上述のように、特許文献1では、膨張機から流出した気液二相冷媒中の油を油分離器によって分離し、分離した油を油戻し管を通じて圧縮機の吸入側に送るようにしている。ところが、油分離器内に溜まり込む油の量は、膨張機から流出する油の量や、油戻し管を通じて圧縮機へ送られる油の量等に応じて変動する。このため、油分離器内に溜まり込む油の量が減少すると、油分離器内の液冷媒が油戻し管へ流入してしまい、圧縮機の吸入側へ送られることになる。その結果、蒸発器に供給される冷媒の量が減少するため、蒸発器の冷却能力が低下してしまう。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、膨張機の流出側に設けられた油分離器(22)から蒸発器(51a,51b,51c)へ送られる液冷媒を充分確保できるようにすることである。
第1の発明は、圧縮機(32)、放熱器(21)、膨張機(33)、及び蒸発器(51a,51b,51c)を有して冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備え、該冷媒回路(11)には、上記膨張機(33)を流出した気液二相冷媒から油を分離する油分離器(22)と、該油分離器(22)で分離されて底部に溜まり込む油を圧縮機(32)の吸入側へ送るための油送り通路(43)とが設けられる冷凍装置を前提としている。そして、この冷凍装置は、上記油分離器(22)内の液冷媒が上記油送り通路(43)を通じて上記圧縮機(32)へ吸入されるのを防ぐために、油送り通路(43)を流れる流体の流量を制限する冷媒流通制限手段(70,71,73,75,80)を備えていることを特徴とするものである。なお、ここでいう「液冷媒」とは、気液二相冷媒に含まれる液冷媒、及び液単相冷媒の双方を含むものを意味する。
第1の発明の冷凍装置では、冷媒回路(11)で冷媒が循環することにより、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。具体的に、この冷凍サイクルでは、圧縮機(32)で圧縮された冷媒が、放熱器(21)で放熱した後に膨張機(33)へ流入する。膨張機(33)で膨張された冷媒は、気液二相状態で油分離器(22)へ流入する。ここで、気液二相冷媒には、圧縮機(32)や膨張機(33)の摺動部等の潤滑に利用される油(冷凍機油)が含まれている。油分離器(22)では、気液二相冷媒中から油が分離し、この油が底部に溜まり込む。油が分離された後の冷媒は、蒸発器(51a,51b,51c)へ送られる。蒸発器(51a,51b,51c)では、例えば冷媒が室内空気から吸熱して蒸発し、室内空気が冷却される。蒸発器(51a,51b,51c)で蒸発した冷媒は、圧縮機(32)へ吸入されて再び圧縮される。一方、油分離器(22)に溜まった油は、油送り通路(43)を通じて圧縮機(32)へ吸入される。
ここで、本発明では、油分離器(22)内の液冷媒が油送り通路(43)を流通する流体の流量を冷媒流通制限手段(70,71,73,75,80)が制限するようにしている。このため、油分離器(22)内の油面高さが低くなり、液冷媒が油送り通路(43)に流入し易い条件下において、この液冷媒が油送り通路(43)を流れて圧縮機(32)の吸入側へ送られるのを防止できる。
第2の発明は、第1の発明の冷凍装置において、上記冷媒流通制限手段は、上記油分離器(22)から上記油送り通路(43)への液冷媒の侵入を検出する冷媒検出手段(70,73,74,80)と、該冷媒検出手段(70,73,74,80)によって液冷媒の侵入が検出されると油送り通路(43)の開度を小さくする開度調節機構(70)とを有することを特徴とするものである。
第2の発明では、油分離器(22)内の油量が減少して液冷媒が油送り通路(43)へ流入すると、このような液冷媒の侵入を冷媒検出手段(70,73,74,80)が検出する。その結果、開度調節機構(70)の開度が小さくなり、油送り通路(43)での液冷媒の流通が制限される。従って、液冷媒が圧縮機(32)の吸入側へ送られてしまうことが抑制される。
第3の発明は、第2の発明の冷凍装置において、上記冷媒検出手段は、上記油送り通路(43)に流入した流体を減圧する減圧機構(70)と、該減圧機構(70)の下流側の流体の温度を検知する温度センサ(73)とを有し、上記温度センサ(73)の検知温度に基づいて油送り通路(43)への液冷媒の侵入を検出するように構成されていることを特徴とするものである。
第3の発明の油送り通路(43)には、冷媒検出手段としての減圧機構(70)と温度センサ(73)とが設けられる。油分離器(22)内の油が油送り通路(43)へ流入する場合、油が減圧機構(70)で減圧されても、減圧後の油の温度はほとんど低下しない。これに対して、油分離器(22)内の液冷媒が油送り通路(43)へ流入する場合、液冷媒が減圧機構(70)で減圧されると、減圧後の液冷媒の温度が大きく低下する。以上のように、本発明では、油と液冷媒とでは減圧に伴う温度降下の度合が異なることを利用することで、油送り通路(43)に液冷媒が侵入しているか否かを検出している。
第4の発明は、第2の発明の冷凍装置において、上記冷媒検出手段は、上記油送り通路(43)に流入した流体を加熱する加熱手段(74)と、該加熱手段(74)の下流側の流体の温度を検知する温度センサ(73)とを有し、上記温度センサ(73)の検知温度に基づいて油送り通路(43)への液冷媒の侵入を検出するように構成されていることを特徴とするものである。
第4の発明の油送り通路(43)には、冷媒検出手段としての加熱手段(74)と温度センサ(73)とが設けられる。油分離器(22)内の油が油送り通路(43)へ流入する場合、油が加熱手段(74)で加熱されると、加熱後の油の温度が上昇する。これに対して、油分離器(22)内の液冷媒が油送り通路(43)へ流入する場合、液冷媒が加熱手段(74)で加熱されても、液冷媒の温度は変わらない。つまり、液冷媒は、加熱手段(74)から蒸発のための潜熱を奪うだけであり、その温度は上昇しない。以上のように、本発明では、油と液冷媒とでは加熱に伴う温度上昇の度合が異なることを利用することで、油送り通路(43)に液冷媒が侵入しているか否かを検出している。
第5の発明は、第4の発明の冷凍装置において、上記加熱手段は、上記油送り通路(43)を流れる流体と、上記膨張機(33)の流入側の冷媒とを熱交換させる加熱用熱交換器(74)で構成されていることを特徴とするものである。
第5の発明では、油送り通路(43)を流れる流体を加熱する加熱手段として加熱用熱交換器(74)が設けられる。本発明の加熱用熱交換器(74)では、油送り通路(43)を流れる流体が、膨張機(33)の流入側の冷媒によって加熱される。
第6の発明は、第4の発明の冷凍装置において、上記加熱手段は、上記油送り通路(43)を流れる流体と、上記圧縮機(32)の吐出側の冷媒とを熱交換させる加熱用熱交換器(74)で構成されていることを特徴とするものである。
第6の発明の加熱用熱交換器(74)では、油送り通路(43)を流れる流体が、圧縮機(32)から吐出された高温の冷媒によって加熱される。
第7の発明は、第4の発明の冷凍装置において、上記冷媒回路(11)には、圧縮機(32)の吐出冷媒から油を分離する高圧側油分離器(27)と高圧側油分離器(27)と、該高圧側油分離器(27)で分離した油を圧縮機(32)の吸入側へ戻すための油戻し通路(45)とが設けられ、上記加熱手段は、上記油送り通路(43)を流れる流体と、油戻し通路(45)を流れる油とを熱交換させる加熱用熱交換器(74)で構成されていることを特徴とするものである。
第7の発明では、圧縮機(32)から吐出された冷媒中に含まれる油が、高圧側油分離器(27)へ流入する。高圧側油分離器(27)では、冷媒中から油が分離する。分離された油は、油戻し通路(45)を通じて圧縮機(32)の吸入側へ戻される。ここで、本発明の加熱用熱交換器(74)では、油送り通路(43)を流れる流体が、油戻し通路(45)を流れる高温の油によって加熱される。
第8の発明は、第2の発明の冷凍装置において、上記冷媒検出手段は、上記油送り通路(43)に流入した流体を減圧する減圧機構(70)と、上記圧縮機(32)の吸入側の冷媒過熱度を検知する過熱度検出手段(90)とを有し、該過熱度検出手段(90)で検知した冷媒過熱度に基づいて油送り通路(43)への液冷媒の侵入を検出するように構成されていることを特徴とするものである。
第8の発明には、圧縮機(32)の吸入側の冷媒過熱度を検知する過熱度検出手段(90)が設けられる。油分離器(22)内の油が油送り通路(43)へ流入する場合、油が減圧機構(70)で減圧されても、減圧後の油の温度はあまり低下しない。従って、油送り通路(43)から圧縮機(32)の吸入側へ油が流出しても、過熱度検出手段(90)で検知される冷媒過熱度はほとんど変化しない。これに対して、油分離器(22)内の液冷媒が油送り通路(43)へ流出する場合、液冷媒が減圧機構(70)で減圧されると、減圧後の液冷媒の温度が大きく低下する。従って、油送り通路(43)から圧縮機(32)の吸入側へ液冷媒が流出すると、過熱度検出手段(90)で検知される冷媒過熱度も大きく低下する。
以上のように、本発明では、油と液冷媒とでは減圧に伴う温度降下の度合が異なることを利用することで、油送り通路(43)に液冷媒が侵入しているか否かを検出している。しかも、圧縮機(32)の冷媒過熱度は、冷媒回路(11)の定常時において比較的安定しているので、この冷媒過熱度に基づいて油送り通路(43)への液冷媒の侵入を確実に検出することができる。
第9の発明は、第1の発明の冷凍装置において、上記冷媒流通制限手段は、上記油分離器(22)内の油量を検出する油量検出手段(71,80)と、該油量検出手段(71,80)で検出した油量に応じて上記油送り通路(43)の開度を調節する開度調節機構(70)とを有することを特徴とするものである。
第9の発明では、油量検出手段(71,80)が、油分離器(22)内に溜まった油の量を検出する。開度調節機構(70)は、油量検出手段(71,80)で検出した油量に応じて、油送り通路(43)の開度を調節する。従って、本発明では、油分離器(22)内の油量が減少して液冷媒が油送り通路(43)に流入し易い条件下において、油送り通路(43)の開度を開度調節機構(70)によって小さくすることができる。その結果、液冷媒が圧縮機(32)の吸入側へ送られてしまうことが抑制される。
第10の発明は、第9の発明の冷凍装置において、上記油量検出手段は、上記油分離器(22)内の油面高さを検知する油面検知手段(71,80)で構成され、上記開度調節機構(70)は、上記油面検知手段(71,80)で検知した油面高さに応じて油送り通路(43)の開度を調節するように構成されていることを特徴とするものである。
第10の発明では、油分離器(22)内の油量を検出するために油面検知手段(71,80)が用いられる。油面検知手段(71,80)は、油分離器(22)内の油量の減少を、この油の油面高さによって検出する。従って、本発明では、油面高さが比較的低くなり液冷媒が油送り通路(43)に流入し易い条件下において、油送り通路(43)の開度を開度調節機構(70)によって小さくすることができる。その結果、液冷媒が圧縮機(32)の吸入側へ送られてしまうことが抑制される。
第11の発明は、第10の発明の冷凍装置において、上記開度調節機構は、上記油面検知手段(71,80)で検知した油面高さが所定高さよりも低くなると上記油送り通路(43)を閉鎖するように構成されていることを特徴とするものである。
第11の発明では、油面検知手段(71,80)で検知した油面高さが所定高さより低くなると、開度調節機構(70)が油送り通路(43)を閉鎖する。つまり、油分離器(22)内の油量が減少して液冷媒が油送り通路(43)に流入し易くなると、閉鎖状態の開度調節機構(70)によって油送り通路(43)での液冷媒の流通が禁止される。その結果、液冷媒が圧縮機(32)の吸入側へ送られてしまうことが抑制される。
第12の発明は、第1の発明の冷凍装置において、上記冷媒流量制限手段は、上記油送り通路(43)に設けられる開閉弁(70)と、該開閉弁(70)が閉鎖状態となる時間が所定の閉鎖時間Δtcを経過する毎に、上記開閉弁(70)を一時的に開放させる弁制御手段(80)とを備えていることを特徴とするものである。
第12の発明では、油送り通路(43)に冷媒流通制限手段としての開閉弁(70)が設けられる。弁制御手段(80)は、所定の閉鎖時間Δtcを経過するまでの間、開閉弁(70)を閉鎖状態とする。従って、この閉鎖時間Δtcの間は、油分離器(22)内の油が油送り通路(43)を通じて圧縮機(32)へ吸入されることがなく、油分離器(22)内に油が蓄積していくことになる。一方、弁制御手段(80)は、上記閉鎖時間Δtcが経過する毎に開閉弁(70)を一時的に開放させる。その結果、油分離器(22)内に溜まった油は、油送り通路(43)を通じて圧縮機(32)へ吸入される。ここで、この時点には、既に油分離器(22)内にある程度の油が溜まっているので、開閉弁(70)を一時的に開放状態としても、多量の液冷媒が圧縮機(32)へ吸入されるのを回避できる。
第13の発明は、第12の発明の冷凍装置において、上記冷媒流量制限手段は、上記開閉弁(70)の開放時における上記油分離器(22)から上記油送り通路(43)への液冷媒の侵入を検出する冷媒検出手段(90)を備え、上記弁制御手段(80)は、上記冷媒検出手段(90)によって液冷媒の侵入が検出されると開放状態の開閉弁(70)を閉鎖させることを特徴とするものである。
第13の発明では、弁制御手段(80)によって開閉弁(70)が開放されている状態において、油分離器(22)から油送り通路(43)への液冷媒の侵入を冷媒検出手段(90)が検出すると、開閉弁(70)が閉鎖状態となる。これにより、油分離器(22)からの液冷媒の流出を確実に回避することができる。そして、油分離器(22)には、油が徐々に溜まり込んでいく。その後、開閉弁(70)が閉鎖された状態が所定の閉鎖時間Δtcを経過すると、再び開閉弁(70)が開放状態となる。
第14の発明は、第13の発明の冷凍装置において、上記弁制御手段(80)は、上記開閉弁(70)が開放されてから該開閉弁(70)が閉鎖されるまでの間の開放時間Δtoを測定する開放時間測定手段(82)を備え、該開放時間測定手段(82)で測定した開放時間Δtoに応じて、上記閉鎖時間Δtcを補正するように構成されていることを特徴とするものである。
第14の発明では、所定の閉鎖時間Δtcが経過して開閉弁(70)が開放してから、上記冷媒検出手段(90)が油送り通路(43)への液冷媒の侵入を検出するまでの間で、開閉弁(70)が開放状態となる開放時間Δtoを開放時間測定手段(82)が計測する。そして、弁制御手段(80)は、この開放時間Δtoに基づいて、それ以降に開閉弁(70)を閉鎖すべき閉鎖時間Δtcを補正する。
具体的には、例えば開放時間Δtoが比較的短い場合には、開閉弁(70)を開放させた時点で油分離器(22)内に溜まっていた油が比較的少量であったと予測できる。即ち、開閉弁(70)を開放させる直前には、油分離器(22)内にもう少し余分に油を貯留できたとみなすことができる。従って、このような場合には、上記閉鎖時間Δtcを長くするように補正することで、油分離器(22)内に所望とする油を溜めることができる。その結果、この補正後には、開閉弁(70)を一時的に開放させる頻度を低減することができる。
逆に、例えば開放時間Δtoが比較的長い場合には、開閉弁(70)を開放させた時点で油分離器(22)内に溜まっていた油が比較的多量であったと予測できる。即ち、開閉弁(70)を開放させる直前には、油分離器(22)内に油が過剰に溜まっていたとみなすことができる。従って、このような場合には、上記閉鎖時間Δtcを短くするように補正することで、油分離器(22)内に過剰な油が溜まってしまうことを防止できる。
第15の発明は、第14の発明の冷凍装置において、上記弁制御手段(80)は、開閉弁(70)の開放時に上記油分離器(22)から上記油送り通路(43)へ排出される油の排出流量Wを推定する油流量推定手段(83)を備え、油分離器(22)での基準となる油貯留量Vmaxを上記油の排出流量Wで除した理論開放時間Δtoiを算出し、上記開放時間測定手段(82)で測定した上記開放時間Δtoが上記理論開放時間Δtoiよりも短い場合に、上記閉鎖時間Δtcを長くする補正を行い、開放時間Δtoが理論開放時間Δtoiよりも長い場合に、上記閉鎖時間Δtcを短くする補正を行うように構成されていることを特徴とするものである。
第15の発明では、油流量推定手段(83)が、開閉弁(70)の開放時に油分離器(22)から油送り通路(43)へ排出される油の排出流量Wを算出する。次に、弁制御手段(80)は、油分離器(22)での基準となる油貯留量Vmaxを上記油の排出流量Wで除することで、油貯留量Vmaxの油を排出するのに要する理論開放時間Δtoi(=Vmax/W)を算出する。
ここで、上記開放時間測定手段(82)で測定した開放時間Δtoが、上述のようにして算出した理論開放時間Δtoiよりも短い場合には、開閉弁(70)を開放させる直前において、油分離器(22)内に基準の油貯留量Vmaxまで油が溜まっていなかったと推定できる。従って、弁制御手段(80)は、閉鎖時間Δtcを長くする補正を行うことで、それ以降には、油分離器(22)内に溜まり込む油の量を増大させて基準の油貯留量Vmaxへ近づけることができる。
