以下、本発明の実施形態に係る絶縁測定用プローブユニット及び絶縁測定装置について、添付図面を参照しながら説明する。本発明に係る絶縁測定用プローブユニット及び絶縁測定装置は、太陽電池パネル等の基板の表面の内側部と周辺部との間での絶縁状態を測定するための装置である。測定対象基板としては、基板表面の周辺部に、電極等を除去した絶縁領域を備えた基板すべてが対象となる。この周辺部は、隣接する他の基板(太陽電池セル等)との間の電気的な絶縁を確保したり、絶縁を保ってフレーム等に取付けたりするために確保される領域である。以下では、測定対象基板として太陽電池パネルを用いて説明する。
太陽電池パネル1の場合は、図1に示すように、製造工程で基板2の主面全体に太陽電池用膜が形成され、形成した膜をレーザースクライブにより短冊状に切断する。これを繰り返すことにより、複数の太陽電池セル3Aに切り分ける。次いで、図2に示すように、基板2の表面の周辺の太陽電池膜3を除去して周辺部(エッジデリーション部)4を作る。これにより、基板2の表面のうち、周辺部4で囲まれた内側の領域が内側部5となる。
そして、基板2の周辺部4に残膜があると、上述したように、漏れ電流等の問題があるため、残膜の有無を正確に測定する必要がある。このため、絶縁測定装置によって、周辺部4と内側部5との間で絶縁測定を行う。以下、絶縁測定用プローブユニットを備えた絶縁測定装置について説明する。
絶縁測定装置7は、基板2の表面の内側部5と周辺部4との間の絶縁状態を測定するための装置である。絶縁測定装置7は、図3,4に示すように、絶縁測定用プローブユニット8と、搬送機構9と、検査ステージ10と、測定回路ユニット11と、昇降機構12とから構成されている。
絶縁測定用プローブユニット8は、基板2の表面の内側部5と周辺部4との間での絶縁状態を測定するためにこれらに接触する装置である。絶縁測定用プローブユニット8は図5〜7に示すように、面プローブ14と、コンタクトプローブ15と、固定バー16と、プローブベース板21とから構成されている。
面プローブ14は、上記基板2の表面の周辺部4と同じ形状に形成されて周辺部4全体に面状に接触するためのプローブである。この面プローブ14が周辺部4の全面に導通して、周辺部4に僅かに残った残膜に対しても確実に接触するようになっている。
面プローブ14は、弾性を有すると共に、少なくとも上記基板表面の周辺部4全体に接触する面が導電性を有して構成されている。
面プローブ14は、異方性導電ゴムで構成されたり、弾性部材と導電性部材とから構成されたりする。
面プローブ14を異方性導電ゴムで構成するときは、この異方性導電ゴムを、基板2の表面の周辺部4の形状に合わせた環状に形成する。ここでは、基板2が四角形で、周辺部4が四角環状であるため、異方性導電ゴムを断面四角形の棒状にして、その棒材を四角環状にするようにして面プローブ14が構成されている。弾性部材の寸法は、周辺部4の寸法に合わせて設定される。即ち、弾性部材が、周辺部4の全面を覆い、かつ内側部5に接触しない寸法に設定される。面プローブ14の内側面(四角環状の面プローブ14の内側に位置する壁面)には、基板2の表面の内側部5に電気的に接触しないように、絶縁部17が設けられている。この絶縁部17は、面プローブ14の内側面に貼付した絶縁膜等で構成されている。
面プローブ14を弾性部材と導電性部材とで構成するときは、次のようになる。なお、弾性部材は、面プローブ14の芯材となる部材で、面プローブ14とほぼ同じ形状に形成される。導電性部材は、弾性部材の表面に巻かれる薄膜状や網状の部材である。
弾性部材は、周辺部4の形状に合わせた環状に形成される。具体的には、弾性部材は、断面四角形の棒状にして、その棒材を四角環状に形成するようにして構成されている。弾性部材の寸法は、周辺部4の寸法に合わせて設定される。即ち、弾性部材が、周辺部4の全面を覆い、かつ内側部5に接触しない寸法に設定される。弾性部材は、発砲ウレタン等の弾性を有する合成樹脂やゴム等の材料で構成されている。導電性の有無は問わない。なお、弾性部材をゴムチューブ等で構成し、空気圧を利用して周辺部4の僅かな凹凸にも柔軟に追従できるようにしてもよい。
