本発明は、ウェイト変動量推定方法、ウェイト更新方法、及び通信装置に関するものである。
マルチアンテナ技術は、無線通信において、送信・受信を複数のアンテナを用いて行うことにより、通信容量、周波数の利用効率、消費電力等の改善を行う技術である。なお、送信側・受信側いずれかのアンテナ数が1つであっても、他方のアンテナ数に応じて通信品質の改善等を行うことが可能である。
また、マルチアンテナ技術に関する用語として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)がある。MIMOとは、通信用語として用いられる場合、送信側及び受信側両方が複数のアンテナを用いる通信方式を指すことが多いが、マルチアンテナ技術全般を指して使われることもある。
マルチアンテナ信号の処理アルゴリズムによって得られる利点としては、次の4つが挙げられる。
(1)空間ダイバーシチ(Spatial Diversity)
(2)合成利得(Coherent Gain)
(3)干渉波除去(Interference Mitigation)
(4)空間多重(Spatial Multiplexing)
前記空間ダイバーシチは、空間的に離れたアンテナを用いることで、マルチパスなどの影響による通信品質の劣化を小さくすることである。
前記合成利得は、受信側・送信側の各アンテナの信号に対して伝搬路の情報(振幅、位相の変化)を利用した重みをかけることで、希望方向からの受信電力と雑音の比を大きくすることである。
前記干渉波除去は、各アンテナからの受信信号に対して、所望信号以外の到来信号(干渉信号)を打ち消すように重みをかけて合成する。受信アンテナ数よりも一つ小さい数の干渉信号を除去することができる。到来信号の伝搬係数が未知であるならば、なんらかの学習アルゴリズムを用いる必要がある。
前記空間多重は、干渉波除去を応用して同時に複数の通信路を確立する方法である。一人のユーザが複数のアンテナから異なる信号を送信して通信容量を増やす方法と、複数のユーザが同時に通信を行って周波数利用効率を高める方法とがある。後者の方法は、SDMA(Space Division Multiple Access)と呼ばれる。
さて、近年注目を浴びているマルチアンテナ技術として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing;直交周波数分割多重)方式を用いたOFDM−MIMOがある。
OFDM方式は、複数の搬送波(サブキャリア)を周波数軸上に多数配置するとともに、複数の搬送波を一部重ならせて周波数利用効率を上げたものである。OFDMは、地上波デジタル放送、無線LANなどの伝送方式に採用されている。
OFDM−MIMOにおける重要な技術の一つとして、重み(ウェイト)の更新が挙げられる。
例えば、ウェイトは、マルチアンテナ技術において上記(2)の合成利得により、希望波方向からの受信電力と雑音電力の比を大きくして、希望波方向に強い指向性を向ける(ビームフォーミング)場合に用いられる。
なお、ビームフォーミングでは、希望波方向に強い指向性を向けるのに加えて、希望波以外の受信信号による影響を小さくすることもできる。
ウェイトは、参照信号を用いて生成される。例えば、OFDMでは、受信側と送信側で既知の信号(パイロット信号)が挿入されているので、このパイロット信号を参照信号として、ウェイトを更新することができる。
ウェイトの更新アルゴリズムとしては、LMS(Least Mean Square)、RLS(Recursive Least−Squares)があり、これらが適切に動作した場合には誤差エネルギーを最小化し、(1)〜(4)のすべての利点を得ることができる。
OFDMのパイロット信号は、時間軸方向に所定間隔で配置されているため、パイロット信号を受信する度に、逐次、ウェイトを更新することが可能である。
定常状態(伝搬係数に時間的に変化がない場合)においては、ある程度の回数以上のウェイトの更新を行うことで、ウェイトの計算結果が収束し、干渉信号や雑音信号の影響を小さくすることができる。
ウェイトの更新方法については、例えば、特許文献1に記載されている。
図11は、特許文献1の図8の信号配列図を示している。この信号配列図は、OFDM方式による地上デジタルテレビ放送方式の信号配列である。同図では、縦軸をシンボル方向(時間軸方向)iとし、横軸をキャリア方向(周波数軸方向)kとしたキャリア−シンボル空間上のサブキャリア配置を示している。図中の黒丸はスキャッタード・パイロット(Scattered Pilot)SPを示し、白丸はデータ信号(データサブキャリア)を示している。
同図の信号配列の場合、同一のSPキャリア番号kpについては、4シンボル周期でSP信号が繰り返される。
特許文献1では、LMSアルゴリズムを適用してウェイトを更新する方法が説明されている。
同文献によれば、あるキャリア番号kpの時刻iにあるSP信号を用いて更新されたウェイトwb kp(i)があるときに、次のウェイトの更新は、同じキャリア番号kpの4シンボル後に位置するSP信号(キャリア番号kp,時刻i+4)を用いてウェイト更新値wb kp(i+4)を算出する。
すなわち、特許文献1では、ウェイト更新値wb kp(i+4)は、下記式によって定義されている。
wb kp(i+4)=wb kp(i)+μukp(i)・e* kp(i)
特許文献1によれば、上記式において、μは、ステップ・サイズ・パラメータと呼ばれる更新の前後の変化量を規定するパラメータである。なお、ukp(i)は、シンボル番号i、キャリア番号kpで特定されるOFDM信号ベクトルであり、ekp(i)は、事後推定誤差である。
ここで、最適なウェイトは、伝搬路の環境によって異なる。また、伝搬環境は、動的に変動することがある。したがって、伝搬路の変化を動的に推定できれば、精度よく復調する上で有利である。
そして、本発明者は、伝搬路の変化を動的に把握するためには、パイロットサブキャリア間におけるウェイト変動量を推定すればよいとの着想を得た。
そこで、本発明は、伝搬路の変化を把握するべく、パイロットサブキャリア間におけるウェイト変動量を推定することを目的とする。
本発明は、受信信号に含まれるパイロットサブキャリアに基づいて更新されるウェイトの変動量を推定する方法であって、受信した第1のパイロットサブキャリアを用いて更新された第1ウェイトを用いて、受信した第2のパイロットサブキャリアを復調した復調信号を生成するステップと、前記第2のパイロットサブキャリアに対応する参照信号に対する前記復調信号の誤差を、前記第1パイロットサブキャリアと前記第2パイロットサブキャリアとの間におけるウェイト変動量として算出するステップと、を含む。
上記本発明によれば、受信した第2のパイロットサブキャリアを第1ウェイトによって復調した復調信号と、第2のパイロットサブキャリアに対応する参照信号との誤差を、ウェイト変動量として算出することができる。
また、他の観点からみた本発明は、受信信号に含まれるパイロットサブキャリアに基づいて更新されるウェイトの変動量を推定する方法であって、受信した第1のパイロットサブキャリアを用いて更新された第1ウェイトを用いて、受信した第2のパイロットサブキャリアを復調した第1復調信号を生成するステップと、前記第1ウェイトを用いて、受信した第3のパイロットサブキャリアを復調した第2復調信号を生成するステップと、前記第2のパイロットサブキャリアに対応する参照信号に対する前記第1復調信号の第1誤差を算出するステップと、前記第3のパイロットサブキャリアに対応する参照信号に対する前記第2復調信号の第2誤差を算出するステップと、前記第1誤差と前記第2誤差との差を、前記第2パイロットサブキャリアと前記第3パイロットサブキャリアとの間におけるウェイト変動量として算出するステップと、を含むのが好ましい。
上記本発明によれば、第1誤差と第2誤差との差をとるため、第1ウェイトの推定誤差や外部雑音の影響が相殺され、第2パイロットサブキャリアと第3パイロットサブキャリアとの間におけるウェイト変動量を精度よく算出することができる。
前記第2のパイロットサブキャリアは、前記第1のパイロットサブキャリアとの時間間隔が第1の間隔であるとともに、前記パイロットサブキャリアとの周波数間隔が第2の間隔であり、前記第3のパイロットサブキャリアは、前記第1のパイロットサブキャリアと同じ時刻の信号であるとともに、前記第1のパイロットサブキャリアとの周波数間隔が前記第2の間隔であり、前記第2パイロットサブキャリアと前記第3パイロットサブキャリアとの間におけるウェイト変動量を、時間方向のウェイト変動量として算出するのが好ましい。この場合、時間方向のウェイト変動量を精度よく算出することができる。
前記第2のパイロットサブキャリアは、前記第1のパイロットサブキャリアとの時間間隔が第1の間隔であるとともに、前記パイロットサブキャリアとの周波数間隔が第2の間隔であり、前記第3のパイロットサブキャリアは、前記第1のパイロットサブキャリアとの時間間隔が前記第1の間隔であるとともに、前記第1のパイロットサブキャリアと同じ周波数の信号であり、前記第2パイロットサブキャリアと前記第3パイロットサブキャリアとの間におけるウェイト変動量を、周波数方向のウェイト変動量として算出するのが好ましい。この場合、周波数方向のウェイト変動量を精度よく算出することができる。
ウェイト変動量を、パイロットサブキャリアの受信電力の大きさによって正規化するステップを更に備えているのが好ましい。この場合、受信電力の大きさによって正規化されたウェイト変動量が得られる。
ウェイト更新方法に係る本発明は、前記ウェイト変動量推定方法によって得られたウェイト変動量を、ウェイトを求めるために用いることを特徴とする。この場合、精度よくウェイト更新を行うことができる。
ウェイト更新方法は、前記ウェイト変動量推定方法によって得られたウェイト変動量に基づいて、ウェイト更新に用いられるパイロットサブキャリアの順序を制御する順序制御ステップを含むのが好ましい。この場合、ウェイト変動量に応じて、適切な順序でウェイト更新を行うことができる。
ウェイト更新方法は、前記ウェイト変動量推定方法によって得られたウェイト変動量に応じて、ウェイト更新の際に用いるウェイト更新パラメータを調整する更新パラメータ調整ステップを含むのが好ましい。この場合、ウェイト変動量に応じた適切なウェイト更新が行える。
ウェイト更新方法は、複数回のウェイト更新の演算によって得られたウェイト推定値を平滑化した平滑化推定値を求めるウェイト平滑化ステップと、前記ウェイト変動量推定方法によって得られたウェイト変動量に応じて、前記ウェイト平滑化ステップにおける平滑化の際に用いる平滑化パラメータを調整する平滑化パラメータ調整ステップと、を含むのが好ましい。この場合、平滑化されたウェイトが得られるとともに、ウェイト変動量に応じた適切な平滑化が行える。
本発明によれば、パイロットサブキャリア間のウェイト変動量を推定することができる。
OFDMのサブキャリア構造を示す図である。
サブキャリアの周波数−時間2次元配列である。
通信装置のブロック図である。
簡略化した空間フィルタリングモデルを示す図である。
第1実施形態に係るフィルタリング処理部のブロック図である。
ウェイト補間方法の説明図である。
ウェイト変動量計算部のブロック図である。
ウェイト変動量推定の概念図である。
タイル内でのウェイト変動量推定の説明図である。
タイルごとに誤差等を更新する処理の説明図である。
タイル内での誤差を示す説明図である。
順序制御部のブロックズである。
第1更新順序ルールの説明図である。
第2更新順序ルールの説明図である。
第2実施形態に係るフィルタリング処理部のブロック図である。
平滑化順序を示す図である。
第2実施形態におけるパイロット信号、ウェイト推定値、平滑化推定値の関係図である。
第2実施形態における平滑化処理のフローチャートである。
第3実施形態に係るフィルタリング処理部のブロック図である。
第3実施形態における平滑化処理のフローチャートである。
第3実施形態におけるパイロット信号、ウェイト推定値、平滑化推定値の関係図である。
第4実施形態に係るフィルタリング処理部のブロック図である。
第4実施形態における平滑化処理のフローチャートである。
第4実施形態におけるパイロット信号、ウェイト推定値、平滑化推定値の関係図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、通信方式としてWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access, IEEE802.16)を例として説明する。
図1は、WiMAXにおいて採用されているOFDMのサブキャリア配置を示している。OFDMは、周波数多重方式の一種であり、周波数軸上で直交するように多数配置された搬送波(サブキャリア)にQAM変調をかけ、デジタル情報の伝送を行う通信方式である。
OFDMのサブキャリアには、データサブキャリア(Data Sub−Carrier)、パイロットサブキャリア(Pilot Sub−Carrier)、ヌルサブキャリア(Null Sub−Carrier)の3種類がある。
データサブキャリア(データ信号)は、データや制御用メッセージを送信するためのサブキャリアである。パイロットサブキャリアは、受信側及び送信側で既知の信号(パイロット信号)であり、伝達関数推定に用いられたり、ウェイト更新に用いられたりする。
ヌルサブキャリアは、実際には何も送信されないサブキャリアであり、低周波数域側のガードサブバンド(ガードサブキャリア)、高周波数域側のガードサブバンド(ガードサブキャリア)、及びDCサブキャリア(中心周波数サブキャリア)によって構成されている。
図2は、ヌルサブキャリアを除いたデータサブキャリア及びパイロットサブキャリアの2次元配置を示している。なお、図2は、WiMAX Uplink PUSCのサブキャリア配置図である。図2において、横軸は周波数軸であり、縦軸は時間軸である。
図2の横軸のl(1〜L)はサブキャリア番号を示している。サブキャリア番号は、ヌルサブキャリアを除くサブキャリアについて、周波数の小さい順に番号を付したものである。なお、ヌルサブキャリアを含めた全サブキャリアの数を1024とした場合、データサブキャリア及びパイロットサブキャリアの総数Lは、840となる。
図2の縦軸のkは、シンボル番号を示している。シンボル番号は、到来時間の早い順にシンボルに番号を付したものである。
各サブキャリアは、伝搬路を通ることによって振幅と位相が変化する。振幅と位相の変化の仕方は、各サブキャリアによって異なることが多い。サブキャリア間での振幅と位相の変動の仕方は、伝搬環境に依存する。なお、データサブキャリアの振幅と位相の変化は、値が既知のパイロットサブキャリアを用いて補償(空間等化)される。
図2では、シンボル方向(時間軸方向)に3個×周波数軸方向に4個の計12個のサブキャリアによって1つのタイル構造を構成している。タイルは、WiMAX Uplink PUSCにおいて、ユーザ割当の際の最小単位となるものである。
タイルの四隅には、パイロットサブキャリアが配置され、タイル内の他のサブキャリアはデータサブキャリアとされている。
図2に示すように、上記タイルが時間軸方向及び周波数軸方向に規則的に並んでいる。この結果、パイロットサブキャリアは、複数の周波数軸方向位置に存在するとともに、複数の時間軸方向位置に存在する。換言すると、パイロットサブキャリアは、サブキャリア中に(周波数軸方向及び時間軸方向において)分散して配置されているのである。
なお、本発明のサブキャリア配置は、上記のものに限られない。
図3は、本実施形態に係る通信装置の機能ブロックを示している。この通信装置1としては、主に基地局を想定する。この通信装置1は、複数のアンテナ素子11を有し、フィルタリング処理部14によって、空間フィルタリング特性を適応的に制御するアダプティブアレーアンテナシステムを構成している。
通信装置1は、各アンテナ素子11に対応してRF(Radio Frequency)部12及びFFT部13が設けられている。RF部12は、送信側で付加されたガードインターバルの除去やA/D変換などの処理を行う。FFT部では、直列/並列変換や離散フーリエ変換などの処理を行う。
各FFT部13の出力(マルチアンテナ信号)は、フィルタリング処理部14に与えられる。フィルタリング処理部14では、伝搬環境に応じた空間フィルタリング特性を適応的に求めるアダプティブアンテナ処理を行う。
図3には、通信装置1が通信しようとしている移動局(希望局)2以外に、干渉源となる干渉局(移動局)3,4を示した。希望局及び干渉局3,4の総数はM個とする。
希望局2及び干渉局3,4は、それぞれ、並列/直列変換や逆離散フーリエ変換などの処理を行うIFFT部21,31,41と、ガードインターバルの付加やD/A変換などの処理を行うRF部22,32,42と、アンテナ素子23,33,43を備えている。
送信側通信装置2,3,4と受信側通信装置1との間の伝搬路は、フェージング伝搬路となっている。サブキャリアは、フェージング伝搬路を通過すると、その振幅と位相が変化する。変化量は、サブキャリアの位置(時間軸方向位置と周波数軸方向位置)によって変わる。
受信側通信装置1の前記フィルタリング処理部14は、各アンテナ素子11に対応する各FTT部からの出力信号に対して適当なウェイトをかけて合成し、各サブキャリアにおける所望信号を抽出して、出力信号として出力する。
図4は、図3における所望信号、出力信号、受信信号(厳密には、通信装置1のアンテナ素子11に対応するFFT部13からの信号)の関係を示すフィルタリングモデルを示している。
図4において、kはシンボル番号、lはサブキャリア番号を示す。また、Mは所望信号及び干渉信号の数を示す。
雑音信号Z(k,l)は、各アンテナ素子11における雑音を表す複素N×1ベクトルである。
受信信号X(k,l)は、各アンテナ素子11に対応するFFT部からの出力からなる複素N×1ベクトルである。
伝達関数Hm(k,l)(m=1〜M)は、各信号の各サブキャリアが、アンテナ素子数Nのフェージング伝搬路で受ける振幅と位相の変化を並べた複素N×1ベクトルである。
ウェイトW(k,l)は、受信信号の各要素に対して掛ける複素数重みの複素共役を並べたN×1ベクトルである。図4において、上付のHは、複素共役転置を表す。また、以下において、上付のTは転置を表す。
図4の各信号の関係は、式(1)(2)のように表される。
本実施形態の前記フィルタリング処理部14は、干渉信号S2〜SMの影響を受けている受信信号X(k,l)から所望信号S1(k,l)だけを推定するものである。
図5に、本実施形態に係るフィルタリング処理部14の詳細を示している。フィルタリング処理部14は、受信信号X(k,l)を逐次的に保存する第1バッファ(受信信号記憶部;受信パイロット信号記憶部)141を備えている。第1バッファ141に蓄えられたデータサブキャリアX(kd,ld)は、ウェイト乗算部142に与えられる。ウェイト乗算部142は、データサブキャリアX(kd,ld)にウェイトW(kd,ld)を乗じて、合成した出力信号Y(kd,ld)=W(kd,ld)HX(kd,ld)を出力する。この出力信号Y(kd,ld)が、所望信号S1(kd,ld)の推定値である。
