JP2003183731A - 非調質高張力鋼板の製造方法 - Google Patents
非調質高張力鋼板の製造方法Info
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Abstract
(57)【要約】
【課 題】 合金元素の増量や既存冷却設備の増強を要
さずにさらなるベイナイト変態強化が可能な非調質高張
力鋼板の製造方法を提供する。 【解決手段】 特定組成の鋼スラブを制御圧延(スラブ
加熱→再結晶γ域圧延R1→温調TC→未再結晶γ域圧延R
2)後加速冷却ACC して非調質高張力鋼板を製造するに
あたり、温調TCの冷却速度C1を1.0 ℃/s以上とする。こ
れにより、加速冷却ACC の冷却速度C2が速くなるので課
題が解決される。
さずにさらなるベイナイト変態強化が可能な非調質高張
力鋼板の製造方法を提供する。 【解決手段】 特定組成の鋼スラブを制御圧延(スラブ
加熱→再結晶γ域圧延R1→温調TC→未再結晶γ域圧延R
2)後加速冷却ACC して非調質高張力鋼板を製造するに
あたり、温調TCの冷却速度C1を1.0 ℃/s以上とする。こ
れにより、加速冷却ACC の冷却速度C2が速くなるので課
題が解決される。
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非調質高張力鋼板
の製造方法に関し、とくに、制御圧延+加速冷却により
ベイナイト(アシキュラーフェライトも含む)組織を有
する板厚25mm以上の厚肉製品鋼板を有利に製造しうる非
調質高張力鋼板の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】原油や天然ガスなどを輸送するパイプラ
インにおいては、輸送の効率を上げるため高圧の操業が
指向され、強度が高くかつ板厚が厚いUOE鋼管用鋼板
が要求されている。厚肉で高強度化を図るため、従来、
特定組成範囲の鋼スラブを、特定温度域に加熱し、未再
結晶γ域(あるいはさらに、これより高温側の再結晶γ
域圧延)にて、圧下率を特定範囲に規制して圧延し、Ar
3 (冷却途上のフェライト変態開始温度)の近傍で圧延
を終了後直ちに加速冷却することにより、ベイナイトを
生成させる非調質高張力鋼板の製造方法が知られている
(例えば、特開昭57−137421号公報,特開平3−223419
号公報,特公昭62−23056 号公報等参照)。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで、UOE鋼管
用鋼板にさらなる厚肉化、高強度化の要求があった場
合、従来は、さらなるベイナイト変態強化を達成すべ
く、合金成分を増量する、および/または、加速冷却設
備の冷却能力を上げることで対処していた。しかし、合
金成分の増量は溶製コスト増や溶接性劣化等々の問題が
ある。また、加速冷却設備の冷却能力を上げるには相当
の設備増強が必要で設備費が嵩む問題がある。 【0004】かかる従来技術の問題に鑑み、本発明は、
合金元素の増量や既存冷却設備の増強を要さずにさらな
るベイナイト変態強化が可能な非調質高張力鋼板の製造
方法を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者は、制御圧延お
よび圧延後加速冷却によりベイナイト組織を有する鋼板
を製造する際に、再結晶γ域圧延終了から未再結晶γ域
圧延開始までの温度待ち(温調という)時に被圧延材を
水冷すると、圧延後の加速冷却速度が速くなることを見
いだし(例えば図2参照)、かかる知見に基づいてさら
