JP2012219716A - 車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】アクセル操作及びブレーキ操作が同時になされている同時操作状態が解除されて出力抑制制御を停止するに際して車両走行姿勢の安定化をより高い次元で実現することのできる車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】アクセル操作及びブレーキ操作が同時になされている同時操作状態を検出したことを条件に機関出力をアクセル開度に基づく基準出力よりも低下させる出力抑制制御を実行する(ステップS21)とともに車両走行姿勢を安定化させる姿勢安定化制御を無効化する(ステップS22)。そして、アクセル操作及びブレーキ操作のうち少なくとも一方の操作が解除されることを条件に姿勢安定化制御の無効化を解除(ステップS24)してその後に出力抑制制御を停止する(ステップS25)。
【選択図】図3

Description

この発明は、アクセル操作及びブレーキ操作が同時になされている同時操作状態を検出したことを条件に機関出力をアクセル操作量に基づく基準出力よりも低下させる車両の制御装置に関する。
従来から、アクセルペダル及びブレーキペダルが同時に操作されている同時操作状態を検出した場合に、例えばスロットル開度を減少させるなどして機関出力を低下させる出力抑制制御を行う車両の制御装置が提案されている。
そして、こうした出力抑制制御の実行中にクラッチ操作などの出力復帰要求が検出された場合、出力抑制制御を中止して機関出力をアクセル開度に基づく値まで増大させるようにしている(例えば特許文献1)。
特開2006−233870号公報
ところで、近年では、例えば駆動輪の空転を抑制するトラクション制御や車両の横滑りを抑制する横滑り抑制制御などの姿勢安定化制御を行う車両の制御装置も提案されている。そして、こうした出力抑制制御及び姿勢安定化制御を行う車両の制御装置では、上述したような同時操作状態が検出されると、姿勢安定化制御を無効化して出力抑制制御を優先させることにより、同時操作状態における安全性を一層高めることが望ましい。
ここで、上述したような姿勢安定化制御は、過去及び現在の車両走行姿勢を考慮しつつその安定化を図るものであり、しかも車両走行姿勢の不安定化が検出されて始めて機関出力や制動力等を同姿勢が安定化するように制御するフィードバック制御である。このため、出力抑制制御を停止するときには、このような姿勢安定化制御の特性を十分考慮しつつ同制御の無効化を解除することで、出力抑制制御を停止するときにおける車両走行姿勢の安定性をより向上させることが望ましい。
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アクセル操作及びブレーキ操作が同時になされている同時操作状態が解除されて出力抑制制御を停止するに際して車両走行姿勢の安定化をより高い次元で実現することのできる車両の制御装置を提供することにある。
この発明では、アクセル操作及びブレーキ操作が同時になされている同時操作状態を検出したことを条件に機関出力をアクセル操作量に基づく基準出力よりも低下させる出力抑制制御を実行し、併せて車両走行姿勢を安定化させる姿勢安定化制御を無効化する。そして、アクセル操作及びブレーキ操作のうち少なくとも一方の操作が解除されることを条件に姿勢安定化制御の無効化を解除してその後に出力抑制制御を停止するようにしている。
このため、出力抑制制御の停止に伴う機関出力の増大に起因して車両走行姿勢を安定化させる必要が生じた場合であっても、既に姿勢安定化制御の無効化が解除されているため、同制御を通じて車両走行姿勢を迅速に安定化させることができ、同時操作状態が解除されて出力抑制制御を停止する際における車両走行姿勢の安定化をより高い次元で実現することができるようになる。
この発明の第1の実施形態にかかる車両の制御装置の概略構成図。 出力抑制制御の条件成立フラグを操作する際の処理手順を示すフローチャート。 出力抑制制御を実行又は停止する場合の処理手順を示すフローチャート。 出力抑制制御及び姿勢安定化制御の実行態様を示すタイミングチャート。 この発明の第2の実施形態において出力抑制制御を実行又は停止する場合の処理手順を示すフローチャート。 出力抑制制御及び姿勢安定化制御の実行態様を示すタイミングチャート。
(第1の実施形態)
以下、この発明にかかる車両の制御装置を具体化した第1の実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1に示すように、車両100の内燃機関10には、その吸気通路11に吸入空気量、換言すれば機関出力を調節するスロットルバルブ12が設けられている。
