JP2012246160A - 耐酸化性炭素材料の製造方法および耐酸化性炭素材料 - Google Patents

耐酸化性炭素材料の製造方法および耐酸化性炭素材料 Download PDF

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雅紀 成澤
Kengo Kurisu
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Abstract

【課題】膜厚が厚くなっても亀裂や欠陥を生じ難く剥離し難い被膜を表面に有し、黒鉛基材の耐酸化性が十分に向上された耐酸化性炭素材料を簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】耐酸化性炭素材料を製造する方法であって、SiOxCyHz(ただし、xは1以上2以下の数、yは1以上6以下の数、zは3以上 8以下の数である)で表わされる組成式を有する溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを含む分散液を、炭素材料に含浸し、被覆処理した後、硬化処理し、次いで、非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理することを特徴とする耐酸化性炭素材料の製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐酸化性炭素材料の製造方法および耐酸化性炭素材料に関する。
炭素材料は、高温強度や化学的安定性に優れるとともに機械加工性に優れることから、高温炉や高温反応装置の構造材料、金属溶解用の坩堝材料等の耐火・耐熱材料として広く利用されている。
しかしながら、一般に炭素材料は、非酸化性雰囲気においては3000℃以下の温度条件下において高い耐熱性を発揮するものの、酸化性雰囲気下においては、通常、500℃以上の温度下で酸化消耗を生じてしまう。
このため、耐熱材料としては、炭素材料に代えて耐酸化性に優れたセラミックス材料を用いることも考えられるが、セラミックス材料は硬度が高く脆いことから、機械加工が困難である。
上記技術課題を解決するために、特許文献1(特開2003−171180号公報)においては、膨張黒鉛にメチルビニルシクロシロキサンを含浸させた後、硬化処理し、次いでアルゴン雰囲気下で焼成処理することにより作製されてなる、膨張黒鉛表面にSiOC膜が形成されたC/Si/O複合材料が提案されている。
一方、特許文献2(米国特許第5,225,283号公報)においては、炭素繊維強化炭素複合材の表面を、シクロシロキサン化合物とシリコンカーバイドフィラーとを含有する分散液で被覆した後、硬化処理し、次いで窒素雰囲気下で焼成処理することにより作製されてなる、炭素繊維強化炭素複合材の表面に、耐酸化被膜としてシリコンカーバイドフィラーを含有するSiOC膜が形成された炭素繊維強化炭素複合材が提案されている。
特開2003−171180号公報 米国特許第5,225,283号公報
しかしながら、本発明者等が検討したところ、特許文献1や特許文献2に記載の方法で得られた複合材料は、メチルビニルシクロシロキサンやシクロシロキサン化合物がセラミックス化する過程で大きく収縮して亀裂や欠陥を生じ易く、基材表面に形成するSiOC被膜の厚みが制限されるばかりか、亀裂の開口部から基材である炭素が酸化されてしまうことが判明した。また、炭素基材の熱膨張率と基材表面に形成されるSiOC被膜の熱膨張率の差が大きいことから、繰り返し使用した場合に被膜が剥離してしまうことが判明した。
さらに、特許文献2に記載の方法で得られた複合材料は、シリコンカーバイドフィラーがSiOC膜中に単に存在するだけであり、耐酸化性能の十分な向上が望めないものであることが判明した。
このような状況下、本発明は、膜厚が厚くなっても亀裂や欠陥を生じ難く長期に亘って剥離し難い被膜を表面に有し、耐酸化性が十分に向上された耐酸化性炭素材料を簡便に製造する方法および耐酸化性炭素材料を提供することを目的とするものである。
上記技術課題を解決するために本発明者がさらに検討したところ、SiOxCyHz(ただし、xは1以上2以下の数、yは1以上6以下の数、zは3以上8以下の数である)で表わされる組成式を有する溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを含む分散液を、炭素材料に含浸し、被覆処理した後、硬化処理し、次いで、非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理することによって耐酸化性炭素材料を製造することにより、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)耐酸化性炭素材料を製造する方法であって、SiOxCyHz(ただし、xは1以上2以下の数、yは1以上6以下の数、zは3以上8以下の数である)で表わされる組成式を有する溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを含む分散液を、
炭素材料に含浸し、被覆処理した後、硬化処理し、次いで、
非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理する
ことを特徴とする耐酸化性炭素材料の製造方法、
(2)前記硬化処理後、焼成処理前にさらに600〜800℃で150〜350分間予備加熱処理を行う上記(1)に記載の耐酸化性炭素材料の製造方法、
(3)前記分散液中のAl粉末の存在量が、固形分換算で、前記溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、4質量部〜400質量部である上記(1)または(2)に記載の耐酸化性炭素材料の製造方法、