に検討を重ねて以下の本発明を成した。 【0006】本発明は、mass%で、C:0.005 〜0.06
%、Si:0.05〜1.0 %、Mn:1.2 〜2.5 %、Al:0.005
〜0.08%、Nb:0.01〜0.1 %を含む組成になる鋼スラブ
を1050〜1250℃に加熱後、(Ar3+150℃) 超で圧下率30%
以上として圧延し、次いで(Ar3+150℃) 〜Ar3 まで1.0
℃/s以上で温調後、Ar3 以上で圧下率50%以上として圧
延し、引続き10℃/s以上で600 ℃以下まで加速冷却し、
以後空冷することを特徴とする非調質高張力鋼板の製造
方法である。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明では、素材としてmass%
で、C:0.005 〜0.06%、Si:0.05〜1.0 %、Mn:1.2
〜2.5 %、Al:0.005 〜0.08%、Nb:0.01〜0.1 %を含
む組成になる鋼スラブを用いる。その理由は次の通りで
ある。 C:0.005 〜0.06% 母材およびHAZ(=溶接熱影響部)の強度を確保する
ためC≧0.005 %を必要とするが、C>0.06%では表層
部にマルテンサイトが生成し、板厚方向の硬度むらが生
じるので、Cは上記範囲とした。 【0008】Si:0.05〜1.0 % Siは脱酸剤として有用であり、十分な脱酸により母材靱
性を確保するにはSi≧0.05%を必要とするが、一方、Si
>1.0 %では清浄度が悪化するので、Siは上記範囲とし
た。 Mn:1.2 〜2.5 % Ar3 を低下させてベイナイト生成を助成するためにMn≧
1.2 %を必要とするが、Mn>2.5 %ではHAZ靱性が劣
化するので、Mnは上記範囲とした。 【0009】Al:0.005 〜0.08% 脱酸を十分に行うためにAl≧0.005 %を必要とするが、
Al>0.08%ではHAZおよび溶接金属の靱性が劣化する
ので、Alは上記範囲とした。 Nb:0.01〜0.1 % ベイナイト変態を促進させるためにNb≧0.01%を必要と
するが、Nb>0.1 %では溶接時に溶接金属中に拡散して
溶接金属の靱性劣化を招くので、Nbは上記範囲とした。 【0010】また、本発明の鋼スラブは、上記組成にさ
らに必要に応じてmass%で、V:0.01〜0.10%、Cu:1.
0 %以下、Ni:1.0 %以下、Cr:0.5 %以下、Mo:0.5
%以下、Ti:0.005 〜0.1 %、Ca:0.001 〜0.010 %、
REM (=希土類元素(Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,S
m,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)の1種また
は2種以上からなるもの):0.001 〜0.010 %から選ば
れた1種または2種以上を付加した組成になる鋼スラブ
であってもよい。 V:0.01〜0.10% V≧0.01%で母材の強度および靱性の向上ならびに溶接
継手部の強度確保に有効であるが、V>0.10%では母材
およびHAZの靱性劣化を招くので、Vは上記範囲とす
るのが好ましい。 【0011】Cu≦1.0 % Cu添加によりHAZの強度と靱性に悪影響を及ぼすこと
なく母材の強度および靱性の向上が得られるが、Cu>1.
0 %では熱間加工割れが生じやすく母材の表面性状が悪
化するので、Cuは上記範囲とするのが好ましい。 Ni≦1.0 % Ni添加によりHAZの強度と靱性に悪影響を及ぼすこと
なく母材の強度および靱性の向上が得られるが、Ni>1.