所望信号の推定値を精度良く求めるには、ウェイトを精度良く推定することが重要である。ウェイトを推定するため、フィルタリング処理部14は、ウェイト更新部143を有している。
前記第1バッファ141の受信信号(パイロットサブキャリア)X(kp,lp)は、ウェイトW(kp,lp)の更新にも用いられる。このため、第1バッファ141からウェイト更新部143へパイロットサブキャリアX(kp,lp)が与えられる。
なお、第1バッファ141に記憶している受信信号は、ウェイト乗算部142、ウェイト更新部143、及び後述のウェイト変動量計算部170で使われなくなると随時消去される。
第1バッファ141で受信信号を蓄積しておくことで、本実施形態のようにウェイト更新方向を多様化しても容易に対応できる。
ウェイト更新部143では、受信信号に含まれるパイロットサブキャリアを用いた更新処理(ウェイト更新ステップ)により、ウェイトの更新を行い、更新後のウェイトを第2バッファ144へ出力する。なお、更新処理の詳細は後述する。
第2バッファ(更新ウェイト記憶部)144は、パイロットサブキャリアの位置でのウェイトW(kp,lp)を逐次的に保存する。第2バッファ144の更新ウェイトは、後述のウェイト補間部145又はウェイト変動量計算部170において使用されなくなると随時消去される。
ウェイト補間部145は、パイロットサブキャリア位置でのウェイトW(kp,lp)を用いて、データサブキャリア位置でのウェイトW(kd,ld)を補間して、そのウェイトW(kd,ld)をウェイト乗算部142に与える。
図6は、ウェイト補間の一例を示している。図6の例では、タイル単位での線形補間を行う。具体的には、図6(b)に示すタイルのパイロットサブキャリア位置でのウェイトW1,W4,W9,W12に対して、図6(a)に示す演算を行うことにより、データサブキャリア位置でのウェイトW2,W3,W5,W6,W7,W8,W10,W11を算出する。
この演算をすべてのタイルについて行うことで、全データサブキャリア位置でのウェイトを算出することができる。
[ウェイト更新部によるウェイト更新処理(ウェイト更新ステップ)]
本実施形態のウェイト更新部143は、カルマンフィルタによってウェイトを更新するように構成されている。ただし、他のアルゴリズム、例えば、RLSアルゴリズム、LMSアルゴリズム、又はSMIアルゴリズムを用いても良い。
なお、上述の説明では、パイロットサブキャリア位置を示すためにウェイト等を示す記号においてk及びlをkp及びlpと表記して、k及びlの位置がパイロットサブキャリア位置であることを明示していたが、以下では、説明の簡略のため、単に、k,lと表記することがある。
ここで、ウェイト(ウィーナー解W
opt)の更新に伴うウェイトの変動のモデルとして、以下のようなマルコフ過程を考える。
上記において、Q(k,l)は、ウィーナー解(最適なウェイト)の変動量の大きさを表している。また、R(k,l)は、ウィーナー解(最適なウェイト)を用いて送信信号を推定した場合における推定誤差の大きさを表す。
カルマンフィルタを用いると、最適なウェイトであるウィーナー解W
optの推定値W(k,l)は、次のように更新される。
前記ウェイト更新部143は、上記式に従って、受信信号中のパイロットサブキャリアX(k,l)と、当該パイロットサブキャリアに対応する参照信号S(k,l)とを用いるとともに、ウェイト更新パラメータとしてのQ(k,l)及びR(k,l)を用いて、現在のウェイトW(kprev,lprev)を新たなウェイトW(k,l)に更新する。
なお、ウェイト更新部143では、上記式におけるパラメータPの更新値Pnextも算出する。
図5に示すように、カルマンフィルタによるウェイト更新演算式で用いられる値X(k,l),S(k,l),P,Q(k,l),R(k,l)のうち、パイロットサブキャリアX(k,l)は、順序制御部146を介して、第1バッファ141から取得される。また、所望信号の参照信号S(k,l)は、参照信号生成部147によって生成され、ウェイト更新部143に与えられる。ウェイト更新パラメータP(N×N行列)は、第3バッファ(ウェイト更新パラメータ記憶部)148に保存されており、ウェイト更新部143は、当該第3バッファ148からパラメータPを取得する。また、ウェイト更新部143によって更新されたパラメータPnextは、第3バッファ148に更新保存され、次回のウェイト更新時のパラメータPとして用いられる。
なお、前回のウェイト更新に用いられたパイロットサブキャリアがX(kprev,lprev)であるときに、今回のウェイト更新に用いるパイロットサブキャリアとして、どのパイロットサブキャリアX(k,l)を選択するかというウェイト更新順序制御に関しては、後述する。
また、Q(k,l),R(k,l)は、カルマンフィルタにおけるウェイト更新式における更新パラメータであり、ウェイト更新部143は、更新パラメータ調整部180から、必要なQ(k,l),R(k,l)を取得する。
ここで、上記式のアルゴリズムにおいては、Q(k,l)を大きくすれば、ウェイトの変動に対する追従特性は向上する。一方、Q(k,l)を大きくしすぎると、更新の度にウェイトが大きく変化し、ウェイト推定値が収束し難くなる。
そこで、本実施形態では、伝搬路の特性を動的に観測し、ウィーナー解(最適なウェイト)の変動量の大きさQ(k,l)の値を動的に調整する。Q(k,l)の値を動的に調整することで、周波数軸方向及び/又は時間軸方向に対する伝達関数の変動へのウェイト追従特性を適切に調整することができる。さらにウィーナー解(最適なウェイト)を用いて送信信号を推定した場合における推定誤差の大きさR(k,l)も調整することで、適切な推定が行える。
[ウェイト変動量計算部の構成]
最適ウェイトの変動量の計算を行うため、本実施形態のフィルタリング処理部14は、ウェイト変動量計算部170を備えている(図5参照)。
図7は、ウェイト変動量計算部170の詳細を示している。ウェイト変動量計算部170は、ウェイト更新部143で求めたウェイトWを、受信したパイロットサブキャリアに乗じて復調処理を行い、送信信号の推定値(復調値)を求める送信信号推定部171を備えている。
また、ウェイト変動量計算部170は、参照信号に対する送信信号推定値(復調値)の誤差Eを求める誤差計算部172を備えている。この誤差計算部172は、送信信号推定値を送信信号推定値171から取得するとともに、参照信号を参照信号生成部173から取得する。
誤差計算部172によって計算された誤差Eは、誤差更新部174に与えられる。平均誤差更新部73は、誤差計算部172が誤差を算出する度に、それまでの誤差との平均(重み付け平均)Eavを算出する。なお、誤差更新部174が算出した平均誤差Eavは、第4バッファ(平均誤差記憶部)175に保存され、必要に応じて、誤差更新部174から読み取られる。なお、誤差更新部174は、省略してもよい。
誤差更新部174から出力された平均誤差Eavは、変動量推定部176と、誤差Rを算出する誤差R推定部177に与えられる。
変動量推定部176は、平均誤差Eav(又は誤差E)から、誤差計算に用いたパイロット信号の受信電力で正規化等の処理を行って、ウェイト変動量Qを算出する。また、誤差R推定部は、平均誤差Eav(又は誤差E)に基づいて、誤差Rを生成する。
誤差計算に用いたパイロット信号の前記受信電力Pは、受信電力計算部178によって算出される。受信電力計算部179によって計算された受信電力は、受信電力更新部179aに与えられる。受信電力更新部179aは、受信電力計算部178が誤差計算に用いたパイロット信号の前記受信電力Pを算出する度に、それまでの受信電力との平均(重み付け平均)Pavを算出する。
なお、受信電力更新部179aが算出した平均受信電力Pavは、第5バッファ(受信電力記憶部)179bに保存され、必要に応じて、受信電力更新部179aから読み取られる。なお、受信電力更新部179aは、省略してもよい。
平均受信電力Pav(又は受信電力P)は、前述のように、変動量推定部176における正規化処理のために用いられる。
[ウェイト変動量算出の基本的な考え方]
以下、本実施形態におけるウェイト変動量算出の基本的な考え方について、図8(a)(b)に基づいて説明する。なお、ここでは、説明の簡略化のため、パイロット信号の並びは時間軸方向についてだけ考え、周波数方向におけるパイロット信号の並びについては考えないものとする。また、パイロット信号は、時間軸方向に一定の間隔で並んでいるものとする。
図8(a)では、時刻kと時刻(k+p)にパイロット信号が存在する。ここでは、時刻kにおける最適ウェイトWopt(k)と、時刻(k+p)における最適ウェイトWopt(k+p)との間の最適ウェイト変動量(最適ウェイト間の差)を推定することを考える。
最適ウェイトの変動量を推定するため、図8(a)では、時刻kにおける受信信号(パイロット信号)X(k)を用いて更新(推定)されたウェイトW(k)を用いて、時刻(k+p)における受信信号(パイロット信号)X(k+p)を復調し、復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+p)を生成する。
すなわち、図8(a)の場合、図7の送信信号推定部171は、時刻kまでに推定したウェイトW(k)と、受信信号X(k+p)とを用いて、復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+p)を生成する。
そして、時刻(k+p)における参照信号S(k+p)と、復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+p)との誤差Eを求める(誤差計算部172による演算)。Eの演算式は、下記の通りである。
最適ウェイト変動量E=|S(k+p)−W(k)HX(k+p)|2
ここでは、上記誤差Eを、時刻kにおける最適ウェイトWopt(k)と時刻(k+p)における最適ウェイトWopt(k+p)との間の変動量であるとみなす。したがって、ウェイト変動量計算部170からは、ウェイト変動量として前記Eが出力される。
上記式で求めた誤差Eは、厳密には、「最適ウェイトの変動量」のほかに、「時刻kにおけるウェイトW(k)の推定誤差」、及び「外部雑音」が含まれるため、誤差Eは、真の「最適ウェイトの変動量」よりも大きくなる。つまり、上記式では、時刻kまでに推定したウェイトW(k)を最適ウェイトWopt(k)であるとみなしているが、実際には、ウェイトW(k)には、「時刻kにおけるウェイトW(k)の推定誤差」及び「外部雑音」が含まれる。
ただし、「時刻kにおけるウェイトW(k)の推定誤差」、及び「外部雑音」が十分に小さい場合には、問題は少ない。
図8(b)は、前述の「時刻kにおけるウェイトW(k)の推定誤差」及び「外部雑音」の影響を低減する方法を示している。
図8(b)では、時刻kと時刻(k+p)と時刻(k+2p)にパイロット信号が存在する。ここでは、時刻(k+p)における最適ウェイトWopt(k+p)と、時刻(k+2p)における最適ウェイトWopt(k+2p)との間の最適ウェイト変動量(最適ウェイト間の差)を推定することを考える。
最適ウェイトの変動量を推定するため、図8(b)では、時刻kにおける受信信号(パイロット信号)X(k)を用いて更新(推定)されたウェイトW(k)を用いて、時刻(k+p)における受信信号(パイロット信号)X(k+p)を復調し、第1復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+p)を生成する。
また、時刻kにおける受信信号(パイロット信号)X(k)を用いて更新(推定)されたウェイトW(k)を用いて、時刻(k+2p)における受信信号(パイロット信号)X(k+2p)を復調し、第2復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+2p)を生成する。
すなわち、図8(b)の場合、図7の送信信号推定部171は、時刻kまでに推定したウェイトW(k)と受信信号X(k+p)とを用いて第1復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+p)を生成するとともに、時刻kまでに推定したウェイトW(k)と受信信号X(k+2p)とを用いて第2復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+2p)を生成する。
そして、時刻(k+p)における参照信号S(k+p)と、第1復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+p)とから第1誤差E1を求める(誤差計算部172による演算)。
また、時刻(k+2p)における参照信号S(k+2p)と、第2復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+2p)とから第2誤差E2を求める(誤差計算部172による演算)。
E1及びE2の演算式は、下記の通りである。
第1誤差E1=|S(k+p)−W(k)HX(k+p)|2
第2誤差E2=|S(k+2p)−W(k)HX(k+2p)|2
さらに、誤差計算部172は、第1誤差及び第2誤差の差Eを求める。Eの演算式は、下記の通りである。
最適ウェイト変動量E=E2−E1
ここでは、誤差の差Eを、時刻(k+p)における最適ウェイトWopt(k+p)と時刻(k+2p)における最適ウェイトWopt(k+2p)との間の変動量であるとみなす。したがって、ウェイト変動量計算部170からは、ウェイト変動量として前記Eが出力される。
上記のようにして求めたE1,E2には、いずれも「時刻kにおけるウェイトW(k)の推定誤差」と「外部雑音」における影響を含んでいる。したがって、両者E1,E2の差をとることによって、「時刻kにおけるウェイトW(k)の推定誤差」と「外部雑音」を相殺し、最適ウェイトの変動量を精度よく推定することができる。
[ウェイト変動量算出の適用例]
以下、図2に示す実際のサブキャリア配置において、ウェイト変動量の推定を行う例について図9〜図11に基づいて説明する。ここでは、図8(b)に関した説明した方法を適用した例について説明する。
図9は、1つのタイルにおけるサブキャリア配置を示している。1タイルに含まれるパイロット信号は、4つである。ここでは、図9に示すように、4つのパイロット信号を、それぞれ、X(0),X(1),X(2),X(3)というものとする。
ここでは、受信したパイロット信号X(0)を用いてウェイトW(0)が導出されている場合に、当該ウェイトW(0)からみた周波数方向のウェイト変動量と、時間方向のウェイト変動量をそれぞれ推定する。
まず、受信したパイロット信号X(0)を用いて導出されたウェイトW(0)を用いて、受信信号X(1),X(2),X(3)を、この順序で復調する。
すなわち、送信信号推定部171は、W(0)HX(1),W(0)HX(2),W(0)HX(3)をそれぞれ計算する。
そして、誤差計算部172は、復調値W(0)HX(1),W(0)HX(2),W(0)HX(3)と、それらの真値である参照信号S(1),S(2),S(3)との誤差E1,E2,E3を下記のように計算する。
E1=S(1)−W(0)HX(1)
E2=S(2)−W(0)HX(2)
E3=S(3)−W(0)HX(3)
また、受信電力計算部178は、誤差E1,E2,E3を求めるのに用いたパイロット信号X(1),X(2),X(3)の受信電力(の平均値)Pを求める。受信電力Pの演算式は、例えば、下記のとおりである。
P=([X(1)HX(1)+X(2)HX(2)+X(3)HX(3)]/[3Nr])
なお、上記式において、Nrは、受信アンテナの数である。上記式により、アンテナ1本あたりの平均受信電力Pを求めることができる。
さらに、図10に示すように、前述のE1,E2,E3,Pを複数のタイルについて、それぞれ導出する。そして、誤差更新部174及び受信電力更新部179aは、複数のタイルについてのE1,E2,E3,Pの平均値Eav1,Eav2,Eav3,Pavを算出する。図10に示すように、時間方向に並ぶタイルを用いて平均値Eav1,Eav2,Eav3,Pavを更新するには、例えば、下記式に従えばよい。
Eav1(t+1)=α1・E1(t+1)+(1−α1)E1av(t)
Eav2(t+1)=α2・E2(t+1)+(1−α2)E2av(t)
Eav3(t+1)=α3・E3(t+1)+(1−α3)E3av(t)
Pav(t+1) =α4・P(t+1) +(1−α4)Pav(t)
なお、α1,α2,α3,α4は、忘却係数であり、0<α1,α2,α3,α4<1である。
ここで、Eav1,Eav2,Eav3,Pを更新するために用いられるタイルは、図10に示すように時間方向に並ぶものに限られず、周波数方向に並ぶものであってもよく、どのタイルをどの順序で用いるかは、特に限定されない。
以上により、各時点における推定誤差の平均値Eav1,Eav2,Eav3、受信電力の平均値Pavが導出できる(図11参照)。導出されたEav1は、W(0)からみて周波数方向の誤差(ウェイト変動量)を示し、Eav2は時間方向への誤差(ウェイト変動量)を示している。また、Eav3は、時間方向への誤差に周波数方向の誤差を加えた誤差(ウェイト変動量)を示している。
したがって、これらの値から、変動量推定部176は、周波数方向のウェイト変動量Q(1),時間方向のウェイト変動量Q(2)を、下記式に従い推定する。
Q(1)=(Eav3−Eav2)/Pav
Q(2)=(Eav3−Eav1)/Pav
つまり、(Eav3−Eav2)は、時間方向への誤差に周波数方向の誤差を加えた誤差であるEav3から、時間方向への誤差であるEav2を引く処理であり、周波数方向の誤差(ウェイト変動量)が得られる。しかも、(Eav3−Eav2)によって、「ウェイトW(0)の推定誤差」及び「外部雑音」を相殺することができる。
また、(Eav3−Eav1)は、時間方向への誤差に周波数方向の誤差を加えた誤差であるEav3から、周波数方向への誤差であるEav1を引く処理であり、時間方向の誤差(ウェイト変動量)が得られる。しかも、(Eav3−Eav1)によって、「ウェイトW(0)の推定誤差」及び「外部雑音」を相殺することができる。
しかも、(Eav3−Eav2)と(Eav3−Eav1)とを、それぞれPavで割って、正規化することで、誤差の大きさをより正確に表すことができる。つまり、誤差の大きさは、最適ウェイトの変化量と平均受信電力の大きさに比例する。したがって、(Eav3−Eav2)と(Eav3−Eav1)とを、Pavで割ることで、受信電力の大きさにかかわらず、正確に誤差の大きさを表すことができる。
なお、変動量推定部176は、周波数方向のウェイト変動量Q(1),時間方向のウェイト変動量Q(2)を、より簡単に求める場合、下記式で求めてもよい(図8(a)参照)。
Q(1)=Eav1/Pav
Q(2)=Eav2/Pav
誤差R推定部177は、Eav1,Eav2に基づいて、ウィーナー解(最適なウェイト)を用いて送信信号を推定した場合における推定誤差の大きさRを推定する。ここで、誤差Rは、理論上は、外部雑音の大きさに相当するが、本実施形態では、Eav1及び/又はEav2をそのまま誤差Rとして推定する。また、Eav1,Eav2の加重平均を誤差Rとして推定してもよい。
