JP2012241754A - 転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】コストの低い方法で、転がり軸受の剥離寿命(異物混入潤滑下での寿命)を長くする。
【解決手段】軌道輪および転動体の転がり表面層の残留オーステナイト量を20体積%未満とする。転動体の転動面の表層部のビッカース硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb:体積%)との関係が下記の(1) 式を満たすように構成する。軌道面の表層部のビッカース硬さ(Hvr )と残留オーステナイト量(γRr:体積%)との関係が下記の(2) 式を満たすように構成する。
5.6γRb+770≦Hvb ≦5.6γRb+870‥‥(1)
5.6γRr+650≦Hvr ≦5.6γRr+750‥‥(2)
【選択図】図5

Description

この発明は転がり軸受に関する。
自動車、農業機械、建設機械、鉄鋼機械等のトランスミッションやエンジンで用いられる転がり軸受は、潤滑油中に金属の切粉、削り屑、バリ、摩耗粉等の異物が混入した条件下(以下、「異物混入潤滑下」と記す。)で使用されることが多いため、軌道輪や転動体に異物による早期剥離が生じて、大幅に寿命が低下する場合がある。
このような異物混入潤滑下における早期剥離は、軌道輪と転動体との間に異物が噛み込むことで、転がり面(軌道輪の軌道面および転動体の転動面)に形成された圧痕のエッジ部(以下、「圧痕縁」と記す。)に、応力集中が生じることが原因であると言われている。
そこで、本出願人は、異物混入潤滑下で転がり面に圧痕が形成された場合であっても、圧痕縁への応力集中を緩和するために、特許文献1において、内外輪のうち少なくとも一つの軌道面をなす表層部と、転動体の転動面をなす表層部の残留オーステナイト量を20体積%以上45体積%以下とし、さらに、転動体の転動面をなす表層部の炭窒化物の含有率を体積比で5%以上15%以下とすることを提案している。
ところで、近年、異物混入潤滑下で生じる早期剥離は、上述した圧痕縁への応力集中だけでなく、軌道輪と転動体との転がり面に作用する接線力が原因となっていることが分かってきている。接線力に影響を及ぼす要因としては、転がり面のすべり速度や面圧の他に、転がり面の表面形状や表面粗さ等が挙げられる。すなわち、異物混入潤滑下において早期剥離を生じ難くするためには、転がり面に形成された圧痕縁への応力集中を抑制するとともに、転がり面に作用する接線力を小さくする必要がある。
しかし、圧痕縁への応力集中を抑制するために、転がり面をなす表層部の残留オーステナイト量を多くすることは、表層部の硬さが低下して耐疲労特性の低下につながる。
そこで、本出願人は、特許文献2において、転がり表面層(転がり面の表層部)の残留オーステナイト量と表面硬さとの最適な関係を提案している。また、炭化物形成元素を添加した鋼に浸炭または浸炭窒化を施して、微細な炭化物を多量に析出させることで、残留オーステナイト量が多いことにより生じる硬さの低下を補うことを提案している。
具体的には、軌道輪および転動体の少なくとも一つを、転がり表面層の残留オーステナイト量(γR vol %)が20〜45vol %、且つ、平均粒径0.5〜1.5μmの微細炭化物又は炭窒化物の分散強化により、前記転がり表面硬さ(Hv)が前記残留オーステナイト量(γR vol %)に対し、−4.7×(γR vol %)+920≦Hv≦−4.7×(γR vol %)+1020を満たすものとすることが記載されている。これにより、異物混入潤滑下ばかりでなくクリーンな潤滑下でも、従来品よりも寿命の長い転がり軸受が得られるとしている。
特開平1−55423号公報 特公平8−26446号公報
しかし、特許文献2の提案は、軌道輪および転動体の転がり表面層の残留オーステナイト量が20〜45体積%である場合に適用されるものであって、20体積%未満の場合には適用されない。また、特許文献2の提案には、残留オーステナイト量増大と高硬度化に伴い、コストが高くなるという問題点がある。
この発明の課題は、軌道輪および転動体の転がり表面層の残留オーステナイト量が20体積%未満の場合に適用できる、残留オーステナイト量と表面硬さとの最適な関係を提案し、コストの低い方法で、転がり軸受の剥離寿命(異物混入潤滑下での寿命)を長くすることである。
上記課題を解決するために、この発明の転がり軸受は、内輪、外輪、および転動体を有する転がり軸受であって、下記の構成(a) 〜(c) を有することを特徴とする。
