JP2012214950A - ポリエステル短繊維 - Google Patents

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圭司 海法
Masao Yokoyama
正雄 横山
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Abstract

【課題】ソフトな風合いをもち、高次加工時の工程通過性に優れ、さらに製造時における紡糸、延伸等の工程通過性や、中間製品である未延伸糸の取り扱い性に優れるなど生産性良好であり、かつ品質のバラツキの少ないポリエステル短繊維を提供する。
【解決手段】ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとが溶融混合したポリエステルであり、ポリエチレンテレフタレートが短繊維全体に対して25〜40質量%含有することを特徴とするポリエステル短繊維である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ソフトな風合いをもち、高次加工時の工程通過性に優れ、さらに製造時における紡糸や延伸等の工程通過性や、中間製品である未延伸糸の取り扱い性に優れるなど生産性良好であり、かつ品質のバラツキの少ないポリエステル短繊維に関するものである。
テレフタル酸の低級アルキルエステルとトリメチレングリコール(1,3プロパンジオール)を重縮合させて得られるポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと略記することがある。)繊維は、低弾性率、ソフトな風合いおよび易染性という特徴が注目され、衣料や車輌内装材に適する合成繊維として世界で生産されている。近年では、1,3−プロパンジオール等の素原料の一部をバイオ法により製造する方法が発表され、さらに注目度が高まっている。
しかしながら、PTTはガラス転移点が低く、また屈曲したメチレン鎖による嵩高な構造のために分子鎖間の相互作用が小さく、常温に近い温度でも分子運動によって経時的な物性変化が生じる。特に、低紡糸速度である未延伸糸では分子拘束力が小さいため、雰囲気温度に敏感であり、容易に経時的な寸法変化が起こるという課題があった。もっとも如実に現れる現象としては、経時的な収縮が挙げられ、短繊維の製造に際しては、未延伸糸が缶などの収納容器内で収縮することに起因するもつれや、延伸不良など工程通過性不良や、品質のばらつきが発生しやすい等の課題がある。また、短繊維においては、紡績糸や不織布を作製する際、カードを用いて繊維ウエッブを作製するが、カード通過時にウエッブ垂れやウエッブ切れ等のカード通過性不良の課題があった。
前者の未延伸糸の経時的収縮の問題については、短繊維は通常紡糸された未延伸糸を缶などの収納容器に納め、複数の収納容器から未延伸糸を、捲縮付与に用いるクリンパーに適正なトウ繊度になるように引きそろえてから、延伸、捲縮付与および切断という工程を通し、短繊維化するという製法をとられることが多い。このような製法でクリンパーへ供給されるトウは、通常数十ktexと非常に大量であるため、必要な量の未延伸糸を収納容器に蓄えられるまでに長時間必要であり、紡糸生産開始直後の未延伸糸は延伸されるまで収納容器内で長時間放置されることとなる。PTTを用いた繊維では、この間に未延伸糸に経時変化が生じるため、生産された時間差による物性のバラツキが生じたり、また経時的な収縮により収納容器内での絡まりや崩れがおこったりするなど、品質面、生産性いずれにも問題が生じていた。
従来、例えば、PTTからなる未延伸糸を得た後、この未延伸糸を通例どおり延伸する技術が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この提案では、経時変化による未延伸糸の収縮が起こるために、未延伸糸の状態で保管できる時間が短く、大量生産を必要とする短繊維の製造には適さない。
また別に、紡糸と延伸を連続工程として直接延伸し、未延伸糸状態を経ない方法で長繊維を得る技術が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案においては、得られた長繊維をひきそろえ捲縮付与する方法も考えられるが、短繊維の製造に用いられるクリンパーは生産性の面から数十ktexのトウを使用することが普通であるため、通常の直接紡糸延伸で得られる小さい繊度の糸条の場合、大量の本数の糸条をひきそろえる必要があり、作業性および生産性の面で現実的ではない。