ここで、Eav1,Eav2には、最適ウェイトを適用して送信信号を推定した場合における推定誤差(外部雑音)に加えて、「ウェイトの推定誤差」が含まれるため、理論上のRの値よりも大きくなる。ただし、Rの推定誤差がウェイトの推定誤差に与える影響は、Qの推定誤差がウェイトの推定誤差に与える影響よりも小さいため、Eav1やEav2をそのまま用いても、実用上は差し支えない。なお、Eav1やEav2が実際のRよりも大きいことを考慮して、Eav1やEav2から所定値を減算したものを誤差Rの推定値としてもよい。
上記のようにして導出したQ(1),Q(2),Rは、更新パラメータ調整部180に与えられる。なお、上記のようにして導出したQ(1)は、サブキャリア間隔が3の場合の周波数方向ウェイト変動量を示しているが、図2のサブキャリア配置では、周波数方向のパイロットサブキャリア間隔は、3以外に、1,4,5,7,8,・・などがある。また、上記Q(2)についても、サブキャリア間隔が2の場合の時間方向ウェイト変動量を示しているが、図2のサブキャリア配置では、時間方向のパイロットサブキャリア間隔は、2以外に、1,3,4,5,6,・・・などがある。
ウェイト変動量計算部17では、必要に応じて、任意のサブキャリア間隔のパイロットサブキャリアを用いることで、任意のサブキャリア間隔についてのウェイト変動量を求め、それらのウェイト変動量が更新パラメータ調整部180に与えられる。また、Rについても、任意のサブキャリア間隔についての誤差Rが更新パラメータ調整部180に与えられる。
更新パラメータ調整部180は、周波数方向及び時間方向それぞれについて、サブキャリア間隔ごとのウェイト変動量を保持する。そして、更新パラメータ調整部180は、保持するウェイト変動量の中から、ウェイト更新部143におけるウェイト更新に必要なウェイト変動量Q及び誤差Rを与える。
つまり、更新パラメータ調整部180は、前回のウェイト更新値W(kprev,lprev)を推定するために用いたパイロットサブキャリアX(kprev,lprev)と今回のウェイト更新に用いられるパイロットサブキャリアX(k,l)との間のサブキャリア間隔(k−kprev)及び/又は(l−lprev)に応じて、当該サブキャリア間隔におけるウェイト変動量Q及び誤差Rを、ウェイト更新部143に与える。
これにより、ウェイト更新部143によるウェイト更新処理では、伝搬環境に応じて最適ウェイトが変動しても、当該変動に追従させるための適切な更新パラメータを用いることができる。したがって、ウェイト更新が適切に行える。
なお、前回のウェイト更新値W(kprev,lprev)を推定するために用いたパイロットサブキャリアX(kprev,lprev)と今回のウェイト更新に用いられるパイロットサブキャリアX(k,l)との位置関係は、順序制御部146による順序制御に依存して決まる。
[ウェイト更新順序制御]
前述のように、ウェイト更新部143は、順序制御部146を介して、第1バッファ141から受信信号(パイロットサブキャリア)X(kp,lp)を取得する。
順序制御部146は、第1バッファ141に保存されている受信信号X(k,l)の中から、パイロットサブキャリアX(kp,lp)を分離して抽出する。
そして、順序制御部146は、ウェイト更新部143がウェイト更新に用いるパイロットサブキャリアの順序を制御する。具体的には、順序制御部146は、分離したパイロットサブキャリアを、ウェイト更新に用いる順番に並べ替える。そして、順序制御部146は、並び替えたパイロットサブキャリアを、並び替えた順番で、ウェイト更新部143に与える。
図12は、順序制御部146の詳細を示している。順序制御部146は、更新順序決定部146aと、パイロットサブキャリアの並び替えルール(更新順序ルール)を記憶した更新順序ルール記憶部146bとを有している。この記憶部146bには、複数の更新順序ルール(ここでは2つ)が記憶されている。前記更新順序決定部146aは、記憶部146bにある更新順序ルールのうち、どのルールを用いるかを決定する。
図13及び図14は、記憶部146にある更新順序ルールの例を示している。
[第1更新順序ルール]
図13に示す第1の順序ルールでは、まず、図13のD1方向への更新を行う。すなわち、同一シンボル(同一時間k=1)において周波数軸方向に分散された複数のパイロットサブキャリアX(1,1)〜X(1,L)を対象として、周波数の小さいパイロットサブキャリアから順番に用いてウェイト更新を行う。このD1方向(周波数軸方向)の更新制御は、複数回の周波数軸方向更新制御の組合せとなっている。
ここでの周波数軸方向更新制御は、例えば、前回のウェイトの更新に用いたパイロットサブキャリアがX(1,1)であるときに、X(1,1)の次にウェイト更新に用いるパイロットサブキャリアとしてX(1,4)を選択する場合のように、前回のウェイトの更新に用いたパイロットサブキャリアX(1,1)とは時間軸方向では同じ位置であって周波数軸方向に異なる位置にあるパイロットサブキャリアX(1,4)を、ウェイトの更新に用いることをいう。
D1方向の更新制御を行って、最大のサブキャリア番号Lを持つパイロットサブキャリアX(1,L)まできたら、次に、図13のD2方向への更新を行う。すなわち、X(1,L)の位置から時間軸方向へ移動し、時間軸方向にみて次にあるパイロットサブキャリアX(3,L)をウェイト更新に用いる。このD2方向(時間軸方向)の更新制御は、1回の時間軸方向更新制御でよい。
ここでの時間軸方向更新制御は、例えば、前回のウェイトの更新に用いたパイロットサブキャリアがX(1,L)であるときに、X(1,L)の次にウェイト更新に用いるパイロットサブキャリアとしてX(3,L)を選択する場合のように、前回のウェイトの更新に用いたパイロットサブキャリアX(1,L)とは周波数軸方向時では同じ位置であって時間軸方向に異なる位置にあるパイロットサブキャリアX(1,4)を、ウェイトの更新に用いることをいう。
D2方向の更新制御を行った後は、図13のD3方向への更新を行う。すなわち、同一シンボル(同一時間)における周波数の大きいパイロットサブキャリアから順に、ウェイト更新に用いる。換言すると、時間軸方向の負方向に更新制御が行われる。このD3方向の更新制御も、複数回の(負方向)の周波数軸方向更新制御の組合せとなっている。
D3方向の更新制御を行って、最小のサブキャリア番号1を持つパイロットサブキャリアX(3,1)まできたら、図13のD4方向への更新を行う。すなわち、X(3,1)の位置から時間軸方向へ移動し、時間軸方向にみて次にあるパイロットサブキャリアX(4,1)をウェイト更新に用いる。このD4方向の更新制御は、1回の時間軸方向制御でよい。なお、D4方向の更新制御と、D2方向の更新制御とでは、更新に用いられるパイロットサブキャリアの時間間隔が異なる。
D4方向の更新制御後は、再び、D1方向の更新制御を行い、上記処理を繰り返す。
図13の上記第1更新順序ルールでは、周波数軸方向更新制御と時間軸方向更新制御を組み合わせたものとなっている。ただし、周波数軸方向更新制御によるウェイト更新の方が、時間軸方向更新制御によるウェイト更新よりも回数が多くなっている。
よって、第1更新順序ルールは、周波数軸方向を優先した更新制御ルールである。
したがって、各パイロットサブキャリア間の最適ウェイト変動量を考えたときに、周波数軸方向のサブキャリア間でのウェイト変動量Q(1)が、時間軸方向のサブキャリア間でのウェイト変動量Q(2)よりも小さい場合には、周波数軸方向を優先した第1更新順序ルールを用いると、適切なウェイトを早期に得やすい。
また、上記第1更新順序ルールによれば、パイロットサブキャリアが存在するシンボルについてみると、1シンボルあたりのウェイト更新数が、420回となる。時間軸方向のみのウェイト更新であれば、1シンボル1回しか行われないが、上記ルールでは、飛躍的に更新回数が増加する。この結果、適切なウェイトを高速で得ることができる。
高速で適切なウェイトが得られることは、モバイルWiMAX(IEEE 802.16e)のように、移動体との間で伝送を行う方式において、特に有用である。すなわち、WiMAXでは、1基本フレームは、アップリンクサブフレームとダウンリンクサブフレームを含み、基地局は、アップリンクサブフレームを、5msecごとに受け取る。ところが、移動局の高速移動時には、サブフレーム間でウェイト変動量が非常に大きくなる。しかも、一つのサブフレームは、15シンボルで構成されている。
したがって、時間軸方向のみでウェイト更新を行うと、1つのサブフレームあたり10回しかウェイト更新が行えない。この結果、移動局の高速移動(例えば、120km/h)時には、更新アルゴリズムによっては、適切なウェイトを形成する前に、サブフレームが切り替わってしまう。
そして、サブフレーム間のウェイト変動量は非常に大きいため、サブフレームが切り替わると再度、ウェイト形成が必要となる。この結果、極端な場合には、永久に適切なウェイトが得られない場合が生じる。
これに対し、本実施形態の更新順序ルールによれば、1シンボル当たりの更新回数が多くなるため、高速で適切なウェイトが得られ、一つのサブフレーム内でのウェイト形成が可能となる。なお、この点については、第2更新順序ルールについてもあてはまる。
[第2更新順序ルール]
図14に示す第2の更新順序ルールでは、まず、図14のD11方向への更新を行う。すなわち、同一サブキャリア(同一サブキャリア番号=1)において、時間軸方向に分散して複数存在するパイロットサブキャリアX(1,1)〜X(k,1)を対象として、シンボル番号の小さいパイロットサブキャリアから順番に用いてウェイト更新を行う。このD11方向の更新制御は、複数回の時間軸方向更新制御の組合せとなっている。
D11方向への更新制御を行って、所定のシンボル番号=kのパイロットサブキャリア(k,1)まできたら、次に周波数方向D12への更新を行う。すなわち、X(k,1)の位置から周波数軸方向へ移動し、周波数軸方向にみて次にあるパイロットサブキャリアX(k,4)をウェイト更新に用いる。このD12方向の更新制御は、1回の周波数軸方向更新制御でよい。
D12方向への更新制御の後は、図14のD13方向への更新を行う。すなわち、同一サブキャリア(同一サブキャリア番号=4)において、時間軸方向に複数存在するパイロットサブキャリアX(k,4)〜X(1,4)を対象として、シンボル番号の大きいパイロットサブキャリアから順番に用いてウェイト更新を行う。このD13方向の更新制御も、複数回の(負方向)の時間軸方向更新制御の組合せとなっている。
D13方向の更新制御を行って、最小のシンボル番号1を持つパイロットサブキャリアX(1,4)まできたら、図14のD4方向への更新を行う。すなわち、X(1,4)の位置から時間軸方向へ移動し、周波数軸方向にみて次にあるパイロットサブキャリアX(1,5)をウェイト更新に用いる(第2周波数軸方向更新制御D4)。このD14方向の更新制御は、1回の周波数軸方向更新制御でよい。
D14方向の更新制御後は、D11方向の更新制御を行い、上記処理を繰り返す。なお、D14方向への更新が行えなくなったら、シンボル番号kよりも時間的に後にある次のk個のシンボルを用いて同様に更新を行えばよい。
上記第2更新順序ルールにおいても、周波数軸方向更新制御と時間軸方向更新制御を組み合わせたものとなっている。ただし、時間軸方向更新制御によるウェイト更新の方が、周波数軸方向更新制御によるウェイト更新よりも回数が多くなっている。
よって、第2更新順序ルールは、時間軸方向を優先した更新制御ルールである。
したがって、各パイロットサブキャリア間のウェイト変動量を考えたときに、時間軸方向のサブキャリア間でのウェイト変動量Q(2)が、周波数軸方向でのウェイト変動量Q(1)よりも小さい場合には、前記第2更新順序ルールを用いると適切なウェイトを早期に得やすい。
なお、周波数軸方向又は時間軸方向のいずれかを優先して更新制御を行う場合、ウェイト変動量の小さい方向への更新回数を多くすることに替えて、例えば、ウェイト変動量の小さい方向への更新を出来るだけ先に行うようにして相互相関の大きい方向を優先してもよい。
[ウェイト変動量と伝搬環境の関係]
パイロットサブキャリア間のウェイト変動量は、周波数軸方向の方が大きい場合と、時間軸方向の方が大きい場合がある。ここで、ウェイト変動量の大きさは、伝搬環境に依存する。
例えば、基地局の通信相手である移動局が高速移動している場合には、時々刻々と伝搬環境が変化するため、時間軸方向に異なる位置にあるパイロットサブキャリア間では、伝達関数の変動が大きくなり、相互相関が低下し、最適ウェイトの変動量が大きくなる。
一方、時間軸方向には同じ位置で周波数軸方向に異なる位置にあるパイロットサブキャリア間では、相対的に伝達関数の相互相関が大きくなり、最適ウェイトの変動量が小さくなる。
また、移動局が低速又は停止している場合には、時間が推移しても伝搬環境にはほとんど変化がないため、時間軸方向に異なる位置にあるパイロットサブキャリア間における伝達関数の相互相関が相対的に大きくなり、最適ウェイトの変動量は小さい。
なお、相互相関は、移動局の移動速度の他、伝搬環境の遅延分散によっても影響を受ける。
[ウェイト変動量とウェイト更新方向の関係]
移動局が高速移動している場合のように、周波数軸方向のウェイト変動量Q(1)が、時間軸方向のウェイト変動量Q(2)よりも小さくなりやすい場合には、図13に示す第1更新順序ルールのように周波数軸方向の更新制御を優先してする方が、ウェイト計算値が収束し易く、高速で適切なウェイトを算出することができる。
一方、移動局が低速又は停止している場合のように、時間軸方向のウェイト変動量Q(2)が小さい場合には、図14に示す第2更新順序ルールのように時間軸方向にウェイト更新を行った方が、ウェイト計算値が収束し易く、高速で適切なウェイトを算出することができる。
[更新順序決定部による更新順序決定]
上述のウェイト変動量Q(1),Q(2)と伝搬環境の関係を利用し、前記更新順序決定部146aは、ウェイト変動量計算部170によって求められた周波数軸方向のウェイト変動量Q(1)と時間軸方向のウェイト変動量Q(2)とを比較して、どちらのウェイト変動量が小さいか判定する。更新順序決定部146aは、この判定結果に基づき、更新順序ルールを選択する。
例えば、時間軸方向のウェイト変動量Q(2)が小さい判定された場合、時間軸方向を優先した第2更新順序ルールが選択される。また、周波数軸方向のウェイト変動量Q(1)の方が小さいと判定された場合、周波数軸方向を優先した第1更新順序ルールが選択される。
そして、更新順序決定部146aは、選択された更新順序ルールに従って、第1バッファから取得したパイロットサブキャリアX(k,l)を並び替え、並び替えた順で、パイロットサブキャリアをウェイト更新部143へ与える。
なお、更新順序ルールは、上記のものに限らず、時間軸方向更新制御と周波数軸方向更新制御を組み合わせた様々な変形が可能である。また、時間軸方向及び周波数軸方向に同時に移動する斜め方向更新制御を含んでいてもよい。この場合、より自由度が高くなる。
また、1回の更新制御における移動幅(パイロットサブキャリア間の時間間隔又は周波数間隔)も自由に設定できる。
また、更新順序決定部146aは、予め決められた更新順序ルールを選択することで、更新順序を決定するのではなく、動的に推定されるウェイト変動量から把握される伝搬環境に応じて適切な更新順序を動的に生成してもよい。
さらに、上記例では、一つのパイロットサブキャリアを1度しか更新に用いていないが、複数回更新に用いても良い。また、更新に用いないパイロットサブキャリアが存在してもよい。
[第2実施形態:ウェイト推定値の平滑化]
図15は、フィルタリング処理部14の第2実施形態を示している。なお、第2実施形態において特に説明しない点については、図5のフィルタリング処理部14と同様である。
図15のフィルタリング処理部14では、図5のフィルタリング処理部14と比べて、ウェイト平滑化部149が追加されている。また、ウェイト平滑化部149の追加に伴い、第6バッファ150及び平滑化パラメータ調整部151が追加されている。また、第2バッファ(ウェイト推定値記憶部)144の機能が、変更されている。
ここでの第2バッファ(ウェイト推定値記憶部)144は、パイロットサブキャリアの位置でのウェイト推定値を複数個保存する。第2バッファ144のウェイト推定値は、後述のウェイト平滑化部149において使用されなくなると随時消去される。
ウェイト平滑化部149は、第2バッファ144に保存されている複数のウェイト推定値それぞれの平滑化(smoothing)処理を行って、ウェイトの平滑化推定値を算出する(平滑化ステップ)。ウェイト平滑化部149によって算出されたウェイト平滑化推定値は、第6バッファ150へ出力される。なお、平滑化処理の詳細は後述する。
第6バッファ(ウェイト平滑化推定値記憶部)150は、複数の平滑化推定値を保存することができる。第6バッファ150の平滑化推定値は、後述のウェイト補間部145において使用されなくなると随時消去される。なお、ウェイト補間部145は、ウェイトの平滑化推定値を用いて、データサブキャリア位置でのウェイトW(k,l)を補間する。
[ウェイト推定値の平滑化処理(平滑化ステップ)]
さて、図5に関して説明したように、ウェイト更新部143におけるウェイト更新処理の結果得られたウェイト推定値は、所定のウェイト更新回数M分、第2バッファ144に蓄積される。すなわち、第2バッファには、過去M回のウェイト更新で得られたM個のウェイト推定値が保存可能である。
ここでは、更新順序ルールとして図12の第1更新順序ルールを用いたものとして説明する。また、図12のシンボル番号k=1〜6,サブキャリア番号l=1〜Lの範囲を、平滑化の対象領域の一つであるとして説明する。図16は、図12に示す第1更新順序ルールに対応する一つの平滑化領域を示している。
また、図17は、一つの平滑化対象領域における一連のM回のウェイト更新で得られたM個のウェイト推定値W(k,l)を、ウェイト更新に用いたパイロットサブキャリアX(k,l)及びウェイト推定値の平滑化推定値WS(k,l)とともに、ウェイト更新順に並べたものを示している。なお、図17中、mは、ウェイト更新回数を示している。
図17からもわかるように、M個のウェイト推定値W(k,l)のうち、最も多くの情報(M個のパイロットサブキャリア)が反映されているのは、最後(m=M番目)のウェイト更新で得られたW(6,1)である。一方、平滑化対象領域における最初のウェイト更新で得られたW(1,1)は、最も少ない情報(1個のパイロットサブキャリア)しか反映されていない。一般には、多くの情報(パイロットサブキャリア)を用いて推定されたウェイトの方が、より精度が高くなる。
そこで、ここでの平滑化処理では、最も多くの情報が反映されているW(kM、lM)=W(6,1)を、平滑化対象領域における他のウェイトW(km,lm)(m=1〜M−1)に反映させる。
具体的には、ここでのウェイト平滑化部149が行う平滑化処理は、図18に示すとおりである。
まず、平滑化部149は、ウェイト推定値W(kM、lM)を、第2バッファ144から第6バッファ150へ送る(ステップS1)。ウェイト推定値W(kM、lM)は、最も多くの情報が反映されており、更に平滑化を行う必要がないので、平滑化推定値WS(kM、lM)=ウェイト推定値W(kM、lM)とする。なお、ステップS1の処理も、必要であれば、後述のステップS5と同様に、平滑化演算処理というものとする。