(a) 転動体は、炭素の含有率が0.80質量%以上1.20質量%以下で、炭素以外の元素の含有率はJIS G4805で規定されている高炭素クロム軸受鋼と同じである軸受鋼からなる。
(b) 転動体の転動面の表層部(表面から深さ50μmまでの範囲)の残留オーステナイト量(γRb)が20体積%未満である。
(c) 転動体の転動面の表層部(表面から深さ50μmまでの範囲)のビッカース硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb:体積%)との関係が下記の(1) 式を満たす。
5.6γRb+770≦Hvb ≦5.6γRb+870‥‥(1)
この発明の転がり軸受は、内輪および外輪のうちの少なくとも一方が、下記の構成(d) 〜(f) を有することが好ましい。
(d) 炭素の含有率が0.80質量%以上1.20質量%以下で、炭素以外の元素の含有率はJIS G4805で規定されている高炭素クロム軸受鋼と同じである軸受鋼からなる。
(e) 軌道面の表層部(表面から深さ50μmまでの範囲)の残留オーステナイト量(γRr)が20体積%未満である。
(f) 軌道面の表層部(表面から深さ50μmまでの範囲)のビッカース硬さ(Hvr )と残留オーステナイト量(γRr:体積%)との関係が下記の(2) 式を満たす。
5.6γRr+650≦Hvr ≦5.6γRr+750‥‥(2)
前記構成(a) および(b) を有する転動体のうち前記構成(c) を有する(前記(1) 式を満たす)転動体は、前記構成(c) を有さない(前記(1) 式を満たさない)転動体と比較して降伏強度が高くなるため、表面性状安定性が高い。これにより、この発明の転がり軸受は、転動体の軌道輪との間に作用する接線力が小さくなるため、前記構成(c) を有さない転動体を備えた転がり軸受と比較して、軌道輪の剥離寿命が長くなる。
特に、転動体が玉である玉軸受の場合は、以下の理由で軌道輪の剥離寿命の延長効果が大きい。一般に、剥離現象は周速の速い駆動側に比べて、周速の遅い従動側で生じやすいことが知られている。玉軸受の場合、剥離が生じる荷重負荷圏のHertz 面圧が高い接触域中央部において、軌道輪が従動側であるため、軌道輪に剥離が生じやすいことになる。したがって、転動体(玉)の表面性状安定性を向上させることで得られる、軌道輪の内部起点型剥離防止効果が高くなる。
前記構成(b) に関し、転動体の転動面の表層部が硬くても、残留オーステナイト量が 多すぎると局部的に柔らかい部分ができて表面性状安定性が低くなるため、この発明の転がり軸受では、転動体の転動面の表層部の残留オーステナイト量を20体積%未満としている。また、前記構成(a) の軸受鋼を用いた場合、浸炭や浸炭窒化等の特殊な熱処理や表面処理を行わずに、ずぶ焼入れと焼戻しによる低コストの熱処理で達成できる表層部の残留オーステナイト量は20体積%未満である。つまり、前記構成(b) を有することで転 動体の熱処理コストが低くなる。
この発明の転がり軸受は、内輪および外輪のうちの少なくとも一方(軌道輪)が前記構成(d) 〜(f) をさらに有する(軌道輪が前記(2) 式を満たす)ことで、前記構成(d) および(e) を有するが前記構成(f) を有さない(軌道輪が前記(2) 式を満たさない)転がり軸受と比較して、軌道面の表面性状安定性が良好になって、圧痕縁への応力集中が低減される。よって、軌道輪の剥離寿命をさらに延長することができる。
前記構成(e) に関し、前記構成(d) の軸受鋼を用いた場合、浸炭や浸炭窒化等の特殊な熱処理や表面処理を行わずに、ずぶ焼入れと焼戻しによる低コストの熱処理で達成できる表層部の残留オーステナイト量は20体積%未満である。つまり、前記構成(e) を有することで軌道輪の熱処理コストが低くなる。
[前記(1) 式について]
上述のように、前記構成(a) および(b) を有する転動体のうち前記構成(c) を有する(前記(1) 式を満たす)転動体は、前記構成(c) を有さない(前記(1) 式を満たさない)転動体と比較して降伏強度が高くなるため、表面性状安定性が高い。これについて以下に説明する。
先ず、軸受稼働中の転動体表面性状悪化の抑制に降伏応力が関係している理由について述べる。転動体の表面性状安定性には、転動体表面の降伏強度が大きく関係していると考えられる。線傷、圧痕などが形成されるということは、局部的に降伏点以上の応力が作用し、塑性変形したということである。即ち、降伏強度が上がると、作用する応力が降伏強度以上になる確率が小さくなるため、線傷や圧痕は発生しにくくなり、その大きさや深さも小さくなる。