(4)窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気下で焼成処理する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐酸化性炭素材料の製造方法、
(5)前記Al粉末の酸素の含有量が、5質量%以下である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の耐酸化性炭素材料の製造方法、
(6)前記炭素材料の熱膨張係数が、2×10−6/℃〜7×10−6/℃である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐酸化性炭素材料の製造方法、および
(7)SiOxCyHz(ただし、xは1以上2以下の数、yは1以上6以下の数、zは3以上8以下の数である)で表わされる組成式を有する溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを含む分散液を、
炭素材料に含浸し、被覆処理した後、硬化処理し、次いで、
非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理してなる
ことを特徴とする耐酸化性炭素材料
を提供するものである。
本発明によれば、溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを含む分散液を、炭素材料に含浸し、被覆処理した後、硬化処理し、次いで、非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理することにより、セラミックス被膜を形成する過程で溶融性シリコーン樹脂とAl粉末との反応を生じ、膜厚が厚くても亀裂や欠陥を生じ難く長期に亘って剥離し難い被膜が表面に形成されてなり、耐酸化性が十分に向上された耐酸化性炭素材料を簡便に製造する方法を提供することができるとともに、上記特性を有する耐酸化性炭素材料を提供することができる。
本発明の実施例で得られた耐酸化性炭素材料の耐酸化性評価前後の断面写真である。 本発明の比較例で得られた耐酸化性炭素材料の耐酸化性評価前後の断面写真である。
先ず、本発明の耐酸化性炭素材料の製造方法について説明する。
本発明の耐酸化性炭素材料の製造方法は、SiOxCyHz(ただし、xは1以上2以下の数、yは1以上6以下の数、zは3以上8以下の数である)で表わされる組成式を有する溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを含む分散液を、炭素材料に含浸し、被覆処理した後、硬化処理し、次いで、非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理することを特徴とするものである。
本発明の製造方法において、炭素材料に含浸する分散液は、SiOxCyHz(ただし、xは1以上2以下の数、yは1以上6以下の数、zは3以上8以下の数である)で表わされる組成式を有する溶融性シリコーン樹脂を含む。
上記溶融性シリコーン樹脂において、xは1以上2以下の数であり、1.2以上2以下の数であることが好ましく、1.4以上1.8以下の数であることがより好ましい。
上記溶融性シリコーン樹脂において、yは1以上6以下の数であり、1以上4以下の数であることが好ましく、1以上2以下の数であることがより好ましい。
上記溶融性シリコーン樹脂において、zは3以上8以下の数であり、3以上 6以下の数であることが好ましく、3以上4以下の数であることがより好ましい。
本発明の製造方法においては、x、yおよびzが上記範囲内にあることにより、溶融性シリコーン樹脂を所望濃度含有させつつ、低粘度な分散液を調製することができる。
上記溶融性シリコーン樹脂は、オリゴマーであってもポリマーであってもよく、
重量平均分子量が500〜100,000であるものが好ましく、2,000〜30,000であるものがより好ましく、5,000〜15,000であるものがさらに好ましい。
本発明の製造方法において、溶融性シリコーン樹脂として、具体的には、ラダーシリコーン樹脂 (ポリオルガノシルセスキオキサン) 、ポリシラザン、ポリイミドシロキサン、ポリオルガノシルセスキオキサン−シアナト樹脂等を挙げることができ、これ等の溶融性シリコーン樹脂のうち、ラダーシリコーン樹脂が好ましい。
ラダーシリコーン樹脂は、側鎖にメチル基とフェニル基の両者を有するもの、側鎖全てがメチル基のもの、側鎖全てがフェニル基のものがあり、いずれも、セラミックス収率が高く、セラミックス化後はSiOC構造を形成し、高い耐熱性を示す。
市販のラダーシリコーン樹脂としては、YR3370(以上モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(Momentive Performance Materials)社製)、SR350(以上ゼネラルエレクトリック シリコーンズ(General Electric Silicones)社製)、PMS MK(以上Wacker Chemie AG社製)およびSR−21、SR−33(以上小西化学工業(株)製)等が挙げられる。
本発明の製造方法において、分散液中における溶融性シリコーン樹脂の濃度は、10〜65質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることがさらに好ましい。
本発明の製造方法において、分散液中における溶融性シリコーン樹脂の濃度が上記範囲内にあることにより、溶融性シリコーン樹脂を分散液中に所望量含有させつつ、分散液の粘度を容易に所望範囲に制御することができる。
本発明の製造方法においては、炭素材料に含浸する分散液がAl粉末を含む。
Al粉末の平均粒子径は、10nm〜100μmであることが好ましく、0.5〜75μmであることがより好ましく、1〜30μmであることがさらに好ましい。