逆に、上記開放時間測定手段(82)で測定した開放時間Δtoが、上記の理論開放時間Δtoiよりも長い場合には、開閉弁(70)を開放させる直前において、油分離器(22)内に基準の油貯留量Vmaxよりも多くの油が溜まっていたと推定できる。従って、弁制御手段(80)は、閉鎖時間Δtcを短くする補正を行うことで、それ以降には、油分離器(22)内に溜まり込む油の量を減少させて基準の油貯留量Vmaxへ近づけることができる。
第16の発明は、第15の発明の冷凍装置において、上記油流量推定手段(83)は、上記油分離器(22)内に作用する圧力と、上記圧縮機(32)の吸入側の圧力との差に基づいて、上記油の排出流量Wを推定するように構成されていることを特徴とするものである。
第16の発明では、開閉弁(70)の開放時において、油流量推定手段(83)は、油分離器(22)内に作用する圧力と、圧縮機(32)の吸入側の圧力との差に基づいて、油分離器(22)から油送り通路(43)へ排出される油の排出流量Wを推定する。
第17の発明は、第1の発明の冷凍装置において、上記冷媒流通制限手段は、上記油送り通路(43)に設けられるキャピラリーチューブ(75)で構成されていることを特徴とするものである。
第17の発明では、油送り通路(43)に冷媒流通制限手段としてのキャピラリーチューブ(75)が設けられる。油分離器(22)内の油面高さが低くなり、液冷媒が油送り通路(43)へ流入したとしても、キャピラリーチューブ(75)が液冷媒へ所定の抵抗を付与する。このため、圧縮機(32)の吸入側へ多量の液冷媒が送られてしまうことが防止される。
第18の発明は、第1乃至第17のいずれか1つの発明の冷凍装置において、上記油分離器(22)は、気液二相冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離して、液冷媒を上記蒸発器(51a,51b,51c)へ供給するように構成されていることを特徴とするものである。
第18の発明では、油分離器(22)に流入した気液二相冷媒が、液冷媒とガス冷媒とに分離される。つまり、油分離器(22)に流入した油を含む冷媒は、油と液冷媒とガス冷媒とに分離される。蒸発器(51a,51b,51c)へは、油分離器(22)で分離された液冷媒が供給される。このため、蒸発器(51a,51b,51c)の冷却能力が向上する。
第19の発明は、第18の発明の冷凍装置において、上記冷媒回路(11)には、油分離器(22)によって分離されたガス冷媒を圧縮機(32)の吸入側へ送るためのガスインジェクション通路(44)が設けられていることを特徴とするものである。
第19の発明では、油分離器(22)で分離されたガス冷媒がガスインジェクション通路(44)を通じて圧縮機(32)へ送られる。このため、油分離器(22)内にガス冷媒が溜まり過ぎることがなく、油分離器(22)内では気液二相冷媒がガス冷媒と液冷媒とに分離し易くなる。
第20の発明は、第19の発明の冷凍装置において、上記ガスインジェクション通路(44)を流通するガス冷媒の流量を調節するガス流量調節機構(44a)を備えていることを特徴とするものである。
第20の発明では、ガスインジェクション通路(44)を流通するガス冷媒の流量がガス流量調節機構(44a)によって調節可能となる。
第21の発明は、第20の発明の冷凍装置において、上記ガスインジェクション通路(44)において上記ガス流量調節機構(44a)を通過したガス冷媒と、上記油分離器(22)から蒸発器(51a,51b,51c)へ供給される冷媒とを熱交換させる内部熱交換器(24)を備えていることを特徴とするものである。
第21の発明では、内部熱交換器(24)において、ガスインジェクション通路(44)を流通するガス冷媒と、油分離器(22)から蒸発器(51a,51b,51c)へ供給される液冷媒とが熱交換する。ここで、ガスインジェクション通路(44)を流れるガス冷媒は、ガス流量調節機構(44a)を通過する際に減圧されるので、蒸発器(51a,51b,51c)側へ供給される液冷媒よりも温度が低くなっている。従って、内部熱交換器(24)では、液冷媒がガス冷媒へ放熱して冷却される。
本発明では、油分離器(22)内の液冷媒が油送り通路(43)を流通するのを冷媒流通制限手段(70,71,73,75,80)によって制限するようにしている。このため、本発明によれば、油分離器(22)内の液冷媒が油送り通路(43)を通じて圧縮機(32)に吸入されることを回避でき、油分離器(22)から蒸発器(51a,51b,51c)へ充分な量の液冷媒を供給することができる。従って、蒸発器(51a,51b,51c)の冷却能力を維持することができる。また、本発明によれば、液冷媒が油送り通路(43)を通じて圧縮機(32)に吸入されて圧縮されてしまうことを回避できるので、いわゆる液圧縮現象(液バック現象)による圧縮機(32)の損傷を防止することができる。
第2の発明では、油分離器(22)から油送り通路(43)への液冷媒の侵入を冷媒検出手段(70,73,74,80)が検出すると、開度調節機構(70)によって油送り通路(43)の開度を小さくするようにしている。このため、本発明によれば、油送り通路(43)へ液冷媒が流入していることを確実に検出して、油送り通路(43)での液冷媒の流通を速やかに制限することができる。
特に、第3の発明では、油送り通路(43)において、減圧機構(70)によって減圧された後の流体の温度を温度センサ(73)で検知し、温度センサ(73)で検知した流体の温度に基づいて、油送り通路(43)への液冷媒の侵入を検出している。また、第4の発明では、油送り通路(43)において、加熱手段(74)によって加熱した後の流体の温度を温度センサ(73)で検知し、温度センサ(73)で検知した流体の温度に基づいて、油送り通路(43)への液冷媒の侵入を検出している。このため、第3や第4の発明によれば、比較的単純な装置構造によって第2の発明を実現できる。また、これらの冷媒検出手段(70,73,74,80)は、油分離器(22)の外側の油送り通路(43)に設けられるので、メンテナンスや交換等も容易に行える。
また、第3の発明の減圧機構(70)を油送り通路(43)に設けると、液冷媒が油送り通路(43)へ流入したとしても、この液冷媒の流通が減圧機構(70)によって制限される。従って、第3の発明によれば、多量の液冷媒が圧縮機(32)に吸入されてしまうことを確実に回避できる。
また、第4の発明の加熱手段(74)を油送り通路(43)に設けると、液冷媒が油送り通路(43)へ流入したとしても、この液冷媒を加熱手段(74)によって加熱して蒸発させることができる。つまり、加熱手段(74)で冷媒を加熱することで、この冷媒の乾き度が大きくなるので、圧縮機(32)での液圧縮現象を未然に防止することができる。
第5乃至第7の発明では、加熱用熱交換器(74)において、油送り通路(43)を流れる流体を、冷媒回路(11)内の他の流体と熱交換させるようにしている。従って、これらの発明では、ヒータ等の熱源を別に設けることなく、油送り通路(43)の流体を加熱することができる。特に第5の発明では、膨張機(33)の流入側の冷媒と油送り通路(43)の流体とを熱交換させている。このため、第5の発明によれば、膨張機(33)の流入側の冷媒を冷却することができ、蒸発器(51a,51b,51c)の冷却能力を向上できる。また、第6や第7の発明では、圧縮機(32)の吐出側の冷媒や油を利用して、油送り通路(43)の流体を加熱している。このため、これらの発明によれば、油送り通路(43)の流体の加熱量が比較的大きくなるので、加熱された流体の温度変化が、液冷媒と油との間で顕著となる。従って、これらの発明によれば、油送り通路(43)への冷媒の侵入を精度良く検出することができる。
第8の発明では、油分離器(22)から油送り通路(43)への液冷媒の侵入を、圧縮機(32)の吸入側の冷媒過熱度に基づいて検出するようにしている。これにより、本発明によれば、冷媒回路(11)の冷凍サイクル時に用いる冷媒過熱度検出用のセンサを利用して、油送り通路(43)への液冷媒の侵入を検出することができる。従って、部品点数やコストの増大を招くことなく、本発明の作用効果を奏することができる。
また、圧縮機(32)の吸入側の冷媒過熱度は、冷媒回路(11)の定常時において比較的安定しているので、この冷媒過熱度を用いることで、油送り通路(43)への液冷媒の侵入を確実に検出することができる。
第9の発明では、油量検出手段(71,80)で検出した油分離器(22)内の油量に応じて、油送り通路(43)の開度を開度調節機構(70)によって調節するようにしている。このため、本発明によれば、油分離器(22)内の油量が減少した際に油送り通路(43)の開度を小さくすることで、液冷媒が油送り通路(43)を通じて圧縮機(32)に送られてしまうのを回避できる。
第10の発明では、油面検知手段(71,80)で検出した油分離器(22)内の油面高さに応じて、油送り通路(43)の開度を開度調節機構(70)によって調節するようにしている。このため、本発明によれば、油面高さが低下した際に油送り通路(43)の開度を小さくすることで、液冷媒が油送り通路(43)を通じて圧縮機(32)に吸入されてしまうのを回避できる。
特に、第11の発明では、油面高さが所定高さよりも低くなると、油送り通路(43)を開度調節機構(70)によって閉鎖するようにしているので、液冷媒が油送り通路(43)を通じて圧縮機(32)に吸入されてしまうのを確実に防止できる。
第12の発明では、開閉弁(70)を所定の閉鎖時間Δtcが経過する毎に一時的に開放させるようにしている。これにより、本発明によれば、容易且つ単純な構造により、油分離器(22)から油送り通路(43)への液冷媒の侵入を防止することができる。
特に、第13の発明では、開閉弁(70)の開放時において、冷媒検出手段(90)が油送り通路(43)への液冷媒の侵入を検出すると、開閉弁(70)を閉鎖するようにしている。従って、本発明によれば、開閉弁(70)の開放時において、開放時間を設定することなく、液冷媒が圧縮機(32)へ吸入されてしまうのを確実に回避することができる。
また、第14の発明によれば、開閉弁(70)の開放時間Δtoに基づいて、その後の開閉弁(70)の閉鎖時間Δtcを補正することができる。更に、第15の発明では、開閉弁(70)の開放時に油の排出流量Wを算出し、油分離器(22)の基準の油貯留量Vmaxを排出流量Wで除することで、油貯留量Vmaxの油を排出するのに要する理論開放時間Δtoiを算出している。
ここで、本発明では、実際に測定した開放時間Δtoが理論開放時間Δtoiよりも短い場合には、開閉弁(70)の閉鎖時間Δtcを長くするようにしている。これにより、油分離器(22)内の油貯留量が不足気味であった場合において、補正後には、開閉弁(70)の閉鎖時により多くの油を貯留させて油の貯留量をVmaxに近づけることができる。その結果、開閉弁(70)を開放させる頻度を低減できるので、油分離器(22)内の油が圧縮機(32)へ吸入されてしまうリスクを更に低減できる。また、開閉弁(70)の開閉動作に伴う開閉弁(70)の機械的な劣化を抑制できる。
また、本発明では、実際に測定した開放時間Δtoが理論開放時間Δtoiよりも長い場合には、開閉弁(70)の閉鎖時間Δtcを短くするようにしている。これにより、油分離器(22)内の油貯留量が過剰気味であった場合において、補正後には、開閉弁(70)の閉鎖時に溜まり込む油の量を少なくして油の貯留量をVmaxに近づけることができる。その結果、油分離器(22)内に過剰の油が溜まり込むことに起因して油分離率が低下したり、分離されなかった油が蒸発器(51a,51b,51c)側へ流出してしまうのを未然に回避できる。
また、第16の発明では、油分離器(22)内に作用する圧力と、圧縮機(32)の吸入側の圧力との差圧を用いることで、既存のセンサ等を用いながら、油分離器(22)から油送り通路(43)への油の排出流量Wを、運転条件の変化によらず容易に精度良く推定することができる。
第17の発明によれば、油送り通路(43)にキャピラリーチューブ(75)を設けるようにしたので、比較的単純な構造により、油分離器(22)内の液冷媒が圧縮機(32)の吸入側へ送られてしまうのを抑制することができる。
第18の発明では、油分離器(22)で気液二相冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、液冷媒を蒸発器(51a,51b,51c)へ供給するようにしている。このため、本発明によれば、ガス冷媒と液冷媒との双方が供給される場合と比較して、蒸発器(51a,51b,51c)の冷却能力を更に向上できる。
第19の発明では、油分離器(22)内のガス冷媒をガスインジェクション通路(44)を通して圧縮機(32)の吸入側へ送るようにしている。このため、本発明によれば、油分離器(22)内にガス冷媒が溜まりにくくなるので、油分離器(22)での気液二相冷媒の気液分離効率を向上できる。また、油分離器(22)は、ガスインジェクション通路(44)を介して圧縮機(32)の吸入側と繋がるため、油分離器(22)内の圧力を低下させることができる。その結果、膨張機(33)の流入側の圧力と、流出側の圧力(油分離器の内圧)との間の差圧が大きくなるので、膨張機(33)で回収し得る動力を増大できる。
第20の発明では、ガスインジェクション通路(44)のガス冷媒の流量をガス流量調節機構(44a)によって調節できるようにしている。このため、本発明によれば、圧縮機(32)に吸入されるガス冷媒の量を任意に変更することができる。
第21の発明では、ガスインジェクション通路(44)でガス流量調節機構(44a)を通過したガス冷媒と、油分離器(22)から蒸発器(51a,51b,51c)へ送られる液冷媒とを内部熱交換器(24)で熱交換させている。このため、本発明によれば、蒸発器(51a,51b,51c)へ送られる液冷媒をガス冷媒によって冷却することができる。その結果、蒸発器(51a,51b,51c)の冷却能力を更に向上できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明に係る冷凍装置は、室内の冷房や暖房が可能な空気調和装置(10)を構成するものである。図1に示すように、空気調和装置(10)は、1台の室外ユニット(20)と3台の室内ユニット(50a,50b,50c)とを備えている。なお、室内ユニット(50a,50b,50c)の台数は単なる一例であり、これに限るものではない。
空気調和装置(10)は、冷媒回路(11)を備えている。この冷媒回路(11)は、二酸化炭素(CO2)が冷媒として充填された閉回路である。冷媒回路(11)は、1つの室外回路(12)と、3つの室内回路(15a,15b,15c)とを備えている。これらの室内回路(15a,15b,15c)は、第1連絡管(16)及び第2連絡管(17)によって室外回路(12)に並列に接続されている。具体的に、第1連絡管(16)は、一端が室外回路(12)の第1閉鎖弁(18)に接続され、他端が3方に分岐して各室内回路(15a,15b,15c)の液側端に接続されている。第2連絡管(17)は、一端が室外回路(12)の第2閉鎖弁(19)に接続され、他端が3方に分岐して各室内回路(15a,15b,15c)のガス側端に接続されている。
各室内回路(15a,15b,15c)は、各室内ユニット(50a,50b,50c)に1つずつ収容されている。各室内回路(15a,15b,15c)には、そのガス側端から液側端へ向かって順に、室内熱交換器(51a,51b,51c)と、室内膨張弁(52a,52b,52c)とが設けられている。各室内ユニット(50a,50b,50c)には、各室内熱交換器(51a,51b,51c)に室内空気を送るための室内ファンが設けられている(図示省略)。
各室内熱交換器(51a,51b,51c)は、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器を構成している。各室内熱交換器(51a,51b,51c)へは、室内ファンによって室内空気が供給される。各室内熱交換器(51a,51b,51c)では、室内空気と冷媒との間で熱交換が行われる。また、各室内膨張弁(52a,52b,52c)は、開度可変の電子膨張弁によって構成されている。
室外回路(12)は、室外ユニット(20)に収容されている。室外回路(12)には、圧縮・膨張ユニット(30)、室外熱交換器(21)、油分離器(22)、室外膨張弁(23)、内部熱交換器(24)、ブリッジ回路(25)、及び四路切換弁(26)が設けられている。室外ユニット(20)には、室外熱交換器(21)に室外空気を送るための室外ファンが設けられている(図示省略)。
圧縮・膨張ユニット(30)は、縦長で円筒形の密閉容器であるケーシング(31)を備えている。ケーシング(31)内には、圧縮機(32)と膨張機(33)と電動機(34)とが収容されている。ケーシング(31)内では、圧縮機(32)と電動機(34)と膨張機(33)とが下から上へ向かって順に配置され、1本の駆動軸(35)によって互いに連結されている
圧縮機(32)及び膨張機(33)は、何れも容積型の流体機械(揺動ピストン型のロータリ流体機械、ローリングピストン型のロータリ流体機械、スクロール流体機械等)によって構成されている。圧縮機(32)は、吸入した冷媒(CO2)をその臨界圧力以上にまで圧縮する。膨張機(33)は、流入した冷媒(CO2)を膨張させて動力(膨張動力)を回収する。圧縮機(32)は、膨張機(33)で回収された動力と、通電状態の電動機(34)で発生する動力との両方によって回転駆動される。電動機(34)には、図外のインバータから所定周波数の交流電力が供給される。圧縮機(32)は、電動機(34)へ供給される電力の周波数を変更することで、その容量が可変に構成されている。圧縮機(32)と膨張機(33)とは、常に同じ回転速度で回転する。
