JPWO2006100944A1 - オフセット印刷用インキ組成物の製造方法及び該製造方法から得られるオフセット印刷用インキ組成物 - Google Patents

オフセット印刷用インキ組成物の製造方法及び該製造方法から得られるオフセット印刷用インキ組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、中性カーボンブラックを利用しながら、インキの生産性を大幅に向上させることができ、さらに得られたインキを使用して枚葉印刷して得られる印刷物の印刷品質が酸性カーボンブラックを利用したものよりも優れた、オフセット印刷用インキ組成物の製造方法及びその製造方法から得られるオフセット印刷用インキ組成物を提供することを目的とする。本発明は、中性カーボンブラック300質量部を、少なくとも水を含有する湿潤剤100〜900質量部で湿潤させる工程と、酸価30KOHmg/g以下のアルキッド樹脂を含有する油性印刷インキ用ワニスを用いて、前記の湿潤させた中性カーボンブラックをフラッシングし、次いで湿潤剤を除去する工程と、を含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物の製造方法に関する。

Description

本発明は、オフセット印刷用インキ組成物の製造方法及び該製造方法から得られるオフセット印刷用インキ組成物に関するものである。
オフセット印刷用墨インキ組成物を製造するには、カーボンブラックを油性印刷インキ用ワニス中に充分に分散させることにより流動性や発色効果を高める必要がある。
通常、オフセット印刷用墨インキ組成物で使用されるカーボンブラックは、表面をオゾン又は化学薬品等で酸化処理した酸性のパウダーカーボンブラックである。
この酸性のパウダーカーボンブラックの分散は、乾燥状態のまま油性印刷インキ用ワニス中で練肉するというような極めて簡単な方法で行われているが、それにも関わらず、得られるオフセット印刷用墨インキ組成物におけるカーボンブラックの経時安定性が優れている。また、その組成物を用いて枚葉印刷した場合、得られる印刷物は、光沢、漆黒性等の印刷品質が良好である。
しかし、近年、酸性のパウダーカーボンブラックより低価格であるという理由から、中性カーボンブラックの使用が検討されている。
中性カーボンブラックは特別な処理を行わないことから安価で製造できる代わりに、油性ワニスに分散させるための基本的特性である、油性ワニスに対する濡れ性が劣る。従って、従来の分散方法で中性カーボンブラックを油性ワニス中に分散させた場合は、生産性が大きく低下し、未分散のままの顔料が残留して、さらに粒径分布もブロードとなる。その結果、このオフセット印刷用墨インキ組成物を枚葉印刷して得られる印刷物は、酸性のパウダーカーボンブラックを用いたものより印刷品質が低くなるという問題を有していた。
この問題を解決するために、予め、中性カーボンブラックと、印刷インキで用いる常温で固体の樹脂とを混練し、乾式粉砕した後、印刷インキ用ワニス中に混合、分散させたオフセット印刷用墨インキ組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、そのような組成物を得るためには、新たに乾式粉砕のための設備(乾式のアトライタ、ボールミル、振動ミル等)が必要で、且つ、最適な粉砕条件を定めることが困難であるという問題があった。さらに製造工程が多くなって、時間やエネルギーコストの増加は免れないものであった。
特開2002−327143号公報
上記の様に、せっかく安価な中性カーボンブラックを利用しても、従来の印刷インキの製造方法では余分な設備と製造コストを要するという欠点を有していた。さらにその製造方法によって得られたインキを用いて枚葉印刷した場合、得られる印刷物は、酸性のパウダーカーボンブラック等を用いた場合と比較して印刷品質が低下するなどの欠点を有していた。このように従来の印刷インキの製造方法では中性カーボンブラックの利点を生かすことができなかった。
そこで、本発明の課題は、中性カーボンブラックを利用しながら、インキの生産性を大幅に向上させることができるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法を提供することである。さらに枚葉印刷に用いた場合に、得られる印刷物の印刷品質が酸性カーボンブラックを利用したものよりも優れるという特徴を有する、上記製造方法によって得られるオフセット印刷用インキ組成物を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、中性カーボンブラックを、少なくとも水を含有する湿潤剤で湿潤させた後、酸価30KOHmg/g以下のアルキッド樹脂を含有する油性印刷インキ用ワニスを用いてフラッシングすることにより、上記課題を全て解決し得ることを見いだし、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、(1)中性カーボンブラック300質量部を、少なくとも水を含有する湿潤剤100〜900質量部で湿潤させる工程と、酸価30KOHmg/g以下のアルキッド樹脂を含有する油性印刷インキ用ワニスを用いて、上記の湿潤させた中性カーボンブラックをフラッシングし、次いで湿潤剤を除去する工程と、を含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物の製造方法に関する。