また、内燃機関10の出力軸は、トルクコンバータを介して自動変速機30の入力軸に接続されている。一方、この自動変速機30の出力軸40は、デファレンシャルギア50を介して車両100の駆動輪、即ち右後輪70RR及び左後輪70RLにそれぞれ接続されている。これら右後輪70RR及び左後輪70RLと、車両100の従動輪、即ち右前輪60FR及び左前輪60FLには、それぞれブレーキ80が設けられている。
また、車両100には、車両走行姿勢にかかる情報や運転者の走行要求にかかる情報を検出する各種センサが設けられている。ブレーキセンサ90は、運転者がブレーキペダルを踏み込むときの踏力であるブレーキ踏力を検出する。アクセルセンサ91は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度を検出する。
ヨーレートセンサ92は、車両100の旋回方向における回転角速度であるヨーレートを検出する。加速度センサ93は、車両100の前後方向及び左右方向の加速度を検出する。ステアリングセンサ94は、運転者によるステアリングホイールの操作量であるステアリング操舵角を検出する。右前輪速度センサ95、左前輪速度センサ96、右後輪速度センサ97、及び左後輪速度センサ98は車輪速度をそれぞれ検出する。
また、車両100にはナビゲーションシステム99が搭載されている。このナビゲーションシステム99はGPS信号に基づき車両100の現在位置を検出する。また、ナビゲーションシステム99は、検出した車両100の現在位置及び道路地図情報を参照して走行目的地までの走行経路等の案内を運転者に対して行う。道路地図情報は道路形状及び路面状態などの情報が含まれる。道路形状としては、例えばコーナー半径Rを示すコーナー情報、及び道路勾配を示す勾配情報などがあり、路面状態としては、例えば学習により取得した段差情報などがある。
車両100には、内燃機関10の運転状態を含め、車両100の走行状態を統括的に制御する制御装置200が搭載されている。制御装置200には、上述した各種センサ90〜98の検出信号の他、ナビゲーションシステム99が検出した車両100の現在位置を示す信号や上述したコーナー情報などの道路地図情報にかかる信号が取り込まれる。そして、制御装置200はこれら各種信号などに基づいて、車両100の制御、例えば内燃機関10のスロットル開度制御、燃料噴射制御、及び点火時期制御等といった各種のエンジン制御や、自動変速機30の変速制御、ブレーキ80の制動制御等を実行する。
また、制御装置200は、車両走行姿勢を安定化させる姿勢安定化制御として、駆動輪(右後輪70RR及び左後輪70RL)の空転を抑制するトラクション制御、及び車両100の横滑りを抑制する横滑り抑制制御を実行する。その他、制御装置200は、アクセルペダル及びブレーキペダルが同時に操作されている状態(「同時操作状態」)が検出されたことを条件に機関出力を低下させる出力抑制制御を実行する。
次に、こうした姿勢安定化制御及び出力抑制制御について詳しく説明する。
まず、トラクション制御について説明する。
トラクション制御において、制御装置200は、各速度センサ95〜98から取り込んだ各車輪速度に基づき、従動輪と駆動輪との回転速度差を常時算出し、その回転速度差に基づいて駆動輪のスリップ率を算出する。そして、制御装置200は、車両100の発進時や加速時、或いは低μ路走行時等において、上述したスリップ率が閾値を超えたことを条件として、駆動輪が過剰な駆動力によって空転していると判定する。
制御装置200は、駆動輪の空転が検出された場合、空転が検出された駆動輪のブレーキ80を作動させて制動力を高める。また、制御装置200は、目標スロットル開度をアクセル操作量、即ちアクセル開度に対応する値(「基準開度Ta」)より小さい値に設定して機関出力を低下させる。したがって、駆動輪の制動力が高められる一方、駆動力の低減されるため、駆動輪の空転が抑制されるようになる。
次に、横滑り抑制制御について説明する。
横滑り抑制制御において、制御装置200は、ヨーレート、ステアリング操舵角、及び各車輪速度に基づき、車両100の横滑りを検出する。車両100の横滑りを検出した場合、制御装置200は、各車輪に設けられたブレーキ80の制動力を制御する。更に、制御装置200は、目標スロットル開度を基準開度Taより小さい値に設定して機関出力を低下させる。
次に、出力抑制制御について説明する。
