JP2012227430A - ナノインプリント装置及び離型方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】離型剤を用いることなく、離型力を大幅に低減させて、被成形物からモールドを容易に離型させる。
【解決手段】モールド30に形成されたナノメートルオーダーの所望のパターンを被成形材料に転写することで被成形物を成形するナノインプリント装置1において、モールド30と被成形物との間に気体を吹き付け、モールド30と被成形物との間に入り込んだ気体によって、モールド30と被成形物との間の圧力を上昇させる。具体的には、モールド30と被成形物との間の圧力上昇が、少なくともモールド30と被成形物とを含む空間の圧力に近付くよう、気体を吹き付け、モールドと被成形物との間に入り込ませる気体の量を制御することで実現する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ナノインプリント装置及び離型方法に関する。
近年、ハードディスクといった磁気ディスクなどの記録媒体へ記録する情報の高密度化への要求の高まりに対して、従来の磁気記録媒体では対応できなくなってきている。このような記録情報への高密度化に対応するためにパターンドメディアと呼ばれる磁気記録媒体が考案されている。このパターンドメディアは、記録領域を磁気的あるいは物理的に孤立させた記録媒体であり、記録密度の向上が期待されている。
このパターンドメディアは、モールドに形成された所望のパターンを被成形材料に転写するインプリント技術を利用したインプリント装置を用いて複製し量産することができる。特に、パターンドメディアの場合、ナノメートルオーダーの転写にも対応したナノインプリント技術を利用したインプリント装置を用いることになる。
なお、このインプリント技術は大きく分けて2種類あり、熱インプリントと光インプリントとがある。
熱インプリントは、微細な凹凸パターンが形成されたモールドを被成形材料である熱可塑性樹脂に加熱しながら押し付け、その後で被成形材料を冷却・離型し、微細パターンを転写する方法である。
また、光インプリントは、微細な凹凸パターンが形成されたモールドを被成形材料である光硬化性樹脂に押し付けて紫外光を照射し硬化させ、その後で被成形材料を離型し、微細パターンを転写する方法である。
インプリント装置における量産では、元型となるマスターモールドを用いることになるが、実際には、このマスターモールドを同じくインプリント装置にて被成形材料に転写することで複製した複数のワーキングレプリカと呼ばれるコピーモールドを量産ラインごとに用いることになる。つまり、コピーモールドは、元型であるマスターモールドの代替モールドとして使用されるため極めて高い精度での成形が求められることになる。
しかしながら、被成形材料にモールドの微細な凹凸パターンを転写した後に、硬化した被成形物からモールドを離型する離型プロセスを実行する場合、離型に際してある程度の高い離型力を必要とすることから、転写成形された凹凸パターンに欠陥を発生したり、離型がうまくいかなかったり様々な問題を引き起こしてしまう。特に、ナノメートルオーダーの転写に対応したナノインプリント技術においては、このような問題が顕著となってしまう可能性が高い。
また、このような離型プロセスに問題が発生するとスループットの低下を招来することなどから、コストの増大、ひいては量産化に向けての障壁となるため、離型プロセスは、インプリントにおいて非常に重要なプロセスの一つとなっている。
そこで、例えば、特許文献1では、転写パターンが形成されたテンプレートに離型剤を成膜することで、基板上に形成された塗布膜に転写パターンを転写した後の離型を容易にする技術が開示されている。
また、モールドまたは基板を物理的に変形させることにより、モールドと転写パターンを転写した被加工物との密着度を低減させて離型を容易にする手法も公知となっている。例えば、特許文献2では、基板を撓ませることにより、モールドと樹脂との剥離を容易にする機構が開示されている。
さらに、特許文献3には、マイクロメートルオーダのマイクロデバイスにおいて、凹形状転写後の成形体と金型との間に流体(例えば、空気、窒素ガス、水等)を吹き付けることで、成形体を金型より剥離させる手法が開示されている。
