JP2012217438A - コンクリート構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 鋳物製造ラインで多量に発生する鋳物砂微粉の有効利用が可能となるコンクリート構造体を提供すること。
【解決手段】 石灰石と粘土からなる水硬性セメントと、細骨材とを含有するコンクリート組成物の水添硬化により形成されたコンクリート構造体。コンクリート組成物における前記粘土および細骨材の全部又は一部が、鉄系、亜鉛合金系又は銅合金系の群から選択される鋳物の製造ラインから発生する鋳物砂微粉で置換されている。当該構造体1A、1B、1Cは、藻場用や漁礁用として海岸等の水底に沈めて使用する。
【選択図】図3
【解決手段】 石灰石と粘土からなる水硬性セメントと、細骨材とを含有するコンクリート組成物の水添硬化により形成されたコンクリート構造体。コンクリート組成物における前記粘土および細骨材の全部又は一部が、鉄系、亜鉛合金系又は銅合金系の群から選択される鋳物の製造ラインから発生する鋳物砂微粉で置換されている。当該構造体1A、1B、1Cは、藻場用や漁礁用として海岸等の水底に沈めて使用する。
【選択図】図3
Description
本発明は、石灰石と粘土からなる水硬性セメントと、細骨材とを含有するコンクリート組成物の水添硬化により形成されたコンクリート構造体に関し、藻場用や漁礁用の構造体として使用されるものである。
さらに詳しくは、「鋳物製造ラインにおける集塵機で捕集する鋳物砂ダスト、および、型バラシ後の篩分級で発生する過小鋳物砂」(以下「鋳物砂微粉」という。)の有効利用につながるコンクリート構造体に関する。
ここでは、鉄系鋳物製造ラインにおける鋳型として生型を例に採るが、自硬性鋳型でも同様である。また、鉄系鋳物製造ラインでなくても、亜鉛合金系又は銅合金系の群から選択される鋳物製造ライン等の鋳物砂ダスト中のFe元素含量が多い場合も本発明は適用できる。
本明細書における、鉄元素その他の元素含量(溶出量)は、公定分析方法「平成15年環境省告示第19号」で測定したものをいう。
図1に生型のフローチャートの一例を示す(日本鋳物協会編「改訂3版 鋳物便覧」1973年、丸善発行、p233から引用)。
1)鋳物砂(新砂)に結合剤(ベントナイト)その他の添加剤(石炭粉等)および水を添加して混練した混砂を用いて生型をエアレータ造型する。
2)該生型に別に造型しておいた中子を納め・型合せをして鋳型とし注湯(充填)を行なう。
3)充填溶湯が固化したら、バラシをして取り出した製品をショットブラスト等により仕上げる。
4)バラシにより発生した使用済砂は冷却後、篩分級(例えば、100〜140メッシュ:147〜104μm)する。そして、篩上は、適宜洗浄処理などして再生砂(戻り砂)として新砂に混合して再使用する。
そして、上記造型ラインの各工程、即ち、生型造型、中子造型、バラシ、ショットブラスト等で鋳物砂微粉(通常、75μm未満)が発生するが、それらは、圧送ポンプでダスト処理装置により鋳物砂ダストとして捕集される(図2参照)。
また、前記型バラシ後の篩分級の篩下(鋳物砂微粉)も同様に廃棄する必要がある。
これらの鋳物砂ダスト及び型バラシ後の分級篩下である鋳物砂微粉は多量に発生する。例えば、造型工程やショットブラスト工程では、中規模の鋳物工場で、月当たり200〜300トン発生するとされている。
これらの鋳物砂ダストを含む鋳物砂微粉は、水で固めて10トントラックで廃棄しているのが現状である。一部は処理費用を支払ってセメント会社に引き取ってもらい、セメント会社がエコセメント(JIS R 5214)の原料として、他の焼却灰とともに混合して使用している。
このように鋳物工場のラインで多量に発生する鋳物砂微粉の廃棄(処理)費用が嵩む。
従って、これらの産業廃棄物である鋳物砂微粉の有効利用の要望が高まっている。
しかし、エコセメントとして利用する以外、適当な有効利用の方法が提案されていないのが現状である。