図1に応力−歪み曲線の模式図を示す。a,bは、引張応力が同じ(σBa=σBb)で降伏応力が異なる(σYa>σYb)曲線を示している。線傷形成時にσc の応力が発生すると仮定すると、曲線aの場合はσYa>σc なので弾性変形し、線傷は形成されない。これに対し、曲線bの場合はσYb<σc となるため、歪みεb だけ塑性変形し、線傷が形成される。即ち、引張応力は同じでも、降伏応力が高い曲線aの方が線傷や圧痕が少なく、表面性状の悪化も抑制されると考えられる。
次に、前記(1) 式を満たす転動体は、前記(1) 式を満たさない転動体と比較して降伏強度が高くなる(表面性状安定性が高くなる)理由について述べる。
硬さと降伏応力の関係は一般的に知られており、硬さが高いほど降伏応力は大きくなる。しかし、硬さを高くするために、焼入れ温度を高くし過ぎたり、焼戻し温度を低くし過ぎたりすると、残留オーステナイト量が著しく増加し、局部的に降伏応力も低下するため、表面性状安定性が悪くなる。
具体的に、表1に示すように、表層部の硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb)を変化させたNo.1〜12の玉(呼び番号6206用の玉)を用意し、試験軸受(呼び番号6206の玉軸受)を組み立てて、転動体の表層部の硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb)が表面性状安定性に及ぼす影響を調査した。
試験条件は、荷重:6223N、回転速度:3000min -1、異物混入潤滑:潤滑油VG68に異物(硬さ:Hv870、サイズ:74〜147μm)を0.05g混入であり、この玉軸受を1時間稼働させた前後の玉の表面粗さ(Ra)を測定し、その差(ΔRa:試験により上昇した量)を算出した。その結果も表1に示す。
Figure 2012241754
また、No.1〜12の玉の表層部の硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb)との関係を図2にグラフで示し、(1) 式を満たす範囲を破線で囲って範囲Aとした。また、範囲Aに入るNo.1〜7のΔRaは0.014〜0.032であるのに対して、範囲Aから外れるNo. 8〜12のΔRaは0.052〜0.058と大きかった。ΔRaが大きいほど表面性状安定性は低くなるため、前記(1) 式を満たす玉(転動体)は、前記(1) 式を満たさない玉(転動体)と比較して表面性状安定性が高くなることが分かる。また、「Hvb >5.6γRb+870」となると、靭性が低下し、玉(転動体)が割れやすくなることが問題となる。
[前記(2) 式について]
上述のように、この発明の転がり軸受を構成する内輪および外輪のうちの少なくとも一方(軌道輪)が前記(2) 式を満たすことで、前記(2) 式を満たさない内輪および外輪を有する転がり軸受と比較して、軌道面の表面性状安定性が良好になって、圧痕縁への応力集中が低減される。
前記(2) 式は、Hvr ≧5.6γRr+650且つHvr ≦5.6γRr+750である。軌道面の表層部の硬さ(Hvr )が、残留オーステナイト量(γRr)との関係で5.6γRr+650より小さいと耐疲労特性が低下し、5.6γRr+750より大きいと靭性が低下して剥離や割れが生じ易くなる。
[前記(1) 式と(2) 式の関係について]
5.6γRb+770≦Hvb ≦5.6γRb+870‥‥(1)
5.6γRr+650≦Hvr ≦5.6γRr+750‥‥(2)
転動面の表層部に関する(1) 式と軌道面の表層部に関する(2) 式を比較すると、転動面の硬さHvb が軌道面の硬さHvr よりも高く設定されている。これにより、軌道輪より転動体の方が高い表面性状安定性を得られる。このように、剥離が生じやすい従動側となる軌道輪よりも駆動側となる転動体の表面性状の悪化を抑制して接線力を低減することで、軌道輪の剥離寿命を向上できる効果が高くなる。
(1) 式を満たす転動体と(2) 式を満たす軌道輪を組み合わせて転がり軸受を組み立てる場合、ΔHv(=Hvb −Hvr )を50以上150以下とすることが好ましい。
[構成(a) および(d) について]
転動体、内輪、外輪を構成する軸受鋼として、炭素の含有率が0.80質量%以上1.20質量%以下で、炭素以外の元素の含有率はJIS G4805で規定されている高炭素クロム軸受鋼と同じであるものを使用する。その理由を以下に述べる。
