下(ロー)を検出することができる。これにより、コントローラ3は、バックル64がタングプレート63(後述する)と係合し、シートベルト装置6が装着されたことを検出する。
さらに、コントローラ3には、車両のイグニッションスイッチ8が接続されている。コントローラ3は、イグニッションスイッチ8がオン状態にあるか、オフ状態にあるかを検出することができる。
次に、図3、および図4のグラフに基づき、車両シート1のシートクッション11上に、チャイルドシート5を取り付ける方法、およびチャイルドシート5を取り付けた場合に前方荷重センサFL、後方荷重センサRLによって検出される各荷重の挙動について説明する。図4のグラフは発明者が測定したチャイルドシート5取付け時の前後和荷重値(Ff+Rf)と前後差荷重値(Rf−Ff)の実測データの一例である。図4において実線が前後和荷重値(Ff+Rf)を示し、破線が前後差荷重値(Rf−Ff)を示している。また、バックルスイッチ65の作動信号をBSとして示している。
図3に示すように本実施形態において、チャイルドシート5は、着座する乳幼児が車両の後方を向くように、車両シート1に後ろ向きに取り付けられる。チャイルドシート5をシートクッション11上に載置した後、まずシートベルト66を図示しないリトラクタ(本発明の巻取り装置に該当する)から全て(または所定長さ)引き出す。これによりシートベルト66が巻き取り方向への作動のみ許容されるALRモードに切替えられる。この状態でシートベルト66のラップストラップ62の一部をチャイルドシート5の図示しないシートベルト取付け部に通しタングプレート63をバックル64に挿入し係合させる。このとき、車両シート1の後方にあるバックル64にタングプレート63を上方から挿入して係合させるので、バックル64および車両シート1の後方には下方に押圧する力が加わり後方荷重センサRLの後方荷重値Rfが増大する。またこのとき同時にチャイルドシート5の前方左側は浮き上がり気味になり、車両シート1の前方左側に設けられた前方荷重センサFLが検出する前方荷重値Ffが若干減少する。これにより図4、a部に示すように前後和荷重値(Ff+Rf)が大きく増加するとともに、前後差荷重値(Rf−Ff)も増加する。
その後、タングプレート63とバックル64との係合が完了すると、タングプレート63により車両シート1を下方に押圧する荷重が解除される。したがって、これ以降は、前方荷重センサFLおよび後方荷重センサRLは、チャイルドシート5自体の荷重を検出するため、前後和荷重値(Ff+Rf)は減少する(図4、b部参照)。
次に、チャイルドシート5の取付け者が、たるんだショルダストラップ61およびラップストラップ62をリトラクタの巻取り方向に向かって押込み、リトラクタに巻き取らせる。そしてシートベルト66のたるみを完全に除去した上で、ショルダストラップ61をさらに引張りチャイルドシート5を車両シート1上に固定する。
図3の実線矢印に示すように、このときリトラクタの巻取り方向に向かってショルダストラップ61を引っ張るとショルダストラップ61に連結されるバックル64およびバックル支持部64aは上方に引っ張られるのでバックル64近傍に設けられた後方荷重センサRLの後方荷重値Rfは減少する。また、このとき同時に、シートベルト66の巻取り方向への引張りによって、チャイルドシート5の後方部ではシートベルト66のラップストラップ62が、バックル64と、バックル64と反対側の車両フロア4との間でチャイルドシート5を車両シート11の上面に押圧する。このため、チャイルドシート5の重心が後方に移動しチャイルドシート5の前方部が浮き上がって前方荷重センサFLの前方荷重値Ffが減少する。
そして、これらの荷重値を複合した荷重が前方荷重センサFLと後方荷重センサRLとに入力される。具体的には前方荷重センサFLの前方荷重値Ffはバックル64の引き上げの影響と、チャイルドシート5の後方が車両シート11の上面に押圧される影響とによって減少する。また後方荷重センサRLの後方荷重値Rfはチャイルドシート5の後方が車両シート11の上面に押圧される影響によって増加するが、該増加を上回るバックル64の引き上げの影響を加味すると結果として大きく減少する。
