JP2012241082A - ポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物、塗料及びエナメル線 - Google Patents

ポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物、塗料及びエナメル線 Download PDF

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Abstract

【課題】可とう性に優れたポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(A)酸無水物基及びカルボキシル基を有する3価以上のポリカルボン酸無水物を必須成分とするポリカルボン酸成分、(B)一般式(1)で表されるイミドジカルボン酸、(C)芳香族ポリイソシアネ−トを塩基性極性溶媒中で反応させて得られるポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物。
【化1】
Figure 2012241082

【選択図】 なし

Description

本発明は、電気絶縁用樹脂組成物並びにこれを用いた塗料及びエナメル線に関する。
ポリアミドイミド樹脂は、耐熱性、耐薬品性及び耐溶剤性に優れているため、各種塗料、例えばエナメル線用ワニスなどとして利用されている。
近年、エナメル線を使用する電気メーカーでは、機器の製造工程の合理化のため、自動高速巻線機を導入しているが、巻線加工時にエナメル線が摩擦、衝撃等を受けてエナメル線の絶縁層に機械的損傷を生じ、レアーショート、アース不良などが発生して製品の不良率が増加するという問題が発生している。そこで、このような機械的損傷の少ないエナメル線が要望されている。
従来のポリアミドイミド線は、機械的強度及び耐熱性が他のポリエステル、ポリエステルイミド線などより優れるため、特に厳しい条件で作業される場合には、例えば4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートと無水トリメリット酸との反応により得られるポリアミドイミド樹脂が単層又は多層構造で適用されていた(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。
しかし、年々更に巻線機の高速化及び巻線加工の複雑化が進み、エナメル線に対して伸長、摩耗、屈曲等の厳しいストレスが加えられるようになり、特に皮膜の高度な可とう性及び皮膜と導体の高度な密着性が要求されるようになってきた。
ポリアミドイミドワニス皮膜の可とう性を向上させる手段としては、モノマーとして長鎖脂肪族酸を使用する方法があるが、この方法を用いるとエナメル線皮膜の耐熱性が低下する、という問題があった。
特公昭44−19274号公報 特公昭45−27611号公報
本発明は、エナメル線の機械的特性、耐熱性及び電気絶縁特性などの諸特性を維持しつつ、特に可とう性及び皮膜と導体の密着性に優れたポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物及びこの電気絶縁用樹脂組成物を塗膜成分とする塗料並びにこれを用いたエナメル線を提供するものである。
本発明は、次のものに関する。
1. 酸無水物基及びカルボキシル基を有する3価以上のポリカルボン酸無水物を必須とするポリカルボン酸化合物〔(A)成分〕、構造式(1)
Figure 2012241082
(1)
で表される4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)構造を有するイミドジカルボン酸〔(B)成分〕及び芳香族ポリイソシアネート化合物〔(C)成分〕を塩基性極性溶媒中で反応させて得られることを特徴とするポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物。
2. 反応に用いられる(A)成分と(B)成分との配合割合{(B)成分/(A)成分}が、当量比で0.01/0.99〜0.70/0.30である項1記載のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物。
3. 反応に用いられる全イソシアネート成分と全ポリカルボン酸成分との配合割合{(C)成分/〔(A)成分+(B)成分〕}が当量比で0.8〜1.4である項1または項2記載のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物。
4. ポリアミドイミド樹脂が、数平均分子量10,000〜50,000のものである項1〜3いずれかに記載のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物。
5. ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、メラミン樹脂を0.01〜5重量部含有する項1〜4いずれかに記載のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物。
6. 項1〜5記載のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物を塗膜成分としてなる塗料。
7. 項6記載の塗料を用いて導体上に塗布し、焼付けてなるエナメル線。
本発明によるポリアミドイミド系電気絶縁用脂組成物及び塗料を用いれば、可とう性の良好な塗膜を形成することができ、各種基材への絶縁皮膜、保護コートなどに有用であり、殊にエナメル線等の近年の過酷な巻線、加工、組立作業にも好適に利用することができる。
また、本発明のエナメル線は、可とう性に優れるものである。
本発明におけるポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物の製造に用いられるポリカルボン酸化合物〔(A)成分〕は、1分子中に、イソシアネ−ト基と反応してイミド結合を形成する酸無水物基及びイソシアネ−ト基と反応してアミド結合を形成するカルボキシル基を合計で2個以上有する化合物、又は、その混合物であり、酸無水物を必須成分とするものであればよく、特に制限はない。酸無水物基及びカルボキシル基を有する3価以上のポリカルボン酸無水物としては、例えば一般式(2)又は(3)で示す芳香族トリカルボン酸無水物を挙げることができる。耐熱性、コスト面等を考慮すれば、トリメリット酸無水物が特に好ましい。
Figure 2012241082
