以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のパワートレーンを備える車両1の概略構成図、図2は前後進切換機構の概略図である。以下、パワートレーンとは、エンジン2からディファレンシャルギヤ15までの一つながりの機構の総称をいうものとする。
図1において、駆動源であるエンジン2にトルクコンバータ3、前後進切替機構5を介してベルト式無段変速機9が連結されている。
前後進切換機構5にはフォワードクラッチ7、リバースブレーキ8を有し、供給圧コントロールユニット29から与えられる供給圧によって車両1の前後進を切り替える。
前後進切替機構5は、図2に示したように、遊星歯車6と2つの締結要素7、8から構成されている。すなわち、遊星歯車6は、サンギヤ6a、サンギヤ6aの外周に配置されかつこれに噛み合うピニオン6b、ピニオン6bの外周に配置されかつこれに噛み合うリングギヤ6c、キャリヤ6dからなる。
サンギヤ6aはフォワードクラッチ7の締結・開放によって、入力軸5aと結合・分離可能になっており、入力軸5aの一端(図2で左端)はリングギヤ6cと連結されている。入力軸5aの他端(図2で右端)はトルクコンバータ3と接続されている。
一方、ピニオン6bを支持するキャリヤ6dは、リバースブレーキ8の締結・開放によって、ベルト式無段変速機9のケース9aに結合・分離可能になっている。キャリヤ6dは変速機入力軸9bと接続されている。
車両1の前進時にはフォワードクラッチ7を締結すると共にリバースクラッチ8を開放する。これによって、入力軸5aの回転力が直接サンギヤ6aに入力され、入力軸5aとサンギヤ6a(変速機入力軸9b)の回転方向が一致する(同一方向となる)。このとき、遊星歯車6では、サンギヤ6a、ピニオン6b、リングギヤ6c、キャリヤ6dの各回転要素が一体回転するので、入力軸5aと変速機入力軸9b(変速機出力軸13)とは一体に回転する。遊星歯車6の回転要素を一体回転させる状態となるのであり、第1実施形態ではこの状態を以下「第1の締結状態」という。
車両1の後退時には、リバースブレーキ8を締結すると共に、フォワードクラッチ7を開放する。これによって、入力軸5aと一体にリングギヤ6cが回転し、キャリヤ6dはリバースブレーキ8によりケース9aに結合されているため、ピニオン6bは自転のみ行い、ピニオン6bからサンギヤ6aに運動が伝達される。このとき、入力軸5aとサンギヤ6aの回転方向は逆、つまり変速機入力軸9bは入力軸5aに対して逆転する。遊星歯車6では、サンギヤ6aとリングギヤ6cとが相対回転する状態となるのであり、第1実施形態ではこの状態を以下「第2の締結状態」という。
供給圧コントロールユニット29には、オイルポンプ16によって加圧されたオイルが供給されている。オイルポンプ16によって供給されるオイルは、締結要素(フォワードクラッチ7、リバースブレーキ8)の作動用や遊星歯車6の強制潤滑用に用いられる。
オイルポンプ16はエンジン2によって駆動される。オイルポンプ16はベルト式無段変速機9の下方位置に備えられた図示しないオイルパン内に貯溜されているオイルを加圧して供給圧コントロールユニット29に供給する。
供給圧コントロールユニット29はCVTコントロールユニット20からの指令に応じて作動する。CVTコントロールユニット20には、前後進切替制御部22を有する。前後進切替制御部22は、供給圧コントロールユニット29を介して、前後進切替機構5のフォワードクラッチ7、リバースブレーキ8に与える作動オイルの供給圧を制御する。例えば、前後進切替制御部22が車両1の前進を指令したときには、この指令に応動する供給圧コントロールユニット29がフォワードクラッチ7に供給圧を与え、リバースブレーキ8に与える供給圧を遮断する。これによって、フォワードクラッチ7がエンジン2の回転を車両1の前進方向の回転としてベルト式無段変速機9に伝達する。
一方、前後進切替制御部22が車両1の後退を指令したときには、この指令に応動する供給圧コントロールユニット29がリバースブレーキ8に供給圧を与え、フォワードクラッチ7に与える供給圧を遮断する。これによって、リバースブレーキ8がエンジン2の回転を車両1の後退方向の回転として伝達する。
ベルト式無段変速機9は、入力軸側のプライマリプーリ10、変速機出力軸13に連結されるセカンダリプーリ11、これら一対の可変プーリ10、11に掛け回されるVベルト12を有する。プライマリプーリ10に入力される入力トルクは、プライマリプーリ10からVベルト12を介してセカンダリプーリ11へと伝達される。変速機出力軸13はアイドラギヤ14を介してディファレンシャルギヤ15に連結されている。
プライマリプーリ10は、入力軸と一体となって回転する固定円錐板10bと、可動円錐板10aからなる。可動円錐板10aは、固定円錐板10bとの対向位置に配置されてV字状のプーリ溝を形成すると共に、プライマリプーリシリンダ室10cに作用するオイル供給圧(プライマリ圧)に応じて軸方向へ変位可能に構成されている。セカンダリプーリ11は、変速機出力軸13と一体となって回転する固定円錐板11bと、可動円錐板11aからなる。可動円錐板11aは、固定円錐板11bとの対向位置に配置されてV字状のプーリ溝を形成すると共に、セカンダリプーリシリンダ室11cに作用するオイル供給圧(セカンダリ圧)に応じて軸方向に変位可能に構成される。
ベルト式無段変速機9の変速比やVベルト12の接触摩擦力は、供給圧コントロールユニット29によって制御される。
CVTコントロールユニット20には、インヒビタースイッチ23からのシフトレバー位置、スロットル開度センサ24からスロットル開度が、プライマリプーリ回転速度センサ26、セカンダリプーリ回転速度センサ27からの信号と共に入力されている。
