JP2012235004A - 圧電体膜の前駆体溶液および圧電素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酢酸及び/又はプロピオン酸からなるカルボン酸と、酢酸鉛と、Zr(OR1)4で表されるジルコニウムアルコキシドと、(OR1は炭素数が3〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である)Ti(OR2)4で表されるチタニウムアルコキシドと、(OR2は炭素数が3〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である)高分子化合物と、を含む原料を混合することで得られる圧電体膜の前駆体溶液であって、前記原料全量に対する前記カルボン酸の割合が20質量%以上60質量%以下であり、かつ、前記ジルコニウムアルコキシドの配位子OR1または前記チタニウムアルコキシドの配位子OR2の少なくとも一方の配位子が分岐鎖状のアルコキシ基であることを特徴とする圧電体膜の前駆体溶液。
【選択図】図1
Description
MOD法によって成膜する場合、所望の金属酸化物の原料となる有機酸塩の混合溶液が用いられる。例えば、特許文献2には、金属酸化物の前駆体溶液として、鉛、チタンおよびジルコニウムそれぞれの有機酸塩の混合溶液が開示されている。
金属の有機酸塩、アルコキシドおよび錯体を混合した圧電体膜の前駆体溶液としては、例えば、特許文献3には、金属酸化物の前駆体溶液として、ストロンチウムおよびビスマスそれぞれの有機酸塩の混合溶液が開示されており、例えば、特許文献4には、金属酸化物の前駆体溶液として、アセチルアセトナート錯体の分散安定性を良好にするために、酢酸を含有した圧電体膜形成用組成物が開示されている。
安定化剤の含有比率を減少させると、大気中等の水分により加水分解が進行し、前駆体溶液の保存安定性が低下する場合がある。一方、アルコールに代表される溶媒の含有比率を減少させると沈殿が発生し、均一な膜形成が困難になったり、前駆体溶液の粘度増加によって塗布膜にムラが発生したりする場合がある。
有機金属化合物として有機酸塩を用いる場合、配位子の鎖長が増すにつれて溶媒への溶解度が増大するが、含有金属濃度は低下してしまう。よって、得られる圧電体膜の膜厚と前駆体溶液との間に妥協点を見出さなければならない。特許文献3では、得られる強誘電体膜の結晶膜厚は100nm程度である。
上記目的を達成する本発明の態様は、酢酸及び/又はプロピオン酸からなるカルボン酸と、酢酸鉛と、Zr(OR1)4で表されるジルコニウムアルコキシド(OR1は炭素数が3〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である)と、Ti(OR2)4で表されるチタニウムアルコキシド(OR2は炭素数が3〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である)と、高分子化合物と、を含む原料を混合することで得られる圧電体膜の前駆体溶液であって、前記原料全量に対する前記カルボン酸の割合が20質量%以上60質量%以下であり、かつ、ジルコニウムアルコキシドの配位子OR1またはチタニウムアルコキシドの配位子OR2の少なくとも一方の配位子が分岐鎖状のアルコキシ基であることを特徴とする圧電体膜の前駆体溶液にある。
上記のカルボン酸の含有量は、前駆体溶液の調製に用いる原料全量に対して20質量%以上60質量%以下とすることが好ましい。20質量%以上とすることで、大気中の水分による加水分解を防ぐことができる。一方、60質量%以下とすることで上述の工程で得られる膜の膜厚を厚くすることができる。
例えば、圧電体膜の前駆体溶液を用いて、スピンコート法によって薄膜を成膜する場合、圧電体膜の前駆体溶液の粘度は5〜15mPa・s、前駆体溶液に含まれる金属原料の酸化物換算濃度は12〜32%とすることができる。なお、金属原料の酸化物換算濃度は、原料組成から算出できるほか、燃焼法やICP分析などの定法によって前駆体溶液から調べることも可能である。
また、本態様では、高分子化合物を前駆体溶液に添加することによって、クラックの発生を防止することが可能となる。
また、前記圧電体膜の前駆体溶液は、前記ジルコニウムアルコキシドの配位子OR1および前記チタニウムアルコキシドの配位子OR2が、ともに、分岐鎖状のアルコキシ基とすることができる。
分岐鎖状のアルコキシ基を有する金属アルコキシドを用いることで、カルボン酸エステルの生成量が抑制されるので、圧電体膜の前駆体溶液の経時変化がなく、得られる圧電体膜の膜厚の変動を抑えることが可能となる。なお、カルボン酸がカルボン酸エステルになると、圧電体膜の前駆体溶液に含有される溶媒の揮発性が変化するため、得られる圧電体膜の膜厚は厚くなる場合が多い。
また、前記圧電体膜の前駆体溶液は、溶媒として、さらに、水、2級または3級のアルコール類、エーテル類、エステル類、およびケトン類から選ばれる1種または2種以上を含むことができる。
上述したカルボン酸エステルの原料となるカルボン酸を水、2級または3級のアルコール類、エーテル類、エステル類およびケトン類に置き換えることで、カルボン酸エステルの生成反応を抑制することが可能となる。
また、前記圧電体膜の前駆体溶液は、前記高分子化合物が、ポリエチレングリコールおよびその誘導体ならびにポリプロピレングリコールおよびその誘導体から選ばれる1種または2種以上であり、さらに、前記高分子化合物の重量平均分子量が300〜800であることが好ましい。
高分子化合物を添加した圧電体膜の前駆体溶液であれば、上述の工程において、膜の収縮に起因する応力を緩和することが可能となる。一方、結晶化膜においては高分子化合物が残存しないことが圧電特性の観点からは望ましい。何故なら、高分子化合物が水や二酸化炭素等に分解・脱離せずに、残留炭素等の形態で膜中に存在すると、空隙の発生、あるいは絶縁性の低下等によって、圧電特性に悪影響を及ぼすためである。したがって、高分子化合物には良好な熱分解性が求められる。炭素−炭素結合と比べて、炭素−酸素結合は結合力が弱いために、熱分解性が良好である。ゆえに、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、ならびにポリプロピレングリコールおよびその誘導体は、圧電体膜のクラック防止剤として好適に使用することが可能である。
高分子化合物の平均分子量が小さくなると、低分子のように振舞うために圧電体膜の成膜工程における応力緩和効果が十分に得られなくなる。また、高分子化合物の平均分子量が大きくなると、成膜工程における加熱処理時に十分に熱分解しなくなるために、残留炭素等の形態として膜中に存在し、圧電体膜の絶縁性低下といったような特性の劣化につながる。
高分子化合物の重量平均分子量を300〜800にすれば、十分な応力緩和効果と熱分解性を有するため、圧電体膜の特性を劣化させることなく、圧電体膜のクラック防止を行うことが可能となる。なお、重量平均分子量は、分子量標準物質をポリエチレングリコールとしたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により得られた分子量分布から算出される。
さらに、本発明の他の態様としては、前記圧電体膜の前駆体溶液に含まれる金属元素の酸化物換算濃度が、15質量%以上27%質量%以下とすることができる。
金属元素の酸化物換算濃度とは、圧電体膜の前駆体溶液に対する、圧電体膜の前駆体溶液に含まれる各金属元素を酸化物とした質量の総和の割合である。したがって、PZT前駆体溶液の場合、PZT前駆体溶液全量に対するPbO、ZrO2およびTiO2の質量の総和の割合となる。なお、金属酸化物換算濃度は、用いる有機金属化合物から算出することができるほか、重量法やICP分析法等を用いて圧電体膜の前駆体溶液から調べることも可能である。
液相法としてスピンコート法を用いて得られる膜の膜厚は、スピンコート回転数と、金属元素の酸化物換算濃度と、に影響を受けることが知られている。金属元素の酸化物換算濃度を本態様の範囲とすることで、上述の工程で得られる膜の膜厚を厚くすることができる。
本発明の他の態様としては、前記圧電体膜の前駆体溶液がさらに、少なくとも1種以上の有機金属化合物を含むことができる。
本発明の他の態様は、上記圧電体膜の前駆体溶液を用いた圧電素子の製造方法にある。