Figure 2012241082
(但し、両式中R′は水素、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、Yは−CH−、−CO−、−SO−、又は−O−を示す。)
また、(A)成分のポリカルボン酸化合物としては、これらのほかに必要に応じて、テトラカルボン酸二無水物{ピロメリット酸二無水物、3,3’−4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3;3´−4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´−3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコ−ルビス(アンヒドロトリメリテ−ト)、2,2−ビス(2、5−ジカルボキシフェニル)プロパンニ無水物、1,1−ビス(2、3−ジカルボキシフェニル)エタン酸二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホンニ無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−スルホニルジフタル酸二無水物、m−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2:3:5:6−テトラカリボン酸二無水物等}、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸等)などを併用することができる。 また、これらポリカルボン酸成分の誘導体も使用することができる。
これらの酸や酸無水物の使用量は全酸成分の50当量%以下とする。
本発明において(B)成分として用いる前記構造式(1)で示されるイミドジカルボン酸化合物は、下記一般式(4)
Figure 2012241082
で示される4,4´−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリンとトリメリット酸無水物とを無溶剤あるいは有機溶剤中で反応させることにより得られる。
トリメリット酸無水物と4,4´−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリンの配合割合は当量比で酸無水物基/アミン基=1.01以上になるようにすることが好ましく、1.5〜2.5となるようにすることがより好ましく、1.9〜2.1になるようにすることが更に好ましい。
上記の反応は、無溶媒あるいは有機溶媒の存在下で容易に行うことができる。使用できる有機溶媒としては、例えば、ケトン系溶媒(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等)、エーテル系溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等)、セロソルブ系溶媒(ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート等)、芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、p−シメン等)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
本発明における(C)成分の芳香族ポリイソシアネ−ト化合物としては、特に制限はなく、例えば、下記一般式(5)で表される化合物がある。
Figure 2012241082
[式中、Xは、炭素数1〜18のアルキレン基又はフェニレン基等のアリーレン基(これはメチル基等の低級アルキル基を置換基として有していてもよい)を示す]で表される。
また、上記一般式(5)で表される芳香族ポリイソシアネ−ト化合物としては、例えば、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3,2’−又は3,3’−又は4,2’−又は4,3’−又は5,2’−又は5,3’−又は6,2’−又は6,3’−ジメチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3,2’−又は3,3’−又は4,2’−又は4,3’−又は5,2’−又は5,3’−又は6,2’−又は6,3’−ジエチルジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3,2’−又は3,3’−又は4,2’−又は4,3’−又は5,2’−又は5,3’−又は6,2’−又は6,3’−ジメトキシジフェニルメタン−2,4’ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネ^ト、p−キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−{2,2ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン}ジイソシアネートなど従来公知の種々のジイソシアネ−ト化合物が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上混合して使用してもよい。上記各ポリイソシアネ−ト化合物中でも、皮膜の耐熱性及び機械特性の面からジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートが、本発明に最も好適に使用される。
また、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネート及び3官能以上のポリイソシアネートを用いてもよく、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。
本発明における(B)成分の一般式(1)で表されるイミドジカルボン酸化合物と(A)成分のポリカルボン酸化合物の配合割合は、{(B)成分/(A)成分}の当量比で0.01/0.99〜0.70/0.30とすることが好ましく、0.1/0.9〜0.5/0.5とすることがより好ましく、0.2/0.8〜0.4/0.6とすることが特に好ましい。この当量比が0.01/0.99未満では、可とう性の向上効果がなく、0.70/0.30を超えると、皮膜の耐熱性が著しく低下してしまう。
