JP2012221582A - 放電ランプ - Google Patents

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Abstract

【課題】電極の密閉空間に伝熱体が封入されてなる放電ランプにおいて、ランプ点灯時に電極内の密閉空間内で溶融した伝熱体をスムーズに対流させ、電極本体の先端の熱を電極本体の後端側に効率よく伝達することができず、電極先端に割れが発生することのない放電ランプを提供するものである。
【解決手段】 本願発明の放電ランプは、発光管10の内部に一対の電極を有し、少なくとも一方の電極12は、その内部に形成された密閉空間18内に伝熱体Mが封入されており、密閉空間18が形成された電極12の内壁面2は、電極先端側に形成された先端面2aと、先端面に続き電極後端側に向けて伸びる側面2bとを有し、先端面2aの表面粗さが、側面2bの表面粗さより小さくなっていることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、放電ランプに関するものであり、特に、電極本体の密閉空間に伝熱体が封入された電極を有する放電ランプに係わるものである。
従来、半導体基板、液晶ディスプレイ用の液晶基板、プリント基板などを露光する露光装置の紫外線照射光源として用いられる放電ランプにおいては、その大出力化が進んでいる。この大出力化により定格消費電力が大きくなると、ランプに流れる電流値は通常大きくなり、これにより電極は電子衝突を受ける量が大きくなって、容易に昇温して溶融してしまうという問題が生じる。
また、電極を構成する材料、例えばタングステンが蒸発して発光管の内表面に付着して黒化してしまい、ランプとしての放射能力が低下するという問題も生じている。
このような電極材料の溶融、蒸発といった問題を解決すべく、例えば、特開2004−6246号公報に開示されるような電極構造をもった放電ランプが提案されている。
この放電ランプにおいては、電極本体に形成した密閉内部空間に、電極材料よりも熱伝達率が高く、ランプ点灯時に溶融する伝熱体が封入された電極を用いるものである。
この従来技術を図2、3に基づいて説明すると以下の通りである。
図2において、発光管10内に対向配置された一対の電極11、12を有する放電ランプ1が示されており、その電極のうちの少なくとも一方の電極(この例では陽極)12の電極本体15は、図3に示されるように、容器部材16と蓋部材17とからなり、その内部には密閉空間18が形成されている。
そして、該密閉空間18には、電極12を構成する材料、例えばタングステンよりも熱伝導率が高く、ランプ点灯時に溶融する材料、例えば、金、銀などからなる伝熱体Mが封入されている。また、前記密閉空間18には不活性ガスが充填されている。
前記伝熱体Mは、ランプ点灯時に溶融して、密閉空間18内で対流し、電極本体15の先端の熱を該電極本体15の後端側に伝達することによって、電極本体15の軸方向での温度勾配を減少し、その結果、先端の温度を下げることができるものであって、これにより、電極先端の溶融や蒸発を抑えることができるという効果を奏するものである。
しかしながら、このような電極構造を有する放電ランプを長時間点灯させていると、電極先端に割れを生じ、照度低下などの不具合に至ることがある。
電極先端に割れを生じた放電ランプを分析すると、点灯中に電極先端温度が所定温度以下に下がっておらず、電極先端の熱応力を十分に抑制できていないことが判明した。
この現象について、図3を用いて詳細に説明する。
電極12の密閉空間18内の伝熱体Mは、電極材料より熱伝達率が高く、融点の低い金、銀などの金属であり、ランプ点灯時には高温により溶融して液体状態となる。電極の長手方向を垂直方向に沿って配置してランプを垂直点灯した場合において、この溶融伝熱体Mは、容器部材16内で主に垂直方向に、浮力と、ローレンツ力を受けて上下に対流運動Fを行っており、上昇流Fuと下降流Fdが生じている。
しかしながら、密閉空間18の内部では、この上昇流Fuと下降流Fdがスムーズに循環しない場合があり、この場合、電極本体15の先端の熱を電極本体15の後端側に効率よく伝達することができず、電極先端温度が所定温度以下に下がらない場合があった。
上昇流Fuと下降流Fdがスムーズに循環しない電極を更に詳細に分析すると、密閉空間18を形成する容器部材16の内壁面の表面粗さが影響し、容器部材16の電極先端側に形成された先端面16aで、下降流Fdから上昇流Fuと対流が変化するときに、内壁面の表面粗さによって乱流が発生し、下降流Fdから上昇流Fuへとスムーズに変化していないことが判明した。