本態様によれば、従来の圧電体膜の前駆体溶液を用いた場合よりも、1層あたりの圧電体膜を厚くすることが可能となるため、圧電素子の生産性を向上することが可能となる。
図1は、本発明の実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1の概略構成を示す分解斜視図であり、図2(a)は、図1の平面図、図2(b)は(a)におけるA−A断面図である。
インクジェット式記録ヘッド1は、流路形成基板10、ノズルプレート20および保護基板30を備えている。
また、図1および図2において、下電極60は、各圧力発生室12の長手方向一端部側から周壁上まで延設されている。そして下電極60には、圧力発生室12の外側の領域で、例えば、金(Au)等からなるリード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加されるようになっている。一方、圧力発生室12の長手方向のリード電極90が接続された側とは反対側の下電極60の端部は、圧力発生室12に対向する領域内に位置している。
まず、図4(a)に示すように、シリコンウェハーであり流路形成基板10が複数一体的に形成される流路形成基板用ウェハー110の表面に弾性膜50を構成する酸化膜51を形成する。
この下電極60の材料は、特に限定されないが、圧電体層70としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いる場合には、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ない材料であることが望ましい。圧電体層70を液相プロセスによって形成する場合には、熱処理による下電極60の酸化が起こり難いことが望ましい。このため、下電極60の材料としては白金、イリジウム等が単体あるいは積層体として好適に用いられる。
また、下電極60は、例えば、スパッタリング法やPVD法(物理蒸着法)などにより形成することができる。なお、下電極60の成膜に先立ち、チタン、ジルコニウム又はクロムからなる、厚さが例えば0.005μm〜0.05μmである密着層(図示せず)をスパッタ法又は真空蒸着法により成膜しても良い。また、下電極60の成膜後、連続して下電極60上にチタン層(図示せず)を形成してもよい。例えばスパッタ法等により、チタン層を0.003μm〜0.02μmの厚みに成膜することで、所定の結晶配向度を備えた圧電体層70を得ることが可能である。チタン層は下電極60上に均一に成膜するが、場合によって層状ではない島状となっても構わない。
以下に、圧電体膜を含む圧電体層70の製造方法について説明する。圧電体層70の製造方法は、調製工程と塗布工程と乾燥工程と脱脂工程と焼成工程とを含む。
混合は、いわゆる1ポット調製であってもよく、または複数に分けて行ってもよい。例えば、1ポット調製としては、カルボン酸に、ジルコニウムアルコキシドおよびチタニウムアルコキシドを混合し、次いで酢酸鉛を加え、最後に高分子化合物を混合することで圧電体膜の前駆体溶液を得る。複数に分ける場合は、例えば、カルボン酸と酢酸鉛を混合することで得られる第1の溶液と、カルボン酸とジルコニウムアルコキシドを混合することで得られる第2の溶液と、カルボン酸とチタニウムアルコキシドを混合することで得られる第3の溶液を、個別に調製し、3種類の溶液と高分子化合物とを混合することで最終的に圧電体膜の前駆体溶液を得る。
混合は、25℃程度の室温で行ってもよいし、加熱して行ってもよい。例えば、酢酸鉛としての酢酸鉛(II)三水和物は固体であるため、混合の際に加熱することで、溶解を促すことが可能である。また、鉛、ジルコンおよびチタン原料の混合モル比は、得られる圧電体層70の圧電特性に影響を及ぼすため、例えば、Pb:Zr:Ti=1.05〜1.25:0.46〜0.56:0.44〜0.54(モル比)となるように設定することが好ましい。
A−COOH+B−OH ⇔ A−COO−B+H2O ・・・(1)
カルボン酸エステルは、原料であるカルボン酸、又はアルコールと比べて、揮発性が高くなる場合が多い。したがって、圧電体膜の前駆体溶液に遊離アルコールが存在し、カルボン酸エステルの生成反応が経時的に進行する場合、成膜工程によって得られる膜厚が変動してしまう。
エステル類としては、特に限定はされないが、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸エチル、n−酪酸エチルおよびエチレングリコールジアセテート等が挙げられる。さらに、エーテル類でありエステル類でもあるエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等も用いることが可能である。
ケトン類としては、特に限定はされないが、例えば、ジメチルケトン(アセトン)、ジエチルケトン、ジn−プロピルケトン、ジiso−プロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルiso−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルiso−ブチルケトン、メチルtert−ブチルケトン、メチルiso−ペンチルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルiso−プロピルケトンおよびエチルn−ブチルケトン等が挙げられる。
まず、塗布工程において、図5(d)に示すように、下電極60上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜71を成膜する。すなわち、下電極60が形成された流路形成基板用ウェハー110上に圧電体膜の前駆体溶液を塗布する。
圧電体膜の前駆体溶液の塗布方法としては、スピンコート法、スプレーコート法およびディップコート法等が挙げられる。実施形態では、半導体プロセスに用いられる種々の装置を利用するために、基板片面に塗布が可能で、基板面内の膜厚均一性が良好なスピンコート法を用いるのが好ましい。スピンコートの塗布条件(回転数、時間等)は、用いる圧電体膜の前駆体溶液によって適宜設定することが可能であるが、基板面内における膜厚均一性の確保や、塗布面の反対側への前駆体溶液の回りこみ防止といった観点から回転数を500〜5000rpm程度に設定するのが好ましい。また、スピンコート時にリンス液を用いて、基板外周部および塗布面の反対側を洗浄することが可能であり、これらはエッジリンスおよびバックリンスと呼称される。
なお、ここで言う脱脂とは、加熱することによって圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、CO2、H2O、アルコール、炭化水素等として離脱させることである。したがって、脱脂温度は圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分の状態によって設定するべきであり、脱脂温度を設定する指標としては熱分析(TG/DTA測定、DSC測定等)結果を利用することが可能である。熱分析によって、前駆体溶液の脱脂に伴う発熱反応、あるいは重量変化が起きる温度を測定することが可能である。
また、脱脂とは、PZTを圧電体膜として利用する場合、強誘電性を有さないパイロクロア相が形成されることを防ぐために、圧電体前駆体膜71が結晶化しない程度に、すなわち、非晶質の圧電体前駆体膜71を形成することを言う。圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分の蒸発あるいは熱酸化分解による除去が目的であるため、酸素を含む雰囲気であればよく、大気雰囲気中で行うことが可能である。
各実施例および各比較例は、圧電体膜の前駆体溶液が異なるが、塗布工程、乾燥工程、脱脂工程および焼成工程は同じ条件で行った。最初に圧電体膜の前駆体溶液の調製工程を実施例および比較例について説明し、同じ工程については、後に説明する。また、各実施例および各比較例の圧電体膜の前駆体溶液に用いた原料を図8に示した。
[実施例1]
