JP2012229470A - 低温靭性および溶接継手破壊靭性に優れた鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】規定の成分組成を満たし、下記(A)〜(D)の全ての条件を満たす高強度鋼板。(A)表面部、t(板厚)/4部、およびt/2部のうちの、アシキュラーフェライト分率の最低値(Amin)が50面積%以上であり、かつ、上記分率の最高値(Amax)と前記Aminの差が20面積%以下である。(B)表面部、t/4部、およびt/2部のうちの、大角結晶粒径の最高値(Mmax)が40μm以下であり、かつ、Mmaxと上記粒径の最低値(Mmin)の差が40μm未満である。(C)表面部、t/4部、およびt/2部にのうちの、硬さの最高値(Hvmax)と最低値(Hvmin)の差が50以下である。(D)JIS G 0901で規定の超音波探傷試験を、検出感度+12dBで全面探傷したときに、内部欠陥のUTエコー高さが50%以下である。
【選択図】なし
Description
(ア)鋼スラブを、950〜1300℃に加熱し、再結晶温度域で圧下率が10〜90%の粗圧延を行い、続いてAr3点以上の未再結晶温度域で圧下率が10〜90%の仕上圧延を行い、直ちに冷却速度が1〜50℃/sで650〜500℃まで制御冷却し、室温まで空冷するか、または、
(イ)鋼スラブを、950〜1300℃に加熱し、再結晶温度域で圧下率が10〜90%の粗圧延を行い、続いてAr3点以上の未再結晶温度域で圧下率が10〜90%の仕上圧延を行い、直ちに冷却速度が1〜50℃/sで200℃以下に制御冷却し、その後、500℃〜650℃で焼き戻しを行うことがあげられている。
C:0.02〜0.10%(「質量%」の意味。以下同じ)、
Si:0.5%以下(0%を含まない)、
Mn:1.0〜2.0%、
Ni:0.10〜1%、
Nb:0.005〜0.03%、
Ti:0.005〜0.02%、
N:0.0030〜0.065%、
P:0.02%以下(0%を含まない)、
S:0.015%以下(0%を含まない)、および
Al:0.01〜0.06%
を満たし、残部が鉄および不可避不純物であって、
下記(A)〜(D)の全ての条件を満たし、引張強さが470MPa以上であるところに特徴を有する。
Amax−Amin≦20面積%・・・・・(1)
(B)表面部、t/4部、およびt/2部において、2つの結晶の方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた領域(大角結晶粒)の平均結晶粒径を測定したときに、該平均結晶粒径の最高値(Mmax)が40μm以下であり、かつ、前記最高値(Mmax)と前記平均結晶粒径の最低値(Mmin)の差が下記(2)式を満たす。
Mmax−Mmin<40μm・・・・・(2)
(C)表面部、t/4部、およびt/2部において、硬さを測定したときに、硬さの最高値(Hvmax)と硬さの最低値(Hvmin)の差が下記(3)式を満たす。
Hvmax−Hvmin≦50・・・・・(3)
(D)JIS G 0901で規定の超音波探傷試験を、検出感度+12dBで全面探傷したときに、内部欠陥のUTエコー高さが50%以下である。
V:0.5%以下(0%を含まない)、
B:0.0005〜0.003%、および
Ca:0.0005〜0.003%
よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。
Cu:0.3%以下(0%を含まない)、
Cr:0.5%以下(0%を含まない)、および
Mo:0.5%以下(0%を含まない)
よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。
(1段目冷却)0.6℃/s以上の板厚方向平均冷却速度で0.5T秒以上[Tは、第1冷却の開始板厚(mm)を示す。以下同じ]1.5T秒以下冷却した後、空冷を0.5T秒以上1.5T秒以下行う。
(2段目冷却)1段目冷却に引き続き、0.6℃/s以上の板厚方向平均冷却速度で0.07T秒以上1.3T秒以下冷却した後、空冷を0.07T秒以上1.3T秒以下行う。
Q+(Ni+Nb)×10≧33・・・・・(4)
[上記(4)式において、
Q:t/2部の温度が950℃未満の温度範囲における累積圧下率(%)、
Ni:Ni含有量(質量%)、
Nb:Nb含有量(質量%)を示す。
尚、圧下率は、下記(5)式で求められるものである。
圧下率=100×(圧延開始前厚−圧延完了厚)/圧延開始前厚・・・・・(5)]