制御装置200は、上述した同時操作状態が検出されたことを条件に機関出力を基準出力よりも低下させる出力抑制制御を実行する。ここで、基準出力とは、目標スロットル開度を基準開度Taに制御することで得られる機関出力であり、上述した姿勢安定化制御による機関出力の制限がなされていない通常の車両走行状態における機関出力である。
制御装置200は、出力抑制制御の実行に際して目標スロットル開度を基準開度Taよりも小さい値に設定して機関出力を低下させる。一方、制御装置200は、出力抑制制御の停止に際し、姿勢安定化制御による機関出力の制限がなされなければ、目標スロットル開度を基準開度Taに戻すことで機関出力は基準出力にまで増大させる。
なお、上述した同時操作状態は、運転者がアクセルペダル及びブレーキペダルを同時に踏み込んだ場合、アクセルペダルの踏み込み中にブレーキペダルを踏み込んだ場合、ブレーキペダルの踏み込み中にアクセルペダルを踏み込んだ場合に生じる。
以下、出力抑制制御の処理手順について図2及び図3に示されるフローチャートを参照して説明する。
まず、出力抑制制御の実行条件が成立しているか否かを判断する条件成立フラグFが、アクセル開度、ブレーキ踏力、車両100の現在位置、道路地図情報に基づいて操作される。即ち、図2に示されるように、アクセル開度、及びブレーキ踏力が検出され(ステップS10)、それらに基づいて上述した同時操作状態であるか否かが判定される(ステップS11)。ステップS11では、アクセル開度及びブレーキ踏力がいずれも所定の閾値以上であることを条件に同時操作状態であると判定される。
同時操作状態であると判定された場合(ステップS11:YES)には、車両100の現在位置が「コーナー」→「直線路」のように変化する、いわゆるコーナーの立ち上がり位置であるか否かが判定される(ステップS12)。この判定は、ナビゲーションシステム99から取り込んだ現在位置、及びコーナー情報に基づいて行われる。
即ち、現在位置における道路のコーナー半径Rが第1の値R1より小さく、且つ車両100の進路前方における道路のコーナー半径Rが第2の値R2(但しR1<R2)よりも大きい場合に、コーナーの立ち上がり位置であると判定される。例えば現在位置が直線路上にあることにより、コーナー半径Rが「設定なし(∞)」である場合や、現在位置が緩やかなコーナー上にあることにより、コーナー半径Rが第1の値R1より大きい場合には、車両100の現在位置がコーナーの立ち上がり位置にないと判定される(ステップS12:NO)。同様に、現在位置の進路前方における道路が急なコーナーであることにより、進路前方の道路のコーナー半径Rが第2の値R2より小さい場合にもやはり車両100の現在位置がコーナーの立ち上がり位置ではないと判定される(ステップS12:NO)。
そしてこのように、車両100の現在位置がコーナーの立ち上がり位置ではないと判定された場合(ステップS12:NO)には、条件成立フラグFが「オン」に設定される(ステップS13)。一方、ステップS11において同時操作状態ではないと判定された場合(ステップS11:NO)や、同時操作状態であると判定された場合であっても車両100の現在位置がコーナーの立ち上がり位置であると判定された場合(ステップS12:YES)には、いずれも条件成立フラグFが「オフ」に設定される(ステップS14)。このようにして条件成立フラグFが操作された後、この一連の処理は終了される。
次に、このように操作される条件成立フラグFの値に基づいて出力抑制制御を実行する場合及びこれを停止する場合における処理手順について図3を参照して説明する。
この一連の処理では、まず条件成立フラグFが「オン」に設定されているか否かが判定される(ステップS20)。条件成立フラグFが「オン」に設定されている場合(ステップS20:YES)には、上述した出力抑制制御が実行され(ステップS21)、その後、姿勢安定化制御が無効化される(ステップS22)。
したがって、条件成立フラグFが「オン」に設定されている間には、出力抑制制御が実行される一方で姿勢安定化制御が無効化されることにより、出力抑制制御が優先的に行われることになる。
一方、条件成立フラグFが「オン」に設定されていない場合(ステップS20:NO)には、前回の制御周期において「オン」に設定されていた条件成立フラグFが今回の制御周期において「オフ」に変化したか否か、即ち実行中であった出力抑制制御が停止されるタイミングであるか否かが判定される(ステップS23)。ここで、このように出力抑制制御が停止されるタイミングであると判定された場合(ステップS23:YES)には、まず姿勢安定化制御の無効化が解除される(ステップS24)。これにより、姿勢安定化制御が再開される。