また、PTTに起因する経時的な寸法変化による生産性の悪化を回避するために、未延伸糸を一旦巻取り、次いで延伸するという製法において、未延伸糸の巻取り、保管および延伸各工程の温湿度を制御することによって(特許文献3参照。)、または、未延伸糸の複屈折率と水分含有率を適正化することによって、経時的な収縮を抑えるという技術が提案されている(特許文献4参照。)。しかしながら、これらの提案では、特にクリンパーを用いた大量生産を必要とする短繊維製造の場合、大型の装置全体の温度調節などをする必要があり、コスト的な観点から採用できない。
さらに、PTTとポリ乳酸を溶融紡糸し延伸した後に、ポリ乳酸を取り除くことにより(特許文献5参照。)、または、芯部がPTTとポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記することがある。)が溶融混合したポリエステルであり、鞘部がPTTを主成分とするポリエステルである芯鞘複合構造とすることにより、未延伸糸における遅延収縮を抑制する技術も提案されている(特許文献6参照。)。しかしながら、上記特許文献5の技術は、ポリ乳酸を除去する際、ポリエステル短繊維の表面に傷がつく恐れがあり、上記特許文献6の技術は、芯部と鞘部とで層間剥離がおこり、ポリエステル短繊維の表面に傷がついたり、繊維長方向に繊維ムラがおこる恐れがある。
また、これら上述の従来技術は、高次加工時のカード通過性を考慮した技術ではなく、カード通過性の課題が残ったままであり、これまで製糸が安定的に可能で、且つ高次加工時のカード通過性を両立したものがなかった。
さらに、高次加工時のカード通過性を向上させるため、PTT短繊維の一次捲縮と二次捲縮の関係等を規定した技術も提案されているが(特許文献7参照。)、短繊維に二次捲縮を付与することは周知であり、カード通過性を一層向上させるためには、一次捲縮率を強化させることが必要である。しかしながら、この提案で用いられているPTT繊維は、風合いがよいという特徴を持つ反面、二次捲縮を付与しても伸びやすく、実質一次捲縮がカード通過性の向上に起因するため、この提案でもさらに十分なカード通過性の向上が求められる。
特許第3779769号公報 特許第3789030号公報 特許第3241359号公報 特許第3611499号公報 特開2009−120968号公報 特開2009−197339号公報 特開2008−045248号公報
そこで本発明の目的は、上述した従来技術における問題点を解決し、ソフトな風合いをもち、高次加工時の工程通過性に優れ、さらに製造時における紡糸、延伸等の工程通過性や、中間製品である未延伸糸の取り扱い性に優れるなど生産性良好であり、かつ品質のバラツキの少ないポリエステル短繊維を提供することにある。
本発明は、前記の課題を解決せんとするものであり、本発明のポリエステル短繊維は、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとが溶融混合してなるポリエステル短繊維であって、ポリエチレンテレフタレートが短繊維全体に対して25〜40質量%含有されてなることを特徴とするポリエステル短繊維である。
本発明のポリエステル短繊維の好ましい態様によれば、そのポリエステル短繊維の残留捲縮度は10〜15%である。
本発明によれば、上記した構成を採用したことにより、ソフトな風合いをもち、高次加工時の工程通過性に優れた特徴を有し、また、中間製品である未延伸糸の取り扱い性に優れるなど生産性良好であり、かつ品質のバラツキの少ない特徴を有するポリエステル短繊維が得られる。
本発明のポリエステル短繊維は、PTTとPETとが溶融混合したポリエステルからなる短繊維である。
ここで、短繊維全体に占めるPETの比率は25〜40質量%であり、好ましくは30〜35質量%となるようにする。短繊維全体に占めるPETの比率が40質量%を超えると、繊維のソフト感が得られなくなり、また、PETの比率が25質量%を下回ると、高次加工時のカード通過性不良が発生すると共に未延伸糸の経時的収縮が発生する。特に、後述する紡糸と延伸の2ステップを経る製造方法においては、未延伸糸を長時間放置せざるを得ないためにその経時的収縮が顕著となり、工程通過性の悪化や糸の品位の低下の原因となる。また、未延伸糸の経時的収縮の他に、PETの比率が低い場合は、その低いヤング率から安定した機械捲縮による捲縮付与が難しく、また捲縮付与後に熱処理を行った場合にその低いガラス転移点のために付与した捲縮が伸びてしまうことから、良好な捲縮を有する短繊維を得ることが困難である。