ケーシング(31)の底部には、圧縮機(32)や膨張機(33)の各摺動部を潤滑するための油(冷凍機油)が溜まり込んでいる。本実施形態では、この油としてポリアルキレングリコールが用いられている。しかしながら、この冷凍機油は、少なくとも−20℃以上の温度域で冷媒と分離可能で、且つその温度域で冷媒よりも密度が大きくなるものであれば他のものであっても良い。具体的に、この油としては、ポリビニルエーテル、ポリオールエステル、ポリカーボネート、アルキルベンゼン等が挙げられる。
駆動軸(35)の下端には、ケーシング(31)の底部に溜まった油を汲み上げるための油ポンプ(36)が設けられている。油ポンプ(36)は、駆動軸(35)と共に回転し、遠心力によって油を汲み上げる遠心式のポンプを構成している。油ポンプ(36)によって汲み上げられた油は、駆動軸(35)の油通路(図示省略)を経由して、圧縮機(32)や膨張機(33)へ供給される。圧縮機(32)や膨張機(33)へ供給された各油は、各摺動部の潤滑に利用され、その後に冷媒と共に冷媒回路(11)へ流出する。
室外熱交換器(21)は、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器として構成されている。室外熱交換器(21)へは、室外ファンによって室外空気が供給される。室外熱交換器(21)では、室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室外熱交換器(21)は、一端が四路切換弁(26)の第3のポートに接続され、他端が室外膨張弁(23)を介してブリッジ回路(25)に接続されている。室外膨張弁(23)は、開度可変な電子膨張弁で構成されている。
油分離器(22)は、膨張機(33)から流出した気液二相冷媒から油を分離するためのものである。油分離器(22)は、縦長で円筒状の密閉容器である。具体的に、油分離器(22)は、筒状の周壁部(22a)と、周壁部(22a)の下端を閉塞する底壁部(22b)と、周壁部(22a)の上端を閉塞する頂壁部(22c)とが一体に形成されて構成されている。
油分離器(22)の周壁部(22a)には、流入管(41)が接続されている。流入管(41)は、一端が周壁部(22a)を接線方向に貫通して油分離器(22)の内部に開口している。流入管(41)の一端の開口は、水平方向を向いている。また、流入管(41)の一端の開口高さは、油分離器(22)のやや頂壁部(22c)側寄りに位置している。流入管(41)の他端は、膨張機(33)の流出口と繋がっている。
油分離器(22)の底壁部(22b)には、流出管(42)が接続されている。流出管(42)は、一端が底壁部(22b)を鉛直方向に貫通して油分離器(22)の内部に開口している。流出管(42)の一端の開口は、鉛直上方を向いている。また、流出管(42)の一端の開口高さは、流入管(41)の一端よりも下側に位置している。流出管(42)の他端は、内部熱交換器(24)を介してブリッジ回路(25)と繋がっている。
油分離器(22)の底壁部(22b)には、油送り通路としての油送り管(43)も接続されている。油送り管(43)は、一端が底壁部(22b)に開口し、油分離器(22)の内部に臨んでいる。油送り管(43)の一端の開口高さは、流出管(42)の一端よりも下側に位置し、底壁部(22b)の内面(底面)と略一致している。油送り管(43)の他端は、圧縮機(32)の吸入側と繋がっている。
油分離器(22)の頂壁部(22c)には、ガスインジェクション通路としてのガスインジェクション管(44)が接続されている。ガスインジェクション管(44)は、一端が頂壁部(22c)に開口し、油分離器(22)の内部に臨んでいる。ガスインジェクション管(44)の一端の開口高さは、流入管(41)の一端よりも上側に位置し、頂壁部(22c)の内面(天面)と略一致している。ガスインジェクション管(44)の他端は、内部熱交換器(24)を介して圧縮機(32)の吸入側と繋がっている。また、ガスインジェクション管(44)には、ガス流量調節機構としてのガスインジェクション弁(44a)が、内部熱交換器(24)の流入側に設けられている。ガスインジェクション弁(44a)は、開度が可変の電子膨張弁によって構成されている。
油分離器(22)は、膨張機(33)を流出した気液二相冷媒から油を分離すると同時に、気液二相冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離するように構成されている。つまり、油分離器(22)へ流入した気液二相冷媒中には、密度が大きいものから順に、油(冷凍機油)、液冷媒、ガス冷媒が混在している。このため、油分離器(22)では、最も密度が大きい油が底部に溜まり込んで油溜まり(40b)を形成し、最も密度が小さいガス冷媒が頂部に溜まり込んでガス溜まり(40c)を形成する。更に、油分離器(22)では、油溜まり(40b)とガス溜まり(40c)の間に、液冷媒が溜まり込んで液溜まり(40a)を形成する。油分離器(22)では、原則として、流出管(42)が液溜まり(40a)に臨み、油送り管(43)が油溜まり(40b)に臨み、流入管(41)及びガスインジェクション管(44)がガス溜まり(40c)に臨んでいる。
内部熱交換器(24)は、流出管(42)とガスインジェクション管(44)とに跨るように設けられている。内部熱交換器(24)は、流出管(42)の途中に形成される放熱部(24a)と、ガスインジェクション管(44)の途中に形成される吸熱部(24b)とを有している。内部熱交換器(24)は、放熱部(24a)を流通する液冷媒と、吸熱部(24b)を流通するガス冷媒とを熱交換させる。
ブリッジ回路(25)は、4つの逆止弁(CV-1〜CV-4)をブリッジ状に接続したものである。このブリッジ回路(25)における第1逆止弁(CV-1)及び第4逆止弁(CV-4)の流入側には、流出管(42)が接続されている。第2逆止弁(CV-2)及び第3逆止弁(CV-3)の流出側は、膨張機(33)の流入側に接続されている。第1逆止弁(CV-1)の流出側及び第2逆止弁(CV-2)の流入側は、第1閉鎖弁(18)に接続されている。第3逆止弁(CV-3)の流入側及び第4逆止弁(CV-4)の流出側は、室外膨張弁(23)に接続されている。各逆止弁(CV-1,CV-2,CV-3,CV-4)は、図1に矢印で示す方向への冷媒の流通のみを許容し、これとは逆の方向への冷媒の流通を禁止している。
四路切換弁(26)の第1のポートは、圧縮機(32)の吸入側に接続されている。第2のポートは、第2閉鎖弁(19)に接続されている。第3のポートは、室外熱交換器(44)に接続されている。第4のポートは、圧縮機(32)の吐出側に接続されている。四路切換弁(26)は、第1のポートと第2のポートとを連通させると同時に第3のポートと第4のポートとを連通させる状態(図1に実線で示す第1状態)と、第1のポートと第3のポートとが連通させると同時に第2のポートと第4のポートとを連通させる状態(図1に破線で示す第2状態)とが切り換え可能に構成されている。
図2に示すように、本実施形態の空気調和装置(10)は、開閉弁(70)と、2つのフロートスイッチ(71,72)と、制御部(80)とを備えている。開閉弁(70)は、油送り管(43)に設けられている。開閉弁(70)は、油送り管(43)の開度を調節するための開度調節機構を構成している。具体的に、開閉弁(70)は、開閉自在な電磁弁で構成されている。つまり、開閉弁(70)は、油送り管(43)を開放する状態と、閉鎖する状態とに切換可能となっている。また、開放状態の開閉弁(70)は、油送り管(43)よりも流路面積が小さくなっており、通過する流体を絞り込んで抵抗を付与するように構成されている。つまり、開閉弁(70)は、油送り管(43)を流れる流体を減圧する減圧機構を兼ねている。
2つのフロートスイッチ(71,72)は、油分離器(22)の内部に設けられている。各フロートスイッチ(71,72)は、油分離器(22)内の油面高さを検知する油面検知手段であって、ひいては油分離器(22)内の油量を検出する油量検出手段を構成している。具体的には、油分離器(22)には、底壁部(22b)寄りに下限フロートスイッチ(71)が設けられ、下限フロートスイッチ(71)の上側に上限フロートスイッチ(72)が設けられている。各フロートスイッチ(71,72)は、縦長の筒状のガイド部(71a,72a)と、各ガイド部(71a,72a)の内部に保持される球状のフロート部(71b,72b)とを有している。各ガイド部(71a,72a)内には、フロート部(71b,72b)が鉛直方向に変位自在に保持されている。また、各フロート部(71b,72b)は、油分離器(22)内の油よりも密度が小さく、且つ液冷媒よりも密度が大きくなるように構成されている。つまり、各フロート部(71b,72b)は、油分離器(22)内において、油中では浮遊するが液冷媒中では浮遊しない。
下限フロートスイッチ(71)は、油分離器(22)内の油面高さが下限レベルLよりも低くなっているか否かを検知するものである。下限レベルLは、油分離器(22)の底面より僅かに高い位置に設定されている。上限フロートスイッチ(72)は、油分離器(22)の油面高さが上限レベルHより高くなっているか否かを検知するものである。上限レベルHは、下限レベルLよりも高く、且つ流出管(42)の開口高さ以下の位置に設定されている。本実施形態では、下限レベルLと、流出管(42)の開口高さとがほぼ一致している。
制御部(80)は、下限フロートスイッチ(71)及び上限フロートスイッチ(72)の検知信号を入力し、この検知信号に応じて開閉弁(70)の開閉制御を行うものである。開閉弁(70)と下限フロートスイッチ(71)と制御部(80)とは、油分離器(22)内の液冷媒が油送り管(43)を通じて圧縮機(32)へ吸入されるのを防ぐために、油送り管(43)を流通する流体の流量を制限する冷媒流通制限手段を構成している。また、開閉弁(70)と上限フロートスイッチ(72)と制御部(80)とは、油分離器(22)内の油が、流出管(42)を流通するのを制限する油流通制限手段を構成している。このような制御部(80)による油送り管(43)の開度制御動作の詳細は後述する。
−運転動作−
空気調和装置(10)の運転動作について説明する。空気調和装置(10)は、室内を冷房する冷房運転と、室内を暖房する暖房運転とが可能となっている。
《暖房運転》
暖房運転時には、四路切換弁(26)が図1の破線で示す状態に設定される。暖房運転では、各室内膨張弁(52a,52b,52c)の開度が個別に調節され、室外膨張弁(23)の開度も適宜調節される。また、油送り管(43)の開閉弁(70)は原則として開放状態となり、ガスインジェクション弁(44a)の開度が適宜調節される。このような状態で電動機(34)が通電されると、圧縮機(32)が駆動され、冷媒回路(11)で冷媒が循環する。その結果、暖房運転では、各室内熱交換器(51a,51b,51c)が放熱器として機能し、室外熱交換器(21)が蒸発器として機能する冷凍サイクルが行われる。
具体的に、圧縮機(32)からは、臨界圧力よりも高圧となった冷媒が吐出される。この高圧の冷媒は、第2連絡管(17)を経て各室内回路(15a,15b,15c)へ分流する。各室内回路(15a,15b,15c)へ流入した冷媒は、各室内熱交換器(51a,51b,51c)をそれぞれ流れる。各室内熱交換器(51a,51b,51c)では、冷媒が室内空気へ放熱し、これにより室内の暖房が行われる。なお、各室内回路(15a,15b,15c)では、各室内膨張弁(52a,52b,52c)の開度に応じて、各室内熱交換器(51a,51b,51c)の暖房能力が個別に調節される。各室内熱交換器(51a,51b,51c)で放熱した冷媒は、第1連絡管(16)で合流して室外回路(12)へ流入する。
室外回路(12)へ流入した冷媒は、膨張機(33)で中間圧まで減圧される。この際、膨張機(33)の膨張動力が駆動軸(35)の回転動力として回収される。膨張機(33)で減圧された冷媒は、気液二相状態で流入管(41)を流れ、油分離器(22)内へ流入する。この際、油分離器(22)へは、膨張機(33)の各摺動部の潤滑に利用された油も流入する。
油分離器(22)では、油を含む気液二相冷媒が周壁部(22a)の内周面に沿うように旋回する。その結果、冷媒中から油が分離されると共に、気液二相冷媒が液冷媒とガス冷媒とに分離される。その結果、油が油溜まり(40b)に、液冷媒が液溜まり(40a)に、ガス冷媒がガス溜まり(40c)にそれぞれ貯留される。
油分離器(22)の液溜まり(40a)の液冷媒は、流出管(42)へ流出して内部熱交換器(24)を流れる。一方、油分離器(22)のガス溜まり(40c)のガス冷媒は、ガスインジェクション管(44)へ流出する。このガス冷媒は、ガスインジェクション弁(44a)を通過する際に減圧され、内部熱交換器(24)を流れる。内部熱交換器(24)では、放熱部(24a)を流れる液冷媒と、吸熱部(24b)を流れるガス冷媒との間で熱交換が行われる。その結果、放熱部(24a)の液冷媒は、吸熱部(24b)のガス冷媒へ熱を付与して過冷却される。過冷却された液冷媒は、室外膨張弁(23)を通過する際に低圧まで減圧されてから、室外熱交換器(21)へ流入する。室外熱交換器(21)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(21)で蒸発した冷媒は、ガスインジェクション管(44)を流出したガス冷媒と混合されて、圧縮機(32)へ吸入される。
一方、油分離器(22)の油溜まり(40b)に溜まった油は、油送り管(43)へ流入する。この油は、開放状態の開閉弁(70)を通過する際に低圧まで減圧されてから圧縮機(32)へ吸入される。圧縮機(32)へ吸入された油は、圧縮機(32)や膨張機(33)の各摺動部の潤滑に利用される。
《冷房運転》
冷房運転時には、四路切換弁(26)が図1の実線で示す状態に設定される。冷房運転では、各室内膨張弁(52a,52b,52c)の開度が個別に調節され、室外膨張弁(23)が全開状態となる。また、油送り管(43)の開閉弁(70)は原則として開放状態となり、ガスインジェクション弁(44a)の開度が適宜調節される。このような状態で電動機(34)が通電されると、圧縮機(32)が駆動され、冷媒回路(11)で冷媒が循環する。その結果、冷房運転では、各室内熱交換器(51a,51b,51c)が蒸発器として機能し、室外熱交換器(21)が放熱器として機能する冷凍サイクルが行われる。
具体的に、圧縮機(32)からは、臨界圧力よりも高圧となった冷媒が吐出される。この高圧の冷媒は、室外熱交換器(21)で放熱し、膨張機(33)で中間圧まで減圧された後、油分離器(22)へ流入する。油分離器(22)では、油を含む気液二相冷媒が、油と液冷媒とガス冷媒とに分離される。
油分離器(22)から流出管(42)へ流出した冷媒は、内部熱交換器(24)の放熱部(24a)を流れる。一方、油分離器(22)からガスインジェクション管(44)へ流出した冷媒は、ガスインジェクション弁(44a)で減圧された後、内部熱交換器(24)の吸熱部(24b)を流れる。内部熱交換器(24)では、放熱部(24a)の液冷媒が吸熱部(24b)のガス冷媒へ放熱して過冷却される。過冷却後の液冷媒は、第1連絡管(16)を経て各室内回路(15a,15b,15c)へ分流する。
ここで、このように内部熱交換器(24)で液冷媒を過冷却すると、第1連絡管(16)から各室内膨張弁(52a,52b,52c)までの冷媒経路において、液冷媒が気液二相状態に変化してしまうのを抑制できる。即ち、このような冷媒経路の圧力損失が比較的大きい場合には、液冷媒が減圧されて気液二相状態となり易いが、充分に過冷却された液冷媒であれば、減圧されても気液二相状態となりにくい。その結果、例えば液冷媒が気液二相状態に変化してしまう場合には、各室内ユニット(50a,50b,50c)へ供給される液冷媒が偏流してしまうことがあるが、本実施形態の各室内ユニット(50a,50b,50c)へは、液冷媒が均等に供給されることになる。
各室内回路(15a,15b,15c)へ供給された液冷媒は、各室内膨張弁(52a,52b,52c)を通過する際に減圧される。この際、各室内膨張弁(52a,52b,52c)を通過する冷媒は液単相状態であるので、気液二相状態である場合と比較して、各室内膨張弁(52a,52b,52c)での冷媒の通過音が小さくなる。各室内膨張弁(52a,52b,52c)で低圧まで減圧された冷媒は、各室内熱交換器(51a,51b,51c)を流れる。各室内熱交換器(51a,51b,51c)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。その結果、室内空気が冷却されて室内の冷房が行われる。各室内熱交換器(51a,51b,51c)で蒸発した冷媒は、ガスインジェクション管(44)を流出したガス冷媒と混合されて、圧縮機(32)へ吸入される。
一方、油分離器(22)の油溜まり(40b)に溜まった油は、油送り管(43)へ流入する。この油は、開放状態の開閉弁(70)を通過する際に低圧まで減圧されてから圧縮機(32)へ吸入される。圧縮機(32)へ吸入された油は、圧縮機(32)や膨張機(33)の各摺動部の潤滑に利用される。