このように姿勢安定化制御が再開され、同制御を通じて車両走行姿勢を安定化させるのに十分な期間が経過すると、出力抑制制御が停止される(ステップS25)。したがって、目標スロットル開度の最終的な決定は姿勢安定化制御を通じて行われるようになる。
例えば、車両走行姿勢が安定していれば、目標スロットル開度が基準開度Taに制御されて機関出力は基準出力となる一方、駆動輪の空転や横滑りが検出される等、車両走行姿勢が安定していなければ、目標スロットル開度は基準開度Taよりも小さい値に設定されて機関出力は基準出力以下に制限されることとなる。
そして、このように出力抑制制御を実行する又は停止する処理(ステップS22,ステップS25)が実行された場合、並びに出力抑制制御が継続して停止中である場合(ステップS23:NO)には、この一連の処理が終了される。
次に、上述した制御装置200による制御の実行態様についてその一例を図4を参照して説明する。
図4に示すように、アクセルペダルが踏み込まれると(タイミングt11)、姿勢安定化制御による機関出力の制限がなされなければ、目標スロットル開度は基準開度Taに設定され、実際の開度が基準開度Taになるようにスロットルバルブ12が制御される(タイミングt11〜t12の期間)。
そして、アクセルペダルが踏み込まれた状態において、更にブレーキペダルが踏み込まれることによって同時操作状態が検出(タイミングt12)され、出力抑制制御が実行されると、目標スロットル開度が基準開度Taよりも小さい上限開度Tdになるようにスロットルバルブ12が制御される(タイミングt12〜t13の期間)。またこのように出力抑制制御が実行される一方、姿勢安定化制御についてはこれが無効化される(タイミングt12〜t13の期間)。ここで、出力抑制制御の実行中(タイミングt12〜t13の期間)に、車両100が走行する道路の路面摩擦係数が低下した場合であっても、機関出力が抑制されているため、駆動輪の空転や横滑りについては抑制されるようになる。換言すれば、姿勢安定化制御が無効化された状況のもとでも、こうした駆動輪の空転や横滑りが抑制されるように、上記上限開度Tdが設定されている。
そして、例えばブレーキペダルの踏み込みが解除されたことによって同時操作状態が解除されると、まず姿勢安定化制御の無効化が解除される(タイミングt13)。このように姿勢安定化制御の無効化が解除されてから所定期間(タイミングt13〜t14の期間)が経過した後、目標スロットル開度が基準開度Taになるようにスロットルバルブ12が制御されることにより、出力抑制制御が停止される(タイミングt14〜t15の期間)。このとき、機関出力の増大に起因して、例えば駆動輪の空転や車両100の横滑りが検出されれば、既に姿勢安定化制御の無効化が解除されているため、こうした駆動輪の空転や横滑りが抑制されるように機関出力は制限された状態で徐々に増大するようになる(タイミングt14〜t15の期間)。
以上説明した第1の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)アクセル操作及びブレーキ操作のうち少なくとも一方の操作が解除されることを条件(ステップS11:NO)に出力抑制制御を停止するに際して、姿勢安定化制御の無効化を解除してその後に出力抑制制御を停止するようにしている(ステップS24、S25)。このため、出力抑制制御の停止に伴う機関出力の増大に起因して車両走行姿勢を安定化させる必要が生じた場合であっても、既に姿勢安定化制御の無効化が解除されているため、同制御を通じて車両走行姿勢を迅速に安定化させることができ、同時操作状態が解除されて出力抑制制御を停止する際における車両走行姿勢の安定化をより高い次元で実現することができるようになる。
(2)同時操作状態であると判定された場合であっても車両100の現在位置がコーナーの立ち上がり位置であると判定された場合(ステップS12:YES)には、条件成立フラグFが「オフ」に設定される(ステップS14)ことにより出力抑制制御が実行されない。運転者の中には、コーナーの立ち上がり位置からの迅速な加速を意図して、同位置の前後でブレーキペダルとともにアクセルペダルを操作する者もいる。本実施形態では、コーナーの立ち上がり位置における同時操作状態を運転者による意図的な同時操作状態と判定し、上述した出力抑制制御を開始させないようにした。したがって、同時操作状態における安全性を一層高めつつも、意図的な同時操作状態では機関出力を運転者の意図するかたちで制御することができ、運転者による車両操作性の向上を図ることができるようになる。