容器部材16は、密閉空間18を形成するために、中実の円柱状である容器部材構造体に穴ぐり加工を行うものである。
この穴ぐり加工は、中実の円柱状である容器部材構造体を電極の中心軸に沿って長手方向にドリルによって掘り込んで穴を作り、さらに、その穴の電極先端側を切削バイトによって曲面状に切削するものである。
この結果、密閉空間が形成された容器部材16の内壁面の表面粗さは、特に、制御されておらず、加工上必然的に形成される表面粗さになっていた。
特開2004−6246号公報
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、電極の密閉空間に伝熱体が封入されてなる放電ランプにおいて、ランプ点灯時に電極内の密閉空間内で溶融した伝熱体をスムーズに対流させ、電極本体の先端の熱を電極本体の後端側に効率よく伝達することができず、電極先端に割れが発生することのない放電ランプを提供しようとするものである。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の放電ランプは、発光管の内部に一対の電極を有し、少なくとも一方の電極は、その内部に形成された密閉空間内に伝熱体が封入されてなる放電ランプにおいて、前記密閉空間が形成された電極の内壁面は、電極先端側に形成された先端面と、当該先端面に続き電極後端側に向けて伸びる側面とを有し、前記先端面の表面粗さが、前記側面の表面粗さより小さくなっていることを特徴とする。
請求項2に記載の放電ランプは、請求項1に記載の放電ランプであって、特に、前記先端面の表面粗さ(Ra)は、0.58μm以下であることを特徴とする。
請求項3に記載の放電ランプは、請求項2に記載の放電ランプであって、特に、前記密閉空間が形成された電極の内壁面の先端面は、電解研磨されていることを特徴とする。
本発明によれば、電極の内部に形成された密閉空間内に伝熱体が封入されてなる放電ランプにおいて、密閉空間が形成された電極の内壁面は、電極先端側に形成された先端面と、当該先端面に続き電極後端側に向けて伸びる側面とを有し、先端面の表面粗さを側面の表面粗さより小さくすることにより、密閉空間の電極先端側で伝熱体の対流が下降流から上昇流へとスムーズに変化するので、長時間点灯しても、電極本体の先端の熱を電極本体の後端側に効率よく伝達することができず、電極先端に割れが生じるようなことはない。
さらには、密閉空間が形成された電極の内壁面の電極先端側に形成された先端面の表面粗さ(Ra)が、0.58μm以下であるので、電極先端側での伝熱体の乱流を防止し、スムーズに対流させることができる。
さらには、電極の内壁面の先端面を電解研磨することにより、先端面の表面粗さ(Ra)を確実に0.58μm以下とすることができる。
本発明に係る放電ランプの電極の断面図 従来の放電ランプの断面図 図2で示す放電ランプの電極の断面図
図1はこの発明のショートアーク型放電ランプの電極構造を示し、図1は、電極軸に沿った断面図である。
図において、電極12は、容器部材16と蓋部材17とからなる電極本体15を有し、該電極本体15内には密閉空間18が形成されている。
容器部材16と蓋部材17はタングステンよりなるものである。
密閉空間18内には、タングステンなどの電極材料よりも熱伝導率の高い伝熱体Mが封入されている。該伝熱体Mは、例えば金や銀などの金属からなり、電極材料よりも融点が低く、ランプ点灯時には密閉空間18内で溶融する。
密閉空間18が形成された電極12の内壁面2は、電極先端側に形成された曲面状の先端面2aと、当該先端面2aに続き電極後端側に向けて伸びる直線状の側面2bとを有している。尚、電極12の内壁面2は、曲面の先端面2aの先に平面が形成されていても良い。
側面2bは、容器部材構造体を電極の中心軸に沿って長手方向にドリルによって掘り込んで穴を作った際にできた面であり、一例として、側面2bの表面粗さ(Ra)は、1.82μmである。
先端面2aは、容器部材構造体を電極の中心軸に沿って長手方向にドリルによって掘り込んで穴を作り、さらに、その穴の電極先端側を切削バイトによって曲面状に切削し、その後、電解研磨してできた面であり、一例として、先端面2aの表面粗さ(Ra)は、0.17μmである。
つまり、先端面2aの表面粗さは、側面2bの表面粗さより小さくなっているものである。