板厚方向平均冷却速度≧6420t−1.60・・・・・(6)
[上記(6)式において、tは最終製品板厚(mm)を示す。
また、板厚方向平均冷却速度は、下記(7)式から求められるものである。
板厚方向平均冷却速度(℃/s)=(θs−θf)/τ・・・・・(7)
上記(7)式において、θsは冷却開始時の板厚方向平均温度(℃)、θfは冷却停止時の板厚方向平均温度(℃)、τは冷却時間(s)を示す。]
(I)母材の優れた低温靭性として、後述する実施例で測定する板厚中央部(t/2)C方向のvTrsが、−100℃以下(好ましくは−110℃以下、より好ましくは−120℃以下、更に好ましくは−130℃以下)を示すこと。
(II)優れた溶接継手破壊靭性として、後述する実施例で測定するHAZ部の限界CTOD値(−10℃)(以下、この特性を「HAZ−CTOD特性」ということがある)が、0.46mm以上(好ましくは0.6mm以上、より好ましくは0.8mm以上、更に好ましくは1mm以上、特に好ましくは1.2mm以上)を示すこと。
(A)表面部、t/4部、およびt/2部において、アシキュラーフェライト分率を測定したときに、アシキュラーフェライト分率の最低値(Amin)が50面積%以上であり、かつ、アシキュラーフェライト分率の最高値(Amax)と前記最低値(Amin)の差が下記(1)式を満たす。
Amax−Amin≦20面積%・・・・・(1)
(B)表面部、t/4部、およびt/2部において、2つの結晶の方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた領域(大角結晶粒)の平均結晶粒径を測定したときに、該平均結晶粒径の最高値(Mmax)が40μm以下であり、かつ、前記最高値(Mmax)と前記平均結晶粒径の最低値(Mmin)の差が下記(2)式を満たす。
Mmax−Mmin<40μm・・・・・(2)
(C)表面部、t/4部、およびt/2部において、硬さを測定したときに、硬さの最高値(Hvmax)と硬さの最低値(Hvmin)の差が下記(3)式を満たす。
Hvmax−Hvmin≦50・・・・・(3)
(D)JIS G 0901で規定の超音波探傷試験を、検出感度+12dBで全面探傷したときに、内部欠陥のUTエコー高さが50%以下である。
本発明の鋼板は、上記の通り、特に(Amax−Amin)、(Mmax−Mmin)、(Hvmax−Hvmin)を小さくするなど、板厚方向における組織等を均一にする必要があるが、厚肉材になると、圧延時の板厚方向の温度差が大きくなるため、上記均一化は困難となる。本発明は、この様な状況下、上記(A)〜(D)の全てを満たし、更には470MPa以上の引張強さを有する鋼板を得るための手段についても検討した。
第1熱間圧延(粗圧延)において、t/2部の温度が950℃以上の状態で圧下率が10%以上の最終パス圧延を行う。図6は、上記圧下率とUTによるエコー高さの関係を示した図である。この図6より、上記圧下率を10%以上とすることによって、内部欠陥が圧着され、上記(D)で規定するUTによるエコー高さ:50%以下を達成できることがわかる。この様にUTによるエコー高さ:50%以下を達成することで、前記図4に示した通り、HAZ−CTOD特性を高めることができる。上記圧下率は、好ましくは12%以上、より好ましくは15%以上である。
第1冷却として、下記条件を満たす2段階冷却を行うことにより、第1冷却後の表面部とt/2部の温度差(以下、単に「表面部とt/2部の温度差」ということがある。)を70℃以内にする。尚、この第1冷却は、第1熱間圧延(粗圧延)に引き続いて行えばよく、下記の2段階冷却の開示温度は特に問わないが、表面温度にておおよそ900〜950℃の範囲内である。
(2段目冷却)1段目冷却に引き続き、0.6℃/s以上の板厚方向平均冷却速度で0.07T秒以上1.3T秒以下冷却した後、空冷を0.07T秒以上1.3T秒以下行う。
第2熱間圧延(仕上げ圧延)において、t/2部の温度が950℃未満の温度範囲の圧延を、下記(4)式を満たすように行う。
Q+(Ni+Nb)×10≧33・・・・・(4)
[上記(4)式において、
Q:t/2部の温度が950℃未満の温度範囲における累積圧下率(%)、
Ni:Ni含有量(質量%)、
Nb:Nb含有量(質量%)を示す。
尚、圧下率は、下記(5)式で求められる。
圧下率=100×(圧延開始前厚−圧延完了厚)/圧延開始前厚・・・・・(5)]