まず、200mLのガラスフラスコに、溶媒として酢酸43.0gを秤量し、これにジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液(濃度:86.0質量%)14.0gと、チタニウム原料としてチタニウムテトライソプロポキシド8.4gを加えて、マグネチックスターラーを用いて、25℃の室温にて30分間の撹拌を行い、混合溶液を得た。次いで、この混合溶液に、さらに鉛原料として酢酸鉛(II)三水和物27.3gと、高分子化合物としてポリエチレングリコール(平均分子量600)6.8gとを加え、80℃のオイルバスで1時間の加熱撹拌を行い、最終的なPZT前駆体溶液とした。
本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図9に示した。本実施例のPZT前駆体溶液に含まれる金属成分を酸化物として、すなわち酸化鉛PbO、酸化ジルコニウムZrO2、および酸化チタンTiO2として金属酸化物換算濃度を算出すると、22.4質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、43.2質量%であった。
溶媒として酢酸50.0gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図9に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、46.9質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸37.0gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図9に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、23.8質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、39.6質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸40.0gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図9に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、23.1質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、41.4質量%であった。
溶媒として酢酸20.0gとプロピオン酸20.0gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図9に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、23.1質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、41.4質量%であった。
溶媒としてアセチルアセトン30.0gと2−n−ブトキシエタノール10.0gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本比較例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図9に示した。本比較例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、23.1質量%であった。
溶媒として2−n−ブトキシエタノール69.0gとジエタノールアミン15.0gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本比較例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図9に示した。本比較例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、15.9質量%であった。
溶媒として2−n−ブトキシエタノール33.0gとジエタノールアミン7.0gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本比較例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図9に示した。本比較例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、23.1質量%であった。
溶媒として2−n−ブトキシエタノール25.0gとジエタノールアミン15.0gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本比較例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図9に示した。本比較例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、23.1質量%であった。
塗布には、図4(c)で示される流路形成基板用ウェハー110を用いた。具体的には、直径が150mmであり、厚さが700μmであるシリコン単結晶基板上に、熱酸化によって膜厚が1.1μmのSiO2を弾性膜50として形成し、次いで、スパッタ法によって膜厚が0.4μmのZrO2を絶縁体膜55として形成し、さらに、スパッタ法により膜厚が130nmのPtと膜厚が20nmのIrとの積層体を下電極60として形成した。
また、下電極60の成膜に先立って、膜厚が10nmのチタン層を密着層として形成し、下電極60の成膜後に、膜厚が5nmであるチタン層を形成した。実施例1〜5および比較例1〜4のPZT前駆体溶液を用いて、25℃、40%RHの環境でスピンコートを行った。スピンコートの条件として、滴下するPZT前駆体溶液を4mLとし、回転数を2000rpmとし、回転時間を60秒間として、上記の基板に塗布を行った。なお、塗布は、各PZT溶液の調製からそれぞれ1日後に行った。
(乾燥工程)
塗布工程の後に、乾燥工程として、140℃のホットプレートを用いてで5分間の熱処理を行った。
(脱脂工程)
乾燥工程の後に、脱脂工程として、400℃のホットプレートで5分間の熱処理を行った。
(焼成工程)
脱脂工程の後に、焼成工程として、RTA装置を用いて酸素フローを行いながら、700℃で5分間の熱処理を行った。
実施例1〜5および比較例1〜4のPZT前駆体溶液について、耐水性試験を行った。ここで言う耐水性試験とは、各PZT前駆体溶液にイオン交換水を添加・揺動した際に、沈殿が発生するか否かで判定した。具体的には、容量が2.0mLのキャップ付ガラス瓶にPZT前駆体溶液1.0gを入れ、次いで、イオン交換水0.5gを添加・揺動して行った。沈殿の発生がなかった場合を○とし、沈殿が発生した場合を×として、各PZT前駆体溶液の耐水性を評価した。得られた評価結果をまとめて図10に示した。
実施例1〜5および比較例1〜4のPZT前駆体溶液について、保存安定性試験を行った。ここで言う保存安定性試験とは、各PZT前駆体溶液を室温にて保存した際に、沈殿が発生するか否かで判定した。具体的には、容量が100mLのキャップ付ガラス瓶にPZT前駆体溶液70gを入れ、遮光された薬品庫にて1ヶ月間、密栓保管した。なお、薬品庫内部の温度は25℃程度(室温)であった。沈殿の発生がなかった場合を○とし、沈殿が発生した場合を×として、各PZT前駆体溶液の保存安定性を評価した。得られた評価結果をまとめて図10に示した。
これに対して、比較例1のPZT前駆体溶液は、調製1日後ですでに沈殿が発生したため、塗布することができなかった。これは、アセチルアセトンの添加量が多すぎたために、溶液としての安定性の低下が起きたものである。
比較例2のPZT前駆体溶液を用いた場合では、PZT前駆体溶液の耐水性および保存安定性は良好であったが、得られたPZT膜の膜厚は90nmであった。
比較例3のPZT前駆体溶液を用いた場合では、比較的厚いPZT膜が得られたが、PZT前駆体溶液の耐水性試験結果が×となった(沈殿が発生した)。これは、ジエタノールアミンの添加量が少ないために、十分な安定化効果が得られなかったためである。
比較例4のPZT前駆体溶液を用いた場合は、PZT前駆体溶液の耐水性および保存安定性は良好であったものの、得られるPZT膜の膜ムラがひどく、評価が出来なかった。これは、ジエタノールアミンの粘度が非常に高いために、2−n−ブトキシエタノールの添加量が少なくなると、PZT前駆体溶液の粘度も高くなってしまい、基板全体に塗布膜を形成することが出来なくなったためである。