特開2011−5696号公報 特開2007−83626号公報 特開2008−110494号公報
しかしながら、上述したような、被成形材料にモールドの凹凸パターンを転写した後に、硬化させた被成形物からモールドを離型する離型プロセスにおいて、例えば、特許文献1で開示されているような離型剤を用いた場合、離型剤が必ず物理的な膜厚を有することから、次世代の半導体やパターンドメディアなどの超微細パターンを扱う技術領域においては、この膜厚が無視できないものとなるため、転写パターンにサイズ的な制限を与えてしまうといった問題がある。
また、例えば、特許文献2で開示されているように基板を撓ませるなどといった、モールドまたは基板を物理的に変形させることにより離型を実行する場合、転写パターンが微細になればなるほど、転写パターンの崩れなど悪影響が発生してしまう可能性が高い。具体的には、今後の技術的な発展方向である転写パターンの超微細化、高効率で転写を行う転写パターンの一括大面積化に対応することが極めて困難となる虞がある。
特に、転写パターンを一括大面積化した場合、必要となる離型力が非常に高くなるため、転写パターンの劣化、スループットの低下、インプリント装置への直接的なダメージなど様々な問題を引き起こしてしまうといった問題がある。
また、特許文献3は、成形体と金型との間に吹き付けた流体の流速によって単純に両者間を強制的に剥離するものであることから、転写パターンの劣化を招来してしまう可能性が高い。特に、ナノメートルオーダーの微細な転写パターンを成形する場合において、特許文献3で開示されているような流体の吹き付けによる剥離を行うと、転写パターンの崩れなどといった致命的な欠陥を発生させてしまう可能性が非常に高いといった問題がある。
そこで、本発明は、上述した問題を解決するために案出されたものであり、離型剤を用いることなく、離型力を大幅に低減させて、被成形物からモールドを容易に離型させることができるナノインプリント装置及び離型方法を提供するものである。
本発明の第1の態様は、
モールドに形成された所望のパターンを被成形材料に転写することで被成形物を成形するナノインプリント装置において、
前記被成形物からモールドを引き離す離型時において、前記モールドと被成形物との間に気体を吹き付け、モールドと被成形物との間に入り込んだ気体によって、前記モールドと被成形物との間の圧力を上昇させる気体吹き付け手段と、
前記モールドと被成形物との間の圧力上昇が、少なくとも前記モールドと被成形物とを含む空間の圧力に近付くよう、前記気体吹き付け手段によって吹き付け、モールドと被成形物との間に入り込ませる気体の量を制御する制御手段とを備えること
を特徴とするナノインプリント装置である。
本発明の第2の態様は、
前記気体吹き付け手段は、前記モールドと被成形物との間に略均一に気体を吹き付けること
を特徴とする上記第1の態様に記載のナノインプリント装置である。
本発明の第3の態様は、
前記気体吹き付け手段によって吹き付ける気体は、前記被成形材料との反応性が低い気体であること
を特徴とする上記第1の態様又は上記第2の態様に記載のナノインプリント装置である。
本発明の第4の態様は、
モールドに形成された所望のパターンを被成形材料に転写することで被成形物を成形するナノインプリント装置の離型方法において、
前記被成形物からモールドを引き離す離型時において、前記モールドと被成形物との間に気体を吹き付け、モールドと被成形物との間に入り込んだ気体によって、前記モールドと被成形物との間の圧力を上昇させる気体吹き付け工程と、
前記モールドと被成形物との間の圧力上昇が、少なくとも前記モールドと被成形物とを含む空間の圧力に近付くよう、前記気体吹き付け工程によって吹き付け、モールドと被成形物との間に入り込ませる気体の量を制御する制御工程とを備えること
を特徴とする離型方法である。
本発明の第5の態様は、
前記気体吹き付け工程は、前記モールドと被成形物との間に略均一に気体を吹き付けること
を特徴とする上記第4の態様に記載の離型方法である。
本発明の第6の態様は、
前記気体吹き付け工程によって吹き付ける気体は、前記被成形材料との反応性が低い気体であること
を特徴とする上記第4の態様又は上記第5の態様に記載の離型方法である。
本発明によれば、離型剤を用いることなく、離型力を大幅に低減させて、被成形物からモールドを容易に離型させることを可能とする。