本発明の製造方法において、Al粉末の平均粒子径が上記範囲内にあることにより、純度の高いAl粉末を容易に入手することができるとともに、溶融性シリコーン樹脂との反応性を所望範囲に制御しつつ、分散液中に均一分散して良好な被膜を容易に形成することができる。
なお、本出願書類において、上記体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径(平均粒径D50)を意味する。
本発明の製造方法において、Al粉末は、酸素の含有量が5質量%以下であるものが好ましく、2質量%以下であるものがより好ましく、0質量%であるものがさらに好ましい。
本発明の製造方法において、Al粉末の酸素の含有量が5質量%以下であることにより、後述する溶融性シリコーン樹脂との反応性を制御しつつ、所望量のSiC層を容易に形成して良好な被膜を容易に形成することができる。
なお、本出願書類において、Al粉末の酸素含有量は、不活性ガス溶解−赤外吸収法により、JIS Z2613金属材料の酸素定量方法則の赤外吸収法に準じて測定した値を意味する。
本発明の製造方法において、分散液中のAl粉末の存在量は、固形分換算で、上記溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、4質量部〜400質量部であることが好ましく、20質量部〜400質量部であることがより好ましく、30質量部〜400質量部であることがさらに好ましく、50〜350質量部であることが一層好ましく、60〜300質量部であることがより一層好ましい。
本発明の製造方法において、分散液中のAl粉末の存在量が、上記範囲内にあることにより、分散液の粘度を所望範囲に制御し得るとともに、膜厚が厚くても表面に亀裂を有さず、所望の熱膨張係数を有する複合化セラミックス被膜を容易に形成することができる。
本発明者等は、上記溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを含む分散液を、後述するように硬化処理し、非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理すると、驚くべきことに、上記溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とが反応して耐熱耐酸化性の無機固体相を析出し、Al粉末が溶融性シリコーン樹脂の熱収縮を抑制して、亀裂や欠陥のない厚い複合化セラミックス被膜を形成し得ることを見出すとともに、この複合化セラミックス被膜は、炭素材料との熱膨張係数の差が小さいことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
本発明の製造方法において、分散液を構成する溶媒としては、上記溶融性シリコーン樹脂を溶解し得るものであれば特に制限されず、例えば、有機溶媒や、有機溶媒を非反応性のシリコーンオイル(Al粉末と反応性を示さないシリコーンオイル)で希釈したものを挙げることができる。
有機溶媒としては、エタノール、トルエン、キシレン等を挙げることができ、非反応性のシリコーンオイルとしてはジメチルポリシロキサンオイル等を挙げることができる。
本発明の製造方法において、分散液中の溶媒の存在量は、溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、50〜150質量部であることが好ましい。
本発明の製造方法において、分散液の調製方法は特に制限されず、例えば、溶融性シリコーン樹脂を所望量溶媒中に添加した後、さらに所望量のAl粉末を添加することにより調製することができる。
本発明の製造方法においては、上記分散液の粘度が0.9〜65Pa・sになるように調製することが好ましく、10〜57Pa・sになるように調製することがより好ましく、12〜50Pa・sになるように調製することがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、分散液の粘度は、室温(25℃)条件下において、JIS Z8803「液体粘度−測定方法」における「単一円筒回転粘度計」に規定の方法に準じて、リオン(株)製 ビスコテスターVT−044(高粘度用)を用いて測定したときの値を意味する。
本発明の製造方法においては、上記分散液を炭素材料に含浸し、被覆処理する。
本発明の製造方法において、炭素材料としては、各種炭素粉や、各種炭素粉を成形してなるものや、炭素繊維強化炭素複合材料からなるものを挙げることができる。
炭素粉としては、等方性黒鉛粉等の各種黒鉛粉やコークス粉等を挙げることができる。
炭素粉を成形してなるものとして、具体的には、等方性黒鉛を成形してなる、東海カーボン(株)製G330、G347、G458、G520等を挙げることができる。
また、炭素粉を成形してなるものとしては、コークス粉や黒鉛粉等をピッチと加熱混合し、押し出し成形や冷間静水圧成形した後、焼成或いは黒鉛化したものを挙げることができる。
上記押出し成形してなるものとして、具体的には、東海カーボン(株)製EE250、FE250等を挙げることができる。
炭素繊維強化炭素複合材料としては、炭素繊維にピッチや樹脂などを含浸、成形した後、焼成、或いは必要に応じて黒鉛化したものや、炭素繊維を気相蒸着炭素で結合してなるものを挙げることができ、具体的には、東海カーボン(株)製トカレック等を挙げることができる。
炭素材料の形状も特に制限されず、粉末状であってもよいし、板状等であってもよく、得られる耐酸化性炭素材料の用途に対応する形状を有していることが好ましい。
炭素材料は、熱膨張係数が2×10−6/℃〜7×10−6/℃であるものが好ましく、4×10−6/℃〜6×10−6/℃であるものがより好ましい。