CVTコントロールユニット20では、2つの各回転速度センサ26、27の検出値よりプーリ比を算出する。また、セカンダリプーリ回転速度センサ27の検出値より車速を算出する。CVTコントロールユニット20とエンジンコントロールユニット28とは互いに情報交換を行っており、このエンジンコントロールユニット28からの情報に基づいてCVTコントロールユニット20では、エンジン2からの入力トルクなどを算出する。
CVTコントロールユニット20にはまた、プーリ圧制御部21を有する。プーリ圧制御部21は、供給圧コントロールユニット29を介して、各プーリ10、11に与えるオイルの供給圧を制御する。CVTコントロールユニット20では、2つの各可動円錐板10a、11aを軸方向に変位してVベルト12と各プーリ10、11との接触半径を変化させることにより、プライマリプーリ10とセカンダリプーリ11との変速比を連続的に変化させる。
図3は前後進切替機構5の油圧回路図である。
前後進切替機構5には、フォワードクラッチ7、リバースブレーキ8に作動オイルを供給する作動オイル供給通路33、34、これら2つの各作動オイル供給通路33、34の切替を行うマニュアルバルブ30を備える。マニュアルバルブ30は、図1に示した供給圧コントロールユニット29の一部である。
車両1の後退時には、車室内のシフトレバーに連動してマニュアルバルブ30が図3で図示の位置より上方に移動し、メインオイル供給通路31と作動オイル供給通路33の連通を遮断し、メインオイル供給通路31と作動オイル供給通路34を連通する。リバースブレーキ8に作動オイルを供給し、フォワードクラッチ7への作動オイルを逃すことで、リバースブレーキ8が締結し、フォワードクラッチ7が解放される。このとき、遊星歯車6は第2の締結状態となる。
車両1の前進時には、シフトレバーに連動してマニュアルバルブ30が図3で図示の位置まで下方に移動し、メインオイル供給通路31と作動オイル供給通路33を連通し、メインオイル供給通路31と作動オイル供給通路34の連通を遮断する。リバースブレーキ8への作動オイルを逃し、フォワードクラッチ7に作動オイルを供給することで、フォワードクラッチ7が締結し、リバースブレーキ8が開放される。このとき、遊星歯車6は第1の締結状態となる。
また、前後進切替機構5には、遊星歯車6を強制潤滑するための第1潤滑オイル供給通路35を備えている。この第1潤滑オイル供給通路35はメインオイル供給通路32から分岐するもので、メインオイル供給通路32はオイルポンプ16につながっている。オイルポンプ16からのオイルがこの第1潤滑オイル供給通路35を介して遊星歯車6の各部に供給され、遊星歯車6を強制潤滑する。なお、メインオイル供給通路32から分岐する第2潤滑オイル供給通路36、この第2潤滑オイル供給通路36に介装される潤滑オイル量切替バルブ37が設けられているが、これらは本発明の第1実施形態で新たに設ける部材である(後述する)。
さて、車両1の後退時のように遊星歯車6の各回転要素(特にサンギヤ6aとリングギヤ6c)が相対回転している場合には、各回転要素に対する潤滑オイル量が相対的に多く必要となる。一方、車両1の前進時のように遊星歯車6の各回転要素が一体回転し、各回転要素の相対回転が生じない場合には、各回転要素に対する潤滑オイル量は各回転要素の相対回転が生じる場合ほど多く必要としない。すなわち、遊星歯車6が第1の状態となる車両1の前進時には、遊星歯車6が第2の状態となる車両1の後退時より潤滑オイル量より少なくできる。
しかしながら、現状のパワートレーンの潤滑装置では、遊星歯車6の潤滑オイル量を変更し得ない構造である。このため遊星歯車6の潤滑オイル量は、相対的に大きな潤滑オイル量が必要となる車両1の後退時に合わせて必要な潤滑オイル量を設定している。すなわち、車両1の前進時のように相対回転が生じないのにも拘わらず、相対回転が生じている場合と同じ潤滑オイル油を供給している。このように必要以上に潤滑オイル量が多すぎると、却ってリバースブレーキ8におけるドラグトルク(引き摺りトルク)が大きくなる。ドラグトルクは抵抗(フリクション)となるので、燃費が悪くなる。
そこで本発明の第1実施形態では、図3に示したように、遊星歯車6に潤滑オイルを供給するための第2潤滑オイル供給通路36をマニュアルバルブ30の近傍に設け、この第2潤滑オイル供給通路36に潤滑オイル量切替バルブ37(潤滑オイル量変更バルブ)を介装する。そして、この潤滑オイル量切替バルブ37で遊星歯車6に供給する潤滑オイル量を二段階に切替え得る構造とする。すなわち、メインオイル供給通路32から分岐して第2潤滑オイル供給通路36を設け、潤滑オイル量切替バルブ37の下流で第2潤滑オイル供給通路36を第1潤滑オイル供給通路35に合流させる。
潤滑オイル量切替バルブ37を部材38を介してマニュアルバルブ30と機械的に接続することで、第2潤滑オイル供給通路36を開放・遮断する。すなわち、マニュアルバルブ30によってフォワードクラッチ7に作動オイルを供給する車両前進時には潤滑オイル量切替バルブ37が第2潤滑オイル供給通路36を遮断する。一方、リバースブレーキ8に作動オイルを供給する車両後退時には潤滑オイル量切替バルブ37が第2潤滑オイル供給通路36を開放するようにする。このように第2潤滑オイル供給通路36及び潤滑オイル量切替バルブ37を追加して設ける。
まず、マニュアルバルブ30が図3で図示の位置にある車両1の前進時にはメインオイル供給通路31と作動オイル供給通路33を連通し、メインオイル供給通路31と作動オイル供給通路34の連通を遮断する。かつマニュアルバルブ30と一体動する潤滑オイル量切替バルブ37が第2潤滑オイル供給通路36を遮断する。これによって、第1潤滑オイル供給通路35を常時流れる潤滑オイル流量(この潤滑オイル流量を「第1基準潤滑オイル流量」とする。)だけが遊星歯車6に供給される。車両1の前進時に、第1の締結状態にある遊星歯車6は相対回転しておらず、車両1の後退時よりも潤滑オイル量は少なくてよいところ、第1基準潤滑オイル流量のみを遊星歯車6の強制潤滑に用いることで、この車両1の前進時の要求を満たすことができる。
