JP2012211419A - 芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントおよび工業用織物 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温・高湿条件下において優れた耐加水分解性を発揮するとともに、必要十分な引張強度および引掛強度を兼備し、各種織物、特に抄紙用ドライヤーカンバスなどの工業用織物の構成素材として好適なポリエステルモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物を提供する。
【解決手段】芯成分が(A)ポリエステル系樹脂からなり、鞘成分が(B)ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対して、(C)シリコーン系化合物0.5〜20重量部を含有する樹脂組成物からなる芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントであって、カルボキシル末端基濃度が8当量/106g以下であることを特徴とする芯鞘複合ポリエステルモノフィラメント。
【選択図】なし
【解決手段】芯成分が(A)ポリエステル系樹脂からなり、鞘成分が(B)ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対して、(C)シリコーン系化合物0.5〜20重量部を含有する樹脂組成物からなる芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントであって、カルボキシル末端基濃度が8当量/106g以下であることを特徴とする芯鞘複合ポリエステルモノフィラメント。
【選択図】なし
Description
本発明は、高温・高湿条件下において優れた耐加水分解性を発揮するとともに、必要十分な引張強度および引掛強度を兼備し、抄紙ドライヤーカンバスを代表とする工業用織物用原糸として極めて好適に利用し得るポリエステルモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物に関するものである。
一般的にポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートからなるモノフィラメントに代表される繊維は、優れた力学特性、耐熱性などを有していることから、従来から各種工業用部品、衣料用および工業用繊維材料、各種織物などに使用されてきた。
また、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートに比べて耐加水分解性に優れており、成形性も良好であることから、工業用繊維材料として注目を集めている。中でも抄紙ドライヤーカンバスなどの高温・高湿条件下にて使用される用途では、ポリエチレンテレフタレートからなるモノフィラメントの代替として、耐加水分解性が優れているポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートからなるモノフィラメントが好適に使用されるようになってきている。
しかしながら、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートからなるモノフィラメントは、ポリエステルやポリアミドからなるモノフィラメントに比較して、引張強度や引掛強度などの物理的特性が不十分であるという問題を抱えており、これらポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートモノフィラメントを用い工業用織物を製織する場合においては、強度不足に起因する糸切れが発生して製織性の悪化を招き、さらに近年では、製紙用具メーカーの最新鋭大型高速織機の導入により、ドライヤーカンバスの交換作業に伴う生産工程の一時停機が、製紙製品の生産性悪化に甚大な影響を及ぼすようになっていることから、長期間の使用が可能であり、かつ物理的特性を改善した工業用織物用途に適応可能なポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートモノフィラメントの実現が仕切りに望まれるようになってきた。
このような問題点を解決するため従来から様々な提案が行われてきた。例えば、引張強度を改善する方法として、5〜60重量%のガラス繊維を用いて強化された熱可塑性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂組成物において、顔料として硫化亜鉛0.01〜20.0重量%を含有したガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)が知られているが、この技術で得られた樹脂組成物をモノフィラメントに応用する場合、ガラス繊維強化により引張強度は改善されるものの、引掛強度が低下してしまうばかりか、モノフィラメント製造時のスクリュー噛み込み特性が不安定になるといった問題を抱えていた。
また、引掛強度を改善する方法として、ポリアミド5〜95重量%およびシクロヘキサン環のシス構造とトランス構造の比であるシス/トランス比(モル比)が60/40〜10/90の範囲にあるポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート5〜95重量%の混合物100重量部に対して、エポキシ化合物0.01〜15重量部を含有してなる樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)が知られているが、この技術で得られた樹脂組成物をモノフィラメントに応用した場合には、引掛強度は改善されるものの、例えば抄紙ドライヤーカンバスなどの高温・高湿条件下においてはポリアミドの吸湿によって寸法安定性が悪化するなどの不具合があることから実用的ではなかった。
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものである。
したがって、本発明の目的は、高温・高湿条件下において優れた耐加水分解性を発揮するとともに、必要十分な引張強度および引掛強度を兼備し、抄紙ドライヤーカンバスを代表とする工業用織物用原糸として極めて好適に利用し得るポリエステルモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物を提供することにある。