これにより前後和荷重値(Ff+Rf)は大きく減少し、前後差荷重値(Rf−Ff)も減少する(図4、c部およびd部参照)。そして、このときのそれぞれの減少量がともに第1、および第2所定値Fm、Fnを超え、かつ第1、および第2所定時間時間(例えば1S)内で減少(変動)し、その後再び減少前の前後和荷重値(Ff+Rf)、および前後差荷重値(Rf−Ff)の近傍値まで復帰すれば、条件をクリアしたとして、チャイルドシート5を固縛するためのシートベルトの引張り動作が為されたものと判定する。なお、減少前の前後和荷重値(Ff+Rf)、および前後差荷重値(Rf−Ff)の近傍値まで復帰するのは取付者がシートベルトの引張りをやめたことにより発生する現象である。これにより引張りによる荷重は短時間で開放され後方荷重センサRLおよび前方荷重センサFLに加わる荷重はチャイルドシート5の本来の重さ分のみとなり荷重値は復帰する(図4、c部およびd部参照)。
実際のチャイルドシート5の固縛にはこのような引張り動作が複数回行なわれる。よって図4に示すように、前後和荷重値(Ff+Rf)、および前後差荷重値(Rf−Ff)の複数の減少および復帰の挙動が見られる。そして、前後和荷重値(Ff+Rf)、および前後差荷重値(Rf−Ff)の減少および復帰の挙動が上述したように所定の判定期間Tm(例えば10分)内において所定期間Tp内で出現したときに各挙動は1回のシートベルトの引っ張り動作の結果としてそれぞれ発生したものであると判定できる。これによって車両シート1にはチャイルドシート5が固縛されたと判定し、エアバックの展開を禁止する。なお、本実施形態においては減少が第1、および第2所定値Fm、Fnを超えたのちに、再び減少前の前後和荷重値(Ff+Rf)、および前後差荷重値(Rf−Ff)の近傍値まで復帰することを確認している。しかしこれに限らず、復帰は確認しなくてもよい。これによっても、相応の効果が得られる。また、以上、左ハンドル車両に搭載された助手席用の車両シート1における着座荷重の変化について説明したが、右ハンドル車両に搭載された助手席用の車両シートの場合、これまでの説明に対して、左右の関係が逆になることは言うまでもない。
次に、図5、図6のフローチャート1、2に基づき、本実施形態における、シート乗員判定装置10によるシート乗員判定方法について説明する。シート乗員判定装置10は、イグニッション8がOFF状態であり車両シート1上の荷重が所定値以下で、且つシートベルト装置6のバックルスイッチ65(シートベルト装着検出手段)がオンされていない状態においては、車両シート1上に乗員なし、と判定し記憶している。
そして、バックル64にタングプレート63が挿入されバックルスイッチ65がオンされると、コントローラ3が起動され、車両シート1上に乗ったのが大人(または子供)であるか、チャイルドシート5であるかの判定を開始する。本実施形態においては、このように乗員なしの状態からバックルスイッチ65がオンされた場合の判定方法である。なお、イグニッション8はOFFに限らず、ON状態でもよい。
フローチャート1は前後和荷重値(Ff+Rf)およびチャイルドシート5の固縛についての判定チャートであり、フローチャート2は前後差荷重値(Rf−Ff)についての判定チャートである。前後和荷重値(Ff+Rf)および前後差荷重値(Rf−Ff)は、前方荷重値Ffおよび後方荷重値Rfを取得したのちに平行に処理が行なわれるため2つのチャートに分離した。
まず図5に示す、フローチャート1について説明する。最初に、フローチャート1のステップS11(シートベルト装着検出ステップ)では、シートベルト装置6のバックルスイッチ65(シートベルト装着検出手段)がオンしたか否かが判定される。本実施形態においては、イグニッションスイッチ8の作動状態に拘わらず、車両のメインコントローラ(図示せず)が、バックルスイッチ65の作動状態を監視している。前述したようにイグニッションスイッチ8がオフ状態にある場合に、バックルスイッチ65がオンしたことが検出されると、メインコントローラによってシート乗員判定装置10のコントローラ3が起動され、それ以降、シート乗員判定装置10によるチャイルドシート5の固縛の判定が実行される。
バックルスイッチ65がオンしたと判定されると、ステップS12で前方荷重センサFLが検出する前方荷重値Ff、および後方荷重センサRLが検出する後方荷重値Rfのそれぞれのデータ番号を示す添え字iが初期化される。ステップS13では、判定期間Tの測定を開始する。ステップS14では、添え字iに1を代入し、ステップS15(前方荷重検出ステップ)、S16(後方荷重検出ステップ)で最初のデータである前方荷重値Ff(1)および後方荷重値Rf(1)を取得し、取得した前方荷重値Ff(1)および後方荷重値Rf(1)をコントローラ3の記憶部33に記憶させる。