一方、マニュアルバルブ30が図3で図示の位置より下方に移動した位置にくる車両1の後退時には、メインオイル供給通路31と作動オイル供給通路33の連通を遮断し、メインオイル供給通路31と作動オイル供給通路34を連通する。かつマニュアルバルブ30と一体動する潤滑オイル量切替バルブ37が第2潤滑オイル供給通路36を開放する。これによって、第1基準潤滑オイル流量に潤滑オイル量切替バルブ37が第2潤滑オイル供給通路36を開放したことによる追加の潤滑オイル流量(この潤滑オイル流量を「第1追加潤滑オイル流量」とする。)が加わって流れる。車両1の後退時に、第2の締結状態にある遊星歯車6は相対回転をしており、車両1の前進時よりも潤滑オイル量が多く必要である。このとき、第1基準潤滑オイル流量と第1追加潤滑オイル流量の合計を遊星歯車6の強制潤滑に用いることで、この車両1の後退時の要求を満たすことができる。
第1実施形態では、潤滑オイル量切替バルブ37をマニュアルバルブ30と機械的に接続する場合で説明したが、これに限られるものでない。例えば、車両1の前進、後退を指示するレンジの位置と機械的に連動する機構を介して潤滑オイル量切替バルブ37を駆動するようにしてもかまわない。
また、第2潤滑オイル供給通路36に潤滑オイル量切替バルブ37を設ける場合で説明したが、これに限られるものでない。例えば、マニュアルバルブ30の近くにあるオイル供給通路にその通路を流れる流量に余裕があるのであれば、そのオイル供給通路から分岐させた潤滑オイル供給通路を第1潤滑オイル供給通路35に合流させる。そして、その分岐潤滑オイル供給通路にマニュアルバルブ30と機械的に接続された潤滑オイル量切替バルブ37を介装することが考えられる。
また、第1実施形態では、第2潤滑オイル供給通路36を分岐させる場合で説明したが、これに限られるものでない。例えば流量に余裕を持たせた第1潤滑オイル供給通路35に流量調整バルブを設ける。そして、車両1の前進時には第1所定値Aの潤滑オイル流量を流している状態とし、車両1の後退時になると、流量調整バルブを開いて潤滑オイル量をB−Aだけ追加し第2所定値B(B>A)の潤滑オイル流量が流れる構造としても良い。
ここで、第1実施形態の作用効果を説明する。
第1実施形態によれば、ベルト式無段変速機6(変速機)を含むパワートレーンの潤滑装置であって、サンギヤ6a、ピニオン6b、リングギヤ6c及びキャリヤ6dを有する遊星歯車6と、この遊星歯車6に潤滑のためのオイルを供給する潤滑オイル供給通路(35、36)と、この遊星歯車6の締結状態を変更するマニュアルバルブ30(切替装置)と、このマニュアルバルブ30と機械的に接続されマニュアルバルブ30の動きに応じて潤滑オイル供給通路(35、36)を流れる潤滑オイル量を変更し得る潤滑オイル量切替バルブ37(潤滑オイル量変更バルブ)とを備えている。マニュアルバルブ30に連動して、つまり既にあるマニュアルバルブに連動して潤滑オイル量切替バルブ37が駆動されるので、ソレノイドバルブや油圧により作動する切替バルブを新たに追加することなく、簡易な構成で遊星歯車6の潤滑オイル量を変更することができる。
また、遊星歯車6の締結状態によっては必要な潤滑オイル量が相対的に少ないことがある。この場合には遊星歯車6の潤滑オイル量を適正量まで下げることで、フリクションを低減し、燃費を向上できる。
第1実施形態によれば、遊星歯車6の回転要素を一体回転させるる第1の締結状態のとき、サンギヤ6aとリングギヤ6cとが相対回転する第2の締結状態に対して潤滑オイル量を少なくするので、遊星歯車6の2つの各締結状態に応じた潤滑オイルを過不足なく供給することができる。
第1実施形態によれば、変速機は、ベルト式無段変速機9と、遊星歯車6を用いて構成される前後進切替機構5とを含み、切替装置は車両1の前進と後退とを切替え得るマニュアルバルブ30であり、このマニュアルバルブ30に潤滑オイル量切替バルブ37を機械的に接続するので、遊星歯車6を用いて前後進切替機構5を構成している場合に、ドライバのシフトチェンジと連動して確実に潤滑オイル量を変更できる。
第1実施形態によれば、遊星歯車6が、車両1の前進時に第1の締結状態、車両1の後退時に第2の締結状態となる場合に、車両1の前進時には潤滑オイル量切替バルブ37が車両1の後退時より潤滑オイル量を減らすので、遊星歯車6を用いて進切替機構5を構成している場合に、車両1の前進時、車両1の後退時における遊星歯車6の各締結状態に応じて、潤滑オイル量を過不足なく供給することができる。
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態のパワートレーンを備える車両1の概略構成図である。第1実施系形態の図1と同一部分には同一番号を付している。
第1実施形態はベルト式無段変速機9と、遊星歯車6を用いて構成される前後進切替機構5を備える場合であった。第2実施形態はベルト式無段変速機9と、遊星歯車43を用いて構成される副変速機42を備える自動変速機40を対称とするものである。
駆動源であるエンジン2にトルクコンバータ3、減速ギヤ39を介して自動変速機40が連結されている。この自動変速機40の変速機出力軸(プロペラシャフト)13にアイドラギヤ14、ディファレンシャルギヤ15を介して駆動輪17が連結されている。
自動変速機40は、ベルト式無段変速機41、副変速機42からなる。ベルト式無段変速機41は、減速ギヤ39の出力軸に連結されるプライマリプーリ41a、副変速機42の入力軸42aに連結されるセカンダリプーリ41b、これらの間に巻きがけされるVベルト41cを有する。プライマリプーリ41a及びセカンダリプーリ41bにはそれぞれ作動オイルが供給され、その作動オイルの供給圧に応じてプーリ幅を自由に変更することができる。これにより、ベルト式無段変速機41は、プライマリプーリ41aへの供給圧(プライマリ圧)とセカンラダリプーリ41bへの供給圧(セカンダリ圧)とを制御することで、変速比を無段階に変更させることができる。