0 %では製鋼コストの上昇を招くので、Niは上記範囲と
するのが好ましい。 【0012】Cr≦0.5 % Cr添加により母材強度と継手強度の向上が得られるが、
Cr>0.5 %では母材靱性にも溶接部靱性にも悪影響が生
じるので、Crは上記範囲とするのが好ましい。 Mo≦0.5 % Mo添加により熱間圧延時のγ粒が整粒化し、しかも微細
なベイナイトが生成して母材の強度および靱性の向上が
得られるが、Mo>0.5 %ではこの効果が飽和し、却って
製鋼コストの上昇を招くので、Moは上記範囲とするのが
好ましい。 【0013】Ti:0.005 〜0.1 % Ti≧0.005 でγ粒微細化効果による靱性向上とTi炭窒化
物微細分散析出による強度上昇が得られるが、Ti>0.1
%では母材靱性が劣化するので、Tiは上記範囲とするの
が好ましい。 Ca:0.001 〜0.010 % Ca≧0.001 %でMnS の形態が改善されて鋼板C方向(=
圧延方向と板厚方向とに直角な方向)の靱性向上が得ら
れるが、Ca>0.010 では鋼の清浄度が悪化して内部欠陥
の原因となるので、Caは上記範囲とするのが好ましい。 【0014】REM :0.001 〜0.010 % REM ≧0.001 %でMnS の形態が改善されて鋼板C方向の
靱性向上が得られるが、REM >0.010 %では鋼の清浄度
が悪化するほか溶接性が劣化するので、REM は上記範囲
とするのが好ましい。本発明では、上記組成を有する鋼
スラブを、図1に示すように、温度T0(=1100〜1200
℃)に加熱後、温度T1(>(Ar3+150℃))で圧下率r1
(≧30%)として圧延R1し、次いで温度T2((Ar3+150
℃)〜Ar3 )まで冷却速度C1(≧1.0 ℃/s)で温調TC
後、温度T3(≧Ar3 )で圧下率r2(≧50%)として圧延
R2し、引続き冷却速度C2(≧10℃/s)で温度T4(≦600
℃)まで加速冷却ACC し、以後空冷ACする。この理由を
以下に述べる。なお、C1=(T1-T2)/(TC 実行時間) 、C2
=(T3-T4)/(ACC実行時間) であり、また、温度T0〜T4は
鋼スラブないし鋼板の1/4 厚み部の温度である。 【0015】T0=1050〜1250℃ 圧延後のベイナイト変態促進のためにはスラブ加熱段階
で鋼中にNbを十分固溶させる必要があり、このためT0≧
1050℃とした。一方、スラブ加熱段階でのγ粒粗大化を
阻止するためT0≦1250℃とした。なお好ましくは、1100
〜1200℃とする。 【0016】(Ar3+150℃)超での圧延R1の圧下率r1≧30
% (Ar3+150℃)超の温度域は再結晶γ域に相当し、ここで
の圧下率r1が30%に満たないと再結晶γ粒が十分に微細
化されず、変態後のフェライトおよびベイナイトを微細
化できないので、r1≧30%とした。 温調TCの冷却速度C1≧1.0 ℃/s C1<1.0 ℃/sでは、ACC での冷却速度C2が速くなる効果
に乏しく、ベイナイト変態促進による強度上昇が期待で
きない。よってC1≧1.0 ℃/sとする。TCでの板厚は50mm
程度以上であるため、C1≧1.0 ℃/sは空冷(大気放冷ま
たは衝風冷却)では達成できず、TCは水冷により行う必
要がある。 【0017】かかる効果が得られる理由はよくわからな
いが、TCを短時間で通過させることによりR2後(ACC
前)の鋼板表面スケールの熱抵抗が減少するためか、あ
るいはTC中のγ粒成長が阻止されてR2後(ACC 前)のγ
粒がより微細化(すなわち粒界が増加)することで熱伝
導率増大ないしは比熱減少が起こるためではないかと考
えられる。 【0018】(Ar3+150℃)〜Ar3 での圧延R2の圧下率r2
≧50% (Ar3+150℃)〜Ar3 の温度域は、未再結晶γ域に相当
し、ここでの圧下率r2が50%に満たないと加工量が不足
し未再結晶γ粒の伸長やこれへの変形帯導入が不十分と
なり、変態後のフェライトおよびベイナイトが十分微細
化するに至らなくなるので、r2≧50%とした。なお、R2