[実施例6]
まず、200mLのガラスフラスコに、溶媒として酢酸48.7gを秤量し、これにジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−n−プロポキシド10.3gと、チタニウム原料としてチタニウムテトラ−iso−イソプロポキシド8.4gを加えて、マグネチックスターラーを用いて、25℃の室温にて30分間の撹拌を行い、混合溶液を得た。次いで、混合溶液に、さらに鉛原料として酢酸鉛(II)三水和物27.3gと、高分子化合物として重量平均分子量600のポリエチレングリコール6.8gと、追加溶媒としてイオン交換水5.0gを加え、25℃の室温にて1時間の撹拌を行い、これを最終的なPZT前駆体溶液とした。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、45.8質量%であった。
溶媒として酢酸45.3gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−n−ブトキシド12.1gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラ−iso−ブトキシド10.0gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、42.5質量%であった。
溶媒として酢酸45.3gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−n−ブトキシド12.1gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラ−sec−ブトキシド10.0gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、42.5質量%であった。
溶媒として酢酸47.1gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラ−tert−ブトキシド10.0gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、44.2質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸41.7gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)16.7gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、39.2質量%であった。
溶媒として酢酸47.1gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−iso−プロポキシド10.3gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラ−n−ブトキシド10.0gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、44.2質量%であった。
溶媒として酢酸45.3gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−iso−ブトキシド12.1gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラ−n−ブトキシド10.0gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、42.5質量%であった。
溶媒として酢酸45.3gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド12.1gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラ−n−ブトキシド10.0gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、42.5質量%であった。
溶媒として酢酸46.9gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−tert−ブトキシド12.1gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラ−n−プロポキシド8.4gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、49.2質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸43.3gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)19.1gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラ−n−ブトキシド10.0gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、40.6質量%であった。
溶媒として酢酸48.7gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−iso−プロポキシド10.3gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、45.8質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸50.3gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−tert−ブトキシド12.1gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラ−tert−ブトキシド10.0gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、47.2質量%であった。
溶媒として酢酸45.2gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−tert−ペントキシド13.8gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、42.4質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸44.9gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)19.1gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、42.2質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸45.5gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−iso−プロポキシド10.3gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)16.7gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、42.7質量%であった。
溶媒として酢酸47.0gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−iso−ブトキシド12.1gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、44.1質量%であった。