−油送り管の開度制御動作−
上述のように、空気調和装置(10)の暖房運転や冷房運転では、油分離器(22)の底部に溜まった油を圧縮機(32)の吸入側へ送るようにしている。ところが、油分離器(22)に溜まり込む油の量は、圧縮・膨張ユニット(30)の出力周波数等の各種の運転条件に応じて変動する。このような油分離器(22)内の油量の変動に伴い、油面高さが低くなり過ぎると、油分離器(22)内の液冷媒が油送り管(43)を通じて圧縮機(32)の吸入側へ送られることがある。その結果、例えば冷房運転時において、蒸発器となる各室内熱交換器(51a,51b,51c)へ供給される液冷媒の量が減少してしまい、各室内ユニット(50a,50b,50c)の冷房能力が低下してしまう虞がある。また、圧縮機(32)に液冷媒が吸入されることで、いわゆる液圧縮(液バック)現象が生じ、圧縮機(32)が損傷してしまう虞もある。
一方、油分離器(22)内の油面高さが高くなり過ぎると、油分離器(22)内の油が流出管(42)へ流入してしまうこともある。その結果、例えば冷房運転時において、蒸発器となる各室内熱交換器(51a,51b,51c)の伝熱管に油が付着し、各室内熱交換器(51a,51b,51c)の伝熱性能が低下してしまうこともある。従って、このような場合にも各室内ユニット(50a,50b,50c)の冷房能力が低下してしまう虞がある。そこで、本実施形態の空気調和装置(10)では、このような不具合を解消すべく、以下のような油送り管(43)の開度制御動作を行うようにしている。
例えば冷房運転において、図3(A)に示すように、油分離器(22)内の油面高さが下限レベルLを下回るとする。この場合、下限フロートスイッチ(71)のフロート部(71b)が、油面とともに下限レベルLの下側に変位する。その結果、下限フロートスイッチ(71)からは、制御部(80)へ検知信号が出力される。制御部(80)に検知信号が入力されると、制御部(80)は開閉弁(70)を閉鎖状態とする。その結果、油分離器(22)内の油面高さが低すぎる状態であっても、液冷媒が油送り管(43)を通じて圧縮機(32)へ送られてしまうことが、閉鎖状態の開閉弁(70)によって阻止される。
この状態で冷房運転が継続して行われると、油分離器(22)内の油面高さが徐々に上がっていく。ここで、開閉弁(70)が閉鎖されてから油面高さが下限レベルLより高くなっても、開閉弁(70)の閉鎖状態は保持される。この状態から更に油面高さが高くなり、図3(B)に示すように、油面高さが上限レベルHを越えるとする。この場合、上限フロートスイッチ(72)のフロート部(72b)が、油面とともに上限レベルHの上側に変位する。その結果、上限フロートスイッチ(72)からは、制御部(80)へ検知信号が出力される。制御部(80)に検知信号が入力されると、制御部(80)は開閉弁(70)を開放状態とする。その結果、油分離器(22)内の油は、油送り管(43)を通じて圧縮機(32)へ送られ、油面高さが再び低下していく。このため、流出管(42)へ油が流入してしまうことが未然に回避されるので、各室内熱交換器(51aw,51b,51c)へは液冷媒だけが供給されることになる。
−実施形態1の効果−
上記実施形態1では、油分離器(22)内の液冷媒が油送り通路(43)を流通するのを冷媒流通制限手段によって制限するようにしている。具体的には、上記実施形態1では、油分離器(22)内の油面高さが所定の下限レベルLより低くなると、開閉弁(70)を開放状態としている。その結果、上記実施形態1によれば、油分離器(22)内の油面高さが低くなり液冷媒が油送り管(43)に流入し易い条件下において、液冷媒が油送り管(43)を流通するのを速やかに回避することができる。従って、液冷媒が油送り管(43)を通じて圧縮機(32)に吸入されてしまうことを未然に回避できる。このようにすると、油分離器(22)からは、例えば冷房運転時の室内熱交換器(51a,51b,51c)へ充分な量の液冷媒を供給することができる。その結果、室内熱交換器(51a,51b,51c)の冷房能力を充分確保することができる。また、圧縮機(32)へ液冷媒が吸入されてしまうことを回避することで、いわゆる液圧縮現象(液バック現象)による圧縮機(32)の損傷を防止することができる。
また、上記実施形態1では、油分離器(22)内の油面高さが所定の上限レベルHより高くなると、開閉弁(70)を開放状態としている。つまり、上記実施形態1では、油分離器(22)内の油面高さが高くなり分離後の油が流出管(42)へ流入し易い条件下において、油送り管(43)における油の流通を許容するようにしている。従って、上記実施形態1によれば、このような状態から速やかに油分離器(22)内の油面高さを低くできるので、分離後の油が流出管(42)に流入してしまうのを未然に回避できる。その結果、分離後の油が、例えば冷房運転時の室内熱交換器(51a,51b,51c)の伝熱管に付着することを防止でき、このような油の付着に起因して室内熱交換器(51a,51b,51c)の伝熱性能が低下してしまうのも防止できる。
更に、上記実施形態1では、油分離器(22)内で気液二相冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、分離後の液単相冷媒を冷房運転時の室内熱交換器(51a,51b,51c)へ供給するようにしている。このため、室内熱交換器(51a,51b,51c)の冷房能力の向上を図ることができる。
ここで、分離後のガス冷媒は、ガスインジェクション管(44)を通じて圧縮機(32)の吸入側に送られるので、油分離器(22)内にガス冷媒が溜まりすぎることがない。その結果、油分離器(22)内での気液分離能力を充分確保できる。また、油分離器(22)にガスインジェクション管(44)を繋ぐと、油分離器(22)内の圧力を低下させることができる。その結果、膨張機(33)の流入側の圧力と、流出側の圧力(油分離器の内圧)との間の差圧が大きくなるので、膨張機(33)で回収できる動力を増大できる。また、ガスインジェクション管(44)にガスインジェクション弁(44a)を設けるようにしたので、このガスインジェクション弁(44a)の開度に応じて圧縮機(32)へ吸入されるガス冷媒の量を調節できる。
更に、ガスインジェクション管(44)でガスインジェクション弁(44a)を通過したガス冷媒と、流出管(42)を流れる液冷媒とを内部熱交換器(24)で熱交換させている。このため、冷房運転時の室内熱交換器(51a,51b,51c)へ送られる冷媒を過冷却でき、室内熱交換器(51a,51b,51c)の冷房能力を更に向上できる。
〈実施形態1の変形例〉
上記実施形態1について、以下のような構成としても良い。
上記実施形態1では、油分離器(22)内の液面高さをフロートスイッチ(71,72)で検知するようにしている。しかしながら、上述の上限レベルHや下限レベルLを他の油面高さ検知手段で検知するようにしても良い。この油面高さ検知手段としては、高周波パルス式、超音波式、マイクロ波式等が挙げられる。
また、油分離器(22)内の油量を直接的、あるいは間接的に検出し、検出した油量に応じて開閉弁(70)の開閉制御を行うようにしても良い。具体的には、例えば圧縮・膨張ユニット(30)の出力周波数(即ち、駆動軸の回転数)に基づいて圧縮・膨張ユニット(30)のケーシング(31)内における油上がり量を推定し、この油上がり量(即ち、膨張機(33)から流出する油の量)を積算していくことで、油分離器(22)内の油量を求めることができる。また、例えば油分離器(22)の重量を測定することで、油分離器(22)内の油量を求めることもできる。
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る空気調和装置(10)は、上記実施形態1と冷媒流通制限手段の構成が異なるものである。具体的には、図4に示すように、冷媒流通制限手段は、開閉制御手段として開閉弁(70)と、温度センサ(73)と、制御部(80)とを備えている。また、実施形態2の油分離器(22)内には、実施形態1の上限フロートスイッチ(72)が設けられている一方、実施形態1の下限フロートスイッチ(71)は設けられていない。
開閉弁(70)は、上記実施形態1と同様に、開放状態において通過する流体に対して所定の抵抗を付与するように構成されている。つまり、開閉弁(70)は、通過する流体を減圧する減圧機構を兼ねている。温度センサ(73)は、油送り管(43)における開閉弁(70)の下流側に設けられている。温度センサ(73)は、開閉弁(70)の下流側の温度を検知する。温度センサ(73)で検知した温度は、制御部(80)へ出力される。
制御部(80)は、温度センサ(73)の検知温度について、所定時間内(例えば5秒)における減少変化量を算出する。そして、この検知温度の減少変化量ΔTが規定量より大きくなると、油送り管(43)内に冷媒が侵入していると判定する。以上のようにして、開閉弁(70)、温度センサ(73)、及び制御部(80)は、油分離器(22)から油送り管(43)への冷媒の侵入を検出する冷媒検出手段を構成している。
−油送り管の開度制御動作−
実施形態2の空気調和装置(10)の運転開始時には、油送り管(43)の開閉弁(70)が開放状態となる。このため、油分離器(22)内の油は、油送り管(43)に流入して開閉弁(70)を通過する。この際、油は開閉弁(70)によって減圧される。ここで、油が開閉弁(70)によって減圧されても、その温度はほとんど低下しない。このため温度センサ(73)で検出される流体の温度は比較的高温のままである。
このような状態から油分離器(22)内の油量が減少すると、液冷媒が油送り管(43)へ侵入する。この液冷媒が開閉弁(70)を通過する際に減圧されると、液冷媒の温度が急激に低下する。このため、温度センサ(73)で検出される流体の温度も急激に低下する。その結果、油送り管(43)に油が流れていた状態から液冷媒が流れる状態に遷移する際には、制御部(80)へ出力される検知温度が大きく減少変化することになる。このようにして、制御部(80)において、検知温度の減少変化量が規定量よりも大きくなると、油分離器(22)から油送り管(43)へ液冷媒が侵入していると判定される。すると、制御部(80)は、開閉弁(70)を閉鎖状態とする。その結果、油送り管(43)での液冷媒の流通が開閉弁(70)によって阻止される。
この状態で運転が継続して行われると、油分離器(22)内の油面高さが徐々に上がっていく。そして、油面高さが上限レベルHを越えると、上記実施形態1と同様、上限フロートスイッチ(72)が作動して、開閉弁(70)が開放状態となる。その結果、油分離器(22)内の油は、油送り管(43)を通じて圧縮機(32)へ送られ、油面高さが再び低下していく。このため、流出管(42)へ油が流入してしまうことが未然に回避されるので、各室内熱交換器(51aw,51b,51c)へは液冷媒だけが供給されることになる。
−実施形態2の効果−
実施形態2では、油送り管(43)において減圧後の流体の温度を検出し、この温度の減少変化量に基づいて油送り管(43)への液冷媒の侵入を検出している。そして、油送り管(43)へ液冷媒が侵入していると判定すると、速やかに開閉弁(70)を閉鎖状態とするようにしている。従って、本実施形態においても、冷房運転時の室内熱交換器(51a,51b,51c)へ液冷媒を充分に供給することができ、この室内熱交換器(51a,51b,51c)の冷房能力を確保できることができる。
また、実施形態2では、油送り管(43)に温度センサ(73)を設けているので、例えば油分離器(22)内にセンサを設ける場合と比較して、センサの交換やメンテナンスが容易となる。また、開放状態の開閉弁(70)は、通過する流体に対して所定の抵抗を付与するように構成されているので、油分離器(22)内に液冷媒が油送り管(43)に流入したとしても、この液冷媒が圧縮機(32)の吸入側へ多量に送り込まれてしまうことがない。また、開閉弁(70)は、流体を減圧するための減圧機構も兼ねているため、別に膨張弁等の減圧手段を設ける必要がない。従って、部品点数の削減を図ることができる。
〈実施形態2の変形例〉
上記実施形態2について、以下のような構成としても良い。
上記実施形態2では、開閉弁(70)の下流側で検出した流体の温度の減少変化量に基づいて油送り管(43)への油の侵入を検出するようにしている。しかしながら、開閉弁(70)の上流側と下流側との双方の流体の温度を温度センサ等でそれぞれ検出し、これらの温度差によって油送り管(43)への油の侵入を検出するようにしても良い。具体的には、例えば油送り管(43)に油が流通している場合、開閉弁(70)の上流側と下流側とでは、その油の温度はほとんど変化しない。一方、油送り管(43)に液冷媒が侵入すると、開閉弁(70)の下流側の液冷媒の温度は、開閉弁(70)の上流側と比較して低温となる。従って、このような開閉弁(70)の流入前及び流出後の液冷媒の温度をそれぞれ検出し、これらの温度差が規定量より大きくなると、液冷媒が油送り管(43)へ侵入していると判断して開閉弁(70)を閉鎖状態とする。これにより、油送り管(43)における液冷媒の流通を速やかに阻止することができる。なお、開閉弁(70)の上流側の流体の温度を検出する場合、開閉弁(70)の上流側に温度センサを設けても良いし、この温度を他の方法で検出するようにしても良い。具体的には、膨張機(33)の流出側などに圧力センサを設け、この圧力センサで検出した圧力の相当飽和温度を開閉弁(70)の上流側の流体の温度として用いるようにしても良い。
《発明の実施形態3》
実施形態3に係る空気調和装置(10)は、上記実施形態2の油送り管(43)に加熱手段としての加熱用熱交換器(74)を付与したものである。この例の加熱用熱交換器(74)は、油送り管(43)と、膨張機(33)の流入側の配管とに跨るように配置されている。加熱用熱交換器(74)では、油送り管(43)を流れる流体と、膨張機(33)の流入側の冷媒とが熱交換する。また、油送り管(43)では、加熱用熱交換器(74)の上流側に開閉弁(70)が設けられ、開閉弁(70)の下流側に温度センサ(73)が設けられている。以上のようにして、開閉弁(70)、温度センサ(73)、加熱用熱交換器(74)、及び制御部(80)は、油分離器(22)から油送り管(43)への冷媒の侵入を検出する冷媒検出手段を構成している。
−油送り管の開度制御動作−
実施形態3の空気調和装置(10)の運転開始時には、油送り管(43)の開閉弁(70)が開放状態となる。このため、油分離器(22)内の油は、油送り管(43)に流入して開閉弁(70)を通過する。この際、油は開閉弁(70)によって減圧される。ここで、油が開閉弁(70)によって減圧されても、その温度はほとんど低下しない。その後、油は、加熱用熱交換器(74)を流れる。加熱用熱交換器(74)では、膨張機(33)の流入側を流れる冷媒が、油送り管(43)を流れる油に放熱する。その結果、油送り管(43)を流れる油が加熱される。その結果、温度センサ(73)で検出される流体の温度は比較的高温となる。
このような状態から油分離器(22)内の油量が減少すると、液冷媒が油送り管(43)へ侵入する。この液冷媒が開閉弁(70)を通過する際に減圧されると、液冷媒の温度が急激に低下する。その後、液冷媒は、加熱用熱交換器(74)を流れる。加熱用熱交換器(74)では、膨張機(33)の流入側を流れる冷媒によって、油送り管(43)を流れる液冷媒が加熱される。その結果、加熱用熱交換器(74)では、液冷媒が潜熱を奪って蒸発するが、その温度は上昇しない。従って、温度センサ(73)で検出される流体の温度は比較的低温となる。以上のように、上述の如く油送り管(43)を油が流通する場合には、油が加熱用熱交換器(74)で昇温され易いのに対し、液冷媒が油送り管(43)を流通する場合には、液冷媒は加熱用熱交換器(74)で昇温されにくい。更に、液冷媒は開閉弁(70)で減圧されているので、この冷媒が加熱用熱交換器(74)で過熱気味となることがなく、一層昇温されにくくなる。従って、実施形態3では、油送り管(43)を油が流通する場合と液冷媒が流通する場合とで比較すると、加熱用熱交換器(74)の下流側の流体の温度(温度センサの検知温度)の差が一層顕著となる。
以上のような理由により、油送り管(43)に油が流れていた状態から液冷媒が流れる状態に遷移する際には、制御部(80)へ出力される検知温度が大きく減少変化することになる。このようにして、制御部(80)において、検知温度の減少変化量が規定量よりも大きくなると、油分離器(22)から油送り管(43)へ液冷媒が侵入していると判定される。すると、制御部(80)は、開閉弁(70)を閉鎖状態とする。その結果、油送り管(43)での液冷媒の流通が開閉弁(70)によって阻止される。
この状態で運転が継続して行われると、油分離器(22)内の油面高さが徐々に上がっていく。そして、油面高さが上限レベルHを越えると、上記実施形態1と同様、上限フロートスイッチ(72)が作動して、開閉弁(70)が開放状態となる。その結果、油分離器(22)内の油は、油送り管(43)を通じて圧縮機(32)へ送られ、油面高さが再び低下していく。このため、流出管(42)へ油が流入してしまうことが未然に回避されるので、各室内熱交換器(51aw,51b,51c)へは液冷媒だけが供給されることになる。
−実施形態3の効果−
