JP2012216268A - 磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録再生装置 - Google Patents

磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録再生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】垂直磁性層の高い垂直配向性を維持し、更なる高記録密度化を可能とした磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも非磁性基板の上に、軟磁性下地層と、直上の層の配向性を制御する配向制御層11と、磁化容易軸が非磁性基板に対して主に垂直に配向した垂直磁性層とを積層してなる磁気記録媒体の製造方法であって、垂直磁性層を2層以上の磁性層から構成し、各磁性層を構成する結晶粒子が配向制御層11を構成する結晶粒子と共に厚み方向に連続した柱状晶を形成するように各層を結晶成長させる際に、配向制御層11をCoCr合金で形成し、この配向制御層11をスパッタリングガスに窒素を混合した反応性スパッタリングにより成膜すると共に、成膜時に前記非磁性基板に対して負のバイアス電圧を印加する。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録再生装置に関する。
磁気記録再生装置の一種であるハードディスク装置(HDD)は、現在その記録密度が年率50%以上で増えており、今後もその傾向は続くと言われている。それに伴って高記録密度化に適した磁気記録媒体の開発が進められている。
現在、市販されている磁気記録再生装置に搭載されている磁気記録媒体は、磁性膜内の磁化容易軸が主に垂直に配向した、いわゆる垂直磁気記録媒体である。垂直磁気記録媒体は、高記録密度化した際にも、記録ビット間の境界領域における反磁界の影響が小さく、鮮明なビット境界が形成されるため、ノイズの増加が抑えられる。しかも高記録密度化に伴う記録ビット体積の減少が少なくて済むため、熱揺らぎ効果にも強い。このため、近年大きな注目を集めており、垂直磁気記録に適した媒体の構造が提案されている。
また、磁気記録媒体の更なる高記録密度化という要望に応えるべく、垂直磁性層に対する書き込み能力に優れた単磁極ヘッドを用いることが検討されている。このような単磁極ヘッドに対応するために、記録層である垂直磁性層と非磁性基板との間に、裏打ち層と称される軟磁性材料からなる層を設けることにより、単磁極ヘッドと磁気記録媒体との間の磁束の出入りの効率を向上させた磁気記録媒体が提案されている。
しかしながら、上述した垂直磁気記録媒体において、裏打ち層を単に設けただけでは、記録再生時の記録再生特性や、熱揺らぎ耐性、記録分解能において満足できるものではなく、これらの特性に優れた垂直磁気記録媒体が要望されている。
とりわけ記録再生特性として重要な再生時における信号とノイズの比(S/N比)を大きくする高S/N化と、熱揺らぎ耐性の向上との両立は、これからの高記録密度化においては必須事項である。しかしながら、この2項目は相反する関係を有しているため、一方を向上させれば、一方が不十分となり、高レベルでの両立は重要な課題となっている。
このような課題を解決するために、3層の磁性層を、非磁性層等を用いてAFC(アンチ・フェロ・カップリング)結合させることにより、合成Mrt並びにPW50の低下という長所を享受しながら、S/N比の低下を起こさないことを特徴とする磁気記録媒体が提案されている(特許文献1を参照。)。
一方、垂直磁気記録媒体の記録再生特性や熱揺らぎ特性を向上させるために、配向制御層を用い、多層の磁性層を形成して、それぞれの磁性層の結晶粒子を連続した柱状晶とし、これにより磁性層の垂直配向性を高めることが提案されている(特許文献2を参照。)。
また、配向制御層を高ガス圧でスパッタ成膜することが提案されている(特許文献3を参照。)。そして、配向制御層として用いるRuの配向性を更に高めるため、配向制御層を2層構造とし、初期層部分は低ガス圧で成膜し、表面層部分は初期層部分よりも高ガス圧で成膜することが提案されている(特許文献4を参照)。
また、Ruは、柱状晶の頂部にドーム状の凸部が形成されるものであるため、この凸部上に磁性層等の結晶粒子を成長させ、成長した結晶粒子の分離構造を促進し、結晶粒子を孤立化させて、磁性粒子を柱状に成長させる効果を有することが知られている(特許文献5を参照)。
特開2005−276410号公報 特開2004−310910号公報 特開平7−244831号公報 特開2004−22138号公報 特開2007−272990号公報
ところで、磁気記録媒体に対する高記録密度化の要求は留まることがなく、磁気記録媒体には今まで以上に高い特性の向上が求められている。具体的に、磁気記録媒体の記録密度を高めるためには、上述した配向制御層を構成する結晶を微細化し、この上に形成される柱状構造の磁性粒子を微細化する必要がある。同時に、磁気記録媒体の高い信頼性を維持するためには、表面の平坦性を高めると共に、表面の傷付き耐性を向上させる必要がある。
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、垂直磁性層の高い垂直配向性を維持し、更なる高記録密度化を可能とした磁気記録媒体の製造方法、並びにそのような製造方法を用いて製造された磁気記録媒体を備える磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
本発明は、以下の手段を提供する。
(1) 少なくとも非磁性基板の上に、軟磁性下地層と、直上の層の配向性を制御する配向制御層と、磁化容易軸が前記非磁性基板に対して主に垂直に配向した垂直磁性層とを積層してなる磁気記録媒体の製造方法であって、
前記垂直磁性層を2層以上の磁性層から構成し、各磁性層を構成する結晶粒子が前記配向制御層を構成する結晶粒子と共に厚み方向に連続した柱状晶を形成するように各層を結晶成長させる際に、