溶媒として酢酸45.3gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−tert−ブトキシド12.1gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラ−iso−プロポキシド10.0gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、42.5質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸60.6gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラメトキシド6.8gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラメトキシド5.1gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本比較例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本比較例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、56.9質量%であった。
溶媒として酢酸52.2gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラエトキシド8.5gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラエトキシド6.7gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本比較例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本比較例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、49.0質量%であった。
溶媒として酢酸48.7gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトラ−n−プロポキシド8.4gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本比較例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図11に示した。本比較例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、45.8質量%であった。
実施例6〜22および比較例5〜7のPZT前駆体溶液を用いて、PZT膜の成膜を行った。調製して1日後および30日後の各PZT前駆体溶液を用いて、実施例1と同様の成膜工程(塗布工程、乾燥工程、脱脂工程および焼成工程)を行い、各実施例につき2種類のPZT膜を得た。なお、各PZT前駆体溶液は、キャップ付ガラス瓶に入れ、25℃程度の室温で遮光保管していたものを使用した。
実施例6〜22および比較例5〜7のPZT前駆体溶液を用いて得られた各PZT膜について、走査型電子顕微鏡(日立:S−4700)を用いて、断面観察により膜厚を測定した。調製して1日後のPZT前駆体溶液を用いたPZT膜の膜厚を100とし、調製して30日後のPZT前駆体溶液を用いたPZT膜の膜厚を規格化することで、膜厚の再現性評価を行った。以下に示す評価基準を基にした実施例6〜22および比較例5〜7の評価結果を図12に示した。
A:調製して30日後のPZT前駆体溶液を用いて得られたPZT膜の膜厚が100以上110未満。
B:調製して30日後のPZT前駆体溶液を用いて得られたPZT膜の膜厚が110以上120未満。
C:調製して30日後のPZT前駆体溶液を用いて得られたPZT膜の膜厚が120以上。
実施例6〜22および比較例5〜7のPZT前駆体溶液について、実施例1と同様の試験方法および評価基準で耐水性試験を行った。得られた評価結果をまとめて図12に示した。
実施例6〜22および比較例5〜7のPZT前駆体溶液について、実施例1と同様の試験方法および評価基準で保存安定性試験を行った。得られた評価結果をまとめて図12に示した。
比較例5〜7に対し、実施例6〜15では、膜厚の再現性評価結果はいずれもBであった。これは、ジルコニウムアルコキシドの配位子またはチタニウムアルコキシドの配位子のいずれかを分岐鎖としたことによって、カルボン酸エステルの生成が抑制されたためである。実施例16〜22では、膜厚の再現性評価結果はいずれもAであった。これは、ジルコニウムアルコキシドの配位子およびチタニウムアルコキシドの配位子をともに分岐鎖としたことによって、実施例6〜15よりもさらに、カルボン酸エステルの生成が抑制されたためである。
例えば、比較例5において、PZT前駆体溶液中の酢酸メチルとメタノールのピークからエステル変化率を算出した結果、1日後では36mol%、30日後では81mol%であった。ここで、エステル変化率は、100×[カルボン酸エステル]/([カルボン酸エステル]+[アルコール])として算出した。
実施例として、例えば、実施例16において、エステル変化率を算出すると、1日後では6mol%、30日後では10mol%であった。実施例6において、エステル変化率を算出すると、1日後では27mol%、30日後では48mol%であった。
[実施例23]
溶媒として酢酸23.5gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液14.0gを用い、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール10.3gを用い、追加溶媒としてイオン交換水23.5gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図13に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.8質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、22.0質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸23.5gとイソプロピルアルコール23.5gとを用い、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール10.3gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図13に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.8質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、22.0質量%であった。
溶媒として酢酸28.2gとtert−ブタノール18.8gとを用い、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール10.3gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図13に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.8質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、26.4質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸37.6gとジ−n−ブチルエーテル9.4gとを用い、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール10.3gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図13に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.8質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、35.2質量%であった。