本発明の製造方法によれば、炭素材料の表面に炭素材料と同等の熱膨張係数を有する複合化セラミックス被膜を形成することができ、炭素材料の熱膨張係数が上記範囲内にある場合には、炭素材料表面に形成される複合化セラミックス被膜との熱膨張差が特に小さくなり、繰り返し使用した場合におけるセラミックス被膜の剥離を抑制することができる。
なお、本出願書類において、炭素材料の熱膨張係数は、炭素協会規格(JCAS)No8石英膨張計による平均線熱膨張係数の測定法に準じ、熱分析装置((株)リガク製熱機械分析装置TMA8310)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で室温〜400℃まで昇温したときに測定される値を意味する。
本発明の製造方法において、上記分散液を炭素材料に含浸させる方法は特に制限されず、例えば炭素材料に刷毛塗りして含浸してもよいし、炭素材料にスプレー塗布して含浸してもよいし、トレー等の容器内で分散液中に炭素材料を浸漬することにより含浸してもよい。
本発明の製造方法において、炭素材料に含浸させる分散液の量は特に制限されず、炭素材料表面に所望膜厚の被膜を形成し得るように適宜決定すればよい。
本発明の製造方法においては、上記分散液にゲル化剤を加えつつ炭素材料に含浸させることが好ましい。
ゲル化剤としては、特に制限されないが、上記溶融性シリコーン樹脂と反応性を示さず、後工程の加熱処理により揮発するものが好ましく、シランカップリングがより好適であり、具体的にはアミノシランカップリング剤が挙げられる。
アミノシランカップリング剤としては、下記一般式(I)で表されるアミノシラン化合物からなるものを挙げることができる。
上記一般式(I)で表されるアミノシラン化合物として、具体的には、例えば、
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(HNCHCHCHSi(OCHCH))、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(HNCHCHCHSi(OCH)等を挙げることができる。
また、アミノシラン化合物としては、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(HNCHCHNHCHCHCHSi(OCH)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(HNCHCHNHCHCHCHSiCH(OCH) )、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン (C−NH−CHCHCHSi(OCH)等を用いることもできる。
ゲル化剤としてアミノシラン化合物を用いる場合、その使用量は、分散液の固形分100質量部に対して0.1〜9.0質量部程度であることが好ましく、分散液の粘度が0.9〜65Pa・sになるように調整することが好ましい。
本発明の製造方法において、ゲル化剤を用いることにより塗布時における分散液の粘度を最適な範囲に制御することができる。
本発明の製造方法においては、分散液を塗布した後、硬化処理を施す。
硬化処理は、室温下に1時間以上静置して、自然乾燥することにより行うことが好ましく、不活性ガスを吹き付けて強制乾燥、減圧または真空乾燥により行ってもよい。
本発明の製造方法においては、上記乾燥処理を施した後、非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理する。
本発明の製造方法において、焼成時の雰囲気は非酸化性雰囲気であり、非酸化性雰囲気としては、アルゴンガス雰囲気等の希ガス雰囲気や窒素ガス雰囲気が挙げられるが、希ガス雰囲気等の窒素ガスを含まない雰囲気であることが好ましい。
本発明の製造方法において、焼成温度は800〜1300℃であり、800〜1200℃であることが好ましく、900〜1100℃であることがより好ましい。
また、焼成時間は1時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましく、4時間以上であることがさらに好ましい。
本発明の製造方法においては、800〜1300℃で焼成処理することにより、上記溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを好適に反応させて、炭素材料表面に耐酸化性を有する複合化セラミックス被膜を容易に形成することができる。
本発明の製造方法においては、硬化処理後、焼成処理に先立って、非酸化性雰囲気下、Al粉末の融点(660℃)以上の温度で予備加熱処理することが好ましい。
非酸化性雰囲気としては、アルゴンガス雰囲気等の希ガス雰囲気や窒素ガス雰囲気が挙げられるが、希ガス雰囲気等の窒素ガスを含まない雰囲気であることが好ましい。
予備加熱処理温度は、600〜800℃が好ましく、630〜770℃がより好ましく、660〜740℃がさらに好ましい。
予備加熱処理時間は10〜600分間が好ましく、30〜350分間がより好ましく、60〜180分間がさらに好ましい。
上記予備加熱処理を行うことにより、上記溶融性シリコーン樹脂とAl粉末との反応を生じさせ易くなる。
本発明者等の検討によれば、上記溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを含む分散液を、硬化処理し、非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理すると、驚くべきことに、上記溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とが反応して耐熱耐酸化性の無機固体相を析出し、Al粉末が溶融性シリコーン樹脂の熱収縮を抑制して、亀裂や欠陥のない厚いセラミックス被膜を形成し得ることを見出すとともに、このセラミックス被膜は、炭素材料との熱膨張係数の差が小さいことを見出し、本発明を完成するに至った。