また、自動変速機40を変速制御するための変速制御部47を備える。変速制御部47には無段変速制御部48、有段変速制御部49を有する。変速制御部47は、自動変速機40の目標入力回転速度を算出し、この目標入力回転速度に基づき、無段変速制御部48がベルト式無段変速機41の変速比を無段階に制御する。変速制御部47は、副変速機42の目標変速段を算出し、有段変速制御部49がこの目標変速段に制御する。すなわち、自動変速機40全体としては、ベルト式無段変速機41の変速制御と副変速機42の変速制御とを協調させることで、目標とする変速比が実現される。
副変速機42は、ラビニヨ遊星歯車43と、3つの締結要素44、45、46から構成されている。すなわち、ラビニヨ遊星歯車43は、複合サンギヤ43aにセカンダリプーリ41bを連結することで当該複合サンギヤ43aを入力とする一方、キャリヤ43bを変速機出力軸13に連結することで当該キャリヤ43bを出力とする有段変速機である。複合サンギヤ43aは、ローブレーキ44を介して副変速機42のケース42aに固定され、キャリヤ43bはハイクラッチ45を介してリングギヤ43cに連結されている。さらに、リングギヤ43cは、リバースブレーキ46を介して副変速機42のケース42aに固定されている。
図5、図6は3つの各締結要素(ローブレーキ44、ハイクラッチ45、リバースブレーキ46)の油圧回路図である。図5は車両1の前進第2速時の状態を、図6は車両1の前進第1速時・後退時の状態を示している。なお、図6では便宜的にローブレーキソレノイドバルブ54及びリバースブレーキソレノイドバルブ56が共にONとなっている場合を示している。実際には車両1の前進第1速時にローブレーキソレノイドバルブ54だけが、また車両1の後退時にリバースブレーキソレノイドバルブ56だけがONとなる。
3つの各締結要素44、45、46にメインオイル供給通路50から分岐して作動オイルを供給する作動オイル供給通路51、52、53、これらの作動オイル供給通路51〜53に介装される各ソレノイドバルブ54、55、56を備える。各ソレノイドバルブ54〜56は有段変速制御部49からの信号を受けて作動オイル供給通路51〜53の開放・遮断を行う。
詳細には、各ソレノイドバルブ54〜56は、第1のポートaと、第2のポートbと、一方向(図5、図6で左右方向)にストロークすることによりこれら2つのポートa、bの連通と遮断とを切替えるスプールc(バルブ本体)とを有している。第1のポートaには、オイルポンプ16からの作動オイルが供給され、第2のポートbからは締結要素44〜46に作動オイルが供給される。スプールcの外周にはリング状の連通孔dが設けられている。スプールcが図示しないスプリングにより初期位置(図5、図6で左端)にあるとき、連通孔dが一方のポートbと連通しておらず、2つのポートa、bの連通を遮断している。これに対して、スプールcが初期位置より所定の位置までストロークするとき、連通孔dを介して2つのポートa、bが連通する。
副変速機42は車両1の前進第1速時、車両1の前進第2速時、車両1の後退時に次のように制御される。まず、車両1の前進第1速時には、ローブレーキソレノイドバルブ54をONにして、残り2つのソレノイドバルブ55、56をOFFとすることで、ローブレーキ44にだけ作動オイルを供給する。これによって、ローブレーキ44を締結すると共に、ハイクラッチ45、リバースブレーキ46を解放する。このとき、ラビニヨ遊星歯車43の各回転要素が相対回転し、副変速機入力軸42aの回転速度よりも変速機出力軸13の回転速度のほうが遅くなる。ラビニヨ遊星歯車43では、サンギヤ43aとリングギヤ43cとが相対回転する状態となるのであり、第2実施形態ではこの状態を以下「第2の締結状態」という。
車両1の前進第2速時には、ハイクラッチソレノイドバルブ55をONにして、残り2つのソレノイドバルブ54、56をOFFとすることで、ハイクラッチ45にだけ作動オイルを供給する。これによって、ハイクラッチ45を締結すると共に、ローブレーキ44、リバースブレーキ46を解放する。このとき、ラビニヨ遊星歯車機構43では、サンギヤ43a、キャリヤ43b、リングギヤ43cの各回転要素が一体回転するので、副変速機入力軸42aと変速機出力軸13とは一体に回転する。ラビニヨ遊星歯車43の回転要素を一体回転させる状態となるのであり、第2実施形態ではこの状態を以下「第1の締結状態」という。
車両1の後退時には、リバースブレーキソレノイドバルブ56をONにして、残り2つのソレノイドバルブ54、55をOFFとすることで、リバースブレーキ46にだけ作動オイルを供給する。これによって、リバースブレーキ46を締結すると共に、ローブレーキ44、ハイクラッチ45を解放する。このとき、ラビニヨ遊星歯車43の各回転要素が相対回転し、副変速機入力軸42aに対して変速機出力軸13が逆転する。ラビニヨ遊星歯車43では、サンギヤ43aとリングギヤ43cとが相対回転する状態となるのであり、第2実施形態ではこの状態をも以下「第2の締結状態」という。
副変速機42の制御にあたっての各締結要素44〜46の締結及び解放の関係についてまとめると、次の表1のようになる。表1においては、ローブレーキを「L/B」、ハイクラッチを「H/C」、リバースブレーキを「R/B」、締結状態を「○」、開放状態を「×」としている。
このように、3つの各締結要素44〜46にそれぞれ作動オイルを供給することで、その作動オイルの供給圧に応じて各締結要素44〜46の締結及び解放を任意に行うことができる。これにより、3つの各締結要素44〜46への作動オイルの供給圧を制御することで、車両1の前進第1速、車両1の前進第2速及び後退を選択することができる。