炭素(C)はマトリックスに固溶してマルテンサイトを強化する元素であり、焼入れ焼戻し後の強度確保と疲労寿命を向上させるために不可欠である。一般に、炭素の含有量が0.80質量%未満では、こうした効果が得られにくい。一方で、炭素の含有量が1.22質量%を超えると、鋳造時に巨大炭化物が生成しやすく、加工性が悪くなることや、巨大炭化物が起点となって早期剥離することが懸念される。
転動体、内輪、外輪を構成する軸受鋼として、JIS G4805で規定されている高炭素クロム軸受鋼(SUJ2やSUJ3)に相当する鋼を使用することが好ましい。
[製造方法について]
一般に、高炭素鋼の硬さを高める方法には、熱処理の焼入れ温度を高くして固溶炭素量を増加させる方法と、焼戻し温度を低くして歪み(転位)の開放の緩和を抑制する方法がある。これらの方法を夫々単独で行うよりも、焼入れ温度の上昇と焼戻し温度の低下を組合せることで、転動体の硬さを大幅に高くすることができる。
転動体表層部の硬さを高くする方法としては、ボールピーニング処理(以下、BPとも記す)後に表面から50μm以上70μm以下の深さ部分を研磨で除去する方法が挙げられる。
鋼球に作用する圧縮残留応力が大きいほど硬さが高くなることが知られている。鋼球に圧縮残留応力を付与させる方法として、特公平1−12812号公報に記載の空気噴射法ピーニングなどが存在するが、一般的には熱処理後、BPを施す手法が用いられる。付与させる圧縮残留応力を大きくするには、BPの処理時間を長くすることや、重量を少なくすることが効果的である。しかし、鋼球はBPが施されることによって、内部に最大圧縮残留応力が発生する場合が多い。
従って、転動体の表層部は圧縮残留応力が低いため、表面性状安定性を向上させるには効果的でない。つまり、転動体の表面性状安定性を向上させ、軌道輪の内部起点型剥離寿命を延長させるには、転動体の表層部に最大の残留圧縮応力を作用させればよい。そこで、BPの後に、表面から50μm以上70μm以下の深さ部分を研磨によって除去する。即ち、BPで生じた表面付近の圧縮残留応力の低い部分を研磨で除去することにより、転動体表面に高い圧縮残留応力を作用させ、硬さを高くすることができる。
この発明の転がり軸受によれば、転動面の表層部の残留オーステナイト量が20体積%未満である転動体を用い、前記表層部の残留オーステナイト量とビッカース硬さとの関係を最適にすることで、コストの低い方法で、転がり軸受の剥離寿命(異物混入潤滑下での寿命)を長くすることができる。
応力−歪み曲線の模式図である。 玉の表層部の硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb)との関係示すグラフである。 実施形態の転がり軸受を示す断面図である。 実施形態の転がり軸受を構成する玉の表層部の硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb)との関係「○」「●」、内輪および外輪の軌道面の表層部の硬さ(Hvr )と残留オーステナイト量(γRr)との関係「△」「▲」を示すグラフである。 実施形態の転がり軸受の試験結果を、寿命比と転がり軸受を構成する玉の表層部の硬さ(Hvb )との関係で示すグラフである。
以下、この発明の実施形態について説明する。
この実施形態の転がり軸受は、図3に示すように、内輪1、外輪2、玉(転動体)3、および鉄鋼製で波形の保持器4で構成されている。内輪1と外輪2は、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼)からなる素材を内輪1および外輪2の形状に加工した後、ずぶ焼入れと焼戻しからなる熱処理がなされたものである。玉3は、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼)からなる素材を玉3の形状に加工した後、ずぶ焼入れと焼戻しからなる熱処理を行い、さらにBPと研磨処理が施されたものである。
熱処理は、内輪1、外輪2、および玉3ともに、820〜890℃(通常のずぶ焼入れの加熱温度800〜850℃より20〜40℃高い温度)に保持した後、油冷却する「ずぶ焼入れ」を行った後、130〜210℃(通常の焼戻し温度150〜170℃より20〜40℃低い温度)で焼戻しを行った。
玉3のBPは、処理対象となる玉をバレル形の容器に入れて容器を回転させることで玉同士を衝突させる方法により、容器の回転速度:30〜60min-1、処理時間:30分〜90分の条件で行った。
研磨処理は、加圧機構を備えた2枚の溝付き特殊鋳物盤の間にBP後の玉3を順次流し入れ、圧力を加えながら特殊鋳物盤を回転させる方法により、BP後の玉3の表層部(表面から50〜70μmの深さまでの部分)を除去した。