また、本発明は、(2)上記湿潤させる工程及びフラッシングし、次いで湿潤剤を除去する工程の終了後に、さらにロールミル又はビーズミルで練肉する工程を有する上記(1)項記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法に関する。
また、本発明は、(3)上記中性カーボンブラックとして、嵩密度0.1〜0.8g/cm、平均一次粒子径15〜70nmである中性カーボンブラックを用いる上記(1)項又は(2)項記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法に関する。
また、本発明は、(4)上記中性カーボンブラックが嵩密度0.3〜0.8g/cm、平均一次粒子径15〜70nm中性ビードカーボンブラックである上記(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法に関する。
また、本発明は、(5)上記アルキッド樹脂として、植物油変性アルキッド樹脂を用いる上記(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法に関する。
また、本発明は、(6)上記アルキッド樹脂の含有量を、上記中性カーボンブラックに対して1〜40質量%とする上記(1)項〜(5)項のいずれか1項に記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法に関する。
また、本発明は、(7)上記(1)項〜(6)項のいずれか1項に記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法で得られることを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物に関する。
また、本発明は、(8)オフセット印刷用インキ組成物が枚葉型オフセット印刷用インキ組成物である上記(7)項記載のオフセット印刷用インキ組成物に関する。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
まず、本発明におけるオフセット印刷用インキ組成物の構成材料、及び、製造方法に使用する装置について説明する。
<本発明のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において用いられる構成材料>
本発明のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において用いられる構成材料について説明する。
まず、カーボンブラックとしては、pH値が6.0〜8.0の中性カーボンブラックである限り特に限定されないが、本発明の製造方法は嵩密度0.1〜0.8g/cm、平均一次粒子径15〜70nmである中性カーボンブラックに対して有効であり、とりわけ、嵩密度0.3〜0.8g/cm、平均一次粒子径15〜70nmの中性ビードカーボンブラックに対してより有効である。上記中性ビードカーボンブラックのなかでも、カラー用中性ビードカーボンブラック及びゴム用中性ビードカーボンブラックが、中性パウダーカーボンブラックに比べて粉塵が起こりにくく、安価で、難分散性であるため、本発明の目的から特に有効である。
上記嵩密度は、JIS K6219に準じて測定を行なった値である。
上記平均一次粒子径は、電子顕微鏡による粒子の観察によって求められる粒子径の算術平均値である。
次に、本発明においては、中性カーボンブラックの湿潤のために、少なくとも水を含有する湿潤剤を用いる。上記湿潤剤としては水、および必要に応じて水と併用できる水親和性溶媒を用いることが可能であるが、環境面や中性カーボンブラックの湿潤性の点からは、水親和性溶媒を可能な限り少なくするほうが好ましい。具体的には湿潤剤全量のうち、水を50質量%以上含むのが好ましく、湿潤剤全量が水だけのものが特に好ましい。水の量が50質量%より少ない場合には、湿潤性が低下する傾向がある。なお、用いる水の種類については特に限定されず、例えば水道水、イオン交換水、蒸留水等を用いることができるが、印刷に悪影響を及ぼす水溶性イオン性物質の含有量が少ないという観点から、イオン交換水等を使用することが好ましい。