上記の目的を達成するため本発明によれば、芯成分が(A)ポリエステル系樹脂からなり、鞘成分が(B)ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対して、(C)シリコーン系化合物0.5〜20重量部を含有する樹脂組成物からなる芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントであって、カルボキシル末端基濃度が8当量/106g以下であることを特徴とする芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントが提供される。
なお、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントにおいては、
前記(B)ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂が、シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸とのエステル化合物と、シクロヘキサンジメタノールとイソフタル酸のエステル化合物との共重合体であること、
前記芯成分と鞘成分の複合比率が、芯成分:50〜80重量%および鞘成分:50〜20重量%であること、
前記(A)ポリエステル系樹脂の固有粘度が0.65〜1.30であること、
前記芯成分および鞘成分を構成する両成分が、いずれも各成分100重量部に対して、モノカルボジイミド0.1〜3.0重量部を含有すること、および
JIS−L1013に記載の方法に準拠した引張強度が3cN/dtex以上、かつJIS−L1013に記載の方法に準拠した引掛強度が3cN/dtex以上であること
が、好ましい条件として挙げられ、これら条件を満足することによって極めて優れた耐加水分解性を発揮するとともに、製織時の工程通過性の改善ならびに工業用織物の長期間に亘る使用を可能とするポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートモノフィラメントの実現が可能となる。
前記(B)ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂が、シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸とのエステル化合物と、シクロヘキサンジメタノールとイソフタル酸のエステル化合物との共重合体であること、
前記芯成分と鞘成分の複合比率が、芯成分:50〜80重量%および鞘成分:50〜20重量%であること、
前記(A)ポリエステル系樹脂の固有粘度が0.65〜1.30であること、
前記芯成分および鞘成分を構成する両成分が、いずれも各成分100重量部に対して、モノカルボジイミド0.1〜3.0重量部を含有すること、および
JIS−L1013に記載の方法に準拠した引張強度が3cN/dtex以上、かつJIS−L1013に記載の方法に準拠した引掛強度が3cN/dtex以上であること
が、好ましい条件として挙げられ、これら条件を満足することによって極めて優れた耐加水分解性を発揮するとともに、製織時の工程通過性の改善ならびに工業用織物の長期間に亘る使用を可能とするポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートモノフィラメントの実現が可能となる。
また、本発明の工業用織物は、上記芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用してなることを特徴とし、特に抄紙ドライヤーカンバスを代表とする抄紙用織物に使用した場合、長期間の使用が可能となる非常に優れた耐加水分解性を発揮するとともに、製織時に糸切れなどの不具合を生じさせることが少なくなるなど、操業安定性が極めて良好になる。
本発明によれば、以下に説明するとおり、高温・高湿条件下において優れた耐加水分解性を発揮するとともに、必要十分な引張強度および引掛強度を兼備し、製織時に糸切れなどの不具合を生じることが少なくなるなど、各種織物、特に抄紙用ドライヤーカンバスなどの工業用織物の構成素材として好適な芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントの取得が可能となる。
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明における芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントの鞘成分を構成する(B)ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(以下、PCTという)系樹脂とは、テレフタル酸残基と1,4−シクロヘキサンジメタノール残基とが結合した繰り返し単位を主要構成成分とするものであり、好ましくは該繰り返し単位がポリマー中の80モル%以上を占めるものである。
なお、PCT系樹脂の酸成分またはジオール成分を通常20モル%以下の範囲で、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、メチルテレフタル酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸、2,2´−ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−エタン、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、オクタデカンジカルボン酸、ダイマー酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの他のジカルボン酸またはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノールおよび2,2−ビス(2´−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの他のジオールで置換したものも用いることができ、これらの内でも酸成分の一部をイソフタル酸で置換した共重合体(以下、PCTAという)が、耐加水分解性向上の観点から特に好ましく用いられる。