ステップS17(チャイルドシート固縛判定ステップ)では、判定期間Tが事前に設定される所定値Tmを越えていないか、否かが確認される。Tmを越えていなければステップS18(前後和荷重値演算ステップ)に移動し前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))が演算されステップS19に移動する。所定値Tmを越えていれば、判定期間はすでに終了しているのでステップS33に移動し、プログラムを終了する。
ステップS19では、前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))が、事前に設定された所定値Tsを越えていないかが判定される。所定値Tsを越えた時には車両シート1上にあるのはチャイルドシート5ではなく、もっと重い例えば大人(または子供)である可能性があるため、仮判定状態とし、プログラムを終了する。このとき、仮判定状態とされた大人、または子供については、別のプログラムに移行して判定する。今回の発明については、別のプログラムについての説明は省略する。
ステップS20では、前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))が最大値であるか確認する。初回であれば必ず最大値となるので、ステップS21に移動し、最大値Faを更新し、コントローラ3の記憶部33に記憶させる。ステップS22では最大値Faを更新したときの時刻を記憶部33に記憶させる。その後ステップS14に戻り、ステップS14〜ステップS20の処理を行なう。
ステップS20において、最大値Faが更新されなくなったときにはステップS23に移動する。ステップS23では、前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))が最小値Fbであるか確認する。初回であれば必ず最小値とし、ステップS24で最小値Fbを更新し、コントローラ3の記憶部33に記憶させる。ステップS25では最小値Fbを更新したときの時刻を記憶部33に記憶させる。その後ステップS14に戻り、ステップS14〜ステップS23の処理を行なう。
ステップS23において、最小値Fbが更新されないときにはステップS26に移動する。ステップS26では前後和荷重値(Ff+Rf)がステップS21で記憶した減少の起点となる最大値Fa近傍まで復帰しているか否かが確認される。もし復帰していなければ、再びステップS14に戻り、ステップS26で復帰するまで処理を繰り返す。しかしFa近傍まで復帰していれば、ステップS27に移動する。
ステップS27では前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))の減少の変動量を示す(Fa−Fb)を演算する。次にステップS28では、ステップS22、ステップS25で記憶した最大値Faと最小値Fbが検出された各時刻、tr1とtr2とによって最大値Faから最小値Fbまでに要した変動時間(tr2−tr1)を演算する。
そしてステップS29(チャイルドシート固縛判定ステップ)では、最大値Faと最小値Fbとの差である、変動量(Fa−Fb)が事前に設定した第1所定量Fm以上であるか否かを確認する。第1所定量Fm以上であれば、シートベルト66を引っ張ったことによって減少した荷重分であることがわかり、このときはステップS30に進む。また第1所定量Fm未満であれば、変動量(Fa−Fb)が充分でないため、再びステップS14に戻り、ステップS29で変動量(Fa−Fb)が第1所定量Fm以上となるまで処理を繰り返す。
ステップS30(チャイルドシート固縛判定ステップ)では前後和荷重値(Ff+Rf)の減少に要した時間(tr2−tr1)が確認され、時間(tr2−tr1)が事前に設定した第1所定時間trm以下であれば最後の確認ステップであるステップS31に進む。時間(tr2−tr1)が第1所定時間trm以上であればステップS14に戻り、ステップS14〜ステップS30まで繰り返し処理する。
そしてステップS31(チャイルドシート固縛判定ステップ)では、後述するフローチャート2によって演算される前後差荷重値(Rf(i)−Ff(i))の減少が終了した時刻tr4とフローチャート1によって演算された前後和荷重値(Ff(i)+Rf(i))の減少が終了した時刻tr2との差が演算され、差の大きさが事前に設定された所定期間Tp以内であるときにステップS32(チャイルドシート固縛判定ステップ)でチャイルドシート5が車両シート1に固縛されたと判定しエアバッグ用ECUに対し判定結果を送信する。また所定期間Tpを越える場合にはステップS14に戻る。
次に前後差荷重値(Rf−Ff)を処理するフローチャート2について説明する。フローチャート1とフローチャート2は一部が同様であるので、共通部分については説明を省略する。