また、ラビニヨ遊星歯車43を強制潤滑するための第1潤滑オイル供給通路58をハイクラッチソレノイドバルブ55の近傍に備えている。この第1潤滑オイル供給通路58はオイルポンプ16につながっており、オイルポンプ16によって加圧されたオイルがこの第1潤滑オイル供給通路58を介してラビニヨ遊星歯車の各部に供給され、ラビニヨ遊星歯車を強制潤滑する。なお、第2潤滑オイル供給通路61と、潤滑オイル量切替バルブ62とを設けているが、これは本発明の第2実施形態で新たに設けるもので、後述する。
さて、前進第1速と前進第2速の車両1の前進走行時には、ローブレーキ44もしくはハイクラッチ45のどちらかを締結して走行する。車両1の前進第1速時には、ローブレーキ44のみを締結し、残り2つの締結要素45、46を解放するため、ラビニヨ遊星歯車43は第2の締結状態となる。第2の締結状態のときには、各回転要素(サンギヤ43a、キャリヤ43b、リングギヤ43c)に対する潤滑オイル量は相対的に多く必要となる。
一方、車両1の前進第2速時には、ハイクラッチ45のみを締結し、残り2つの締結要素44、46を解放するため、ラビニヨ遊星歯車機構43は第1の締結状態となる。第1の締結状態のときには、各回転要素(サンギヤ43a、キャリヤ43b、リングギヤ43c)に対する潤滑オイル量は、第2の締結状態のときほど多く必要としない。潤滑オイル量が多過ぎると、却ってローブレーキ44やリバースブレーキ46におけるドラグトルク(引き摺りトルク)が大きくなる。ドラグトルクは抵抗(フリクション)となるので、燃費が悪くなる。また、車両1の前進第2速が選択されているときには、ベルト式無段変速機41によってセカンダリプーリ41b側が増速されており、セカンダリプーリ41b側に設置されている副変速機42は、特に高回転速度となることから、不要な潤滑オイルによるドラグトルクは燃費の悪化を招きやすいという問題もある。
上記の表1に必要な潤滑オイル量を追加すると、次の表2のようになる。
表2に示したようにラビニヨ遊星歯車43が第1の締結状態となる車両1の前進第2速時においては、ラビニヨ遊星歯車43が第2の締結状態となる車両1の前進第1速時や後退時より少ない潤滑オイル量でよいこととなる。すなわち、ラビニヨ遊星歯車43が第1の締結状態となる車両1の前進第2速時と、車ラビニヨ遊星歯車43が第2の締結状態となる両1の前進第1速時及び後退時との2つに分割し、両者で潤滑オイル量を変更することが望ましいことが分かる。
そこで第2実施形態では、図5に示したようにラビニヨ遊星歯車43に潤滑オイルを供給するための第2潤滑オイル供給通路61をハイクラッチソレノイドバルブ55の近傍に設け、この第2潤滑オイル供給通路61に潤滑オイル量切替バルブ62を介装する。そして、この潤滑オイル量切替バルブ62(潤滑オイル量変更バルブ)でラビニヨ遊星歯車に供給する潤滑オイル量を二段階に切替える構造とする。すなわち、メインオイル供給通路50から分岐して第2潤滑オイル供給通路61を設け、潤滑オイル量切替バルブ62の下流で第2潤滑オイル供給通路61を第1潤滑オイル供給通路58に合流させる。
潤滑オイル量切替バルブ62をハイクラッチソレノイドバルブ55と機械的に接続することで、第2潤滑オイル供給通路61を開放・遮断する。すなわち、ハイクラッチソレノイドバルブ55をONにする車両1の前進第2速時には潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路62を遮断する。一方、ハイクラッチソレノイドバルブ55をOFFにする車両1の前進第1速時及び後退時ときには潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路62を開放するようにする。このように第2潤滑オイル供給通路61及び潤滑オイル量切替バルブ62を追加して設ける。
まず、車両1の前進第1速時および車両1の後退時には、図6に示したように、ハイクラッチソレノイドバルブ55がOFFとなり、ハイクラッチ45に作動オイルが供給されていない(ハイクラッチ圧を発生していない)状態となる。このとき、ハイクラッチソレノイドバルブ55と機械的に連結している潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路61を開放する。これによって、第1潤滑オイル供給通路58を常時流れる潤滑オイル流量に潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路61を開放したことによる追加の潤滑オイル流量が加わって流れる。以下、第1潤滑オイル供給通路58を常時流れる潤滑オイル流量を「第2基準潤滑オイル流量」、潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路61を開放したことによる追加の潤滑オイル流量を「第2追加潤滑オイル流量」という。
車両1の前進第1速時および後退時に、第2の締結状態にあるラビニヨ遊星歯車43は相対回転をしており、車両1の前進第2速時よりも潤滑オイル量が多く必要である。このとき、第2基準潤滑オイル流量と第2追加潤滑オイル流量の合計をラビニヨ遊星歯車43の強制潤滑に用いることで、この車両1の前進第1速時および車両1の後退時の要求を満たすことができる。
一方、前進第2速時には、図5に示したように、ハイクラッチソレノイドバルブ55がONとなり、ハイクラッチ45に作動オイルが供給される(ハイクラッチ圧を発生している)状態となる。このとき、ハイクラッチソレノイドバルブ55と機械的に連結している潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路61を遮断する。これによって、第2基準潤滑オイル流量だけがラビニヨ遊星歯車43に供給される。車両1の前進第2速時に、第1の締結状態にあるラビニヨ遊星歯車43は相対回転しておらず、前進第1速時および後退時よりも潤滑オイル量は少なくてよい。従って、第2基準潤滑オイル流量のみをラビニヨ遊星歯車43の強制潤滑に用いることで、この車両1の前進第2速時の要求を満たすことができる。