本発明の実施の形態として示すナノインプリント装置の概略構成について示した図であり、(a)は転写前、(b)は転写中、(c)はモールドの離型時の様子を示した図である。 気体吹き付け部の配置関係の一例を示した図である。
以下、本発明の形態について図面を用いて説明をする。
本実施の形態においては、ナノインプリント装置及びナノインプリント装置を用いた離型方法について次の順序で説明を行う。
1.モールドと被成形物との間の圧力
2.ナノインプリント装置の構成
3.インプリント装置の動作例
4.本実施の形態の効果
5.変形例
<1.モールドと被成形物との間の圧力>
本願発明者は、鋭意検討の結果、ナノインプリント装置において、被成形材料にモールドの微細な凹凸パターンを転写した後のモールドと被成形物との間は、インプリントを実行している環境下であるインプリント雰囲気中よりも低い圧力(負圧)である減圧状態となっているという知見を得た。具体的には、被成形材料にモールドを型押して加圧し硬化させることにより、離型前のモールドと被成形物との間は、インプリント雰囲気中よりも低い圧力状態になっていると考えられる。
したがって、被成形材料にモールドの凹凸パターンを転写した後に、被成形物からモールドを離型する前段において、モールドと被成形物とは、インプリント雰囲気中の圧力(例えば、大気圧中でインプリントを実行している場合には大気圧)と、モールドと被成形物との間の圧力の差だけ、離型プロセスにおいて離型する方向とは逆向きに圧力を受けている状態となっている。
つまり、モールドと被成形物とは、一般的に考えられる両者間に働く吸着力以外にも、このような圧力差に起因して、被成形物からモールドを引き離す際に必要となる離型力が高くなっていることになる。
したがって、この圧力差を解消するようにモールドと被成形物との間の圧力を上昇させることで、インプリント雰囲気中の圧力に近付けるようにすると、これまでモールドと被成形物とが受けていた離型する方向とは逆向きの圧力が低下するため、離型プロセスにおいて必要となる離型力を大幅に低減することができることになる。
<2.ナノインプリント装置の構成>
図1は、モールドに形成された所望のパターンを被成形材料に転写して量産することができるナノインプリント装置1の概略構成の一例について説明するための図である。また、図1(a)〜(c)は、モールドに形成された所望のパターンを被成形材料に転写する場合のそれぞれ転写前、転写中、モールドの離型時ごとに示した図である。なお、図1において、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、XY方向からなる平面を水平面とし、Z方向を鉛直方向とする。特にZ方向については、矢印の方向を上とし、その逆方向を下と表現する。
このナノインプリント装置1は、マスターモールドからワーキングレプリカと呼ばれるコピーモールドを量産する量産ラインでの使用、マスターモールドまたはコピーモールドからパターンドメディアを量産する量産ラインでの使用が可能であり、熱インプリント、光インプリントのどちらにも適用することができる。
なお、以下においては、説明のため光インプリントにより、マスターモールドからコピーモールドを作製する場合について説明をする。
図1に示すように、ナノインプリント装置1は、大別すると、インプリントを実際に実行するインプリント実行部2と、インプリント実行部2を統括的に制御する動作コントローラ3とを備えている。
(インプリント実行部2について)
まず、図1(a)を用いて、インプリント実行部2の構成について説明をする。図1(a)に示すように、インプリント実行部2は、当該インプリント実行部2の土台となるベースプレート13と、ベースプレート13上に形成されたフレーム部12と、所望の微細な凹凸パターン(ナノメートルオーダー:1μm未満)が形成されたモールド30を保持するモールド保持部11とを備えている。
モールド30は、例えば、石英などからなり、図示しないがモールド保持部11内を貫通するように配設されたライトガイドに導かれた光源から出射された光を、微細な凹凸パターンが形成された領域全面に渡って透過し、後述する光硬化性樹脂であるレジストに対して上方から照射することができる。