上記実施形態3では、油送り通路(43)において加熱用熱交換器(74)で加熱した後の流体の温度を検出し、この温度の減少変化量に基づいて油送り管(43)への液冷媒の侵入を検出している。そして、油送り管(43)へ液冷媒が侵入していると判定すると、速やかに開閉弁(70)を閉鎖状態とするようにしている。従って、本実施形態においても、冷房運転時の室内熱交換器(51a,51b,51c)へ液冷媒を充分に供給することができ、この室内熱交換器(51a,51b,51c)の冷房能力を確保できることができる。
また、このように加熱用熱交換器(74)を設けると、仮に油送り管(43)へ液冷媒が侵入したとしても、この液冷媒を加熱用熱交換器(74)で蒸発させることができる。従って、圧縮機(32)での液圧縮現象を一層確実に防止することができる。
更に、加熱用熱交換器(74)では、冷房運転時の放熱器(21)から流出した冷媒が冷却されることになるので、この冷媒を過冷却することができる。従って、室内熱交換器(51a,51b,51c)の冷房能力を更に向上できる。
〈実施形態3の変形例〉
上記実施形態3の加熱用熱交換器(74)を以下のように配置しても良い。
図6に示す例では、加熱用熱交換器(74)が、油送り管(43)と圧縮機(32)の吐出配管とに跨るように配置されている。つまり、加熱用熱交換器(74)では、油送り管(43)を流れる流体と、圧縮機(32)の吐出冷媒とが熱交換する。この例において、その他の構成及び油送り管(43)の開度制御は、上記実施形態3と同様となっている。
この例の加熱用熱交換器(74)では、油送り管(43)を流れる流体が、圧縮機(32)の吐出側の高温冷媒によって加熱されるため、上記実施形態3と比較して流体の加熱量が増す。このため、油送り管(43)を油が流通している場合と、液冷媒が流通している場合とで、温度センサ(73)で検出される温度の差がより顕著となる。従って、この例では、油送り管(43)への液冷媒の侵入を一層確実に検出することができる。
また、図7に示す例の冷媒回路(11)には、圧縮機(32)の吐出側に高圧側油分離器(27)が設けられている。高圧側油分離器(27)は、圧縮機(32)の吐出冷媒から油を分離するものである。また、この例の冷媒回路(11)には、一端が高圧側油分離器(27)の底部に接続し、他端が圧縮機(32)の吸入側に繋がる油戻し管(45)が設けられている。油戻し管(45)は、高圧側油分離器(27)で分離した油を圧縮機(32)の吸入側へ戻すための油戻し通路を構成している。そして、加熱用熱交換器(74)は、油送り管(43)と油戻し管(45)に跨るように配置されている。つまり、加熱用熱交換器(74)では、油送り管(43)を流れる流体と、油戻し管(45)を流れる油とが熱交換する。この例において、その他の構成及び油送り管(43)の開度制御は、上記実施形態3と同様となっている。
この例の加熱用熱交換器(74)では、油送り管(43)を流れる流体が、油戻し管(45)を流れる高温の油によって加熱されるため、上記実施形態3と比較して流体の加熱量が増す。このため、油送り管(43)を油が流通している場合と、液冷媒が流通している場合とで、温度センサ(73)で検出される温度の差がより顕著となる。従って、この例では、油送り管(43)への液冷媒の侵入を一層確実に検出することができる。
また、上記実施形態3の加熱用熱交換器(74)に代わってヒータ等の他の加熱手段を用いて、油送り管(43)を流れる流体を加熱しても良い。
《発明の実施形態4》
実施形態4に係る空気調和装置(10)は、油送り管(43)において、上記各実施形態の開閉弁(70)に代わって冷媒流通制御手段としてのキャピラリーチューブ(75)を設けるようにしたものである。従って、実施形態4では、開閉弁(70)を制御するための制御部(80)も設けられていない。実施形態4のキャピラリーチューブ(75)は、油送り管(43)を流通する流体に対して所定の抵抗を付与する。このため、油分離器(22)内の油量が減少して油送り管(43)内に液冷媒が侵入しても、油送り管(43)での液冷媒の流通がキャピラリーチューブ(75)によって制限される。従って、実施形態4では、比較的単純な構造により、油分離器(22)内の液冷媒が圧縮機(32)の吸入側へ送られてしまうのを抑制することができる。
《発明の実施形態5》
実施形態5に係る空気調和装置(10)は、上記実施形態1の各フロートスイッチ(71,72)を省略しながらも、油分離器(22)内の油を圧縮機(32)へ適宜戻すように開閉弁(70)を制御するものである。
具体的には、図9に示す実施形態5の空気調和装置(10)では、上記実施形態1と同様の冷媒回路(11)を有し、油分離器(22)の油溜まり(40b)と、圧縮機(32)の吸入側の配管(吸入管(32a))とが、油送り管(43)を介して互いに接続されている。油送り管(43)には、開閉自在な開閉弁(70)が設けられている。開閉弁(70)は、開放状態において油送り管(43)よりも流路面積が小さくなっており、その内部の流路を通過する流体を絞り込んで抵抗を付与するように構成されている。つまり、開閉弁(70)は、油送り管(43)を流れる流体を減圧する減圧機構を兼ねている。
実施形態5の冷媒回路(11)には、圧縮機(32)の吸入側の冷媒過熱度を検出するための過熱度検出手段(90)が設けられている。具体的に、過熱度検出手段(90)は、圧縮機(32)の吸入管(32a)を流れる冷媒の温度を検出する吸入冷媒温度センサ(91)と、圧縮機(32)の吸入側(低圧側)の冷媒の圧力を検出する低圧圧力センサ(92)とを有している。即ち、過熱度検出手段(90)では、低圧圧力センサ(92)で検出した低圧の圧力に相当する飽和温度と、上記吸入冷媒温度センサ(91)で検出した吸入冷媒温度との差から、圧縮機(32)の吸入側の冷媒過熱度Tshが導出される。
実施形態5の制御部(80)は、開閉弁(70)の開閉制御を行う弁制御手段を構成している。ここで、本実施形態では、上記過熱度検出手段(90)が、開閉弁(70)の開放時における油分離器(22)から油送り管(43)への侵入を検出する冷媒検出手段を構成している。即ち、本実施形態の制御部(80)では、開閉弁(70)が開放された後に、圧縮機(32)の吸入側の冷媒過熱度Tshに基づいて開閉弁(70)を閉鎖すべきか否かの判定が行われる。より詳細には、制御部(80)には、所定時間における所定の温度変化量ΔTstdが設定されており、開閉弁(70)の開放時において、所定時間における冷媒過熱度の変化量ΔTshがΔTstdを越える場合に、開閉弁(70)が閉鎖される。この点について、図10を参照しながら詳細に説明する。
開閉弁(70)が時点tonより開放状態となると、油分離器(22)内の油が油送り管(43)へ流出する。ここで、油が開閉弁(70)を通過すると、油が減圧することで油送り管(43)における開閉弁(70)の下流側の流体温度T'が若干低くなる。これに対し、油分離器(22)内の油が油送り管(43)を通じて吸入管(32a)へ流出しても、過熱度検出手段(90)で検出される冷媒過熱度Tshはほとんど変化しない。つまり、冷媒回路(11)の冷媒過熱度Tshは、減圧後の油の影響をほとんど受けずに若干小さくなるだけである。
一方、油分離器(22)内の油が無くなって液冷媒が油送り管(43)へ流出すると、液冷媒は開閉弁(70)で減圧されることで、油よりも低温にまで冷やされる。すると、冷媒回路(11)の冷媒過熱度Tshは、油送り管(43)を通じて吸入管(32a)へ流出する液冷媒の影響を受けて急激に低下する。そして、所定時間における冷媒過熱度の変化量ΔTshが、基準となる変化量ΔTstdを越えると、制御部(80)は、液冷媒が油送り管(43)へ侵入していると判断して、開閉弁(70)を閉鎖する(時点toff)。その結果、油分離器(22)からの液冷媒が圧縮機(32)へ多量に吸入されることが未然に回避され、その後には油分離器(22)内に徐々に油が溜まっていくことになる。
以上のように、本実施形態では、圧縮機(32)の吸入側の冷媒過熱度の温度変化に基づいて、油分離器(22)から油送り管(43)への液冷媒の侵入を検出しているので、液冷媒の侵入を一層確実に検出でき、且つ冷媒過熱度を把握するためのセンサ以外に別途センサを設ける必要もない。即ち、本実施形態では、センサ等の部品点数を増加することなく、油分離器(22)から油送り管(43)への液冷媒の侵入を容易且つ確実に検出することができる。
加えて、本実施形態の制御部(80)には、閉鎖時間タイマ(81)と、開放時間カウンタ(82)と、油流量推定部(83)とが設けられている。閉鎖時間タイマ(81)には、開閉弁(70)を閉鎖してから開放させるまでの時間(閉鎖時間tc)が設定されている。即ち、制御部(80)は、予め設定された閉鎖時間tcが経過する毎に開閉弁(70)を一時的に開放させるように構成されている。なお、この閉鎖時間tcの初期値としては、圧縮機(32)の通常運転時における油上がり量等に基づいて予め実験的に求めた時間が設定されている。
開放時間カウンタ(82)は、開閉弁(70)が開放されてから閉鎖されるまでの時間を随時計測するように構成されている。つまり、開放時間カウンタ(82)は、図10に示すように、時刻ton時に開閉弁(70)が開放されてから、冷媒過熱度の変化量ΔTshがΔTstdを越えて時刻toff時に開閉弁(70)が閉鎖されるまでの間の時間(Δto)を適宜計測して記憶するように構成されている。
また、上述の油流量推定部(83)は、開閉弁(70)の開放時において、油分離器(22)から油送り管(43)へ排出される理論上の油の流量(排出流量W)を推定/算出するように構成されている。ここで、上記排出流量W[m3/s]は、油の体積流量であり、例えば以下の式により算出される。
ここで、上記(1)式のCvは、流量係数であり、例えば油の温度Toとの関係式(Cv=f(To))で得ることができる。上記(1)式のAoは、開閉弁(70)の流路断面積[m2]である。上記(1)式のΔPは、冷媒回路(11)の中間圧力Pmと低圧圧力Plとの差圧である。ここで、Pmは、油分離器(22)内に作用する圧力であり、換言すると冷媒回路(11)の中間圧力[Pa]である。従って、冷媒回路(11)で中間圧が作用するライン(例えば油分離器(22)の流入管(41)等)に圧力センサを設けることで、この中間圧力Pmを検出することができる。また、上記Plは、冷媒回路(11)の低圧圧力[Pa]であり、例えば上述した低圧圧力センサ(92)で検出することができる。上記(1)式のρは、油の密度[kg/m3]である。
上記(1)式により、油流量推定部(83)は、冷媒回路(11)の中間圧力Pmや低圧圧力Plの変化に対応するようにして、開閉弁(70)の開放時における油分離器(22)の排出流量Wを算出するように構成されている。なお、上記(1)式を簡略化して、以下の(2)式を用いて排出流量Wを算出しても良い。
更に、上記の(1)(2)式以外の理論式や実験式を用いて排出流量Wを算出しても良いし、他のパラメータ(例えば油の粘度等)を考慮して排出流量Wを求めるようにしても良い。
実施形態5の制御部(80)は、上記開放時間カウンタ(82)で計測した開放時間Δto
と、この開放時間Δtoの期間中における排出流量Wとに応じて、開閉弁(70)の閉鎖時間tcを補正するように構成されており、これにより、開閉弁(70)の閉鎖時において、油分離器(22)内に溜まり込む油量が、最適な量(即ち、基準となる油貯留量Vmax)に近づくように制御される。
具体的には、制御部(80)には、図9に示すように、油分離器(22)の上限位置Hと下限位置Lとの間に貯留される油の体積量(上述の基準の油貯留量Vmax)が設定されている。そして、制御部(80)は、このVmaxを排出流量Wで除することで、理論開放時間Δtoiを算出する。更に、制御部(80)は、この理論開放時間Δtoiと、対応する期間における開放時間Δtoとを比較し、開放時間Δtoが理論開放時間Δtoiよりも短い場合に、閉鎖時間Δtcを長くする補正を行い、開放時間Δtoが理論開放時間Δtoiよりも長い場合に、閉鎖時間Δtcを短くする補正を行う。このような閉鎖時間tcの補正動作について、図11を参照しながら更に詳細に説明する。
上述のように、本実施形態の制御部(80)では、閉鎖時間タイマ(81)を用いて開閉弁(70)の開放動作を制御している。これにより、例えば上記実施形態1のように、上限フロートスイッチ(72)を用いることなく、油分離器(22)内の油を定期的に排出することができ、装置構造の簡素化を図ることができる。一方、油分離器(22)内に溜まり込む油の流量は、圧縮機(32)の油上がり量等に応じて変化するため、上記の閉鎖時間タイマ(81)によるタイマ制御だけでは、油分離器(22)内に適切な量(即ち、上記Vmax)の油を溜めることができない。従って、油分離器(22)内に溜まる油量がVmaxに至っていないにも拘わらず、開閉弁(70)が開放されてしまい開閉動作の頻度が多くなる虞が生ずる。また、油分離器(22)内に溜まる油量がVmaxよりも過剰となってしまい、油分離器(22)内の油が流出管(44)へ流出してしまう虞も生ずる。そこで、本実施形態では、このような不具合を回避すべく、油上がり量の変化に対応するように閉鎖時間Δtcを補正することで、油分離器(22)内に溜まる油量をVmaxに近づけるようにしている。
具体的には、まず制御部(80)が、時点toff1に開閉弁(70)を閉鎖状態にすると、油分離器(22)からの油の排出動作が完了し、油分離器(22)内に徐々に油が溜まっていく。このような開閉弁(70)の閉鎖状態は、予め設定された閉鎖時間Δtc(Δtck)が完了するまで継続される。ここで、例えば図11(A)に示すように、圧縮機(32)の油上がり量が標準的な油上がり量である場合には、開閉弁(70)の開放直前(時点ton1)に、油分離器(22)の油面高さがちょうど上限位置と一致することになる。つまり、この場合には、閉鎖時間Δtckの経過時に油分離器(22)内にVmaxが溜まり込むことになる。
図11(A)に示すような場合には、次に開閉弁(70)を時点toff2時に閉鎖してから時点ton2時に開放させるまでの閉鎖時間Δtck+1を前回の閉鎖時間Δtckと同じ時間としても、油分離器(22)内に基準の油貯留量Vmaxの油を溜めることができるので、次の閉鎖時間Δtck+1の補正は行われない。
具体的には、時点ton1で開閉弁(70)が開放された後には、図10に示すようにして、冷媒過熱度の変化量ΔTshが基準変化量ΔTstdを越える時点(時点toff2)まで開閉弁(70)が閉鎖されず、この間に要した時間が開放時間Δtoとして開放時間カウンタ(82)に計測/記憶される。同時に、油流量推定部(83)は、この間(Δtoの期間中)において、冷媒回路(11)の差圧ΔP等に基づいて、上述の式により上記排出流量Wを算出する。次に、制御部(80)は、基準油貯留量Vmaxを排出流量Wで除することで、油分離器(22)内にVmaxの油が溜まっていた場合に、このVmaxの油を全量排出するのに要する開閉弁(70)の開放時間(即ち、理論開放時間Δtoi)を算出する。そして、制御部(80)は、次に開閉弁(70)が閉鎖された後の閉鎖時間Δtck+1を以下のような式により補正する。
Δtck+1=Δtck×(Δtoi/Δto)・・・(3)
即ち、制御部(80)は、前回の閉鎖時間Δtckに対して、理論開放時間Δtoiを実際の計測した開放時間Δtoで除した値を補正係数として乗ずることで、次の閉鎖時間Δtck+1を補正するようにしている。
ここで、図11(A)に示すように、当初の閉鎖時間Δtckの経過時において油分離器(22)内にVmaxの油が溜まっていたとすると、理論開放時間Δtoiと、実際の開放時間Δtoとは略一致する。従って、この場合には、補正係数(Δtoi/Δto)=1となり、次の閉鎖時間Δtck+1が補正されない。その結果、次の閉鎖時間Δtck+1の期間内についても、油上がり量が急激に変化しない限り、油分離器(22)内に基準の油貯留量Vmaxの油を溜めることができる。
次に、例えば図11(B)に示すように、圧縮機(32)の油上がり量が標準的な油上がり量よりも少ない場合には、開閉弁(70)の開放直前(時点ton1)に、油分離器(22)の油面高さが上限高さよりも低い位置となる。つまり、この場合には、閉鎖時間Δtcの経過時における油分離器(22)内の油の貯留量がVmaxよりも不足していることになる。
図11(B)に示すような場合には、次に開閉弁(70)を閉鎖した際の閉鎖時間Δtck+1を前回の閉鎖時間Δtckと同じ時間にしても、油分離器(22)内に基準の油貯留量Vmaxの油を溜めることができない。そこで、制御部(80)は、次の閉鎖時間Δtck+1を前回の閉鎖時間Δtckよりも長くするように補正を行う。
具体的には、時点ton1で開閉弁(70)が開放された後には、上記と同様にして、開閉弁(70)の実際の開放時間Δtoが計測/記憶される。同時に、油流量推定部(83)は、この間(Δtoの期間中)において、冷媒回路(11)の差圧ΔP等に基づいて、上述の式により上記排出流量Wを算出する。次に、制御部(80)は、基準油貯留量Vmaxを排出流量Wで除することで、油分離器(22)内にVmaxの油が溜まっていた場合に、このVmaxの油を全量排出するのに要する開閉弁(70)の開放時間(即ち、理論開放時間Δtoi)を算出する。そして、制御部(80)は、次に開閉弁(70)が閉鎖された後の閉鎖時間Δtck+1を上記(3)式(Δtck+1=Δtck×(Δtoi/Δto))により算出する。