なお、全イソシアネ−ト成分及び酸成分の配合割合は{(C)成分/〔(B)成分+(A)成分〕}が当量比で0.8〜1.4とすることが好ましく、0.9〜1.3となるようにすることがより好ましく、0.9〜1.2となるようにすることが特に好ましい。この比が0.8未満ではポリアミドイミド樹脂の高分子量化が困難であり、また1.4を超えると、可とう性が著しく低下してしまう。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の重合は有機溶媒中で行われ、有機溶媒としては、溶解性の点より極性溶媒が好ましく用いられる。具体的には、N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N、N−ジエチルアセトアミド、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、が挙げられ、単独または併用することができるが、経済性および重合しやすさの面から、N−メチル−2−ピロリドンまたはN、N−ジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。また、使用量に特に制限はないが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量100重量部に対して、100〜900重量部とするのが好ましく、125〜600とすることがより好ましく、150〜400とすることが特に好ましい。
このようにして得られるポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、10,000〜50,000であることが好ましく、15,000〜40,000であることがより好ましく、20,000〜35,000であることが特に好ましい。数平均分子量が10,000未満であると、皮膜の耐熱性や機械的特性等の諸特性が低下する傾向があり、50,000を超えると、塗料として適性な濃度になるよう溶媒に溶解させたときに粘度が高くなり、塗装時の作業性が劣る傾向がある。
なお、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、合成時に反応液をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定し、目的の数平均分子量になるまで合成を継続することにより、所望の範囲に調整することができる。
通常、本発明のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物は、このポリアミドイミド樹脂を固形分として10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%含有する塗料として用いられる。
このポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物には、メラミン樹脂が含有されていても良い。本発明に使用されるメラミン樹脂に特に制限はない。市販のメチル化メラミン、ブチル化メラミン等が使用される。
メラミン樹脂は、使用する場合、ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、メラミン樹脂を0.01〜5重量部含有することが好ましい。メラミン樹脂が少なすぎると密着性が向上せず、多すぎても密着性のさらなる向上は望めない。
ポリアミドイミド樹脂及び必要に応じて使用されるメラミン樹脂を溶解させる有機溶媒としては、例えば、ケトン系溶媒(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等)、エーテル系溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等)、セロソルブ系溶媒(ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート等)、芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、p−シメン等)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホンなどが挙げられる。
こうして得られる本発明のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物は、銅線等の導体上に塗布し、焼付けることにより、可とう性に優れたエナメル線とすることができる。本発明の組成物を用いること以外は、エナメル線の製造法は特に制限なく、常法に従うことができる。例えば、導体上に本発明の電気絶縁用樹脂組成物を塗布し、350〜550℃、好ましくは400〜500℃で1分〜5分間、好ましくは2〜4分間加熱して焼付ける工程を複数回繰り返し、所望の厚みの皮膜を導体上に形成する方法が挙げられる。最終的に形成される皮膜の厚みは、特に制限はないが、通常0.01〜0.08mmが好ましく、0.02〜0.06mmとすることがより好ましい。また、導体は銅線に限らずアルミ線などを用いても良いし、断面形状は、円形であっても平角状であってもよい。エナメル線皮膜の構成は、本発明の電気絶縁用樹脂組成物単層でも良いし、ポリエステルイミド等を塗布した上層に本発明の電気絶縁用樹脂組成物を塗布した2層構造あるいは、3層以上の皮膜構成でも良い。このようにして得られる本発明のエナメル線は、可とう性及び耐熱性などの諸特性が低下することはない。
次に、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中の「%」は特に断らない限り「重量%」を意味する。
4,4´−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン34.5g(0.1モル)及び無水トリメリット酸38.4g(0.2モル)とN−メチル−2−ピロリドン109.4gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに仕込み、この混合物を乾燥させた窒素気流中で、約1時間かけて徐々に昇温して100℃まで昇温し、100℃にて1時間保温し、(B)成分のイミドジカルボン酸化合物〔一般式(1)で表される4,4´−(m−フェニレンジイソプロピリデン)構造を有するイミドジカルボン酸;以下同様〕(0.1モル)を得た。
さらに、この反応液に(A)成分として無水トリメリット酸172.9g(0.90モル)、(C)成分としてジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート254.0g(1.015モル)及び反応溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン640.3gを仕込み、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら約4時間かけて除々に昇温して140℃まで昇温した後、6時間反応させて数平均分子量が27100のポリアミドイミド樹脂の溶液を得た。