終了の温度T3はAr3 直上が好ましい。 【0019】圧延R2に引続き冷却速度C2≧10℃/sで加速
冷却ACC C2<10℃/sであるとACC 時にフェライトが過剰に析出
し、ベイナイトの生成量が不十分となるため、C2≧10℃
/sとした。製品板厚が例えば25mm以上と厚い場合、C2≧
10℃/sを空冷で達成するのは無理なので、ACC は水冷で
実行するに限られる。 【0020】ACC 終了の温度T4≦600 ℃ ACC 終了の温度T4を600 ℃超にするとベイナイトの生成
量が不十分となるので、T4≦600 ℃とした。なお、製品
鋼板の幅方向材質ばらつきを軽減する観点からは、T4≧
450 ℃とするのが好ましい。 【0021】 【実施例】表1に示す組成になる鋼スラブを表2に示す
条件で制御圧延後加速冷却して鋼板となした。実施例で
は温調TCを水冷で行い、比較例では温調TCを大気放冷で
行った。温調TCと加速冷却ACC の水冷は水スプレーにて
行った。スプレー水量は被冷却板厚の増加関数で与え
た。水冷の冷却速度は、放射温度計で水冷前後の表面温
度を測定し、その結果を基に水冷開始時と終了時の1/4
厚み部の温度を算出し、これら二温度の差を水冷時間で
除して求めた。得られた鋼板について、引張試験により
YS(降伏強さ)、TS(引張強さ)を測定し、シャル
ピー衝撃試験によりvTrs(50%破面遷移温度)を測定し
た。 【0022】その結果、表2に示すように、実施例で
は、温調TCを水冷で行って冷却速度C1を1.0 ℃/s以上に
したので、比較例よりもACC の冷却速度C2が速くなり、
より高強度、高靱性の鋼板が得られた。なお、鋼板1/4
厚み部の組織を光学顕微鏡観察した結果、実施例、比較
例ともフェライト+ベイナイト組織であったが、実施例
では比較例よりもベイナイト量が多くかつフェライト、
ベイナイトとも微細であった。 【0023】 【表1】 【0024】 【表2】【0025】 【発明の効果】本発明によれば、温調での冷却速度を増
大させることにより圧延後加速冷却での冷却速度を増大
させることができるから、合金成分の増量や加速冷却設
備の増強を要さずに、より高強度かつ高靱性の非調質高
張力鋼板を製造できるようになるという優れた効果を奏
する。
の製造方法に関し、とくに、制御圧延+加速冷却により
ベイナイト(アシキュラーフェライトも含む)組織を有
する板厚25mm以上の厚肉製品鋼板を有利に製造しうる非
調質高張力鋼板の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】原油や天然ガスなどを輸送するパイプラ
インにおいては、輸送の効率を上げるため高圧の操業が
指向され、強度が高くかつ板厚が厚いUOE鋼管用鋼板
が要求されている。厚肉で高強度化を図るため、従来、
特定組成範囲の鋼スラブを、特定温度域に加熱し、未再
結晶γ域(あるいはさらに、これより高温側の再結晶γ
域圧延)にて、圧下率を特定範囲に規制して圧延し、Ar
3 (冷却途上のフェライト変態開始温度)の近傍で圧延
を終了後直ちに加速冷却することにより、ベイナイトを
生成させる非調質高張力鋼板の製造方法が知られている
(例えば、特開昭57−137421号公報,特開平3−223419
号公報,特公昭62−23056 号公報等参照)。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで、UOE鋼管
用鋼板にさらなる厚肉化、高強度化の要求があった場
合、従来は、さらなるベイナイト変態強化を達成すべ
く、合金成分を増量する、および/または、加速冷却設
備の冷却能力を上げることで対処していた。しかし、合
金成分の増量は溶製コスト増や溶接性劣化等々の問題が
ある。また、加速冷却設備の冷却能力を上げるには相当
の設備増強が必要で設備費が嵩む問題がある。 【0004】かかる従来技術の問題に鑑み、本発明は、
合金元素の増量や既存冷却設備の増強を要さずにさらな
るベイナイト変態強化が可能な非調質高張力鋼板の製造
