JP2012241021A - オフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法、オフセット印刷インキ用樹脂ワニス、およびオフセット印刷インキ用組成物 - Google Patents

オフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法、オフセット印刷インキ用樹脂ワニス、およびオフセット印刷インキ用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 エステル交換反応による固形樹脂の低分子量化を抑制することができるとともに、熱エネルギーロスを少なくすることができるオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法を提供する。
【解決手段】 オフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法は、仕込み工程と、粉砕溶解工程とを含む。仕込み工程では、カッター羽根10が内部に設けられるタンク内に、固形樹脂および油成分材を仕込む。ここで、カッター羽根10は、タンクの内径に対して所定の回転直径を有する第1、第2および第3ブレード12,13,14を含んで構成される。そして、粉砕溶解工程では、到達温度が80〜200℃となるように所定の昇温速度でタンクを加熱した状態で、所定の周速度でカッター羽根10を回転駆動させて、固形樹脂を粉砕しながら油成分材中に溶解させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、オフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法、オフセット印刷インキ用樹脂ワニス、およびオフセット印刷インキ用組成物に関する。
オフセット印刷は、印刷版上に供給されたインキを、ゴムブランケットなどの中間転写体に転写した後、紙などの被印刷体に印刷することを特徴とした印刷方式である。そして、オフセット印刷は、高精細かつ鮮明な画像の印刷物を短時間で大量に印刷することができることから、商業印刷や新聞印刷などの分野で広く用いられる印刷方式の代表的なものとなっている。この印刷方式で使用されるオフセット印刷インキ組成物には、主要な樹脂成分としてロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂などが広く使用されている。これら樹脂成分を構成する樹脂の分子量は、種類にもよるが、一般的に数万〜数十万であり、また、その軟化点も150℃程度のものから200℃以上のものまで様々である。そして、樹脂成分を構成する樹脂は、求められるオフセット印刷インキ用組成物の特性に応じて適宜使い分けられるのが一般的である。
オフセット印刷インキ用組成物は、基本的には鉱物油成分および/または植物油成分からなる油成分材と樹脂と顔料とからなるが、これらを一度に混合して製造するものではない。通常は、まず、樹脂を油成分材に溶解させて、オフセット印刷インキ用樹脂ワニス(以下、単に「ワニス」ということもある)と呼ばれる中間体の生成を介するのが一般的である。そして、ワニスに顔料や各種添加剤を配合して、最終的にオフセット印刷インキ用組成物が得られるのである。
ところで、オフセット印刷インキ用組成物の樹脂成分を構成する樹脂は、通常、樹脂メーカーにおいてバルク重合(塊状重合)によって合成され、ブロック状もしくはフレーク状に解砕された塊状態の固形樹脂としてインキメーカーに供給される。このような塊状態の固形樹脂は、油成分材とそのまま混合しても溶解しない。そこで、固形樹脂を油成分材に溶解させてワニスを製造するとき、固形樹脂を油成分材中に溶解させる工程(以下、「クッキング工程」ということもある)では、固形樹脂を油成分材に投入した後、固形樹脂のおよそ軟化点以上に加熱して軟らかくしながら撹拌混合し、固形樹脂を油成分材中に溶解させる。
クッキング工程は、固形樹脂の種類にもよるが、通常180〜250℃程度という高温下で行われる。また、高温下で撹拌混合する場合であっても、溶解性の低い高分子量の固形樹脂を、油成分材中に完全に溶解させるためには、長時間にわたって撹拌混合する必要がある。
このように、ワニスを製造するときには、クッキング工程において、固形樹脂および油成分材を高温下で長時間にわたって撹拌混合するので、多くの熱エネルギーを要する。しかしながら、高温下で長時間にわたって撹拌混合されて得られたワニスは、常温(25℃程度)〜100℃程度の温度下で、貯蔵もしくは使用されるので、クッキング工程において投入された熱エネルギーの多くが放冷により大気中に拡散されてしまうことになる。したがって、その分の熱エネルギーは無駄にせざるを得ない。
さらに、固形樹脂を溶解する油成分材が動植物油である場合には、200℃より高い温度でクッキング処理を行うと、ポリエステル樹脂の一種であるロジン変性フェノール樹脂やロジン変性マレイン酸樹脂から選ばれる固形樹脂と、動植物油(たとえば、グリセリンのトリ脂肪酸エステル)との間でエステル交換反応が起こり、固形樹脂の分子量が低下するという問題が発生する。そして、固形樹脂の分子量が低下すると、印刷時にインキのミスチング増加や対面セットオフの発生などが発生し、さらに印刷適性が大幅に低下する。そのため、ワニスを製造するときのクッキング工程における、固形樹脂および油成分材の撹拌混合時に、エステル交換反応の発生を抑制する必要がある。
エステル交換反応を抑制するには、固形樹脂を溶解する油成分材として鉱物油を使用することや、撹拌混合時の温度を低下させることが効果的である。しかしながら、鉱物油の使用量を増加させることは、環境負荷の低減を目的として、オフセット印刷インキ用組成物の油成分を鉱物油から動植物油に置き換える動きとは逆行するものである。また、クッキング工程における撹拌混合時の温度を低下させるためには、軟化点の低い固形樹脂を使用すれば良いことになるが、軟化点の低い固形樹脂は、一般的に分子量が低い樹脂である。そのため、樹脂成分として軟化点の低い固形樹脂が用いられたオフセット印刷インキ用組成物は、印刷時におけるインキのミスチング増加や対面セットオフの発生などを避けることができず、印刷適性が大幅に低下する。
このような問題を解決するために、たとえば、特許文献1には、高温(200℃以上)下で鉱物油などの高沸点溶剤に固形樹脂を溶解した後に、低温(80〜180℃)下で動植物油に溶解する印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法が開示されている。特許文献1に開示されるワニスの製造方法によれば、高温下で固形樹脂を溶解する工程では、油成分材として鉱物油が用いられており、動植物油が存在しないので、固形樹脂と油成分材との間におけるエステル交換反応をある程度抑制することができる。また、特許文献1に開示されるワニスの製造方法では、高温下でのクッキング工程が長時間になるのを抑制することができるので、クッキング工程時の熱エネルギーロスを少なくすることができる。
また、特許文献2には、ロジンエステル樹脂と、フェノールホルムアルデヒド初期縮合物とを、油成分材中で縮合反応させることによって、ロジン変性フェノール樹脂が油成分材中に溶解されてなるワニスを作製する印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法が開示されている。特許文献2に開示されるワニスの製造方法によれば、固形樹脂を油成分材中に溶解させる必要がないので、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
また、特許文献3には、少なくとも樹脂、ゲル化剤および有機溶剤を含有する混合物を150℃以下で加熱して樹脂を高分子量化してワニスを作製するゲルワニスの製造方法が開示されている。特許文献3に開示されるゲルワニスの製造方法によれば、150℃以下という比較的温度の低い条件下でゲルワニスを製造するので、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
特開2005−47950号公報 特開平10−88052号公報 特開2011−12187号公報
しかしながら、特許文献1に開示されるワニスの製造方法は、高温下で固形樹脂を油成分材中に溶解させる工程を含むので、熱エネルギーロスを充分に少なくすることが可能な製造方法であるとはいえない。また、特許文献2に開示されるワニスの製造方法では、ロジンエステル樹脂とフェノールホルムアルデヒド初期縮合物とを縮合反応させる反応設備、作製された高粘度ワニスを輸送および貯蔵する輸送設備や貯蔵設備を新たに確保する必要があり、既存の設備を用いて簡単化された状態でワニスを製造することができない。また、特許文献3に開示されるゲルワニスの製造方法では、150℃以下という比較的温度の低い条件下でゲルワニスを製造するのに伴って、製造時間が長時間となってしまい、熱エネルギーロスを充分に少なくすることが可能な製造方法であるとはいえない。