続いて、ウェイト平滑化部149は、カウンタm=M−1とする(ステップS2)。そして、ウェイト平滑化部149は、第2バッファ144からウェイト推定値W(km,lm)を取得するとともに(ステップS3)、第6バッファ150から先に得た平滑化推定値WS(km+1、lm+1)を取得する(ステップS4)。なお、ウェイト平滑化部149は、平滑化パラメータβを平滑化パラメータ調整部151から取得する。
そして、ウェイト平滑化部149は、ステップS5の演算式に従った平滑化演算処理を行う。ステップ5の平滑化演算処理ではウェイト更新部143で得られたウェイト推定値W(km,lm)と、当該ウェイト推定値W(km,lm)を求めた後(直後)のウェイト更新で得られたウェイト推定値W(km+1,lm+1)についての平滑化推定値WS(km+1,lm+1)とを合成(パラメータ(重み係数)βによる重み付き合成)し、ウェイト推定値W(km,lm)の平滑化推定値WS(km,lm)を得る。
ここで、ウェイト推定値W(km,lm)を「ウェイト先推定値」といい、ウェイト推定値W(km+1,lm+1)を「ウェイト後推定値」というものとする。
ウェイト先推定値W(km,lm)とウェイト後推定値W(km+1,lm+1)とを比較すると、ウェイト後推定値W(km+1,lm+1)は、ウェイト先推定値W(km,lm)よりも後(直後)のウェイト更新処理によって得られた値であるから、より多くの情報が反映されている(図17参照)。
また、いずれの平滑化推定値も、平滑化領域内での最後のウェイト更新によって得られたウェイト推定値W(kM、lM)の情報を含んでいる。
したがって、上記合成によって得られた平滑化推定値WS(km,lm)は、平滑化前のウェイト推定値W(km,lm)よりも多くの情報が反映されたものとなり、精度が良いものとなる。
そして、ウェイト平滑化部149は、算出された平滑化推定値WS(km,lm)を第6バッファ150へと送る(ステップS6)。
その後、ウェイト平滑化部149は、上記平滑化演算の繰り返しの終了判定として、m=1か否かを判定する(ステップS7)。m=1でなければ、mをデクリメントし、再び、ステップS3〜S6の処理を行う。また、m=1であれば、平滑化処理を終了する。
以上の平滑化処理により、平滑化推定値WS(km,lm)が、m=M,M−1,・・・2,1の順番で得られる。つまり、ウェイト更新と逆の順番で平滑化推定値が得られる。なお、図16には、平滑化処理の順番D1−S,D2−S,D3−S,D4−Sを点線の矢印で示した。
平滑化処理を行うことにより、比較的に初期のウェイト更新で得られるウェイト(未収束のウェイト)についても、多くのパイロット信号の情報を反映させた良好なウェイトを得ることができる。
具体的には、例えば、ウェイト推定値W(1,1)は、1個のパイロット信号に基づいて得られたものであり、通常、収束していない推定値であるが、平滑化推定値WS(1,1)には、M個のパイロット信号の情報が反映されている。また、他の平滑化推定値WS(km,lm)についても同様である。
その結果、それぞれのウェイトの精度が向上するほか、平滑化推定値を用いてウェイト補間が行われるため、信号推定も全体的に良好となる。
なお、上記の例では、ウェイト更新と逆の順番で平滑化演算を行ったが、M個のウェイト推定値をどのような順番で平滑化演算の対象とするかは、上記の例に限られない。例えば、m=M,1,2,・・・,M−2,M−1の順番であってもよい。つまり、後のウェイト更新で得られたウェイト推定値を、前のウェイト更新で得られたウェイト推定値に反映できれば、どのような順番であってもよい。つまり、ウェイト更新順と無関係に平滑化演算の順番を決定してもよい。
なお、平滑化処理は、平滑化対象領域ごとに行われ、他の平滑化対象領域についても同様に行われる。また、時間軸−周波数軸のサブキャリア2次元配置をどのようにして、複数の平滑化対象領域に区切るかは、自由である。
ただし、好ましくは、一つの平滑化対象領域内での伝搬係数の変動ができるだけ少ないように設定するのがよい。例えば、OFDMAにおける複数のアップリンクサブフレームに跨って一つの平滑化対象領域を構成したり、OFDMAにおける複数のダウンリンクサブフレームに跨って一つの平滑化対象領域を構成したりするのは避けた方が好ましい。複数のサブフレーム間には、実際には、時間間隔があるため、伝搬係数の変動が大きくなる可能性があるからである。
また、平滑化対象領域は、好ましくは、ユーザ割当の最小単位とするのが好ましい。より具体的には、OFDMAのアップリンクPUSCの場合、ユーザ割当の最小単位であるタイル一つを一つの平滑化対象領域とし、OFDMAのアップリンクPUSCの場合、ユーザ割当の最小単位であるクラスタ一つを一つの平滑化対象領域とするのが好ましい。
OFDMAのように、一つのサブフレームが複数のユーザに割り当てられる通信方式の場合、一つのサブフレーム内であっても、ユーザが切り替われば、伝搬係数は変化する。したがって、ユーザ割当最小単位を平滑化対象領域としておくことで、伝搬係数の変動が少ない領域で平滑化を行うことができる。
さて、図18のステップ5の演算式から明らかなように、平滑化演算によって、後のウェイト更新によるウェイト後推定値の情報(平滑化推定値WS(km+1,lm+1))をどの程度、ウェイト先推定値W(km,lm)の平滑化推定値WS(km,lm)に反映されるかは、平滑化パラメータβの値次第である。
前述のウェイト更新パラメータQ,Rと同様に、βの値を調整することによって、周波数軸方向、時間軸方向に対するウェイト変動への追従特性を調整することができる。
[平滑化パラメータβの調整]
パイロットサブキャリアX(km,lm)X(km+1,lm+1)間で、最適ウェイトの変動量が小さい場合、ウェイト後推定値の平滑化推定値WS(km+1,lm+1)の情報をより多く利用すべきであるから、平滑化パラメータβを大きくした方が、ウェイト先推定値の平滑化推定値の推定精度は向上する。
一方、パイロットサブキャリアX(km,lm)X(km+1,lm+1)間で、最適ウェイトの変動量が大きい場合、ウェイト後推定値の平滑化推定値WS(km+1,lm+1)の情報をあまり利用しない方が、ウェイト変動への追従特性が向上する。よって、この場合、平滑化パラメータβを小さくした方が、ウェイト先推定値の平滑化推定値の推定精度は向上する。
そこで、平滑化パラメータ調整部151では、更新パラメータ調整部180と同様に、ウェイト変動量計算部170で求めたウェイト変動量Qに応じて、平滑化パラメータβを調整する。
具体的には、平滑化パラメータβは、β=f2(Q)の演算によって調整される。Qは、パイロットサブキャリアX(km,lm)X(km+1,lm+1)間における最適ウェイト変動量である。また、f2は、相互相関から平滑化パラメータを求めるための関数であり、ウェイト変動量が小さければ平滑化パラメータβを大きくし、ウェイト変動量が大きければ平滑化パラメータβを小さくする関数として構成されている。
上記のような平滑化パラメータ調整を行うことで、平滑化方向(図16参照)及び/又は伝搬環境に応じて、適切なウェイト平滑化が行え、ウェイト推定精度を向上させることができる。
[第3実施形態:ウェイト推定値の平滑化]
図19〜図21は、第3実施形態に係るフィルタリング処理部14を示している。なお、第3実施形態において特定に説明しない点については、既述のものと同様である。
第3実施形態のウェイト平滑化部149は、ウェイト更新143の更新順序とは逆の順序により平滑化のための更新演算を行う(図16の点線矢印参照)。
具体的には、図20に示す手順により平滑化処理が行われる。まず、平滑化部149は、ウェイト推定値W(kM、lM)を、第2バッファ144から第6バッファ150へ送る(ステップS11)。つまり、ウェイト推定値W(kM、lM)が、そのまま平滑化推定値WS(kM、lM)となる。
続いて、ウェイト平滑化部149は、カウンタm=M−1とする(ステップS12)。そして、ウェイト平滑化部149は、第1バッファ141からパイロットサブキャリアX(km,lm)を取得するとともに(ステップS13)、第6バッファ150から先に得た平滑化推定値WS(km+1、lm+1)を取得する(ステップS14)。なお、ウェイト平滑化部149は、参照信号S(km,lm)を取得する。また、ウェイト平滑化部149は、ウェイト平滑化部149でのウェイト更新のためのパラメータPを第7バッファ155から、パラメータαを平滑化パラメータ調整部(更新パラメータ調整部)156から取得する。
パラメータαは、ウェイト変動量Q(1)Q(2)に応じて、平滑化パラメータ調整部156によって、適宜調整される。
そして、ウェイト平滑化部149は、下記式に示す平滑化演算式に従った平滑化演算処理(更新演算処理)を行う(ステップS15)。下記平滑化演算処理は、ウェイト更新におけるRLSアルゴリズムと同様のものである。
ステップ15の平滑化演算処理では、図21にも示すように、直前に求めた平滑化推定値WS(km+1,lm+1)を、パイロットサブキャリアX(km,lm)に基づいて、上記式の演算によってウェイト更新することによって得られた推定値を、ウェイト推定値W(km,lm)の平滑化推定値WS(km,lm)として得る。
さて、ここでも、ウェイト推定値W(km,lm)を「ウェイト先推定値」といい、ウェイト推定値W(km+1,lm+1)を「ウェイト後推定値」というものとする。
ウェイト先推定値W(km,lm)と、ウェイト後推定値W(km+1,lm+1)の平滑化推定値WS(km+1,lm+1)とを比較すると、平滑化推定値WS(km+1,lm+1)は、パイロットサブキャリア(後パイロット信号)X(km+1,lm+1)に基づいて演算されたウェイト先推定値W(km+1,lm+1)を平滑化したものであるから、多くの情報が反映されたものである(図21参照)。
したがって、上記のように、ウェイト後推定値W(km+1,lm+1)の平滑化推定値WS(km+1,lm+1)を、パイロットサブキャリア(先パイロット信号)X(km,lm)に基づいて、ウェイト更新することで、元のウェイト推定値W(km,lm)よりも精度の良い平滑化推定値WS(km,lm)が得られる。
そして、ウェイト平滑化部149は、算出された平滑化推定値WS(km,lm)を第6バッファ150へと送る(ステップS16)。
その後、ウェイト平滑化部149は、上記平滑化演算の繰り返しの終了判定として、m=1か否かを判定する(ステップS17)。m=1でなければ、mをデクリメントし、再び、ステップS13〜S16の処理を行う。また、m=1であれば、平滑化処理を終了する。
以上の平滑化処理により、平滑化推定値WS(km,lm)が、m=M,M−1,・・・2,1の順番で得られる(図16参照)。
図19の平滑化パラメータ調整部156では、前述のように、平滑化パラメータ(忘却係数)αが適宜調整される。平滑化パラメータαは、α=f1(Q)によって求められる。なお、ここでのQは、パイロットサブキャリアX(km,lm)X(km+1,lm+1)間におけるウェイト変動量の大きさである。
なお、第3実施形態のウェイト平滑化部149の更新アルゴリズムとしては、RLSアルゴリズムが採用されているが、他のアルゴリズム、例えば、LMSアルゴリズムやSMIアルゴリズムを用いても良い。
また、平滑化に用いるパイロット信号の順番も、上記のものに限らず、自由である。
[第4実施形態:ウェイト推定値の平滑化]
図22〜図24は、第4実施形態に係るフィルタリング処理部14を示している。なお、第4実施形態において特定に説明しない点については、既述のものと同様である。
第4実施形態では、主に、ウェイト平滑化部149が、既述の実施形態のものと異なる。
なお、図22に示す第3バッファ(更新パラメータ記憶部)148は、ウェイト更新部から送られてくるパラメータP(km,lm)を保存する。第3バッファ148は、P(km,lm)がウェイト更新部143及びウェイト平滑化部149で使用されなくなると消去する。また、図22に示す第7バッファ(平滑化パラメータ記憶部)162は、ウェイト平滑化部149から送られてくるパラメータλを保存する。ここでは、λの初期値は0とする。
第4実施形態のウェイト平滑化部149は、平滑化アルゴリズムとして、固定区間スムーザ(fixed-interval smoother)を利用する。なお、ここでは、固定区間スムーザとしてFraserのアルゴリズムを用いる。
具体的には、図23に示す手順により平滑化処理が行われる。まず、平滑化部149は、ウェイト推定値W(kM、lM)を、第2バッファ144から第6バッファ150へ送る(ステップS21)。つまり、ウェイト推定値W(kM、lM)が、そのまま平滑化推定値WS(kM、lM)となる。
続いて、ウェイト平滑化部149は、カウンタm=M−1とする(ステップS22)。そして、ウェイト平滑化部149は、第1バッファ141からパイロットサブキャリアX(km+1,lm+1)を取得するとともに(ステップS23)、第2バッファ144から平滑化対象のウェイト推定値WS(km、lm)を取得する(ステップS24)。
なお、ウェイト平滑化部149は、参照信号S(km+1,lm+1)を参照信号生成部160から取得し、ウェイト更新演算の際に求めたパラメータP(km、lm)を第3バッファ148から取得し、λm+1を第7バッファ162から取得する。
そして、ウェイト平滑化部149は、下記式に示す平滑化演算式に従った平滑化演算処理を行う(ステップS25)。
ステップ25の平滑化演算処理では、図24にも示すように、ウェイト更新部143にて求めたウェイト推定値W(km,lm)を、Fraserのアルゴリズムで平滑化して、平滑化推定値WS(km,lm)を求めている。
さて、ここでは、ウェイト推定値W(km,lm)を「ウェイト先推定値」といい、ウェイト推定値W(km+1,lm+1)を「ウェイト後推定値」というものとする。また、ウェイト先推定値W(km,lm)を求めるために用いたパイロット信号X(km,lm)を先パイロット信号といい、ウェイト後推定値W(km+1,lm+1)を求めるために用いたパイロット信号X(km+1,lm+1)というものとする。
上記演算式では、後パイロット信号X(km+1,lm+1)の情報が反映されるように、ウェイト先推定値W(km,lm)の平滑化を行う。したがって、ウェイト先推定値W(km,lm)の平滑化推定値WS(km,lm)は、後パイロット信号X(km+1,lm+1)の情報が反映されたものとなる(図24参照)。
なお、平滑化を行う際の平滑化パラメータであるQ(km+1,lm+1)は、パイロットサブキャリアX(km,lm)X(km+1,lm+1)間のウェイト変動量であり、平滑化パラメータ調整部161によって調整される。
そして、ウェイト平滑化部149は、算出された平滑化推定値WS(km,lm)を第6バッファ150へと送る(ステップS26)。なお、ウェイト平滑化部149は、更新されたλmを第7バッファ162へ送り、第7バッファ162は、次の平滑化演算処理に用いるためにλmを保存する。
その後、ウェイト平滑化部149は、上記平滑化演算の繰り返しの終了判定として、m=1か否かを判定する(ステップS27)。m=1でなければ、mをデクリメントし、再び、ステップS23〜S26の処理を行う。また、m=1であれば、平滑化処理を終了する。
以上の平滑化処理により、平滑化推定値WS(km,lm)が、m=M,M−1,・・・2,1の順番で得られる(図16参照)。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図を逸脱しないかぎり、様々な変形が可能である。
1:通信装置(基地局)、2:希望局、11:アンテナ素子、14:フィルタリング処理部、141:第1バッファ(受信信号記憶部)、142:ウェイト乗算部、143:ウェイト更新部、144:第2バッファ(ウェイト推定値記憶部)、145:ウェイト補間部、146:順序制御部、146a:更新順序決定部、146b:更新順序ルール記憶部、147:参照信号生成部、148:第3バッファ(ウェイト更新パラメータ記憶部)、149:ウェイト平滑化部、150:第6バッファ(ウェイト平滑化推定値記憶部)、151:平滑化パラメータ調整部、153:更新パラメータ調整部、154:参照信号生成部、155:第7バッファ(平滑化パラメータ記憶部)、156:平滑化(更新)パラメータ調整部、160:参照信号生成部、161:平滑化パラメータ調整部、162:第7バッファ(λ記憶部)、170:ウェイト変動量計算部、171:送信信号推定部、172:誤差計算部、173:参照信号生成部、174:平均誤差更新部、175:第4バッファ(平均誤差記憶部)、176:変動量推定部、177:誤差R推定部、178:受信電力計算部、179a:受信電力更新部、179b:第5バッファ(受信電力記憶部)、180:更新パラメータ調整部
本発明は、通信装置、及び方法に関するものである。
マルチアンテナ技術は、無線通信において、送信・受信を複数のアンテナを用いて行うことにより、通信容量、周波数の利用効率、消費電力等の改善を行う技術である。なお、送信側・受信側いずれかのアンテナ数が1つであっても、他方のアンテナ数に応じて通信品質の改善等を行うことが可能である。
また、マルチアンテナ技術に関する用語として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)がある。MIMOとは、通信用語として用いられる場合、送信側及び受信側両方が複数のアンテナを用いる通信方式を指すことが多いが、マルチアンテナ技術全般を指して使われることもある。
マルチアンテナ信号の処理アルゴリズムによって得られる利点としては、次の4つが挙げられる。
(1)空間ダイバーシチ(Spatial Diversity)
(2)合成利得(Coherent Gain)
(3)干渉波除去(Interference Mitigation)
(4)空間多重(Spatial Multiplexing)
前記空間ダイバーシチは、空間的に離れたアンテナを用いることで、マルチパスなどの影響による通信品質の劣化を小さくすることである。
前記合成利得は、受信側・送信側の各アンテナの信号に対して伝搬路の情報(振幅、位相の変化)を利用した重みをかけることで、希望方向からの受信電力と雑音の比を大きくすることである。
前記干渉波除去は、各アンテナからの受信信号に対して、所望信号以外の到来信号(干渉信号)を打ち消すように重みをかけて合成する。受信アンテナ数よりも一つ小さい数の干渉信号を除去することができる。到来信号の伝搬係数が未知であるならば、なんらかの学習アルゴリズムを用いる必要がある。
前記空間多重は、干渉波除去を応用して同時に複数の通信路を確立する方法である。一人のユーザが複数のアンテナから異なる信号を送信して通信容量を増やす方法と、複数のユーザが同時に通信を行って周波数利用効率を高める方法とがある。後者の方法は、SDMA(Space Division Multiple Access)と呼ばれる。
さて、近年注目を浴びているマルチアンテナ技術として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing;直交周波数分割多重)方式を用いたOFDM−MIMOがある。
