JP5533545B2 - 有機el素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットおよびその製造方法 - Google Patents

有機el素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットおよびその製造方法に関する。より詳しくは、大型の有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットに関する。
従来、ディスプレイデバイスとしては、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、発光ダイオード(LED)及びELディスプレイなどが知られ、コンピュータ用ディスプレイ、液晶ディスプレイのバックパネルなどに広く利用されている。
この中でも、有機EL素子は、有機EL発光層の両側に形成した陽極と陰極の間に電圧を印加し、陽極より正孔を、陰極より電子をそれぞれ有機EL膜に注入し、有機EL発光層で正孔と電子が結合する際に発光する原理を使用する発光素子であり、近年非常に注目されている。
有機EL素子の駆動方式には、パッシブマトリックス方式と、アクティブマトリクス方式とがある。このアクティブマトリックス方式は、画素一つに、一つ以上の薄膜トランジスタを設けることにより高速でスイッチングすることができるため、高コントラスト比、高精細化に有利となり、有機EL素子の特徴を発揮できる駆動方式である。
また、光の取り出し方式には、透明基板側から光を取り出すボトムエミッション方式と、基板とは反対側に光を取り出すトップエミッション方式とがあり、開口率の高いトップエミッション方式が、高輝度化に有利であり、今後のトレンドであると思われる。
図1に、反射電極を陽極とするトップエミッション構造の層構成の例を示す。ここで、反射電極膜(図1では、「反射陽極膜」と記載した)は、有機EL層で発光した光を効率よく反射するために、高反射率で耐食性の高いことが望ましい。また、電極として低抵抗であることも望ましい。そのような材料として、Ag合金およびAl合金が知られているが、より高輝度の有機EL素子を得るためには、可視光反射率が高いことからAg合金が優れている。
ここで、有機EL素子への反射電極膜の形成には、スパッタリング法が採用されており、銀合金ターゲットが用いられている(特許文献1)。
有機EL素子製造時のガラス基板の大型化に伴い、反射電極膜形成に使用される銀合金ターゲットも大型のものが使われるようになってきている。ここで、大型のターゲットに高い電力を投入してスパッタを行う際には、ターゲットの異常放電によって発生する「スプラッシュ」と呼ばれる現象が発生し、溶融した微粒子が基板に付着して配線や電極間をショートさせたりすることにより、有機EL素子の歩留りを低下させる、という問題がある。トップエミッション方式の有機EL素子の反射電極層では、有機発光層の下地層となるため、より高い平坦性が求められており、よりスプラッシュを抑制する必要がある。
国際公開第2002/077317号
本発明は、ターゲットの大型化に伴い、ターゲットに大電力が投入されてもスプラッシュを抑制することができる有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットを提供することを課題とする。
本発明者らは、特定の製造方法により、有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットの結晶粒の平均粒径を120〜250μmとすることにより、大電力が投入されてもスプラッシュを抑制することができることを見出した。具体的には、本発明は以下の構成を有することによって上記問題を解決した有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットおよびその製造方法に関する。
(1)In:0.1〜1.5質量%とCa:0.005〜0.05質量%とを含み、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した銀合金ターゲットであって、該合金の結晶粒の平均粒径が120〜250μmであり、前記結晶粒の粒径のばらつきが、平均粒径の20%以下であることを特徴とする、有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲット。
(2)ターゲット表面が、0.25m以上の面積を有していることを特徴とする、上記(1)記載の有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲット。