前記配向制御層をCoCr合金で形成し、この配向制御層をスパッタリングガスに窒素を混合した反応性スパッタリングにより成膜すると共に、成膜時に前記非磁性基板に対して負のバイアス電圧を印加することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(2) 前記負のバイアス電圧を−50〜−500Vの範囲で印加することを特徴とする前項(1)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(3) 前記反応性スパッタリングを行う際に、ターゲットの表面上に磁場を発生させながら、このターゲットに負の直流電圧を印加するマグネトロンスパッタ装置を用い、このマグネトロンスパッタ装置において、前記ターゲットに印加する負の電位に対して、前記非磁性基板に印加する負のバイアス電位を−20〜−300Vの範囲に設定することを特徴とする前項(1)又は(2)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(4) 前記CoCr合金に3〜15原子%の範囲で窒素をドープさせることを特徴とする前項(1)〜(3)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(5) 前記配向制御層を構成する各柱状晶の頂部を凸とする凹凸面において、各柱状晶の最頂部から隣接する柱状晶との境界に至る高さを当該柱状晶の外径以下とすることを特徴とする前項(1)〜(4)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(6) 前記配向制御層を構成する結晶粒子の粒径を5nm以下とすることを特徴とする前項(1)〜(5)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(7) 前記配向制御層の上に、Ru層又はRuを主成分とする第2の配向制御層を含むことを特徴とする前項(1)〜(6)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(8) 前記磁性層又は前記非磁性層がグラニュラー構造を有することを特徴とする前項(1)〜(7)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(9) 前項(1)〜(8)の何れか一項に記載の製造方法により製造された磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッドとを備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
以上のように、本発明によれば、配向制御層から垂直磁性層の最上層に至るまで厚み方向に連続した微細な柱状晶を成長させることができ、また、配向制御層を構成する各柱状晶の頂部を平滑化することによって、磁気記録媒体の表面における平坦性を高めることができる。さらに、磁気記録媒体の表面における傷付き耐性を向上させることができる。
したがって、本発明によれば、垂直磁性層の高い垂直配向性を維持し、更なる高記録密度化を可能とした磁気記録媒体を製造することができ、また、そのような磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置を提供することが可能である。
図1は、配向制御層の凹凸面上に磁性層又は非磁性層を積層したときの各層を構成する柱状晶が基板面に対して垂直に成長した状態を示す断面図である。 図2は、CoCr合金にN原子がドープされた配向制御層の結晶構造を模式的に示す断面図であり、(a)は、CoCr合金膜に3原子%未満のN原子をドープさせた場合、(b)は、CoCr合金に3〜15原子%のN原子をドープさせた場合、(c)は、CoCr合金に15a原子%超のN原子をドープさせた場合である。 図3は、本発明を適用した配向制御層の結晶構造を模式的に示す断面図である。 図4は、本発明を適用して製造される磁気記録媒体の一例を示す断面図である。 図5は、磁気記録再生装置の一例を示す斜視図である。 図6は、第1の実施例における磁気記録媒体の(a)spiSNR及び(b)squashを測定をした各グラフである。
以下、本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録再生装置について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らないものとする。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、多層化した磁性層の垂直配向性を高め、なお且つ、磁性粒子を微細化するため、配向制御層を構成する結晶粒子を微細化する磁気記録媒体の製造方法を見出した。
すなわち、本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法は、軟磁性下地層と、直上の層の配向性を制御する配向制御層と、磁化容易軸が非磁性基板に対して主に垂直に配向した垂直磁性層とを積層してなる磁気記録媒体の製造方法であって、垂直磁性層を2層以上の磁性層から構成し、各磁性層を構成する結晶粒子が配向制御層を構成する結晶粒子と共に厚み方向に連続した柱状晶を形成するように各層を結晶成長させる際に、配向制御層をCoCr合金で形成し、この配向制御層をスパッタリングガスに窒素を混合した反応性スパッタリングにより成膜すると共に、成膜時に非磁性基板に対して負のバイアス電圧を印加することを特徴とする。
図1に示すように、配向制御層11には、この配向制御層11を構成する各柱状晶Sの頂部をドーム状の凸部とする凹凸面11aが形成され、この凹凸面11aから厚み方向に磁性層(又は非磁性層)12の結晶粒子が柱状晶S1となって成長する。また、この柱状晶S1の上に形成される非磁性層(又は磁性層)13及び最上層の磁性層14の結晶粒子も、柱状晶S1に連続した柱状晶S2,S3となってエピタキシャル成長する。
このように、磁性層12〜14を多層化した場合、これら各層12〜14を構成する結晶粒子は、配向制御層11から最上層の磁性層14に至るまで連続した柱状晶S1〜S3となってエピタキシャル成長を繰り返す。なお、図1に示す層13は、グラニュラー構造を有する層であり、この層13を形成する柱状晶S2の周囲には酸化物15が形成されている。
したがって、配向制御層11の結晶粒子を微細化すれば、この配向制御層11を構成する各柱状晶Sを高密度化し、更に、これら各柱状晶Sの頂部から厚み方向に柱状に成長する各層12〜14の柱状晶S1〜S3も高密度化することが可能となる。