方法を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者は、制御圧延お
よび圧延後加速冷却によりベイナイト組織を有する鋼板
を製造する際に、再結晶γ域圧延終了から未再結晶γ域
圧延開始までの温度待ち(温調という)時に被圧延材を
水冷すると、圧延後の加速冷却速度が速くなることを見
いだし(例えば図2参照)、かかる知見に基づいてさら
に検討を重ねて以下の本発明を成した。 【0006】本発明は、mass%で、C:0.005 〜0.06
%、Si:0.05〜1.0 %、Mn:1.2 〜2.5 %、Al:0.005
〜0.08%、Nb:0.01〜0.1 %を含む組成になる鋼スラブ
を1050〜1250℃に加熱後、(Ar3+150℃) 超で圧下率30%
以上として圧延し、次いで(Ar3+150℃) 〜Ar3 まで1.0
℃/s以上で温調後、Ar3 以上で圧下率50%以上として圧
延し、引続き10℃/s以上で600 ℃以下まで加速冷却し、
以後空冷することを特徴とする非調質高張力鋼板の製造
方法である。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明では、素材としてmass%
で、C:0.005 〜0.06%、Si:0.05〜1.0 %、Mn:1.2
〜2.5 %、Al:0.005 〜0.08%、Nb:0.01〜0.1 %を含
む組成になる鋼スラブを用いる。その理由は次の通りで
ある。 C:0.005 〜0.06% 母材およびHAZ(=溶接熱影響部)の強度を確保する
ためC≧0.005 %を必要とするが、C>0.06%では表層
部にマルテンサイトが生成し、板厚方向の硬度むらが生
じるので、Cは上記範囲とした。 【0008】Si:0.05〜1.0 % Siは脱酸剤として有用であり、十分な脱酸により母材靱
性を確保するにはSi≧0.05%を必要とするが、一方、Si
>1.0 %では清浄度が悪化するので、Siは上記範囲とし
た。 Mn:1.2 〜2.5 % Ar3 を低下させてベイナイト生成を助成するためにMn≧
1.2 %を必要とするが、Mn>2.5 %ではHAZ靱性が劣
化するので、Mnは上記範囲とした。 【0009】Al:0.005 〜0.08% 脱酸を十分に行うためにAl≧0.005 %を必要とするが、
Al>0.08%ではHAZおよび溶接金属の靱性が劣化する
ので、Alは上記範囲とした。 Nb:0.01〜0.1 % ベイナイト変態を促進させるためにNb≧0.01%を必要と
するが、Nb>0.1 %では溶接時に溶接金属中に拡散して
溶接金属の靱性劣化を招くので、Nbは上記範囲とした。 【0010】また、本発明の鋼スラブは、上記組成にさ
らに必要に応じてmass%で、V:0.01〜0.10%、Cu:1.
0 %以下、Ni:1.0 %以下、Cr:0.5 %以下、Mo:0.5
%以下、Ti:0.005 〜0.1 %、Ca:0.001 〜0.010 %、
REM (=希土類元素(Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,S
m,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)の1種また
は2種以上からなるもの):0.001 〜0.010 %から選ば
れた1種または2種以上を付加した組成になる鋼スラブ
であってもよい。 V:0.01〜0.10% V≧0.01%で母材の強度および靱性の向上ならびに溶接
継手部の強度確保に有効であるが、V>0.10%では母材
およびHAZの靱性劣化を招くので、Vは上記範囲とす
るのが好ましい。 【0011】Cu≦1.0 % Cu添加によりHAZの強度と靱性に悪影響を及ぼすこと
なく母材の強度および靱性の向上が得られるが、Cu>1.
0 %では熱間加工割れが生じやすく母材の表面性状が悪
化するので、Cuは上記範囲とするのが好ましい。 Ni≦1.0 % Ni添加によりHAZの強度と靱性に悪影響を及ぼすこと
なく母材の強度および靱性の向上が得られるが、Ni>1.