この反応に用いた(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合は、当量比で次のとおりである。
{(B)成分/(A)成分} =0.10/0.90
{(C)成分/〔(A)成分+(B)成分〕}=1.015
得られた溶液をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、樹脂分濃度30重量%のポリアミドイミド樹脂溶液とし、更にこの溶液100gに対してメラミン樹脂(ML−20、日立化成工業(株)製メラミン樹脂)を0.3g(ポリアミドイミド樹脂分に対して1%)、常温で混合撹拌して系電気絶縁用樹脂組成物の溶液を得た。
4,4´−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン103.4g(0.3モル)及び無水トリメリット酸115.3g(0.6モル)とN−メチル−2−ピロリドン328.1gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに仕込み、この混合物を乾燥させた窒素気流中で、約1時間かけて徐々に昇温して100℃まで昇温し、100℃にて1時間保温し、(B)成分のイミドジカルボン酸化合物(0.3モル)を得た。
さらに、この反応液に(A)成分として無水トリメリット酸134.5g(0.7モル)、(C)成分としてジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート256.5g(1.025モル)及び反応溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン804.2gを仕込み、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら約4時間かけて除々に昇温して140℃まで昇温した後、9時間反応させて数平均分子量が31700のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
この反応に用いた(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合は、当量比で次のとおりである。
{(B)成分/(A)成分} =0.30/0.70
{(C)成分/〔(A)成分+(B)成分〕}=1.025
得られた溶液をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、樹脂分濃度30重量%のポリアミドイミド樹脂溶液とし、更にこの溶液100gに対してメラミン樹脂(ML−20、日立化成工業(株)製メラミン樹脂)を0.6g(ポリアミドイミド樹脂分に対して2%)常温で混合撹拌してポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物の溶液を得た。
4,4´−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン68.9g(0.2モル)及び無水トリメリット酸76.9g(0.4モル)とN−メチル−2−ピロリドン218.7gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに仕込み、この混合物を乾燥させた窒素気流中で、約1時間かけて徐々に昇温して100℃まで昇温し、100℃にて1時間保温し、(B)成分のイミドジカルボン酸(0.2モル)を得た。
さらに、この反応液に(A)成分として無水トリメリット酸153.7g(0.8モル)、(C)成分としてジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート202.2g(0.808モル)及び3,3´−ジメチルビフェニル−4,4´−ジイソシアネ−ト53.4g(0.4モル)並びに反応溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン812.2gを仕込み、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら約4時間かけて除々に昇温して145℃まで昇温した後、10時間反応させて数平均分子量が32000のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
この反応に用いた(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合は、当量比で次のとおりである。
{(B)成分/(A)成分} =0.20/0.80
{(C)成分/〔(A)成分+(B)成分〕}=1.01
得られた溶液をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、樹脂分濃度30重量%のポリアミドイミド樹脂溶液とし、更にこの溶液100gに対してメラミン樹脂(ML−28、日立化成工業(株)製メラミン樹脂)を0.3g(ポリアミドイミド樹脂分に対して1%)常温で混合撹拌してポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物の溶液を得た。
比較例1
無水トリメリット酸192.1g(1.0モル)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート262.8g(1.05モル)、N−メチル−2−ピロリドン682.4gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、この混合物を乾燥させた窒素気流中で、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら約5時間かけて徐々に昇温して140℃まで昇温した。
該混合物を140℃にて7時間保温し、数平均分子量が26000のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
この溶液をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、樹脂分濃度30%のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物の溶液を得た。