そこで、本発明者は、配向制御層11をCoCr合金で形成し、この配向制御層11を反応性スパッタリングにより成膜する際に、様々な反応ガスを用いてCoCr合金からなる結晶粒子の微細化について検討を行った。その結果、スパッタリングガスに窒素を混合することによって、CoCr合金からなる結晶粒子が微細化し、更にその成長面が平滑化する効果があることを見出した。
通常、スパッタリングガスについては、アルゴン、ネオン、キセノン等の不活性ガスが用いられる。また、磁気記録媒体の成膜プロセスに反応性スパッタリングを用いる場合、主に用いられるスパッタリングガスは、酸素、水素、ハロゲン、水等の反応性の高いガスであり、反応性の低い窒素を用いることは希である。
これに対して、本発明では、上述した不活性ガスに窒素を混合したスパッタリングガスを用いる。この場合、窒素がターゲットの表面を覆うことで、ターゲットそのものが反応し、又はスパッタリングにより叩き出されたスパッタ粒子が窒素と結び付きながら、この窒素を含むCoCr合金の結晶粒子が厚み方向にエピタキシャル成長することによって柱状晶を形成する。
そして、本発明者は、更に鋭意検討を重ねた結果、配向制御層11の成膜時に非磁性基板に対して負のバイアス電圧を印加し、正に帯電した窒素イオンを結晶粒子中に導入することで、この窒素(N原子)を含むCoCr合金の結晶粒子の成長面での核発生密度を高めつつ、微細化された結晶粒子によって、配向制御層11を構成する各柱状晶Sを高密度化できることを見出した。さらに、配向制御層11を構成する各柱状晶Sの頂部(結晶粒子の成長表面)を平滑化し、これら各柱状晶Sの頂部から厚み方向に成長する各層12〜14の柱状晶S1〜S3を高密度化しながら、その頂部を平滑化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、磁気記録媒体の製造では、非磁性基板の面上に各層を積層形成する際に、一般的にスパッタリング法が用いられる。例えばDCマグネトロンスパッタリング法を用いる場合は、減圧雰囲気下の成膜室内で、ターゲットに−200〜−400Vの電圧を印加し、この成膜室内に導入されたスパッタリングガスをイオン化し、ターゲット付近にプラズマを発生させながら、このプラズマ中のイオンをターゲットの表面に衝突させることにより、ターゲットから叩き出されたターゲット粒子を成膜面上に堆積して薄膜を形成する。
このとき、通常は非磁性基板にバイアス電圧を印加せず、非磁性基板を電気的に接地又はフロート状態とする。この場合、プラズマ電位は接地電位より10〜30V程度の正電位となる。一方、フロート状態の非磁性基板では、プラズマ電位より10〜30V程度の負電位となる。このため、フロート状態での基板電位は、接地電位から±30V程度の範囲にあると考えられる。
本発明では、配向制御層11の成膜時、この非磁性基板に対して−50〜−500Vの負のバイアス電圧を印加する。この場合、配向制御層11の成長表面にスパッタリングガスや窒素イオンが導入されることによって、この成長表面の活性化エネルギーが高まり、マイグレーションが促進されて、結晶粒子の結晶性の向上と成長表面の平坦性の向上とが図られる。また、配向制御層11の結晶粒子内にアルゴンや窒素が導入されることによって、この結晶粒子内の応力歪みが高まり、結晶粒子の成長面での核発生密度が高まると共に、配向制御層11の結晶粒子の微細化が図られる。
また、本発明では、上述した反応性スパッタリングにより配向制御層11を成膜する際に、ターゲットの表面上に磁場を発生させながら、このターゲットに負の直流電圧を印加するマグネトロンスパッタ装置を用い、このマグネトロンスパッタ装置において、ターゲットに印加する負の電位に対して、非磁性基板に印加する負のバイアス電位を−20〜−300Vの範囲に設定することが好ましい。
例えば、ターゲットに印加する電位が接地電位に対して−200Vである場合、非磁性基板に印加する負のバイアス電位は、接地電位に対して−220〜−500Vとする。
このような負のバイアス電圧を非磁性基板に印加することで、ターゲットに印加された磁場の影響をキャンセルし、配向制御層11の成長表面にアルゴンイオンや窒素イオンを効率的に導入させることができる。
一方、非磁性基板に印加する負のバイアス電位の差が−20Vより低くなると、配向制御層11の成長表面に導入されるイオンの量が減少してしまい、この配向制御層を構成する結晶粒子の核発生密度が低下し、結晶粒子の微細化が図られ難くなる。また、負のバイアス電位の差が−300Vより高くなると、配向制御層11の成長表面にイオン等が過度に導入される、いわゆる逆スパッタリング現象によって、配向制御層11の成長表面が荒らされ、この配向制御層11を構成する結晶粒子の結晶性が低下することになる。
また、本発明では、CoCr合金に3〜15原子%の範囲で窒素(N原子)をドープさせることが好ましい。
ここで、スパッタリングガスに窒素を混合した反応性スパッタリングにより、CoCr合金に窒素(N原子)がドープされた配向制御層11を形成した場合において、N原子のドープ量の違いによる配向制御層11の結晶構造の違いについて調べた。その結果を図2(a)〜(c)に模式的に示す。
なお、図2(a)は、CoCr合金膜に3原子%未満のN原子をドープさせた場合、図2(b)は、CoCr合金に3〜15原子%のN原子をドープさせた場合、図2(c)は、CoCr合金に15a原子%超のN原子をドープさせた場合である。
図2(a)に示すように、CoCr合金へのN原子のドープ量が3原子%未満とした場合には、このN原子を含むCoCr合金の結晶粒子を微細化する効果と、配向制御層11を構成する各柱状晶Sの頂部(結晶粒子の成長表面)を平滑化する効果がほとんど見られず、これら柱状晶Sの大きさにバラツキが生じ、各柱状晶Sの最頂部から隣接する柱状晶Sとの境界に至る高さも大きくなっている。
一方、図2(c)に示すように、CoCr合金へのN原子のドープ量が15原子%超とした場合には、このN原子を含むCoCr合金の結晶粒子の微細化については進行するものの、粒子径のばらつきが大きく、各柱状晶Sの結晶性の低下から結晶密度の低下が見られた。また、配向制御層11を構成する各柱状晶Sの頂部(結晶粒子の成長表面)の平滑化については、さほど進行が見られず、各柱状晶Sの結晶性の低下からその表面も粗くなっている。