PETの比率を短繊維中に25〜40質量%とすること、且つ、PTTとPETを溶融混合させて繊維の表面部分(表層)にガラス転移点の高いPETを混在させることにより、機械捲縮の付与性が向上しさらに熱処理を行ったときの捲縮の伸びを抑制することができる。それにより、通常PETと遜色のない捲縮付与性および捲縮保持性を与えることができると共に、PTT特有のソフト性を最大限に付与させることができる。
本発明のポリエステル短繊維は、繊維の表層にPTTとPETの両方が混在露出しており、繊維内部においても同様にPTTとPETが混在している。
本発明のポリエステル短繊維(原綿)は、カード工程を通過させることを前提にしているが、カード工程を通過させる場合は、初期の捲縮のみでなくカード通過後の捲縮も重要である。これは得られる繊維ウエッブの絡合性や風合いに影響するためであり、このカード通過後の捲縮を評価する指標として残留捲縮度の測定が有効である。従って、カード工程を安定的に通過させるためには、残留捲縮度が10〜15%であることが好ましく、より好ましくは12〜14%である。残留捲縮度が10%未満であれば、捲縮のへたりが大きく、繊維同士の絡合性が低いため、カード工程で繊維ウエッブ垂れや繊維ウエッブ切れが発生し、また、それ以降の工程でも加工性が極めて悪くなり、シリンダーやローラーへの巻き付きが発生し工程通過性が著しく悪化する傾向を示す。一方、残留捲縮度が15%を超えると、絡合性が高くなりすぎて、もつれが生じカード通過性が低下し、得られるウエッブや紡績糸が不均一なものになる傾向を示す。
上記の残留捲縮度の範囲は、PETとPTTのブレンド比で制御することができる。
本発明で用いられるPTTは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルであり、90モル%以上がトリメチレンテレフタレートの繰り返し単位からなっており、10モル%以下の割合で他のエステル結合を形成可能な共重合成分を含むものであってよい。共重合可能な化合物として、酸成分としては、例えば、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸およびセバシン酸などのジカルボン酸類が挙げられ、一方グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。
本発明で用いられるPETは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルであり、90モル%以上がエチレンテレフタレートの繰り返し単位からなっており、10モル%以下の割合で他のエステル結合を形成可能な共重合成分を含むものであってよい。共重合可能な化合物としては、酸成分として、例えば、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸およびセバシン酸などのジカルボン酸類が挙げられ、一方グリコール成分として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。
上記のPTTとPETには、防透けや艶消しなどの機能を付与するために、無機粒子を添加しても構わない。無機粒子としては、シリカゾル、シリカ、アルキルコートシリカ、アルミナゾル酸化チタンおよび炭酸カルシウムなどが挙げられるが、ポリエステル中に添加した際に化学的に安定していればよく、とくに、化学的安定性、対凝集性およびコストの面から、二酸化チタン(以下、TiOと略記することがある。)が好ましく用いられる。
さらに、本発明のポリエステル短繊維の捲縮度と捲縮数の比率、すなわち捲縮率(%)/捲縮数(山/25mm)の比率は、好ましくは1.0〜2.5であり、より好ましくは1.2〜2.0であり、更に好ましくは1.2〜1.5である。捲縮度と捲縮数の比率を1.0〜2.5とすることにより、カード工程を、ウエッブ垂れやウエッブ切れがなく安定的に通過させることができる。捲縮度と捲縮数の比率が1.0未満となると、繊維同士の絡合性が低くなるため、ウエッブ垂れやウエッブ切れが発生し、安定的にウエッブを得ることが困難となる。一方で、捲縮度と捲縮数の比率が2.5より大きくなると、絡合性が高くなりすぎて、カード工程においてネップが発生したり、ウエッブや紡績糸の均一性を欠くことがある。
上記のような構成のポリエステル短繊維とすることにより、短繊維として他の繊維と混合して用いられる際も、十分なソフト性をもった製品を得ることができる。また、繊維中にPETが適正量含有されていることにより、紡糸後の未延伸糸の経時変化を抑えることができるため、従来の紡糸、延伸の2ステップからなる製造方法により、短繊維を効率よく生産することが可能となる。