OFDM方式は、複数の搬送波(サブキャリア)を周波数軸上に多数配置するとともに、複数の搬送波を一部重ならせて周波数利用効率を上げたものである。OFDMは、地上波デジタル放送、無線LANなどの伝送方式に採用されている。
OFDM−MIMOにおける重要な技術の一つとして、重み(ウェイト)の更新が挙げられる。
例えば、ウェイトは、マルチアンテナ技術において上記(2)の合成利得により、希望波方向からの受信電力と雑音電力の比を大きくして、希望波方向に強い指向性を向ける(ビームフォーミング)場合に用いられる。
なお、ビームフォーミングでは、希望波方向に強い指向性を向けるのに加えて、希望波以外の受信信号による影響を小さくすることもできる。
ウェイトは、参照信号を用いて生成される。例えば、OFDMでは、受信側と送信側で既知の信号(パイロット信号)が挿入されているので、このパイロット信号を参照信号として、ウェイトを更新することができる。
ウェイトの更新アルゴリズムとしては、LMS(Least Mean Square)、RLS(Recursive Least−Squares)があり、これらが適切に動作した場合には誤差エネルギーを最小化し、(1)〜(4)のすべての利点を得ることができる。
OFDMのパイロット信号は、時間軸方向に所定間隔で配置されているため、パイロット信号を受信する度に、逐次、ウェイトを更新することが可能である。
定常状態(伝搬係数に時間的に変化がない場合)においては、ある程度の回数以上のウェイトの更新を行うことで、ウェイトの計算結果が収束し、干渉信号や雑音信号の影響を小さくすることができる。
ウェイトの更新方法については、例えば、特許文献1に記載されている。
図11は、特許文献1の図8の信号配列図を示している。この信号配列図は、OFDM方式による地上デジタルテレビ放送方式の信号配列である。同図では、縦軸をシンボル方向(時間軸方向)iとし、横軸をキャリア方向(周波数軸方向)kとしたキャリア−シンボル空間上のサブキャリア配置を示している。図中の黒丸はスキャッタード・パイロット(Scattered Pilot)SPを示し、白丸はデータ信号(データサブキャリア)を示している。
同図の信号配列の場合、同一のSPキャリア番号kpについては、4シンボル周期でSP信号が繰り返される。
特許文献1では、LMSアルゴリズムを適用してウェイトを更新する方法が説明されている。
同文献によれば、あるキャリア番号kpの時刻iにあるSP信号を用いて更新されたウェイトwb kp(i)があるときに、次のウェイトの更新は、同じキャリア番号kpの4シンボル後に位置するSP信号(キャリア番号kp,時刻i+4)を用いてウェイト更新値wb kp(i+4)を算出する。
すなわち、特許文献1では、ウェイト更新値wb kp(i+4)は、下記式によって定義されている。
wb kp(i+4)=wb kp(i)+μukp(i)・e* kp(i)
特許文献1によれば、上記式において、μは、ステップ・サイズ・パラメータと呼ばれる更新の前後の変化量を規定するパラメータである。なお、ukp(i)は、シンボル番号i、キャリア番号kpで特定されるOFDM信号ベクトルであり、ekp(i)は、事後推定誤差である。
ここで、最適なウェイトは、伝搬路の環境によって異なる。また、伝搬環境は、動的に変動することがある。したがって、伝搬路の変化を動的に推定できれば、精度よく復調する上で有利である。
そこで、本発明は、伝搬路の変化に応じて精度よく復調できる通信装置等を提供することを目的とする。
(1)本発明は、周波数軸方向にデータ信号及びパイロット信号を含むとともにパイロット信号が周波数軸方向及び時間軸方向において分散して配置された受信信号から送信信号を推定するアダプティブアンテナ処理を行うためのウェイトを、受信信号に含まれるパイロット信号を用いて推定する通信装置であって、パイロット信号と当該パイロット信号に対応する参照信号とを用いるとともに、パラメータを用いて、パイロット信号についてのウェイトを推定する手段を備え、前記パラメータは、最適ウェイトの変動量に応じて動的に調整されるパラメータであり、ウェイトを推定する前記手段によって推定されたウェイトを用いてパイロット信号を復調して生成された復調信号と、当該パイロット信号に対応する参照信号と、の誤差を計算する手段と、前記誤差を計算する前記手段によって前記誤差が算出されると、当該誤差に応じて前記パラメータを動的に調整する手段と、を更に備えていることを特徴とする通信装置である。
(2)前記パラメータを動的に調整する前記手段は、受信した第1のパイロット信号を用いて推定されたウェイトを用いて、受信した第2のパイロット信号を復調し、当該第2のパイロット信号を復調した復調信号と当該第2のパイロット信号に対応する参照信号との誤差を計算し、当該誤差に応じて前記パラメータを動的に調整するのが好ましい。
(3)前記パラメータを動的に調整する前記手段は、受信した第1のパイロット信号を用いて推定されたウェイトを用いて、受信した第2のパイロット信号を復調することで、当該第2のパイロット信号についての第1復調信号を生成するとともに、受信した第1のパイロット信号を用いて推定された前記ウェイトを用いて、受信した第3のパイロット信号を復調することで、当該第3のパイロット信号についての第2復調信号を生成し、前記第2のパイロット信号に対応する参照信号と、前記第1復調信号と、の第1誤差を算出するとともに、前記第3のパイロット信号に対応する参照信号と、前記第2復調信号と、の第2誤差を算出し、前記第1誤差と前記第2誤差との差に基づいて、前記パラメータを動的に調整するのが好ましい。
(4)前記第2のパイロット信号は、前記第1のパイロット信号との時間間隔が第1の間隔であるとともに、前記第1のパイロット信号との周波数間隔が第2の間隔であり、前記第3のパイロット信号は、前記第1のパイロット信号と同じ時刻の信号であるとともに、前記第1のパイロット信号との周波数間隔が前記第2の間隔であるのが好ましい。
(5)前記第2のパイロット信号は、前記第1のパイロット信号との時間間隔が第1の間隔であるとともに、前記第1のパイロット信号との周波数間隔が第2の間隔であり、
前記第3のパイロット信号は、前記第1のパイロット信号との時間間隔が前記第1の間隔であるとともに、前記第1のパイロット信号と同じ周波数の信号であるのが好ましい。
(6)前記パラメータを、パイロット信号の受信電力の大きさによって正規化する手段を更に備えているのが好ましい。
(7)前記ウェイトを推定する手段は、RLSアルゴリズム又はLMSアルゴリズムを用いてウェイトを推定するのが好ましい。
(8)前記ウェイトを推定する手段は、SMIアルゴリズムを用いてウェイトを推定するのが好ましい。
(9)他の観点からみた本発明は、周波数軸方向にデータ信号及びパイロット信号を含むとともにパイロット信号が周波数軸方向及び時間軸方向において分散して配置された受信信号から送信信号を推定するアダプティブアンテナ処理を行うためのウェイトを、受信信号に含まれるパイロット信号を用いて推定する方法であって、パイロット信号と当該パイロット信号に対応する参照信号とを用いるとともに、パラメータを用いて、パイロット信号についてのウェイトを推定するステップを含み、前記パラメータは、最適ウェイトの変動に応じて動的に調整されるパラメータであり、ウェイトを推定する前記手段によって推定されたウェイトを用いてパイロット信号を復調して生成された復調信号と、当該パイロット信号に対応する参照信号と、の誤差を計算するステップと、前記誤差を計算する前記手段によって前記誤差が算出されると、当該誤差に応じて前記パラメータを動的に調整するステップと、を更に含むことを特徴とする方法である。
(10)本発明者は、伝搬路の変化を動的に把握するためには、パイロットサブキャリア間におけるウェイト変動量を推定すればよいとの着想を得た。そこで、下記の本発明は、伝搬路の変化を把握するべく、パイロットサブキャリア間におけるウェイト変動量を推定することを目的とする。すなわち、他の観点からみた本発明は、受信信号に含まれるパイロットサブキャリアに基づいて更新されるウェイトの変動量を推定する方法であって、受信した第1のパイロットサブキャリアを用いて更新された第1ウェイトを用いて、受信した第2のパイロットサブキャリアを復調した復調信号を生成するステップと、前記第2のパイロットサブキャリアに対応する参照信号に対する前記復調信号の誤差を、前記第1パイロットサブキャリアと前記第2パイロットサブキャリアとの間におけるウェイト変動量として算出するステップと、を含むことを特徴とするウェイト変動量推定方法又は通信装置である。
上記本発明によれば、受信した第2のパイロットサブキャリアを第1ウェイトによって復調した復調信号と、第2のパイロットサブキャリアに対応する参照信号との誤差を、ウェイト変動量として算出することができる。
(11)また、他の観点からみた本発明は、受信信号に含まれるパイロットサブキャリアに基づいて更新されるウェイトの変動量を推定する方法であって、受信した第1のパイロットサブキャリアを用いて更新された第1ウェイトを用いて、受信した第2のパイロットサブキャリアを復調した第1復調信号を生成するステップと、前記第1ウェイトを用いて、受信した第3のパイロットサブキャリアを復調した第2復調信号を生成するステップと、前記第2のパイロットサブキャリアに対応する参照信号に対する前記第1復調信号の第1誤差を算出するステップと、前記第3のパイロットサブキャリアに対応する参照信号に対する前記第2復調信号の第2誤差を算出するステップと、前記第1誤差と前記第2誤差との差を、前記第2パイロットサブキャリアと前記第3パイロットサブキャリアとの間におけるウェイト変動量として算出するステップと、を含むことを特徴とするウェイト変動量推定方法又は通信装置である。
上記本発明によれば、第1誤差と第2誤差との差をとるため、第1ウェイトの推定誤差や外部雑音の影響が相殺され、第2パイロットサブキャリアと第3パイロットサブキャリアとの間におけるウェイト変動量を精度よく算出することができる。
(12)上記(11)において、前記第2のパイロットサブキャリアは、前記第1のパイロットサブキャリアとの時間間隔が第1の間隔であるとともに、前記パイロットサブキャリアとの周波数間隔が第2の間隔であり、前記第3のパイロットサブキャリアは、前記第1のパイロットサブキャリアと同じ時刻の信号であるとともに、前記第1のパイロットサブキャリアとの周波数間隔が前記第2の間隔であり、前記第2パイロットサブキャリアと前記第3パイロットサブキャリアとの間におけるウェイト変動量を、時間方向のウェイト変動量として算出するのが好ましい。この場合、時間方向のウェイト変動量を精度よく算出することができる。
(13)上記(11)又は(12)において、前記第2のパイロットサブキャリアは、前記第1のパイロットサブキャリアとの時間間隔が第1の間隔であるとともに、前記パイロットサブキャリアとの周波数間隔が第2の間隔であり、前記第3のパイロットサブキャリアは、前記第1のパイロットサブキャリアとの時間間隔が前記第1の間隔であるとともに、前記第1のパイロットサブキャリアと同じ周波数の信号であり、前記第2パイロットサブキャリアと前記第3パイロットサブキャリアとの間におけるウェイト変動量を、周波数方向のウェイト変動量として算出するのが好ましい。この場合、周波数方向のウェイト変動量を精度よく算出することができる。
(14)前記(10)〜(13)のいずれかにおいて、ウェイト変動量を、パイロットサブキャリアの受信電力の大きさによって正規化するステップを更に備えているのが好ましい。この場合、受信電力の大きさによって正規化されたウェイト変動量が得られる。
(15)前記(10)〜(14)のいずれかにおいて、ウェイト更新方法に係る本発明は、前記ウェイト変動量推定方法によって得られたウェイト変動量を、ウェイトを求めるために用いることを特徴とする。この場合、精度よくウェイト更新を行うことができる。
(16)前記(10)〜(14)のいずれかにおいて、ウェイト更新方法は、前記ウェイト変動量推定方法によって得られたウェイト変動量に基づいて、ウェイト更新に用いられるパイロットサブキャリアの順序を制御する順序制御ステップを含むのが好ましい。この場合、ウェイト変動量に応じて、適切な順序でウェイト更新を行うことができる。
(17)前記(10)〜(14)のいずれかにおいて、ウェイト更新方法は、前記ウェイト変動量推定方法によって得られたウェイト変動量に応じて、ウェイト更新の際に用いるウェイト更新パラメータを調整する更新パラメータ調整ステップを含むのが好ましい。この場合、ウェイト変動量に応じた適切なウェイト更新が行える。
(18)ウェイト更新方法は、複数回のウェイト更新の演算によって得られたウェイト推定値を平滑化した平滑化推定値を求めるウェイト平滑化ステップと、前記ウェイト変動量推定方法によって得られたウェイト変動量に応じて、前記ウェイト平滑化ステップにおける平滑化の際に用いる平滑化パラメータを調整する平滑化パラメータ調整ステップと、を含むのが好ましい。この場合、平滑化されたウェイトが得られるとともに、ウェイト変動量に応じた適切な平滑化が行える。
本発明に係る通信装置又は方法によれば、伝搬路の変化に応じて精度よく復調することができる。
OFDMのサブキャリア構造を示す図である。
サブキャリアの周波数−時間2次元配列である。
通信装置のブロック図である。
簡略化した空間フィルタリングモデルを示す図である。
第1実施形態に係るフィルタリング処理部のブロック図である。
ウェイト補間方法の説明図である。
ウェイト変動量計算部のブロック図である。
ウェイト変動量推定の概念図である。
タイル内でのウェイト変動量推定の説明図である。
タイルごとに誤差等を更新する処理の説明図である。
タイル内での誤差を示す説明図である。
順序制御部のブロックズである。
第1更新順序ルールの説明図である。
第2更新順序ルールの説明図である。
第2実施形態に係るフィルタリング処理部のブロック図である。
平滑化順序を示す図である。
第2実施形態におけるパイロット信号、ウェイト推定値、平滑化推定値の関係図である。
第2実施形態における平滑化処理のフローチャートである。
第3実施形態に係るフィルタリング処理部のブロック図である。
第3実施形態における平滑化処理のフローチャートである。
第3実施形態におけるパイロット信号、ウェイト推定値、平滑化推定値の関係図である。
第4実施形態に係るフィルタリング処理部のブロック図である。
第4実施形態における平滑化処理のフローチャートである。
第4実施形態におけるパイロット信号、ウェイト推定値、平滑化推定値の関係図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、通信方式としてWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access, IEEE802.16)を例として説明する。
図1は、WiMAXにおいて採用されているOFDMのサブキャリア配置を示している。OFDMは、周波数多重方式の一種であり、周波数軸上で直交するように多数配置された搬送波(サブキャリア)にQAM変調をかけ、デジタル情報の伝送を行う通信方式である。
OFDMのサブキャリアには、データサブキャリア(Data Sub−Carrier)、パイロットサブキャリア(Pilot Sub−Carrier)、ヌルサブキャリア(Null Sub−Carrier)の3種類がある。
データサブキャリア(データ信号)は、データや制御用メッセージを送信するためのサブキャリアである。パイロットサブキャリアは、受信側及び送信側で既知の信号(パイロット信号)であり、伝達関数推定に用いられたり、ウェイト更新に用いられたりする。
ヌルサブキャリアは、実際には何も送信されないサブキャリアであり、低周波数域側のガードサブバンド(ガードサブキャリア)、高周波数域側のガードサブバンド(ガードサブキャリア)、及びDCサブキャリア(中心周波数サブキャリア)によって構成されている。
図2は、ヌルサブキャリアを除いたデータサブキャリア及びパイロットサブキャリアの2次元配置を示している。なお、図2は、WiMAX Uplink PUSCのサブキャリア配置図である。図2において、横軸は周波数軸であり、縦軸は時間軸である。
図2の横軸のl(1〜L)はサブキャリア番号を示している。サブキャリア番号は、ヌルサブキャリアを除くサブキャリアについて、周波数の小さい順に番号を付したものである。なお、ヌルサブキャリアを含めた全サブキャリアの数を1024とした場合、データサブキャリア及びパイロットサブキャリアの総数Lは、840となる。
図2の縦軸のkは、シンボル番号を示している。シンボル番号は、到来時間の早い順にシンボルに番号を付したものである。
各サブキャリアは、伝搬路を通ることによって振幅と位相が変化する。振幅と位相の変化の仕方は、各サブキャリアによって異なることが多い。サブキャリア間での振幅と位相の変動の仕方は、伝搬環境に依存する。なお、データサブキャリアの振幅と位相の変化は、値が既知のパイロットサブキャリアを用いて補償(空間等化)される。
図2では、シンボル方向(時間軸方向)に3個×周波数軸方向に4個の計12個のサブキャリアによって1つのタイル構造を構成している。タイルは、WiMAX Uplink PUSCにおいて、ユーザ割当の際の最小単位となるものである。
タイルの四隅には、パイロットサブキャリアが配置され、タイル内の他のサブキャリアはデータサブキャリアとされている。
図2に示すように、上記タイルが時間軸方向及び周波数軸方向に規則的に並んでいる。この結果、パイロットサブキャリアは、複数の周波数軸方向位置に存在するとともに、複数の時間軸方向位置に存在する。換言すると、パイロットサブキャリアは、サブキャリア中に(周波数軸方向及び時間軸方向において)分散して配置されているのである。
なお、本発明のサブキャリア配置は、上記のものに限られない。
図3は、本実施形態に係る通信装置の機能ブロックを示している。この通信装置1としては、主に基地局を想定する。この通信装置1は、複数のアンテナ素子11を有し、フィルタリング処理部14によって、空間フィルタリング特性を適応的に制御するアダプティブアレーアンテナシステムを構成している。
通信装置1は、各アンテナ素子11に対応してRF(Radio Frequency)部12及びFFT部13が設けられている。RF部12は、送信側で付加されたガードインターバルの除去やA/D変換などの処理を行う。FFT部では、直列/並列変換や離散フーリエ変換などの処理を行う。
各FFT部13の出力(マルチアンテナ信号)は、フィルタリング処理部14に与えられる。フィルタリング処理部14では、伝搬環境に応じた空間フィルタリング特性を適応的に求めるアダプティブアンテナ処理を行う。
図3には、通信装置1が通信しようとしている移動局(希望局)2以外に、干渉源となる干渉局(移動局)3,4を示した。希望局及び干渉局3,4の総数はM個とする。
希望局2及び干渉局3,4は、それぞれ、並列/直列変換や逆離散フーリエ変換などの処理を行うIFFT部21,31,41と、ガードインターバルの付加やD/A変換などの処理を行うRF部22,32,42と、アンテナ素子23,33,43を備えている。