したがって本発明の目的は、エステル交換反応による固形樹脂の低分子量化を抑制することができるとともに、熱エネルギーロスを少なくすることができるオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法を提供することであり、該製造方法で得られるオフセット印刷インキ用樹脂ワニスを提供することである。また、本発明の他の目的は、前記オフセット印刷インキ用樹脂ワニスを含有するオフセット印刷インキ用組成物を提供することである。
本発明は、カッター羽根が内部空間に設けられるタンクに、固形樹脂および油成分材を仕込む仕込み工程と、
到達温度が80〜200℃となるように所定の昇温速度でタンクを加熱した状態で、カッター羽根を回転軸の軸線まわりに回転駆動させて、固形樹脂を粉砕しながら油成分材中に溶解させる粉砕溶解工程とを含み、
前記カッター羽根が、
タンクの中心軸線と同一直線上となる軸線まわりに回転駆動される回転軸に垂直に固定される板状の基部と、基部から半径方向外方に連なり、最外周縁部の先端部における回転直径がタンクの内径に対して30〜80%であるブレードとを有し、
粉砕溶解工程において、ブレードの最外周縁部における先端部の周速度が、10m/s以上となる速度で回転駆動されることを特徴とするオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法である。
また本発明は、前記固形樹脂が、130℃以上の軟化点を有するロジン変性フェノール樹脂であることを特徴とする。
また本発明は、仕込み工程における、タンク内に対する前記油成分材の仕込み量が、前記固形樹脂の仕込み量の100〜180質量%であることを特徴とする。
また本発明は、前記ブレードは、
基部から半径方向外方になるにつれて前記基部の回転面に対して一方側に離反するように傾斜した第1ブレードと、
基部から半径方向外方になるにつれて前記基部の回転面に対して他方側に離反するように傾斜した第2ブレードと、を含んで構成されることを特徴とする。
また本発明は、前記カッター羽根が、基部から半径方向外方に連なり、基部の回転面に平行な第3ブレードをさらに含んで構成されることを特徴とする。
また本発明は、前記第1および第2ブレードが、前記回転方向上流側の基端部が回転方向下流側の基端部よりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して前記基部に連なっていることを特徴とする。
また本発明は、前記第1、第2および第3ブレードの前記回転方向下流側に臨む縁辺部が、前記回転方向下流側に臨んで先細状に形成されていることを特徴とする。
また本発明は、前記オフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法によって得られることを特徴とするオフセット印刷インキ用樹脂ワニスである。
また本発明は、前記オフセット印刷インキ用樹脂ワニスを含有することを特徴とするオフセット印刷インキ用組成物である。
本発明によれば、オフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法は、仕込み工程と、粉砕溶解工程とを含む。まず、仕込み工程では、カッター羽根が内部空間に設けられるタンクに、固形樹脂および油成分材を仕込む。次に、粉砕溶解工程では、到達温度が80〜200℃となるように所定の昇温速度でタンクを加熱した状態で、カッター羽根を回転軸の軸線まわりに回転駆動させて、固形樹脂を粉砕しながら油成分材中に溶解させる。ここで、タンクの内部に設けられるカッター羽根は、基部とブレードとを含んで構成されている。基部は、タンクの中心軸線と同一直線上となる軸線まわりに回転駆動される回転軸に垂直に固定される板状の部分である。ブレードは、基部から半径方向外方に連なる部分であり、最外周縁部の先端部における回転直径がタンクの内径に対して30〜80%となるように形成されている。そして、粉砕溶解工程では、ブレードの最外周縁部における先端部の周速度が10m/s以上となる速度で、カッター羽根が回転駆動される。
粉砕溶解工程では、タンクの内径に対して所定の回転直径を有するブレードを含むカッター羽根を、所定の周速度で回転駆動させるので、タンク内に収容される固形樹脂に充分なせん断力が付与されて、油成分材中で固形樹脂を粉砕しながら撹拌混合することができる。そのため、固形樹脂の軟化点を超えて200℃よりも高い温度下で、固形樹脂および油成分材を撹拌混合しなくても、油成分材中に固形樹脂を溶解させることができる。具体的には、到達温度が80〜200℃となるように所定の昇温速度でタンクを加熱した状態で、カッター羽根を回転駆動させることによって、固形樹脂を粉砕しながら油成分材中に溶解させることができる。
このように、200℃以下の温度下で、固形樹脂を粉砕しながら油成分材中に溶解させることができるので、エステル交換反応による固形樹脂の低分子量化を抑制することができる。そのため、オフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法では、高い印刷適性を有するオフセット印刷インキ用組成物の原材料となるワニスを得ることができる。また、オフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法では、200℃以下の温度下で固形樹脂を油成分材中に溶解させることができるので、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
また本発明によれば、タンク内に投入される固形樹脂が、130℃以上の軟化点を有するロジン変性フェノール樹脂である。130℃以上の軟化点を有するロジン変性フェノール樹脂は、低すぎることがない分子量を有する固形樹脂であるので、高い印刷適性を有するオフセット印刷インキ用組成物の原材料となるワニスを得ることができる。
また本発明によれば、仕込み工程における、タンク内に対する油成分材の仕込み量が、固形樹脂の仕込み量の100〜180質量%である。これによって、好適な範囲内の粘度を有するオフセット印刷インキ用樹脂ワニスを得ることができる。
また本発明によれば、タンク内に設けられるカッター羽根は、基部と第1ブレードと第2ブレードとを含んで構成されている。基部は、回転駆動される回転軸に垂直に固定される板状の部分である。第1ブレードは、基部から半径方向外方になるにつれて基部の回転面に対して一方側に離反するように傾斜したブレードである。第2ブレードは、基部から半径方向外方になるにつれて基部の回転面に対して他方側に離反するように傾斜したブレードである。
粉砕溶解工程では、基部の回転面に対して一方側および他方側に離反するように傾斜した第1および第2ブレードを有するカッター羽根を回転駆動させて、固形樹脂および油成分材を撹拌混合するので、固形樹脂に大きなせん断力を付与することができ、油成分材中における固形樹脂の粉砕効率を向上することができる。そのため、粉砕溶解工程では、固形樹脂および油成分材の撹拌混合時における加熱温度を低下させる、または、撹拌時間を短くしても、油成分材中に固形樹脂を溶解させることができる。したがって、粉砕溶解工程において、エステル交換反応による固形樹脂の低分子量化をさらに抑制することができるとともに、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
また本発明によれば、タンク内に設けられるカッター羽根は、基部から半径方向外方に連なり、基部の回転面に平行な第3ブレードをさらに含んで構成されている。これによって、粉砕溶解工程では、固形樹脂に大きなせん断力を付与することができ、油成分材中における固形樹脂の粉砕効率をさらに向上することができる。
また本発明によれば、タンク内に設けられるカッター羽根は、前記第1および第2ブレードが、回転方向上流側の基端部が回転方向下流側の基端部よりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して基部に連なっている。このように構成されたカッター羽根を回転駆動させて、固形樹脂および油成分材を撹拌混合する粉砕溶解工程では、カッター羽根が回転駆動されるときに、固形樹脂および油成分材の混合物に対して撹拌流が作用する。そのため、固形樹脂および油成分材の混合物は、タンク内を撹拌流に沿って流動しながら撹拌混合されるので、油成分材中における固形樹脂の粉砕効率を向上することができる。そのため、粉砕溶解工程では、固形樹脂および油成分材の撹拌混合時における加熱温度を低下させる、または、撹拌時間を短くしても、油成分材中に固形樹脂を溶解させることができる。