ここで、図11(B)に示すように、当初の閉鎖時間Δtckの経過時において油分離器(22)内の油量がVmaxよりも少ない場合には、実際の開放時間Δtoが理論開放時間Δtoiより短くなる。従って、この場合には、補正係数(Δtoi/Δto)>1となり、次の閉鎖時間Δtck+1が長期化されるように補正がなされる。その結果、次の閉鎖時間Δtck+1の期間内では、油分離器(22)内に溜まり込む油量がVmaxに近づくように増大変化する。
次に、例えば図11(C)に示すように、圧縮機(32)の油上がり量が標準的な油上がり量よりも多い場合には、開閉弁(70)の開放直前(時点ton1)に、油分離器(22)の油面高さが上限高さよりも高い位置となる。つまり、この場合には、閉鎖時間Δtcの経過時における油分離器(22)内の油の貯留量がVmaxより多くなっている。
図11(C)に示すような場合には、次に開閉弁(70)を閉鎖した際の閉鎖時間Δtck+1を前回の閉鎖時間Δtckと同じ時間にすると、油分離器(22)内の油量が基準の油貯留量Vmaxを越えてしまう。そこで、制御部(80)は、次の閉鎖時間Δtck+1を前回の閉鎖時間Δtckよりも短くするように補正を行う。
具体的には、時点ton1で開閉弁(70)が開放された後には、上記と同様にして、開閉弁(70)の実際の開放時間Δtoが計測/記憶される。同時に、油流量推定部(83)は、この間(Δtoの期間中)において、冷媒回路(11)の差圧ΔP等に基づいて、上述の式により上記排出流量Wを算出する。次に、制御部(80)は、基準油貯留量Vmaxを排出流量Wで除することで、油分離器(22)内にVmaxの油が溜まっていた場合に、このVmaxの油を全量排出するのに要する開閉弁(70)の開放時間(即ち、理論開放時間Δtoi)を算出する。そして、制御部(80)は、次に開閉弁(70)が閉鎖された後の閉鎖時間Δtck+1を上記(3)式(Δtck+1=Δtck×(Δtoi/Δto))により算出する。
ここで、図11(C)に示すように、当初の閉鎖時間Δtckの経過時において油分離器(22)内の油量がVmaxよりも多い場合には、実際の開放時間Δtoが理論開放時間Δtoiより長くなる。従って、この場合には、補正係数(Δtoi/Δto)<1となり、次の閉鎖時間Δtck+1が短期化されるように補正がなされる。その結果、次の閉鎖時間Δtck+1の期間内では、油分離器(22)内に溜まり込む油量がVmaxに近づくように減少変化する。
以上のように、本実施形態では、閉鎖時間タイマ(81)を用いて開閉弁(70)の開放動作を制御すると同時に、開放時間Δtoや排出流量Wに基づいて、閉鎖時間Δtcを適宜補正するようにしている。これにより、本実施形態では、油上がり量等が変動したとしても、開閉弁(70)の閉鎖時において油の貯留量を基準となる油貯留量Vmaxに近づけることができる。従って、油の貯留量がVmaxに至っていないに拘わらず、開閉弁(70)が開放されることを防止でき、開閉弁(70)の開閉動作が無駄に多くなって開閉弁(70)の機械的な寿命が短くなってしまうのを回避できる。また、油の貯留量がVmaxを越えてしまうことで、油分離器(22)の油分離効率が低下してしまうことを防止でき、油が流出管(44)へ流出してしまうことも回避できる。その結果、この空気調和装置(10)の信頼性の向上を図ることができる。
なお、本実施形態では、圧縮機(32)の吸入過熱度に基づいて、油分離器(22)から油送り管(43)への液冷媒の侵入を検出するようにしているが、これに代わって他の実施形態で述べた他の冷媒検出手段で、これを検出しても良い。この場合にも、図11に示すような閉鎖時間Δtcの補正を同様に行うことができる。
《その他の実施形態》
上記各実施形態については、以下のような構成としてもよい。
図12に示すように、複数の圧縮機(32a,32b)を備え、二段圧縮式の冷凍サイクルを行う冷凍装置(10)に本発明を適用するようにしても良い。図9の例では、駆動軸(35)の下端側寄りに低段側圧縮機(32a)が設けられ、低段側圧縮機(32a)の上側に高段側圧縮機(32b)が設けられている。また、この空気調和装置(10)では、低圧の冷媒が低段側圧縮機(32a)に吸入されて中間圧まで圧縮された後、この冷媒が更に高段側圧縮機(32b)で圧縮されて高圧となる。ガスインジェクション管(44)の流出端は、低段側圧縮機(32a)と吐出側と高段側圧縮機(32b)の間の中間圧配管に接続されている。更に、油送り管(43)は、油分離器(22)の底部と低段側圧縮機(32a)の吸入側とを繋いでいる。この例においても、油送り管(43)の開閉弁(70)を実施形態1と同様にして制御することで、液冷媒が低段側圧縮機(32a)の吸入側へ送られてしまうことを回避できる。なお、このような二段圧縮式冷凍サイクルを行う空気調和装置(10)に上記実施形態2〜4の冷媒流通制限手段を適用しても良いのは勿論のことである。
また、上記各実施形態では、油送り管(43)の開度を調節するための開度調節機構として、電磁弁から成る開閉弁(70)を用いている。しかしながら、この開度調節機構として開度の微調節が可能な流量調整弁(膨張弁)を用いるようにしても良い。この場合には、油分離器(22)内の油量が減少する、あるいは液面高さが低くなると、流量調整弁の開度を小さくする、あるいは全閉とするように制御する。また、油分離器(22)内の油量が増大する、あるいは液面高さが高くなると、流量調整弁の開度を大きくする、あるいは全開とするように制御する。
また、上記各実施形態では、複数の室内ユニット(50a,50b,50c)を備えた、マルチ式の冷凍装置に本発明を適用しているが、1台の室内ユニットと1台の室外ユニットとから成る、いわゆるペア式の冷凍装置に本発明を適用しても良い。また、冷媒回路(11)に充填される冷媒として、二酸化炭素以外の他の冷媒を用いるようにしても良い。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以下、本発明の前提となる参考形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《参考形態》
参考形態に係る冷凍装置は、室内の冷房や暖房が可能な空気調和装置(10)を構成するものである。図1に示すように、空気調和装置(10)は、1台の室外ユニット(20)と3台の室内ユニット(50a,50b,50c)とを備えている。なお、室内ユニット(50a,50b,50c)の台数は単なる一例であり、これに限るものではない。
空気調和装置(10)は、冷媒回路(11)を備えている。この冷媒回路(11)は、二酸化炭素(CO2)が冷媒として充填された閉回路である。冷媒回路(11)は、1つの室外回路(12)と、3つの室内回路(15a,15b,15c)とを備えている。これらの室内回路(15a,15b,15c)は、第1連絡管(16)及び第2連絡管(17)によって室外回路(12)に並列に接続されている。具体的に、第1連絡管(16)は、一端が室外回路(12)の第1閉鎖弁(18)に接続され、他端が3方に分岐して各室内回路(15a,15b,15c)の液側端に接続されている。第2連絡管(17)は、一端が室外回路(12)の第2閉鎖弁(19)に接続され、他端が3方に分岐して各室内回路(15a,15b,15c)のガス側端に接続されている。
各室内回路(15a,15b,15c)は、各室内ユニット(50a,50b,50c)に1つずつ収容されている。各室内回路(15a,15b,15c)には、そのガス側端から液側端へ向かって順に、室内熱交換器(51a,51b,51c)と、室内膨張弁(52a,52b,52c)とが設けられている。各室内ユニット(50a,50b,50c)には、各室内熱交換器(51a,51b,51c)に室内空気を送るための室内ファンが設けられている(図示省略)。
各室内熱交換器(51a,51b,51c)は、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器を構成している。各室内熱交換器(51a,51b,51c)へは、室内ファンによって室内空気が供給される。各室内熱交換器(51a,51b,51c)では、室内空気と冷媒との間で熱交換が行われる。また、各室内膨張弁(52a,52b,52c)は、開度可変の電子膨張弁によって構成されている。
室外回路(12)は、室外ユニット(20)に収容されている。室外回路(12)には、圧縮・膨張ユニット(30)、室外熱交換器(21)、油分離器(22)、室外膨張弁(23)、内部熱交換器(24)、ブリッジ回路(25)、及び四路切換弁(26)が設けられている。室外ユニット(20)には、室外熱交換器(21)に室外空気を送るための室外ファンが設けられている(図示省略)。
圧縮・膨張ユニット(30)は、縦長で円筒形の密閉容器であるケーシング(31)を備えている。ケーシング(31)内には、圧縮機(32)と膨張機(33)と電動機(34)とが収容されている。ケーシング(31)内では、圧縮機(32)と電動機(34)と膨張機(33)とが下から上へ向かって順に配置され、1本の駆動軸(35)によって互いに連結されている
圧縮機(32)及び膨張機(33)は、何れも容積型の流体機械(揺動ピストン型のロータリ流体機械、ローリングピストン型のロータリ流体機械、スクロール流体機械等)によって構成されている。圧縮機(32)は、吸入した冷媒(CO2)をその臨界圧力以上にまで圧縮する。膨張機(33)は、流入した冷媒(CO2)を膨張させて動力(膨張動力)を回収する。圧縮機(32)は、膨張機(33)で回収された動力と、通電状態の電動機(34)で発生する動力との両方によって回転駆動される。電動機(34)には、図外のインバータから所定周波数の交流電力が供給される。圧縮機(32)は、電動機(34)へ供給される電力の周波数を変更することで、その容量が可変に構成されている。圧縮機(32)と膨張機(33)とは、常に同じ回転速度で回転する。
ケーシング(31)の底部には、圧縮機(32)や膨張機(33)の各摺動部を潤滑するための油(冷凍機油)が溜まり込んでいる。本参考形態では、この油としてポリアルキレングリコールが用いられている。しかしながら、この冷凍機油は、少なくとも−20℃以上の温度域で冷媒と分離可能で、且つその温度域で冷媒よりも密度が大きくなるものであれば他のものであっても良い。具体的に、この油としては、ポリビニルエーテル、ポリオールエステル、ポリカーボネート、アルキルベンゼン等が挙げられる。
駆動軸(35)の下端には、ケーシング(31)の底部に溜まった油を汲み上げるための油ポンプ(36)が設けられている。油ポンプ(36)は、駆動軸(35)と共に回転し、遠心力によって油を汲み上げる遠心式のポンプを構成している。油ポンプ(36)によって汲み上げられた油は、駆動軸(35)の油通路(図示省略)を経由して、圧縮機(32)や膨張機(33)へ供給される。圧縮機(32)や膨張機(33)へ供給された各油は、各摺動部の潤滑に利用され、その後に冷媒と共に冷媒回路(11)へ流出する。
室外熱交換器(21)は、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器として構成されている。室外熱交換器(21)へは、室外ファンによって室外空気が供給される。室外熱交換器(21)では、室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室外熱交換器(21)は、一端が四路切換弁(26)の第3のポートに接続され、他端が室外膨張弁(23)を介してブリッジ回路(25)に接続されている。室外膨張弁(23)は、開度可変な電子膨張弁で構成されている。
油分離器(22)は、膨張機(33)から流出した気液二相冷媒から油を分離するためのものである。油分離器(22)は、縦長で円筒状の密閉容器である。具体的に、油分離器(22)は、筒状の周壁部(22a)と、周壁部(22a)の下端を閉塞する底壁部(22b)と、周壁部(22a)の上端を閉塞する頂壁部(22c)とが一体に形成されて構成されている。
油分離器(22)の周壁部(22a)には、流入管(41)が接続されている。流入管(41)は、一端が周壁部(22a)を接線方向に貫通して油分離器(22)の内部に開口している。流入管(41)の一端の開口は、水平方向を向いている。また、流入管(41)の一端の開口高さは、油分離器(22)のやや頂壁部(22c)側寄りに位置している。流入管(41)の他端は、膨張機(33)の流出口と繋がっている。
油分離器(22)の底壁部(22b)には、流出管(42)が接続されている。流出管(42)は、一端が底壁部(22b)を鉛直方向に貫通して油分離器(22)の内部に開口している。流出管(42)の一端の開口は、鉛直上方を向いている。また、流出管(42)の一端の開口高さは、流入管(41)の一端よりも下側に位置している。流出管(42)の他端は、内部熱交換器(24)を介してブリッジ回路(25)と繋がっている。
油分離器(22)の底壁部(22b)には、油送り通路としての油送り管(43)も接続されている。油送り管(43)は、一端が底壁部(22b)に開口し、油分離器(22)の内部に臨んでいる。油送り管(43)の一端の開口高さは、流出管(42)の一端よりも下側に位置し、底壁部(22b)の内面(底面)と略一致している。油送り管(43)の他端は、圧縮機(32)の吸入側と繋がっている。
油分離器(22)の頂壁部(22c)には、ガスインジェクション通路としてのガスインジェクション管(44)が接続されている。ガスインジェクション管(44)は、一端が頂壁部(22c)に開口し、油分離器(22)の内部に臨んでいる。ガスインジェクション管(44)の一端の開口高さは、流入管(41)の一端よりも上側に位置し、頂壁部(22c)の内面(天面)と略一致している。ガスインジェクション管(44)の他端は、内部熱交換器(24)を介して圧縮機(32)の吸入側と繋がっている。また、ガスインジェクション管(44)には、ガス流量調節機構としてのガスインジェクション弁(44a)が、内部熱交換器(24)の流入側に設けられている。ガスインジェクション弁(44a)は、開度が可変の電子膨張弁によって構成されている。
油分離器(22)は、膨張機(33)を流出した気液二相冷媒から油を分離すると同時に、気液二相冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離するように構成されている。つまり、油分離器(22)へ流入した気液二相冷媒中には、密度が大きいものから順に、油(冷凍機油)、液冷媒、ガス冷媒が混在している。このため、油分離器(22)では、最も密度が大きい油が底部に溜まり込んで油溜まり(40b)を形成し、最も密度が小さいガス冷媒が頂部に溜まり込んでガス溜まり(40c)を形成する。更に、油分離器(22)では、油溜まり(40b)とガス溜まり(40c)の間に、液冷媒が溜まり込んで液溜まり(40a)を形成する。油分離器(22)では、原則として、流出管(42)が液溜まり(40a)に臨み、油送り管(43)が油溜まり(40b)に臨み、流入管(41)及びガスインジェクション管(44)がガス溜まり(40c)に臨んでいる。
内部熱交換器(24)は、流出管(42)とガスインジェクション管(44)とに跨るように設けられている。内部熱交換器(24)は、流出管(42)の途中に形成される放熱部(24a)と、ガスインジェクション管(44)の途中に形成される吸熱部(24b)とを有している。内部熱交換器(24)は、放熱部(24a)を流通する液冷媒と、吸熱部(24b)を流通するガス冷媒とを熱交換させる。
ブリッジ回路(25)は、4つの逆止弁(CV-1〜CV-4)をブリッジ状に接続したものである。このブリッジ回路(25)における第1逆止弁(CV-1)及び第4逆止弁(CV-4)の流入側には、流出管(42)が接続されている。第2逆止弁(CV-2)及び第3逆止弁(CV-3)の流出側は、膨張機(33)の流入側に接続されている。第1逆止弁(CV-1)の流出側及び第2逆止弁(CV-2)の流入側は、第1閉鎖弁(18)に接続されている。第3逆止弁(CV-3)の流入側及び第4逆止弁(CV-4)の流出側は、室外膨張弁(23)に接続されている。各逆止弁(CV-1,CV-2,CV-3,CV-4)は、図1に矢印で示す方向への冷媒の流通のみを許容し、これとは逆の方向への冷媒の流通を禁止している。
四路切換弁(26)の第1のポートは、圧縮機(32)の吸入側に接続されている。第2のポートは、第2閉鎖弁(19)に接続されている。第3のポートは、室外熱交換器(44)に接続されている。第4のポートは、圧縮機(32)の吐出側に接続されている。四路切換弁(26)は、第1のポートと第2のポートとを連通させると同時に第3のポートと第4のポートとを連通させる状態(図1に実線で示す第1状態)と、第1のポートと第3のポートとが連通させると同時に第2のポートと第4のポートとを連通させる状態(図1に破線で示す第2状態)とが切り換え可能に構成されている。
図2に示すように、本参考形態の空気調和装置(10)は、開閉弁(70)と、2つのフロートスイッチ(71,72)と、制御部(80)とを備えている。開閉弁(70)は、油送り管(43)に設けられている。開閉弁(70)は、油送り管(43)の開度を調節するための開度調節機構を構成している。具体的に、開閉弁(70)は、開閉自在な電磁弁で構成されている。つまり、開閉弁(70)は、油送り管(43)を開放する状態と、閉鎖する状態とに切換可能となっている。また、開放状態の開閉弁(70)は、油送り管(43)よりも流路面積が小さくなっており、通過する流体を絞り込んで抵抗を付与するように構成されている。つまり、開閉弁(70)は、油送り管(43)を流れる流体を減圧する減圧機構を兼ねている。