上記水親和性溶媒は、特に限定されないが、例えばエタノール、エチレングリコール等が挙げられる。
中性カーボンブラックを湿潤させる上記湿潤剤の量は、中性カーボンブラック300質量部に対して湿潤剤100〜900質量部であり、さらに、紙面品質や水を含有する湿潤剤の除去の容易さ等を考慮すると、好ましくは150〜550質量部である。100質量部より湿潤剤量が少ない場合は、良好な分散性が得られず、また、中性カーボンブラックの飛散等により作業性が悪化するという問題を有する。一方、900質量部より湿潤剤量が多い場合は、湿潤剤の除去に必要な時間が長くなるため生産性が低下し、また、湿潤剤の除去した量が増加して余分な処理が必要になるという問題を有する。
次に油性印刷インキ用ワニスの成分であるアルキッド樹脂としては、酸価30KOHmg/g以下のものを使用する。好ましくは10KOHmg/g以下、より好ましくは5KOHmg/g以下のものが使用できる。アルキッド樹脂の種類は特に限定されないが、好ましくは、植物油変性アルキッド樹脂である。植物油変性アルキッド樹脂としては、具体的には、大豆油変性アルキッド樹脂、亜麻仁油変性アルキッド樹脂、桐油変性アルキッド樹脂等が例示できる。また、植物油変性アルキッド樹脂の中でも、イソフタル酸からなる基本骨格を有する植物油変性アルキッド樹脂が好ましい。尚、酸化重合によりインキ塗膜を形成する枚葉印刷用インキ等では、半乾性油又は乾性油により変性されたアルキッド樹脂が好ましい。
上記アルキッド樹脂の使用量は、中性カーボンブラック100質量%に対して1〜40質量%の範囲が好ましい。中性カーボンブラックに対して1質量%未満では分散性が充分ではなく、一方、40質量%を越えると得られるオフセット印刷インキ組成物への湿し水の過剰乳化が生じ、印刷適性に悪影響を及ぼす傾向がある。但し、適切な使用量は、アルキッド樹脂の種類や中性カーボンブラック、その他の併用する材料の種類や使用量等によって異なるため上記範囲内で適切な使用量を選択することが好ましい。
なお、酸価は、JIS K5601−2−1に準じて測定を行なった値である。
本発明の製造方法に使用する油性印刷インキ用ワニスとしては、上記アルキッド樹脂と共に、バインダー樹脂及び油状液体を併用する。
上記バインダー樹脂としては、オフセット印刷用インキに使用されているロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノールを含有しないポリエステル樹脂を特に制限なく使用できる。また、必要に応じて石油樹脂等を併用することができる。
オフセット印刷用インキ組成物中の上記アルキッド樹脂と上記バインダー樹脂の合計使用量は、通常20〜60質量%の範囲が適当である。
上記油状液体の量は特に限定されないが、油性印刷インキ用ワニス全体の20〜70質量%の範囲となるように用いるのが好ましい。
上記油状液体としては、植物油成分、鉱物油成分等が使用できる。
植物油成分としては、植物油及び植物油由来の脂肪酸エステル化合物が挙げられる。
上記植物油としては、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油等のオフセット印刷に適した乾性油または半乾性油が例示できる。これらは単独で、または2種以上を併用できる。
上記植物油由来の脂肪酸エステル化合物としては、上記の乾性油または半乾性油由来の脂肪酸のモノアルキルエステル化合物が挙げられる。かかる脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸としては、炭素数16〜20の飽和または不飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が例示できる。脂肪酸モノエステルを構成するアルコール由来のアルキル基は、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル等のアルキル基が例示できる。これら脂肪酸モノエステルは、単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
鉱物油成分としては、水と相溶しない、沸点160℃以上、好ましくは沸点200℃以上のものを挙げることができる。具体的には、従来からオフセット印刷用インキ溶剤として使用されている、n−パラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤、芳香族系溶剤、α−オレフィン系等の石油系溶剤、軽油、スピンドル油、マシン油、シリンダー油、テレピン油、ミネラルスピリット等が例示できる。
上記油性印刷インキ用ワニスにおいて、植物油成分と鉱物油成分は、植物油成分を単独で用いてもよく、脂肪酸エステル、鉱物油をそれぞれ単独で用いてもよく、植物油成分と鉱物油成分とを併用してもよい。