また、図2(c)に示す配向制御層11の表面状態は、非磁性基板に印加する負のバイアス電位が高くなり、この配向制御層11の成長表面にイオン等が過度に導入される、いわゆる逆スパッタリング現象によって、その成長表面が荒らされることによっても生じる。
これに対して、図2(b)に示すように、CoCr合金へのN原子のドープ量を3〜15原子%の範囲とした場合には、このN原子を含むCoCr合金の結晶粒子を微細化し、配向制御層11を構成する各柱状晶Sの密度を高めると共に、各柱状晶Sの頂部(結晶粒子の成長表面)を平滑化することが可能である。
具体的に、本発明では、図3に模式的に示すように、配向制御層11を構成する各柱状晶Sの頂部を凸とする凹凸面11aにおいて、各柱状晶Sの最頂部から隣接する柱状晶との境界に至る高さHを当該柱状晶Sの外径D以下とすることが好ましい。
これにより、製造される磁気記録媒体の表面における平坦性を高めると共に、磁気記録媒体の表面における傷付き耐性を向上させるのに十分なレベルまで、配向制御層11の凹凸面11aを平坦化できる。なお、各柱状晶Sの最頂部から隣接する柱状晶との境界に至る高さHと、当該柱状晶Sの外径Dについては、AFMによって計測することが可能である。
また、本発明では、上記CoCr合金が、Coを50〜80原子%の範囲で含み、Crを20〜50原子%の範囲で含むことが好ましい。このように、上記CoCr合金の組成範囲を最適化することで、配向制御層11の結晶粒子を微細化し、この配向制御層11を構成する各柱状晶Sの密度を高めると共に、各柱状晶Sの頂部(結晶粒子の成長表面)を平滑化することができる。
また、本発明では、CoCr合金が、Pt、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reの中から選ばれる少なくとも1種以上の元素を1〜10原子%の範囲で含むことが好ましい。これにより、結晶性を悪化させることなく、配向制御層11の結晶粒子を更に微細化することができる。
また、配向制御層11を構成する各柱状晶Sの頂部を平滑とし、又は良好なドーム形状とするためには、この配向制御層11を構成する結晶粒子の粒径を5nm以下とすることが好ましく、3nm以下とすることがより好ましい。
本発明では、上述した配向制御層11の好ましい成膜条件として、上記反応性スパッタリングを行う際のスパッタリングガスの圧力を0.1〜10Paの範囲とすることが好ましく、0.5〜5Paの範囲とすることがより好ましい。
また、スパッタリングガスにおける不活性ガスと窒素ガスとの混合比率は、例えば、成膜室の形状、不活性ガスの種類、成膜時のガス圧、基板とターゲットとの間隔、成膜時の基板温度等に依存することから、その好ましい範囲について特に規定することが困難である。したがって、成膜後のCoCr合金に含まれるN原子のドープ量をXPS等により分析しながら、その混合比率を最適化することが好ましい。なお、一般的な成膜装置及び成膜条件での窒素ガスの混合比率は、0.05〜30体積%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜15体積%の範囲である。
配向制御層11の厚みは、この配向制御層11を構成する各柱状晶Sの頂部を平滑とし、又は良好なドーム形状とするためには、5nm以上とするのが好ましい。しかしながら、この配向制御層11が厚くなり過ぎると、後述する軟磁性下地層4と磁気ヘッドとの磁気的な結合が弱くなり、OW特性が悪化することになる。このため、配向制御層3aの厚みは、8〜20nmの範囲とすることがより好ましい。
図4は、本発明を適用して製造される磁気記録媒体の一例を示したものである。
この磁気記録媒体は、図4に示すように、非磁性基板1の上に、軟磁性下地層2と、第1の配向制御層3と、第2の配向制御層8と、垂直磁性層4と、保護層5とを順次積層し、その上に潤滑膜6を設けた構造を有している。
また、垂直磁性層4は、非磁性基板1側から順に、下層の磁性層4aと、中層の磁性層4bと、上層の磁性層4cとの3層を含み、磁性層4aと磁性層4bとの間に非磁性層7aと、磁性層4bと磁性層4cとの間に非磁性層7bを含むことで、これら磁性層4a〜4cと非磁性層7a,7bとが交互に積層された構造を有している。
さらに、図示を省略するものの、各磁性層4a〜4c及び非磁性層7a,7bを構成する結晶粒子は、第1の配向制御層3を構成する結晶粒子と共に、厚み方向に連続した柱状晶を形成している。
非磁性基板1としては、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属材料からなる金属基板を用いてもよく、例えば、ガラスや、セラミック、シリコン、シリコンカーバイド、カーボンなどの非金属材料からなる非金属基板を用いてもよい。また、これら金属基板や非金属基板の表面に、例えばメッキ法やスパッタ法などを用いて、NiP層又はNiP合金層が形成されたものを用いることもできる。
ガラス基板としては、例えば、アモルファスガラスや結晶化ガラスなどを用いることができ、アモルファスガラスとしては、例えば、汎用のソーダライムガラスや、アルミノシリケートガラスなどを用いることができる。また、結晶化ガラスとしては、例えば、リチウム系結晶化ガラスなどを用いることができる。セラミック基板としては、例えば、汎用の酸化アルミニウムや、窒化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体、又はこれらの繊維強化物などを用いることができる。
また、非磁性基板1は、Co又はFeが主成分となる軟磁性下地層2と接することで、表面の吸着ガスや、水分の影響、基板成分の拡散などにより、腐食が進行する可能性がある。この場合、非磁性基板1と軟磁性下地層2の間に密着層を設けることが好ましく、これにより、これらを抑制することが可能となる。なお、密着層の材料としては、例えば、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金など適宜選択することが可能である。また、密着層の厚みは2nm(30Å)以上であることが好ましい。
軟磁性下地層2は、磁気ヘッドから発生する磁束の基板面に対する垂直方向成分を大きくするために、また情報が記録される垂直磁性層4の磁化の方向をより強固に非磁性基板1と垂直な方向に固定するために設けられている。この作用は、特に記録再生用の磁気ヘッドとして垂直記録用の単磁極ヘッドを用いる場合に、より顕著なものとなる。