第2実施形態では、第2潤滑オイル供給通路61に潤滑オイル量切替バルブ62を設ける場合で説明したが、これに限られるものでない。例えば、ハイクラッチソレノイドバルブ55の近くにあるオイル供給通路にその通路を流れる流量に余裕があるのであれば、そのオイル供給通路から分岐させた潤滑オイル供給通路を第1潤滑オイル供給通路58に合流させる。そして、その分岐潤滑オイル供給通路にハイクラッチソレノイドバルブ55と機械的に接続された潤滑オイル量切替バルブ62を介装することが考えられる。
また、第2実施形態では、第2潤滑オイル供給通路61を分岐させる場合で説明したが、これに限られるものでない。例えば流量に余裕を持たせた第1潤滑オイル供給通路58に流量調整バルブを設ける。そして、車両1の前進第2速時には第1所定値Cの潤滑オイル流量を流している状態とし、車両1の前進第1速時、後退時になると、流量調整バルブを開いて潤滑オイル量をD−Cだけ追加し第2所定値D(D>C)の潤滑オイル流量が流れる構造としても良い。
第2実施形態によっても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、第2実施形態によれば、自動変速機40(変速機)を含むパワートレーンの潤滑装置であって、サンギヤ43a、リングギヤ43c及びキャリヤ43bを有するラビニヨ遊星歯車43と、このラビニヨ遊星歯車43に潤滑のためのオイルを供給する潤滑オイル供給通路(58、61)と、このラビニヨ遊星歯車43の締結状態を変更するソレノイドバルブ54〜56(切替装置)と、このソレノイドバルブの1つであるハイクラッチソレノイドバルブ55と機械的に接続されハイクラッチソレノイドバルブ55の動きに応じて潤滑オイル供給通路(58、61)を流れる潤滑オイル量を変更し得る潤滑オイル量切替バルブ62(潤滑オイル量変更バルブ)とを備えている。ソレノイドバルブ55に連動して、つまり既にあるソレノイドバルブ55に連動して潤滑オイル量切替バルブ62が駆動されるので、ソレノイドバルブや油圧により作動する切替バルブを新たに追加することなく、簡易な構成でラビニヨ遊星歯車43の潤滑オイル量を変更することができる。
また、ラビニヨ遊星歯車43の締結状態によっては必要な潤滑量が相対的に少ないことがある。この場合にはラビニヨ遊星歯車43の潤滑オイル量を適正量まで下げることで、フリクションを低減し、燃費を向上できる。
第2実施形態によれば、ラビニヨ遊星歯車43の全体がつれまわっている第1の締結状態のとき、サンギヤ43aとリングギヤ43cとが相対回転する第2の締結状態に対して潤滑オイル量を少なくするので、ラビニヨ遊星歯車43の2つの各締結状態に応じた潤滑オイルを過不足なく供給することができる。
第2実施形態によれば、自動変速機40は、ベルト式無段変速機41と、このベルト式無段変速機41の出力軸と接続されラビニヨ遊星歯車43を用いて構成される副変速機構42とを含み、この副変速機42には、車両1の前進第1速を実現するためのローブレーキ44、車両1の前進第2速を実現するためのハイクラッチ45、車両1の後退を実現するためのリバースブレーキ46の3つの締結要素を有し、切替装置は、これら3つの各締結要素44〜46の締結・開放を切替え得る3つのソレノイドバルブ54〜56であり、これら3つのソレノイドバルブ54〜56の一つであるハイクラッチソレノイドバルブ55に潤滑オイル量切替バルブ62(潤滑オイル量変更バルブ)を機械的に接続するので、ラビニヨ遊星歯車43を用いて副変速機42を構成している場合に、ハイクラッチソレノイドバルブ55の動きに連動して潤滑オイル量を変更できる。
第2実施形態によれば、ラビニヨ遊星歯車43が、車両1の前進第2速時に第1の締結状態、車両1の前進第1速時及び後退時に第2の締結状態となる場合に、車両1の前進第1速時及び後退時には潤滑オイル量切替バルブ62(潤滑オイル量変更バルブ)が車両1の前進第2速時より潤滑オイル量を増やすので、ラビニヨ遊星歯車43を用いて副変速機42を構成している場合に、車両1の前進第2速時、車両1の前進第1速時、車両1の後退時におけるラビニヨ遊星歯車43の各締結状態に応じて潤滑オイル量を過不足なく供給することができる。
(第3実施形態)
図7、図8、図9は3つの各締結要素(ローブレーキ44、ハイクラッチ45、リバースブレーキ46)の油圧回路図である。図7は車両1の前進第2速時の状態を、図8は車両1の後退時の状態を、図9は車両1の前進第1速時の状態を示している。第2実施形態の図5、図6と同一部分には同一番号を付している。
第3実施形態では、ラビニヨ遊星歯車43に潤滑オイルを供給するための第1及び第2の潤滑オイル供給通路58、61をローブレーキソレノイドバルブ54’の近傍に設け、第2潤滑オイル供給通路61に潤滑オイル量切替バルブ62を介装する。そして、この潤滑オイル量切替バルブ62でラビニヨ遊星歯車43に供給する潤滑オイル量を二段階に切替える構造とする。すなわち、メインオイル供給通路50から分岐して第2潤滑オイル供給通路61を設け、潤滑オイル量切替バルブ62の下流で第2潤滑オイル供給通路61を第1潤滑オイル供給通路58に合流させる。
潤滑オイル量切替バルブ62をローブレーキソレノイドバルブ54’と機械的に接続することで、第2潤滑オイル供給通路61を開放・遮断する。このように第2潤滑オイル供給通路61及び潤滑オイル量切替バルブ62を追加して設ける。
ここまでは、第2実施形態と同様であるが、ローブレーキソレノイドバルブ54’の構成が第2実施形態のローブレーキソレノイドバルブ54と異なる。すなわち、第2実施形態のローブレーキソレノイドバルブ54は、スプールcが図示しないスプリングにより初期位置にあるとき、連通孔dが一方のポートbと連通しておらず、2つのポートa、bの連通を遮断する(図5参照)。スプールcが初期位置より所定の位置までストロークするとき、連通孔dを介して2つのポートa、bを連通する(図6参照)ものであった。