また本発明によれば、タンク内に設けられるカッター羽根は、前記第1、第2および第3ブレードの回転方向下流側に臨む縁辺部が、回転方向下流側に臨んで先細状に形成されている。このように構成されたカッター羽根を回転駆動させて、固形樹脂および油成分材を撹拌混合する粉砕溶解工程では、カッター羽根が回転駆動されるときに、先細状に形成される各ブレードの縁辺部によって、固形樹脂および油成分材の混合物に切り込みが入れられる。これによって、油成分材中における固形樹脂の粉砕効率を向上することができる。そのため、粉砕溶解工程では、固形樹脂および油成分材の撹拌混合時における加熱温度を低下させる、または、撹拌時間を短くしても、油成分材中に固形樹脂を溶解させることができる。
また本発明によれば、オフセット印刷インキ用樹脂ワニスは、前記オフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法によって得られたものである。そのため、オフセット印刷インキ用樹脂ワニスは、エステル交換反応による低分子量化が抑制された固形樹脂が油成分材中に溶解されたものである。したがって、オフセット印刷インキ用樹脂ワニスは、高い印刷適性を有するオフセット印刷インキ用組成物の原材料となる。
また本発明によれば、オフセット印刷インキ用組成物は、前記オフセット印刷インキ用樹脂ワニスを含有する。そのため、オフセット印刷インキ用組成物は、樹脂成分として、エステル交換反応による低分子量化が抑制された固形樹脂を含む。したがって、オフセット印刷インキ用組成物は、印刷時にインキのミスチング増加や対面セットオフの発生などを防止することができ、高い印刷適性を維持することができる。
本発明の実施の一形態であるオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法において用いられる撹拌装置1の構成を示す図である。 撹拌装置1に備えられるカッター羽根10の構成を示す図である。 カッター羽根20の構成を示す図である。 カッター羽根30の構成を示す図である。
(オフセット印刷インキ用樹脂ワニス)
図1は、本発明の実施の一形態であるオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法において用いられる撹拌装置1の構成を示す図である。
本発明の実施の一形態であるオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法は、撹拌装置1を用いて行なわれ、仕込み工程と、粉砕溶解工程とを含む。仕込み工程は、撹拌装置1に備えられる、カッター羽根10が内部空間に設けられるタンク2に、固形樹脂および油成分材を仕込む工程である。
仕込み工程においてタンク2内に投入される固形樹脂は、飛散やそれに伴う粉塵爆発が起こらないように、ブロック状、フレーク状または粒状に粗粉砕された樹脂であり、その粒子径は10〜500mm程度である。
固形樹脂を構成する樹脂としては、合成樹脂または天然樹脂を挙げることができ、たとえば、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ギルソナイト樹脂などの、オフセット印刷インキの樹脂成分として常用される樹脂を挙げることができる。これらの樹脂の中でも、軟化点が130℃以上のロジン変性フェノール樹脂またはロジン変性マレイン酸樹脂であることが好ましい。130℃以上の軟化点を有するロジン変性フェノール樹脂またはロジン変性マレイン酸樹脂は、低すぎることがない分子量を有する固形樹脂であるので、高い印刷適性を有するオフセット印刷インキ用組成物の原材料となるオフセット印刷インキ用樹脂ワニスを得ることができる。また、軟化点が130℃以上のロジン変性フェノール樹脂またはロジン変性マレイン酸樹脂は、後述する粉砕溶解工程における熱エネルギーロスの低減効果、油成分材とのエステル交換反応抑制効果が高い樹脂である。これに対して、低い軟化点を有する石油樹脂またはギルソナイト樹脂は、油成分材に対する溶解性が高く、粉砕溶解工程における撹拌時間を短くしても、油成分材中に溶解する。
なお、固形樹脂の軟化点は、流動特性評価装置(フローテスター)を用いて測定することができる。
また、固形樹脂は、ゲル化剤の適量(固形樹脂に対して15質量%以下程度)を使用して、樹脂を架橋させるようにしてもよい。このような場合に使用するゲル化剤としては、アルミニウムアルコラート類、アルミニウムキレート化合物などが挙げられ、好ましい具体例としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、エチルアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートなどが例示できる。
仕込み工程においてタンク2内に投入される油成分材は、固形樹脂を溶解することができるものであればよく、植物油由来のもの、鉱物油由来のものなど、オフセット印刷インキの油成分として常用される油成分材を挙げることができ、また、これらを単独または複数組み合わせて使用することができる。
植物油由来の油成分材としては、植物油そのもの、または植物油を原料とする脂肪酸エステルや重合油が挙げられる。これらは単独で使用することも可能であるし、複数を組み合わせて使用することもできる。
前記植物油としては、アマニ油、桐油、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、パーム油など、乾性油、不乾性油を問わず使用することができるが、印刷後に印刷物を空気酸化によって乾燥させる場合には乾性油や半乾性油が好適に使用される。中でも、アマニ油、桐油、大豆油は、オフセット印刷インキ用組成物の油成分として好ましく使用され、これらは単独で使用することも可能であるし、複数を組み合わせて使用することもできる。
前記植物油を原料とする脂肪酸エステルとしては、乾性油または半乾性油のモノエステル化合物が挙げられる。すなわち、脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸は、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸など炭素数15〜20程度のアルキル主鎖を有する脂肪酸が例示できる。脂肪酸モノエステルを構成するアルコール由来アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜10程度のアルキル基が例示できる。中でも得られるオフセット印刷インキ用組成物の乾燥性の点から大豆油脂肪酸モノエステルが好ましい。これら脂肪酸モノエステルは、単独でまたは2種以上を併用して使用できる。
ここで、インキ・印刷業界では、環境負荷低減に対応するために、環境を汚染することがなく、さらに再生産可能な資源である植物油およびそれを原料とするエステル類の使用が推奨されている。たとえば、印刷インキ工業連合会では、植物油およびそれを原料とするエステル類の含有量が、独自に定めた基準以上であるインキをエコ製品として認定する制度を導入し始めている。このように植物油由来の油成分材は、環境にやさしい材料であるので、本実施の形態のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法においても、植物油由来の油成分材を可能な限り利用することが、環境負荷を低減できるので特に好ましい。
また、鉱物油由来の油成分材としては、鉱物油そのもの、または石油系溶剤が挙げられる。中でも、オフセット印刷インキ用組成物の油成分として使用されている、水と相溶しない沸点160℃以上、好ましくは200℃以上の油成分材が好適に使用できる。具体的には、軽油、スピンドル油、マシン油、シリンダー油、テレピン油、ミネラルスピリットなどの鉱物油、n−パラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤、芳香族系溶剤、α−オレフィン系などの石油系溶剤が例示でき、これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を併用して使用できるが、環境負荷低減の観点から非芳香族系溶剤を使用することが好ましい。
そして、仕込み工程では、油成分材の仕込み量が、固形樹脂の仕込み量の100〜180質量%であることが好ましく、120〜150質量%であることが特に好ましい。これによって、好適な範囲内の粘度を有するオフセット印刷インキ用樹脂ワニスを得ることができる。
また、仕込み工程において、タンク2内に固形樹脂および油成分材を投入する手順は、特に限定されるものではなく、固形樹脂と油成分材とを同時にタンク2内に投入してもよいし、油成分材を投入した後に固形樹脂を投入するようにしてもよい。また、タンク2内に油成分材を投入した後、カッター羽根10を回転駆動させて撹拌下で固形樹脂をタンク2内に投入するようにしてもよい。
次に、仕込み工程の後工程である粉砕溶解工程は、到達温度が80〜200℃となるように所定の昇温速度でタンク2を加熱した状態で、カッター羽根10を回転軸線まわりに回転駆動させて、固形樹脂を粉砕しながら油成分材中に溶解させる工程である。