なお、本発明の特許性に影響を与えるものではないが、エコセメントに関連する先行技術文献として特許文献1等が存在する。
本発明は、上記にかんがみて、鋳物製造ラインで多量に発生する鋳物砂微粉の有効利用が可能となるコンクリート構造体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意開発に努力をする過程で、鋳物砂製造ライン(特に鉄系鋳物)で発生する鋳物砂微粉は鉄元素(Fe)含量が異常に高く、更には、ケイ素元素(Si)、マグネシウム元素(Mg)等の含量も高いことを知見した。そして、該鋳物砂微粉を原料の一部とするコンクリート構造体は、海藻等の水生生物の育成促進に有効であることを知見して、下記構成のコンクリート構造体に想到した。
石灰石と粘土からなる水硬性セメントと、細骨材とを含有するコンクリート組成物の水添硬化により形成されたコンクリート構造体であって、
前記コンクリート組成物における前記細骨材および前記粘土の全部若しくは一部が、鉄系、亜鉛合金系又は銅合金系の群から選択される鋳物の製造ラインから発生する鋳物砂微粉で置換されてなり、
藻場用や漁礁用として使用される、ことを特徴とする。
前記コンクリート組成物における前記細骨材および前記粘土の全部若しくは一部が、鉄系、亜鉛合金系又は銅合金系の群から選択される鋳物の製造ラインから発生する鋳物砂微粉で置換されてなり、
藻場用や漁礁用として使用される、ことを特徴とする。
鉄系等の鋳物製造ラインから発生する鋳物砂微粉、又は、Fe元素含量1000mg/kg以上(公定分析法:昭48環告第14号;以下同じ。)の鋳物砂微粉を含有させたコンクリート組成物の構造体は、藻場用や漁礁用として使用した場合、海藻等の生育を促進させる。結果的に後述の如く、磯焼け等の解消に寄与する。
以下、本発明のコンクリート構造体について説明する。以下の説明で、配合量を示す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
基本的には、石灰石と粘土からなる水硬性セメントと、細骨材とを含有するコンクリート組成物を水添して硬化させ、水生生物育成促進構造体として使用されるコンクリート構造体である。
そして、本発明では、コンクリート組成物における細骨材および粘土の全部又は一部を、鉄系、亜鉛合金系又は銅合金系の群から選択される鋳物の製造ラインから発生する鋳物砂微粉で置換する。
具体的には、鋳物砂微粉の前記粘土および細骨材の合計量に対する置換率は、50%以上とする。通常は、水硬性セメントとして、市販のものを使用するため、配合の便宜上、細骨材のみの全部又は一部を置換する。しかし、水硬性セメントから調製する場合は、結果的に、細骨材および粘土の双方の全部又は一部を置換した組成とすることもできる。
即ち、セメントは、石灰石と結合剤(粘土;ベントナイト)と珪石をロータリーキルンで焼成して製造するものである。例えば、石灰石78%、粘土16%、珪石4%、鉄原料:2%である(太平洋セメントホームページ<URL:http://www.Taiheiyo-cement.co.jp/>)。
そして、生型の原料は、鋳物砂(圭砂)と結合剤(ベントナイト)および添加材(石炭粉)が主成分であり、その集塵ダストはそれらを含有するとともに、鉄系鋳物の鋳造工程において、鉄含有量が増大する。なお、鋳物砂には、SiO2の他にAl2O3,Fe2O3,FeO,CaO,MgO等の不純物を含有する。
本発明者らは、鋳鉄の鋳物製造ラインにおける鋳物砂ダスト(平均粒径75μm以下)の鉄含有量は60000〜70000mg/kg(6〜7%)であることを確認している。更には、鋳物砂に添加する石炭粉はSi、Fe、Mg等の元素も含み、藻体の成長促進に寄与すると考えられる。特に、Feの藻類の生物濃縮係数は1000〜130000倍と高い。また、亜鉛合金系や銅合金系の鋳物砂微粉(集塵ダスト)には、更に、ZnやCu等の藻体の成長促進に寄与すると考えられる元素も有効量含まれる。