具体的には、呼び番号6206の玉軸受用の玉として、表2に示すように、表層部の硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb)を変化させたもの(16種類)を用意した。また、呼び番号6206の玉軸受用の内輪および外輪として、表2に示すように、表層部の硬さ(Hvr )と残留オーステナイト量(γRr)を変化させたもの(3種類)を用意した。
770≦Hvb −5.6γRb≦870であれば前記(1) 式を満たし、650≦Hvr −5.6γRr≦750であれば前記(2) 式を満たすため、各サンプルで「Hvb −5.6γRb」と「Hvr −5.6γRr」を算出した。この算出値も表2に示す。
これらの内輪1、外輪2、および玉3を組み合わせて呼び番号6206の玉軸受を組み立て、異物混入潤滑下での転がり寿命を調べる試験を行った。試験条件は、荷重:6223N、回転速度:3000min -1、異物混入潤滑:潤滑油VG68に異物(硬さ:Hv870、サイズ:74〜147μm)を0.05g混入とした。
また、同じサンプルを10体用意して試験を行い、L10寿命を調べた。得られた各寿命値から、最も寿命が短かったサンプルNo. 17を「1」とした寿命比を算出した。その結果も表2に示す。また、図4のグラフに、各サンプルの玉の表層部の硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb)との関係「○」「●」、内輪および外輪の軌道面の表層部の硬さ(Hvr )と残留オーステナイト量(γRr)との関係「△」「▲」をプロットした。さらに、図5のグラフに、寿命比と玉の表層部の硬さ(Hvb )との関係をプロットした。
Figure 2012241754
図5のグラフにおいて、曲線Aは、表2のNo. 1〜8の結果を示すプロット(▲)をつないだ線であり、曲線Bは、表2のNo. 9〜16の結果を示すプロット(●)をつないだ線である。「△」は表2のNo. 16〜24の結果を示すプロットであり、「○」は表2のNo. 25〜32の結果を示すプロットである。
表2のNo. 1〜8は、玉の表層部の硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb)との関係が(1) 式を満たすが、軌道面の表層部の硬さ(Hvr )と残留オーステナイト量(γRr)との関係が(2) 式を満たさない。表2のNo. 9〜16は、玉の表層部の硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb)との関係が(1) 式を満たし、軌道面の表層部の硬さ(Hvr )と残留オーステナイト量(γRr)との関係も(2) 式を満たす。
表2のNo. 16〜24は、玉の表層部の硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb)との関係が(1) 式を満たさず、軌道面の表層部の硬さ(Hvr )と残留オーステナイト量(γRr)との関係も(2) 式を満たさない。表2のNo. 25〜32は、玉の表層部の硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb)との関係が(1) 式を満たさず、軌道面の表層部の硬さ(Hvr )と残留オーステナイト量(γRr)との関係が(2) 式を満たす。
この結果から、(1) 式を満たす玉(図4のプロット●と▲)を有する玉軸受(図5のプロット●と▲)は、(1) 式を満たさない玉(図4のプロット○と△)を有する玉軸受(図5のプロット○と△)と比較して、異物混入潤滑下での剥離寿命が長くできることが分かる。具体的に、No. 1〜16の玉軸受は、No. 17の3.4〜7.0倍の寿命が得られた。
また、(1) 式を満たす玉と(2) 式を満たす内輪および外輪を有する玉軸受No. 9〜16(図5の曲線B)は、(1) 式を満たす玉と(2) 式を満たさない内輪および外輪を有する玉軸受No. 1〜8(図5の曲線A)と比較して、異物混入潤滑下での剥離寿命が長くできることが分かる。
すなわち、転動面の表層部の硬さと残留オーステナイト量との関係を最適化する((1) 式を満たす転動体を用いる)ことで、転動体の表面性状安定性が高くなり、転動体と軌道輪との間に作用する接線力が低減され、軌道輪の表面起点型剥離寿命が延長できることが分かる。さらに、軌道面の表層部の硬さと残留オーステナイト量との関係を最適化し((2) 式を満たす軌道輪を用い)、この軌道輪と(1) 式を満たす転動体とで転がり軸受を組み立てることで、転がり軸受の剥離寿命がさらに延長できることが分かる。