本発明のポリエステル短繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.8〜10dtexであり、より好ましくは1.0〜8.0dtexである。単繊維繊度が0.8dtexより小さいと、カード工程での不良が多発し生産が難しくなり、また、単繊維繊度が10dtexを超えると、十分なソフト性をもった製品を得ることが難しくなる。
次に、本発明のポリエステル短繊維を、生産性良く安定して製造することができる方法について説明する。
まず、ポリマー(ポリエステル)は、PTTとPETとを溶融混合して得るが、溶融混合する方法については、別個に製造されたPTTチップとPETチップをチップブレンドしてから溶融設備に供給する方法、PTTとPETそれぞれに投入設備を設け一定の割合で溶融設備に供給する方法、およびあらかじめPTTとPETを溶融混練してチップ化しておく方法などが挙げられる。
ポリマーに無機粒子を添加する場合は、溶融混合する前のPTTとPETの両方または片方に無機粒子を添加して溶融混合する手法や、PTTとPETとを溶融混合する際に別の供給装置から無機粒子を添加するなどの手法が挙げられる。
このようにして得られたポリマー(ポリエステル)を、口金から溶融紡糸して未延伸糸を得る。短繊維の製造では、生産性の観点から、未延伸糸を紡糸に連続して延伸することはせずに、一旦引き取って、ある程度の量を蓄えた後に、複数本の未延伸糸を引きそろえて、延伸する方法が一般的である。
未延伸糸の引き取り方法としては、各口金から吐出された未延伸糸をそれぞれ巻取り機で巻き取る方法でもよいが、短繊維製造における生産性という観点からは、未延伸糸を収納容器に収納する方法、いわゆる収納引き取り法が好ましく採用される。具体的には、複数の口金から得られた多数本の未延伸糸を集め、好適には1〜20ktexのサブトウとしてこれを多数のローラー群で誘導しながら缶などの収納容器内に振り落として収納する方法である。
未延伸糸を得る際の溶融混合紡糸の溶融温度は、生産性を考えると220〜280℃とすることが好ましい。溶融方法としては、プレッシャーメルター法およびエクストルーダー法が挙げられ、いずれの方法でも問題はないが、均一溶融と滞留防止の観点からエクストルーダーによる溶融方法を採用することが好ましい。溶融ポリマーは配管を通り、計量された後、口金パックへと流入される。この際、熱劣化を抑えるために、配管通過時間は30分以下であることが好ましい。パックへ流入されたポリマーは、所望の断面構造となるよう口金より吐出される。この際のポリマー温度は、250〜280℃が適当である。
口金から吐出されたポリマーは、冷却、固化されて未延伸糸とされた後、引き取られる。未延伸糸を引き取る前に、工程通過性向上を目的として油剤を付与してもよい。その際の引き取り速度は、速度安定性と品質バラツキの観点から、好ましくは900〜1500m/分とし、より好ましくは1100〜1300m/分とする。
繊維の断面形状については、丸、扁平、多角形および複数の凸部を有する形状など、どのような形状でも良いが、安定な製糸性および高次加工性を得やすいという点から、丸断面であることが好ましい。
引き取られた未延伸糸は、多数本引き揃えられて、延伸工程へと導かれる。引き取り方法として収納引取りを採用した場合には、複数の収納容器から未延伸糸を立ち上げ引きそろえてから延伸工程へと導かれる。延伸する際の総繊度は、生産性を考えて50〜150ktexとすることが好ましい。また、未延伸糸への熱の伝達をスムーズに行うためには、延伸は温水浴中で行うことが好ましく浴中温度は70〜95℃とすることが好ましい。この際、糸条中への温水の浸透を促しより均一な加熱を実現するために、温水中へ油剤を添加してもよい。
延伸倍率は、紡糸の際の引取速度に依存するため一概には言えないが、通常は好ましくは1.5〜5倍に、より好ましくは2.5〜4倍に設定される。延伸倍率が1.5倍を下回ると、十分なポリマーの配向が達成できず十分な強度が得られなかったり、部分的な未延伸状態が発生し染色ムラなどの異常の原因となったりすることがある。また、延伸倍率が5倍を超えると、単繊維切れが起こり、安定な延伸が行えなかったり、ローラー巻きつきなどの発生により生産安定性に劣る原因になりうる。延伸は、1回で行っても複数回に分けた多段延伸を行っても構わない。
延伸されたトウ、いわゆる延伸糸は、必要に応じてクリンパーを用いて捲縮が付与される。その際の総繊度は、生産性を考慮して、50〜150ktexが好ましく、より好ましくは70〜120ktexとすることが好ましい。
また、捲縮付与時にトウを加熱蒸気に晒すことにより、繊維の塑性変形を促し捲縮付与性が向上するため、より良好な捲縮を付与することができる。捲縮の状態は、紡績工程における開繊性や工程通過性を考え、捲縮数は3〜30山/25mmで、捲縮率は2〜30%であることが好ましい。