軟磁性下地層2としては、例えば、Feや、Ni、Coなどを含む軟磁性材料を用いることができる。具体的な軟磁性材料としては、例えば、CoFe系合金(CoFeTaZr、CoFeZrNbなど。)、FeCo系合金(FeCo、FeCoVなど。)、FeNi系合金(FeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど。)、FeAl系合金(FeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど。)、FeCr系合金(FeCr、FeCrTi、FeCrCuなど。)、FeTa系合金(FeTa、FeTaC、FeTaNなど。)、FeMg系合金(FeMgOなど。)、FeZr系合金(FeZrNなど。)、FeC系合金、FeN系合金、FeSi系合金、FeP系合金、FeNb系合金、FeHf系合金、FeB系合金などを挙げることができる。
軟磁性下地層2は、2層の軟磁性膜から構成されており、2層の軟磁性膜の間にはRu膜を設けることが好ましい。Ru膜の膜厚を0.4〜1.0nm、又は1.6〜2.6nmの範囲で調整することで、2層の軟磁性膜がAFC構造となり、このようなAFC構造を採用することで、いわゆるスパイクノイズを抑制することができる。
また、第1の配向制御層3と垂直磁性層4の間には、第2の配向制御層8を設けることが好ましい。この場合、第1の配向制御層3の直上にある垂直磁性層4の初期部には、結晶成長の乱れが生じ易く、これがノイズの原因となる。この初期部の乱れた部分を第2の配向制御層8で置き換えることによって、ノイズの発生を抑制することが可能である。
このような第2の配向制御層8には、その材料について特に限定されないものの、hcp構造、fcc構造、アモルファス構造を有するものを用いることが好ましい。特に、Ru系合金、Ni系合金、Co系合金、Pt系合金、Cu系合金を用いることが好ましく、特に、Ru又はRuを主成分とする合金を用いることが好ましい。また、第2の配向制御層8の厚みは、5nm以上30nm以下とすることが好ましい。
垂直磁性層4を構成する層のうち、下層及び中層の磁性層4a,4bは、Coを主成分とし、更に酸化物41を含んだ材料からなり、この酸化物41としては、例えばCr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Coなどの酸化物を用いることが好ましい。その中でも特に、TiO、Cr、SiOなどを好適に用いることができる。また、上層の磁性層4aは、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも特に、Cr−SiO、Cr−TiO、Cr−SiO−TiOなどを好適に用いることができる。
また、これらの磁性層4a、4bは、層中に磁性粒子(磁性を有した結晶粒子)42が分散していることが好ましい。また、磁性粒子42は、これらの磁性層4a,4b、更には上層の磁性層4cを上下方向に貫いた柱状構造を形成していることが好ましい。このような構造を有することにより、磁性層4aの磁性粒子42の配向及び結晶性を良好なものとし、結果として高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)を得ることができる。
このような構造を得るためには、酸化物41の含有量及び各磁性層4a,4bの成膜条件が重要となる。すなわち、酸化物41の含有量としては、磁性粒子42を構成する、例えばCo、Cr、Pt等の合金を1つの化合物として算出したmol総量に対して、3mol%以上18mol%以下であることが好ましい。さらに好ましくは6mol%以上13mol%以下である。
この酸化物41の含有量を上記範囲としたのは、各磁性層4a,4bを形成した際、磁性粒子42の周りに酸化物41が析出し、磁性粒子42の孤立化及び微細化が可能となるためである。一方、酸化物41の含有量が上記範囲を超えた場合には、酸化物41が磁性粒子42中に残留し、磁性粒子42の配向性及び結晶性を損ね、更には磁性粒子42の上下に酸化物41が析出し、結果として磁性粒子42が磁性層4a〜4cを上下に貫いた柱状構造が形成されなくなるため好ましくない。また、酸化物41の含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の分離及び微細化が不十分となり、結果として記録再生時におけるノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られなくなるため好ましくない。
各磁性層4a,4b中におけるCrの含有量は、4原子%以上19原子%以下であることが好ましく、より好ましくは6原子%以上17原子%以下である。Crの含有量を上記範囲としたのは、磁性粒子42の磁気異方性定数Kuを下げ過ぎず、また、高い磁化を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性と十分な熱揺らぎ特性が得られるからである。
一方、Crの含有量が上記範囲を超えた場合には、磁性粒子42の磁気異方性定数Kuが小さくなるため熱揺らぎ特性が悪化し、また、磁性粒子42の結晶性及び配向性が悪化することで、結果として記録再生特性が悪くなるため好ましくない。また、Crの含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の磁気異方性定数Kuが高いため、垂直保磁力が高くなり過ぎ、データを記録する際、磁気ヘッドで十分に書き込むことができず、結果として高密度記録に適さない記録特性(OW)となるため好ましくない。
各磁性層4a,4bに適した材料としては、例えば、90(Co14Cr18Pt)−10(SiO){Cr含有量14原子%、Pt含有量18原子%、残部Coからなる磁性粒子を1つの化合物として算出したモル濃度が90mol%、SiOからなる酸化物組成が10mol%、以下同様。}、92(Co10Cr16Pt)−8(SiO)、94(Co8Cr14Pt4Nb)−6(Cr)の他、(CoCrPt)−(Ta)、(CoCrPt)−(Cr)−(TiO)、(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)、(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)−(TiO)、(CoCrPtMo)−(TiO)、(CoCrPtW)−(TiO)、(CoCrPtB)−(Al)、(CoCrPtTaNd)−(MgO)、(CoCrPtBCu)−(Y)、(CoCrPtRu)−(SiO)などの合金系を挙げることができる。