[追加説明]
この発明の転がり軸受は、さらに以下の構成(g) 〜(j) を有することが好ましい。
(g) 前記転動体の表層部(表面から深さ50μmまでの範囲)の炭化物面積率が1%以上5%以下であること。
(h) 前記転動体の表層部の残留圧縮応力(σR )が500MPa以上1400MPa以下であること。
(i) 内輪および外輪のうちの少なくとも一方が、極値統計により推定した面積S=30000mm2 中の酸化物系最大介在物寸法√areamax と表面硬さ(HRC)とがHRC≧0.2×√areamax +54を満たすこと。
(j) 転動体は、熱処理後の転動体に対してボールピーニング処理を施した後、表面から深さ50μm以上70μm以下までの部分を研磨で除去する方法により得られたものであること。
転動体の表層部の炭化物面積率を1%以上5%以下とすることが好ましい理由について、以下に述べる。
高炭素軸受鋼の場合、焼入れ処理によってマトリックスに固溶する炭素量が多いほど、炭素の固溶強化によって降伏応力が高くなる。一般に、マトリックスの固溶炭素量を正確に測定することは困難である。しかし、精錬時の炭素含有量(ベースカーボン量)が既知ならば、炭化物の面積率から固溶炭素量を推定することができると考えられる。即ち、焼入れ後の炭化物面積率が低いほど、マトリックスに固溶している炭素量が多いことを意味し、降伏応力が高く、表面性状安定性が高いことを示している。従って、炭素の固溶量ではなく、炭化物の面積率を規定した。
転動体の表層部の残留圧縮応力(σR )を500MPa以上1400MPa以下とすることが好ましい理由を、以下に述べる。
転動体の表層部の残留圧縮応力が低いと、変形抵抗が小さくなるため、降伏応力は小さくなり、軸受稼働中に表面性状が悪化しやすくなる。転動体の表層部の残留圧縮応力が500MPaより小さくなると塑性変形抵抗が小さくなり、表面性状が悪化していることが分かる。一方、加工によって付与する圧縮残留応力が高すぎる(例えば1400MPaを超える)と、既に繰返し疲労を受けている状態になり、転がり疲労が進行しやすくなる。
内輪および外輪のうちの少なくとも一方が、極値統計により推定した面積S=30000mm2 中の酸化物系最大介在物寸法√areamax と表面硬さ(HRC)とがHRC≧0.2×√areamax +54を満たすこと(構成(i) )が好ましい理由を、以下に述べる。
軌道輪の硬さを高めて強度を向上させ、内部き裂の発生・進展を抑制させることで内部起点型剥離寿命を延長できる。しかし、材料中に含まれる酸化物系介在物が大きい場合には、顕著な寿命延長効果は得られない。構成(i) の範囲内では、酸化物系介在物の微細化による応力集中の低減及び内部強度の向上によるき裂の発生・進展の抑制効果によって、内部起点型剥離寿命が延長できる。
1 内輪
2 外輪
3 玉(転動体)
4 保持器

Claims (2)

  1. 内輪、外輪、および転動体を有する転がり軸受であって、
    転動体は、炭素の含有率が0.80質量%以上1.20質量%以下で、炭素以外の元素の含有率はJIS G4805で規定されている高炭素クロム軸受鋼と同じである軸受鋼からなり、
    転動体の転動面の表層部の残留オーステナイト量(γRb)が20体積%未満であり、
    転動体の転動面の表層部のビッカース硬さ(Hvb )と残留オーステナイト量(γRb:体積%)との関係が下記の(1) 式を満たすことを特徴とする転がり軸受。
    5.6γRb+770≦Hvb ≦5.6γRb+870‥‥(1)
  2. 前記内輪および外輪のうちの少なくとも一方は、
    炭素の含有率が0.80質量%以上1.20質量%以下で、炭素以外の元素の含有率はJIS G4805で規定されている高炭素クロム軸受鋼と同じである軸受鋼からなり、
    軌道面の表層部の残留オーステナイト量(γRr)が20体積%未満であり、
    軌道面の表層部のビッカース硬さ(Hvr )と残留オーステナイト量(γRr:体積%)との関係が下記の(2) 式を満たすことを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
    5.6γRr+650≦Hvr ≦5.6γRr+750‥‥(2)
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