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかる車両の制御装置を具体化した第2の実施形態について図5及び図6を参照して説明する。なお、以下の説明では、既に説明した第1の実施形態と同一の構成及び処理内容についてはその説明を適宜割愛する。
図5に示すように、出力抑制制御の処理手順におけるステップS30〜S34の処理は第1の実施形態の同手順におけるステップS20〜S24の処理と同一であるため、その説明を省略する。
姿勢安定化制御が再開(ステップS34)され、同制御を通じて車両走行姿勢を安定化させるのに十分な期間が経過すると、次に機関出力を基準出力にまで即時増大させた場合に車両走行姿勢が不安定化する可能性があるか否かが判定される(ステップS35)。この判定は、各車輪速度、ステアリング操舵角、ヨーレート、スリップ率、及びアクセル開度に基づいて行われる。また、この車両走行姿勢の不安定化に関する判定は、姿勢安定化制御が実行されていない場合を想定して行われている。すなわち、この判定で車両走行姿勢が不安定化する可能性がある旨判定された場合であっても、姿勢安定化制御を通じて機関出力が制御されるため、実際に車両走行姿勢が不安定化する可能性は極めて少ないこととなる。
車両走行姿勢が不安定化しない場合(ステップS35:NO)には、出力抑制制御が停止され(ステップS40)、これにより目標スロットル開度の最終的な決定が姿勢安定化制御を通じて行われるようになる。
一方、車両走行姿勢が不安定化する可能性があると判定された場合(ステップS35:YES)には、目標スロットル開度を基準開度Taより小さい初期開度Tα(但しTd<Tα)に設定する(ステップS36)。ここで初期開度Tαは、車両走行姿勢の不安定化が発生しない機関出力を「初期出力」としたとき、その「初期出力」に対応したスロットル開度の値である。
次に、要求出力が大きいか否か、即ち基準出力まで機関出力を素早く復帰させる必要があるか否かが判定される(ステップS37)。この判定は、加速度、ヨーレート、スリップ率、車両100の現在位置、及び道路地図情報などに基づいて行われる。例えば車両後方の加速度に基づいて、上り坂における車両100のずり下がりを検出した場合には、要求出力が大きいと判定される(ステップS37:YES)。また、例えばナビゲーションシステム99から取り込んだ車両100の現在位置及び勾配情報から、車両100の現在位置が上り坂の途中、或いは上り坂の直前に位置しているような場合には、要求出力が大きいと判定される(ステップS37:YES)。
次に、ステップS37の判定結果に応じて異なる増加速度βで目標スロットル開度が初期開度Tαから基準開度Taにまで増大するようにこれが制御される(ステップS38、S39)。即ち、要求出力が大きい場合(ステップS37:YES)には、増加速度βを第1の値β1に設定される(ステップS38)。一方、要求出力が小さい場合(ステップS37:NO)には、増加速度βを第1の値β1よりも小さい第2の値β2に設定される。したがって、要求出力が大きい場合(ステップS37:YES)には、要求出力が小さい場合(ステップS37:NO)と比較して、機関出力がより短期間のうちに増大して基準出力に復帰することとなる。
このように、車両走行姿勢が不安定化する可能性があると判定された場合(ステップS35:YES)には、ステップS36〜S39の処理を通じて機関出力を基準出力よりも低い値からこれを徐々に増大させ、同機関出力が基準出力に達した時点で出力抑制制御が停止されることとなる。また、ステップS36〜S39の処理は、姿勢安定化制御が再開された後に行われる処理である。したがって、例えば、車両走行姿勢が安定していれば、姿勢安定化制御による機関出力の制限は行われず、スロットルバルブ12が初期開度Tαに制御されて機関出力は初期出力となった後に増加速度βで基準出力にまで増大される。一方、例えば走行途中に路面摩擦係数が低下し、駆動輪の空転や横滑りが検出される等、車両走行姿勢が安定しなくなれば、姿勢安定化制御による機関出力の制限が行われるようになる。即ち、目標スロットル開度はその時点における目標スロットル開度よりも小さい値に設定されて機関出力は基準出力以下に制限されることとなる。
次に、上述した制御装置200による制御の実行態様についてその一例を図6を参照して説明する。
