JP2012219307A - 導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットが、Ga,Snの内の1種または2種を合計で0.1〜1.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した銀合金で構成され、銀合金の結晶粒の平均粒径が120〜400μmであり、結晶粒の粒径のばらつきが、平均粒径の20%以下である。
【選択図】 図1
Description
すなわち、有機EL素子製造時のガラス基板の大型化に伴い、反射電極膜形成に使用される銀合金ターゲットも大型のものが使われるようになってきている。ここで、大型のターゲットに高い電力を投入してスパッタを行う際には、ターゲットの異常放電によって発生する「スプラッシュ」と呼ばれる現象が発生し、溶融した微粒子が基板に付着して配線や電極間をショートさせたりすることにより、有機EL素子の歩留りを低下させる、という問題がある。トップエミッション方式の有機EL素子の反射電極膜では、有機EL発光層の下地層となるため、より高い平坦性が求められており、よりスプラッシュを抑制する必要があった。
また、有機EL素子の反射電極膜としては高い反射率が要望されると共に、有機EL素子の反射電極膜およびタッチパネルの配線膜などの導電性膜としては、良好な膜の耐食性および耐熱性や低い電気抵抗が要求されている。
第1の発明に係る導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットは、Ga,Snの内の1種または2種を合計で0.1〜1.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した銀合金で構成され、前記銀合金の結晶粒の平均粒径が120〜400μmであり、前記結晶粒の粒径のばらつきが、平均粒径の20%以下であることを特徴とする。
すなわち、この導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットでは、Cu,Mgの内の1種または2種を上記範囲で含有しているので、結晶粒の粗大化をいっそう抑制することができると共に、膜の腐食による反射率低下をさらに抑制可能である。
すなわち、この導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットでは、Ce,Euの内の1種または2種を上記範囲で含有しているので、結晶粒の粗大化をいっそう抑制することができると共に、膜の腐食による反射率低下をさらに抑制可能である。
すなわち、この導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットでは、大型のスパッタリングターゲットの場合に好適であり、上記効果が顕著に得られる。
すなわち、この導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットの製造方法では、熱間の据込鍛造を6〜20回繰り返すので、大型のターゲットであっても結晶粒の粒径のばらつきを平均粒径の20%以下にすることができる。
すなわち、この導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットの製造方法では、溶解鋳造インゴットが、さらにCu,Mgの内の1種または2種を合計で1.0質量%以下含有しているので、結晶粒の粗大化がいっそう抑制された上記第2の発明の銀合金スパッタリングターゲットを得ることができる。
すなわち、この導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットの製造方法では、溶解鋳造インゴットが、さらにCe,Euの内の1種または2種を合計で0.8質量%以下含有しているので、結晶粒の粗大化がいっそう抑制された上記第3の発明の銀合金スパッタリングターゲットを得ることができる。
すなわち、この導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットの製造方法では、熱間の据込鍛造の温度が750〜850℃であるので、結晶粒の粒径のばらつきを平均粒径の20%以下にすることができると共に、結晶粒の平均粒径を400μm以下にすることができる。
本発明の導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットによれば、上記含有量範囲のGa,Snの内の1種または2種を含有した銀合金で構成され、該銀合金の結晶粒の平均粒径が120〜400μmであり、結晶粒の粒径のばらつきが、平均粒径の20%以下であるので、スパッタ中のスプラッシュの発生を抑制できると共に、良好な耐食性および耐熱性を有し、低い電気抵抗の導電性膜を得ることができる。
また、本発明の導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットの製造方法によれば、大型ターゲットとしてもスプラッシュの発生を抑制でき、良好な導電性膜を成膜可能な銀合金スパッタリングターゲットを製造することができる。
また、Cu,Mgに代わりに、Ce,Euの内の1種または2種を合計で0.8質量%以下含有しても構わない。
ここで、上記Ga,Sn,Cu,Mg,Ce,Euの定量分析は、誘導結合プラズマ分析法(ICP法)により行っている。
まず、スパッタリングターゲットのスパッタ面内で均等に16カ所の地点から、一辺が10mm程度の直方体の試料を採取する。具体的には、スパッタリングターゲットを縦4×横4の16カ所に区分し、各部の中央部から採取する。
なお、本実施形態では、500×500(mm)以上のスパッタ面、すなわちターゲット表面が0.25m2以上の面積を有する大型ターゲットを念頭に置いているので、大型ターゲットとして一般に用いられる矩形ターゲットからの試料の採取法を記載したが、本実施形態は、当然に、丸形ターゲットのスプラッシュ発生の抑制にも効果を発揮する。このときには、大型の矩形ターゲットでの試料の採取法に準じて、スパッタリングターゲットのスパッタ面内で均等に16カ所に区分し、採取することとする。