0 %では製鋼コストの上昇を招くので、Niは上記範囲と
するのが好ましい。 【0012】Cr≦0.5 % Cr添加により母材強度と継手強度の向上が得られるが、
Cr>0.5 %では母材靱性にも溶接部靱性にも悪影響が生
じるので、Crは上記範囲とするのが好ましい。 Mo≦0.5 % Mo添加により熱間圧延時のγ粒が整粒化し、しかも微細
なベイナイトが生成して母材の強度および靱性の向上が
得られるが、Mo>0.5 %ではこの効果が飽和し、却って
製鋼コストの上昇を招くので、Moは上記範囲とするのが
好ましい。 【0013】Ti:0.005 〜0.1 % Ti≧0.005 でγ粒微細化効果による靱性向上とTi炭窒化
物微細分散析出による強度上昇が得られるが、Ti>0.1
%では母材靱性が劣化するので、Tiは上記範囲とするの
が好ましい。 Ca:0.001 〜0.010 % Ca≧0.001 %でMnS の形態が改善されて鋼板C方向(=
圧延方向と板厚方向とに直角な方向)の靱性向上が得ら
れるが、Ca>0.010 では鋼の清浄度が悪化して内部欠陥
の原因となるので、Caは上記範囲とするのが好ましい。 【0014】REM :0.001 〜0.010 % REM ≧0.001 %でMnS の形態が改善されて鋼板C方向の
靱性向上が得られるが、REM >0.010 %では鋼の清浄度
が悪化するほか溶接性が劣化するので、REM は上記範囲
とするのが好ましい。本発明では、上記組成を有する鋼
スラブを、図1に示すように、温度T0(=1100〜1200
℃)に加熱後、温度T1(>(Ar3+150℃))で圧下率r1
(≧30%)として圧延R1し、次いで温度T2((Ar3+150
℃)〜Ar3 )まで冷却速度C1(≧1.0 ℃/s)で温調TC
後、温度T3(≧Ar3 )で圧下率r2(≧50%)として圧延
R2し、引続き冷却速度C2(≧10℃/s)で温度T4(≦600
℃)まで加速冷却ACC し、以後空冷ACする。この理由を
以下に述べる。なお、C1=(T1-T2)/(TC 実行時間) 、C2
=(T3-T4)/(ACC実行時間) であり、また、温度T0〜T4は
鋼スラブないし鋼板の1/4 厚み部の温度である。 【0015】T0=1050〜1250℃ 圧延後のベイナイト変態促進のためにはスラブ加熱段階
で鋼中にNbを十分固溶させる必要があり、このためT0≧
1050℃とした。一方、スラブ加熱段階でのγ粒粗大化を
阻止するためT0≦1250℃とした。なお好ましくは、1100
〜1200℃とする。 【0016】(Ar3+150℃)超での圧延R1の圧下率r1≧30
% (Ar3+150℃)超の温度域は再結晶γ域に相当し、ここで
の圧下率r1が30%に満たないと再結晶γ粒が十分に微細
化されず、変態後のフェライトおよびベイナイトを微細
化できないので、r1≧30%とした。 温調TCの冷却速度C1≧1.0 ℃/s C1<1.0 ℃/sでは、ACC での冷却速度C2が速くなる効果
に乏しく、ベイナイト変態促進による強度上昇が期待で
きない。よってC1≧1.0 ℃/sとする。TCでの板厚は50mm
程度以上であるため、C1≧1.0 ℃/sは空冷(大気放冷ま
たは衝風冷却)では達成できず、TCは水冷により行う必
要がある。 【0017】かかる効果が得られる理由はよくわからな
いが、TCを短時間で通過させることによりR2後(ACC
前)の鋼板表面スケールの熱抵抗が減少するためか、あ
るいはTC中のγ粒成長が阻止されてR2後(ACC 前)のγ
粒がより微細化(すなわち粒界が増加)することで熱伝
導率増大ないしは比熱減少が起こるためではないかと考
えられる。 【0018】(Ar3+150℃)〜Ar3 での圧延R2の圧下率r2
≧50% (Ar3+150℃)〜Ar3 の温度域は、未再結晶γ域に相当
し、ここでの圧下率r2が50%に満たないと加工量が不足
し未再結晶γ粒の伸長やこれへの変形帯導入が不十分と
なり、変態後のフェライトおよびベイナイトが十分微細
化するに至らなくなるので、r2≧50%とした。なお、R2
終了の温度T3はAr3 直上が好ましい。 【0019】圧延R2に引続き冷却速度C2≧10℃/sで加速
冷却ACC C2<10℃/sであるとACC 時にフェライトが過剰に析出
し、ベイナイトの生成量が不十分となるため、C2≧10℃
/sとした。製品板厚が例えば25mm以上と厚い場合、C2≧
10℃/sを空冷で達成するのは無理なので、ACC は水冷で
実行するに限られる。 【0020】ACC 終了の温度T4≦600 ℃ ACC 終了の温度T4を600 ℃超にするとベイナイトの生成
量が不十分となるので、T4≦600 ℃とした。なお、製品
鋼板の幅方向材質ばらつきを軽減する観点からは、T4≧
450 ℃とするのが好ましい。 【0021】 【実施例】表1に示す組成になる鋼スラブを表2に示す