ここで、タンク2は、有底円筒状に形成されたものであり、ステンレス鋼などの金属材料によって構成されている。そして、タンク2の内部にはカッター羽根10が設けられており、そのカッター羽根10の配設位置は、タンク2の底面2aから、タンク2の高さY1に対して10〜25%の高さ位置である。
カッター羽根10は、詳細は後述するが、基部とブレードとを含んで構成されており、ステンレス鋼などの金属材料からなる部材である。カッター羽根10は、回転駆動されて、ブレードが固形樹脂と衝突したときに、その衝撃力により固形樹脂を切断あるいは粉砕できるように、カッター羽根10のブレードの固形樹脂と接触する部分の面積が十分に小さいことが好ましい。
カッター羽根10の具体的な構成について、図2を用いて説明する。図2は、撹拌装置1に備えられるカッター羽根10の構成を示す図である。図2(a)は、カッター羽根10の展開図を示し、図2(b)は、カッター羽根10の平面図を示し、図2(c)は、カッター羽根10の側面図を示す。
カッター羽根10は、基部11と、第1ブレード12と、第2ブレード13と、第3ブレード14とを含んで構成されている。
基部11は、タンク2の中心軸線と同一直線上となる回転軸線まわりに回転方向Aに回転駆動される回転軸に、垂直に固定される板状の部分であり、平面視したときの形状が正六角形である。そして、カッター羽根10では、2枚の第1ブレード12と、2枚の第2ブレード13と、2枚の第3ブレード14との合計6枚のブレードが、回転軸線に関して周方向に等間隔に、正六角形状の基部11の各辺から半径方向外方に連なるように形成されている。6枚の各ブレード12,13,14は、同じ形状および大きさに形成されており、本実施形態では、平面視したときの形状が台形である。
また、6枚の各ブレード12,13,14において、基部11から半径方向外方に延びる延在方向の長さL2は、正六角形状の基部11の各辺の長さL1に対して、150〜300%(本実施形態では、(L2/L1)×100=250%程度)に設定されるのが好ましい。これによって、カッター羽根10における各ブレード12,13,14の強度を、充分に確保することができる。
2枚の第1ブレード12のそれぞれは、基部11から半径方向外方になるにつれて基部11の回転面に対して一方側に離反するように傾斜したブレードである。そして、各第1ブレード12同士は、回転軸線に関して対称に設けられている。
第1ブレード12における基部11の回転面に対する傾斜の角度θ1は、30〜45°(本実施形態では、傾斜角θ1=45°)に設定されるのが好ましい。これによって、カッター羽根10が回転駆動されるときに、タンク内に収容される固形樹脂および油成分材の混合物に対して撹拌流を作用させることができ、油成分材中における固形樹脂の粉砕効率を向上することができる。
また、第1ブレード12は、回転方向Aの上流側の第1上流側基端部12aが回転方向Aの下流側の第1下流側基端部12bよりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して基部11に連なっている。このように構成されたカッター羽根10を回転駆動させて、固形樹脂および油成分材を撹拌混合する粉砕溶解工程では、カッター羽根10が回転駆動されるときに、固形樹脂および油成分材の混合物に対して撹拌流が作用する。そのため、固形樹脂および油成分材の混合物は、タンク2内を撹拌流に沿って流動しながら撹拌混合されるので、油成分材中における固形樹脂の粉砕効率を向上することができる。そのため、粉砕溶解工程では、固形樹脂および油成分材の撹拌混合時における加熱温度を低下させる、または、撹拌時間を短くしても、油成分材中に固形樹脂を溶解させることができる。
さらに、第1ブレード12は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部12cが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。これによって、カッター羽根10が回転駆動されるときに、先細状に形成される第1ブレード12の縁辺部12cによって、固形樹脂および油成分材の混合物に切り込みが入れられる。これによって、油成分材中における固形樹脂の粉砕効率を向上することができる。そのため、粉砕溶解工程では、固形樹脂および油成分材の撹拌混合時における加熱温度を低下させる、または、撹拌時間を短くしても、油成分材中に固形樹脂を溶解させることができる。なお、先細状に形成される第1ブレード12の縁辺部12cの厚みは、縁辺部12c以外の厚みが4mm程度に設定されるのに対して、1mm程度に設定される。
2枚の第2ブレード13のそれぞれは、基部11から半径方向外方になるにつれて基部11の回転面に対して他方側に離反するように傾斜したブレードである。そして、各第2ブレード13同士は、回転軸線に関して対称に設けられている。
第2ブレード13における基部11の回転面に対する傾斜の角度θ2は、30〜45°(本実施形態では、傾斜角θ2=45°)に設定されるのが好ましい。これによって、カッター羽根10が回転駆動されるときに、タンク内に収容される固形樹脂および油成分材の混合物に対して撹拌流を作用させることができ、油成分材中における固形樹脂の粉砕効率を向上することができる。
また、第2ブレード13は、回転方向Aの上流側の第2上流側基端部13aが回転方向Aの下流側の第2下流側基端部13bよりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して基部11に連なっている。このように構成されたカッター羽根10を回転駆動させて、固形樹脂および油成分材を撹拌混合する粉砕溶解工程では、カッター羽根10が回転駆動されるときに、固形樹脂および油成分材の混合物に対して撹拌流が作用する。そのため、固形樹脂および油成分材の混合物は、タンク2内を撹拌流に沿って流動しながら撹拌混合されるので、油成分材中における固形樹脂の粉砕効率を向上することができる。
さらに、第2ブレード13は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部13cが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。これによって、カッター羽根10が回転駆動されるときに、先細状に形成される第2ブレード13の縁辺部13cによって、固形樹脂および油成分材の混合物に切り込みが入れられる。これによって、油成分材中における固形樹脂の粉砕効率を向上することができる。なお、先細状に形成される第2ブレード13の縁辺部13cの厚みは、縁辺部13c以外の厚みが4mm程度に設定されるのに対して、1mm程度に設定される。
2枚の第3ブレード14のそれぞれは、基部11から半径方向外方に連なり、基部11の回転面に平行なブレードである。そして、各第3ブレード14同士は、回転軸線に関して対称に設けられている。そして、第3ブレード14は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部14aが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。これによって、カッター羽根10が回転駆動されるときに、先細状に形成される第3ブレード14の縁辺部14aによって、固形樹脂および油成分材の混合物に切り込みが入れられる。これによって、油成分材中における固形樹脂の粉砕効率を向上することができる。なお、先細状に形成される第3ブレード14の縁辺部14aの厚みは、縁辺部14a以外の厚みが4mm程度に設定されるのに対して、1mm程度に設定される。
以上のように、2枚の第1ブレード12と、2枚の第2ブレード13と、2枚の第3ブレード14との合計6枚のブレードが、基部11から半径方向外方に連なるように形成されたカッター羽根10では、2枚の第3ブレード14の遊端部間の長さに対応する、最外周縁部の先端部における回転直径L4が、タンク2の内径Y2に対して30〜80%に設定される。
そして、粉砕溶解工程では、第3ブレード14の遊端部の周速度、すなわち、各ブレード12,13,14における最外周縁部の先端部の周速度が、10m/s以上となる速度で、カッター羽根10が回転駆動される。さらに、粉砕溶解工程では、到達温度が80〜200℃、好ましくは80〜140℃となるように、所定の昇温速度でタンク2を加熱した状態で、カッター羽根10を回転駆動させて、タンク内に収容される固形樹脂および油成分材の混合物を撹拌混合し、固形樹脂が3mm程度の粒子径を有する粒子状物になるように粉砕しながら油成分材中に溶解させる。ここで、本実施形態では、タンク2を加熱するときの昇温速度は、2〜8℃/minに設定されている。