第2冷却として、表面部の温度がAr3変態点以上の温度域から、t/2部の温度が500℃以下の温度域までを、下記(6)式を満たす板厚方向平均冷却速度(以下、このときの冷却速度を「C2」と示すことがある)で冷却する。
板厚方向平均冷却速度≧6420t−1.60・・・・・(6)
[上記(6)式において、tは最終製品板厚(mm)を示す。
また、板厚方向平均冷却速度は、下記(7)式から求められるものである。
板厚方向平均冷却速度(℃/s)=(θs−θf)/τ・・・・・(7)
上記(7)式において、θsは冷却開始時の板厚方向平均温度(℃)、θfは冷却停止時の板厚方向平均温度、τは冷却時間(s)を示す。]
Cは、鋼材(母材)の強度を確保するために欠くことのできない元素である。こうした効果を発揮させるには、0.02%以上含有させる必要がある。Cは、0.04%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.05%以上である。しかしCが0.10%を超えると、溶接時にHAZに島状マルテンサイト(MA)を多く生成してHAZの靭性劣化を招くばかりでなく、溶接性にも悪影響を及ぼす。また、アシキュラーフェライトの確保が困難となる他、硬さ差や大角結晶粒径差が大きくなる。従ってCは0.10%以下、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.06%以下とする。
Siは、固溶強化により鋼材の強度を確保するのに寄与する元素である。しかしSiが0.5%を超えると、溶接時にHAZに島状マルテンサイト(MA)を多く生成してHAZ靭性の劣化を招くばかりでなく、溶接性にも悪影響を及ぼす。従ってSiは0.5%以下とする。好ましくは0.3%以下であり、より好ましくは0.2%以下、更に好ましくは0.18%以下である。なお、Siを添加して鋼材の強度を確保するためには、0.02%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上含有させるのがよい。
Mnは、鋼材(母材)の強度向上に寄与する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、1.0%以上含有させる必要がある。Mnは、好ましくは1.2%以上、より好ましくは1.4%以上含有させるのがよい。しかし2.0%を超えると、鋼材(母材)の溶接性を劣化させる。従ってMnは、2.0%以下に抑える必要がある。好ましくは1.8%以下であり、より好ましくは1.6%以下とする。
Niは、鋼材の強度を高めると共に、鋼材自体の靭性を向上させるのにも寄与する元素である。また変態開始温度を長時間・低温側へシフトさせる働きがあり、これが組織のアシキュラーフェライト化を促す。また、Niを含有させて、焼入れ性を高めることで、板厚方向における冷却速度の差異の影響を小さくでき、結果として板厚方向における硬さ差を小さくすることができる。こうした作用を有効に発揮させるには、0.10%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.12%以上、更に好ましくは0.14%以上である。Niはできるだけ含有させることが好ましいが、高価な元素であるため、過剰に含有するとコスト高となる。従って、経済的理由から上限は1%とすることが好ましい。より好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.6%以下である。
Nbは、固溶によるソリュートドラック効果および炭窒化物析出によるピン止め効果の2つの効果により、再結晶粒の粗大化を抑制するため、母材靭性の向上に寄与する。またNiと同様に変態開始温度を長時間・低温側へシフトさせる働きがあり、これが組織のアシキュラーフェライト化を促す。更に、NbはNb析出物を形成して析出強化を図るのに有効な元素であるが、Nb量が少なく、Nb析出物量が少ない場合、表面部は冷却速度が高いため、高強度(高硬度)を確保できるが、t/2部は冷却速度が小さくかつNb析出物も少ないため、強度(硬度)が低く、結果として表面部とt/2部の硬さ差が生じる。
これらのことから、Nbは0.005%以上含有させる。好ましくは0.007%以上、より好ましくは0.009%以上である。しかしNbが0.03%を超えると、母材靭性およびHAZ靭性が劣化する。従ってNbは0.03%以下とする。好ましくは0.025%以下、より好ましくは0.02%以下である。