一方、第3実施形態のローブレーキソレノイドバルブ54’では、前進第2速時、後退時、前進第1速時でスプールcが3つの異なるストローク位置を取り得るようにしている。すなわち、まず、車両1の前進第2速時には、図7に示したように、ローブレーキソレノイドバルブ54’に供給する電流(ソレノイド電流)をゼロとしてスプールcが初期位置にあるものとする。連通孔dが一方のポートb’と連通しておらず、2つのポートa’、b’の連通を遮断することで、ローブレーキ44に作動オイルが供給されていない(ローブレーキ圧を発生していない)状態とする。このとき、ローブレーキソレノイドバルブ54’と機械的に連結している潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路61を遮断する。これによって、第2基準潤滑オイル流量だけがラビニヨ遊星歯車43に供給され、車両1の後退時及び前進第1速時よりも潤滑オイル量を減らすことができる。
次に、車両1の後退時には、図8に示したように、ローブレーキソレノイドバルブ54’のソレノイドに微小電流を流す。これによって、スプールcが初期位置より所定の位置までストロークするあいだ、ローブレーキ44に作動オイルが供給されていない状態を保持しつつ、潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路61を開放するようにする。スプールcが所定の位置までストロークするあいだも、連通孔dが一方のポートb’と連通しておらず、2つのポートa’、b’の連通を遮断することで、ローブレーキ44に作動オイルが供給されていない状態とするのである。
最後に、車両1の前進第1速時には、図9に示したように、ローブレーキソレノイドバルブ54’のソレノイド電流を上記微小電流以上の電流に調整して流すことで、スプールcを最大位置までストロークさせる。このときには、連通孔dを介して2つのポートa’、b’を連通させ、ローブレーキ44に作動オイルが供給される状態とし、かつ潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路61を開放するようにする。これによって、車両1の後退時及び前進第1速時には、第2基準潤滑オイル流量に第2追加潤滑オイル流量が加わり、車両1の前進第2速時よりも潤滑オイル量を増やすことができる。
このように、ローブレーキソレノイドバルブ54’について、スプールcが初期位置より所定の位置までストロークするあいだ、2つのポートa’、b’の連通を遮断したまま、潤滑オイル量切替バルブ62が潤滑オイル量を変更し得るように2つのポートa’、b’及び連通孔dの位置を設定するのである。
第3実施形態の利点は、車両1の前進第2速時においてもローブレーキ44に作動オイルが供給されていない状態のまま、第2基準潤滑オイル流量に追加する潤滑オイル量を調整することで任意のタイミングで潤滑オイル量を変更できるところにある。例えば、変速途中など潤滑オイル量が車両1の前進第1速時相当に必要な場合に、ローブレーキ44に作動オイルが供給されていない状態のまま第2潤滑オイル供給通路61を開放することで、潤滑オイル量を第2基準潤滑オイル流量よりも多い状態で保たせる。変速終了後には、ローブレーキ44に作動オイルが供給されていない状態のまま第2潤滑オイル供給通路61を遮断することで、潤滑オイル量を第2基準潤滑オイル流量へと減らすなどの対応が可能となる。
また、潤滑オイル量の微小な調整、および車両1の前進第1速時と車両1の後退時で潤滑オイル量を変えることも可能となる。例えば車両1の後退時に車両1の前進第1速時に対して潤滑オイル量が少なくて良い場合がある。この場合には、ローブレーキソレノイドバルブのソレノイドに流す電流量を調整して潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路61を開放する量(割合)を小さくして潤滑オイル量を減らせば良い。
第3実施形態によれば、第2実施形態の作用効果に加えて、次の作用効果を得ることができる。すなわち、第3実施形態によれば、潤滑オイル量切替バルブ62が機械的に接続されるローブレーキソレノイドバルブ54’は、オイルポンプ16からの作動オイルが供給される第1のポートa’と、ローブレーキ44(締結要素)に作動オイルを供給する第2のポートb’と、一方向にストロークすることによりこれら2つのポートa’、b’の連通と遮断とを連通孔dを介して切替え得るスプールcとを有し、このスプールcが初期位置より所定の位置までストロークするあいだ、2つのポートa’、b’の連通を遮断したまま、潤滑オイル量切替バルブ62が潤滑オイル量を変更し得るように第1、第2のポートa’、b’及び連通孔dの各位置を設定するので、任意のタイミングで任意の潤滑オイル量に変更することができる。
(第4実施形態)
図10、図11、図12は3つの各締結要素(ローブレーキ44、ハイクラッチ45、リバースブレーキ46)の油圧回路図である。図10は車両1の前進第2速時の状態を、図11は車両1の前進第1速時の状態を、図12は車両1の後退時の状態を示している。第3実施形態の図7、図8、図9と同一部分には同一番号を付している。
第4実施形態は第3実施形態と対になるものである。第4実施形態では、ラビニヨ遊星歯車43に潤滑オイルを供給するための第1及び第2の潤滑オイル供給通路58、61をリバースブレーキソレノイドバルブ56’の近傍に設け、第2潤滑オイル供給通路61に潤滑オイル量切替バルブ62を介装する。そして、この潤滑オイル量切替バルブ62でラビニヨ遊星歯車43に供給する潤滑オイル量を二段階に切替える構造とする。すなわち、メインオイル供給通路50から分岐して第2潤滑オイル供給通路61を設け、潤滑オイル量切替バルブ62の下流で第2潤滑オイル供給通路61を第1潤滑オイル供給通路58に合流させる。