図6に示すように、例えばブレーキペダルの踏み込みが解除されたことによって同時操作状態が解除されると、まず姿勢安定化制御の無効化が解除される(タイミングt23)。次に、例えば車両走行姿勢が不安定化する可能性がある場合には、目標スロットル開度が初期開度Tαに設定され機関出力が初期出力にまで増大する(タイミングt24)。上述したように、初期出力は、車両走行姿勢が不安定化しない機関出力であるため、駆動輪の空転や横滑りについては抑制される。
次に、要求出力が大きい場合には、図6に実線にて示されるように、初期開度Tαから基準開度Taまでより大きい増加速度β(第1の値β1)もって増大するため、機関出力は速やかに増大して基準出力に復帰する(タイミングt24〜t25の期間)。一方、要求出力が小さい場合には、図6に一点鎖線線にて示されるように、初期開度Tαから基準開度Taまでより小さい増加速度β(第2の値β2)をもって増大するため、機関出力は緩やかに増大して基準出力に復帰する。
このように、姿勢安定化制御の無効化が解除されてから所定期間(タイミングt23〜t24の期間)が経過した後、目標スロットル開度を初期開度Tαに設定した後、これを徐々に増大させて基準開度Taに達した時点で出力抑制制御が停止される(タイミングtt25、t26の期間)。このとき、路面摩擦係数の低下に起因して、例えば駆動輪の空転や横滑りが検出されれば、既に姿勢安定化制御の無効化が解除されているため、こうした駆動輪の空転や横滑りが抑制されるように機関出力は制限される(タイミングt24〜t25、t24〜t26の期間)。
以上説明した第2の実施形態によれば、第1の実施形態における効果(1)及び(2)に加えて以下の効果が得られるようになる。
(3)仮に姿勢安定化制御が実行されないと想定した場合に車両走行姿勢が不安定化する可能性があると判定された場合には、目標スロットル開度を初期開度Tαに設定した後、これを徐々に増大させて基準開度Taに復帰させるようにしている。上述したように、本制御ではこの判定で車両走行姿勢が不安定化する可能性がある旨判定された場合であっても、姿勢安定化制御の無効化を解除しその後に出力抑制制御を停止させているため、実際に車両走行姿勢が不安定化する可能性は極めて少ないといえる。本制御では、このような姿勢安定化制御による車両走行姿勢の安定化に加えて、出力抑制制御を停止させるのに先立ち機関出力を初期出力としてから基準出力まで徐々に復帰させる、といった機関出力の制限を行うようにしているため、車両走行姿勢の安定化をより高い次元で実現できるようになる。
(4)またこのように、機関出力を基準出力まで徐々に増大して復帰させるに際し、その機関出力の増大させる態様をそのときどきの要求出力に基づいて可変設定することとしている。すなわち、要求出力が大きい場合には、機関出力を速やかに増大して基準出力にまで復帰させる一方で、要求出力が小さい場合には、機関出力を緩やかに増大して基準出力にまで復帰させるようにしている。そしてこれにより、要求出力の大小に基づき機関出力の復帰態様を変更させることにより、運転者による車両操作性の向上と車両走行姿勢の安定化とを両立させることができるようになる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上述した第2の実施形態において、ステップS37〜S39の処理を省略してもよい。このように構成しても、既に姿勢安定化制御の無効化が解除されており、同時操作状態が解除されて出力抑制制御を停止する際における車両走行姿勢の安定化を図ることができる。
・上述した第2の実施形態において、ステップS37の判定を車両100の現在位置やコーナー情報に基づき行ってもよい。更に、この判定は車両100の前面や後面に設けたカメラで車両100付近の道路を撮影するとともに、撮影された道路画像を解析して得られるコーナー情報、路面摩擦係数、及び勾配情報に基づき行ってもよい。
・上述した第2の実施形態において、増加速度βは要求出力の大小に基づき連続的に変化させてもよい。
・上述した各実施形態において、ステップS12の処理を省略し、同時操作状態が検出された場合には常に出力抑制制御を実行するようにしてもよい。
・上述した各実施形態において、条件成立フラグFが「オン」から「オフ」に変更された場合(ステップS23、S33:YES)には常に姿勢安定化制御の無効化を解除したが、出力抑制制御の停止に際して車両走行姿勢が不安定化するか否かを事前に判定(推定)し、その判定結果が肯定であることを条件に姿勢安定化制御の無効化を解除してもよい。車両走行姿勢が不安定化するか否かは、アクセル開度、加速度、ヨーレート、スリップ率、各車輪速度、車両100の現在位置、コーナー情報、勾配情報、路面摩擦係数、及び段差情報などに基づき判定できる。また、上述したカメラで撮影された道路画像を解析して得られるコーナー情報、路面摩擦係数、及び勾配情報に基づき判定してもよい。なお、車両走行姿勢が不安定化するか否かを事前に判定できない場合には常に姿勢安定化制御の無効化を解除するとよい。