ここで、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントは、(B)PCT系樹脂以外の成分として、(C)シリコーン系化合物および(A)ポリエステル系樹脂の3成分を必須成分とし、かつ芯鞘複合構成とすることが重要である。
すなわち、本発明における芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントの鞘成分には、(B)PCT系樹脂100重量部に対して、(C)シリコーン系化合物0.5〜20重量部を含有することが重要であり、これにより耐加水分解性および引掛強度が相乗的に向上する。つまり、シリコーン系化合物の構造骨格をなすシトキサン結合中の酸素結合(−O−)の存在により分子屈曲性に優れ、かつ分子間相互作用が小さいため、少量添加にて引張強度を低下させることなく引掛強度を向上させることができ、さらにはシリコーン系化合物がモノフィラメントの表面にブリードアウトすることで表面が撥水性となり、この効果と相まって耐加水分解性の向上にも寄与することに繋がるのである。
また、シリコーン系化合物は本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントにおける鞘成分のみに含有させることにより、引張強度の低下を抑制でき、かつ耐加水分解性を最大限に発揮することができる。
ここでシリコーン系化合物とは、RSiO1.5(T単位)を少なくともモル比で90%以上含有するものであり、このRSiO1.5(T単位)単独で構成されていても良く、T単位を少なくとも含有していれば、さらにR3SiO0.5(M単位)、R2SiO1.0(D単位)、SiO2.0(Q単位)などの複数の構造単位からなっていても良い。ここで、シリコーン系化合物の含有量が0.5重量%未満では耐加水分解性および引掛強度の相乗的な向上効果が発現せず、20重量%を越えると引張強度が著しく低下してしまう。
次に、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを構成する芯成分には、(A)ポリエステル系樹脂を使用することが必須であり、これにより必要十分な引張強度が得られるとともに、引掛強度を向上させることができる。
ここで使用するポリエステル系樹脂とは、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのジカルボン酸またはエステル形成誘導体およびジオールまたはエステル形成誘導体から合成されるポリエステル系化合物のことである。これらの内でも、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸からなり、またグリコール成分の90モル%以上がエチレングリコールからなるPETが好適である。
PETは、上記のテレフタル酸成分の一部を、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、スルホン酸金属塩置換イソフタル酸などで置き換えたものであってもよい。また、上記のエチレングリコール成分の一部を、例えばプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリアルキレングリコールなどで置き換えたものであってもよく、さらに、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメリット酸、トリメシン酸、硼酸などの鎖分岐剤を少量併用することもできる。
また、ポリエステル系樹脂には、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸、カーボンブラックなどの各種無機粒子や架橋高分子粒子、各種金属粒子などの粒子類のほか、従来公知の金属イオン封鎖剤、イオン交換剤、着色防止剤、耐光剤、包接化合物、帯電防止剤、各種着色剤、各種界面活性剤などが添加されていてもよい。
なお、本発明で使用する(A)ポリエステル系樹脂の固有粘度は、0.65以上1.30以下が好ましく、さらに0.7以上1.20以下であればより好ましい。上記の範囲を満足しないと、工業用織物として必要十分な引張強度および引掛強度の両特性を満足させることができない。
本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントにおける芯成分と鞘成分の複合比率は、芯成分:50〜80重量%および鞘成分:50〜20重量%であることが好ましく、芯成分が50重量%未満では工業用織物として必要とされる引張強度が得られず、また80重量%を越えると鞘成分の比率が少なくなり、耐加水分解性が低下してしまうばかりか、必要十分な引掛強度も得られなくなるため好ましくない。
また、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントは、耐加水分解性の観点から、カルボキシル末端基濃度が8当量/106g以下の条件を満たすことが必須であり、これにより優れた耐加水分解性を発揮することができる。
ここで、カルボキシル末端基濃度が8当量/106g以上であると、高温・高湿条件下では加水分解劣化が著しく進行することとなり、ポリエステルモノフィラメントの著しい強度低下を引き起こしてしまう。その結果、工業用織物の強度低下を招くばかりか、長期に亘る織物の製品寿命を実現できなくなるなど、極めて好ましくない結果を招くことに繋がる。
なお、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントは、芯成分および鞘成分の両成分が、共にモノカルボジイミド化合物(以下、MCD化合物という)を含有することが好ましく、これにより耐加水分解性が飛躍的に向上する。
MCD化合物は分子中に1個のカルボジイミド基(−N=C=N−)を含有する活性な化合物であるが、長期に亘り耐加水分解性を持続させるためには、ポリエステルモノフィラメント中に未反応の状態でMCD化合物を残存させることが好ましい。