図1(a)に示すように、インプリント実行部2のベースプレート13は、コピーモールドの基板となる基板21を安定、且つ平坦に載置するための基板載置部23を有している。基板載置部23は、基板21の載せ替えが自在であり、且つ光インプリント用のレジスト22を塗布し、微細な凹凸パターンを転写させたレジスト層を成形する際のモールド30の押し付け、離型といった工程に対して位置ずれを起こすことのないように設けられている。この基板載置部23の上に基板21を載置し、インプリントを実行するという工程を繰り返すことでコピーモールドを量産することができる。
なお、光インプリント用のレジストとしては、光硬化性樹脂とりわけ紫外線硬化性樹脂などがあげられる。このような光硬化性樹脂は、紫外線波長領域を含む光を所定時間以上照射することにより硬化する。
図1(a)に示すように、フレーム部12は、ベースプレート13上に垂直に対向するように立設された2本の支柱14と、この2本の支柱14を渡るように固定された梁15からなる。この梁15には、モールド保持部11を挿入して吊り下げるように保持するための開口部が形成されている。また、梁15には、モールド上下駆動部50が設置されており、モールド保持部11に形成されたモールド上下機構51との噛みあわせによってモールド保持部11を上下自在に駆動することができる。
例えば、モールド上下機構51とモールド上下駆動部50とは、一般に、ラック・アンド・ピニオンと呼ばれている機構である。具体的には、モールド上下駆動部50は、ピニオンと呼ばれる小口径の円形歯車をモータの回転力により回転させる機構を有している。一方、モールド上下機構51は、平板状の棒に歯切りしたラックからなる。これにより、ピニオンに回転力を加えると、ラックが歯切りした末端まで直線方向(ここでは上下方向)に動くことになる。
モールド保持部11を上下自在に駆動させる機構としては、上述したラック・アンド・ピニオン以外に、ウォームギアを用いた機構、カム機構、リンク機構などの回転動力を直線往復運動に変換する機構や、油圧、空気圧などのアクチュエータによる直動機構を適用するようにしてもよい。
このような駆動機構を有することで、後述するようにモールド保持部11は、基板載置部23に載置された基板21に塗布されたレジスト22に対してモールド30を押し付けて微細な凹凸パターンを転写したり、凹凸パターンを転写中に硬化させることで成形したレジスト層から離型したりすることができる。
次に、図1(a)を用いて、モールド保持部11について説明をする。モールド保持部11は、モールド30のパターン形成面が基板21側を向くように直接取り付けて保持するモールドホルダー31と、モールドホルダー31を保持するホルダー保持部32とを有している。図1(a)に示すように、ホルダー保持部32には、上述したモールド上下機構51が設けられている。
図1(a)に示すように、ホルダー保持部32は、当該ホルダー保持部32に形成された空間内において、モールドホルダー31と互いに係合するように構成されている。これにより、モールド上下駆動部50を回転駆動するように制御することで、モールド上下機構51を有するホルダー保持部32が上下自在に駆動し、このホルダー保持部32と係合するモールドホルダー31、ひいてはモールドホルダー31に取り付けられたモールド30を自在に上下させることができる。
ホルダー保持部32とモールドホルダー31との係合部分は、転写時、転写後においてもモールドホルダー31に取り付けられたモールド30のパターン形成面が傾くことなく平行を保つように均等な力が伝わるように構成されている。
(気体吹き付け部40A、40B、40Cについて)
図1、図2に示すように、インプリント実行部2は、被成形材料であるレジスト22にモールド30の微細な凹凸パターンを転写した後に、硬化した被成形物からモールド30を離型する離型プロセスを実行する際に、モールド30と被成形物との間に気体を吹き付ける気体吹き付け部40A、40B、40C(以下、総称する場合には単に気体吹き付け部40と呼ぶ)を備えている。以下、この気体吹き付け部40について説明をする。