2つのフロートスイッチ(71,72)は、油分離器(22)の内部に設けられている。各フロートスイッチ(71,72)は、油分離器(22)内の油面高さを検知する油面検知手段であって、ひいては油分離器(22)内の油量を検出する油量検出手段を構成している。具体的には、油分離器(22)には、底壁部(22b)寄りに下限フロートスイッチ(71)が設けられ、下限フロートスイッチ(71)の上側に上限フロートスイッチ(72)が設けられている。各フロートスイッチ(71,72)は、縦長の筒状のガイド部(71a,72a)と、各ガイド部(71a,72a)の内部に保持される球状のフロート部(71b,72b)とを有している。各ガイド部(71a,72a)内には、フロート部(71b,72b)が鉛直方向に変位自在に保持されている。また、各フロート部(71b,72b)は、油分離器(22)内の油よりも密度が小さく、且つ液冷媒よりも密度が大きくなるように構成されている。つまり、各フロート部(71b,72b)は、油分離器(22)内において、油中では浮遊するが液冷媒中では浮遊しない。
下限フロートスイッチ(71)は、油分離器(22)内の油面高さが下限レベルLよりも低くなっているか否かを検知するものである。下限レベルLは、油分離器(22)の底面より僅かに高い位置に設定されている。上限フロートスイッチ(72)は、油分離器(22)の油面高さが上限レベルHより高くなっているか否かを検知するものである。上限レベルHは、下限レベルLよりも高く、且つ流出管(42)の開口高さ以下の位置に設定されている。本参考形態では、下限レベルLと、流出管(42)の開口高さとがほぼ一致している。
制御部(80)は、下限フロートスイッチ(71)及び上限フロートスイッチ(72)の検知信号を入力し、この検知信号に応じて開閉弁(70)の開閉制御を行うものである。開閉弁(70)と下限フロートスイッチ(71)と制御部(80)とは、油分離器(22)内の液冷媒が油送り管(43)を通じて圧縮機(32)へ吸入されるのを防ぐために、油送り管(43)を流通する流体の流量を制限する冷媒流通制限手段を構成している。また、開閉弁(70)と上限フロートスイッチ(72)と制御部(80)とは、油分離器(22)内の油が、流出管(42)を流通するのを制限する油流通制限手段を構成している。このような制御部(80)による油送り管(43)の開度制御動作の詳細は後述する。
−運転動作−
空気調和装置(10)の運転動作について説明する。空気調和装置(10)は、室内を冷房する冷房運転と、室内を暖房する暖房運転とが可能となっている。
《暖房運転》
暖房運転時には、四路切換弁(26)が図1の破線で示す状態に設定される。暖房運転では、各室内膨張弁(52a,52b,52c)の開度が個別に調節され、室外膨張弁(23)の開度も適宜調節される。また、油送り管(43)の開閉弁(70)は原則として開放状態となり、ガスインジェクション弁(44a)の開度が適宜調節される。このような状態で電動機(34)が通電されると、圧縮機(32)が駆動され、冷媒回路(11)で冷媒が循環する。その結果、暖房運転では、各室内熱交換器(51a,51b,51c)が放熱器として機能し、室外熱交換器(21)が蒸発器として機能する冷凍サイクルが行われる。
具体的に、圧縮機(32)からは、臨界圧力よりも高圧となった冷媒が吐出される。この高圧の冷媒は、第2連絡管(17)を経て各室内回路(15a,15b,15c)へ分流する。各室内回路(15a,15b,15c)へ流入した冷媒は、各室内熱交換器(51a,51b,51c)をそれぞれ流れる。各室内熱交換器(51a,51b,51c)では、冷媒が室内空気へ放熱し、これにより室内の暖房が行われる。なお、各室内回路(15a,15b,15c)では、各室内膨張弁(52a,52b,52c)の開度に応じて、各室内熱交換器(51a,51b,51c)の暖房能力が個別に調節される。各室内熱交換器(51a,51b,51c)で放熱した冷媒は、第1連絡管(16)で合流して室外回路(12)へ流入する。
室外回路(12)へ流入した冷媒は、膨張機(33)で中間圧まで減圧される。この際、膨張機(33)の膨張動力が駆動軸(35)の回転動力として回収される。膨張機(33)で減圧された冷媒は、気液二相状態で流入管(41)を流れ、油分離器(22)内へ流入する。この際、油分離器(22)へは、膨張機(33)の各摺動部の潤滑に利用された油も流入する。
油分離器(22)では、油を含む気液二相冷媒が周壁部(22a)の内周面に沿うように旋回する。その結果、冷媒中から油が分離されると共に、気液二相冷媒が液冷媒とガス冷媒とに分離される。その結果、油が油溜まり(40b)に、液冷媒が液溜まり(40a)に、ガス冷媒がガス溜まり(40c)にそれぞれ貯留される。
油分離器(22)の液溜まり(40a)の液冷媒は、流出管(42)へ流出して内部熱交換器(24)を流れる。一方、油分離器(22)のガス溜まり(40c)のガス冷媒は、ガスインジェクション管(44)へ流出する。このガス冷媒は、ガスインジェクション弁(44a)を通過する際に減圧され、内部熱交換器(24)を流れる。内部熱交換器(24)では、放熱部(24a)を流れる液冷媒と、吸熱部(24b)を流れるガス冷媒との間で熱交換が行われる。その結果、放熱部(24a)の液冷媒は、吸熱部(24b)のガス冷媒へ熱を付与して過冷却される。過冷却された液冷媒は、室外膨張弁(23)を通過する際に低圧まで減圧されてから、室外熱交換器(21)へ流入する。室外熱交換器(21)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(21)で蒸発した冷媒は、ガスインジェクション管(44)を流出したガス冷媒と混合されて、圧縮機(32)へ吸入される。
一方、油分離器(22)の油溜まり(40b)に溜まった油は、油送り管(43)へ流入する。この油は、開放状態の開閉弁(70)を通過する際に低圧まで減圧されてから圧縮機(32)へ吸入される。圧縮機(32)へ吸入された油は、圧縮機(32)や膨張機(33)の各摺動部の潤滑に利用される。
《冷房運転》
冷房運転時には、四路切換弁(26)が図1の実線で示す状態に設定される。冷房運転では、各室内膨張弁(52a,52b,52c)の開度が個別に調節され、室外膨張弁(23)が全開状態となる。また、油送り管(43)の開閉弁(70)は原則として開放状態となり、ガスインジェクション弁(44a)の開度が適宜調節される。このような状態で電動機(34)が通電されると、圧縮機(32)が駆動され、冷媒回路(11)で冷媒が循環する。その結果、冷房運転では、各室内熱交換器(51a,51b,51c)が蒸発器として機能し、室外熱交換器(21)が放熱器として機能する冷凍サイクルが行われる。
具体的に、圧縮機(32)からは、臨界圧力よりも高圧となった冷媒が吐出される。この高圧の冷媒は、室外熱交換器(21)で放熱し、膨張機(33)で中間圧まで減圧された後、油分離器(22)へ流入する。油分離器(22)では、油を含む気液二相冷媒が、油と液冷媒とガス冷媒とに分離される。
油分離器(22)から流出管(42)へ流出した冷媒は、内部熱交換器(24)の放熱部(24a)を流れる。一方、油分離器(22)からガスインジェクション管(44)へ流出した冷媒は、ガスインジェクション弁(44a)で減圧された後、内部熱交換器(24)の吸熱部(24b)を流れる。内部熱交換器(24)では、放熱部(24a)の液冷媒が吸熱部(24b)のガス冷媒へ放熱して過冷却される。過冷却後の液冷媒は、第1連絡管(16)を経て各室内回路(15a,15b,15c)へ分流する。
ここで、このように内部熱交換器(24)で液冷媒を過冷却すると、第1連絡管(16)から各室内膨張弁(52a,52b,52c)までの冷媒経路において、液冷媒が気液二相状態に変化してしまうのを抑制できる。即ち、このような冷媒経路の圧力損失が比較的大きい場合には、液冷媒が減圧されて気液二相状態となり易いが、充分に過冷却された液冷媒であれば、減圧されても気液二相状態となりにくい。その結果、例えば液冷媒が気液二相状態に変化してしまう場合には、各室内ユニット(50a,50b,50c)へ供給される液冷媒が偏流してしまうことがあるが、本参考形態の各室内ユニット(50a,50b,50c)へは、液冷媒が均等に供給されることになる。
各室内回路(15a,15b,15c)へ供給された液冷媒は、各室内膨張弁(52a,52b,52c)を通過する際に減圧される。この際、各室内膨張弁(52a,52b,52c)を通過する冷媒は液単相状態であるので、気液二相状態である場合と比較して、各室内膨張弁(52a,52b,52c)での冷媒の通過音が小さくなる。各室内膨張弁(52a,52b,52c)で低圧まで減圧された冷媒は、各室内熱交換器(51a,51b,51c)を流れる。各室内熱交換器(51a,51b,51c)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。その結果、室内空気が冷却されて室内の冷房が行われる。各室内熱交換器(51a,51b,51c)で蒸発した冷媒は、ガスインジェクション管(44)を流出したガス冷媒と混合されて、圧縮機(32)へ吸入される。
一方、油分離器(22)の油溜まり(40b)に溜まった油は、油送り管(43)へ流入する。この油は、開放状態の開閉弁(70)を通過する際に低圧まで減圧されてから圧縮機(32)へ吸入される。圧縮機(32)へ吸入された油は、圧縮機(32)や膨張機(33)の各摺動部の潤滑に利用される。
−油送り管の開度制御動作−
上述のように、空気調和装置(10)の暖房運転や冷房運転では、油分離器(22)の底部に溜まった油を圧縮機(32)の吸入側へ送るようにしている。ところが、油分離器(22)に溜まり込む油の量は、圧縮・膨張ユニット(30)の出力周波数等の各種の運転条件に応じて変動する。このような油分離器(22)内の油量の変動に伴い、油面高さが低くなり過ぎると、油分離器(22)内の液冷媒が油送り管(43)を通じて圧縮機(32)の吸入側へ送られることがある。その結果、例えば冷房運転時において、蒸発器となる各室内熱交換器(51a,51b,51c)へ供給される液冷媒の量が減少してしまい、各室内ユニット(50a,50b,50c)の冷房能力が低下してしまう虞がある。また、圧縮機(32)に液冷媒が吸入されることで、いわゆる液圧縮(液バック)現象が生じ、圧縮機(32)が損傷してしまう虞もある。
一方、油分離器(22)内の油面高さが高くなり過ぎると、油分離器(22)内の油が流出管(42)へ流入してしまうこともある。その結果、例えば冷房運転時において、蒸発器となる各室内熱交換器(51a,51b,51c)の伝熱管に油が付着し、各室内熱交換器(51a,51b,51c)の伝熱性能が低下してしまうこともある。従って、このような場合にも各室内ユニット(50a,50b,50c)の冷房能力が低下してしまう虞がある。そこで、本参考形態の空気調和装置(10)では、このような不具合を解消すべく、以下のような油送り管(43)の開度制御動作を行うようにしている。
例えば冷房運転において、図3(A)に示すように、油分離器(22)内の油面高さが下限レベルLを下回るとする。この場合、下限フロートスイッチ(71)のフロート部(71b)が、油面とともに下限レベルLの下側に変位する。その結果、下限フロートスイッチ(71)からは、制御部(80)へ検知信号が出力される。制御部(80)に検知信号が入力されると、制御部(80)は開閉弁(70)を閉鎖状態とする。その結果、油分離器(22)内の油面高さが低すぎる状態であっても、液冷媒が油送り管(43)を通じて圧縮機(32)へ送られてしまうことが、閉鎖状態の開閉弁(70)によって阻止される。
この状態で冷房運転が継続して行われると、油分離器(22)内の油面高さが徐々に上がっていく。ここで、開閉弁(70)が閉鎖されてから油面高さが下限レベルLより高くなっても、開閉弁(70)の閉鎖状態は保持される。この状態から更に油面高さが高くなり、図3(B)に示すように、油面高さが上限レベルHを越えるとする。この場合、上限フロートスイッチ(72)のフロート部(72b)が、油面とともに上限レベルHの上側に変位する。その結果、上限フロートスイッチ(72)からは、制御部(80)へ検知信号が出力される。制御部(80)に検知信号が入力されると、制御部(80)は開閉弁(70)を開放状態とする。その結果、油分離器(22)内の油は、油送り管(43)を通じて圧縮機(32)へ送られ、油面高さが再び低下していく。このため、流出管(42)へ油が流入してしまうことが未然に回避されるので、各室内熱交換器(51aw,51b,51c)へは液冷媒だけが供給されることになる。
−参考形態の効果−
上記参考形態では、油分離器(22)内の液冷媒が油送り通路(43)を流通するのを冷媒流通制限手段によって制限するようにしている。具体的には、上記参考形態では、油分離器(22)内の油面高さが所定の下限レベルLより低くなると、開閉弁(70)を開放状態としている。その結果、上記参考形態によれば、油分離器(22)内の油面高さが低くなり液冷媒が油送り管(43)に流入し易い条件下において、液冷媒が油送り管(43)を流通するのを速やかに回避することができる。従って、液冷媒が油送り管(43)を通じて圧縮機(32)に吸入されてしまうことを未然に回避できる。このようにすると、油分離器(22)からは、例えば冷房運転時の室内熱交換器(51a,51b,51c)へ充分な量の液冷媒を供給することができる。その結果、室内熱交換器(51a,51b,51c)の冷房能力を充分確保することができる。また、圧縮機(32)へ液冷媒が吸入されてしまうことを回避することで、いわゆる液圧縮現象(液バック現象)による圧縮機(32)の損傷を防止することができる。
また、上記参考形態では、油分離器(22)内の油面高さが所定の上限レベルHより高くなると、開閉弁(70)を開放状態としている。つまり、上記参考形態では、油分離器(22)内の油面高さが高くなり分離後の油が流出管(42)へ流入し易い条件下において、油送り管(43)における油の流通を許容するようにしている。従って、上記参考形態によれば、このような状態から速やかに油分離器(22)内の油面高さを低くできるので、分離後の油が流出管(42)に流入してしまうのを未然に回避できる。その結果、分離後の油が、例えば冷房運転時の室内熱交換器(51a,51b,51c)の伝熱管に付着することを防止でき、このような油の付着に起因して室内熱交換器(51a,51b,51c)の伝熱性能が低下してしまうのも防止できる。
更に、上記参考形態では、油分離器(22)内で気液二相冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、分離後の液単相冷媒を冷房運転時の室内熱交換器(51a,51b,51c)へ供給するようにしている。このため、室内熱交換器(51a,51b,51c)の冷房能力の向上を図ることができる。
ここで、分離後のガス冷媒は、ガスインジェクション管(44)を通じて圧縮機(32)の吸入側に送られるので、油分離器(22)内にガス冷媒が溜まりすぎることがない。その結果、油分離器(22)内での気液分離能力を充分確保できる。また、油分離器(22)にガスインジェクション管(44)を繋ぐと、油分離器(22)内の圧力を低下させることができる。その結果、膨張機(33)の流入側の圧力と、流出側の圧力(油分離器の内圧)との間の差圧が大きくなるので、膨張機(33)で回収できる動力を増大できる。また、ガスインジェクション管(44)にガスインジェクション弁(44a)を設けるようにしたので、このガスインジェクション弁(44a)の開度に応じて圧縮機(32)へ吸入されるガス冷媒の量を調節できる。
更に、ガスインジェクション管(44)でガスインジェクション弁(44a)を通過したガス冷媒と、流出管(42)を流れる液冷媒とを内部熱交換器(24)で熱交換させている。このため、冷房運転時の室内熱交換器(51a,51b,51c)へ送られる冷媒を過冷却でき、室内熱交換器(51a,51b,51c)の冷房能力を更に向上できる。
《発明の実施形態》
実施形態に係る空気調和装置(10)は、上記参考形態の各フロートスイッチ(71,72)を省略しながらも、油分離器(22)内の油を圧縮機(32)へ適宜戻すように開閉弁(70)を制御するものである。
具体的には、図4に示す実施形態の空気調和装置(10)では、上記実施形態と同様の冷媒回路(11)を有し、油分離器(22)の油溜まり(40b)と、圧縮機(32)の吸入側の配管(吸入管(32a))とが、油送り管(43)を介して互いに接続されている。油送り管(43)には、開閉自在な開閉弁(70)が設けられている。開閉弁(70)は、開放状態において油送り管(43)よりも流路面積が小さくなっており、その内部の流路を通過する流体を絞り込んで抵抗を付与するように構成されている。つまり、開閉弁(70)は、油送り管(43)を流れる流体を減圧する減圧機構を兼ねている。
実施形態の冷媒回路(11)には、圧縮機(32)の吸入側の冷媒過熱度を検出するための過熱度検出手段(90)が設けられている。具体的に、過熱度検出手段(90)は、圧縮機(32)の吸入管(32a)を流れる冷媒の温度を検出する吸入冷媒温度センサ(91)と、圧縮機(32)の吸入側(低圧側)の冷媒の圧力を検出する低圧圧力センサ(92)とを有している。即ち、過熱度検出手段(90)では、低圧圧力センサ(92)で検出した低圧の圧力に相当する飽和温度と、上記吸入冷媒温度センサ(91)で検出した吸入冷媒温度との差から、圧縮機(32)の吸入側の冷媒過熱度Tshが導出される。