また、鋳物工場から排出される鋳物砂ダストを含む鋳物砂微粉について、海洋の産業廃棄物の基準の内容で溶出試験を行った。その結果は、表1に示す如く、許容規格を大きく下回り、通常の焼却灰の如く、エコセメントとして使用する際、重金属(有害物質)の回収処理が不要である。
そして、本発明のコンクリート構造体を藻場用や漁礁用として水中に沈めて使用する場合、圧縮強さ(JIS A 1108)を10N/mm2(望ましくは20N/mm2)以上とする必要があると本発明者らは考えている。
上記コンクリート構造体の強度を得るためには、通常、粗骨材(砂利)の配合が必須であるとするのが当業者常識であった。しかし、本発明者らが、試験を行ったところ、コンクリート組成物において、水硬性セメント:40〜70%、鋳物砂微粉:60〜30%とすれば上記10N/mm2以上の強度が得られることを確認した(図3参照)。
なお、鋳物砂ダストを、篩下過小微粉(100μm未満)とともに、細骨材と置換する場合は、鋳物砂微粉の組成率を高くすることが容易になる。
また、通常のコンクリートの配合は、普通セメント(普通ポルトランドセメント)1に対して細骨材(砂)2〜3、粗骨材(小石)4〜6である(化学大辞典編集委員会編「化学大辞典5」(昭37−7−31)共立出版、p.746参照)。
即ち、セメント10〜15vol%、細骨材30vol%前後、粗骨材55〜60vol%となることを参酌すると、鋳物砂微粉60%まで配合しても、使用可能な上記強度(10N/mm2以上)がコンクリート構造体で得られることは当業者にとって予想外のことである。
なお、強度確保の見地から繊維状補強材(ウィスカー、合成樹脂繊維等)を、コンクリート組成物中に配合することも可能である。
さらに、これらのコンクリート組成物に、貝殻や雲丹殻やサンゴ等の水生生物の石灰質破砕物(例えば、平均粒径100メッシュ)を3〜15%(望ましくは5〜10%)添加することも可能である。水中に投入後、コンクリート構造体から石灰質破砕物が水中に徐々に溶出して細孔が形成されることが期待できる。
上記コンクリート組成物には水を添加して混練後、通常、型に流し込んで硬化させてコンクリート構造体(コンクリート製品)とする。
コンクリート構造体の形状は、特に限定されるものではないが、海や湖沼や河川に沈めて使用するため、形状的には、藻場や漁礁を形成しやすい、図4に示すようなテトラポッド(登録商標)状(A)、筒状(B)、フレーム状(C)等の異形体とすることが望ましい。
構造体は表面平滑でもよいが、表面凹凸状(粗面)ないしスポンジ状であることが海藻等の水生植物の着生(根着き)が促進されて望ましい。さらには、鉄成分の溶出が促進されて、海藻等の成長促進が期待できる。
スポンジ状とする場合は、気泡コンクリートの処方で行う。比重が1以下とならない場合は、内部に鉄材等の錘を入れて比重を調整する。
上記のように海等に沈めて使用した場合は、図5に示すような循環により海等における水生生物資源の回復につながることが期待できる。
即ち、構造体表面に着生した藻体や海生微生物が、Fe等のミネラル供給により繁殖し易くなる(成長が促進される)。結果として、炭酸同化(CO2吸収O2排出)による水質浄化、微生物による浄化、さらには、それらの海藻および微生物の繁殖に伴う魚介類の増加につながる。結果的に、海藻類が枯れて水生生物が減少するいわゆる磯焼けの問題点を解消することができる。
以上、鉄系鋳物の製造ラインで発生する鋳物砂微粉を例にとったが、他の亜鉛合金系や銅合金系の鋳物の製造ラインで発生する鋳物砂微粉でも、有害金属を含まず、且つ、鉄元素の含有量が0.15%(1500mg/kg)以上であれば、本発明のコンクリート組成物の原料として使用可能である。
また、構造体は工場製品とするが、護岸構造体(防波提等)等の現場内の構造体にも本発明は適用できる。