(3)In:0.1〜1.5質量%とCa:0.005〜0.05質量%とを含み、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した溶解鋳造インゴットを、熱間の据込鍛造を6〜20回繰り返す工程、冷間圧延する工程、熱処理する工程、機械加工する工程を、この順で行うことを特徴とする、有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットの製造方法。
(4)熱間の据込鍛造の温度が、750〜850℃である、上記(3)記載の有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットの製造方法。
(5)上記(1)または(2)記載の有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットで形成された反射電極膜を含む、有機EL素子。
本発明(1)および(2)によれば、スパッタ中に大電力を投入しても、異常放電を抑制し、スプラッシュの発生を抑制できるターゲットが得られ、このターゲットをスパッタすることにより、反射率が高く、優れた耐久性を有する有機EL用の反射電極膜が得られる。
また、本発明(3)および(4)によれば、スパッタ中に大電力を投入しても、スプラッシュの発生を抑制できる、有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットを製造することができる。
反射電極を陽極とするトップエミッション構造の層構成の例である。 熱間鍛造の方法を説明する図である。 実施例1の銀合金ターゲットを光学顕微鏡で倍率30倍で撮影した写真である。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量%である。
〔有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲット〕
本発明の有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲット(以下、本発明ターゲットという)は、In:0.1〜1.5質量%とCa:0.005〜0.05質量%とを含み、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した銀合金ターゲットであって、本発明ターゲットの結晶粒(以下、銀−インジウム合金結晶粒と称す)の平均粒径が120〜250μmであり、前記結晶粒の粒径のばらつきが、平均粒径の20%以下であることを特徴とする。
本発明のターゲットは、ターゲット表面(ターゲットのスパッタリングに供される側の面)が、0.25m以上の面積を有し、矩形ターゲットの場合には、少なくとも一辺が500mm以上であり、長さの上限は、ターゲットのハンドリングの観点から、2500mmが好ましい。一方、幅の上限は、冷間圧延工程で使用する圧延機で一般的に圧延可能なサイズの上限の観点から、1700mmが好ましい。また、ターゲットの交換頻度の観点から、ターゲットの厚さは、6mm以上が好ましく、マグネトロンスパッタの放電安定性の観点から、20mm以下が好ましい。
Agは、スパッタにより形成された有機EL素子の反射電極膜に、高反射率と低抵抗を与える。
Inは、ターゲットの硬さを向上させるので、機械加工時の反りを抑制する。特に、長さ:1m以上の大型ターゲットの機械加工時の反りを抑制することができる。加えて、Inは、スパッタにより形成された有機EL素子の反射電極膜の耐食性、および耐熱性を向上させる効果がある。これは、Inが、反射電極膜中の結晶粒を微細化し、膜の表面粗さを小さくし、また、Agに固溶して結晶粒の強度を高め、結晶粒の再結晶粒化を抑制し、スパッタにより形成された反射電極膜の反射率の低下を抑制する効果を有するためである。反射電極膜の耐食性、および耐熱性の向上には、有機EL素子の高輝度化、長寿命化に寄与する。さらに、In含有量が21質量%以下の組成範囲ではAgとの化合物相を形成しないので、スパッタ時に比抵抗の異なる化合物結晶粒に起因する異常放電が発生しない。
Inを、0.1質量%未満含んでも、上記に記載したInを添加することによる効果が得られない。一方、Inを、1.5質量%を越えて含有すると、反射率の低いInの特性が発現し、スパッタにより形成された反射電極膜の反射率が低下するので好ましくない。スパッタにより形成された反射電極膜の組成は、ターゲット組成に依存するので、銀合金ターゲットに含まれるInの含有量は、Inを0.1〜1.5質量%、より好ましくは0.2〜1.0質量%に定めた。ここで、Inの定量分析は、誘導結合プラズマ分析法(ICP法)により行う。
Caは、Agにほとんど固溶せず、結晶の核生成サイトを形成することにより、銀−インジウム合金結晶粒を微細化する。また、Caが、粒界にAgCaの金属間化合物相として析出することにより、スパッタ中の銀−インジウム合金結晶粒の粗大化を防止する効果がある。特に、ターゲットの大型化に伴い、銀−インジウム合金結晶粒が、ターゲット中で部分的に粗大化し易くなり、スパッタ中でのスプラッシュを誘引してしまうため、Ca添加による銀−インジウム合金結晶粒の粗大化抑制は、本発明において顕著な効果をもたらす。