上層の磁性層4cは、Coを主成分とすると共に酸化物を含まない材料から構成することが好ましく、層中の磁性粒子42が磁性層4a中の磁性粒子42から柱状にエピタキシャル成長している構造であることが好ましい。この場合、各磁性層4a〜4cの磁性粒子42が、各層において1対1に対応して、柱状にエピタキシャル成長することが好ましい。また、中層の磁性層4bの磁性粒子42が下層の磁性層4a中の磁性粒子42からエピタキシャル成長していることで、中層の磁性層4bの磁性粒子42が微細化され、更に結晶性及び配向性がより向上したものとなる。
また、磁性層4c中のCrの含有量は、10原子%以上24原子%以下であることが好ましい。Crの含有量を上記範囲とすることで、データの再生時における出力が十分確保でき、更に良好な熱揺らぎ特性を得ることができる。一方、Crの含有量が上記範囲を超える場合には、磁性層4cの磁化が小さくなり過ぎるため好ましくない。また、Cr含有量が上記範囲未満である場合には、磁性粒子42の分離及び微細化が十分に生じず、記録再生時のノイズが増大し、高密度記録に適した信号/ノイズ比(S/N比)が得られなくなるため好ましくない。
また、磁性層4cは、Co、Crの他に、Ptを含んだ材料であってもよい。磁性層4c中のPtの含有量は、8原子%以上20原子%以下であることが好ましい。Ptの含有量が上記範囲にある場合には、高記録密度に適した十分な保磁力を得ることができ、更に記録再生時における高い再生出力を維持し、結果として高密度記録に適した記録再生特性および熱揺らぎ特性を得ることができる。
一方、Ptの含有量が上記範囲を超えた場合には、磁性層4c中にfcc構造の相が形成され、結晶性及び配向性が損なわれるおそれがあるため好ましくない。また、Ptの含有量が上記範囲未満である場合には、高密度記録に適した熱揺らぎ特性を得るための磁気異方性定数Kuが得られないため好ましくない。
磁性層4cは、Co、Cr、Ptの他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Re、Mnの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含むことにより、磁性粒子42の微細化を促進、又は結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性及び熱揺らぎ特性を得ることができる。
また、上記元素の合計の含有量は、16原子%以下であることが好ましい。一方、16原子%を超えた場合には、磁性粒子42中にhcp相以外の相が形成されるため、磁性粒子42の結晶性及び配向性が乱れ、結果として高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性が得られないため好ましくない。
磁性層4cに適した材料としては、特に、CoCrPt系、CoCrPtB系を挙げることできる。CoCrPtB系の場合、CrとBの合計の含有量は、18原子%以上28原子%以下であることが好ましい。
磁性層4cに適した材料としては、例えば、CoCrPt系では、Co14〜24Cr8〜22Pt{Cr含有量14〜24原子%、Pt含有量8〜22原子%、残部Co}、CoCrPtB系では、Co10〜24Cr8〜22Pt0〜16B{Cr含有量10〜24原子%、Pt含有量8〜22原子%、B含有量0〜16原子%、残部Co}が好ましい。その他の系でも、CoCrPtTa系では、Co10〜24Cr8〜22Pt1〜5Ta{Cr含有量10〜24原子%、Pt含有量8〜22原子%、Ta含有量1〜5原子%、残部Co}、CoCrPtTaB系では、Co10〜24Cr8〜22Pt1〜5Ta1〜10B{Cr含有量10〜24原子%、Pt含有量8〜22原子%、Ta含有量1〜5原子%、B含有量1〜10原子%、残部Co}の他にも、CoCrPtBNd系、CoCrPtTaNd系、CoCrPtNb系、CoCrPtBW系、CoCrPtMo系、CoCrPtCuRu系、CoCrPtRe系などの材料を挙げることができる。
垂直磁性層4の厚みは、5〜20nmとすることが好ましい。垂直磁性層4の厚みが上記未満であると、十分な再生出力が得られず、熱揺らぎ特性も低下する。また、垂直磁性層4の厚さが上記範囲を超えた場合には、垂直磁性層4中の磁性粒子の肥大化が生じ、記録再生時におけるノイズが増大し、信号/ノイズ比(S/N比)や記録特性(OW)に代表される記録再生特性が悪化するため好ましくない。
また、垂直磁性層4を構成する磁性層4a〜4c間に設ける非磁性層7a,7bとしては、上記合金の金属粒子が酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物中に分散した構造のものを用いることが好ましい。さらに、この金属粒子が非磁性層7a,7bを上下に貫いた柱状構造を有することがより好ましい。このような構造とするためには、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物を含んだ合金材料を使用することが好ましい。具体的には、酸化物として、例えば、SiO、Al、Ta、Cr、MgO、Y、TiOなど、金属窒化物として、例えば、AlN、Si、TaN、CrNなど、金属炭化物として、例えば、TaC、BC、SiCなどをそれぞれ用いることができる。さらに、例えば、CoCr−SiO、CoCr−TiO、CoCr−Cr、CoCrPt−Ta、Ru−SiO、Ru−Si、Pd−TaCなどを用いることができる。
垂直磁性層4を構成する磁性層4a〜4c間に設ける非磁性層7a,7b中の酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量としては、この垂直磁性層4の結晶成長や結晶配向を損なわない含有量であることが好ましい。また、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量としては、合金に対して、4mol%以上30mol%以下であることが好ましい。