本願発明では、密閉空間18が形成された電極の内壁面2は、先端面2aの表面粗さが側面2bの表面粗さより小さくなっているので、密閉空間18の電極先端側で伝熱体Mの対流が先端面2aで阻害されることがなく滑らかに流れるので、密閉空間18の電極先端側における伝熱体Mの対流が下降流から上昇流へとスムーズに変化するのである。
表面粗さ(Ra)は、以下の方法で測定するものである。
密閉空間が形成された電極を、電極軸に沿って切断する。
その後、密閉空間が形成された電極の内壁面のうち、先端面の内壁面と側面の内壁面をそれぞれ別々に触針式表面粗さ計により2mmの距離の表面粗さを測定する。
次に、本発明の効果を実証するために以下の実験を行った。
ランプの仕様は以下の通り。
<発光管>
材料:石英ガラス
内容積:550cm
電極間距離:6mm
封入物:水銀2.0mg/cc、アルゴン100kPa
<陽極>
材料:タングステン
胴部(容器部材)の外径:25mm
電極本体容積:6cm
肉厚:陰極と対向する先端部の肉厚3.0mm、先端部以外の側面部の肉厚5.5mm
伝熱体:銀5.4cm
封入ガス:アルゴン100kPa
<陰極>
材料:トリウム含有タングステン(トリタン) トリウム含有2重量%
<定格>
定格電流:150A
定格電力:5kW
次いで、電極構造が図3に示す従来のランプと、図1に示す本発明のランプを作成した。
従来例のランプと、本願発明のランプの相違点は、密閉空間が形成された電極の内壁面である側面と先端面の表面粗さが異なるものである。
表1に表面粗さの違いを整理した。
Figure 2012221582
(実験1)
表1に記載の従来のランプと本発明のランプを、陽極を上方とした垂直点灯を行い、電極破壊が確認された場合はその時点でランプを消灯し、破壊が確認されない場合は100時間経過した時刻において陽極の状態を目視で確認した。
電極を目視で確認する方法は、点灯中のランプの密閉空間が形成された方の電極を減光フィルターを介して目視し、電極先端付近に発生する割れの有無を確認するものである。
その結果を、表2に示す。
Figure 2012221582
表2の実験1の結果を詳細に説明すると、従来のランプでは点灯直後、本実験では点灯後30秒程度の極めて短時間で陽極の先端に割れが発生し、電極内部の伝熱体が漏れ出した。
一方、本発明のランプでは、100時間点灯しても、割れによる破壊が全く起こらないものであった。
つまり、本発明のランプは、陽極の先端の熱を陽極の後端側に効率よく伝達することができる。
(実験2)
次に、本発明のランプと比較用のランプ用いて、先端面2aの粗さを変え、陽極を上方とした垂直点灯を行い、電極破壊が確認された場合はその時点でランプを消灯し、破壊が確認されない場合は100時間経過した時刻において陽極の状態を目視で確認した。
先端面2aと側面2bの表面粗さ、及び、陽極の状態を表3に整理した。
電極を目視で確認する方法は、点灯中のランプの密閉空間が形成された方の電極を減光フィルターを介して目視し、電極先端付近に発生する割れの有無を確認するものである。
Figure 2012221582
表3の実験2の結果を詳細に説明すると、密閉空間が形成された陽極の先端面の表面粗さ(Ra)が、0.58μm以下であれば、電極割れによる破壊が全く起こらないものであった。
つまり、密閉空間が形成された陽極の先端面の表面粗さ(Ra)が、0.58μm以下であれば、電極先端側での伝熱体の乱流を防止し、密閉空間内で伝熱体をスムーズに対流させることができる。
1 放電ランプ
10 発光管
11 陰極
12 陽極
2 陽極の内壁面
2a 先端面
2b 側面
15 電極本体
16 容器部材
17 蓋部材
18 密閉空間
M 伝熱体
F 対流
Fu 上昇流
Fd 下降流

Claims (3)

  1. 発光管の内部に一対の電極を有し、少なくとも一方の電極は、その内部に形成された密閉空間内に伝熱体が封入されてなる放電ランプにおいて、
    前記密閉空間が形成された電極の内壁面は、電極先端側に形成された先端面と、当該先端面に続き電極後端側に向けて伸びる側面とを有し、
    前記先端面の表面粗さが、前記側面の表面粗さより小さくなっていることを特徴とする放電ランプ。
  2. 前記先端面の表面粗さ(Ra)は、0.58μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
  3. 前記密閉空間が形成された電極の内壁面の先端面は、電解研磨されていることを特徴とする請求項2に記載の放電ランプ。
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