導電性部材は、薄膜状や網状に形成されて、弾性部材の周囲に巻かれることで、弾性部材の弾性により周辺部4に確実に接触するようになっている。即ち、導電性部材は、薄膜状や網状に構成されて弾性部材に巻かれることで、弾性部材の弾性によって柔軟に撓んで、周辺部4の表面に密着するようになっている。導電性部材を網状にする場合は、導電性の糸(導電性ゴムや炭素繊維や金属の糸等)を網状に構成して、弾性部材の周囲に巻かれる。この導電性の糸は、柔軟性を有する場合は、弾性部材の周囲に巻くだけでもよい。導電性の糸が柔軟性を有しない場合は、その糸でできた網を弾性部材の周囲に、接着剤で固定したり、溶融接着したりする。薄膜の場合は、弾性部材の周囲に、接着剤や溶融で貼付する。
これにより、導電性部材は、弾性部材の弾性によって柔軟に撓んで周辺部4の表面に密着し、周辺部4に僅かに残った残膜にも確実に接触するようになっている。
面プローブ14の内側面(四角環状の面プローブ14の内側に位置する壁面)には、上記同様に、基板2の表面の内側部5に電気的に接触しないように、絶縁部17が設けられている。この絶縁部17は、面プローブ14の内側面に貼付した絶縁膜等で構成されている。
コンタクトプローブ15は、基板2の表面の内側部5に接触するためのプローブである。コンタクトプローブ15は、弾性的に伸縮する伸縮可能なスプリングプローブで構成されている。これにより、コンタクトプローブ15は、基板2に当たったとき、縮みながら基板2の表面に電気的に確実に接触するようになっている。
コンタクトプローブ15は、図7,8に示すように、基板2の太陽電池セル3Aに合わせて配置されている。具体的には、短冊状の太陽電池セル3Aの長手方向の両端位置にコンタクトプローブ15が1本ずつ配設されている。さらに、複数並列に配設された太陽電池セル3Aのうちの両端の太陽電池セル3Aの表面には等間隔の複数箇所の位置にコンタクトプローブ15が配設されている。太陽電池セル3Aのうちの両端の太陽電池セル3Aについて、図8においては説明の便宜上7カ所にコンタクトプローブ15が配設されているが、例えば1.4m×1mのパネルにおいては、約35箇所に配設される。さらに、図8においては便宜上13本の太陽電池セル3Aに分割したが、例えば1.4m×1mのパネルにおいては、約100本の太陽電池セル3Aに分割される。これにより、図8においては、全周の36箇所の位置に36本のコンタクトプローブ15が配設されている。1.4m×1mのパネルにおいては、270箇所の位置に270本のコンタクトプローブ15が配設される。
各コンタクトプローブ15は、二系統に分かれている。具体的には、太陽電池セル3Aの長手方向の一端(図8中の上端)に位置するコンタクトプローブ15と、複数並列に配設された太陽電池セル3Aのうちの一方(図8中の右方)の端部の太陽電池セル3Aに位置する複数本(図8中の7本)のコンタクトプローブ15とが一方の系統に属する。これらのコンタクトプローブ15には、それぞれ電流計19が設けられている。なお、一方の端部の太陽電池セル3Aに位置する複数本のコンタクトプローブ15は電気的に接続され、1つの電流計19が設けられており、この電流計19により端部の太陽電池セル3Aのいずれかの位置で短絡していることを検出する。この場合は、短絡している場所を特定できないため、この端部の太陽電池セル3Aの部分の周辺部4全域を処理対象とする。
各コンタクトプローブ15の他方の系統は、上記一方の系統と対向する位置に、この一方の系統と同様に構成されている。
各コンタクトプローブ15は、基板2表面の内側部5の測定対象部位ごとにそれぞれ配設された状態で、固定バー16によって一体的に支持されている。
この固定バー16は、図6に示すように、プローブベース板21に固定されている。面プローブ14も同様に、プローブベース板21に固定されている。これにより、面プローブ14とコンタクトプローブ15とが一体的に支持されている。さらに、コンタクトプローブ15の先端部(下端部)は、面プローブ14の接触面(下端面)よりも基板2の表面側(下側)に位置して設けられている。これにより、コンタクトプローブ15が先に基板2の表面に接触し、その後に面プローブ14が基板2の表面に接触するようになっている。
搬送機構9は、絶縁測定用プローブユニット8の下側に測定対象の基板2を搬送するための装置である。搬送機構9は、図,3,4に示すように、複数並列に配設された搬送ローラ25と、各搬送ローラ25を回転駆動する駆動部(図示せず)とから構成されている。各搬送ローラ25は、基板2の搬送方向に合わせて、フレーム(絶縁測定装置7の骨格となるフレーム)26の上側面に並列に配設されている。各搬送ローラ25は、駆動部に連結されて、一体的に回転するようになっている。さらに、絶縁測定装置7が製造ラインの中に組み込まれる場合は、基板2がこの製造ラインの搬送装置から絶縁測定装置7へ連続的に搬入できるように、各搬送ローラ25が、製造ラインの搬送装置に合わせて配設される。