上記知見について本発明者等がさらに検討したところ、非酸化性雰囲気下、Al粉末は、Alの融点(約660℃)よりも高い温度下において溶融性シリコーン樹脂と反応して、酸化物であるAlや炭化物であるAlや遊離シリコーンを生じ、さらに温度が高くなると遊離シリコーンは余剰な炭素やAlと反応してSiCを生じるとの知見を得、さらに、上記温度が800℃を超えるとSi−O−C結合やSi−O−Si結合を主とする無機材料中にSiCとAlが共存した複合組成のセラミックスが生成するとの知見を得た。この場合、窒素ガス雰囲気下で焼成処理したり予備加熱処理する場合に比べ、窒素ガスを含まない非酸化製雰囲気下で焼成処理したり予備加熱処理を行った場合の方が、上記反応が促進されて目的とする複合化セラミックス被膜(複合組成セラミックス被膜)を容易に生成することができる。
上記反応過程において溶融Al金属相が介在することにより、溶融性シリコーン樹脂がセラミックス化する際の体積収縮を小さくする効果を発揮するため、炭素材料の表面に亀裂(クラック)の発生を抑制しつつ厚い耐酸化複合化セラミックス被膜を形成することができる。上述したように、このセラミックス被膜は、Si−O−C結合やSi−O−Si結合を主とする無機材料中にSiCとAlが共存する複合組成を有し、溶融性シリコーン樹脂単独で得られるセラミックス被膜よりも熱膨張係数が高くなり、等方性黒鉛等の炭素材料と同等の熱膨張係数を有するため、繰り返し使用した際における被膜の剥離を抑制することができる。
なお、本出願書類において、炭素材料表面に形成される複合化セラミックス被膜が、Si−O−C結合やSi−O−Si結合を主とする無機材料中にSiCとAlが共存する複合組成を有するものであることは、以下の方法によりSi−O−C結合、Si−O−Si結合の有無と、SiC、Alの有無を確認した上で、酸素量および炭素原子量から酸素原子および炭素原子の原子比を求め、さらにAl含有量を求めることにより確認することができる。
(Si−O−C結合、Si−O−Si結合の有無)
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用い、KBrを用いたペレット法により、Si−O−C結合やSi−O−Si結合に由来するピークの有無を確認する。
(SiC、Alの有無)
X線回折装置(XRD)または高出力X線回折装置(高出力XRD)を用い、熱処理前後におけるピークの変化によりSiC結晶相やAl結晶相の生成の有無を確認する。
このとき、XRDによる測定条件は、CuKαを用い、35KV、20mA、2θを20−70°とし、高出力XRDによる測定条件は、CuKαを用い、50kV、300mA、2θを20−70°とする。
(酸素と炭素の原子比測定)
酸素量を不活性ガス融解赤外線吸収法によって定量し、炭素量を高周波加熱赤外吸収法によって定量することにより酸素原子と炭素原子の原子比を求める。
(Al含有量)
誘導結合プラズマ発光スペクトルによってアルミニウムの量を定量し、この定量値からAlの含有量を算出する。
本発明によれば、膜厚が厚くても亀裂や欠陥を生じ難く剥離し難い被膜が表面に形成されてなり、耐酸化性が十分に向上された耐酸化性炭素材料を簡便に製造する方法を提供することができる。
本発明の製造方法で得られる耐酸化性炭素材料の詳細は、以下の本発明の耐酸化性炭素材料の説明で述べるとおりである。
次に、本発明の耐酸化性炭素材料について説明する。
本発明の耐酸化性炭素材料は、SiOxCyHz(ただし、xは1以上2以下の数、yは1以上6以下の数、zは3以上8以下の数である)で表わされる組成式を有する溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを含む分散液を、炭素材料に含浸し、被覆処理した後、硬化処理し、次いで、非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理してなることを特徴とするものである。
上記溶融性シリコーン樹脂、Al粉末、炭素材料および分散液の詳細は上述したとおりであり、分散液の含浸、被覆処理方法や、硬化処理、焼成処理方法の詳細も上述したとおりである。また、硬化処理後、焼成処理に先だって必要に応じて上記予備加熱処理を行ってよい点も上述したとおりである。
本発明の耐酸化性炭素材料において、炭素材料表面に形成される複合化セラミックス被膜の熱膨張係数は、通常、2×10−6/℃〜17×10−6/℃であり、3×10−6/℃〜17×10−6/℃であることが適当であり、4×10−6/℃〜13×10−6/℃であることがより適当である。
炭素材料表面に形成される複合化セラミックス被膜の熱膨張係数は、溶融性シリコーン樹脂の使用量に対するAl粉末の使用量等を調整することにより制御することができる。
なお、本出願書類において、炭素材料表面に形成される複合化セラミックス被膜の熱膨張係数は、炭素協会規格(JCAS)No8石英膨張計による平均線熱膨張係数の測定法に準じ、熱分析装置((株)リガク製熱機械分析装置TMA8310)を用い、窒素ガス雰囲気下、昇温速度20℃/分で室温〜400℃まで昇温したときに測定される値を意味する。
本発明の耐酸化性炭素材料において、炭素材料表面に形成される複合化セラミックス被膜の膜厚は、通常、100〜750μmであり、耐酸化性炭素材料の用途にも依るが、180〜700μm程度であることが好適であり、200〜610μm程度であることがより適当である。
上記複合化セラミックス被膜の膜厚は、耐酸化炭素材料の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、被膜の厚みを5点測定したときの算術平均値を意味する。
本発明によれば、膜厚が厚くても亀裂や欠陥を生じ難く長期に亘って剥離し難い被膜が表面に形成されてなり、耐酸化性が十分に向上された耐酸化性炭素材料を提供することができる。