実施形態の制御部(80)は、開閉弁(70)の開閉制御を行う弁制御手段を構成している。ここで、本実施形態では、上記過熱度検出手段(90)が、開閉弁(70)の開放時における油分離器(22)から油送り管(43)への侵入を検出する冷媒検出手段を構成している。即ち、本実施形態の制御部(80)では、開閉弁(70)が開放された後に、圧縮機(32)の吸入側の冷媒過熱度Tshに基づいて開閉弁(70)を閉鎖すべきか否かの判定が行われる。より詳細には、制御部(80)には、所定時間における所定の温度変化量ΔTstdが設定されており、開閉弁(70)の開放時において、所定時間における冷媒過熱度の変化量ΔTshがΔTstdを越える場合に、開閉弁(70)が閉鎖される。この点について、図5を参照しながら詳細に説明する。
開閉弁(70)が時点tonより開放状態となると、油分離器(22)内の油が油送り管(43)へ流出する。ここで、油が開閉弁(70)を通過すると、油が減圧することで油送り管(43)における開閉弁(70)の下流側の流体温度T'が若干低くなる。これに対し、油分離器(22)内の油が油送り管(43)を通じて吸入管(32a)へ流出しても、過熱度検出手段(90)で検出される冷媒過熱度Tshはほとんど変化しない。つまり、冷媒回路(11)の冷媒過熱度Tshは、減圧後の油の影響をほとんど受けずに若干小さくなるだけである。
一方、油分離器(22)内の油が無くなって液冷媒が油送り管(43)へ流出すると、液冷媒は開閉弁(70)で減圧されることで、油よりも低温にまで冷やされる。すると、冷媒回路(11)の冷媒過熱度Tshは、油送り管(43)を通じて吸入管(32a)へ流出する液冷媒の影響を受けて急激に低下する。そして、所定時間における冷媒過熱度の変化量ΔTshが、基準となる変化量ΔTstdを越えると、制御部(80)は、液冷媒が油送り管(43)へ侵入していると判断して、開閉弁(70)を閉鎖する(時点toff)。その結果、油分離器(22)からの液冷媒が圧縮機(32)へ多量に吸入されることが未然に回避され、その後には油分離器(22)内に徐々に油が溜まっていくことになる。
以上のように、本実施形態では、圧縮機(32)の吸入側の冷媒過熱度の温度変化に基づいて、油分離器(22)から油送り管(43)への液冷媒の侵入を検出しているので、液冷媒の侵入を一層確実に検出でき、且つ冷媒過熱度を把握するためのセンサ以外に別途センサを設ける必要もない。即ち、本実施形態では、センサ等の部品点数を増加することなく、油分離器(22)から油送り管(43)への液冷媒の侵入を容易且つ確実に検出することができる。
加えて、本実施形態の制御部(80)には、閉鎖時間タイマ(81)と、開放時間カウンタ(82)と、油流量推定部(83)とが設けられている。閉鎖時間タイマ(81)には、開閉弁(70)を閉鎖してから開放させるまでの時間(閉鎖時間tc)が設定されている。即ち、制御部(80)は、予め設定された閉鎖時間tcが経過する毎に開閉弁(70)を一時的に開放させるように構成されている。なお、この閉鎖時間tcの初期値としては、圧縮機(32)の通常運転時における油上がり量等に基づいて予め実験的に求めた時間が設定されている。
開放時間カウンタ(82)は、開閉弁(70)が開放されてから閉鎖されるまでの時間を随時計測するように構成されている。つまり、開放時間カウンタ(82)は、図5に示すように、時刻ton時に開閉弁(70)が開放されてから、冷媒過熱度の変化量ΔTshがΔTstdを越えて時刻toff時に開閉弁(70)が閉鎖されるまでの間の時間(Δto)を適宜計測して記憶するように構成されている。
また、上述の油流量推定部(83)は、開閉弁(70)の開放時において、油分離器(22)から油送り管(43)へ排出される理論上の油の流量(排出流量W)を推定/算出するように構成されている。ここで、上記排出流量W[m3/s]は、油の体積流量であり、例えば以下の式により算出される。
ここで、上記(1)式のCvは、流量係数であり、例えば油の温度Toとの関係式(Cv=f(To))で得ることができる。上記(1)式のAoは、開閉弁(70)の流路断面積[m2]である。上記(1)式のΔPは、冷媒回路(11)の中間圧力Pmと低圧圧力Plとの差圧である。ここで、Pmは、油分離器(22)内に作用する圧力であり、換言すると冷媒回路(11)の中間圧力[Pa]である。従って、冷媒回路(11)で中間圧が作用するライン(例えば油分離器(22)の流入管(41)等)に圧力センサを設けることで、この中間圧力Pmを検出することができる。また、上記Plは、冷媒回路(11)の低圧圧力[Pa]であり、例えば上述した低圧圧力センサ(92)で検出することができる。上記(1)式のρは、油の密度[kg/m3]である。
上記(1)式により、油流量推定部(83)は、冷媒回路(11)の中間圧力Pmや低圧圧力Plの変化に対応するようにして、開閉弁(70)の開放時における油分離器(22)の排出流量Wを算出するように構成されている。なお、上記(1)式を簡略化して、以下の(2)式を用いて排出流量Wを算出しても良い。
更に、上記の(1)(2)式以外の理論式や実験式を用いて排出流量Wを算出しても良いし、他のパラメータ(例えば油の粘度等)を考慮して排出流量Wを求めるようにしても良い。
実施形態の制御部(80)は、上記開放時間カウンタ(82)で計測した開放時間Δto
と、この開放時間Δtoの期間中における排出流量Wとに応じて、開閉弁(70)の閉鎖時間tcを補正するように構成されており、これにより、開閉弁(70)の閉鎖時において、油分離器(22)内に溜まり込む油量が、最適な量(即ち、基準となる油貯留量Vmax)に近づくように制御される。
具体的には、制御部(80)には、図4に示すように、油分離器(22)の上限位置Hと下限位置Lとの間に貯留される油の体積量(上述の基準の油貯留量Vmax)が設定されている。そして、制御部(80)は、このVmaxを排出流量Wで除することで、理論開放時間Δtoiを算出する。更に、制御部(80)は、この理論開放時間Δtoiと、対応する期間における開放時間Δtoとを比較し、開放時間Δtoが理論開放時間Δtoiよりも短い場合に、閉鎖時間Δtcを長くする補正を行い、開放時間Δtoが理論開放時間Δtoiよりも長い場合に、閉鎖時間Δtcを短くする補正を行う。このような閉鎖時間tcの補正動作について、図5を参照しながら更に詳細に説明する。
上述のように、本実施形態の制御部(80)では、閉鎖時間タイマ(81)を用いて開閉弁(70)の開放動作を制御している。これにより、例えば上記参考形態のように、上限フロートスイッチ(72)を用いることなく、油分離器(22)内の油を定期的に排出することができ、装置構造の簡素化を図ることができる。一方、油分離器(22)内に溜まり込む油の流量は、圧縮機(32)の油上がり量等に応じて変化するため、上記の閉鎖時間タイマ(81)によるタイマ制御だけでは、油分離器(22)内に適切な量(即ち、上記Vmax)の油を溜めることができない。従って、油分離器(22)内に溜まる油量がVmaxに至っていないにも拘わらず、開閉弁(70)が開放されてしまい開閉動作の頻度が多くなる虞が生ずる。また、油分離器(22)内に溜まる油量がVmaxよりも過剰となってしまい、油分離器(22)内の油が流出管(44)へ流出してしまう虞も生ずる。そこで、本実施形態では、このような不具合を回避すべく、油上がり量の変化に対応するように閉鎖時間Δtcを補正することで、油分離器(22)内に溜まる油量をVmaxに近づけるようにしている。
具体的には、まず制御部(80)が、時点toff1に開閉弁(70)を閉鎖状態にすると、油分離器(22)からの油の排出動作が完了し、油分離器(22)内に徐々に油が溜まっていく。このような開閉弁(70)の閉鎖状態は、予め設定された閉鎖時間Δtc(Δtck)が完了するまで継続される。ここで、例えば図5(A)に示すように、圧縮機(32)の油上がり量が標準的な油上がり量である場合には、開閉弁(70)の開放直前(時点ton1)に、油分離器(22)の油面高さがちょうど上限位置と一致することになる。つまり、この場合には、閉鎖時間Δtckの経過時に油分離器(22)内にVmaxが溜まり込むことになる。
図5(A)に示すような場合には、次に開閉弁(70)を時点toff2時に閉鎖してから時点ton2時に開放させるまでの閉鎖時間Δtck+1を前回の閉鎖時間Δtckと同じ時間としても、油分離器(22)内に基準の油貯留量Vmaxの油を溜めることができるので、次の閉鎖時間Δtck+1の補正は行われない。
具体的には、時点ton1で開閉弁(70)が開放された後には、図5に示すようにして、冷媒過熱度の変化量ΔTshが基準変化量ΔTstdを越える時点(時点toff2)まで開閉弁(70)が閉鎖されず、この間に要した時間が開放時間Δtoとして開放時間カウンタ(82)に計測/記憶される。同時に、油流量推定部(83)は、この間(Δtoの期間中)において、冷媒回路(11)の差圧ΔP等に基づいて、上述の式により上記排出流量Wを算出する。次に、制御部(80)は、基準油貯留量Vmaxを排出流量Wで除することで、油分離器(22)内にVmaxの油が溜まっていた場合に、このVmaxの油を全量排出するのに要する開閉弁(70)の開放時間(即ち、理論開放時間Δtoi)を算出する。そして、制御部(80)は、次に開閉弁(70)が閉鎖された後の閉鎖時間Δtck+1を以下のような式により補正する。
Δtck+1=Δtck×(Δtoi/Δto)・・・(3)
即ち、制御部(80)は、前回の閉鎖時間Δtckに対して、理論開放時間Δtoiを実際の計測した開放時間Δtoで除した値を補正係数として乗ずることで、次の閉鎖時間Δtck+1を補正するようにしている。
ここで、図6(A)に示すように、当初の閉鎖時間Δtckの経過時において油分離器(22)内にVmaxの油が溜まっていたとすると、理論開放時間Δtoiと、実際の開放時間Δtoとは略一致する。従って、この場合には、補正係数(Δtoi/Δto)=1となり、次の閉鎖時間Δtck+1が補正されない。その結果、次の閉鎖時間Δtck+1の期間内についても、油上がり量が急激に変化しない限り、油分離器(22)内に基準の油貯留量Vmaxの油を溜めることができる。
次に、例えば図6(B)に示すように、圧縮機(32)の油上がり量が標準的な油上がり量よりも少ない場合には、開閉弁(70)の開放直前(時点ton1)に、油分離器(22)の油面高さが上限高さよりも低い位置となる。つまり、この場合には、閉鎖時間Δtcの経過時における油分離器(22)内の油の貯留量がVmaxよりも不足していることになる。
図6(B)に示すような場合には、次に開閉弁(70)を閉鎖した際の閉鎖時間Δtck+1を前回の閉鎖時間Δtckと同じ時間にしても、油分離器(22)内に基準の油貯留量Vmaxの油を溜めることができない。そこで、制御部(80)は、次の閉鎖時間Δtck+1を前回の閉鎖時間Δtckよりも長くするように補正を行う。
具体的には、時点ton1で開閉弁(70)が開放された後には、上記と同様にして、開閉弁(70)の実際の開放時間Δtoが計測/記憶される。同時に、油流量推定部(83)は、この間(Δtoの期間中)において、冷媒回路(11)の差圧ΔP等に基づいて、上述の式により上記排出流量Wを算出する。次に、制御部(80)は、基準油貯留量Vmaxを排出流量Wで除することで、油分離器(22)内にVmaxの油が溜まっていた場合に、このVmaxの油を全量排出するのに要する開閉弁(70)の開放時間(即ち、理論開放時間Δtoi)を算出する。そして、制御部(80)は、次に開閉弁(70)が閉鎖された後の閉鎖時間Δtck+1を上記(3)式(Δtck+1=Δtck×(Δtoi/Δto))により算出する。
ここで、図6(B)に示すように、当初の閉鎖時間Δtckの経過時において油分離器(22)内の油量がVmaxよりも少ない場合には、実際の開放時間Δtoが理論開放時間Δtoiより短くなる。従って、この場合には、補正係数(Δtoi/Δto)>1となり、次の閉鎖時間Δtck+1が長期化されるように補正がなされる。その結果、次の閉鎖時間Δtck+1の期間内では、油分離器(22)内に溜まり込む油量がVmaxに近づくように増大変化する。
次に、例えば図6(C)に示すように、圧縮機(32)の油上がり量が標準的な油上がり量よりも多い場合には、開閉弁(70)の開放直前(時点ton1)に、油分離器(22)の油面高さが上限高さよりも高い位置となる。つまり、この場合には、閉鎖時間Δtcの経過時における油分離器(22)内の油の貯留量がVmaxより多くなっている。
図6(C)に示すような場合には、次に開閉弁(70)を閉鎖した際の閉鎖時間Δtck+1を前回の閉鎖時間Δtckと同じ時間にすると、油分離器(22)内の油量が基準の油貯留量Vmaxを越えてしまう。そこで、制御部(80)は、次の閉鎖時間Δtck+1を前回の閉鎖時間Δtckよりも短くするように補正を行う。
具体的には、時点ton1で開閉弁(70)が開放された後には、上記と同様にして、開閉弁(70)の実際の開放時間Δtoが計測/記憶される。同時に、油流量推定部(83)は、この間(Δtoの期間中)において、冷媒回路(11)の差圧ΔP等に基づいて、上述の式により上記排出流量Wを算出する。次に、制御部(80)は、基準油貯留量Vmaxを排出流量Wで除することで、油分離器(22)内にVmaxの油が溜まっていた場合に、このVmaxの油を全量排出するのに要する開閉弁(70)の開放時間(即ち、理論開放時間Δtoi)を算出する。そして、制御部(80)は、次に開閉弁(70)が閉鎖された後の閉鎖時間Δtck+1を上記(3)式(Δtck+1=Δtck×(Δtoi/Δto))により算出する。
ここで、図6(C)に示すように、当初の閉鎖時間Δtckの経過時において油分離器(22)内の油量がVmaxよりも多い場合には、実際の開放時間Δtoが理論開放時間Δtoiより長くなる。従って、この場合には、補正係数(Δtoi/Δto)<1となり、次の閉鎖時間Δtck+1が短期化されるように補正がなされる。その結果、次の閉鎖時間Δtck+1の期間内では、油分離器(22)内に溜まり込む油量がVmaxに近づくように減少変化する。
以上のように、本実施形態では、閉鎖時間タイマ(81)を用いて開閉弁(70)の開放動作を制御すると同時に、開放時間Δtoや排出流量Wに基づいて、閉鎖時間Δtcを適宜補正するようにしている。これにより、本実施形態では、油上がり量等が変動したとしても、開閉弁(70)の閉鎖時において油の貯留量を基準となる油貯留量Vmaxに近づけることができる。従って、油の貯留量がVmaxに至っていないに拘わらず、開閉弁(70)が開放されることを防止でき、開閉弁(70)の開閉動作が無駄に多くなって開閉弁(70)の機械的な寿命が短くなってしまうのを回避できる。また、油の貯留量がVmaxを越えてしまうことで、油分離器(22)の油分離効率が低下してしまうことを防止でき、油が流出管(44)へ流出してしまうことも回避できる。その結果、この空気調和装置(10)の信頼性の向上を図ることができる。
《その他の実施形態》
上記各実施形態については、以下のような構成としてもよい。
図7に示すように、複数の圧縮機(32a,32b)を備え、二段圧縮式の冷凍サイクルを行う冷凍装置(10)に本発明を適用するようにしても良い。図7の例では、駆動軸(35)の下端側寄りに低段側圧縮機(32a)が設けられ、低段側圧縮機(32a)の上側に高段側圧縮機(32b)が設けられている。また、この空気調和装置(10)では、低圧の冷媒が低段側圧縮機(32a)に吸入されて中間圧まで圧縮された後、この冷媒が更に高段側圧縮機(32b)で圧縮されて高圧となる。ガスインジェクション管(44)の流出端は、低段側圧縮機(32a)と吐出側と高段側圧縮機(32b)の間の中間圧配管に接続されている。更に、油送り管(43)は、油分離器(22)の底部と低段側圧縮機(32a)の吸入側とを繋いでいる。この例においても、油送り管(43)の開閉弁(70)を実施形態1と同様にして制御することで、液冷媒が低段側圧縮機(32a)の吸入側へ送られてしまうことを回避できる。なお、このような二段圧縮式冷凍サイクルを行う空気調和装置(10)に上記実施形態2〜4の冷媒流通制限手段を適用しても良いのは勿論のことである。
また、上記各実施形態では、油送り管(43)の開度を調節するための開度調節機構として、電磁弁から成る開閉弁(70)を用いている。しかしながら、この開度調節機構として開度の微調節が可能な流量調整弁(膨張弁)を用いるようにしても良い。この場合には、油分離器(22)内の油量が減少する、あるいは液面高さが低くなると、流量調整弁の開度を小さくする、あるいは全閉とするように制御する。また、油分離器(22)内の油量が増大する、あるいは液面高さが高くなると、流量調整弁の開度を大きくする、あるいは全開とするように制御する。
また、上記各実施形態では、複数の室内ユニット(50a,50b,50c)を備えた、マルチ式の冷凍装置に本発明を適用しているが、1台の室内ユニットと1台の室外ユニットとから成る、いわゆるペア式の冷凍装置に本発明を適用しても良い。また、冷媒回路(11)に充填される冷媒として、二酸化炭素以外の他の冷媒を用いるようにしても良い。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。