検査ステージ10は、搬送機構9で搬送された基板2を検査のために支持するステージである。検査ステージ10は、図3,9に示すように、上記搬送機構9で搬送された基板2を搭載する基板搭載部28と、この基板搭載部28に搭載された基板2を位置決めする基板位置決め機構29とを備えて構成されている。
基板搭載部28は、上記搬送機構9で搬送された基板2を受け取って移動可能に支持する複数の支持ローラ30を備えて構成されている。各支持ローラ30は、駆動部(図示せず)に連結されて、一体的に回転駆動されるようになっている。これにより、各支持ローラ30は、駆動部に駆動されて、基板2を絶縁測定用プローブユニット8の直下の位置に移動して支持するようになっている。
基板位置決め機構29は、位置決め片32と、移動装置33とから構成されている。位置決め片32は、複数の支持ローラ30の間から延出して基板2の縁に当接し、当該基板2を位置決めするための部材である。位置決め片32は、出没機構(図示せず)に支持されている。出没機構は、直動機構で構成されている。これにより、出没機構は、位置決め片32を支持して出没することで、支持ローラ30の下部に位置する待機状態と、上方へ延出して基板2の縁に当接する作動状態とを適宜切り換えるようになっている。位置決め片32は、基板2を両側から挟むように2つ設けられている。
移動装置33は、位置決め片32を移動させるための装置である。移動装置33は、位置決め片32を移動させる方向に配設されたスクリュー棒34と、このスクリュー棒34にねじ込まれてスクリュー棒34の回転に応じてスライドするスライド片35と、スクリュー棒34に連結されてこのスクリュー棒34を回転駆動する駆動モータ36とから構成されている。
移動装置33は、位置決め片32に合わせて2つ設けられている。位置決め片32は、スライド片35に取り付けられている。これにより、2つの移動装置33で各位置決め片32が互いに近接する方向に移動されて、基板2を両側から掴んで設定位置に位置合わせして固定するようになっている。
基板搭載部28と基板位置決め機構29は、昇降フレーム37に一体的に設けられている。この昇降フレーム37は、昇降機構12に支持されている。
測定回路ユニット11は、絶縁測定用プローブユニット8の面プローブ14及び各コンタクトプローブ15にそれぞれ接続されて、基板2の表面の内側部5と周辺部4との間の絶縁状態を測定するための装置である。測定回路ユニット11は、図3,6,8に示すように、電源38、電流計19、処理部(図示せず)等を備えて構成されている。電源38は、各電流計19と面プローブ14とに接続されて、内側部5と周辺部4との間に電圧を印加している。さらに、面プローブ14はアースにグランドされている。処理部は、各電流計19にそれぞれ接続されている。電流計19は、絶縁状態の違いにより変化する電流を測定するための計測器である。これにより、どの電流計19にどれだけ電流が流れたかによって、絶縁状態を測定すると共に、その電流が流れたコンタクトプローブ15の位置の近傍に短絡が発生したことを特定するようになっている。なお、測定器としては、電流計19に限らず、電圧や抵抗等の他の電気的数値を測定する機器でもよい。短絡に伴って変化する電気的数値を測定する測定器であればよい。
昇降機構12は、検査ステージ10を上昇させて絶縁測定用プローブユニット8を基板2の表面に接触させるための装置である。昇降機構12は、図3に示すように、上下方向に配設されたスクリュー棒40と、このスクリュー棒40にねじ込まれてスクリュー棒40の回転に応じて上下に昇降する昇降片41と、スクリュー棒40に連結されてこのスクリュー棒40を回転駆動する駆動モータ42とから構成されている。昇降片41は、検査ステージ10の昇降フレーム37に固定されている。これにより、駆動モータ42で駆動されたスクリュー棒40の回転に応じて検査ステージ10が昇降するようになっている。
次に、上記構成の絶縁測定装置7の動作について、図10のフローチャートに基づいて説明する。
まず、レシピを設定する(ステップS1)。基板2や絶縁測定装置7に関する諸条件を設定する。
次いで、基板2が絶縁測定装置7に設置される(ステップS2)。具体的には、製造ラインの搬送装置等から搬送機構9に基板2が搬入される。これにより、搬送ローラ25が基板2を受けて絶縁測定用プローブユニット8の直下に移送する。次いで、出没機構で位置決め片32が、支持ローラ30の下部に位置する待機状態から、上方へ延出して作動状態になる。次いで、移動装置33のスクリュー棒34が駆動モータ36で回転駆動されて、位置決め片32がスライド片35と共に、互いに近接するように移動される。これにより、2つの位置決め片32が基板2を両側から挟んで位置決めして支持する。