以下、本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、以下の例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
溶融性シリコーン樹脂として、SiO1.781.223.67で表される組成式を有するラダーシリコーン樹脂(モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン社製YR3370、重量平均分子量2000)をエタノールに溶解して溶融性シリコーン樹脂濃度65質量%のエタノール溶液を得た。該エタノール溶液に対し、さらに平均粒子径3μmのAl粉末(東洋アルミニウム(株)製、酸素含有量0.1質量%)を、上記エタノール溶液中の溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、40質量部の量になるように添加、攪拌して分散液を得た。
上記分散液に対し、ゲル化剤としてアミノシラン化合物((CO)Si(C)NH)を、上記分散液中の固形分100質量部に対して1質量部になるように添加して、分散液の粘度が0.9Pa・sになるように調整した。
上記ゲル化剤を添加した分散液を、等方性黒鉛からなる板状黒鉛材(東海カーボン(株)製G330、縦20mm、横20mm、厚さ30mm、熱膨張係数4.6×10−6/℃)に刷毛塗りした後、室温で24時間自然乾燥して硬化処理を施すことにより、板状黒鉛材の表面に約500μm厚の被膜を形成した。
次いで、焼成炉内において、窒素ガス雰囲気中、室温から600〜800℃まで昇温して150分間予備加熱した後、さらに800℃で2時間焼成処理することにより、板状黒鉛材の表面にSi−O−C結合を主体としSiCとAlが共存した複合組成を有する複合化セラミックス被膜を形成して、目的とする耐酸化性炭素材料を作製した。
得られた耐酸化性炭素材料は、板状黒鉛材上に150μm厚の複合化セラミックス被膜を有するものであり、該複合化セラミックス被膜は、表面に亀裂や欠陥を有さないものであった。
上記耐酸化性炭素材料の耐酸化性を評価するために、5L/分の空気を流通させつつ1000℃で1時間加熱したときの酸化消耗量(%)を、以下の式により算出したところ、酸化消耗量は29%だった。
((加熱前の耐酸化性炭素材料の質量−加熱後の耐酸化性炭素材料の質量)/加熱前の耐酸化性炭素材料の質量)×100
また、得られた耐酸化性炭素材料を構成する複合化セラミックス被膜の熱膨張係数を測定したところ、4.14×10−6/℃であった。
(実施例2〜実施例6)
Al粉末の添加量を、エタノール溶液中の溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、それぞれ、70質量部(実施例2)、100質量部(実施例3)、200質量部(実施例4)、300質量部(実施例5)、400質量部(実施例6)に変更し、さらに実施例3においてはエタノールをジメチルポリシロキサンオイルに変更した以外は、実施例1と同様にして目的とする耐酸化性炭素材料を作製した。
得られた各耐酸化性炭素材料は、平板状黒鉛材上に形成された複合化セラミックス被膜の厚みが、それぞれ、200μm(実施例2)、250μm(実施例3)、490μm(実施例4)、560μm(実施例5)、750μm(実施例6)であるものであり、いずれも複合化セラミックス被膜の表面に亀裂や欠陥を有さないものであった。
上記各耐酸化性炭素材料の耐酸化性を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
また、実施例4および実施例6においては、得られた耐酸化性炭素材料を構成する複合化セラミックス被膜の熱膨張係数も測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
Al粉末の添加量を、エタノール溶液中の溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して0質量部に変更した(Al粉末を加えなかった)以外は、実施例1と同様にして目的とする耐酸化性炭素材料を作製した。
得られた耐酸化性炭素材料は、平板状黒鉛材上に100μm厚のセラミックス被膜を有するものであり、該セラミックス被膜の表面に亀裂が観察されるものであった。
上記耐酸化性炭素材料の耐酸化性を実施例1と同様に評価したところ、酸化消耗量は36%だった。結果を表1に示す。
(実施例7)
溶融性シリコーン樹脂として、SiO1.781.223.67で表される組成式を有するラダーシリコーン樹脂(モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン社製YR3370、重量平均分子量2000)をエタノールに溶解して溶融性シリコーン樹脂濃度30質量%のエタノール溶液を得た。該エタノール溶液に対し、さらに平均粒子径3μmのAl粉末(東洋アルミニウム(株)製、酸素含有量0.1質量%以下)を、上記エタノール溶液中の溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、4.5質量部の量になるように添加、攪拌して分散液を得た。得られた分散液の粘度は10Pa・sであった。
上記分散液に対し、等方性黒鉛からなる板状黒鉛材(東海カーボン(株)製G348、縦15mm、横15mm、厚さ5mm、熱膨張係数4.2×10−6/℃)を浸漬した後、ロータリーポンプで減圧し、次いで常圧に戻すことにより、板状黒鉛材の表面全体に分散液を含浸し、被覆処理した。
その後、室温で24時間自然乾燥して硬化処理を施すことにより、板状黒鉛材の表面に約50μm厚の被膜を形成した。