さらに、光学顕微鏡で粒界が見える程度にエッチングする。ここで、エッチング液には、過酸化水素水とアンモニア水との混合液を用い、室温で1〜2秒間浸漬し、粒界を現出させる。次に、各試料について、光学顕微鏡で倍率30倍の写真を撮影する。
次に、求めた平均切片長さ:L(μm)から、試料の平均粒径:d(μm)を、d=(3/2)・Lで算出する。
ここで、粒径のばらつきは、16カ所で求めた16個の平均粒径のうち、平均粒径との偏差の絶対値(|〔(ある1個の箇所の平均粒径)−(16カ所の平均粒径)〕|)が最大となるものを特定し、その特定した平均粒径(特定平均粒径)を用いて下記の様に算出する。
|〔(特定平均粒径)−(16カ所の平均粒径)〕|/(16カ所の平均粒径)×100 (%)
本実施形態の導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットは、原料として純度:99.99質量%以上のAg、純度:99.9質量%以上のGa,Snを用いる。
この熱処理後の板材4を、所望の寸法まで、フライス加工、放電加工等の機械加工により、本実施形態の導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットを製造することができる。機械加工後のターゲットのスパッタ面の算術平均表面粗さ(Ra)は、スパッタ時のスプラッシュを抑制する観点から、0.2〜2μmであると好ましい。
〔銀合金スパッタリングターゲットの製造〕
原料として、純度99.99質量%以上のAg、純度99.9質量%以上のGaを用意し、高周波真空溶解炉に、各成分が表1に示す質量比となるように、Agと、Gaとを、原料として装填した。溶解するときの総質量は、約300kgとした。
この圧延後、板材を640℃で1時間加熱保持し、再結晶化処理を施した。
次に、この板材を1000×1200×12(mm)の寸法に機械加工し、本発明の実施例1のスパッタリングターゲットとした。
(1)機械加工後の反り
上記機械加工後の実施例1のスパッタリングターゲットについて、その反りを測定した。この結果を表2に示す。
銀合金結晶粒の粒径測定は、上記のように製造した実施例1の1000×1200×12(mm)のスパッタリングターゲットから、上記本実施形態に記載したように、16カ所の地点から均等に試料を採取して、各試料のスパッタ面から見た表面の平均粒径を測定し、各試料の平均粒径の平均値である銀合金結晶粒の平均粒径および銀合金結晶粒の平均粒径のばらつきを計算した。平均粒径のばらつきの測定結果を表1に示す。この結果、本実施例1のスパッタリングターゲットにおいては、銀合金結晶粒の平均粒径は120〜400μmの範囲内にあり、銀合金結晶粒の粒径のばらつきは銀合金結晶粒の平均粒径の20%以内であった。
本実施例1の1000×1200×12(mm)としたスパッタリングターゲットの任意部分から、直径:152.4mm、厚さ:6mmの円板を切り出し、銅製バッキングプレートにはんだ付けした。このはんだ付けしたスパッタリングターゲットを、スパッタ時のスプラッシュの評価用ターゲットとして用い、スパッタ中の異常放電回数の測定を行った。この結果を表2に示す。
(4−1)膜の表面粗さ
上記(3)に示す評価用ターゲットを用いて、上記(2)と同様の条件でスパッタを行い、20×20(mm)のガラス基板上に100nmの膜厚で成膜し、銀合金膜を得た。さらに、耐熱性の評価のため、この銀合金膜を、250℃、10分間の熱処理を施し、この後、銀合金膜の平均面粗さ(Ra)を原子間力顕微鏡によって測定した。この結果を表2に示す。この結果、本実施例1のスパッタリングターゲットによる膜の平均面粗さRaは、1nm以下であった。
耐食性の評価のため、上記(4−1)と同様にして成膜した銀合金膜の反射率を、温度80℃、湿度85%の恒温高湿槽にて100時間保持後、分光光度計によって測定した。この結果を表2に示す。この結果、本実施例1のスパッタリングターゲットによる銀合金膜の波長550nmにおける絶対反射率は、90%以上であった。
上記(4−1)と同様にして成膜した銀合金膜の比抵抗を測定した結果を表2に示す。この結果、本実施例1のスパッタリングターゲットによる銀合金膜の比抵抗は、3.34μΩ・cmと低い値であった。
表1に記載した成分組成および製造条件とした以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを製造し、実施例2〜9、比較例1〜5のスパッタリングターゲットを得た後、実施例1と同様にして、上記の各種評価を行った。これらの結果を表1および表2に示す。
表1に記載したGa,Snの成分組成で、実施例1と同様にして溶解して、角型の黒鉛製鋳型に鋳造し、およそ400×400×150(mm)のインゴットを作製し、さらに該インゴットを600℃で1時間加熱後、熱間圧延し、従来例1のスパッタリングターゲットを作製した。また、従来例1と同様に、鋳造インゴットを熱間圧延した後、さらに600℃、2時間の熱処理を施した従来例2のスパッタリングターゲットを作製した。これらの従来例1および従来例2のスパッタリングターゲットを用い、実施例1の評価と同様にして、上記の各種評価を行った。これらの結果を表1および表2に示す。
表1に記載したGaの配合比で投入重量を7kgとして溶解し、合金溶湯を黒鉛鋳型に鋳造し、φ80×110(mm)のインゴットを作製し、得られたインゴットを比較例7と同じ据込鍛造の回数(5回)、冷間圧延の圧下率、熱処理を施して220×220×11(mm)の板材を得た。この参考例1について、上記の実施例および比較例と同様にして、上記の各種評価を行った。これらの結果を表1および表2に示す。ただし、参考例1のスパッタリングターゲットは、上記の実施例および比較例で作製したスパッタリングターゲットよりも寸法が小さいので、機械加工後の反りは評価しなかった。