溶媒として酢酸32.9gと酢酸n−ブチル14.1gとを用い、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール10.3gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図13に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.8質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、30.8質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸32.9gとエチレングリコールモノメチルエーテルアセタート14.1gとを用い、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール10.3gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図13に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.8質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、30.8質量%であった。
溶媒として酢酸23.5gとイソプロピルアルコール9.4gとを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液14.0gを用い、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール10.3gを用い、追加溶媒としてイオン交換水14.1gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図13に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.8質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、22.0質量%であった。
溶媒として酢酸28.2gと酢酸n−ブチル9.4gとを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液14.0gを用い、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール10.3gを用い、追加溶媒としてイオン交換水9.4gを用いたほかは、実施例6と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図13に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.8質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、26.4質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸37.6gとtert−ブタノール4.7gとエチレングリコールモノメチルエーテルアセタート4.7gとを用い、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール10.3gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図13に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.8質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、35.2質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸37.6gとメチルエチルケトン9.4gとを用い、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール10.3gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図13に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.8質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、35.2質量%であった。
実施例23〜32のPZT前駆体溶液を用いて、PZT膜の成膜を行った。調製して1日後および30日後の各PZT前駆体溶液を用いて、実施例1と同様の成膜工程(塗布工程、乾燥工程、脱脂工程および焼成工程)を行い、各実施例につき2種類のPZT膜を得た。なお、各PZT前駆体溶液は、キャップ付ガラス瓶に入れ、25℃程度の室温で遮光保管していたものを使用した。
実施例23〜32のPZT前駆体溶液を用いて得られた各PZT膜について、走査型電子顕微鏡(日立:S−4700)を用いて、断面観察により膜厚を測定した。調製して1日後のPZT前駆体溶液を用いたPZT膜の膜厚を100とし、調製して30日後のPZT前駆体溶液を用いたPZT膜の膜厚を規格化することで、膜厚の再現性評価を行った。以下に示す評価基準を基にした実施例23〜32の評価結果を図14に示した。
A:調製して30日後のPZT前駆体溶液を用いて得られたPZT膜の膜厚が100以上110未満。
B:調製して30日後のPZT前駆体溶液を用いて得られたPZT膜の膜厚が110以上120未満。
C:調製して30日後のPZT前駆体溶液を用いて得られたPZT膜の膜厚が120以上。
実施例23〜32のPZT前駆体溶液について、実施例1と同様の試験方法および評価基準で耐水性試験を行った。得られた評価結果をまとめて図14に示した。
実施例23〜32のPZT前駆体溶液について、実施例1と同様の試験方法および評価基準で保存安定性試験を行った。得られた評価結果をまとめて図14に示した。
[実施例33]
まず、200mLのガラスフラスコに、溶媒として酢酸40.0gを秤量し、これにジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液14.0gと、チタニウム原料としてチタニウムテトライソプロポキシド8.4gを加えて、マグネチックスターラーを用いて、25℃の室温にて30分間の撹拌を行い、混合溶液を得た。次いで、混合溶液に、さらに鉛原料として酢酸鉛(II)三水和物27.3gと、高分子化合物として重量平均分子量300であるポリエチレングリコール6.8gと、追加溶媒としてイオン交換水10.0gを加え、80℃のオイルバスで1時間の加熱撹拌を行い、これを最終的なPZT前駆体溶液とした。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図15に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、37.5質量%であった。
高分子化合物として重量平均分子量300であるポリエチレングリコール20.5gを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図15に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、18.5質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、33.3質量%であった。
高分子化合物として重量平均分子量400であるポリエチレングリコール6.8gを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図15に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、37.5質量%であった。
高分子化合物として重量平均分子量400であるポリエチレングリコール20.5gを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図15に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、18.5質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、33.3質量%であった。
高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール6.8gを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図15に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、37.5質量%であった。