さらに必要に応じて、ゲル化剤、ドライヤー、乾燥遅延剤、酸化防止剤、整面助剤、耐摩擦性向上剤、裏移り防止剤、非イオン系界面活性剤等の添加剤等を適宜使用することができる。
<本発明のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法>
次に、本発明のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法について説明する。
本発明は、中性カーボンブラック300質量部を、少なくとも水を含有する湿潤剤100〜900質量部で湿潤させる工程と、酸価30KOHmg/g以下のアルキッド樹脂を含有する油性印刷インキ用ワニスを用いて、上記の湿潤させた中性カーボンブラックをフラッシングし、次いで湿潤剤を除去する工程と、を含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物の製造方法である。
本発明のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において、中性カーボンブラックを湿潤させる装置は特に限定されないが、ディスパー又はフラッシャー(ニーダー)のいずれかを用いるのが好ましい。
本発明のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において、「フラッシング」とは、少なくとも水を含有する湿潤剤で湿潤させた中性カーボンブラックと油性ワニスを混合・撹拌し、中性カーボンブラックを水相から油性相に転相させる工程をいう。フラッシングに使用する装置も特に限定されないが、例えばフラッシャー(ニーダー)又は湿潤剤を除去できる機構を有する攪拌装置等が利用できる。
本発明のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法において、フラッシングした組成物中の水を含有する湿潤剤の含有量が、好ましくは2質量%以下となるまで、湿潤剤を除去する。さらに本発明の製造方法においては、上記湿潤させる工程及びフラッシングし、次いで湿潤剤を除去する工程の終了後、練肉する工程を経るのが好ましい。練肉するための装置としては、特に限定されないが、例えばロールミル又はビーズミル等が利用できる。この工程において、オフセット印刷用インキ組成物の粒子径が、例えば印刷膜厚より小さくなる5μm以下となるまで練肉する。なお上記粒子径は、例えばグラインドゲージ等によって測定することができる。
本発明において、フラッシング時に用いる「酸価30KOHmg/g以下のアルキッド樹脂を含有する油性印刷インキ用ワニス」は、フラッシング時において、結果的に油性印刷インキ用ワニスが酸価30KOHmg/g以下のアルキッド樹脂を所定の量含有する状態になっていればよい。従って、調製時における各成分の添加方法等は特に限定されず、どのような方法で調製してもよい。
すなわち、フラッシング時に、予め、上記のバインダー樹脂と上記のアルキッド樹脂とを植物油成分及び/又は鉱物油成分に溶解させて、上記アルキッド樹脂の含有量が所定の量となるよう油性印刷インキ用ワニスを調製してもよいし、また例えば、アルキッド樹脂が液状の場合は、そのアルキッド樹脂と、バインダー樹脂等を植物油成分及び/又は鉱物油成分に溶解させたバインダー樹脂油性ワニスとを別々に添加する方法等により、最終的に上記アルキッド樹脂の含有量が所定の量となるよう油性印刷インキ用ワニスを調製してもよい。
予め上記バインダー樹脂と上記アルキッド樹脂を植物油成分及び/又は鉱物油成分に溶解させて調製した油性印刷インキ用ワニスを用いて、オフセット印刷用インキ組成物を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、まず、ディスパー又はフラッシャー(ニーダー)に中性カーボンブラックと少なくとも水を含有する湿潤剤とを添加・攪拌し、中性カーボンブラックを湿潤させる工程、次いで、中性カーボンブラックの湿潤物に上記油性印刷インキ用ワニスを加え、フラッシャー(ニーダー)又は湿潤剤を除去する機構を有する攪拌装置でフラッシングし、フラッシングして得られる組成物中の湿潤剤の含有量が、好ましくは2質量%以下になるまで湿潤剤を除去する工程を含む方法等が挙げられる。さらに、その後、必要に応じて、油性印刷インキ用ワニス又はバインダー樹脂油性ワニス等を加え、ビーズミルや3本ロールミルなどで練肉分散させる工程、さらに得られた練肉物に、残余の材料を加えて所定の粘度に調整する工程を経て、オフセット印刷用インキ組成物を得る方法等が挙げられる。
また、フラッシング時に液状のアルキッド樹脂と、バインダー樹脂油性ワニスを別々に添加して油性印刷インキ用ワニスを調製する方法としては、例えば、フラッシングを行う際に、液状のアルキッド樹脂と、バインダー樹脂油性ワニスを別々に添加する点以外は上記と同様の工程で、オフセット印刷用インキ組成物を得る方法等が挙げられる。