この非磁性層7a,7b中における酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量が上記範囲を超える場合には、金属粒子中に酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物が残留し、金属粒子の結晶性や配向性を損ねる他、金属粒子の上下にも酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物が析出してしまい、金属粒子が非磁性層7a,7bを上下に貫く柱状構造となり難くなり、この非磁性層7a,7bの上に形成された磁性層4b,4cの結晶性や配向性を損ねるおそれがあるため好ましくない。一方、この非磁性層7a,7b中における酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の含有量が上記範囲未満である場合には、酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物の添加による効果が得られないため好ましくない。
保護層5は、垂直磁性層4の腐食を防ぐと共に、磁気ヘッドが磁気記録媒体に接触したときに媒体表面の損傷を防ぐためのもので、従来公知の材料を使用することができ、例えばC、SiO、ZrOを含むものを使用することが可能である。保護層5の厚みは、1〜10nmとすることが磁気ヘッドと磁気記録媒体との距離を小さくできるので高記録密度の点から好ましい。
潤滑膜6には、例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸などの潤滑剤を用いることが好ましい。
本発明では、このような図4に示す磁気記録媒体を製造する際に、上記第1の配向制御層3をCoCr合金で形成し、この第1の配向制御層3をスパッタリングガスに窒素を混合した反応性スパッタリングにより成膜すると共に、成膜時に非磁性基板に対して負のバイアス電圧を印加する。
これにより、上記第1の配向制御層3から上記垂直磁性層4の最上層に至るまで厚み方向に連続した微細な柱状晶を成長させることができ、また、上記第1の配向制御層3を構成する各柱状晶の頂部を平滑化することによって、この磁気記録媒体の表面における平坦性を高めることが可能である。さらに、この磁気記録媒体の表面における傷付き耐性を向上させることが可能である。
したがって、本発明によれば、上記垂直磁性層4の高い垂直配向性を維持し、更なる高記録密度化を可能とした磁気記録媒体を製造することができ、また、そのような磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置を提供することが可能である。
図5は、本発明を適用した磁気記録再生装置の一例を示すものである。
この磁気記録再生装置は、上記図4に示す構成を有する磁気記録媒体50と、磁気記録媒体50を回転駆動させる媒体駆動部51と、磁気記録媒体50に情報を記録再生する磁気ヘッド52と、この磁気ヘッド52を磁気記録媒体50に対して相対運動させるヘッド駆動部53と、記録再生信号処理系54とを備えている。また、記録再生信号処理系54は、外部から入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド52に送り、磁気ヘッド52からの再生信号を処理してデータを外部に送ることが可能となっている。また、本発明を適用した磁気記録再生装置に用いる磁気ヘッド52には、再生素子として巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子などを有した、より高記録密度に適した磁気ヘッドを用いることができる。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(第1の実施例)
第1の実施例では、先ず、洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外形2.5インチ)を、DCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C−3040)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気した後、このガラス基板の上に、Crターゲットを用いて層厚10nmの密着層を成膜した。また、この密着層の上に、Co−20Fe−5Zr−5Ta{Fe含有量20原子%、Zr含有量5原子%、Ta含有量5原子%、残部Co}のターゲットを用いて100℃以下の基板温度で、層厚25nmの軟磁性層を成膜し、この上に層厚0.7nmのRu層を成膜した後、更にこの上に層厚25nmのCo−20Fe−5Zr−5Taからなる軟磁性層を成膜して、これを軟磁性下地層とした。
次に、軟磁性下地層の上に、Ni−6W{W含有量6原子%、残部Ni}ターゲットを用いて、層厚5nmのシード層を成膜した後、このシード層の上に層厚15nmの第1の配向制御層を形成した。この第1の配向制御層を形成する際のターゲットには、Co−30Cr{Cr含有量30原子%、残部Co}を使用し、スパッタリングガスには、アルゴンガスと濃度1%の窒素ガスとの混合ガスを使用し、そのガス圧を0.8Paとし、プラズマ電力を1000W、ターゲット電位を−200V、基板バイアスを0〜600Vの範囲で変化させた反応性スパッタリングを行った。なお、スパッタリングガス中における窒素ガスの濃度は1%とした。
次に、第2の配向制御層として、スパッタ圧力を1.5Paとして層厚10nmのRu層を成膜した。そして、この第2の配向制御層の上に、91(Co15Cr16Pt)−6(SiO)−3(TiO){Cr含有量15原子%、Pt含有量16原子%、残部Coの合金を91mol%、SiOからなる酸化物を6mol%、TiOからなる酸化物を3mol%}からなる磁性層を、スパッタ圧力を2Paとして層厚9nmで成膜した。