高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール20.5gを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図15に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、18.5質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、33.3質量%であった。
高分子化合物として重量平均分子量550であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル6.8gを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図15に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、37.5質量%であった。
高分子化合物として重量平均分子量750であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル6.8gを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図15に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、37.5質量%であった。
高分子化合物として重量平均分子量400であるポリプロピレングリコール6.8gを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図15に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、37.5質量%であった。
高分子化合物として重量平均分子量700であるポリプロピレングリコール6.8gを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図15に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、37.5質量%であった。
高分子化合物として重量平均分子量が400であるポリエチレングリコール1.7gと重量平均分子量が600であるポリプロピレングリコール1.7gと重量平均分子量が550であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル1.7gと重量平均分子量が700であるポリプロピレングリコールとを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図15に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、37.5質量%であった。
実施例33〜43のPZT前駆体溶液を用いて、PZT膜の成膜を行った。調製して1日後の各PZT前駆体溶液を用いて、実施例1と同様の成膜工程(塗布工程、乾燥工程、脱脂工程および焼成工程)を6回繰り返し行い、6層のPZT膜を得た。なお、各PZT前駆体溶液は、キャップ付ガラス瓶に入れ、25℃程度の室温で遮光保管していたものを使用した。
実施例33〜43のPZT前駆体溶液を用いて得られた各PZT膜について、金属顕微鏡にてクラック評価を行った。クラックが発生していない場合を○とし、クラックが発生したものを×として判定した。また、走査型電子顕微鏡(日立:S−4700)を用いて、断面観察により膜厚を測定した。得られた結果をまとめて図16に示した。
上述の実施例33〜43のPZT前駆体溶液について、実施例1と同様の試験方法および評価基準で耐水性試験を行った。得られた評価結果をまとめて図16に示した。
実施例33〜43のPZT前駆体溶液について、実施例1と同様の試験方法および評価基準で保存安定性試験を行った。得られた評価結果をまとめて図16に示した。
[実施例44]
溶媒として酢酸50.0gを用い、追加溶媒としてイオン交換水23.0gを用い、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール6.8gを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図17に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、17.2質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、38.6質量%であった。
溶媒として酢酸32.6gとイソプロピルアルコール14.4gとを用い、鉛原料として酢酸鉛(II)三水和物21.8gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−iso−プロポキシド8.2gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトライソプロポキシド6.7gを用い、高分子化合物として重量平均分子量が400であるポリエチレングリコール16.4gを用い、追加溶媒としてイオン交換水14.4gを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図17に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、15.6質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、28.4質量%であった。
溶媒として酢酸56.5gを用い、鉛原料として酢酸鉛(II)三水和物21.8gを用い、ジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液11.2gを用い、チタニウム原料としてチタニウムテトライソプロポキシド6.7gを用い、高分子化合物として重量平均分子量が600であるポリエチレングリコール5.4gを用い、追加溶媒としてイオン交換水6.3gを用いたほかは、実施例33と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図17に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、16.5質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、52.4質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸30.0gと酢酸n−ブチル10.0gとメチルエチルケトン6.0gを用い、高分子化合物として重量平均分子量が400であるポリエチレングリコール13.7gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図17に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、20.4質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、27.4質量%であった。
溶媒としてプロピオン酸25.0gを用いたほかは、実施例1と同様にしてPZT前駆体溶液を得た。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図17に示した。本実施例について、実施例1と同様にして金属酸化物換算濃度を算出すると、26.1質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、30.7質量%であった。
実施例44〜48および比較例2のPZT前駆体溶液を用いて、PZT膜の成膜を行った。調製して1日後の各PZT前駆体溶液を用いて、スピンコートの回転数を変えたほかは実施例1と同様の成膜工程(塗布工程、乾燥工程、脱脂工程および焼成工程)を行い、PZT膜を得た。なお、各PZT前駆体溶液は、キャップ付ガラス瓶に入れ、25℃程度の室温で遮光保管していたものを使用した。
上述の実施例44〜48のPZT前駆体溶液について、実施例1と同様の試験方法および評価基準で耐水性試験を行った。得られた評価結果をまとめて図18に示した。
上述の実施例44〜48のPZT前駆体溶液について、実施例1と同様の試験方法および評価基準で保存安定性試験を行った。得られた評価結果をまとめて図18に示した。