尚、バインダー樹脂油性ワニスには、必要に応じて、ゲル化剤の適量(バインダー樹脂に対して15質量%以下程度)を使用し、樹脂を架橋させることができる。このような場合に使用するゲル化剤としては、アルミニウムアルコラート類、アルミニウムキレート化合物等が挙げられ、好ましい具体例としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブチトキシド、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートなどが例示できる。
以上、本発明のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法により、中性カーボンブラックを利用しながら、従来の方法よりインキの生産性を大幅に向上させることができる。さらに得られた印刷インキ組成物は、酸性カーボンブラックを利用したものと比較しても遜色のない性能を有し、カーボンブラックの分散性、経時安定性が良好で、且つ、本発明のオフセット印刷用インキ組成物を枚葉印刷に用いた場合は、光沢、漆黒度等の印刷品質が良好となる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものとする。なお、以下の実施例・比較例及び参照例において、上述の通り、嵩密度はJIS K6219に準じて、酸価はJIS KK5601−2−1に準じて測定した値である。また平均一次粒子径についても、上述の通り、電子顕微鏡による粒子の観察によって求められる粒子径の算術平均値である。
<実施例1>
pH7.0、一次粒子径27nm、嵩密度0.42g/cmのカラー用中性ビードカーボンブラック(BLACK PEARLS430、Cabot製)の224部と湿潤剤(水道水)の224部を卓上フラッシャー(井上機械製)内で25℃にて30分混合・湿潤を行ない、イソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂1(酸価5KOHmg/g)の56部を添加した後、ロジン変性フェノール樹脂(重量平均分子量10,000)/大豆油/AFソルベント6号(商品名、鉱物油成分、印刷インキ用溶剤、新日本石油化学株式会社製)の質量比が40/25/35であるバインダー樹脂油性ワニス1の200部を添加し、50℃にて60分間フラッシングを行った(尚、ここでは、液状の大豆油変性アルキッド樹脂1をバインダー樹脂油性ワニス1に加えたものが油性印刷用インキ用ワニス1に相当する(表1参照))。その後、本体を傾け浸出した湿潤剤を除去し、さらに、減圧下、100℃で60分の時間をかけてベース中に残留している湿潤剤が2%以下になるまで除去した後、ロジン変性フェノール樹脂(重量平均分子量80,000)/大豆油/AFソルベント6号/ALCH(エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド)の質量比が40/30/29/1であるバインダー樹脂油性ワニス2の320部を添加し、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドゲージによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ない、オフセット印刷用ベースインキ1を得た。このオフセット印刷用ベースインキ1の70部にバインダー樹脂油性ワニス2の13部、AFソルベント6号の7部を加えオフセット印刷用インキ組成物1を得た。
<実施例2>
イソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂1と、バインダー樹脂油性ワニス1とを添加する代わりに、ロジン変性フェノール樹脂(重量平均分子量10,000)/イソフタル酸からなる基本骨格を有する大豆油変性アルキッド樹脂(酸価5KOHmg/g)/大豆油/AFソルベント6号の質量比が31/22/20/27である油性印刷インキ用ワニス2の256部を添加する以外は、実施例1と同様の材料、同様の製造条件にしてオフセット印刷用ベースインキ2、およびオフセット印刷用インキ組成物2を得た。
<実施例3>
使用する中性カーボンブラックを実施例1のカラー用中性ビードカーボンブラックからpH7.5(N326、Degussa製)、一次粒子径30nm、嵩密度0.46g/cmのゴム用中性ビードカーボンブラックに変えた以外は実施例1と同様の材料、同様の製造条件にして、オフセット印刷用ベースインキ3、およびオフセット印刷用インキ組成物3を得た。
<実施例4>