図2は、インプリント実行部2を上方から視認し、被成形材料であるレジスト22が塗布される基板21に対する各気体吹き付け部40の配置関係の一例を示した図である。図2に示すように、気体吹き付け部40A、40B、40Cは、それぞれ、気体を吹き出す吹き出し口41A、41B、41C(以下、総称する場合には単に吹き出し口41と呼ぶ。)を基板21の中心に向けるようにして、120度の間隔、つまり等間隔で配置されている。このように、気体吹き付け部40を配置することで、吹き付ける対象に対して気体を均一に吹き出すことができる。気体吹き付け部40による気体の吹き付けタイミング、吹き付け量は、動作コントローラ3により制御される。
図1に示すように、気体吹き付け部40は、ベースプレート13に設けられた支持部42によって支持されている。気体吹き付け部40の高さ、吹き出し口41の方向は、手動によって自在に調整することができるが、例えば、公知の技術を適用しモータのような駆動源を組み合わせることで、動作コントローラ3の制御により自動で高さ調整、方向調整するようにしてもよい。
気体吹き付け部40は、このように必ずしも3つ必要とするわけではなく、気体を吹き付ける対象であるモールド30と被成形物との間に均一に入り込むように、気体を吹き付けることができれば、1つであってもよい。また、気体吹き付け部40は、気体を吹き付ける対象であるモールド30と被成形物との間に気体を均一に入り込ませるように吹き付けるという観点から、できるだけ多くの数を用意して気体の吹き付け対象に対して等間隔となるように配置することが、より望ましい。
気体吹き付け部40によって吹き付ける気体は、取り扱いが容易であり、被成形物であるレジスト層22Aを構成する被成形材料であるレジスト22との反応性が低いことが望ましい。例えば、ヘリウム、アルゴンなどの希ガス、窒素、水素などレジストに対して不活性なガスを、気体吹き付け部40から吹き付ける気体として用いることができる。
このような気体は、図示しないが、気体供給貯留槽などから気体供給配管を介して気体吹き付け部40へと供給される。気体供給配管は、支持部42内に配設するようにしてもよい。
気体吹き付け部40は、離型プロセスにおいて、モールド30と被成形物との間に気体を吹き付けることで、モールド30と被成形物との間の圧力を上昇させることができる。気体吹き付け部40から、モールド30と被成形物との間に吹き付けられた気体は、モールド30と被成形物との間に入り込んでいく。
これにより、今までインプリント雰囲気中に対して負圧であったモールド30と被成形物との間の圧力が上昇し、インプリント雰囲気中の圧力へと近付いていく。したがって、これまでモールド30と被成形物とが受けていた離型する方向とは逆向きの圧力が低下するため、離型プロセスにおいて必要となる離型力を大幅に低減することができることになる。
(動作コントローラ3について)
上述したように、動作コントローラ3は、ナノインプリント装置1における制御部であり、インプリント実行部2、気体吹き付け部40などを統括的に制御する。
動作コントローラ3は、離型プロセスにおいて、気体吹き付け部40の気体吹き付け動作を実行する。具体的には、動作コントローラ3は、インプリント実行部2による離型プロセスにおいて、気体吹き付け部40を制御して、モールド30と被成形物との間に気体を吹き付け、モールド30と被成形物との間に入り込んだ気体により、当該モールド30と被成形物との間の圧力を上昇させる。これにより、モールドを被成形物から引き離す離型力を大幅に低減させた状態で離型を実行する。
<3.ナノインプリント装置の動作例>
続いて、図1(a)〜(c)を用いて、所望の微細な凹凸パターンが形成されたモールド30をレジスト22に転写してコピーモールドを成形する際のインプリント実行部2の動作について説明をする。なお、このインプリント実行部2による動作は、動作コントローラ3によって制御される。
なお、インプリント雰囲気は、必ずしも大気圧状態ではなくてもよく、離型する前におけるモールド30と被成形物との間の圧力よりも高い状態であればよい。なお、以下においては、説明のため、インプリント雰囲気を大気圧状態とする。
まず、図1(a)に示すように、基板載置部23に基板21を載置し、基板21の上面にレジスト22を塗布する。
続いて、モールド上下駆動部50を駆動制御することで、モールド上下機構51によりホルダー保持部32を下方向へと移動させる。同時に、ホルダー保持部32に係合しているモールドホルダー31、モールドホルダー31に取り付けられ保持されているモールド30も下方向へと移動することになる。