ステップS10〜ステップS17まではフローチャート1とフローチャート2は同様である。ステップS17では、判定期間Tが所定の期間Tmを越えていないか、否かが確認される。所定の期間Tmを越えていなければステップS40(前後差荷重値演算ステップ)に移動し前後差荷重値(Rf(i)−Ff(i))が演算されステップS41に移動する。判定期間Tの所定期間Tmを越えていれば、判定期間はすでに終了しているのでステップS53に移動し、プログラムを終了する。
ステップS41では、前後差荷重値(Rf(i)−Ff(i))が最大値であるか確認する。初回であれば必ず最大値となるので、ステップS42に移動し、最大値Fcを更新し、コントローラ3の記憶部33に記憶させる。ステップS43では最大値Fcを更新したときの時刻を記憶部33に記憶させる。その後ステップS14に戻り、最大値Fcが更新されなくなるまでステップS14〜ステップS17、およびステップS40、ステップS41の処理を繰り返す。
ステップS41において、最大値Fcが更新されなくなったときにはステップS44に移動する。ステップS44では、前後差荷重値(Rf(i)−Ff(i))が最小値Fdであるか確認する。初回であれば必ず最小値とし、ステップS45で最小値Fbを更新し、コントローラ3の記憶部33に記憶させる。ステップS46では最小値Fdを更新したときの時刻を記憶部33に記憶させる。その後ステップS14に戻り、最小値Fdが更新されなくなるまでステップS14〜ステップS17、ステップS40、ステップS41、およびステップS44の処理を繰り返す。
ステップS44において、最小値Fdが更新されないときにはステップS47に移動する。ステップS47では前後差荷重値(Rf(i)−Ff(i))がステップS42で記憶した減少の起点となる最大値Fc近傍まで復帰しているか否かが確認される。もし復帰していなければ、再びステップS14に戻り、ステップS47で復帰が確認されるまで処理を繰り返す。しかしFc近傍まで復帰していれば、ステップS48に移動する。
ステップS48では前後差荷重値(Rf(i)−Ff(i))の減少の変動量を示すFc−Fdを演算する。次にステップS49では、ステップS43、ステップS46で記憶した最大値Fcと最小値Fdが検出された各時刻、tr3とtr4とによって最大値Fcから最小値Fdまでに要した変動時間(tr4−tr3)を演算する。
そしてステップS50(チャイルドシート固縛判定ステップ)では、最大値Fcと最小値Fdとの差である、変動量(Fc−Fd)が事前に設定した第2所定量Fn以上であるか否かを確認する。第2所定量Fn以上であれば、シートベルト66を引っ張ったことによって減少した荷重分であると判定でき、このときはステップS51に進む。また第2所定量Fn未満であれば、変動量(Fc−Fd)が充分でないため、再びステップS14に戻り、ステップS29で変動量(Fc−Fd)が第2所定量Fn以上となるまで処理を繰り返す。
ステップS51(チャイルドシート固縛判定ステップ)では前後和荷重値(Ff+Rf)の減少に要した時間(tr4−tr3)が確認され、時間(tr4−tr3)が事前に設定した第2所定時間trnを越えていればステップS14に戻り、ステップS14〜ステップS17、およびステップS40〜ステップS51を繰り返し処理する。
しかし時間(tr4−tr3)が事前に設定した第2所定時間trn以下であればステップS52に進み、時刻tr4をフローチャート1のステップS31に挿入する。そして上述したように、フローチャート1のステップS31では、前後差荷重値(Rf−Ff)の減少が終了した時刻tr4(最小値Fdが最後に更新された時刻)とフローチャート1によって演算された前後和荷重値(Ff+Rf)の減少が終了した時刻tr2(最小値Fbが最後に更新された時刻)との差が演算され、差の大きさが事前に設定された所定期間Tp以内であるときに、ステップS32でチャイルドシート5が車両シート1に固縛されたと判定しエアバッグ用ECUに対し判定結果を送信する。