Caを0.005質量%未満含んでも、上記に記載したCaを添加することによる効果が得られない。一方、Caを、0.05質量%を越えて含有すると、ターゲット組織中で、AgCaの金属間化合物相が大きくなり、異常放電を増大させるため好ましくない。スパッタにより形成された反射電極膜の組成は、ターゲット組成に依存するので、銀合金ターゲットに含まれるCaの含有量は、Caを0.005〜0.05質量%、より好ましくは0.01〜0.03質量%に定めた。ここで、Caの定量分析は、誘導結合プラズマ分析法(ICP法)により行う。
銀合金ターゲット中の銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径は、120〜250μmであり、好ましくは150〜220μmである。銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径が、120μmより小さいと、結晶粒径のばらつきが大きくなり、大電力のスパッタ中に、異常放電が発生しやすくなり、スプラッシュが発生するようになる。一方、250μmより大きくなると、ターゲットがスパッタにより消耗するのに伴い、各々の結晶粒の結晶方位の違いによるスパッタレートの差に起因して、スパッタ表面の凹凸が大きくなるため、大電力でのスパッタ中に、異常放電が発生し易くなり、スプラッシュが発生し易くなる。ここで、銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径は、以下のようにして測定する。
ターゲットのスパッタ面内で均等に16カ所の地点から、一辺が10mm程度の直方体の試料を採取する。具体的には、ターゲットを縦4×横4の16カ所に区分し、各部の中央部から採取する。なお、本発明では、有機EL素子の形成に用いられ、500×500(mm)以上のスパッタ面を有する大型ターゲットを念頭に置いているので、大型ターゲットとして一般に用いられる矩形ターゲットからの試料の採取法を記載したが、本発明は、当然に、丸形ターゲットのスプラッシュ発生の抑制にも効果を発揮する。このときには、大型の矩形ターゲットでの試料の採取法に準じて、ターゲットのスパッタ面内で均等に16カ所に区分し、採取することとする。
各試料片のスパッタ面側を研磨する。#180〜#4000の耐水紙で研磨をした後、3μm〜1μmの砥粒でバフ研磨をする。
光学顕微鏡で粒界が見える程度にエッチングする。ここで、エッチング液には、過酸化水素水とアンモニア水との混合液を用い、室温で1〜2秒間浸漬し、粒界を現出させる。次に、各試料について、光学顕微鏡で倍率30倍の写真を撮影する。
各写真において、60mmの線分を、井げた状に20mm間隔で縦横に合計4本引き、それぞれの直線で切断された結晶粒の数を数える。線分の端の結晶粒は、0.5個とカウントする。平均切片長さ:L(μm)を、L=60000/(M・N)(ここで、Mは実倍率、Nは切断された結晶粒数の平均値である)で求める。
求めた平均切片長さ:L(μm)から、試料の平均粒径:d(μm)を、d=(3/2)・Lで算出する。
16カ所からサンプリングした試料の平均粒径の平均値をターゲットの銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径とする。本発明のターゲットの銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径は、120〜250μmの範囲にある。
銀−インジウム合金結晶粒の粒径のばらつきが、銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径の20%以下であると、スパッタ時のスプラッシュを、より確実に抑制することができる。ここで、粒径のばらつきは、16カ所で求めた16個の平均粒径のうち、平均粒径との偏差の絶対値(|〔(ある1個の箇所の平均粒径)−(16カ所の平均粒径)〕|)が最大となるものを特定し、その特定した平均粒径(特定平均粒径)を用いて下記の様に算出する。
|〔(特定平均粒径)−(16カ所の平均粒径)〕|/(16カ所の平均粒径)×100 (%)
本発明の有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットによれば、スパッタ中に大電力を投入しても、異常放電を抑制し、スプラッシュの発生を抑制することができる。このターゲットをスパッタすることにより、反射率が高く、優れた耐久性を有する有機EL用の反射電極膜が得られる。本発明は、特に、ターゲットサイズが、幅:500mm、長さ:500mm、厚さ6mm以上の大型ターゲットである場合に、有効である。