また、固形樹脂を油成分材中に溶解させるのに要する撹拌混合時間は、高温下で撹拌混合することによって短くすることができるが、付与する熱エネルギーの量や使用する固形樹脂の油成分材に対する溶解性などにより最適温度条件が存在し、この最適温度条件によって設定すべき撹拌混合時間も異なる。撹拌混合時間は、エネルギー効率や作業性などを考慮すると、1つの目安として、15〜60分間である。なお、固形樹脂を油成分材中に溶解させた後、ゲル化剤で固形樹脂を架橋させる場合には、80〜180℃の温度条件下で、20〜40分間、カッター羽根10を回転駆動させた状態で架橋反応させることが好ましい。
以上のように、粉砕溶解工程では、タンク2の内径Y2に対して所定の回転直径を有するブレードを含むカッター羽根10を、所定の周速度で回転駆動させるので、タンク2内に収容される固形樹脂に充分なせん断力が付与されて、油成分材中で固形樹脂を粉砕しながら撹拌混合することができる。そのため、固形樹脂の軟化点を超えて200℃よりも高い温度下で、固形樹脂および油成分材を撹拌混合しなくても、油成分材中に固形樹脂を溶解させることができる。具体的には、到達温度が80〜200℃となるように所定の昇温速度でタンク2を加熱した状態で、カッター羽根10を回転駆動させることによって、固形樹脂を粉砕しながら油成分材中に溶解させることができる。
このように、200℃以下の温度下で、固形樹脂を粉砕しながら油成分材中に溶解させることができるので、エステル交換反応による固形樹脂の低分子量化を抑制することができる。そのため、本実施形態のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法では、高い印刷適性を有するオフセット印刷インキ用組成物の原材料となるワニスを得ることができる。また、本実施形態のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法では、200℃以下の温度下で固形樹脂を油成分材中に溶解させることができるので、熱エネルギーロスを少なくすることができる。また、本実施形態のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法では、油成分材中で固形樹脂を粉砕しながら溶解させるので、粉塵飛散がなく粉塵爆発が発生することを防止することができる。
以上のようにして、本実施形態のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法によって得られるオフセット印刷インキ用樹脂ワニスは、エステル交換反応による低分子量化が抑制された固形樹脂が油成分材中に溶解されたものである。したがって、オフセット印刷インキ用樹脂ワニスは、高い印刷適性を有するオフセット印刷インキ用組成物の原材料となる。
なお、固形樹脂および油成分材の混合物をタンク2内で撹拌混合するときに用いられるカッター羽根は、前述したカッター羽根10の形状に限定されるものではない。前述したカッター羽根10は、6枚のブレードが基部11から半径方向外方に連なるように形成されたものであるが、カッター羽根のブレードの枚数としては、好ましくは3〜10枚、より好ましくは4〜8枚である。カッター羽根におけるブレードの枚数が3枚より少ない場合には、固形樹脂に対して充分なせん断力を付与することができず、油成分材中で固形樹脂を充分に粉砕することができない。また、カッター羽根におけるブレードの枚数が10枚より多い場合には、各ブレード自身の強度が充分に確保できない。
以下に、前述したカッター羽根10とはブレード枚数が異なるカッター羽根について、図3,4を用いて説明する。
図3は、カッター羽根20の構成を示す図である。図3(a)は、カッター羽根20の展開図を示し、図3(b)は、カッター羽根20の平面図を示す。カッター羽根20は、ブレードの枚数が異なる以外は、前述したカッター羽根10と同様に構成される。
カッター羽根20は、基部21と、第1ブレード22と、第2ブレード23と、第3ブレード24とを含んで構成されている。
基部21は、タンク2の中心軸線と同一直線上となる回転軸線まわりに回転方向Aに回転駆動される回転軸に、垂直に固定される板状の部分であり、平面視したときの形状が正八角形である。そして、カッター羽根20では、2枚の第1ブレード22と、2枚の第2ブレード23と、4枚の第3ブレード24との合計8枚のブレードが、回転軸線に関して周方向に等間隔に、正八角形状の基部21の各辺から半径方向外方に連なるように形成されている。8枚の各ブレード22,23,24は、同じ形状および大きさに形成されており、本実施形態では、平面視したときの形状が台形である。
2枚の第1ブレード22のそれぞれは、基部21から半径方向外方になるにつれて基部21の回転面に対して一方側に離反するように傾斜したブレードである。そして、各第1ブレード22同士は、回転軸線に関して対称に設けられている。
また、第1ブレード22は、回転方向Aの上流側の第1上流側基端部22aが回転方向Aの下流側の第1下流側基端部22bよりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して基部21に連なっている。さらに、第1ブレード22は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部22cが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。
2枚の第2ブレード23のそれぞれは、基部21から半径方向外方になるにつれて基部21の回転面に対して他方側に離反するように傾斜したブレードである。そして、各第2ブレード23同士は、回転軸線に関して対称に設けられている。
また、第2ブレード23は、回転方向Aの上流側の第2上流側基端部23aが回転方向Aの下流側の第2下流側基端部23bよりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して基部21に連なっている。さらに、第2ブレード23は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部23cが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。
4枚の第3ブレード24のそれぞれは、基部21から半径方向外方に連なり、基部21の回転面に平行なブレードである。そして、4枚の第3ブレード24は、十字状に設けられている。そして、第3ブレード24は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部24aが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。
以上のように、2枚の第1ブレード22と、2枚の第2ブレード23と、4枚の第3ブレード24との合計8枚のブレードが、基部21から半径方向外方に連なるように形成されたカッター羽根20では、4枚の第3ブレード24の遊端部間の長さに対応する、最外周縁部の先端部における回転直径が、タンク2の内径Y2に対して30〜80%に設定される。
図4は、カッター羽根30の構成を示す図である。図4(a)は、カッター羽根30の展開図を示し、図4(b)は、カッター羽根30の平面図を示す。カッター羽根30は、ブレードの枚数が異なる以外は、前述したカッター羽根10と同様に構成される。
カッター羽根30は、基部31と、第1ブレード32と、第2ブレード33とを含んで構成されている。
基部31は、タンク2の中心軸線と同一直線上となる回転軸線まわりに回転方向Aに回転駆動される回転軸に、垂直に固定される板状の部分であり、平面視したときの形状が正方形である。そして、カッター羽根30では、2枚の第1ブレード32と、2枚の第2ブレード33との合計4枚のブレードが、回転軸線に関して周方向に等間隔に、正方形状の基部31の各辺から半径方向外方に連なるように形成されている。4枚の各ブレード32,33は、同じ形状および大きさに形成されており、本実施形態では、平面視したときの形状が台形である。
2枚の第1ブレード32のそれぞれは、基部31から半径方向外方になるにつれて基部31の回転面に対して一方側に離反するように傾斜したブレードである。そして、各第1ブレード32同士は、回転軸線に関して対称に設けられている。
また、第1ブレード32は、回転方向Aの上流側の第1上流側基端部32aが回転方向Aの下流側の第1下流側基端部32bよりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して基部31に連なっている。さらに、第1ブレード32は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部32cが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。
2枚の第2ブレード33のそれぞれは、基部31から半径方向外方になるにつれて基部31の回転面に対して他方側に離反するように傾斜したブレードである。そして、各第2ブレード33同士は、回転軸線に関して対称に設けられている。