上述の説明から明らかな様に、シートベルト装置6がALR機構を有する本実施形態においては、車両シート1の下側の一方側である左側の前後に前方荷重センサFL(前方荷重検出手段)および後方荷重センサRL(後方荷重検出手段)が隔離配置されている。つまり前方荷重センサFL(前方荷重検出手段)および後方荷重センサRL(後方荷重検出手段)はバックル64と同じ側である車両においてドアと反対側の、いわゆるインナー側に設けられる。そしてチャイルドシート5を固縛するためにシートベルト66を引っ張る度に車両シート1に設けられるバックル支持部64aは上方に引っ張られチャイルドシート5および車両シート1の重心がバックル支持部64aを中心として車両シート1の対角線方向に移動する。これにより前後に配置された各荷重検出手段がそれぞれの配置位置に応じた減少(変動)後の各荷重値Ef、Rfをそれぞれ取得する。その後、安定した判定の指標とするため各荷重値Ef、Rfを加算した前後和荷重値(Ff+Rf)および各荷重値Ef、Rfの差を演算した前後差荷重値(Rf−Ff)を演算する。そしてシートベルト66の装着が検出された時点以降の判定期間T内において、所定値Ts以下であり第1所定時間trm内で第1所定値Fm以上減少(変動)した前後和荷重値(Ff+Rf)と、第2所定時間trn内で第2所定値Fn以上減少(変動)した前後差荷重値(Rf−Ff)とが所定期間Tp内に検出されたときに車両シート1にチャイルドシートが固縛されたと判定する。このように、前方荷重センサFLおよび後方荷重センサRLをバックルと同じ側であるインナー側に設けることにより、大人が着座したときには、たとえ体重移動等によっても出現しえないシートベルトの引っ張りによって発生する各荷重値Ef、Rfの充分な量の減少変動を安定して取得することができる。これにより低コスト、且つ高精度にチャイルドシートの固縛を判定することができる。
なお、本発明においては、シートクッション11に設けられる前方および後方荷重センサFL、RLは、少なくともシートクッション11の左右の一方側の前後に一対設ければよい。したがって、シートクッション11の右方のみに、前後一対の前方および後方荷重センサFR、RRを取り付けてもよい。また、シートクッション11の4隅にそれぞれ着座センサを取り付けてもよい。さらには、シートクッション11の左右の一方側の前後に一対設け、他方側の前後いずれか一方に一個だけ前方または後方荷重センサを取り付けてもよい。
ここで、上述したシートクッション11の右方の前後に前方および後方荷重センサFR、RRを配置した場合の別の実施形態について簡単に説明する(図1のFR、RR参照)。
別の実施形態では、車両用シート1の右側であるいわゆるアウター側(ドア側)を一方側とし、アウター側の前後に前方荷重センサFR(前方荷重検出手段)および後方荷重センサRR(後方荷重検出手段)を隔離配置した。
別の実施形態では第1の実施形態と同様に、チャイルドシート5を車両シート1上に固定するためシートベルト66をリトラクタの巻き取り方向に引張ると、車両用シート1のインナー側に設けられたバックル支持部64aが持ち上げられる。これによりバックル支持部64aに対して車両シート1における対角線上にあるアウター側(右側)に配置された前方荷重センサFR(前方荷重検出手段)には大きな荷重が入力されて前方荷重値Ffが増加(変動)する。このとき後方荷重センサRR(後方荷重検出手段)の後方荷重値Rfはバックル支持部64aの持ち上げの影響により減少(変動)する。
また、第1の実施形態で説明したようにリトラクタの巻取り方向に向かってシートベルト66を引張ると、同時にチャイルドシート5の後方部ではシートベルト66のラップストラップ62が、バックル64と、バックル64と反対側の車両フロア4との間でチャイルドシート5を車両シート11の上面に押圧する。このため、チャイルドシート5の重心が後方に移動し、後方荷重センサRR(後方荷重検出手段)の後方荷重値Rfを増加(変動)させるとともに、チャイルドシート5の前方部を浮き上がらせるよう作用し、前方荷重センサFRの前方荷重値Ffを減少(変動)させる。
そしてこれらの各荷重値を複合した荷重が前方荷重センサFRと後方荷重センサRRとに入力される。このように各荷重センサFR、RRを右方に配置した場合にも、チャイルドシート5を固縛するためにシートベルト66を引張ることによって大人が着座したときには発生しえない特徴ある荷重の入力値が得られる。これによって第1の実施形態の場合と同様に前後和荷重値(Ff+Rf)と前後差荷重値(Rf−Ff)とを演算し、各荷重値の出現態様を観測することにより、少なくとも2個の荷重センサによって低コストで、且つ精度よくチャイルドシート5の固縛を判定できる。なお、各荷重値の出現態様は、シートの形状やシートベルトを引っ張る力の大きさ等によって様々であるので、事前に評価を行ない各閾値をそれぞれ設定することが好ましい。
また、着座判定を開始する条件として、バックルスイッチ65のオフからオンへの作動の検出に代えて、車両シートの位置調整の完了、車両ドアの開閉作動、イグニッションスイッチのオフからオンへの作動のいずれかの検出があった場合としてもよい。