送信側通信装置2,3,4と受信側通信装置1との間の伝搬路は、フェージング伝搬路となっている。サブキャリアは、フェージング伝搬路を通過すると、その振幅と位相が変化する。変化量は、サブキャリアの位置(時間軸方向位置と周波数軸方向位置)によって変わる。
受信側通信装置1の前記フィルタリング処理部14は、各アンテナ素子11に対応する各FTT部からの出力信号に対して適当なウェイトをかけて合成し、各サブキャリアにおける所望信号を抽出して、出力信号として出力する。
図4は、図3における所望信号、出力信号、受信信号(厳密には、通信装置1のアンテナ素子11に対応するFFT部13からの信号)の関係を示すフィルタリングモデルを示している。
図4において、kはシンボル番号、lはサブキャリア番号を示す。また、Mは所望信号及び干渉信号の数を示す。
雑音信号Z(k,l)は、各アンテナ素子11における雑音を表す複素N×1ベクトルである。
受信信号X(k,l)は、各アンテナ素子11に対応するFFT部からの出力からなる複素N×1ベクトルである。
伝達関数Hm(k,l)(m=1〜M)は、各信号の各サブキャリアが、アンテナ素子数Nのフェージング伝搬路で受ける振幅と位相の変化を並べた複素N×1ベクトルである。
ウェイトW(k,l)は、受信信号の各要素に対して掛ける複素数重みの複素共役を並べたN×1ベクトルである。図4において、上付のHは、複素共役転置を表す。また、以下において、上付のTは転置を表す。
図4の各信号の関係は、式(1)(2)のように表される。
本実施形態の前記フィルタリング処理部14は、干渉信号S2〜SMの影響を受けている受信信号X(k,l)から所望信号S1(k,l)だけを推定するものである。
図5に、本実施形態に係るフィルタリング処理部14の詳細を示している。フィルタリング処理部14は、受信信号X(k,l)を逐次的に保存する第1バッファ(受信信号記憶部;受信パイロット信号記憶部)141を備えている。第1バッファ141に蓄えられたデータサブキャリアX(kd,ld)は、ウェイト乗算部142に与えられる。ウェイト乗算部142は、データサブキャリアX(kd,ld)にウェイトW(kd,ld)を乗じて、合成した出力信号Y(kd,ld)=W(kd,ld)HX(kd,ld)を出力する。この出力信号Y(kd,ld)が、所望信号S1(kd,ld)の推定値である。
所望信号の推定値を精度良く求めるには、ウェイトを精度良く推定することが重要である。ウェイトを推定するため、フィルタリング処理部14は、ウェイト更新部143を有している。
前記第1バッファ141の受信信号(パイロットサブキャリア)X(kp,lp)は、ウェイトW(kp,lp)の更新にも用いられる。このため、第1バッファ141からウェイト更新部143へパイロットサブキャリアX(kp,lp)が与えられる。
なお、第1バッファ141に記憶している受信信号は、ウェイト乗算部142、ウェイト更新部143、及び後述のウェイト変動量計算部170で使われなくなると随時消去される。
第1バッファ141で受信信号を蓄積しておくことで、本実施形態のようにウェイト更新方向を多様化しても容易に対応できる。
ウェイト更新部143では、受信信号に含まれるパイロットサブキャリアを用いた更新処理(ウェイト更新ステップ)により、ウェイトの更新を行い、更新後のウェイトを第2バッファ144へ出力する。なお、更新処理の詳細は後述する。
第2バッファ(更新ウェイト記憶部)144は、パイロットサブキャリアの位置でのウェイトW(kp,lp)を逐次的に保存する。第2バッファ144の更新ウェイトは、後述のウェイト補間部145又はウェイト変動量計算部170において使用されなくなると随時消去される。
ウェイト補間部145は、パイロットサブキャリア位置でのウェイトW(kp,lp)を用いて、データサブキャリア位置でのウェイトW(kd,ld)を補間して、そのウェイトW(kd,ld)をウェイト乗算部142に与える。
図6は、ウェイト補間の一例を示している。図6の例では、タイル単位での線形補間を行う。具体的には、図6(b)に示すタイルのパイロットサブキャリア位置でのウェイトW1,W4,W9,W12に対して、図6(a)に示す演算を行うことにより、データサブキャリア位置でのウェイトW2,W3,W5,W6,W7,W8,W10,W11を算出する。
この演算をすべてのタイルについて行うことで、全データサブキャリア位置でのウェイトを算出することができる。
[ウェイト更新部によるウェイト更新処理(ウェイト更新ステップ)]
本実施形態のウェイト更新部143は、カルマンフィルタによってウェイトを更新するように構成されている。ただし、他のアルゴリズム、例えば、RLSアルゴリズム、LMSアルゴリズム、又はSMIアルゴリズムを用いても良い。
なお、上述の説明では、パイロットサブキャリア位置を示すためにウェイト等を示す記号においてk及びlをkp及びlpと表記して、k及びlの位置がパイロットサブキャリア位置であることを明示していたが、以下では、説明の簡略のため、単に、k,lと表記することがある。
ここで、ウェイト(ウィーナー解W
opt)の更新に伴うウェイトの変動のモデルとして、以下のようなマルコフ過程を考える。
上記において、Q(k,l)は、ウィーナー解(最適なウェイト)の変動量の大きさを表している。また、R(k,l)は、ウィーナー解(最適なウェイト)を用いて送信信号を推定した場合における推定誤差の大きさを表す。
カルマンフィルタを用いると、最適なウェイトであるウィーナー解W
optの推定値W(k,l)は、次のように更新される。
前記ウェイト更新部143は、上記式に従って、受信信号中のパイロットサブキャリアX(k,l)と、当該パイロットサブキャリアに対応する参照信号S(k,l)とを用いるとともに、ウェイト更新パラメータとしてのQ(k,l)及びR(k,l)を用いて、現在のウェイトW(kprev,lprev)を新たなウェイトW(k,l)に更新する。
なお、ウェイト更新部143では、上記式におけるパラメータPの更新値Pnextも算出する。
図5に示すように、カルマンフィルタによるウェイト更新演算式で用いられる値X(k,l),S(k,l),P,Q(k,l),R(k,l)のうち、パイロットサブキャリアX(k,l)は、順序制御部146を介して、第1バッファ141から取得される。また、所望信号の参照信号S(k,l)は、参照信号生成部147によって生成され、ウェイト更新部143に与えられる。ウェイト更新パラメータP(N×N行列)は、第3バッファ(ウェイト更新パラメータ記憶部)148に保存されており、ウェイト更新部143は、当該第3バッファ148からパラメータPを取得する。また、ウェイト更新部143によって更新されたパラメータPnextは、第3バッファ148に更新保存され、次回のウェイト更新時のパラメータPとして用いられる。
なお、前回のウェイト更新に用いられたパイロットサブキャリアがX(kprev,lprev)であるときに、今回のウェイト更新に用いるパイロットサブキャリアとして、どのパイロットサブキャリアX(k,l)を選択するかというウェイト更新順序制御に関しては、後述する。
また、Q(k,l),R(k,l)は、カルマンフィルタにおけるウェイト更新式における更新パラメータであり、ウェイト更新部143は、更新パラメータ調整部180から、必要なQ(k,l),R(k,l)を取得する。
ここで、上記式のアルゴリズムにおいては、Q(k,l)を大きくすれば、ウェイトの変動に対する追従特性は向上する。一方、Q(k,l)を大きくしすぎると、更新の度にウェイトが大きく変化し、ウェイト推定値が収束し難くなる。
そこで、本実施形態では、伝搬路の特性を動的に観測し、ウィーナー解(最適なウェイト)の変動量の大きさQ(k,l)の値を動的に調整する。Q(k,l)の値を動的に調整することで、周波数軸方向及び/又は時間軸方向に対する伝達関数の変動へのウェイト追従特性を適切に調整することができる。さらにウィーナー解(最適なウェイト)を用いて送信信号を推定した場合における推定誤差の大きさR(k,l)も調整することで、適切な推定が行える。
[ウェイト変動量計算部の構成]
最適ウェイトの変動量の計算を行うため、本実施形態のフィルタリング処理部14は、ウェイト変動量計算部170を備えている(図5参照)。
図7は、ウェイト変動量計算部170の詳細を示している。ウェイト変動量計算部170は、ウェイト更新部143で求めたウェイトWを、受信したパイロットサブキャリアに乗じて復調処理を行い、送信信号の推定値(復調値)を求める送信信号推定部171を備えている。
また、ウェイト変動量計算部170は、参照信号に対する送信信号推定値(復調値)の誤差Eを求める誤差計算部172を備えている。この誤差計算部172は、送信信号推定値を送信信号推定値171から取得するとともに、参照信号を参照信号生成部173から取得する。
誤差計算部172によって計算された誤差Eは、誤差更新部174に与えられる。平均誤差更新部73は、誤差計算部172が誤差を算出する度に、それまでの誤差との平均(重み付け平均)Eavを算出する。なお、誤差更新部174が算出した平均誤差Eavは、第4バッファ(平均誤差記憶部)175に保存され、必要に応じて、誤差更新部174から読み取られる。なお、誤差更新部174は、省略してもよい。
誤差更新部174から出力された平均誤差Eavは、変動量推定部176と、誤差Rを算出する誤差R推定部177に与えられる。
変動量推定部176は、平均誤差Eav(又は誤差E)から、誤差計算に用いたパイロット信号の受信電力で正規化等の処理を行って、ウェイト変動量Qを算出する。また、誤差R推定部は、平均誤差Eav(又は誤差E)に基づいて、誤差Rを生成する。
誤差計算に用いたパイロット信号の前記受信電力Pは、受信電力計算部178によって算出される。受信電力計算部179によって計算された受信電力は、受信電力更新部179aに与えられる。受信電力更新部179aは、受信電力計算部178が誤差計算に用いたパイロット信号の前記受信電力Pを算出する度に、それまでの受信電力との平均(重み付け平均)Pavを算出する。
なお、受信電力更新部179aが算出した平均受信電力Pavは、第5バッファ(受信電力記憶部)179bに保存され、必要に応じて、受信電力更新部179aから読み取られる。なお、受信電力更新部179aは、省略してもよい。
平均受信電力Pav(又は受信電力P)は、前述のように、変動量推定部176における正規化処理のために用いられる。
[ウェイト変動量算出の基本的な考え方]
以下、本実施形態におけるウェイト変動量算出の基本的な考え方について、図8(a)(b)に基づいて説明する。なお、ここでは、説明の簡略化のため、パイロット信号の並びは時間軸方向についてだけ考え、周波数方向におけるパイロット信号の並びについては考えないものとする。また、パイロット信号は、時間軸方向に一定の間隔で並んでいるものとする。
図8(a)では、時刻kと時刻(k+p)にパイロット信号が存在する。ここでは、時刻kにおける最適ウェイトWopt(k)と、時刻(k+p)における最適ウェイトWopt(k+p)との間の最適ウェイト変動量(最適ウェイト間の差)を推定することを考える。
最適ウェイトの変動量を推定するため、図8(a)では、時刻kにおける受信信号(パイロット信号)X(k)を用いて更新(推定)されたウェイトW(k)を用いて、時刻(k+p)における受信信号(パイロット信号)X(k+p)を復調し、復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+p)を生成する。
すなわち、図8(a)の場合、図7の送信信号推定部171は、時刻kまでに推定したウェイトW(k)と、受信信号X(k+p)とを用いて、復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+p)を生成する。
そして、時刻(k+p)における参照信号S(k+p)と、復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+p)との誤差Eを求める(誤差計算部172による演算)。Eの演算式は、下記の通りである。
最適ウェイト変動量E=|S(k+p)−W(k)HX(k+p)|2
ここでは、上記誤差Eを、時刻kにおける最適ウェイトWopt(k)と時刻(k+p)における最適ウェイトWopt(k+p)との間の変動量であるとみなす。したがって、ウェイト変動量計算部170からは、ウェイト変動量として前記Eが出力される。
上記式で求めた誤差Eは、厳密には、「最適ウェイトの変動量」のほかに、「時刻kにおけるウェイトW(k)の推定誤差」、及び「外部雑音」が含まれるため、誤差Eは、真の「最適ウェイトの変動量」よりも大きくなる。つまり、上記式では、時刻kまでに推定したウェイトW(k)を最適ウェイトWopt(k)であるとみなしているが、実際には、ウェイトW(k)には、「時刻kにおけるウェイトW(k)の推定誤差」及び「外部雑音」が含まれる。
ただし、「時刻kにおけるウェイトW(k)の推定誤差」、及び「外部雑音」が十分に小さい場合には、問題は少ない。
図8(b)は、前述の「時刻kにおけるウェイトW(k)の推定誤差」及び「外部雑音」の影響を低減する方法を示している。
図8(b)では、時刻kと時刻(k+p)と時刻(k+2p)にパイロット信号が存在する。ここでは、時刻(k+p)における最適ウェイトWopt(k+p)と、時刻(k+2p)における最適ウェイトWopt(k+2p)との間の最適ウェイト変動量(最適ウェイト間の差)を推定することを考える。
最適ウェイトの変動量を推定するため、図8(b)では、時刻kにおける受信信号(パイロット信号)X(k)を用いて更新(推定)されたウェイトW(k)を用いて、時刻(k+p)における受信信号(パイロット信号)X(k+p)を復調し、第1復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+p)を生成する。
また、時刻kにおける受信信号(パイロット信号)X(k)を用いて更新(推定)されたウェイトW(k)を用いて、時刻(k+2p)における受信信号(パイロット信号)X(k+2p)を復調し、第2復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+2p)を生成する。
すなわち、図8(b)の場合、図7の送信信号推定部171は、時刻kまでに推定したウェイトW(k)と受信信号X(k+p)とを用いて第1復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+p)を生成するとともに、時刻kまでに推定したウェイトW(k)と受信信号X(k+2p)とを用いて第2復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+2p)を生成する。
そして、時刻(k+p)における参照信号S(k+p)と、第1復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+p)とから第1誤差E1を求める(誤差計算部172による演算)。
また、時刻(k+2p)における参照信号S(k+2p)と、第2復調信号(送信信号推定値)W(k)HX(k+2p)とから第2誤差E2を求める(誤差計算部172による演算)。
E1及びE2の演算式は、下記の通りである。
第1誤差E1=|S(k+p)−W(k)HX(k+p)|2
第2誤差E2=|S(k+2p)−W(k)HX(k+2p)|2
さらに、誤差計算部172は、第1誤差及び第2誤差の差Eを求める。Eの演算式は、下記の通りである。
最適ウェイト変動量E=E2−E1
ここでは、誤差の差Eを、時刻(k+p)における最適ウェイトWopt(k+p)と時刻(k+2p)における最適ウェイトWopt(k+2p)との間の変動量であるとみなす。したがって、ウェイト変動量計算部170からは、ウェイト変動量として前記Eが出力される。
上記のようにして求めたE1,E2には、いずれも「時刻kにおけるウェイトW(k)の推定誤差」と「外部雑音」における影響を含んでいる。したがって、両者E1,E2の差をとることによって、「時刻kにおけるウェイトW(k)の推定誤差」と「外部雑音」を相殺し、最適ウェイトの変動量を精度よく推定することができる。
[ウェイト変動量算出の適用例]
以下、図2に示す実際のサブキャリア配置において、ウェイト変動量の推定を行う例について図9〜図11に基づいて説明する。ここでは、図8(b)に関した説明した方法を適用した例について説明する。
図9は、1つのタイルにおけるサブキャリア配置を示している。1タイルに含まれるパイロット信号は、4つである。ここでは、図9に示すように、4つのパイロット信号を、それぞれ、X(0),X(1),X(2),X(3)というものとする。
ここでは、受信したパイロット信号X(0)を用いてウェイトW(0)が導出されている場合に、当該ウェイトW(0)からみた周波数方向のウェイト変動量と、時間方向のウェイト変動量をそれぞれ推定する。
まず、受信したパイロット信号X(0)を用いて導出されたウェイトW(0)を用いて、受信信号X(1),X(2),X(3)を、この順序で復調する。
すなわち、送信信号推定部171は、W(0)HX(1),W(0)HX(2),W(0)HX(3)をそれぞれ計算する。
そして、誤差計算部172は、復調値W(0)HX(1),W(0)HX(2),W(0)HX(3)と、それらの真値である参照信号S(1),S(2),S(3)との誤差E1,E2,E3を下記のように計算する。
E1=S(1)−W(0)HX(1)
E2=S(2)−W(0)HX(2)
E3=S(3)−W(0)HX(3)
また、受信電力計算部178は、誤差E1,E2,E3を求めるのに用いたパイロット信号X(1),X(2),X(3)の受信電力(の平均値)Pを求める。受信電力Pの演算式は、例えば、下記のとおりである。
P=([X(1)HX(1)+X(2)HX(2)+X(3)HX(3)]/[3Nr])
なお、上記式において、Nrは、受信アンテナの数である。上記式により、アンテナ1本あたりの平均受信電力Pを求めることができる。
さらに、図10に示すように、前述のE1,E2,E3,Pを複数のタイルについて、それぞれ導出する。そして、誤差更新部174及び受信電力更新部179aは、複数のタイルについてのE1,E2,E3,Pの平均値Eav1,Eav2,Eav3,Pavを算出する。図10に示すように、時間方向に並ぶタイルを用いて平均値Eav1,Eav2,Eav3,Pavを更新するには、例えば、下記式に従えばよい。
Eav1(t+1)=α1・E1(t+1)+(1−α1)E1av(t)
Eav2(t+1)=α2・E2(t+1)+(1−α2)E2av(t)
Eav3(t+1)=α3・E3(t+1)+(1−α3)E3av(t)
Pav(t+1) =α4・P(t+1) +(1−α4)Pav(t)
なお、α1,α2,α3,α4は、忘却係数であり、0<α1,α2,α3,α4<1である。
ここで、Eav1,Eav2,Eav3,Pを更新するために用いられるタイルは、図10に示すように時間方向に並ぶものに限られず、周波数方向に並ぶものであってもよく、どのタイルをどの順序で用いるかは、特に限定されない。