[実施例49]
まず、200mLのガラスフラスコに、溶媒として酢酸40.0gを秤量し、これにジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液(濃度:86.0%)14.0gと、チタニウム原料としてチタニウムテトライソプロポキシド8.4gを加えて、マグネチックスターラーを用いて、25℃の室温にて30分間の攪拌を行い、混合溶液を得た。次いで、混合溶液に、さらに鉛原料として酢酸鉛(II)三水和物25.4gと、ランタン原料として酢酸ランタン1.5水和物2.1gと、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール6.8gと、追加溶媒としてイオン交換水10.0gとを加え、80℃のオイルバスで1時間の加熱撹拌を行い、これを最終的な鉛系圧電体膜の前駆体溶液とした。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図19に示した。本実施例の鉛系圧電体膜の前駆体溶液に含まれる金属成分を酸化物として、すなわち酸化鉛PbO、酸化ランタンLa2O3、酸化ジルコニウムZrO2、および酸化チタンTiO2として金属酸化物換算濃度を算出すると、20.9質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、37.5質量%であった。
まず、200mLのガラスフラスコに、溶媒として酢酸40.0gを秤量し、これにジルコニウム原料としてジルコニウムテトラ−n−ブトキシドのn−ブタノール溶液(濃度:86.0%)9.8gと、チタニウム原料としてチタニウムテトライソプロポキシド5.9gと、ニオブ原料としてペンタ−n−ブトキシニオブ5.6gを加えて、マグネチックスターラーを用いて、25℃の室温にて30分間の攪拌を行い、混合溶液を得た。次いで、混合溶液に、さらに鉛原料として酢酸鉛(II)三水和物27.3gと、マグネシウム原料として酢酸マグネシウム四水和物1.3gと、高分子化合物として重量平均分子量600であるポリエチレングリコール6.8gと、追加溶媒としてイオン交換水10.0gとを加え、80℃のオイルバスで1時間の加熱撹拌を行い、これを最終的な鉛系圧電体膜の前駆体溶液とした。本実施例に用いた溶媒、各金属原料および高分子化合物の秤量結果は図19に示した。本実施例の鉛系圧電体膜の前駆体溶液に含まれる金属成分を酸化物として、すなわち酸化鉛PbO、酸化ジルコニウムZrO2、酸化チタンTiO2、酸化マグネシウムMgOおよび酸化ニオブNb2O5として金属酸化物換算濃度を算出すると、20.8質量%であった。また、原料全量に対する原料として用いたカルボン酸の割合を算出すると、37.5質量%であった。
実施例49および50の鉛系圧電体膜の前駆体溶液を用いて、鉛系圧電体膜の成膜を行った。調製して1日後および30日後の各前駆体溶液を用いて、実施例1と同様の成膜工程(塗布工程、乾燥工程、脱脂工程および焼成工程)を行い、各実施例につき2種類の鉛系圧電体膜を得た。なお、各前駆体溶液は、キャップ付ガラス瓶に入れ、25℃程度の室温で遮光保管していたものを使用した。
上述の実施例48および49の鉛系圧電体膜の前駆体溶液を用いて得られた各鉛系圧電体膜について、走査型電子顕微鏡(日立:S−4700)を用いて、断面観察により膜厚を測定した。調製して1日後の前駆体溶液を用いた鉛系圧電体膜の膜厚を100とし、調製して30日後の前駆体溶液を用いた鉛系圧電体膜の膜厚を規格化することで、膜厚の再現性評価を行った。以下に示す評価基準を基にした実施例49および50の評価結果を図20に示した。
A:調製して30日後の鉛系圧電体膜の前駆体溶液を用いて得られた鉛系圧電体膜の膜厚が100以上110未満。
B:調製して30日後の鉛系圧電体膜の前駆体溶液を用いて得られた鉛系圧電体膜の膜厚が110以上120未満。
C:調製して30日後の鉛系圧電体膜の前駆体溶液を用いて得られた鉛系圧電体膜の膜厚が120以上。
上述の実施例49および50の鉛系圧電体膜の前駆体溶液について、実施例1と同様の試験方法および評価基準で耐水性試験を行った。得られた評価結果をまとめて図20に示した。
上述の実施例49および50の鉛系圧電体膜の前駆体溶液について、実施例1と同様の試験方法および評価基準で保存安定性試験を行った。得られた評価結果をまとめて図20に示した。
実施例1〜47および比較例2のPZT前駆体溶液を用いて、上述のインクジェット式記録ヘッドの一連の製造工程に基づき、インクジェット式記録ヘッドを製造した。
なお、実施例1〜47のPZT前駆体溶液を用いる場合は、調製して1日後の各PZT前駆体溶液を用い、一連の成膜工程(塗布工程、乾燥工程、脱脂工程、焼成工程)を6回繰り返すことで、膜厚が1.2μmの圧電体層70を成膜した(なお、1層あたりの膜厚が200nmとなるように、各PZT前駆体溶液によってスピンコート回転数は適宜調整を行った)。
比較例2のPZT前駆体溶液を用いる場合は、調製して1日後の各PZT前駆体溶液を用い、一連の成膜工程を12回繰り返すことで、膜厚が1.2μmの圧電体層70を成膜した(なお、スピンコート塗布における回転数は1500rpmとした)。したがって同じ膜厚の圧電体層70を得たい場合、実施形態であれば比較例2の半分の回数の成膜工程でよい。
なお、同等とは比較例2の前駆体溶液を用いて得られる圧電体を100として規格化した場合に、95〜105であることを示す。結晶性評価の場合は、(100)ピーク強度および(100)配向率であり、ヒステリシス評価の場合は、最大分極値、残留分極値および抗電圧であり、圧電特性の場合は変位量であり、パルス耐久試験では変位低下率である。
Claims (7)
- 酢酸及び/又はプロピオン酸からなるカルボン酸と、
酢酸鉛と、
Zr(OR1)4で表されるジルコニウムアルコキシドと、
(OR1は炭素数が3〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である)
Ti(OR2)4で表されるチタニウムアルコキシドと、
(OR2は炭素数が3〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である)
高分子化合物と、
を含む原料を混合することで得られる圧電体膜の前駆体溶液であって、
前記原料全量に対する前記カルボン酸の割合が20質量%以上60質量%以下であり、かつ、
前記ジルコニウムアルコキシドの配位子OR1または前記チタニウムアルコキシドの配位子OR2の少なくとも一方の配位子が分岐鎖状のアルコキシ基であることを特徴とする圧電体膜の前駆体溶液。 - 前記ジルコニウムアルコキシドの配位子OR1および前記チタニウムアルコキシドの配位子OR2が、ともに、分岐鎖状のアルコキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の圧電体膜の前駆体溶液。
- 前記前駆体溶液の溶媒として、さらに、水、2級または3級のアルコール類、エーテル類、エステル類およびケトン類から選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電体膜の前駆体溶液。
- 前記高分子化合物がポリエチレングリコールおよびその誘導体ならびにポリプロピレングリコールおよびその誘導体から選ばれる1種または2種以上であり、さらに、前記高分子化合物の重量平均分子量が300〜800であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧電体膜の前駆体溶液。
- 前記圧電体膜の前駆体溶液に含まれる金属元素の酸化物換算濃度が、15質量%以上27質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電体膜の前駆体溶液。
- 前記圧電体膜の前駆体溶液がさらに、少なくとも1種以上の有機金属化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧電体膜の前駆体溶液。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の圧電体膜の前駆体溶液を用いたことを特徴とする圧電素子の製造方法。
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