表3に記載したGa,SnとCu,Mgとの成分組成および製造条件とした以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを製造し、実施例10〜20および比較例6のスパッタリングターゲットを得た後、実施例1と同様にして、上記の各種評価を行った。これらの結果を表3よび表4に示す。
また、表4からわかるように、実施例10〜20は、異常放電回数、機械加工後の反り、膜の表面粗さ、波長550nmにおける絶対反射率、膜の比抵抗のすべてにおいて、良好な結果であった。これに対し、Mgが1.7重量%の比較例6は、他の特性は良好であるが、波長550nmにおける絶対反射率が88.4%と低いと共に膜の比抵抗が7.81μΩ・cmと高かった。
表5に記載したGa,SnとCe,Euとの成分組成および製造条件とした以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを製造し、実施例21〜28および比較例7のスパッタリングターゲットを得た後、実施例1と同様にして、上記の各種評価を行った。これらの結果を表5よび表6に示す。
また、表6からわかるように、実施例21〜28は、異常放電回数、機械加工後の反り、膜の表面粗さ、波長550nmにおける絶対反射率、膜の比抵抗のすべてにおいて、良好な結果であった。これに対し、Euが0.9重量%の比較例7は、他の特性は良好であるが、異常放電回数が12回と多い。
Claims (8)
- Ga,Snの内の1種または2種を合計で0.1〜1.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した銀合金で構成され、
前記銀合金の結晶粒の平均粒径が120〜400μmであり、
前記結晶粒の粒径のばらつきが、平均粒径の20%以下であることを特徴とする導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲット。 - Ga,Snの内の1種または2種を合計で0.1〜1.5質量%を含有し、さらにCu,Mgの内の1種または2種を合計で1.0質量%以下含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した銀合金で構成され、
前記銀合金の結晶粒の平均粒径が120〜400μmであり、
前記結晶粒の粒径のばらつきが、平均粒径の20%以下であることを特徴とする導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲット。 - Ga,Snの内の1種または2種を合計で0.1〜1.5質量%を含有し、さらにCe,Euの内の1種または2種を合計で0.8質量%以下含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した銀合金で構成され、
前記銀合金の結晶粒の平均粒径が120〜400μmであり、
前記結晶粒の粒径のばらつきが、平均粒径の20%以下であることを特徴とする導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲット。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットにおいて、
ターゲット表面が、0.25m2以上の面積を有していることを特徴とする導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲット。 - 請求項1に記載の導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットを作製する方法であって、
Ga,Snの内の1種または2種を合計で0.1〜1.5質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した成分組成を有した溶解鋳造インゴットを、熱間の据込鍛造を6〜20回繰り返す工程、冷間圧延する工程、熱処理する工程、機械加工する工程を、この順で行うことを特徴とする導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットの製造方法。 - 請求項2に記載の導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットを作製する方法であって、
Ga,Snの内の1種または2種を合計で0.1〜1.5質量%を含有し、さらにCu,Mgの内の1種または2種を合計で1.0質量%以下含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した成分組成を有した溶解鋳造インゴットを、熱間の据込鍛造を6〜20回繰り返す工程、冷間圧延する工程、熱処理する工程、機械加工する工程を、この順で行うことを特徴とする導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットの製造方法。 - 請求項3に記載の導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットを作製する方法であって、
Ga,Snの内の1種または2種を合計で0.1〜1.5質量%を含有し、さらにCe,Euの内の1種または2種を合計で0.8質量%以下含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した成分組成を有した溶解鋳造インゴットを、熱間の据込鍛造を6〜20回繰り返す工程、冷間圧延する工程、熱処理する工程、機械加工する工程を、この順で行うことを特徴とする導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットの製造方法。 - 請求項5から7のいずれか一項に記載の導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットの製造方法において、
前記熱間の据込鍛造の温度が、750〜850℃であることを特徴とする導電性膜形成用銀合金スパッタリングターゲットの製造方法。
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