〔製造方法〕
本発明の有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットは、原料として純度:99.99質量%以上のAg、純度:99.9質量%以上のIn、および純度99.5質量%以上のCaを用いる。
まず、Agを高真空または不活性ガス雰囲気中で溶解し、得られた溶湯に所定の含有量のInおよびCaを添加し、その後、真空または不活性ガス雰囲気中で溶解して、In:0.1〜1.5質量%とCa:0.005〜0.05質量%とを含み、残部がAgおよび不可避不純物からなるAg−In−Ca合金の溶解鋳造インゴットを作製する。ここで、Agの溶解は、雰囲気を一度真空にした後、アルゴンで置換した雰囲気で行い、溶解後アルゴン雰囲気の中でAgの溶湯にInおよびCaを添加することは、AgとIn、Caの組成比率を安定する観点から、好ましい。さらに、Caは予め作製したAgCaの母合金の形で添加するとCaの比率を制御する観点から好ましい。
次に、銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径を所定値にするために、溶解鋳造インゴットを熱間鍛造する。熱間鍛造は、750〜850℃で1〜3時間加熱した後、鍛錬成型比1/1.2〜1/2の据込鍛造を、繰り返し6〜20回行うことが好ましい。熱間鍛造は、自由鍛造がさらに好ましく、例えば、鍛造方向を90°ずつ転回しながら繰り返すことが、特に好ましい。より詳しくは、図2に示すように、円柱状のインゴットを用いる場合には、まず、角形に鍛造する。その後、角形のインゴットを、前回の鍛造方向と90°回転させ、鍛造を繰り返す。このとき、角形インゴットの縦、横、高さ方向(図2のx、y、z方向)のすべての向きで鍛造を行うように回転させることは、インゴット全体の銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径を所定値にする観点から、より好ましい。ここで、図2に示す破線の矢印は、いずれも鍛造方向を示し、zは、鋳造方向、xは、zに対して90°の任意の方向、yは、zおよびxに対して90°の方向を示す。この工程を繰り返すことは、本発明ターゲットの銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径を所望値にし、かつ銀−インジウム合金結晶粒の粒径のばらつきを所望の範囲内にするために、好ましい。繰り返し回数が6回未満であると、前記効果が不十分なものとなる。一方、繰り返し回数を20回より多く行っても銀−インジウム合金結晶粒の粒径のばらつきを抑える効果はそれ以上に向上しない。また、熱間の据込鍛造の温度が750℃未満では、微結晶が存在するため粒径のばらつき抑制効果が十分発揮されないので好ましくなく、850℃を超えると粗大化する結晶が残存するため粒径のばらつき抑制効果が十分発揮されないので好ましくない。なお、熱間鍛造により形成される各稜および/または各角部の急速な冷却を緩和するために、インゴット本体の鍛錬に影響を与えない程度に、インゴットの当該稜および/または当該角部をたたく、いわゆる角打ちを適宜行う方が、好ましい。
次に、鍛造後のインゴットを所望の厚さになるまで、冷間圧延し、板材にする。この冷間圧延での1パス当たりの圧下率は、5〜10%であると、粒径ばらつきの抑制効果の観点から好ましい。この冷間圧延を繰り返し、総圧下率((冷間圧延前のインゴットの厚さ−冷間圧延後のインゴットの厚さ)/冷間圧延前のインゴットの厚さ)が、60〜75%になるまで行うことが、総圧下率を所定値にし、かつ粒径ばらつきの抑制効果を維持したまま、結晶粒径を微細化する観点から好ましい。また、上記効果が発揮されるには、10〜20パスが好ましい。
冷間圧延後の熱処理は、550〜650℃で、1〜2時間行うことが、再結晶化により所定の平均粒径に制御する観点から好ましい。
熱処理後の板材を、所望の寸法まで、フライス加工、放電加工等の機械加工により、反射電極膜形成用銀合金ターゲットを製造することができる。機械加工後のターゲットのスパッタ面の算術平均表面粗さ(Ra)は、スパッタ時のスプラッシュを抑制する観点から、0.2〜2μmであると好ましい。
以下、本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
〔銀合金ターゲットの製造〕
原料として、純度99.99質量%以上のAg、純度99.9質量%以上のIn、純度99.5質量%以上のCaを用意し、高周波真空溶解炉に、各成分が表1に示す質量比となるように、Agと、Inと、予め母合金を作製したAg−6質量%Caとを、原料として装填した。溶解するときの総質量は、約300kgとした。