潤滑オイル量切替バルブ62をリバースブレーキソレノイドバルブ56’と機械的に接続することで、第2潤滑オイル供給通路61を開放・遮断する。このように第2潤滑オイル供給通路61及び潤滑オイル量切替バルブ62を追加して設ける。
ここまでは、第2実施形態と同様であるが、リバースブレーキソレノイドバルブ56’の構成が第2実施形態のローブレーキソレノイドバルブ54と異なる。すなわち、第2実施形態のローブレーキソレノイドバルブ54は、スプールcが図示しないスプリングにより初期位置にあるとき、連通孔dが一方のポートbと連通しておらず、2つのポートa、bの連通を遮断する(図5参照)。スプールcが初期位置より所定の位置までストロークするとき、連通孔dを介して2つのポートa、bを連通する(図6参照)ものであった。
一方、第4実施形態のリバースブレーキソレノイドバルブ56’では、前進第2速時、前進第1速時、後退時でスプールcが3つの異なるストローク位置を取り得るようにしている。すなわち、まず、車両1の前進第2速時には、図10に示したように、リバースブレーキソレノイドバルブ56’に供給する電流(ソレノイド電流)をゼロとしてスプールcが初期位置にあるものとする。連通孔dが一方のポートb’と連通しておらず、2つのポートa’、b’の連通を遮断することで、リバースブレーキ46に作動オイルが供給されていない(ローブレーキ圧を発生していない)状態とする。このとき、リバースブレーキソレノイドバルブ56’と機械的に連結している潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路61を遮断する。これによって、第2基準潤滑オイル流量だけがラビニヨ遊星歯車43に供給され、車両1の前進第1速時、車両1の後退時よりも潤滑オイル量を減らすことができる。
次に、車両1の前進第1速時には、図11に示したように、リバースブレーキソレノイドバルブ56’のソレノイドに微小電流を流す。これによって、スプールcが初期位置より所定の位置までストロークするあいだ、リバースブレーキ46に作動オイルが供給されていない状態を保持しつつ、潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路61を開放するようにする。スプールcが所定の位置までストロークするあいだも、連通孔dが一方のポートb’と連通しておらず、2つのポートa’、b’の連通を遮断することで、リバースブレーキ46に作動オイルが供給されていない状態とするのである。
最後に、車両1の後退時には、図12に示したように、リバースブレーキソレノイドバルブ56’のソレノイド電流を上記微小電流以上の電流に調整して流すことで、スプールcを最大位置までストロークさせる。このときには、連通孔dを介して2つのポートa’、b’を連通させ、リバースブレーキ46に作動オイルが供給される状態とし、かつ潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路61を開放するようにする。これによって、車両1の前進第1速時及び後退時には、第2基準潤滑オイル流量に第2追加潤滑オイル流量が加わり、車両1の前進第2速時よりも潤滑オイル量を増やすことができる。
このように、リバースブレーキソレノイドバルブ56’についても、スプールcが初期位置より所定の位置までストロークするあいだ、2つのポートa’、b’の連通を遮断したまま、潤滑オイル量切替バルブ62が潤滑オイル量を変更し得るように2つのポートa’、b’及び連通孔dの位置を設定するのである。
第4実施形態の利点も第3実施形態と同様である。すなわち、第4実施形態の利点は、車両1の前進第2速時においてもリバースブレーキ46に作動オイルが供給されていない状態のまま、第2基準潤滑オイル流量に追加する潤滑オイル量を調整することで任意のタイミングで潤滑オイル量を変更できるところにある。例えば、変速途中など潤滑オイル量が車両1の前進第1速時相当に必要な場合に、リバースブレーキ46に作動オイルが供給されていない状態のまま第2潤滑オイル供給通路61を開放することで、潤滑オイル量を第2基準潤滑オイル流量よりも多い状態で保たせる。変速終了後には、リバースブレーキ46に作動オイルが供給されていない状態のまま第2潤滑オイル供給通路61を遮断することで、潤滑オイル量を第2基準潤滑オイル流量へと減らすなどの対応が可能となる。
また、潤滑オイル量の微小な調整、および車両1の前進第1速時と車両1の後退時で潤滑オイル量を変えることも可能となる。例えば車両1の後退時に車両1の前進第1速時に対して潤滑オイル量が少なくて良い場合がある。この場合には、リバースブレーキソレノイドバルブのソレノイドに流す電流量を調整して潤滑オイル量切替バルブ62が第2潤滑オイル供給通路61を開放する量(割合)を小さくして潤滑オイル量を減らせば良い。
第4実施形態によっても、第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、第4実施形態によれば、潤滑オイル量切替バルブ62が機械的に接続されるリバースブレーキソレノイドバルブ56’は、オイルポンプ16からの作動オイルが供給される第1のポートa’と、リバースブレーキ46(締結要素)に作動オイルを供給する第2のポートb’と、一方向にストロークすることによりこれら2つのポートa’、b’の連通と遮断とを連通孔dを介して切替え得るスプールcとを有し、このスプールcが初期位置より所定の位置までストロークするあいだ、2つのポートa’、b’の連通を遮断したまま、潤滑オイル量切替バルブ62が潤滑オイル量を変更し得るように第1、第2のポートa’、b’及び連通孔dの各位置を設定するので、任意のタイミングで任意の潤滑オイル量に変更することができる。