次いで、一系統の測定が行われる(ステップS3)。具体的には、図8の右上側の測定系が作動されて測定が行われる。この場合、まず、降機構12の駆動モータ42が作動されてスクリュー棒40が回転され、昇降片41がスクリュー棒40の回転に応じて上昇される。これにより、検査ステージ10が上昇して、絶縁測定用プローブユニット8のコンタクトプローブ15が太陽電池セル3Aに接触される。具体的には、各コンタクトプローブ15が、基板2の内側部5の各太陽電池セル3Aに接触する。接触後も検査ステージ10は上昇され、各コンタクトプローブ15が押し縮められながら、面プローブ14が周辺部4に接触される。これにより、面プローブ14が押し縮められて密着する。この状態で、面プローブ14と各コンタクトプローブ15との間に電圧が印加され、各電流計19で電流が測定される。
次いで、他系統の測定が行われる(ステップS4)。具体的には、図8の左下側の測定系が作動されて測定が行われる。具体的には、上記一系統の測定と同様である。
次いで、各系統ごとに低抵抗箇所があるか否かが判断される(ステップS5)。具体的には、各電流計19の数値が高い箇所があるか否かが判断される。
低抵抗箇所がある場合は、その低抵抗箇所を特定する(ステップS6)。具体的には、抵抗が低いために電流値が高い電流計19のコンタクトプローブ15を特定する。この場合は、短絡した太陽電池セル3Aの両端に接続された各系統の電流計19の電流値が高くなるが、次のようにして特定する。即ち、長尺の太陽電池セル3A自身が持つ抵抗値を計算に入れて2つの電流計19の電流値を比較し、上記抵抗値の分だけ電流値の高い方のコンタクトプローブ15の近傍が、残膜の存在する領域となる。
低抵抗箇所がない場合は、ステップS7へ進む。
ステップS7では、上記の結果をデータベースに記録する(ステップS7)。
次いで、上記の結果を、オペレーターの近傍の表示部(図示せず)に表示する(ステップS8)。
さらに、上記の結果を、上位通信へ送信する(ステップS9)。この上位通信への送信は必要に応じて行われる。例えば、複数の装置を一括管理する制御部があるような場合は、その制御部にデータを送信する。
検査が終了したら、検査ステージ10を降下させて基板2を搬出し、次の基板2を設置して上記処理を繰り返す。
残膜が見つかった基板2は、別途、周辺部4の膜除去加工が施される。
以上により、基板2の残膜検査を、短時間で容易に行うことができるようになる。さらに、面プローブ14及びコンタクトプローブ15を、周辺部4および内側部5に確実に接触させることができ、高い精度で周辺部の残膜の検査ができるようになる。
これにより、残膜不良品の流出を確実に防止することができる。
[変形例]
上記実施形態では、各コンタクトプローブ15に電流計19をそれぞれ設けたが、図11に示すように、切替スイッチ43を設けて、電流計19を1つだけにしてもよい。即ち、電源38に電流計19を1つ接続し、切替スイッチ43を介して電流計19を各コンタクトプローブ15に接続するようにしてもよい。これにより、切替スイッチ43が順次切り替えて、各コンタクトプローブ15を1つずつ電流計19に接続して電流値を検出する。この場合も、上記実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
上記実施形態では、昇降機構12は、検査ステージ10を上昇させるようにしたが、絶縁測定用プローブユニット8を下降させて、この絶縁測定用プローブユニット8を基板2の表面に接触させるようにしてもよい。この場合も、上記実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
また、基板位置決め機構29は、基板2の両側に2つ設けたが、基板2の4辺に4つ設けてもよい。
また、上記測定結果を、エッジデリーションの加工機へのレシピに対して、フィードバックするようにしてもよい。
上記実施形態では、太陽電池パネル1に周辺部4を設けた例を説明したが、太陽電池パネル1に限らず、他のパネル等にも、本願発明を適用することができる。即ち、周辺部を設ける必要があるパネル等であって、その周辺部に残膜がないかを確認する必要があるすべてのパネル等に対して、本願発明を適用することができる。