また、第2ブレード33は、回転方向Aの上流側の第2上流側基端部33aが回転方向Aの下流側の第2下流側基端部33bよりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して基部31に連なっている。さらに、第2ブレード33は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部33cが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。
以上のように、2枚の第1ブレード32と、2枚の第2ブレード33との合計4枚のブレードが、基部31から半径方向外方に連なるように形成されたカッター羽根30では、第1ブレード32および第2ブレード33の遊端部間の長さに対応する、最外周縁部の先端部における回転直径が、タンク2の内径Y2に対して30〜80%に設定される。
(オフセット印刷インキ用組成物)
本実施の形態のオフセット印刷インキ用組成物は、前述したオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法によって得られるオフセット印刷インキ用樹脂ワニスを含有する。そのため、オフセット印刷インキ用組成物は、樹脂成分として、エステル交換反応による低分子量化が抑制された固形樹脂を含む。したがって、オフセット印刷インキ用組成物は、印刷時にインキのミスチング増加や対面セットオフの発生などを防止することができ、高い印刷適性を維持することができる。
オフセット印刷インキ用組成物は、オフセット印刷インキ用樹脂ワニスに対して、顔料が添加されたものであり、必要に応じて、前述した油成分材がさらに添加されたものである。
顔料としては、オフセット印刷インキ用組成物の顔料として公知の有機顔料を使用することができ、たとえば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、パーマネントレッド、アントラキノン、ペリノン、ジオキサジン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系金属錯体、メチン系金属錯体、チオインジゴ、イソインドリノン、スレンブルー、ジアミノアンスラキノリルなどが挙げられる。また、本実施の形態では、カーボンブラックを顔料として用いてもよい。
また、オフセット印刷インキ用組成物は、顔料分散剤、整面助剤、耐摩擦性向上剤、裏移り防止剤、酸化防止剤、非イオン系界面活性剤などが添加されてもよい。
オフセット印刷インキ用組成物は、ドライグラインド法、フラッシング法などの従来公知の製造方法によって製造することができる。たとえば、印刷インキ用樹脂ワニスに、乾燥した顔料、必要に応じて植物油成分、石油系溶剤、顔料分散剤を加え、ビーズミルや3本ロールミルなどで混練分散させることにより、オフセット印刷用ベースインキ組成物とした上で、必要に応じて印刷インキ用樹脂ワニス、植物油成分、石油系溶剤、添加剤を加え所定の粘度に調整して、オフセット印刷インキ用組成物を得ることができる。
また、以下のようにしてオフセット印刷インキ用組成物を製造することもできる。すなわち、まず、印刷インキ用樹脂ワニスに、顔料の水懸濁液(含水ケーキ、または乾燥顔料に水を加えて水懸濁液としたもの)を加えて、フラッシャー(ニーダー)または脱溶媒する機構を有する撹拌装置などでフラッシングし、フラッシングした組成物中の水の含有量が、好ましくは2質量%以下となるまで、脱水させる。次いで、脱水した組成物に、必要に応じて、印刷インキ用樹脂ワニスなどを加え、ビーズミルや3本ロールミルなどで混練分散させることにより、オフセット印刷用ベースインキ組成物とした上で、必要に応じて印刷インキ用樹脂ワニス、植物油成分、石油系溶剤、添加剤を加え所定の粘度に調整して、オフセット印刷インキ用組成物を得ることができる。
(実施例)
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<オフセット印刷インキ用樹脂ワニス>
オフセット印刷インキ用樹脂ワニスについては、固形樹脂の油成分材に対する溶解状態、粘度、ポリスチレン換算分子量、n−ヘキサントレランスの評価を行った。
[固形樹脂の油成分材に対する溶解状態]
固形樹脂の油成分材に対する溶解状態は、オフセット印刷インキ用樹脂ワニスを目視観察することによって評価した。固形樹脂が油成分材中に完全に溶解しているものを「○」とし、固形樹脂が完全には溶解しておらず、溶け残りが目視で確認されたものを「×」とした。
[粘度の評価]
オフセット印刷インキ用樹脂ワニスの粘度の測定は、以下のようにして行った。すなわち、試料0.5ccを25℃に保温し、E型粘度計(TVE−20H、東機産業株式会社製)を用いて、回転数を適宜調整しながら測定した。
[ポリスチレン換算分子量の評価]
オフセット印刷インキ用樹脂ワニスのポリスチレン換算分子量の測定は、以下のようにして行った。すなわち、ワニス0.05gをテトラヒドロフラン5mlに溶解して分析サンプルを調整し、GPC分析装置(Waters社製)を用いて測定した。そして、ピークが出始めたリテンションタイムからポリスチレン換算分子量を求めた。なお、GPC分析装置に搭載したカラムは、東ソー株式会社製のTSKgelG2500HXL、TSKgelGMHXL−LおよびTSKgelGMHXLを直列に接続して使用した。
[n−ヘキサントレランスの評価]
オフセット印刷インキ用樹脂ワニスのn−ヘキサントレランスの評価は、以下のようにして行った。すなわち、ワニス5gを100mlビーカーに量り取り、25℃の温度条件下で、ガラス棒でかき混ぜながらn−ヘキサンを滴下した。n−ヘキサンはワニスに対して貧溶媒であるので、滴下量の増加に伴ってワニス溶液は徐々に濁り始める。ビーカーの下に置いた新聞紙の文字が読めなくなる程度までワニス溶液が濁った時点を終点とし、終点に至るまでに要したn−ヘキサンの質量をn−ヘキサントレランス(単位:g/ワニス5g)とした。
なお、オフセット印刷インキ用樹脂ワニスにおいて、n−ヘキサントレランスの測定値が低い値を示すほど、高い印刷適性を有するオフセット印刷インキ用組成物の原材料となる。具体的には、n−ヘキサントレランスの測定値が低い値を示すオフセット印刷インキ用樹脂ワニスを用いて作製されたオフセット印刷インキ用組成物は、印刷時にインキのミスチング発生が抑制されたものとなり、タック値が低い値を示すものとなる。
(実施例1)
高さ30cm、内径20cmのタンク内に、固形樹脂として軟化点165℃のロジン変性フェノール樹脂を43質量部、油成分材として大豆油6質量部と日石AF7号ソルベント51質量部とを仕込んだ。なお、タンク内には、回転直径12cm(タンク内径に対して60%)の図2に示した6枚ブレードのカッター羽根10を配設した。
そして、到達温度が200℃となるように昇温速度8℃/minでタンクの加熱を開始し、加熱開始と同時に、ブレードの最外周縁部における先端部の周速度が10m/sとなるようにカッター羽根10の回転駆動を開始させ、タンク内に収容された固形樹脂および油成分材の混合物を撹拌混合した。
実施例1では、到達温度(200℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解されたが、そのまま60分間撹拌混合を継続し、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA1を得た。
(実施例2)
到達温度が170℃となるように昇温速度8℃/minでタンクを加熱したこと以外は、実施例1と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA2を得た。なお、実施例2では、到達温度(170℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解されたが、そのまま60分間撹拌混合を継続した。
(実施例3)
到達温度が140℃となるように昇温速度8℃/minでタンクを加熱したこと以外は、実施例1と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA3を得た。なお、実施例3では、到達温度(140℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解されたが、そのまま60分間撹拌混合を継続した。
(実施例4)
到達温度が100℃となるように昇温速度8℃/minでタンクを加熱したこと以外は、実施例1と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA4を得た。なお、実施例4では、到達温度(100℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解していなかったが、そのまま60分間撹拌混合をおこない樹脂が完全に溶解した。
(実施例5)