Tiは、鋼材中にTiNなどの窒化物やTi酸化物を生成し、HAZ靭性の向上に寄与する元素である。こうした効果を発揮させるには、Tiは0.005%以上含有させる必要がある。好ましくは0.007%以上、より好ましくは0.010%以上とする。しかしTiが過剰に含まれると鋼材(母材)の靭性が劣化するため、Tiは0.02%以下に抑えるべきである。Tiは、好ましくは0.018%以下であり、より好ましくは0.016%以下である。
Nは、窒化物(例えば、TiNなど)を析出する元素であり、該窒化物は、ピン止め効果により、溶接時にHAZに生成するオーステナイト粒の粗大化を防止してフェライト変態を促進し、HAZ靭性の向上に寄与する。こうした効果を有効に発揮させるには、0.0030%以上含有させる必要がある。Nは、好ましくは0.0035%以上、より好ましくは0.004%以上である。Nは多いほどTi含有窒化物を形成してオーステナイト粒の微細化が促進されるため、HAZの靭性向上に有効に作用する。しかしNが0.065%を超えると、固溶N量が増大して母材自体の靭性が劣化し、HAZ靭性も低下する。従ってNは0.065%以下に抑える必要がある。好ましくは0.055%以下、より好ましくは0.045%以下とする。
Pは、偏析し易い元素であり、特に鋼材中の結晶粒界に偏析して母材の靭性を劣化させる。従ってPは0.02%以下に抑制する必要がある。Pは、好ましくは0.018%以下、より好ましくは0.015%以下とする。
Sは、Mnと結合して硫化物(MnS)を生成し、母材の靭性や板厚方向の延性を劣化させる有害な元素である。従ってSは0.015%以下に抑制する必要がある。好ましくは0.012%以下であり、より好ましくは0.008%以下、更に好ましくは0.006%以下である。
Alは、脱酸のために有用な元素であり、またAlNを形成して結晶粒の微細化に有効な元素である。こうした効果を発揮させるにはAl量を0.01%以上とする必要がある。好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.03%以上である。しかしながら過剰になると、母材靭性およびHAZ靭性を劣化させるため、Alは0.06%以下に抑える必要がある。Alは、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.035%以下である。
V、B、Caは、いずれもHAZ靭性を向上させる元素である。
Cu、Cr、Moは、いずれも鋼材の強度を高めるのに寄与する元素であり、Cuは、固溶強化して鋼材の強度を高める元素であり、Cr、Moは、焼き入れ性を向上させて鋼材の強度を高める元素である。これらの効果を発揮させるには、それぞれ下記含有量とするのがよい。
1.プロセスコンピュータを用い、加熱開始から加熱終了までの雰囲気温度や在炉時間に基づいて鋼片の表面から裏面までの位置の加熱温度を算出する。
2.算出した加熱温度を用い、圧延中の圧延パススケジュールやパス間の冷却方法(水冷あるいは空冷)のデータに基づいて、板厚方向の任意の位置における圧延温度を差分法など計算に適した方法を用いて計算しつつ圧延を実施する。
3.鋼板の表面温度は圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて実測する。但し、プロセスコンピュータでも理論値を計算しておく。
4.第1熱間圧延(粗圧延)開始時、第1熱間圧延(粗圧延)終了時、第2熱間圧延(仕上げ圧延)開始時にそれぞれ実測した鋼板の表面温度を、プロセスコンピュータから算出される計算温度と照合する。
5.計算温度と実測温度の差が±30℃以上の場合は、実測表面温度を計算表面温度に置き換えプロセスコンピュータ上の計算温度とし、±30℃未満の場合は、プロセスコンピュータから算出された計算温度をそのまま用いる。
6.上記算出された計算温度を用い、制御対象としている領域の圧延温度を管理する。
板厚方向平均冷却速度(℃/s)=(θs−θf)/τ・・・・・(7)
[上記(7)式において、θsは冷却開始時の板厚方向平均温度(℃)、θfは冷却停止時の板厚方向平均温度(℃)、τは冷却時間(s)を示す。]
図12において拡大された試験片(板幅(C方向)中央部から採取され、試験片上面は鋼板表面であり、試験片下面は別の鋼板表面である)の断面(斜線部)の表面から1mm深さの位置(表面部)、t/4部、t/2部の3箇所において、各箇所につき5点ずつ、ビッカース硬さ試験(荷重98N)を実施した。そして合計3部×5点=15点のうちの最高値(Hvmax)と最低値(Hvmin)を求め、(Hvmax−Hvmin)を計算した。その結果を表4に示す。