・上述した各実施形態において、ステップS12では車両100の現在位置、及びコーナー情報に基づきコーナーの立ち上がり位置であるか否かを判定したが、異なる情報に基づき判定してもよい。例えば、左右方向の加速度及びヨーレートが増加傾向から減少傾向に移行し、且つアクセル開度が増加したことを条件にコーナーの立ち上がり位置であると判定してもよい。さらに、上述のようなカメラで撮影した車両100付近の道路画像からコーナー立ち上がり位置であるか否かを判定してもよい。
・上述した各実施形態において、ステップS12ではアクセル開度が増加し、且つブレーキ踏力が減少したことを条件として肯定判定するようにしてもよい。また、ステップS12では左右方向の加速度及びヨーレートが増加傾向から減少傾向に移行し、且つブレーキ踏力が減少したことを条件として肯定判定するようにしてもよい。また、これらの条件を組み合わせて判定してもよい。
・上述した各実施形態において、ステップS11では異なる情報に基づいて運転者により意図された同時操作状態であるか否かを判定してもよい。例えば車両100の現在位置及び道路の勾配情報に基づき坂道発進時における同時操作状態であるか否かを判定してもよい。また、前後方向の加速度や各車輪速度に基づき車両100のずり下がりを検出し、坂道発進時などにおける同時操作状態であるか否かを判定してもよく、従動輪の車輪速度、スリップ率、前後方向の加速度等々に基づいて泥濘路からの脱出時における同時操作状態であるか否かを判定してもよい。
さらに、車両100の現在位置、勾配情報、及び段差情報に基づいて段差乗り越え時における同時操作状態であるか否かを判定してもよい。また、こうした段差乗り越え時であるか否かの判定は、前後方向の加速度や各車輪のタイヤ荷重を検出することにより行うこともできる。なお、勾配情報、及び段差情報などは、ナビゲーションシステム99から取り込むことの他、上述したカメラで撮影した画像の解析により取得してもよい。そして、運転者の意図した同時操作状態であるか否かの判定は、上述したような方法を単独で、又は組み合わせて判定してもよい。
・上述した各実施形態において、ブレーキ踏力に代えてブレーキペダルの操作量を検出してもよい。
・上述した各実施形態において、スロットル開度を調節することにより機関出力を制御したが、内燃機関10の吸気バルブのリフト量及びリフト期間のうち少なくとも一方を調節することにより機関出力を制御してもよい。
・上述した各実施形態において、トラクション制御、及び横滑り抑制制御のうち少なくとも一方を省略してもよい。
・上述した各実施形態において、アクセルペダルの踏み込みを通じてアクセル操作するものの他、例えばアクセルレバーの傾動操作を通じてこれを行う車両について適用することもできる。ブレーキ操作についても同様に、これをブレーキペダルの踏み込みを通じて行うものの他、例えばブレーキレバーの傾動操作を通じて行う車両についても適用できる。要するに、本制御はアクセル操作やブレーキ操作にかかる操作態様の如何によらず車両全般について適用することができる。
・上述した機関出力にかかる制御は、内燃機関10に代えて又は加えて、機関として電気モータを搭載した車両についても適用できる。この場合、内燃機関10や電気モータの機関出力、或いはそれら双方の総合機関出力について、同様の態様をもって本制御を適用することができる。
・上述した各実施形態において、自動変速機30を搭載した車両100に具体化したが手動変速機を搭載した車両100について本制御を適用することもできる。
90…ブレーキセンサ、91…アクセルセンサ、100…車両、200…制御装置、S20〜S25…ステップ。

Claims (1)

  1. アクセル操作及びブレーキ操作が同時になされている同時操作状態を検出したことを条件に機関出力を前記アクセル操作量に基づく基準出力よりも低下させる出力抑制制御を実行するとともに車両走行姿勢を安定化させる姿勢安定化制御を無効化する車両の制御装置において、
    前記アクセル操作及び前記ブレーキ操作のうち少なくとも一方の操作が解除されることを条件に前記姿勢安定化制御の無効化を解除してその後に前記出力抑制制御を停止する
    ことを特徴とする車両の制御装置。
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