ブレードの最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるようにカッター羽根10を回転駆動させたこと以外は、実施例4と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA5を得た。なお、実施例5では、到達温度(100℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解していなかったが、そのまま60分間撹拌混合をおこない樹脂が完全に溶解した。
(実施例6)
ブレードの最外周縁部における先端部の周速度が16m/sとなるようにカッター羽根10を回転駆動させたこと以外は、実施例4と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA6を得た。なお、実施例6では、到達温度(100℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解していなかったが、そのまま60分間撹拌混合をおこない樹脂が完全に溶解した。
(実施例7)
タンク内に配設するカッター羽根10を、回転直径12cm(タンク内径に対して60%)の図4に示した4枚ブレードのカッター羽根30に代えたこと以外は、実施例4と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA7を得た。なお、実施例7では、到達温度(100℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解していなかったが、そのまま60分間撹拌混合をおこない樹脂が完全に溶解した。
(実施例8)
タンク内に配設するカッター羽根10を、回転直径12cm(タンク内径に対して60%)の図3に示した8枚ブレードのカッター羽根20に代えたこと以外は、実施例4と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA8を得た。なお、実施例8では、到達温度(100℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解していなかったが、そのまま60分間撹拌混合をおこない樹脂が完全に溶解した。
(実施例9)
到達温度が80℃となるように昇温速度8℃/minでタンクを加熱したこと以外は、実施例1と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA9を得た。なお、実施例9では、到達温度(80℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解していなかったが、そのまま60分間撹拌混合をおこない樹脂が完全に溶解した。
(実施例10)
固形樹脂として軟化点180℃のロジン変性フェノール樹脂を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA10を得た。なお、実施例10では、到達温度(100℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解していなかったが、そのまま60分間撹拌混合をおこない樹脂が完全に溶解した。
(実施例11)
固形樹脂として軟化点150℃のロジン変性フェノール樹脂を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA11を得た。なお、実施例11では、到達温度(100℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解していなかったが、そのまま60分間撹拌混合をおこない樹脂が完全に溶解した。
(実施例12)
タンク内に配設するカッター羽根10において、回転直径7cm(タンク内径に対して35%)のブレードに変更したこと以外は、実施例4と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA12を得た。なお、実施例12では、到達温度(100℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解していなかったが、そのまま60分間撹拌混合をおこない樹脂が完全に溶解した。
(実施例13)
タンク内に配設するカッター羽根10において、回転直径14cm(タンク内径に対して70%)のブレードに変更したこと以外は、実施例4と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA13を得た。なお、実施例13では、到達温度(100℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解していなかったが、そのまま60分間撹拌混合をおこない樹脂が完全に溶解した。
(実施例14)
高さ6m、内径4mのタンクに変更し、タンク内には、回転直径152cm(タンク内径に対して38%)の図1に示したカッター羽根10を配設し、ブレードの最外周縁部における先端部の周速度が19m/sとなるようにカッター羽根10を回転駆動させたこと以外は、実施例4と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA14を得た。なお、実施例14では、到達温度(100℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解していなかったが、そのまま60分間撹拌混合をおこない樹脂が完全に溶解した。
(比較例1)
ブレードの最外周縁部における先端部の周速度が7m/sとなるようにカッター羽根10を回転駆動させたこと以外は、実施例4と同様にして、固形樹脂および油成分材の混合物を撹拌混合した。比較例1では、60分間撹拌混合しても、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解されなかった。
(比較例2)
到達温度が60℃となるように昇温速度8℃/minでタンクを加熱したこと以外は、実施例1と同様にして、固形樹脂および油成分材の混合物を撹拌混合した。比較例2では、60分間撹拌混合しても、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解されなかった。
(比較例3)
タンク内に配設するカッター羽根10において、回転直径5cm(タンク内径に対して25%)のブレードに変更したこと以外は、実施例4と同様にして、固形樹脂および油成分材の混合物を撹拌混合した。比較例3では、60分間撹拌混合しても、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解されなかった。
(比較例4)
到達温度が250℃となるように昇温速度8℃/minでタンクを加熱したこと以外は、実施例1と同様にして、褐色透明のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA19を得た。なお、比較例4では、到達温度(250℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解されたが、そのまま60分間撹拌混合を継続した。
(比較例5)
タンク内に配設するカッター羽根10を、回転直径12cm(タンク内径に対して60%)の従来型カッター羽根(ディスクタービン羽根)に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、固形樹脂および油成分材の混合物を撹拌混合した。比較例5では、60分間撹拌混合しても、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解されなかった。
実施例1〜14および比較例1〜5のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスにおける評価結果を表1に示す。なお、表1中の「−」は、評価を実施していないことを示す。
Figure 2012241021
表1に示すように、実施例1〜14のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスは、短い溶解時間で固形樹脂が油成分材中に完全に溶解されたものであり、比較例のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスよりも粘度の高いワニスである。このことから、実施例1〜14のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスは、エステル交換反応による固形樹脂の低分子量化が抑制されたものであることがわかる。これに対して、比較例4のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスは、250℃という高温下で作製されたものであるので、エステル交換反応による固形樹脂の低分子量化が発生している。