次に、磁性層の上に、88(Co30Cr)−12(TiO){Cr含有量30原子%、残部Coの合金を88mol%、TiOからなる酸化物を12mol%}からなる非磁性層を層厚0.3nmで成膜した後、この上に、92(Co11Cr18Pt)−5(SiO)−3(TiO){Cr含有量11原子%、Pt含有量18原子%、残部Coの合金を92mol%、SiOからなる酸化物を5mol%、TiOからなる酸化物を3mol%}からなる磁性層を、スパッタ圧力を2Paとして層厚6nmで成膜した。その後、磁性層の上に、Ruからなる非磁性層を層厚0.3nmで成膜し、この上に、Co−20Cr−14Pt−3B{Cr含有量20原子%、Pt含有量14原子%、B含有量3原子%、残部Co}からなるターゲットを用いて、スパッタ圧力を0.6Paとして磁性層を層厚7nmで成膜した。
次に、CVD法により層厚3nmの保護層を成膜し、最後に、ディッピング法によりパーフルオロポリエーテルからなる潤滑膜を成膜することによって、磁気記録媒体を作製した。また、作製した磁気記録媒体の第1の配向制御層に含まれるN濃度をXPSにより測定したところ、8原子%であった。
そして、この磁気記録媒体について、上述した第1の配向制御層を反応性スパッタリングで成膜する際の基板バイアスVbを0〜600Vの範囲で変化させたときの「spiSNR(ノイズ量)」及び「squash」を測定した。その測定結果を図6(a),(b)に示す。
なお、図6(a)に示す「spiSNR」は、最高書き込み周波数の半分の周波数でのSNRを示す。一方、図6(b)に示す「squash」は、両側隣接トラックの書き込み時における中心トラックの信号劣化を示し、数値としては(残存信号強度Vp−p)/(元々の信号強度Vp−p)で表される値である。そして、この値が1に近ければ、両側隣接トラックの書き込み耐性が高いと評価することができる。
図6(a),(b)に示すように、本発明の磁気記録媒体は、配向制御層を構成する結晶を微細化することによって、この上に形成される柱状構造の磁性粒子も微細化されるため、垂直磁性層の高い垂直配向性を得ることができ、その結果、磁気記録媒体の電磁変換特性を向上させることが可能である。
(第2の実施例)
第2の実施例では、第1の配向制御層の成膜時に非磁性基板に対してバイアス電圧を−300V印加した場合(実施例)と、バイアス電圧を印加しなかった場合の各磁気記録媒体について、傷付き耐性の評価を行った。
具体的には、クボタコンプス社製のSAFテスター及びCandela社製の光学式表面検査装置(OSA)を用い、ディスクの回転数5000rpm、気圧100Torr、室温という測定条件にて、テスターでヘッドをロードさせたまま2000秒保持し、その後に、OSAにてスクラッチの本数をカウントした。
その結果、実施例の磁気記録媒体では、OSAのスクラッチカウント数が100であり、比較例の磁気記録媒体では、OSAのスクラッチカウント数が150であり、実施例の磁気記録媒体の方が表面の平坦性が高く、傷付き耐性が向上した。
1…非磁性基板 2…軟磁性下地層 3…第1の配向制御層 4…垂直磁性層 4a…下層の磁性層 4b…中層の磁性層 4c…上層の磁性層 5…保護層 6…潤滑層 7…非磁性層 7a…下層の非磁性層 7b…上層の非磁性層 8…第2の配向制御層
11…配向制御層 11a…凹凸面 12〜14…磁性層又は非磁性層 S,S1〜S3…柱状晶 41…酸化物 42…磁性粒子(7a,7bにおいては非磁性粒子)
50…磁気記録媒体 51…媒体駆動部 52…磁気ヘッド 53…ヘッド駆動部 54…記録再生信号処理系

Claims (9)

  1. 少なくとも非磁性基板の上に、軟磁性下地層と、直上の層の配向性を制御する配向制御層と、磁化容易軸が前記非磁性基板に対して主に垂直に配向した垂直磁性層とを積層してなる磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記垂直磁性層を2層以上の磁性層から構成し、各磁性層を構成する結晶粒子が前記配向制御層を構成する結晶粒子と共に厚み方向に連続した柱状晶を形成するように各層を結晶成長させる際に、
    前記配向制御層をCoCr合金で形成し、この配向制御層をスパッタリングガスに窒素を混合した反応性スパッタリングにより成膜すると共に、成膜時に前記非磁性基板に対して負のバイアス電圧を印加することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  2. 前記負のバイアス電圧を−50〜−500Vの範囲で印加することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  3. 前記反応性スパッタリングを行う際に、ターゲットの表面上に磁場を発生させながら、このターゲットに負の直流電圧を印加するマグネトロンスパッタ装置を用い、このマグネトロンスパッタ装置において、前記ターゲットに印加する負の電位に対して、前記非磁性基板に印加する負のバイアス電位を−20〜−300Vの範囲に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  4. 前記CoCr合金に3〜15原子%の範囲で窒素をドープさせることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  5. 前記配向制御層を構成する各柱状晶の頂部を凸とする凹凸面において、各柱状晶の最頂部から隣接する柱状晶との境界に至る高さを当該柱状晶の外径以下とすることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  6. 前記配向制御層を構成する結晶粒子の粒径を4nm以下とすることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  7. 前記配向制御層の上に、Ru層又はRuを主成分とする第2の配向制御層を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  8. 前記磁性層又は前記非磁性層がグラニュラー構造を有することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載の製造方法により製造された磁気記録媒体と、
    前記磁気記録媒体に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッドとを備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
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