上記硬さ差の測定と同様に図12に示された試験片を用い、断面における表面から1mm深さの位置、t/4部、t/2部の3部において各部につき5箇所ずつ、ナイタール腐食した光学顕微鏡写真(倍率:400倍)を撮影し、画像解析を行った。詳細には、上記光学顕微鏡写真をアシキュラーフェライトの組織写真(例えば、鋼のベイナイト写真集-I, 社団法人日本鉄鋼協会, 1992, P89)と比較して、上記光学顕微鏡写真中のアシキュラーフェライト部を塗りつぶし、上記光学顕微鏡写真に占める塗りつぶした部分の面積率を画像解析により測定し、アシキュラーフェライト分率とした。これを合計3部×5箇所=15箇所について行い、この15箇所のうち、アシキュラーフェライト分率の最高値(Amax)とアシキュラーフェライト分率の最低値(Amin)を求め、次いで(Amax−Amin)(アシキュラーフェライト分率差)を計算した。その結果を表4に示す。
上記硬さ差の測定と同様に図12に示された試験片を用い、断面における表面から1mm深さの位置、t/4部、t/2部の3部において各部につき5箇所ずつ、FE−SEM−EBSP(Electron Back Scattering Pattern)(電子放出型走査電子顕微鏡を用いた電子後方散乱回折像法)によって大角粒界径(大角結晶粒径)を測定した。具体的には、以下の通りである。
(i)前記図12に示すとおり、圧延方向と板厚方向からなる面であって、板厚方向が0〜tである(即ち、鋼板の表裏面を含む)サンプルを準備する。
(ii)#150〜#1000までの湿式エメリー研磨紙、またはそれと同等の機能を有する研磨方法(上記湿式エメリー研磨紙以外の研磨紙、ダイヤモンドスラリーなどの研磨剤を用いた研磨方法)によって鏡面仕上を施す。
(iii)TexSEM Laboratories社製のEBSP装置を使用し、t/4部において、結晶方位差が15°以上の境界を結晶粒界と設定して大角粒界で囲まれた領域(大角結晶粒)の結晶粒径を測定した。このときの測定条件は、測定範囲:200×200μm、測定ステップ:0.5μm間隔とし、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックス(Confidence Index)が0.1よりも小さい測定点は解析対象から除外した。
(iv)データの解析法として、上記結晶粒径が2.5μm以下のものはノイズと考え削除した。そして1観察面における大角結晶粒の平均結晶粒径を、合計3部×5箇所=15箇所のそれぞれにおいて求めた。
JIS G 0901に規定する方法で、+12dB全面探傷を行い、内部欠陥のUTエコー高さを測定した。その結果を表4に示す。
t/2部(板厚中央部)において試験片の長手方向がC方向(圧延方向に垂直な方向)となるように、NK U4号試験片を採取し、JIS Z 2242に規定の方法でシャルピー衝撃試験を実施し、遷移曲線よりvTrs(脆性破面遷移温度)を求めた。そして、vTrs≦−100℃を母材の低温靭性に優れると評価した。その結果を表4に示す。
下記表5の条件で図13に示すとおり、SAW溶接を行って溶接継手を作成した。CTOD試験は、API−2Zに従って、CG−HAZ領域を15%以上含むようにノッチを導入し、BS7448に従って試験を実施した。詳細には、図13に示すとおり、試験片板厚中央をセンター採寸として2/3の領域において、Fusion Lineから母材側に0.5mmの粗大粒領域(CG HAZ)が15%以上含まれるようにノッチを導入し、試験温度−10℃においてCTOD試験を3本について行い、限界CTOD値を求めた。そして、3本のうち最も小さい限界CTOD値が0.46mm以上のものを溶接継手破壊靭性に優れると評価した。その結果を表4に示す。
ASTM A370-07aに記載のDiameter=12.5mm、Gauge length=50mmの形状の試験片を板厚方向t/4 C方向から採取し、ASTM A370に規定の方法で引張試験を行い、引張強さ(TS)、降伏強さ(YP)、EL(伸び)、YR(降伏比)を求めた。その結果を表4に示す。尚、本発明の鋼板は、TS≧470MPa、YP≧345MPa、およびEL≧23%を満たしている。
Claims (5)
- C:0.02〜0.10%(「質量%」の意味。以下同じ)、
Si:0.5%以下(0%を含まない)、
Mn:1.0〜2.0%、
Ni:0.10〜1%、
Nb:0.005〜0.03%、
Ti:0.005〜0.02%、
N:0.0030〜0.065%、
P:0.02%以下(0%を含まない)、