集塵ダストの添加効果を確認するために、下記手順に従って、培養室実験を行なった。
集塵ダスト量が5g,10g,15gとなるように、鋳鉄の鋳物工場からの集塵ダストを水ガラスで固めた各試験片(大きさ:25mm×50mm×3mmt)を調製した。
そして、各試験片をガラスシャーレ(容量100cc)に投入して、乾熱滅菌を行なったものに、滅菌した培地(濾過海水50ccとASP12培地50ccを等量混合したもの。) 100ccとウシケノリ親株とを加えて、集塵ダスト添加量5%,10%,15%の各実施例の試料を調製した。
なお、対照例の試料は、試験片の代わりにガラス板(大きさ:25mm×75mm×3mmt)を用いて同様にして調製した。
さらに、上記のようにして調製した各実施例・比較例の試料(シャーレ)を人工気象器(17℃×12h日長×3000lux)内に設置し、振盪培養を90日行なった。
そして、各実施例の試料は、目視観察であるが、各実施例は、何れも試験片の表面およびシャーレの底面にウシケノリ胞子の着床と成長が観察された(特に10%・15%の実施例の試料において顕著に)。対照例では、シャーレの底面とガラス板上にウシケノリ胞子の着床がわずかに観察されたが、成長は殆どほとんど観察されなかった。
なお、「ウシケノリ」は、紅藻網ウシケノリ目ウシケノリ科に属する藻類である。スサビノリに近縁な藻類であり、天然では高潮線付近の岩、テトラポッド、防波堤などに密生している。近年絶滅が危惧されている藻類である。成長のコントロールが容易であることから、実験室レベルでの試験への利用に適している。
1A、1B、1C・・・コンクリート構造体
Claims (9)
- 石灰石と粘土からなる水硬性セメントと、細骨材とを含有するコンクリート組成物の水添硬化により形成されたコンクリート構造体であって、
前記コンクリート組成物における前記細骨材および前記粘土の全部若しくは一部が、鉄系、亜鉛合金系又は銅合金系の群から選択される鋳物の製造ラインから発生する鋳物砂微粉で置換されてなり、
藻場用や漁礁用として使用される、
ことを特徴とするコンクリート構造体。 - 石灰石と粘土からなる水硬性セメントと、細骨材とを含有するコンクリート組成物の水添硬化により形成されたコンクリート構造体であって、
前記コンクリート組成物における前記細骨材および前記粘土の全部又は一部が、鋳物の製造ラインから発生するFe元素含量1000mg/kg以上(公定分析法:昭48環告第14号)の鋳物砂微粉で置換されてなり、
藻場用や漁礁用として使用される、
ことを特徴とするコンクリート構造体。 - 前記鋳物砂微粉の前記粘土および細骨材の合計量に対する置換率が50%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリート構造体。
- 前記コンクリート組成物が、更に、貝殻、雲丹殻、サンゴ等の石灰質砕製物を含有することを特徴とする1、2又は3記載のコンクリート構造体。
- 前記コンクリート組成物における水成分を除く組成が、前記水硬性セメント:40〜70質量%、前記鋳物砂微粉:60〜30質量%、であることを特徴とする請求項1〜4いずれか一記載のコンクリート構造体。
- 前記構造体の圧縮強さ(JIS A 1108)が10N/mm2以上であることを特徴とする請求項1〜5いずれか一記載のコンクリート構造体。
- 前記構造体の圧縮強さ(JIS A 1108)が20N/mm2以上であることを特徴とする請求項6記載のコンクリート構造体。
- 前記構造体の形状が、テトラポッド(登録商標)状、筒状、フレーム状等の異形体であることを特徴とする請求項1〜7いずれか一記載のコンクリート構造体。
- 前記構造体の表面が凹凸状乃至スポンジ状であることを特徴とする請求項8記載のコンクリート構造体。
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