次いで、焼成炉内において、Arガス雰囲気下、室温から600℃まで5℃/分で昇温した後、昇温速度を0.6℃/分に変更して800℃まで昇温することにより予備加熱処理を行い、さらに昇温速度を5℃/分に変更して1000℃まで昇温することにより焼成処理を行うことにより、板状黒鉛材の表面にSi−O−C結合を主体としSiCとAlが共存した複合組成を有する複合化セラミックス被膜を形成して、目的とする耐酸化性炭素材料を作製した。
得られた耐酸化性炭素材料は、平板状黒鉛材上に30μm厚の複合化セラミックス被膜を有するものであり、該複合化セラミックス被膜は、表面に亀裂や欠陥を有さないものであった。
上記耐酸化性炭素材料の耐酸化性を評価するために、0.5L/分の純二酸化炭素ガスを流通させつつ1000℃で12時間加熱したときの酸化消耗量(%)を、以下の式により算出したところ、酸化消耗量は7.1%だった。
((加熱前の耐酸化性炭素材料の質量−加熱後の耐酸化性炭素材料の質量)/加熱前の耐酸化性炭素材料の質量)×100
(実施例8)
上記エタノール溶液中の溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、平均粒子径3μmのAl粉末(東洋アルミニウム(株)製、酸素含有量0.1質量%)を、9.0質量部の量になるように添加、攪拌した以外は、実施例7と同様にして目的とする耐酸化性炭素材料を作製した。
得られた耐酸化性炭素材料は、平板状黒鉛材上に30μm厚の複合化セラミックス被膜を有するものであり、該複合化セラミックス被膜の表面に亀裂や欠陥を有さないものであった。
上記耐酸化性炭素材料の耐酸化性を実施例7と同様に評価したところ、酸化消耗量は3%だった。
実施例8で得られた耐酸化性炭素材料において、上記耐酸化性評価前後における断面図を図1に示す。
図1に示すように、実施例8で得られた耐酸化性炭素材料(図1左図)は、等方性黒鉛材表面に形成した複合化セラミックス被膜(図1左図の中央に上下に延びる帯状部)が亀裂や欠陥を有さないものであり、耐酸化性評価後(図1右図)においても優れた耐酸化性を示し、ほとんど酸化消耗していないことが分かる。
(比較例2)
Al粉末の添加量を、エタノール溶液中の溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して0質量部に変更した(Al粉末を加えなかった)以外は、実施例7と同様にして目的とする耐酸化性炭素材料を作製した。
得られた耐酸化性炭素材料は、平板状黒鉛材上に25μm厚のセラミックス被膜を有するものであり、該セラミックス被膜の表面に亀裂が観察されるものであった。
上記耐酸化性炭素材料の耐酸化性を実施例7と同様に評価したところ、酸化消耗量は12.7%だった。
比較例2で得られた耐酸化性炭素材料において、上記耐酸化性評価前後における断面図を図2に示す。
図2に示すように、比較例2で得られた耐酸化性炭素材料(図2左図)は、等方性黒鉛材表面に形成した複合化セラミックス被膜(図2左図の中央に上下に延びる帯状部)が亀裂や欠陥を有するものであり、耐酸化性評価後において激しく酸化消耗され、複合化セラミックス被膜および等方性黒鉛材の破損が進行することが分かる(図2右図)。
実施例7、実施例8および比較例2の耐酸性評価結果を表2に示す。
(実施例9)
実施例7において、エタノール溶液中の溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、平均粒子径3μmのAl粉末(東洋アルミニウム(株)製、酸素含有量 0.1質量%以下)を、9.0質量部の量になるように添加、攪拌して、粘度が10Pa・sの分散液を得るとともに、1100℃まで昇温して焼成したことを除けば実施例7と同様にして目的とする耐酸化性炭素材料を作製した。
得られた耐酸化性炭素材料は、板状黒鉛材上に30μm厚の複合化セラミックス被膜を有するものであり、該複合化セラミックス被膜の表面に亀裂や欠陥を有さないものであった。
上記耐酸化性炭素材料の耐酸化性を実施例7と同様に評価したところ、酸化消耗量は3.8%だった。
(実施例10)
実施例7において、エタノール溶液中の溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、平均粒子径3μmのAl粉末(東洋アルミニウム(株)製、酸素含有量 0.1質量%以下)を、9.0質量部の量になるように添加、攪拌して、粘度が10Pa・sの分散液を得るとともに、1200℃まで昇温して焼成したことを除けば実施例7と同様にして目的とする耐酸化性炭素材料を作製した。
得られた耐酸化性炭素材料は、板状黒鉛材上に30μm厚の複合化セラミックス被膜を有するものであり、該複合化セラミックス被膜の表面に亀裂や欠陥を有さないものであった。
上記耐酸化性炭素材料の耐酸化性を実施例7と同様に評価したところ、酸化消耗量は10.3%だった。
(実施例11)
実施例7において、エタノール溶液中の溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、平均粒子径3μmのAl粉末(東洋アルミニウム(株)製、酸素含有量 0.1質量%以下)を、9.0質量部の量になるように添加、攪拌して、粘度が 10Pa・sの分散液を得るとともに、1300℃まで昇温して焼成したことを除けば実施例7と同様にして目的とする耐酸化性炭素材料を作製した。
得られた耐酸化性炭素材料は、板状黒鉛材上に30μm厚の複合化セラミックス被膜を有するものであり、該複合化セラミックス被膜の表面に亀裂や欠陥を有さないものであった。
上記耐酸化性炭素材料の耐酸化性を実施例7と同様に評価したところ、酸化消耗量は8.5%だった。
(比較例3)
実施例7において、エタノール溶液中の溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、平均粒子径3μmのAl粉末(東洋アルミニウム(株)製、酸素含有量 0.1質量%以下)を、9.0質量部の量になるように添加、攪拌して、粘度が10Pa・sの分散液を得るとともに、1400℃まで昇温して焼成したことを除けば実施例7と同様にして目的とする耐酸化性炭素材料を作製した。