以上により、各時点における推定誤差の平均値Eav1,Eav2,Eav3、受信電力の平均値Pavが導出できる(図11参照)。導出されたEav1は、W(0)からみて周波数方向の誤差(ウェイト変動量)を示し、Eav2は時間方向への誤差(ウェイト変動量)を示している。また、Eav3は、時間方向への誤差に周波数方向の誤差を加えた誤差(ウェイト変動量)を示している。
したがって、これらの値から、変動量推定部176は、周波数方向のウェイト変動量Q(1),時間方向のウェイト変動量Q(2)を、下記式に従い推定する。
Q(1)=(Eav3−Eav2)/Pav
Q(2)=(Eav3−Eav1)/Pav
つまり、(Eav3−Eav2)は、時間方向への誤差に周波数方向の誤差を加えた誤差であるEav3から、時間方向への誤差であるEav2を引く処理であり、周波数方向の誤差(ウェイト変動量)が得られる。しかも、(Eav3−Eav2)によって、「ウェイトW(0)の推定誤差」及び「外部雑音」を相殺することができる。
また、(Eav3−Eav1)は、時間方向への誤差に周波数方向の誤差を加えた誤差であるEav3から、周波数方向への誤差であるEav1を引く処理であり、時間方向の誤差(ウェイト変動量)が得られる。しかも、(Eav3−Eav1)によって、「ウェイトW(0)の推定誤差」及び「外部雑音」を相殺することができる。
しかも、(Eav3−Eav2)と(Eav3−Eav1)とを、それぞれPavで割って、正規化することで、誤差の大きさをより正確に表すことができる。つまり、誤差の大きさは、最適ウェイトの変化量と平均受信電力の大きさに比例する。したがって、(Eav3−Eav2)と(Eav3−Eav1)とを、Pavで割ることで、受信電力の大きさにかかわらず、正確に誤差の大きさを表すことができる。
なお、変動量推定部176は、周波数方向のウェイト変動量Q(1),時間方向のウェイト変動量Q(2)を、より簡単に求める場合、下記式で求めてもよい(図8(a)参照)。
Q(1)=Eav1/Pav
Q(2)=Eav2/Pav
誤差R推定部177は、Eav1,Eav2に基づいて、ウィーナー解(最適なウェイト)を用いて送信信号を推定した場合における推定誤差の大きさRを推定する。ここで、誤差Rは、理論上は、外部雑音の大きさに相当するが、本実施形態では、Eav1及び/又はEav2をそのまま誤差Rとして推定する。また、Eav1,Eav2の加重平均を誤差Rとして推定してもよい。
ここで、Eav1,Eav2には、最適ウェイトを適用して送信信号を推定した場合における推定誤差(外部雑音)に加えて、「ウェイトの推定誤差」が含まれるため、理論上のRの値よりも大きくなる。ただし、Rの推定誤差がウェイトの推定誤差に与える影響は、Qの推定誤差がウェイトの推定誤差に与える影響よりも小さいため、Eav1やEav2をそのまま用いても、実用上は差し支えない。なお、Eav1やEav2が実際のRよりも大きいことを考慮して、Eav1やEav2から所定値を減算したものを誤差Rの推定値としてもよい。
上記のようにして導出したQ(1),Q(2),Rは、更新パラメータ調整部180に与えられる。なお、上記のようにして導出したQ(1)は、サブキャリア間隔が3の場合の周波数方向ウェイト変動量を示しているが、図2のサブキャリア配置では、周波数方向のパイロットサブキャリア間隔は、3以外に、1,4,5,7,8,・・などがある。また、上記Q(2)についても、サブキャリア間隔が2の場合の時間方向ウェイト変動量を示しているが、図2のサブキャリア配置では、時間方向のパイロットサブキャリア間隔は、2以外に、1,3,4,5,6,・・・などがある。
ウェイト変動量計算部17では、必要に応じて、任意のサブキャリア間隔のパイロットサブキャリアを用いることで、任意のサブキャリア間隔についてのウェイト変動量を求め、それらのウェイト変動量が更新パラメータ調整部180に与えられる。また、Rについても、任意のサブキャリア間隔についての誤差Rが更新パラメータ調整部180に与えられる。
更新パラメータ調整部180は、周波数方向及び時間方向それぞれについて、サブキャリア間隔ごとのウェイト変動量を保持する。そして、更新パラメータ調整部180は、保持するウェイト変動量の中から、ウェイト更新部143におけるウェイト更新に必要なウェイト変動量Q及び誤差Rを与える。
つまり、更新パラメータ調整部180は、前回のウェイト更新値W(kprev,lprev)を推定するために用いたパイロットサブキャリアX(kprev,lprev)と今回のウェイト更新に用いられるパイロットサブキャリアX(k,l)との間のサブキャリア間隔(k−kprev)及び/又は(l−lprev)に応じて、当該サブキャリア間隔におけるウェイト変動量Q及び誤差Rを、ウェイト更新部143に与える。
これにより、ウェイト更新部143によるウェイト更新処理では、伝搬環境に応じて最適ウェイトが変動しても、当該変動に追従させるための適切な更新パラメータを用いることができる。したがって、ウェイト更新が適切に行える。
なお、前回のウェイト更新値W(kprev,lprev)を推定するために用いたパイロットサブキャリアX(kprev,lprev)と今回のウェイト更新に用いられるパイロットサブキャリアX(k,l)との位置関係は、順序制御部146による順序制御に依存して決まる。
[ウェイト更新順序制御]
前述のように、ウェイト更新部143は、順序制御部146を介して、第1バッファ141から受信信号(パイロットサブキャリア)X(kp,lp)を取得する。
順序制御部146は、第1バッファ141に保存されている受信信号X(k,l)の中から、パイロットサブキャリアX(kp,lp)を分離して抽出する。
そして、順序制御部146は、ウェイト更新部143がウェイト更新に用いるパイロットサブキャリアの順序を制御する。具体的には、順序制御部146は、分離したパイロットサブキャリアを、ウェイト更新に用いる順番に並べ替える。そして、順序制御部146は、並び替えたパイロットサブキャリアを、並び替えた順番で、ウェイト更新部143に与える。
図12は、順序制御部146の詳細を示している。順序制御部146は、更新順序決定部146aと、パイロットサブキャリアの並び替えルール(更新順序ルール)を記憶した更新順序ルール記憶部146bとを有している。この記憶部146bには、複数の更新順序ルール(ここでは2つ)が記憶されている。前記更新順序決定部146aは、記憶部146bにある更新順序ルールのうち、どのルールを用いるかを決定する。
図13及び図14は、記憶部146にある更新順序ルールの例を示している。
[第1更新順序ルール]
図13に示す第1の順序ルールでは、まず、図13のD1方向への更新を行う。すなわち、同一シンボル(同一時間k=1)において周波数軸方向に分散された複数のパイロットサブキャリアX(1,1)〜X(1,L)を対象として、周波数の小さいパイロットサブキャリアから順番に用いてウェイト更新を行う。このD1方向(周波数軸方向)の更新制御は、複数回の周波数軸方向更新制御の組合せとなっている。
ここでの周波数軸方向更新制御は、例えば、前回のウェイトの更新に用いたパイロットサブキャリアがX(1,1)であるときに、X(1,1)の次にウェイト更新に用いるパイロットサブキャリアとしてX(1,4)を選択する場合のように、前回のウェイトの更新に用いたパイロットサブキャリアX(1,1)とは時間軸方向では同じ位置であって周波数軸方向に異なる位置にあるパイロットサブキャリアX(1,4)を、ウェイトの更新に用いることをいう。
D1方向の更新制御を行って、最大のサブキャリア番号Lを持つパイロットサブキャリアX(1,L)まできたら、次に、図13のD2方向への更新を行う。すなわち、X(1,L)の位置から時間軸方向へ移動し、時間軸方向にみて次にあるパイロットサブキャリアX(3,L)をウェイト更新に用いる。このD2方向(時間軸方向)の更新制御は、1回の時間軸方向更新制御でよい。
ここでの時間軸方向更新制御は、例えば、前回のウェイトの更新に用いたパイロットサブキャリアがX(1,L)であるときに、X(1,L)の次にウェイト更新に用いるパイロットサブキャリアとしてX(3,L)を選択する場合のように、前回のウェイトの更新に用いたパイロットサブキャリアX(1,L)とは周波数軸方向時では同じ位置であって時間軸方向に異なる位置にあるパイロットサブキャリアX(1,4)を、ウェイトの更新に用いることをいう。
D2方向の更新制御を行った後は、図13のD3方向への更新を行う。すなわち、同一シンボル(同一時間)における周波数の大きいパイロットサブキャリアから順に、ウェイト更新に用いる。換言すると、時間軸方向の負方向に更新制御が行われる。このD3方向の更新制御も、複数回の(負方向)の周波数軸方向更新制御の組合せとなっている。
D3方向の更新制御を行って、最小のサブキャリア番号1を持つパイロットサブキャリアX(3,1)まできたら、図13のD4方向への更新を行う。すなわち、X(3,1)の位置から時間軸方向へ移動し、時間軸方向にみて次にあるパイロットサブキャリアX(4,1)をウェイト更新に用いる。このD4方向の更新制御は、1回の時間軸方向制御でよい。なお、D4方向の更新制御と、D2方向の更新制御とでは、更新に用いられるパイロットサブキャリアの時間間隔が異なる。
D4方向の更新制御後は、再び、D1方向の更新制御を行い、上記処理を繰り返す。
図13の上記第1更新順序ルールでは、周波数軸方向更新制御と時間軸方向更新制御を組み合わせたものとなっている。ただし、周波数軸方向更新制御によるウェイト更新の方が、時間軸方向更新制御によるウェイト更新よりも回数が多くなっている。
よって、第1更新順序ルールは、周波数軸方向を優先した更新制御ルールである。
したがって、各パイロットサブキャリア間の最適ウェイト変動量を考えたときに、周波数軸方向のサブキャリア間でのウェイト変動量Q(1)が、時間軸方向のサブキャリア間でのウェイト変動量Q(2)よりも小さい場合には、周波数軸方向を優先した第1更新順序ルールを用いると、適切なウェイトを早期に得やすい。
また、上記第1更新順序ルールによれば、パイロットサブキャリアが存在するシンボルについてみると、1シンボルあたりのウェイト更新数が、420回となる。時間軸方向のみのウェイト更新であれば、1シンボル1回しか行われないが、上記ルールでは、飛躍的に更新回数が増加する。この結果、適切なウェイトを高速で得ることができる。
高速で適切なウェイトが得られることは、モバイルWiMAX(IEEE 802.16e)のように、移動体との間で伝送を行う方式において、特に有用である。すなわち、WiMAXでは、1基本フレームは、アップリンクサブフレームとダウンリンクサブフレームを含み、基地局は、アップリンクサブフレームを、5msecごとに受け取る。ところが、移動局の高速移動時には、サブフレーム間でウェイト変動量が非常に大きくなる。しかも、一つのサブフレームは、15シンボルで構成されている。
したがって、時間軸方向のみでウェイト更新を行うと、1つのサブフレームあたり10回しかウェイト更新が行えない。この結果、移動局の高速移動(例えば、120km/h)時には、更新アルゴリズムによっては、適切なウェイトを形成する前に、サブフレームが切り替わってしまう。
そして、サブフレーム間のウェイト変動量は非常に大きいため、サブフレームが切り替わると再度、ウェイト形成が必要となる。この結果、極端な場合には、永久に適切なウェイトが得られない場合が生じる。
これに対し、本実施形態の更新順序ルールによれば、1シンボル当たりの更新回数が多くなるため、高速で適切なウェイトが得られ、一つのサブフレーム内でのウェイト形成が可能となる。なお、この点については、第2更新順序ルールについてもあてはまる。
[第2更新順序ルール]
図14に示す第2の更新順序ルールでは、まず、図14のD11方向への更新を行う。すなわち、同一サブキャリア(同一サブキャリア番号=1)において、時間軸方向に分散して複数存在するパイロットサブキャリアX(1,1)〜X(k,1)を対象として、シンボル番号の小さいパイロットサブキャリアから順番に用いてウェイト更新を行う。このD11方向の更新制御は、複数回の時間軸方向更新制御の組合せとなっている。
D11方向への更新制御を行って、所定のシンボル番号=kのパイロットサブキャリア(k,1)まできたら、次に周波数方向D12への更新を行う。すなわち、X(k,1)の位置から周波数軸方向へ移動し、周波数軸方向にみて次にあるパイロットサブキャリアX(k,4)をウェイト更新に用いる。このD12方向の更新制御は、1回の周波数軸方向更新制御でよい。
D12方向への更新制御の後は、図14のD13方向への更新を行う。すなわち、同一サブキャリア(同一サブキャリア番号=4)において、時間軸方向に複数存在するパイロットサブキャリアX(k,4)〜X(1,4)を対象として、シンボル番号の大きいパイロットサブキャリアから順番に用いてウェイト更新を行う。このD13方向の更新制御も、複数回の(負方向)の時間軸方向更新制御の組合せとなっている。
D13方向の更新制御を行って、最小のシンボル番号1を持つパイロットサブキャリアX(1,4)まできたら、図14のD4方向への更新を行う。すなわち、X(1,4)の位置から時間軸方向へ移動し、周波数軸方向にみて次にあるパイロットサブキャリアX(1,5)をウェイト更新に用いる(第2周波数軸方向更新制御D4)。このD14方向の更新制御は、1回の周波数軸方向更新制御でよい。
D14方向の更新制御後は、D11方向の更新制御を行い、上記処理を繰り返す。なお、D14方向への更新が行えなくなったら、シンボル番号kよりも時間的に後にある次のk個のシンボルを用いて同様に更新を行えばよい。
上記第2更新順序ルールにおいても、周波数軸方向更新制御と時間軸方向更新制御を組み合わせたものとなっている。ただし、時間軸方向更新制御によるウェイト更新の方が、周波数軸方向更新制御によるウェイト更新よりも回数が多くなっている。
よって、第2更新順序ルールは、時間軸方向を優先した更新制御ルールである。
したがって、各パイロットサブキャリア間のウェイト変動量を考えたときに、時間軸方向のサブキャリア間でのウェイト変動量Q(2)が、周波数軸方向でのウェイト変動量Q(1)よりも小さい場合には、前記第2更新順序ルールを用いると適切なウェイトを早期に得やすい。
なお、周波数軸方向又は時間軸方向のいずれかを優先して更新制御を行う場合、ウェイト変動量の小さい方向への更新回数を多くすることに替えて、例えば、ウェイト変動量の小さい方向への更新を出来るだけ先に行うようにして相互相関の大きい方向を優先してもよい。
[ウェイト変動量と伝搬環境の関係]
パイロットサブキャリア間のウェイト変動量は、周波数軸方向の方が大きい場合と、時間軸方向の方が大きい場合がある。ここで、ウェイト変動量の大きさは、伝搬環境に依存する。
例えば、基地局の通信相手である移動局が高速移動している場合には、時々刻々と伝搬環境が変化するため、時間軸方向に異なる位置にあるパイロットサブキャリア間では、伝達関数の変動が大きくなり、相互相関が低下し、最適ウェイトの変動量が大きくなる。
一方、時間軸方向には同じ位置で周波数軸方向に異なる位置にあるパイロットサブキャリア間では、相対的に伝達関数の相互相関が大きくなり、最適ウェイトの変動量が小さくなる。
また、移動局が低速又は停止している場合には、時間が推移しても伝搬環境にはほとんど変化がないため、時間軸方向に異なる位置にあるパイロットサブキャリア間における伝達関数の相互相関が相対的に大きくなり、最適ウェイトの変動量は小さい。
なお、相互相関は、移動局の移動速度の他、伝搬環境の遅延分散によっても影響を受ける。
[ウェイト変動量とウェイト更新方向の関係]
移動局が高速移動している場合のように、周波数軸方向のウェイト変動量Q(1)が、時間軸方向のウェイト変動量Q(2)よりも小さくなりやすい場合には、図13に示す第1更新順序ルールのように周波数軸方向の更新制御を優先してする方が、ウェイト計算値が収束し易く、高速で適切なウェイトを算出することができる。
一方、移動局が低速又は停止している場合のように、時間軸方向のウェイト変動量Q(2)が小さい場合には、図14に示す第2更新順序ルールのように時間軸方向にウェイト更新を行った方が、ウェイト計算値が収束し易く、高速で適切なウェイトを算出することができる。
[更新順序決定部による更新順序決定]
上述のウェイト変動量Q(1),Q(2)と伝搬環境の関係を利用し、前記更新順序決定部146aは、ウェイト変動量計算部170によって求められた周波数軸方向のウェイト変動量Q(1)と時間軸方向のウェイト変動量Q(2)とを比較して、どちらのウェイト変動量が小さいか判定する。更新順序決定部146aは、この判定結果に基づき、更新順序ルールを選択する。
例えば、時間軸方向のウェイト変動量Q(2)が小さい判定された場合、時間軸方向を優先した第2更新順序ルールが選択される。また、周波数軸方向のウェイト変動量Q(1)の方が小さいと判定された場合、周波数軸方向を優先した第1更新順序ルールが選択される。
そして、更新順序決定部146aは、選択された更新順序ルールに従って、第1バッファから取得したパイロットサブキャリアX(k,l)を並び替え、並び替えた順で、パイロットサブキャリアをウェイト更新部143へ与える。
なお、更新順序ルールは、上記のものに限らず、時間軸方向更新制御と周波数軸方向更新制御を組み合わせた様々な変形が可能である。また、時間軸方向及び周波数軸方向に同時に移動する斜め方向更新制御を含んでいてもよい。この場合、より自由度が高くなる。
また、1回の更新制御における移動幅(パイロットサブキャリア間の時間間隔又は周波数間隔)も自由に設定できる。
また、更新順序決定部146aは、予め決められた更新順序ルールを選択することで、更新順序を決定するのではなく、動的に推定されるウェイト変動量から把握される伝搬環境に応じて適切な更新順序を動的に生成してもよい。
さらに、上記例では、一つのパイロットサブキャリアを1度しか更新に用いていないが、複数回更新に用いても良い。また、更新に用いないパイロットサブキャリアが存在してもよい。
[第2実施形態:ウェイト推定値の平滑化]
図15は、フィルタリング処理部14の第2実施形態を示している。なお、第2実施形態において特に説明しない点については、図5のフィルタリング処理部14と同様である。
図15のフィルタリング処理部14では、図5のフィルタリング処理部14と比べて、ウェイト平滑化部149が追加されている。また、ウェイト平滑化部149の追加に伴い、第6バッファ150及び平滑化パラメータ調整部151が追加されている。また、第2バッファ(ウェイト推定値記憶部)144の機能が、変更されている。
ここでの第2バッファ(ウェイト推定値記憶部)144は、パイロットサブキャリアの位置でのウェイト推定値を複数個保存する。第2バッファ144のウェイト推定値は、後述のウェイト平滑化部149において使用されなくなると随時消去される。
ウェイト平滑化部149は、第2バッファ144に保存されている複数のウェイト推定値それぞれの平滑化(smoothing)処理を行って、ウェイトの平滑化推定値を算出する(平滑化ステップ)。ウェイト平滑化部149によって算出されたウェイト平滑化推定値は、第6バッファ150へ出力される。なお、平滑化処理の詳細は後述する。
第6バッファ(ウェイト平滑化推定値記憶部)150は、複数の平滑化推定値を保存することができる。第6バッファ150の平滑化推定値は、後述のウェイト補間部145において使用されなくなると随時消去される。なお、ウェイト補間部145は、ウェイトの平滑化推定値を用いて、データサブキャリア位置でのウェイトW(k,l)を補間する。