実施例1の油性印刷用インキ用ワニス1のイソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂1を、酸価9KOHmg/gのイソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂2に変えた油性印刷用インキ用ワニス3を用いた以外は実施例1と同様の材料、同様の製造条件にして、オフセット印刷用ベースインキ4、およびオフセット印刷用インキ組成物4を得た。
<実施例5>
実施例1の湿潤剤の量を224部から120部に変えた以外は実施例1と同様の材料、同様の製造条件にして、オフセット印刷用ベースインキ5、およびオフセット印刷用インキ組成物5を得た。
<実施例6>
実施例1の湿潤剤の量を224部から416部に変えた以外は実施例1と同様の材料、同様の製造条件にして、オフセット印刷用ベースインキ6、およびオフセット印刷用インキ組成物6を得た。
<比較例1>
卓上フラッシャー(井上機械製)に実施例1と同様のカラー用中性ビードカーボンブラックの224部とイソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂1の56部添加後、バインダー樹脂ワニス1の200部を投入し50℃にて120分混合した(尚、ここでは、液状の大豆油変性アルキッド樹脂1をバインダー樹脂油性ワニス1に加えたものが油性印刷用インキ用ワニス1に相当する(表1参照))。その後、バインダー樹脂油性ワニス2の320部を添加し、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドゲージによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ない、オフセット印刷用ベースインキ7を得た。このオフセット印刷用ベースインキ7の70部にバインダー樹脂油性ワニス2の13部、AFソルベント6号の7部を加えオフセット印刷用インキ組成物7を得た。
<比較例2>
油性印刷インキ用ワニス1を添加(イソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂1の56部と、バインダー樹脂油性ワニス1の200部とを添加)する代わりに、油性印刷インキ用ワニス2の256部を添加する以外は、比較例1と同様の材料、同様の製造条件にしてオフセット印刷用ベースインキ8、およびオフセット印刷用インキ組成物8を得た。
<比較例3>
使用する中性カーボンブラックを比較例2のカラー用中性ビードカーボンブラックからpH7.5、一次粒子径30nm、嵩密度0.46g/cmのゴム用中性ビードカーボンブラックに変えた以外は比較例2と同様の材料、同様の製造条件にして、オフセット印刷用ベースインキ9、およびオフセット印刷用インキ組成物9を得た。
<比較例4>
実施例1の湿潤剤の量を224部から56部に変えた以外は実施例1と同様の材料、同様の製造条件にして、オフセット印刷用ベースインキ10、およびオフセット印刷用インキ組成物10を得た。
<参照例1>
pH3.0、一次粒子径24nmの酸性パウダーカーボンブラックの224部とイソフタル酸からなる基本骨格を有する大豆油変性アルキッド樹脂2(酸価9KOHmg/g)を56部添加後、バインダー樹脂油性ワニス1の200部を卓上フラッシャー(井上機械製)で50℃にて120分混合した(尚、ここでは、液状の大豆油変性アルキッド樹脂2をバインダー樹脂油性ワニス1に加えたものが油性印刷用インキ用ワニス3に相当する(表1参照))。その後、バインダー樹脂油性ワニス2の320部を添加し、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドゲージによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ない、オフセット印刷用ベースインキ11を得た。このオフセット印刷用ベースインキ11の70部にバインダー樹脂ワニス2を13部、AFソルベント6号の7部を加えオフセット印刷用インキ組成物11を得た。
<実施例7> 使用するカーボンブラックをpH7.0、一次粒子径27nm、嵩密度0.195g/cmのカラー用中性パウダーカーボンブラック(REAGAL300R、Cabot製)に変えた以外は、実施例1と同様の材料、同様の製造条件にしてオフセット印刷用ベースインキ12、及びオフセット印刷用インキ組成物12を得た。
<実施例8> (工業的スケールでの実施例)