比較例2
4,4´−ジアミノジフェニルエーテル60.1g(0.3モル)及び無水トリメリット酸115.3g(0.6モル)とN−メチル−2−ピロリドン263.1gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに仕込み、この混合物を乾燥させた窒素気流中で、約1時間かけて徐々に昇温して100℃まで昇温し、100℃にて1時間保温し、イミドジカルボン酸(0.3モル)を得た。
さらに、この反応液に無水トリメリット酸134.5g(0.70モル)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート255.3g(1.02モル)及びN−メチル−2−ピロリドン584.7gを仕込み、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら約6時間かけて除々に昇温して140℃まで昇温した後、7時間反応させて数平均分子量が27000のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
得られた溶液をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、樹脂分濃度30重量%のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物の溶液を得た。
比較例3
無水トリメリット酸153.7g(0.8モル)、ドデカン二酸46.1g(0.2モル)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート262.8g(1.05モル)、N−メチル−2−ピロリドン682.4gを温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、この混合物を乾燥させた窒素気流中で、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら約6時間かけて徐々に昇温して140℃まで昇温し、該混合物を140℃にて7時間保温し、数平均分子量が26000のポリアミドイミド樹脂の溶液を得た。
この溶液をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、樹脂分濃度30%のポリアミドイミド樹脂系電気絶縁用樹脂組成物の溶液を得た。
(試験例)
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたポリアミドイミド樹脂系電気絶縁用樹脂組成物の溶液を、下記の焼付け条件に従って直径1.0mmの銅線に塗布し、線速16m/分で焼付け、エナメル線を作製した。次の試験を行った。試験結果を表1に示す。
〔塗布・焼付け条件〕
焼付け炉:熱風式竪炉(炉長5.5m)
炉温 :入口/出口=320℃/430℃
塗装方法:樹脂組成物をくぐらせたエナメル線をダイスで絞り、焼付け炉を通過させる手順を8回行う。1回目から8回目までのダイスの径を1.05mm、1.06mm、1.07mm、1.08mm、1.09mm、1.10mm、1.11mm、1.12mmと変化させた。
〔皮膜厚の測定〕
常法により測定した。
〔エナメル線外観(目視)〕
エナメル線の外観を目視で観察し、異常の見られなかった場合を、良好と評価した。
〔可とう性等の試験〕
得られたエナメル線の特性(可とう性、一方向式摩耗、絶縁破壊電圧、耐軟化性、耐熱衝撃性)をJIS C 3003に準じて測定した。
〔密着性試験〕
密着性の評価は、急激切断法により行う。すなわち、適当な長さのエナメル線の両端を固定し、標線距離を250mmとして約4m/sの引張速さで切断する。切断箇所において導体の露出部分の長さ(mm)と皮膜が導体から剥離している部分(皮膜の浮き)の長さの合計を測定する。
なお、密着性の測定結果においては、値が小さい方が皮膜と導体との密着性が良好であることを示す。
Figure 2012241082
表1に示した結果から、実施例1〜3で得られた樹脂組成物を用いて作製したエナメル線は、比較例で得られたものに比べて、可とう性に優れるとともに、耐軟化性及び一方向式摩耗もほぼ同等に良好であることが分かる。

Claims (7)

  1. (A)酸無水物基及びカルボキシル基を有する3価以上のポリカルボン酸無水物を必須とするポリカルボン酸成分〔(A)成分〕、構造式(1)
    Figure 2012241082
    で表される4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)構造を有するイミドジカルボン酸〔(B)成分〕及び芳香族ポリイソシアネート化合物〔(C)成分〕を塩基性極性溶媒中で反応させて得られることを特徴とするポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物。
  2. 反応に用いられる(A)成分と(B)成分との配合割合{(B)成分/(A)成分}が、当量比で0.01/0.99〜0.70/0.30である請求項1記載のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物。
  3. 反応に用いられる全イソシアネート成分と全ポリカルボン酸成分との配合割合{(C)成分/〔(A)成分+(B)成分〕}が当量比で0.8〜1.4である請求項1または2記載のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物。
  4. ポリアミドイミド樹脂が、数平均分子量10,000〜50,000のものである請求項1〜3いずれかに記載のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物。
  5. ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、メラミン樹脂を0.01〜5重量部含有する請求項1〜4いずれかに記載のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5記載のポリアミドイミド系電気絶縁用樹脂組成物を塗膜成分としてなる塗料。
  7. 請求項6記載の塗料を用いて導体上に塗布し、焼付けてなるエナメル線。
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