これにより、図1(b)に示すように、モールド30が、基板21の上面に塗布されたレジスト22に押し付けられるため、モールド30に形成された微細な凹凸パターンが転写される。
この時、モールド30が取り付けられたモールドホルダー31の上面301a,301bは、ホルダー保持部32の下面302a,302bによって下方向へと押し付けられることになる。
インプリント実行部2のモールド保持部11は、モールド30に加わる力を検出するために、例えば、図示しない、ひずみゲージを用いた力の大きさを電気信号に変える変換器であるロードセルを備えている。図示しないロードセルによって検出された値は、インプリント実行中、例えば、所定の時間間隔などで、常に、動作コントローラ3に送信される。動作コントローラ3は、ロードセルによって検出されたモールド30をレジスト22に押し付けた際に加わる力が、所定の力となった時点でモールド上下駆動部50の動作を停止させるように制御し、モールド30によるレジスト22への押し付け状態を維持する。
光インプリントを行うナノインプリント装置1のインプリント実行部2は、この状態を維持しながらレジスト22に、当該レジスト22を硬化させる波長領域を含む光、例えば、紫外線(図示せず)を所定時間だけ照射してレジスト22を硬化させることでレジスト層を成形する。
図1(c)に示すように、レジスト22の硬化により被成形物であるレジスト層22Aが成形されると、離型プロセスへと移行する。まず、離型プロセスにおいては、動作コントローラ3の制御により、気体吹き付け部40の吹き出し口41から所定の気体をモールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの間に吹き付け、モールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの間に気体を入り込ませる。
このとき、動作コントローラ3は、インプリント雰囲気中に対して負圧であったモールド30と被成形物との間の圧力上昇がインプリント雰囲気中の圧力へと近付くよう、気体吹き付け部40の吹き出し口41から、モールド30と被成形物との間に吹き付けて入り込ませる気体の量を制御する。これにより、被成形物であるレジスト層22Aからモールドを引き離す力である離型力が大幅に低減されることになる。
動作コントローラ3は、気体吹き付け部40を制御し、例えば、あらかじめの検証により取得し、デフォルト値としてメモリなどに記憶保持している離型力を所望の値まで大幅に低減させるために必要な気体の量を吹き付けたことに応じて、気体の吹き付け動作を停止させる。
次に、図1(c)に示すように、動作コントローラ3は、モールド30をレジスト層22Aから離すようにモールド上下駆動部50を駆動制御しモールド保持部11を上方向へと移動させ、モールド30と被成形物であるレジスト層22Aとを離型する。
このとき、動作コントローラ3は、図示しないロードセルによって常時、検出されているモールド30に加わる力から、モールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの離型力を検出し、所定の離型力以下になっていない場合には、モールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの間の圧力が、インプリント雰囲気中の圧力に近付いていないと判定し、再び、吹き付け部40による気体の吹き付け動作を実行するようにしてもよい。この制御動作を繰り返すことにより、確実に、モールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの間の圧力をインプリント雰囲気中の圧力に近付くように上昇させることができ、モールド30を被成形物から引き離す離型力を大幅に低減させた状態で離型を実行することができる。
なお、インプリント雰囲気は、インプリントの離型プロセスにおいて、モールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの間の圧力を、上述したように気体を吹き付けることにより上昇させた場合に離型が可能なように、モールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの間の圧力よりも高ければよく、必ずしも大気圧状態とする必要はない。