真空チャンバー内を真空排気後Arガス置換してAgを溶解した後In、Ag−6質量%Caを添加し、合金溶湯を黒鉛製鋳型に鋳造した。鋳造により製造したインゴット上部の引け巣部分を切除し、健全部として約260kgのインゴット(φ290×370mm)を得た。
得られたインゴットを750〜850℃で1時間加熱した後、鍛造方向を90°ずつ転回することを繰り返して、鋳造方向:z、zに対して90°の任意の方向:x、zおよびxに対して90°の方向:yのすべての方向に対して、鍛造した。一回あたりの鍛錬成型比を1/1.2〜1/2とし、向きを変えて15回の据込鍛造を繰り返した。16回目の鍛造で展伸し、およそ600×910×45(mm)の寸法に成形した。
鍛造後のインゴットを冷間圧延し、およそ1200×1300×16(mm)の板材を得た。冷間圧延における1パスあたりの圧下率は5〜10%とし、計13パス行った。この冷間圧延での総圧下率は、70%であった。
圧延後、板材を580℃で1時間加熱保持し、再結晶化処理を施した。
次に、この板材を1000×1200×12(mm)の寸法に機械加工し、大型の本発明ターゲットとした。
〔銀合金ターゲットの評価〕
(1)機械加工後の反り
実施例1の機械加工後の銀合金ターゲットの反りを測定し表2に、この結果を示した。
(2)本発明ターゲットの銀−インジウム合金結晶粒の粒径測定は、上記のように製造した1000×1200×12(mm)の本発明ターゲットから、発明を実施するための形態に記載したように、16カ所の地点から均等に試料を採取して、各試料のスパッタ面から見た表面の平均粒径を測定し、各試料の平均粒径の平均値である本発明ターゲットの銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径と銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径のばらつきを計算した。図3に、実施例1の銀合金ターゲットを光学顕微鏡で倍率30倍で撮影した写真を示し、表1に、その結果を示す。本発明のターゲット材においては、銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径は120〜250μmの範囲内にあり、銀−インジウム合金結晶粒の粒径のばらつきは銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径の20%以内であった。
(3)スパッタ時の異常放電回数の測定
上記のように製造した1000×1200×12(mm)の本発明ターゲットの任意の部分から、直径:152.4mm、厚さ:6mmの円板を切り出し、銅製バッキングプレートにはんだ付けした。このはんだ付けしたターゲットを、スパッタ時のスプラッシュの評価用ターゲットとして用い、スパッタ中の異常放電回数の測定を行った。表2に、この結果を示す。
通常のマグネトロンスパッタ装置に、前記はんだ付けしたターゲットを取り付け、1×10−4Paまで排気した後、Arガス圧:0.5Pa、投入電力:DC1000W、ターゲット基板間距離:60mmの条件で、スパッタを行った。スパッタ時の異常放電回数は、MKSインスツルメンツ社製DC電源(型番:RPDG−50A)のアークカウント機能により、放電開始から30分間の異常放電回数として計測した。表2に、この結果を示す。本発明のターゲットにおいて異常放電回数は10回以下であった。
(4)有機EL膜としての基本特性評価
(4−1)膜の表面粗さ
前記(3)に示すはんだ付けした銀合金ターゲットを用いて、前記(2)と同様の条件でスパッタを行い、20×20(mm)のガラス基板上に100nmの膜厚で成膜し、銀合金膜を得た。該銀合金膜の平均面粗さ(Ra)を原子間力顕微鏡によって測定し、表2に、この結果を示す。本発明ターゲットによる膜の平均面粗さRaは、1nm以下であった。
(4−2)反射率
上記(4−1)と同様にして成膜した銀合金膜の反射率を、分光光度計によって測定した。本発明のターゲットによる銀合金膜の波長550nmにおける絶対反射率は90%以上であった。表2に、この結果を示す。
(実施例2〜6、比較例1〜11)
表1に記載した成分組成および製造条件とした以外は、実施例1と同様にしてターゲットを製造し、実施例2〜6、比較例1〜11の銀合金ターゲットを得た後、実施例1と同様にして、各種評価を行った。表1、および表2に、これらの結果を示す。
(従来例1、2)
表1に記載したInおよびCaの成分組成で実施例1と同様にして溶解して、角型の黒鉛製鋳型に鋳造し、およそ400×400×150(mm)のインゴットを作製し、さらに該インゴットを600℃で1時間加熱後熱間圧延し、従来例1の銀合金ターゲットを作製した。また従来例1と同様に、鋳造インゴットを熱間圧延した後、さらに600℃、2時間の熱処理を施した従来例2の銀合金ターゲットを作製した。従来例1と従来例2の銀合金ターゲットを用い実施例1の評価と同様にして、各種評価を行った。表1、および表2にこれらの結果を示す。