pH7.0、一次粒子径27nm、嵩密度0.42g/cmのカラー用中性ビードカーボンブラック(BLACK PEARLS430,Cabot製)の560kgと湿潤剤(水道水)の560kgを製造フラッシャー(井上機械製)内で25℃にて30分混合・湿潤を行ない、イソフタル酸からなる液状の大豆油変性アルキッド樹脂1(酸価5KOHmg/g)の140kgを添加した後、ロジン変性フェノール樹脂(重量平均分子量10,000)/大豆油/AFソルベント6号(商品名 、鉱物油成分、印刷用インキ溶剤、新日本石油化学株式会社製の質量比が40/25/35であるバインダー樹脂油性ワニス1の500kgを添加し50℃にて60分間フラッシングを行った(尚、ここでは、液状の大豆油変性アルキッド樹脂1をバインダー樹脂油性ワニス1に加えたものが油性印刷用インキ用ワニス1に相当する(表1参照))。その後、本体を傾け浸出した湿潤剤を除去し、さらに、減圧下、100℃で90分の時間をかけてベース中に残留している湿潤剤が2%以下になるまで除去した後、ロジン変性フェノール樹脂(重量平均分子量80,000)/大豆油/AFソルベント6号/ALCH(エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド)の質量比が40/30/29/1であるバインダー樹脂油性ワニス2の800kgを添加し、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドゲージによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ない、オフセット印刷用ベースインキ13を得た。このオフセット印刷用ベースインキ13の700kgにバインダー樹脂油性ワニス2の130kg、AFソルベント6号の70kgを加えオフセット印刷用インキ組成物13を得た。
<比較例5>
卓上フラッシャー(井上機械製)に実施例7のカラー用中性パウダーカーボンブラックの224部とイソフタル酸からなる基本骨格を有する大豆油変性アルキッド樹脂1の56部添加後、バインダー樹脂ワニス1の200部を投入し50℃にて120分混合した(尚、ここでは、液状の大豆油変性アルキッド樹脂1をバインダー樹脂油性ワニス1に加えたものが油性印刷用インキ用ワニス1に相当する(表1参照))。その後、バインダー樹脂油性ワニス2の320部を添加し、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドゲージによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ない、オフセット印刷用ベースインキ14を得た。このオフセット印刷用ベースインキ14の70部にバインダー樹脂油性ワニス2の13部、AFソルベント6号の7部を加えオフセット印刷用インキ組成物14を得た。
<比較例6> (工業的スケールでの比較例)
製造フラッシャー(井上機械製)に比較例1と同様のカラー用中性ビードカーボンブラックの560kgとイソフタル酸からなる基本骨格を有する大豆油変性アルキッド樹脂1の140kg添加後、バインダー樹脂ワニス1の500kgを投入し50℃にて120分混合することによりフラッシャー内で油性印刷インキ用ワニス1を調製した(尚、ここでは、液状の大豆油変性アルキッド樹脂1をバインダー樹脂油性ワニス1に加えたものが油性印刷用インキ用ワニス1に相当する(表1参照))。その後、バインダー樹脂油性ワニス2の800kgを添加し、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドゲージによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ない、オフセット印刷用ベースインキ15を得た。このオフセット印刷用ベースインキ15の700kgにバインダー樹脂油性ワニス15の130kg、AFソルベント6号の70kgを加えオフセット印刷用インキ組成物15を得た。
<参照例2> (工業的スケールでの参照例)
pH3.0、一次粒子径24nmの酸性パウダーカーボンブラックの560kgとイソフタル酸からなる基本骨格を有する大豆油変性アルキッド樹脂2(酸価9KOHmg/g)を140kg添加後、バインダー樹脂油性ワニス1の500kgを製造フラッシャー(井上機械製)で50℃にて120分混合した(尚、ここでは、液状の大豆油変性アルキッド樹脂2をバインダー樹脂油性ワニス1に加えたものが油性印刷用インキ用ワニス3に相当する(表1参照))。その後、バインダー樹脂油性ワニス2の800kgを添加し、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドゲージによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行ない、オフセット印刷用ベースインキ16を得た。このオフセット印刷用ベースインキ16の700kgにバインダー樹脂ワニス2を130kg、AFソルベント6号の70kg部を加えオフセット印刷用インキ組成物16を得た。
<評価>
実施例1〜8、比較例1〜6及び参照例1、2の各オフセット印刷用インキ組成物の分散性、光沢、漆黒性を下記の方法で評価した。その結果を表6及び7に示す。なお表1には油性印刷インキ用ワニスの配合を示した。また、表2及び表3には上記オフセット印刷用ベースインキ1〜16の配合を、表4及び表5には上記オフセット印刷用インキ組成物1〜16の配合を示した。