必要に応じて捲縮付与と熱処理された延伸糸は、切断装置によって所望の繊維長に切断され短繊維となる。繊維長は、高次加工の方法や混用する繊維の種類によって好適には3〜200mmの範囲内で設定できるが、例えば、綿紡方式の場合では例えば38mmの長さに切断することが好ましい。
また、必要に応じて抗菌性等の機能付与を目的とした機能剤を延伸工程で付与してもよい。クリンパーで捲縮付与する場合には、その直後で付与しても良いし、切断する直前で付与してもよい。
本発明のポリエステル短繊維は、そのソフト性から、ワイシャツを初めとする衣料用途に展開することができ、更にカード通過性も良好であることから、ニードルパンチ不織布への展開も可能であり、車輌内装材へも適用することができる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例で用いる特性は、次のようにして測定したものである。
(1)カード通過性
カードから出た繊維ウエッブの均一性、ウエッブ切れおよびネップの発生状態を10分間確認し発生回数が0回である場合は良好、1〜3回である場合は可、4回以上発生した場合は不良とした。
(2)遅延収縮率
採取した未延伸糸を、採取後速やかに約300mmの長さに切断し、2×10−3cN/dtexの荷重をかけ、採取から2分以内に糸長L1を測定してから、温度25℃、相対湿度65%の雰囲気下で100時間放置する。100時間後の糸長L2を測定し、次式により遅延収縮率を算出する。遅延収縮率は、次の立ち上がり性に関与するものである。
・遅延収縮率(%)=[(L1−L2)/L1]×100。
(3)未延伸糸立ち上がり性
缶に収納された未延伸糸はクリールに立ち上げられた後、合糸されて延伸工程へと導かれるが、その際未延伸糸が缶内で絡まり、もつれた状態で立ち上げられることがある。遅延収縮が顕著であると、缶内での絡まりが多発するため、このもつれの回数を遅延収縮による悪性要素の指標として用いる。すなわち、延伸30分間で30個の缶から立ち上がる未延伸糸もつれの回数を記録し、その回数が0回である場合には優良(◎)とし、1〜2回である場合は(○)とし、3回以上である場合は不可(×)とする。0回を合格とした。
(4)風合い(ソフト感)
測定すべきポリエステル短繊維と木綿とを質量比65/35の割合で混紡し番手30Sの紡績糸とした後、編み機を用いて180g/mの編地(平編み)を作製する。作製した編地について、ソフト風合いを10人のモニターによる官能検査によって1〜5点の点数評価(1点:非常に劣る、2点:やや劣る、3点:従来の織物と変わらない、4点:良好、5点:非常に良好)を行い、全員の判定を平均して、その平均値が4.5点以上である場合に優良(◎)とし、3.5点以上4.5点未満である場合に良(○)とし、3.5点未満である場合には不可(×)とする。4.5点以上が合格である。
(5)繊維の捲縮数、捲縮度および残留捲縮度
JIS L 1015(1999年)に準じて測定する。
・ 捲縮数:
捲縮弾性試験機を使用し、単繊維を規定の試長に取り付け、荷重を与えたときの繊維長と山数を測定し、25mm当たりの山数に換算する。
捲縮数=a×25/A
(a:全捲縮数、A:初荷重を与えたときの繊維長)
・捲縮度:
同上測定後、本荷重を与えたときの繊維長を測定し、初荷重を与えたときの繊維長との差を算出する。規定荷重の長さに対する百分率を算出する。
捲縮度=(B−A)/B×100
(B:本荷重を与えたときの繊維長)
・残留捲縮度:
同上測定後、本荷重を取り除き2分間放置後、初荷重を与えたときの繊維長を測定し、次式によって算出する。
残留捲縮度=(B−C)/B×100
(C:2分間放置後初荷重を与えたときの繊維長さ)。
(6)ポリマーの固有粘度
測定すべきポリマーを溶媒である純度98%以上のo−クロロフェノールに溶解して検体溶液を作製する。25℃の温度における検体溶液の粘度と、同一温度における溶媒のみの粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定し、固有粘度を求める。
(実施例1)