(参考例1)
表1に記載したInおよびCaの配合比で投入重量を7kgとして溶解し、合金溶湯を黒鉛鋳型に鋳造し、φ80×110(mm)のインゴットを作製し、得られたインゴットを比較例7と同じ据込鍛造の回数、冷間圧延の圧下率、熱処理を施して220×220×11(mm)の板材を得た。実施例および比較例と同様にして、各種評価を行った。表1、および表2にこれらの結果を示す。ただし、参考例1のターゲットは実施例および比較例で作製したターゲットより寸法が小さいので、機械加工後の反りは評価しなかった。
表1からわかるように、実施例1〜6は、銀−インジウム合金結晶粒の平均粒径が120〜250μm、粒径のばらつきが16〜18%と良好であった。これに対して、Caが0.003質量%の比較例3では、平均粒径が290μmと所望の範囲から外れ、Caが0.07質量%の比較例4では、粒径のばらつきが25%と大きかった。また、熱間鍛造の温度が700℃の比較例5では、粒径のばらつきが23%と大きく、熱間鍛造の温度が900℃の比較例6では、平均粒径が350μmと大きく、粒径のばらつきも28%と大きかった。据え込み鍛造の回数が5回の比較例7では、粒径のばらつきが29%と大きかった。冷間圧延での総圧下率が40%の比較例8では、平均粒径が330μmと大きく、粒径のばらつきも23%と大きかった。冷間圧延での総圧下率が80%の比較例9では、粒径ばらつきが28%と大きかった。冷間圧延後の熱処理温度が500℃の比較例10では、粒径のばらつきが90μmと所望の範囲から外れ、かつ粒径のばらつきが77%と大きかった。冷間圧延後の熱処理温度が700℃の比較例11では、平均粒径が400μmと大きかった。また、従来例1は粒径のばらつきが135%と大きく、従来例2は、平均粒径が380μmと大きいだけでなく、粒径のばらつきも33%と大きかった。参考例1は本発明が有効となる大型ターゲットと比較して小型のターゲットを製造した場合の評価であるが、比較例7とほぼ同様の条件で製造したにもかかわらず、粒径のばらつきは15%と良好であった。
表2からわかるように、実施例1〜6は、異常放電回数、機械加工後の反り、膜の表面粗さ、波長550nmにおける絶対反射率のすべてにおいて、良好な結果であった。これに対して、Inが0.08質量%の比較例1では、機械加工後の反りが1.7mmと大きく、膜の表面粗さも1.4μmと大きかった。Inが1.7質量%の比較例2では、波長550nmにおける絶対反射率が89.2%と小さかった。また、比較例3〜11および従来例1、2は、異常放電回数が18回以上と多かった。
以上より、本発明の反射電極膜形成用銀合金ターゲットは、異常放電が抑制されており、このターゲットをスパッタすることにより、反射率を高くすることができ、かつ反射膜の表面粗さが小さいので、優れた性能の有機EL用の反射電極膜が得られることがわかる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。

Claims (5)

  1. In:0.1〜1.5質量%とCa:0.005〜0.05質量%とを含み、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した銀合金ターゲットであって、
    該合金の結晶粒の平均粒径が120〜250μmであり、
    前記結晶粒の粒径のばらつきが、平均粒径の20%以下であることを特徴とする、有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲット。
  2. ターゲット表面が、0.25m以上の面積を有していることを特徴とする、請求項1記載の有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲット。
  3. In:0.1〜1.5質量%とCa:0.005〜0.05質量%とを含み、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成を有した溶解鋳造インゴットを、熱間の据込鍛造を6〜20回繰り返す工程、冷間圧延する工程、熱処理する工程、機械加工する工程を、この順で行うことを特徴とする、有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットの製造方法。
  4. 熱間の据込鍛造の温度が、750〜850℃である、請求項3記載の有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットの製造方法。
  5. 請求項1または2記載の有機EL素子の反射電極膜形成用銀合金ターゲットで形成された反射電極膜を含む、有機EL素子。
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