(1)分散性
オフセット印刷用ベースインキ1〜16において、グラインドゲージによるカーボンブラックの粒子径測定で5μm以下となるまでに要した、ロールミルのパス回数を分散性の指標とした。
(2)光沢・漆黒性評価
印刷適性試験機PM−902PT(株式会社エスエムテー製)により、オフセット印刷用インキ組成物1〜16をコート紙(O.Kトップコート73K)に展色する。その展色物を光沢計GM−26(株式会社村上彩技術研究所製)を用いて光沢値を測定した。また、漆黒性は測色分光光度計GretagMacbeth SpectroEye(GretagMacbeth製)を用いて、L*の測定を行なった。L*が小さいほど黒味の色調が強いことを示す。
Figure 2006100944
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表6及び表7に示すように、実施例1〜7で得られる本発明のオフセット印刷用インキ組成物1〜6、12は、比較例のオフセット印刷用インキ組成物7〜10、14に比べて生産合計時間が短くできる。また、工業的スケールでの実施例8で得られる本発明のオフセット印刷用インキ組成物13は、工業的スケールでの比較例のオフセット印刷用インキ組成物15に比べて生産合計時間が短くできる。さらに光沢値が高く、L*が小さいことから、本発明のオフセット印刷用インキ組成物1〜6、12、13は、比較例のオフセット印刷インキ組成物7〜10、14、15に比べて分散性、光沢、漆黒性に優れることが分かる。
また、参照例1の、酸性パウダーカーボンブラックを用いたオフセット印刷用インキ組成物11と比較しても、本発明のオフセット印刷用インキ組成物1〜6、12は分散性・光沢・漆黒性の全てにおいて優れていることが分かる。また、工業的スケールで得られる参照例2の酸性パウダーカーボンブラックを用いたオフセット印刷用インキ組成物16と比較しても、本発明の工業的スケールで得られるオフセット印刷用インキ組成物13は分散性・光沢・漆黒性の全てにおいて優れていることが分かる。
本発明の製造方法は、安価な中性カーボンブラックを利用した場合でも、従来の製造方法よりも生産性を大幅に向上させることができ、且つ、分散性が良好となり、印刷品質に優れたにより得られるオフセット印刷用インキ組成物を提供することができる。本発明の製造方法により得られるオフセット印刷用インキ組成物は、枚葉印刷、オフセット輪転印刷(ヒートセット型、ノンヒートセット型)、新聞印刷等で使用できる。なかでも、枚葉印刷に使用した場合は、漆黒度、光沢等の印刷品質が良好となり好適である。

Claims (8)

  1. 中性カーボンブラック300質量部を、少なくとも水を含有する湿潤剤100〜900質量部で湿潤させる工程と、酸価30KOHmg/g以下のアルキッド樹脂を含有する油性印刷インキ用ワニスを用いて、前記の湿潤させた中性カーボンブラックをフラッシングし、次いで湿潤剤を除去する工程と、を含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
  2. 前記湿潤させる工程及びフラッシングし、次いで湿潤剤を除去する工程の終了後に、さらにロールミル又はビーズミルで練肉する工程を有する請求項1記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
  3. 前記中性カーボンブラックとして、嵩密度0.1〜0.8g/cm、平均一次粒子径15〜70nmである中性カーボンブラックを用いる請求項1又は2記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
  4. 前記中性カーボンブラックが嵩密度0.3〜0.8g/cm、平均一次粒子径15〜70nmである中性ビードカーボンブラックである請求項1〜3のいずれか1項に記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
  5. 前記アルキッド樹脂として、植物油変性アルキッド樹脂を用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
  6. 前記アルキッド樹脂の含有量を、前記中性カーボンブラックに対して1〜40質量%とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法で得られることを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物。
  8. オフセット印刷用インキ組成物が枚葉型オフセット印刷用インキ組成物である請求項第7記載のオフセット印刷用インキ組成物。
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