固有粘度が1.3のPTTと固有粘度が0.7のPETチップを用意し、ブレンド比率をPET/PTT=30/70(質量比)としてチップブレンドした。得られたブレンドチップを使用し、これを溶融温度280℃で溶融し、ギアポンプによる計量を行い、280℃の温度で口金に流入し紡糸した。紡糸繊維の断面形状は丸断面であり、紡糸された糸条を1100m/分の速度で引き取りながら、冷却装置を用いて冷却し、オイリングローラーを用いて非イオン系の工程油剤を0.1質量%付与し、フリーローラーを経て収束0.1%ガイドで他の紡糸錘と36本合糸した後に、缶内へ振り落とし収納することにより、未延伸糸を得た。30分毎に缶の交換を行い、未延伸糸が収納された缶を30缶採取した。採取した缶を並べ、30本の未延伸糸(256ktex)を引き揃えながら、85℃の温度の温水浴に導き、延伸倍率3.2倍で延伸した延伸糸をクリンパーへ導き機械捲縮を付与して捲縮トウを得た。延伸糸(捲縮トウ)の総繊度は80ktexであった。得られた捲縮トウを乾燥後、スプレー方式によりアニオン系仕上げ油剤を0.4質量%付与し、回転式のカッターにより切断しポリエステル短繊維を得た。
得られたポリエステル短繊維の表層には、PTTとPETの両方が混在露出していた。また、得られたポリエステル短繊維の残留捲縮度は13.1%であり、良好なソフト風合い且つ高次加工時のカード通過性も良好であった。また、製造する際の遅延収縮もなく、紡糸、延伸性ともに問題なく工程通過性良好であった。結果を表1に示す。
(実施例2、3、4)
PET/PTT比率を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル短繊維を得た。得られたポリエステル短繊維の表層には、PTTとPETの両方が混在露出していた。
実施例2、3および4では良好なソフト風合いと高次加工時のカード通過性共に満足のいく結果が得られた。また、製造する際の遅延収縮もなく、紡糸、延伸性ともに問題なく工程通過性良好であった。結果を表1に示す。
(実施例5)
捲縮付与に際して表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル短繊維を得た。カード工程にて一部分に若干のウエッブ切れが発生したものの2回のみであり、工程通過性に問題ないレベルであった。また、風合いについては満足のいく結果であった。結果を表1に示す。
(比較例1)
固有粘度が1.3のPTT単成分とし、これを250℃の温度で溶融し、ポンプによる計量を行い、250℃の温度で口金に流入し紡糸した。それ以外の紡糸条件は実施例1と同様にして、未延伸糸が収納された缶を30缶採取した。引き続き未延伸糸を立ち上げ、延伸しようとしたところ、缶内の未延伸糸が遅延収縮により絡み合い、もつれとなってガイドへの引っかかりや延伸巻付きなどが発生し、頻繁にマシーンの停機をする必要が生じた。また、各缶の放置時間の違いによる遅延収縮差が発生し、未延伸糸物性のバラツキが大きくなり、原綿品質のバラツキが大きくなる結果となった。結果を表1に示す。
(比較例2、3、4)
PET/PTT比率を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル短繊維を得た。比較例2、3および4ではPET比率を上げたことにより風合い(ソフト感)が著しく低下した。結果を表1に示す。
(比較例5)
固有粘度が0.7のPET単成分とし、これを300℃の温度で溶融し、ポンプによる計量を行い、280℃の温度で口金に流入し紡糸した。それ以外の紡糸条件は実施例1と同様にして、ポリエステル短繊維を得た。比較例5では、PTTがブレンドされてないため風合い(ソフト感)が著しく低下した。結果を表1に示す。
(比較例6)
芯部に固有粘度が0.7のPETと鞘部に固有粘度が1.3のPTTを用い芯鞘比率PET/PTT=25/75(質量比)とした。芯部ポリマーと鞘部ポリマーをそれぞれ300℃の温度と、250℃の温度とで溶融し、ポンプによる計量を行い、280℃の温度で口金に流入し芯鞘型複合繊維を紡糸した。それ以外の紡糸条件は実施例1と同様にして、芯鞘型複合繊維からなるポリエステル短繊維を得た。比較例6では残留捲縮度が低く、高次加工時のカード通過時に繊維の絡合性が不足してウエッブ垂れ、ウエッブ切れが発生し工程通過性が著しく悪化した。結果を表1に示す。
Figure 2012214950

Claims (3)

  1. ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとが溶融混合してなるポリエステル短繊維であって、前記ポリエチレンテレフタレートが短繊維全体に対して25〜40質量%含有されてなることを特徴とするポリエステル短繊維。
  2. 残留捲縮度が10〜15%であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル短繊維。
  3. 捲縮率(%)/捲縮数(山/25mm)の比率が、1.0〜2.5であることを特徴とする請求項1記載または請求項2記載のポリエステル短繊維。
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