得られた耐酸化性炭素材料は、板状黒鉛材上に30μm厚のセラミックス被膜を有するものであり、該セラミックス被膜の表面に亀裂が観察されるものであった。
上記耐酸化性炭素材料の耐酸化性を実施例7と同様に評価したところ、酸化消耗量は19.4%だった。
実施例9〜実施例11および比較例3の耐酸性評価結果を実施例8の評価結果とともに表3に示す。
(実施例12〜実施例14)
Al粉末として、平均粒子径が60nmで酸素含有量が0.1質量%以下であるもの(実施襟12)、平均粒子径が30μmで酸素含有量が0.1質量%以下であるもの(実施例13)、平均粒子径が75μmで酸素含有量が0.1質量%以下であるもの(実施例14)を用い(いずれも東洋アルミニウム(株)製)、実施例3において、エタノール溶液中の溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、各Al粉末がそれぞれ100質量部の量になるように添加、攪拌して、実施例3と同様にして目的とする耐酸化性炭素材料を作製した。
得られた耐酸化性炭素材料は、平板状黒鉛材上に形成された複合化セラミックス被膜の厚みが、それぞれ、200μm(実施例12)、270μm(実施例13)、300μm(実施例14)であるものであり、該複合化セラミックス被膜の表面に亀裂や欠陥を有さないものであった。
上記各耐酸化性炭素材料の耐酸化性を実施例3と同様に評価した。結果を実施例3の評価結果とともに表4に示す。
表1〜表4より、実施例1〜実施例14においては、SiOxCyHz(ただし、xは1以上2以下の数、yは1以上6以下の数、zは3以上8以下の数である)で表わされる組成式を有する溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを含む分散液を、炭素材料に含浸し、被覆処理した後、硬化処理し、次いで、非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理して耐酸化性炭素材料を作製していることから、セラミックス被膜を形成する過程で溶融性シリコーン樹脂とAl粉末との反応を生じ、膜厚が厚くても亀裂や欠陥を生じ難く剥離し難い複合化セラミックス被膜が表面に形成されてなり、該セラミックス被膜と炭素基材との熱膨張率の差が小さいことから長期に亘って剥離を抑制することができ、さらに耐酸化性が十分に向上された耐酸化性炭素材料を簡便に製造できることが分かる。
これに対して、表1および表2より、比較例1および比較例2で得られた耐酸化性炭素材料は、黒鉛基材上に形成されたセラミックス被膜がAl粉末を加えることなく形成されたものであることから、亀裂や欠陥を生じ易く、膜厚が薄い被膜しか形成することができず、表1および表2より、耐酸化性に劣るものであることが分かる。
また、表3より、比較例3で得られた耐酸化性炭素材料は、焼成温度が1400℃と高温で焼成処理されてなるものであることから、亀裂や欠陥を生じ易く、膜厚が薄い被膜しか形成することができず、表3より、耐酸化性に劣るものであることが分かる。
本発明によれば、セラミックス被膜を形成する過程で溶融性シリコーン樹脂とAl粉末との反応を生じ、膜厚が厚くても亀裂や欠陥を生じ難く長期に亘って剥離し難い複合化セラミックス被膜が表面に形成されてなり、耐酸化性が十分に向上された耐酸化性炭素材料を簡便に製造する方法を提供することができるとともに、上記特性を有する耐酸化性炭素材料を提供することができる。

Claims (7)

  1. 耐酸化性炭素材料を製造する方法であって、SiOxCyHz(ただし、xは1以上2以下の数、yは1以上6以下の数、zは3以上8以下の数である)で表わされる組成式を有する溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを含む分散液を、
    炭素材料に含浸し、被覆処理した後、硬化処理し、次いで、
    非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理する
    ことを特徴とする耐酸化性炭素材料の製造方法。
  2. 前記硬化処理後、焼成処理前にさらに600〜800℃で150〜350分間予備加熱処理を行う請求項1に記載の耐酸化性炭素材料の製造方法。
  3. 前記分散液中のAl粉末の存在量が、固形分換算で、前記溶融性シリコーン樹脂100質量部に対して、4質量部〜400質量部である請求項1または請求項2に記載の耐酸化性炭素材料の製造方法。
  4. 窒素ガスを含まない非酸化性雰囲気下で焼成処理する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の耐酸化性炭素材料の製造方法。
  5. 前記Al粉末の酸素の含有量が、5質量%以下である前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の耐酸化性炭素材料の製造方法。
  6. 前記炭素材料の熱膨張係数が、2×10−6/℃〜7×10−6/℃である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の耐酸化性炭素材料の製造方法。
  7. SiOxCyHz(ただし、xは1以上2以下の数、yは1以上6以下の数、zは3以上8以下の数である)で表わされる組成式を有する溶融性シリコーン樹脂とAl粉末とを含む分散液を、
    炭素材料に含浸し、被覆処理した後、硬化処理し、次いで、
    非酸化性雰囲気下、800℃〜1300℃の温度下で焼成処理してなる
    ことを特徴とする耐酸化性炭素材料。
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