条件で制御圧延後加速冷却して鋼板となした。実施例で
は温調TCを水冷で行い、比較例では温調TCを大気放冷で
行った。温調TCと加速冷却ACC の水冷は水スプレーにて
行った。スプレー水量は被冷却板厚の増加関数で与え
た。水冷の冷却速度は、放射温度計で水冷前後の表面温
度を測定し、その結果を基に水冷開始時と終了時の1/4
厚み部の温度を算出し、これら二温度の差を水冷時間で
除して求めた。得られた鋼板について、引張試験により
YS(降伏強さ)、TS(引張強さ)を測定し、シャル
ピー衝撃試験によりvTrs(50%破面遷移温度)を測定し
た。 【0022】その結果、表2に示すように、実施例で
は、温調TCを水冷で行って冷却速度C1を1.0 ℃/s以上に
したので、比較例よりもACC の冷却速度C2が速くなり、
より高強度、高靱性の鋼板が得られた。なお、鋼板1/4
厚み部の組織を光学顕微鏡観察した結果、実施例、比較
例ともフェライト+ベイナイト組織であったが、実施例
では比較例よりもベイナイト量が多くかつフェライト、
ベイナイトとも微細であった。 【0023】 【表1】 【0024】 【表2】【0025】 【発明の効果】本発明によれば、温調での冷却速度を増
大させることにより圧延後加速冷却での冷却速度を増大
させることができるから、合金成分の増量や加速冷却設
備の増強を要さずに、より高強度かつ高靱性の非調質高
張力鋼板を製造できるようになるという優れた効果を奏
する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る製造プロセスを示す加工熱処理パ
ターン図である。 【図2】温調時水冷により圧延後の加速冷却速度が向上
した例を示すグラフである。
ターン図である。 【図2】温調時水冷により圧延後の加速冷却速度が向上
した例を示すグラフである。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 mass%で、C:0.005 〜0.06%、Si:0.
05〜1.0 %、Mn:1.2 〜2.5 %、Al:0.005 〜0.08%、
Nb:0.01〜0.1 %を含む組成になる鋼スラブを1050〜12
50℃に加熱後、(Ar3+150℃) 超で圧下率30%以上として
圧延し、次いで(Ar3+150℃) 〜Ar3 まで1.0 ℃/s以上で
温調後、Ar3 以上で圧下率50%以上として圧延し、引続
き10℃/s以上で600 ℃以下まで加速冷却し、以後空冷す
ることを特徴とする非調質高張力鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001376911A JP2003183731A (ja) | 2001-12-11 | 2001-12-11 | 非調質高張力鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001376911A JP2003183731A (ja) | 2001-12-11 | 2001-12-11 | 非調質高張力鋼板の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003183731A true JP2003183731A (ja) | 2003-07-03 |
Family
ID=27590762
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001376911A Pending JP2003183731A (ja) | 2001-12-11 | 2001-12-11 | 非調質高張力鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003183731A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012229470A (ja) * | 2011-04-26 | 2012-11-22 | Kobe Steel Ltd | 低温靭性および溶接継手破壊靭性に優れた鋼板およびその製造方法 |
-
2001
- 2001-12-11 JP JP2001376911A patent/JP2003183731A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012229470A (ja) * | 2011-04-26 | 2012-11-22 | Kobe Steel Ltd | 低温靭性および溶接継手破壊靭性に優れた鋼板およびその製造方法 |
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