そして、実施例1〜14のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスは、比較例のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスよりも低いn−ヘキサントレランス値を示すワニスである。このことから、実施例1〜14のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスは、高い印刷適性を有するオフセット印刷インキ用組成物の原材料となることがわかる。
<オフセット印刷インキ用組成物の作製>
(実施例15〜28、比較例6)
実施例1〜14および比較例4のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスA1〜A14,A19を用いて、各ワニスA1〜A14,A19にそれぞれ対応する実施例15〜28および比較例7のオフセット印刷インキ用組成物を作製した。
具体的には、各オフセット印刷インキ用樹脂ワニスA1〜A14,A19の65質量部に、フタロシアニン顔料(リオノールブルーFG−7330K、東洋インキ製造株式会社製)29.4質量部と、大豆油5.6質量部とを添加し、70℃にて30分間撹拌混合した後、3本ロールミルで分散し、オフセット印刷用ベースインキ組成物を得た。
次に、各オフセット印刷用ベースインキ組成物の50質量部に、それぞれ対応する各オフセット印刷インキ用樹脂ワニス45質量部と、日石AF7号ソルベント5質量部とを添加して撹拌混合し、実施例15〜28および比較例6のオフセット印刷インキ用組成物を得た。
<印刷適性評価>
上記のようにして作製した実施例15〜28および比較例6のオフセット印刷インキ用組成物について、ミスチング性、対面セットオフ性、機上安定性を評価した。
[ミスチング性の評価]
オフセット印刷インキ用組成物のミスチング性の評価は、DIGITAL INKOMETER(東洋精機株式会社製)を用いて、JIS K5701 4.2.2に準拠して行った。試料2.6ccを量り採り、35℃、1200rpmで3分間運転し、そのときのミスチング量を、バイブレーションロール下部に敷いた10cm×10cmの用紙上に飛散したインキ量として目視にて評価した。なお、ミスチング性の評価は、恒温室(温度:25℃、湿度:50%)にて行った。また、ミスチング性の評価基準は、以下のとおりである。
○:用紙上に飛散したインキによる汚れがほとんど確認されず、良好である。
△:用紙上に飛散したインキによる汚れ度合いが、所定の標準サンプルの汚れ度合いよりも少ない。
×:用紙上に飛散したインキによる汚れ度合いが、所定の標準サンプルの汚れ度合いと同等であり、ミスチング発生の抑制向上効果が見られない。
[対面セットオフ性の評価]
オフセット印刷インキ用組成物の対面セットオフ性の評価は、以下のようにして行った。まず、試料0.1ccをRI展色機(使用ローラ:4分割、株式会社明製作所製)を用いて用紙(オーロラコート、斥量73g、二葉紙業株式会社製)に展色した。次に、展色直後の各印刷物をセット試験機(AUTO INKSETTING TESTER、東洋精機株式会社製)にセットし、セット試験を2分間隔で行って、あて紙に対するインキ付着量を目視で確認した。なお、対面セットオフ性の評価は、恒温室(温度:25℃、湿度:50%)にて行った。また、対面セットオフ性の評価基準は、以下のとおりである。
○:2分間隔のセット試験において、試験開始から22分以内に、あて紙に対するインキ付着が解消される。
△:2分間隔のセット試験において、試験開始から24分後または26分後に、あて紙に対するインキ付着が解消される。
×:2分間隔のセット試験において、試験開始から28分後、30分後または32分後に、あて紙に対するインキ付着が解消される。
[機上安定性の評価]
オフセット印刷インキ用組成物の機上安定性の評価は、DIGITAL INKOMETER(東洋精機株式会社製)を用いて、JIS K5701 4.2.2に準拠して行った。試料0.2ccを量り採り、35℃、1200rpmで3分間運転し、その後、0〜20分間の間で連続的にタック値を測定して、機上安定性の評価とした。
なお、オフセット印刷インキ用組成物において、測定されたタック値が低い値を示すほど、高い印刷適性を有するオフセット印刷インキ用組成物である。具体的には、タック値が低い値を示すオフセット印刷インキ用組成物は、印刷時におけるパイリング現象の発生が防止されたものとなる。パイリング現象とは、印刷時に用紙の繊維がインキにより剥離されて、ローラ上、印刷版上、ブランケット上に紙粉が堆積されてインキ転写不良を引き起こす現象のことである。
実施例15〜28および比較例6のオフセット印刷インキ用組成物における評価結果を表2に示す。
Figure 2012241021
表2に示すように、実施例15〜28のオフセット印刷インキ用組成物は、タック値が高くなり過ぎるのが防止されて機上安定性に優れたものであり、比較例6のオフセット印刷インキ用組成物よりもミスチング、対面セットオフの発生が防止されものである。
10,20,30 カッター羽根
11,21,31 基部
12,22,32 第1ブレード
13,23,33 第2ブレード
14,34 第3ブレード
12a,22a,32a 第1上流側基端部
12b,22b,32b 第1下流側基端部
12c,22c,32c 第1縁辺部
13a,23a,33a 第2上流側基端部
13b,23b,33b 第2下流側基端部
13c,23c,33c 第2縁辺部
14a,24a 第3縁辺部

Claims (9)

  1. カッター羽根が内部空間に設けられるタンクに、固形樹脂および油成分材を仕込む仕込み工程と、
    到達温度が80〜200℃となるように所定の昇温速度でタンクを加熱した状態で、カッター羽根を回転軸の軸線まわりに回転駆動させて、固形樹脂を粉砕しながら油成分材中に溶解させる粉砕溶解工程とを含み、
    前記カッター羽根は、
    タンクの中心軸線と同一直線上となる軸線まわりに回転駆動される回転軸に垂直に固定される板状の基部と、基部から半径方向外方に連なり、最外周縁部の先端部における回転直径がタンクの内径に対して30〜80%であるブレードとを有し、
    粉砕溶解工程において、ブレードの最外周縁部における先端部の周速度が、10m/s以上となる速度で回転駆動されることを特徴とするオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法。
  2. 前記固形樹脂が、130℃以上の軟化点を有するロジン変性フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法。
  3. 仕込み工程における、タンク内に対する前記油成分材の仕込み量が、前記固形樹脂の仕込み量の100〜180質量%であることを特徴とする請求項1または2記載のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法。
  4. 前記ブレードは、
    基部から半径方向外方になるにつれて前記基部の回転面に対して一方側に離反するように傾斜した第1ブレードと、
    基部から半径方向外方になるにつれて前記基部の回転面に対して他方側に離反するように傾斜した第2ブレードと、を含んで構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法。
  5. 前記カッター羽根は、基部から半径方向外方に連なり、基部の回転面に平行な第3ブレードをさらに含んで構成されることを特徴とする請求項4記載のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法。
  6. 前記第1および第2ブレードは、前記回転方向上流側の基端部が回転方向下流側の基端部よりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して前記基部に連なっていることを特徴とする請求項4または5記載のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法。
  7. 前記第1、第2および第3ブレードの前記回転方向下流側に臨む縁辺部は、前記回転方向下流側に臨んで先細状に形成されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1つに記載のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスの製造方法によって得られることを特徴とするオフセット印刷インキ用樹脂ワニス。
  9. 請求項8記載のオフセット印刷インキ用樹脂ワニスを含有することを特徴とするオフセット印刷インキ用組成物。
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