このような、図1(a)〜(c)を用いて説明した動作を実行することで、ナノインプリント装置1のインプリント実行部2は、モールド30に形成された所望の微細な凹凸パターンを被成形材料であるレジスト22に転写して硬化させることで、基板21上に被成形物であるレジスト層22Aを成形することができる。
<4.本実施の形態の効果>
本実施の形態で説明したナノインプリント装置1、当該ナノインプリント装置1が実行する被成形物からモールドを引き離す離型方法によれば、以下に述べる効果が得られる。
本実施の形態によれば、ナノインプリント装置1のインプリト実行部2が実行するインプリントの離型プロセスにおいて、モールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの間の圧力を、インプリント雰囲気の圧力に近付けるように、気体吹き付け部40を制御して、モールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの間に気体を吹き付け、モールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの間に吹き付けた気体を入り込ませることで上昇させる。
本願発明者が、鋭意検討の結果見出した知見により、離型前のモールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの間は、インプリント雰囲気中よりも低い圧力状態になっていると考えられる。
つまり、モールド30と被成形物であるレジスト層22Aとは、インプリント雰囲気との圧力差により離型方向とは逆向きの圧力を受けていることになる。
したがって、この圧力差を解消するようにモールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの間の圧力を上昇させ、インプリント雰囲気中の圧力に近付けるようにすると、これまでモールド30と被成形物とが受けていた離型する方向とは逆向きの圧力も低下するため、離型プロセスにおいて必要となる離型力を大幅に低減することができる。
このように、離型プロセスにおいて必要となる離型力を大幅に低減させることができれば、転写パターンの品質向上を可能とし、離型層を必要としないことから転写パターンの超微細化(例えば、ナノメートルオーダー:1μm未満)が可能となる。特に、転写パターンが、100nm以下のパターンサイズの場合に好適である。
また、離型力の大幅な低減により、離型プロセスにおいて、ナノインプリント装置1自体へと与える装置負荷をも低減させることができるため、ナノインプリント装置1の耐久性も向上させることができる。さらに、離型力の大幅な低減により、高効率で転写を行う転写パターンの一括大面積化へ発展させるべく、転写パターン面積の拡大も容易となる。
<5.変形例>
本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
例えば、上述した図1では、ナノインプリント装置1のインプリント実行部2全体を開放し大気圧状態としているが、必ずしもこのような構成とする必要はない。
被成形材料にモールドの凹凸パターンを転写した後に、被成形物からモールドを離型する離型プロセスに関連する箇所、具体的には、少なくともモールドと被成形物とを含む空間内の圧力を、モールドと被成形物との間の圧力よりも高い状態とする。そして、モールドと被成形物との間の圧力を、気体の吹き付けにより、上述した少なくともモールドと被成形物とを含む空間内の圧力に近付くように上昇させることができれば、離型プロセスにおいて離型力を大幅に低減することができる。
例えば、図示しないが、インプリント実行部2のうちのモールド30、被成形物であるレジスト層22A、基板21、基板載置部23を含む空間内を離型プロセスにおいて密閉状態とするようなチャンバーを設け、このチャンバー内に気体吹き付け部40も設置することで、気体の吹き付けによりモールド30と被成形物との間の圧力を上昇させるよう制御可能な構成とする。
これにより、少なくともモールド30と被成形物とを含む空間内の圧力に近付くように、モールド30と被成形物との間の圧力を上昇させることで、離型プロセスにおいて、被成形物からモールドを離型する際に必要となる離型力を大幅に低減させることができる