[ウェイト推定値の平滑化処理(平滑化ステップ)]
さて、図5に関して説明したように、ウェイト更新部143におけるウェイト更新処理の結果得られたウェイト推定値は、所定のウェイト更新回数M分、第2バッファ144に蓄積される。すなわち、第2バッファには、過去M回のウェイト更新で得られたM個のウェイト推定値が保存可能である。
ここでは、更新順序ルールとして図12の第1更新順序ルールを用いたものとして説明する。また、図12のシンボル番号k=1〜6,サブキャリア番号l=1〜Lの範囲を、平滑化の対象領域の一つであるとして説明する。図16は、図12に示す第1更新順序ルールに対応する一つの平滑化領域を示している。
また、図17は、一つの平滑化対象領域における一連のM回のウェイト更新で得られたM個のウェイト推定値W(k,l)を、ウェイト更新に用いたパイロットサブキャリアX(k,l)及びウェイト推定値の平滑化推定値WS(k,l)とともに、ウェイト更新順に並べたものを示している。なお、図17中、mは、ウェイト更新回数を示している。
図17からもわかるように、M個のウェイト推定値W(k,l)のうち、最も多くの情報(M個のパイロットサブキャリア)が反映されているのは、最後(m=M番目)のウェイト更新で得られたW(6,1)である。一方、平滑化対象領域における最初のウェイト更新で得られたW(1,1)は、最も少ない情報(1個のパイロットサブキャリア)しか反映されていない。一般には、多くの情報(パイロットサブキャリア)を用いて推定されたウェイトの方が、より精度が高くなる。
そこで、ここでの平滑化処理では、最も多くの情報が反映されているW(kM、lM)=W(6,1)を、平滑化対象領域における他のウェイトW(km,lm)(m=1〜M−1)に反映させる。
具体的には、ここでのウェイト平滑化部149が行う平滑化処理は、図18に示すとおりである。
まず、平滑化部149は、ウェイト推定値W(kM、lM)を、第2バッファ144から第6バッファ150へ送る(ステップS1)。ウェイト推定値W(kM、lM)は、最も多くの情報が反映されており、更に平滑化を行う必要がないので、平滑化推定値WS(kM、lM)=ウェイト推定値W(kM、lM)とする。なお、ステップS1の処理も、必要であれば、後述のステップS5と同様に、平滑化演算処理というものとする。
続いて、ウェイト平滑化部149は、カウンタm=M−1とする(ステップS2)。そして、ウェイト平滑化部149は、第2バッファ144からウェイト推定値W(km,lm)を取得するとともに(ステップS3)、第6バッファ150から先に得た平滑化推定値WS(km+1、lm+1)を取得する(ステップS4)。なお、ウェイト平滑化部149は、平滑化パラメータβを平滑化パラメータ調整部151から取得する。
そして、ウェイト平滑化部149は、ステップS5の演算式に従った平滑化演算処理を行う。ステップ5の平滑化演算処理ではウェイト更新部143で得られたウェイト推定値W(km,lm)と、当該ウェイト推定値W(km,lm)を求めた後(直後)のウェイト更新で得られたウェイト推定値W(km+1,lm+1)についての平滑化推定値WS(km+1,lm+1)とを合成(パラメータ(重み係数)βによる重み付き合成)し、ウェイト推定値W(km,lm)の平滑化推定値WS(km,lm)を得る。
ここで、ウェイト推定値W(km,lm)を「ウェイト先推定値」といい、ウェイト推定値W(km+1,lm+1)を「ウェイト後推定値」というものとする。
ウェイト先推定値W(km,lm)とウェイト後推定値W(km+1,lm+1)とを比較すると、ウェイト後推定値W(km+1,lm+1)は、ウェイト先推定値W(km,lm)よりも後(直後)のウェイト更新処理によって得られた値であるから、より多くの情報が反映されている(図17参照)。
また、いずれの平滑化推定値も、平滑化領域内での最後のウェイト更新によって得られたウェイト推定値W(kM、lM)の情報を含んでいる。
したがって、上記合成によって得られた平滑化推定値WS(km,lm)は、平滑化前のウェイト推定値W(km,lm)よりも多くの情報が反映されたものとなり、精度が良いものとなる。
そして、ウェイト平滑化部149は、算出された平滑化推定値WS(km,lm)を第6バッファ150へと送る(ステップS6)。
その後、ウェイト平滑化部149は、上記平滑化演算の繰り返しの終了判定として、m=1か否かを判定する(ステップS7)。m=1でなければ、mをデクリメントし、再び、ステップS3〜S6の処理を行う。また、m=1であれば、平滑化処理を終了する。
以上の平滑化処理により、平滑化推定値WS(km,lm)が、m=M,M−1,・・・2,1の順番で得られる。つまり、ウェイト更新と逆の順番で平滑化推定値が得られる。なお、図16には、平滑化処理の順番D1−S,D2−S,D3−S,D4−Sを点線の矢印で示した。
平滑化処理を行うことにより、比較的に初期のウェイト更新で得られるウェイト(未収束のウェイト)についても、多くのパイロット信号の情報を反映させた良好なウェイトを得ることができる。
具体的には、例えば、ウェイト推定値W(1,1)は、1個のパイロット信号に基づいて得られたものであり、通常、収束していない推定値であるが、平滑化推定値WS(1,1)には、M個のパイロット信号の情報が反映されている。また、他の平滑化推定値WS(km,lm)についても同様である。
その結果、それぞれのウェイトの精度が向上するほか、平滑化推定値を用いてウェイト補間が行われるため、信号推定も全体的に良好となる。
なお、上記の例では、ウェイト更新と逆の順番で平滑化演算を行ったが、M個のウェイト推定値をどのような順番で平滑化演算の対象とするかは、上記の例に限られない。例えば、m=M,1,2,・・・,M−2,M−1の順番であってもよい。つまり、後のウェイト更新で得られたウェイト推定値を、前のウェイト更新で得られたウェイト推定値に反映できれば、どのような順番であってもよい。つまり、ウェイト更新順と無関係に平滑化演算の順番を決定してもよい。
なお、平滑化処理は、平滑化対象領域ごとに行われ、他の平滑化対象領域についても同様に行われる。また、時間軸−周波数軸のサブキャリア2次元配置をどのようにして、複数の平滑化対象領域に区切るかは、自由である。
ただし、好ましくは、一つの平滑化対象領域内での伝搬係数の変動ができるだけ少ないように設定するのがよい。例えば、OFDMAにおける複数のアップリンクサブフレームに跨って一つの平滑化対象領域を構成したり、OFDMAにおける複数のダウンリンクサブフレームに跨って一つの平滑化対象領域を構成したりするのは避けた方が好ましい。複数のサブフレーム間には、実際には、時間間隔があるため、伝搬係数の変動が大きくなる可能性があるからである。
また、平滑化対象領域は、好ましくは、ユーザ割当の最小単位とするのが好ましい。より具体的には、OFDMAのアップリンクPUSCの場合、ユーザ割当の最小単位であるタイル一つを一つの平滑化対象領域とし、OFDMAのアップリンクPUSCの場合、ユーザ割当の最小単位であるクラスタ一つを一つの平滑化対象領域とするのが好ましい。
OFDMAのように、一つのサブフレームが複数のユーザに割り当てられる通信方式の場合、一つのサブフレーム内であっても、ユーザが切り替われば、伝搬係数は変化する。したがって、ユーザ割当最小単位を平滑化対象領域としておくことで、伝搬係数の変動が少ない領域で平滑化を行うことができる。
さて、図18のステップ5の演算式から明らかなように、平滑化演算によって、後のウェイト更新によるウェイト後推定値の情報(平滑化推定値WS(km+1,lm+1))をどの程度、ウェイト先推定値W(km,lm)の平滑化推定値WS(km,lm)に反映されるかは、平滑化パラメータβの値次第である。
前述のウェイト更新パラメータQ,Rと同様に、βの値を調整することによって、周波数軸方向、時間軸方向に対するウェイト変動への追従特性を調整することができる。
[平滑化パラメータβの調整]
パイロットサブキャリアX(km,lm)X(km+1,lm+1)間で、最適ウェイトの変動量が小さい場合、ウェイト後推定値の平滑化推定値WS(km+1,lm+1)の情報をより多く利用すべきであるから、平滑化パラメータβを大きくした方が、ウェイト先推定値の平滑化推定値の推定精度は向上する。
一方、パイロットサブキャリアX(km,lm)X(km+1,lm+1)間で、最適ウェイトの変動量が大きい場合、ウェイト後推定値の平滑化推定値WS(km+1,lm+1)の情報をあまり利用しない方が、ウェイト変動への追従特性が向上する。よって、この場合、平滑化パラメータβを小さくした方が、ウェイト先推定値の平滑化推定値の推定精度は向上する。
そこで、平滑化パラメータ調整部151では、更新パラメータ調整部180と同様に、ウェイト変動量計算部170で求めたウェイト変動量Qに応じて、平滑化パラメータβを調整する。
具体的には、平滑化パラメータβは、β=f2(Q)の演算によって調整される。Qは、パイロットサブキャリアX(km,lm)X(km+1,lm+1)間における最適ウェイト変動量である。また、f2は、相互相関から平滑化パラメータを求めるための関数であり、ウェイト変動量が小さければ平滑化パラメータβを大きくし、ウェイト変動量が大きければ平滑化パラメータβを小さくする関数として構成されている。
上記のような平滑化パラメータ調整を行うことで、平滑化方向(図16参照)及び/又は伝搬環境に応じて、適切なウェイト平滑化が行え、ウェイト推定精度を向上させることができる。
[第3実施形態:ウェイト推定値の平滑化]
図19〜図21は、第3実施形態に係るフィルタリング処理部14を示している。なお、第3実施形態において特定に説明しない点については、既述のものと同様である。
第3実施形態のウェイト平滑化部149は、ウェイト更新143の更新順序とは逆の順序により平滑化のための更新演算を行う(図16の点線矢印参照)。
具体的には、図20に示す手順により平滑化処理が行われる。まず、平滑化部149は、ウェイト推定値W(kM、lM)を、第2バッファ144から第6バッファ150へ送る(ステップS11)。つまり、ウェイト推定値W(kM、lM)が、そのまま平滑化推定値WS(kM、lM)となる。
続いて、ウェイト平滑化部149は、カウンタm=M−1とする(ステップS12)。そして、ウェイト平滑化部149は、第1バッファ141からパイロットサブキャリアX(km,lm)を取得するとともに(ステップS13)、第6バッファ150から先に得た平滑化推定値WS(km+1、lm+1)を取得する(ステップS14)。なお、ウェイト平滑化部149は、参照信号S(km,lm)を取得する。また、ウェイト平滑化部149は、ウェイト平滑化部149でのウェイト更新のためのパラメータPを第7バッファ155から、パラメータαを平滑化パラメータ調整部(更新パラメータ調整部)156から取得する。
パラメータαは、ウェイト変動量Q(1)Q(2)に応じて、平滑化パラメータ調整部156によって、適宜調整される。
そして、ウェイト平滑化部149は、下記式に示す平滑化演算式に従った平滑化演算処理(更新演算処理)を行う(ステップS15)。下記平滑化演算処理は、ウェイト更新におけるRLSアルゴリズムと同様のものである。
ステップ15の平滑化演算処理では、図21にも示すように、直前に求めた平滑化推定値WS(km+1,lm+1)を、パイロットサブキャリアX(km,lm)に基づいて、上記式の演算によってウェイト更新することによって得られた推定値を、ウェイト推定値W(km,lm)の平滑化推定値WS(km,lm)として得る。
さて、ここでも、ウェイト推定値W(km,lm)を「ウェイト先推定値」といい、ウェイト推定値W(km+1,lm+1)を「ウェイト後推定値」というものとする。
ウェイト先推定値W(km,lm)と、ウェイト後推定値W(km+1,lm+1)の平滑化推定値WS(km+1,lm+1)とを比較すると、平滑化推定値WS(km+1,lm+1)は、パイロットサブキャリア(後パイロット信号)X(km+1,lm+1)に基づいて演算されたウェイト先推定値W(km+1,lm+1)を平滑化したものであるから、多くの情報が反映されたものである(図21参照)。
したがって、上記のように、ウェイト後推定値W(km+1,lm+1)の平滑化推定値WS(km+1,lm+1)を、パイロットサブキャリア(先パイロット信号)X(km,lm)に基づいて、ウェイト更新することで、元のウェイト推定値W(km,lm)よりも精度の良い平滑化推定値WS(km,lm)が得られる。
そして、ウェイト平滑化部149は、算出された平滑化推定値WS(km,lm)を第6バッファ150へと送る(ステップS16)。
その後、ウェイト平滑化部149は、上記平滑化演算の繰り返しの終了判定として、m=1か否かを判定する(ステップS17)。m=1でなければ、mをデクリメントし、再び、ステップS13〜S16の処理を行う。また、m=1であれば、平滑化処理を終了する。
以上の平滑化処理により、平滑化推定値WS(km,lm)が、m=M,M−1,・・・2,1の順番で得られる(図16参照)。
図19の平滑化パラメータ調整部156では、前述のように、平滑化パラメータ(忘却係数)αが適宜調整される。平滑化パラメータαは、α=f1(Q)によって求められる。なお、ここでのQは、パイロットサブキャリアX(km,lm)X(km+1,lm+1)間におけるウェイト変動量の大きさである。
なお、第3実施形態のウェイト平滑化部149の更新アルゴリズムとしては、RLSアルゴリズムが採用されているが、他のアルゴリズム、例えば、LMSアルゴリズムやSMIアルゴリズムを用いても良い。
また、平滑化に用いるパイロット信号の順番も、上記のものに限らず、自由である。
[第4実施形態:ウェイト推定値の平滑化]
図22〜図24は、第4実施形態に係るフィルタリング処理部14を示している。なお、第4実施形態において特定に説明しない点については、既述のものと同様である。
第4実施形態では、主に、ウェイト平滑化部149が、既述の実施形態のものと異なる。
なお、図22に示す第3バッファ(更新パラメータ記憶部)148は、ウェイト更新部から送られてくるパラメータP(km,lm)を保存する。第3バッファ148は、P(km,lm)がウェイト更新部143及びウェイト平滑化部149で使用されなくなると消去する。また、図22に示す第7バッファ(平滑化パラメータ記憶部)162は、ウェイト平滑化部149から送られてくるパラメータλを保存する。ここでは、λの初期値は0とする。
第4実施形態のウェイト平滑化部149は、平滑化アルゴリズムとして、固定区間スムーザ(fixed-interval smoother)を利用する。なお、ここでは、固定区間スムーザとしてFraserのアルゴリズムを用いる。
具体的には、図23に示す手順により平滑化処理が行われる。まず、平滑化部149は、ウェイト推定値W(kM、lM)を、第2バッファ144から第6バッファ150へ送る(ステップS21)。つまり、ウェイト推定値W(kM、lM)が、そのまま平滑化推定値WS(kM、lM)となる。
続いて、ウェイト平滑化部149は、カウンタm=M−1とする(ステップS22)。そして、ウェイト平滑化部149は、第1バッファ141からパイロットサブキャリアX(km+1,lm+1)を取得するとともに(ステップS23)、第2バッファ144から平滑化対象のウェイト推定値WS(km、lm)を取得する(ステップS24)。
なお、ウェイト平滑化部149は、参照信号S(km+1,lm+1)を参照信号生成部160から取得し、ウェイト更新演算の際に求めたパラメータP(km、lm)を第3バッファ148から取得し、λm+1を第7バッファ162から取得する。
そして、ウェイト平滑化部149は、下記式に示す平滑化演算式に従った平滑化演算処理を行う(ステップS25)。
ステップ25の平滑化演算処理では、図24にも示すように、ウェイト更新部143にて求めたウェイト推定値W(km,lm)を、Fraserのアルゴリズムで平滑化して、平滑化推定値WS(km,lm)を求めている。
さて、ここでは、ウェイト推定値W(km,lm)を「ウェイト先推定値」といい、ウェイト推定値W(km+1,lm+1)を「ウェイト後推定値」というものとする。また、ウェイト先推定値W(km,lm)を求めるために用いたパイロット信号X(km,lm)を先パイロット信号といい、ウェイト後推定値W(km+1,lm+1)を求めるために用いたパイロット信号X(km+1,lm+1)というものとする。
上記演算式では、後パイロット信号X(km+1,lm+1)の情報が反映されるように、ウェイト先推定値W(km,lm)の平滑化を行う。したがって、ウェイト先推定値W(km,lm)の平滑化推定値WS(km,lm)は、後パイロット信号X(km+1,lm+1)の情報が反映されたものとなる(図24参照)。
なお、平滑化を行う際の平滑化パラメータであるQ(km+1,lm+1)は、パイロットサブキャリアX(km,lm)X(km+1,lm+1)間のウェイト変動量であり、平滑化パラメータ調整部161によって調整される。
そして、ウェイト平滑化部149は、算出された平滑化推定値WS(km,lm)を第6バッファ150へと送る(ステップS26)。なお、ウェイト平滑化部149は、更新されたλmを第7バッファ162へ送り、第7バッファ162は、次の平滑化演算処理に用いるためにλmを保存する。
その後、ウェイト平滑化部149は、上記平滑化演算の繰り返しの終了判定として、m=1か否かを判定する(ステップS27)。m=1でなければ、mをデクリメントし、再び、ステップS23〜S26の処理を行う。また、m=1であれば、平滑化処理を終了する。
以上の平滑化処理により、平滑化推定値WS(km,lm)が、m=M,M−1,・・・2,1の順番で得られる(図16参照)。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図を逸脱しないかぎり、様々な変形が可能である。
1:通信装置(基地局)、2:希望局、11:アンテナ素子、14:フィルタリング処理部、141:第1バッファ(受信信号記憶部)、142:ウェイト乗算部、143:ウェイト更新部、144:第2バッファ(ウェイト推定値記憶部)、145:ウェイト補間部、146:順序制御部、146a:更新順序決定部、146b:更新順序ルール記憶部、147:参照信号生成部、148:第3バッファ(ウェイト更新パラメータ記憶部)、149:ウェイト平滑化部、150:第6バッファ(ウェイト平滑化推定値記憶部)、151:平滑化パラメータ調整部、153:更新パラメータ調整部、154:参照信号生成部、155:第7バッファ(平滑化パラメータ記憶部)、156:平滑化(更新)パラメータ調整部、160:参照信号生成部、161:平滑化パラメータ調整部、162:第7バッファ(λ記憶部)、170:ウェイト変動量計算部、171:送信信号推定部、172:誤差計算部、173:参照信号生成部、174:平均誤差更新部、175:第4バッファ(平均誤差記憶部)、176:変動量推定部、177:誤差R推定部、178:受信電力計算部、179a:受信電力更新部、179b:第5バッファ(受信電力記憶部)、180:更新パラメータ調整部