S:0.015%以下(0%を含まない)、および
Al:0.01〜0.06%
を満たし、残部が鉄および不可避不純物であって、
下記(A)〜(D)の全ての条件を満たし、引張強さが470MPa以上であることを特徴とする低温靭性および溶接継手破壊靭性に優れた鋼板。
(A)表面部、t/4部[tは板厚を示す。以下同じ]、およびt/2部において、アシキュラーフェライト分率を測定したときに、アシキュラーフェライト分率の最低値(Amin)が50面積%以上であり、かつ、アシキュラーフェライト分率の最高値(Amax)と前記最低値(Amin)の差が下記(1)式を満たす。
Amax−Amin≦20面積%・・・・・(1)
(B)表面部、t/4部、およびt/2部において、2つの結晶の方位差が15°以上の大角粒界で囲まれた領域(大角結晶粒)の平均結晶粒径を測定したときに、該平均結晶粒径の最高値(Mmax)が40μm以下であり、かつ、前記最高値(Mmax)と前記平均結晶粒径の最低値(Mmin)の差が下記(2)式を満たす。
Mmax−Mmin<40μm・・・・・(2)
(C)表面部、t/4部、およびt/2部において、硬さを測定したときに、硬さの最高値(Hvmax)と硬さの最低値(Hvmin)の差が下記(3)式を満たす。
Hvmax−Hvmin≦50・・・・・(3)
(D)JIS G 0901で規定の超音波探傷試験を、検出感度+12dBで全面探傷したときに、内部欠陥のUTエコー高さが50%以下である。 - 更に他の元素として、
V:0.5%以下(0%を含まない)、
B:0.0005〜0.003%、および
Ca:0.0005〜0.003%
よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む請求項1に記載の鋼板。 - 更に他の元素として、
Cu:0.3%以下(0%を含まない)、
Cr:0.5%以下(0%を含まない)、および
Mo:0.5%以下(0%を含まない)
よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む請求項1または2に記載の鋼板。 - 海洋構造物に用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板の製造方法であって、
請求項1〜3のいずれかに記載の成分組成を満たすスラブを用い、1050℃以上に加熱した後、第1熱間圧延、第1冷却、第2熱間圧延、および第2冷却を、それぞれ下記条件(a)〜(d)を満たすように順次行うことを特徴とする低温靭性および溶接継手破壊靭性に優れた鋼板の製造方法。
(a)第1熱間圧延において、t/2部の温度が950℃以上の状態で圧下率が10%以上の最終パス圧延を行う。
(b)第1冷却として、下記条件を満たす2段階冷却を行うことにより、表面部とt/2部の温度差を70℃以内にする。
(1段目冷却)0.6℃/s以上の板厚方向平均冷却速度で0.5T秒以上[Tは、第1冷却の開始板厚(mm)を示す。以下同じ]1.5T秒以下冷却した後、空冷を0.5T秒以上1.5T秒以下行う。
(2段目冷却)1段目冷却に引き続き、0.6℃/s以上の板厚方向平均冷却速度で0.07T秒以上1.3T秒以下冷却した後、空冷を0.07T秒以上1.3T秒以下行う。
(c)第2熱間圧延において、t/2部の温度が950℃未満の温度範囲の圧延を、下記(4)式を満たすように行う。
Q+(Ni+Nb)×10≧33・・・・・(4)
[上記(4)式において、
Q:t/2部の温度が950℃未満の温度範囲における累積圧下率(%)、
Ni:Ni含有量(質量%)、
Nb:Nb含有量(質量%)を示す。
尚、圧下率は、下記(5)式で求められるものである。
圧下率=100×(圧延開始前厚−圧延完了厚)/圧延開始前厚・・・・・(5)]
(d)第2冷却として、表面部の温度がAr3変態点以上の温度域から、t/2部の温度が500℃以下の温度域までを、下記(6)式を満たす板厚方向平均冷却速度で冷却する。
板厚方向平均冷却速度≧6420t−1.60・・・・・(6)
[上記(6)式において、tは最終製品板厚(mm)を示す。
また、板厚方向平均冷却速度は、下記(7)式から求められるものである。
板厚方向平均冷却速度(℃/s)=(θs−θf)/τ・・・・・(7)
上記(7)式において、θsは冷却開始時の板厚方向平均温度(℃)、θfは冷却停止時の板厚方向平均温度(℃)、τは冷却時間(s)を示す。]
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