このように、離型プロセスに関わる空間を閉じた空間とすると、離型力の大幅な低減を可能にするとともに、インプリントの実行においても異物の混入を防止することができるという更なる利点がある。
また、気体吹き付け部40で吹き付ける気体は、インプリント雰囲気中と同じ気体を用いることが好ましい。これにより、モールド30に形成されたナノメートルオーダー(1μm未満)の微細な凹凸パターンを転写されたレジスト層22に与える影響を最小限にすることができるという利点がある。さらに、インプリント雰囲気中と同じ気体を用いることから、気体の質量差による上層・下層への滞留を防止することができるという利点がある。
さらに、気体吹き付け部40で吹き付ける気体は、上述したように、取り扱いが容易であり、被成形物であるレジスト層22Aを構成する被成形材料であるレジスト22との反応性が低いことに加え、モールド30と被成形物であるレジスト層22Aとの間に入り込みやすいように、分子径(分子サイズ)の小さい気体を用いることが好ましい。これにより、モールド30に形成されたナノメートルオーダー(1μm未満)の微細な凹凸パターンを転写されたレジスト層22からモールド30を引き離す離型力の低減を促進することができるという利点がある。
本実施の形態は、本発明の好適な実施の一態様を示すものである。すなわち、本発明は、本実施の形態の内容に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。もちろん、本発明は、光インプリントに限らず、熱インプリントにおいても同様に適用することが可能であることは言うまでもない。
1 ナノインプリント装置
2 インプリント実行部
3 動作コントローラ
21 基板
22 レジスト
22A レジスト層
23 基板載置部
30 モールド
40 気体吹き付け部
40A 気体吹き付け部
40B 気体吹き付け部
40C 気体吹き付け部
41 吹き付け口
41A 吹き付け口
41B 吹き付け口
41C 吹き付け口

Claims (6)

  1. モールドに形成された所望のパターンを被成形材料に転写することで被成形物を成形するナノインプリント装置において、
    前記被成形物からモールドを引き離す離型時において、前記モールドと被成形物との間に気体を吹き付け、モールドと被成形物との間に入り込んだ気体によって、前記モールドと被成形物との間の圧力を上昇させる気体吹き付け手段と、
    前記モールドと被成形物との間の圧力上昇が、少なくとも前記モールドと被成形物とを含む空間の圧力に近付くよう、前記気体吹き付け手段によって吹き付け、モールドと被成形物との間に入り込ませる気体の量を制御する制御手段とを備えること
    を特徴とするナノインプリント装置。
  2. 前記気体吹き付け手段は、前記モールドと被成形物との間に略均一に気体を吹き付けること
    を特徴とする請求項1記載のナノインプリント装置。
  3. 前記気体吹き付け手段によって吹き付ける気体は、前記被成形材料との反応性が低い気体であること
    を特徴とする請求項1又は請求項2記載のナノインプリント装置。
  4. モールドに形成された所望のパターンを被成形材料に転写することで被成形物を成形するナノインプリント装置の離型方法において、
    前記被成形物からモールドを引き離す離型時において、前記モールドと被成形物との間に気体を吹き付け、モールドと被成形物との間に入り込んだ気体によって、前記モールドと被成形物との間の圧力を上昇させる気体吹き付け工程と、
    前記モールドと被成形物との間の圧力上昇が、少なくとも前記モールドと被成形物とを含む空間の圧力に近付くよう、前記気体吹き付け工程によって吹き付け、モールドと被成形物との間に入り込ませる気体の量を制御する制御工程とを備えること
    を特徴とする離型方法。
  5. 前記気体吹き付け工程は、前記モールドと被成形物との間に略均一に気体を吹き付けること
    を特徴とする請求項4記載の離型方法。
  6. 前記気体吹き付け工程によって吹き付ける気体は、前記被成形材料との反応性が低い気体であること
    を特徴とする請求項4又は請求項5記載の離型方法。
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