すなわち、ポリエステルが加水分解をきたすと、ポリエステル中のカルボキシル末端基が増加するが、この増加したカルボキシル末端基は、自己触媒的に作用してポリエステルの加水分解を加速度的に促進させる作用があり、いったん加水分解が始まると、ポリエステルの加水分解は一気に進行する。しかるに、ポリエステルモノフィラメント中に未反応状態のMCD化合物が残存していると、加水分解により増加するカルボキシル末端基と反応し、カルボキシル末端基の増加を抑え、その結果、加水分解の進行が抑制され、耐加水分解性能の飛躍的な向上が望めるのである。
ここで、本発明のカルボキシル末端基濃度が8当量/106g以下であるポリエステルモノフィラメント得るには、カルボキシル末端基濃度が8当量/106gより多いポリエステル系樹脂に対し、ポリエステル系樹脂の溶融状態で、原料となるポリエステルのカルボキシル末端基濃度および反応条件などから、カルボキシル基末端濃度が8当量/106g以下になるようにMCD化合物を反応させることで得られる。
本発明で用いるMCD化合物としてはいずれでもよいが、例えば、N,N´−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert.−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トリイルカルボジイミドなどが挙げられる。これらのMCD化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択してポリエステルモノフィラメントに含有させればよいが、ポリエステルに添加後の安定性から、芳香族骨格を有する化合物が有利な傾向にあり、中でもN,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert.−ブチルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−トリイルカルボジイミドなどが、特にN,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドが好適である。
なお、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントにおけるMCD化合物の含有量は、芯成分および鞘成分を構成する両成分が、いずれも各成分100重量部に対して0.1〜3.0重量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜2.5重量部、さらに0.6〜2.0重量部の範囲である場合、より好ましい効果の発現が期待できる。
すなわち、MCD化合物の含有量が0.1重量部未満であると、MCDを含有することによる耐加水分解性の向上効果が小さくなってしまい、また3.0重量部を超えるとポリエステルモノフィラメントの引張強度が低下してしまうという好ましくない傾向が招かれることがある。
また、MCD化合物と共に、ポリエステルのカルボキシル末端基および水酸末端基と反応する公知のエポキシド化合物およびオキサゾリン化合物などを併用することもできる。
ここで、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントは、JIS−L1013に記載の方法に準拠した引張強度が3.0cN/dtex以上であることが好ましい。引張強度が3.0cN/dtexを下回ると、工業用織物としての必要最低限の強力を維持し難くなり、工業用織物への適応が難しくなることがある。
また、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントでは、さらにJIS−L1013に記載の方法に準拠した引掛強度が3.0cN/dtex以上であることが好ましく、引掛強度が3.0cN/dtexを下回ると工業用織物として使用した場合、継ぎ目であるジョイント部分で糸切れが頻発するなど工業用織物の物理的強度の低下ならびに長期に亘る使用が困難となるなど、好ましくない結果となる。
次に、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントの耐加水分解性は、下記方法によって得られた強力保持率が70%以上であることが好ましく、強力保持率が70%未満であると、耐加水分解性が不十分となり、高温・高湿条件下で長期に亘り使用される工業用織物用途の原糸としては好ましくないものとなってしまう。
[ポリエステルモノフィラメントの耐加水分解性]
ポリエステルモノフィラメントを100リットルオートクレーブに入れ、121℃の飽和水蒸気で12日間連続処理した後、処理後のポリエステルモノフィラメントおよび未処理(処理前)のポリエステルモノフィラメントの強力を下記の引張強力と同一の方法で測定し、処理前後のポリエステルモノフィラメントの強力保持率を算出し、耐加水分解性の尺度とした。なお、算式は、強力保持率(%)=(処理後ポリエステルモノフィラメントの強力÷処理前ポリエステルモノフィラメントの強力)×100とした。
ポリエステルモノフィラメントを100リットルオートクレーブに入れ、121℃の飽和水蒸気で12日間連続処理した後、処理後のポリエステルモノフィラメントおよび未処理(処理前)のポリエステルモノフィラメントの強力を下記の引張強力と同一の方法で測定し、処理前後のポリエステルモノフィラメントの強力保持率を算出し、耐加水分解性の尺度とした。なお、算式は、強力保持率(%)=(処理後ポリエステルモノフィラメントの強力÷処理前ポリエステルモノフィラメントの強力)×100とした。
また、本発明における芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントは、1本からなる連続糸であり、繊維軸方向に垂直な断面の形状(以下、断面形状もしくは断面という)は、丸、楕円、3角、T、Y、H、+、5葉、6葉、7葉、8葉、などの多様形状、正方形、長方形、菱形、ドッグボーン状および繭型などいかなる断面形状を有するものでもよい。
さらに、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントの直径は、その使用用途に合わせ適宜選択することができるが、通常は0.05〜3mm程度(異形断面の場合は、丸断面面積に換算して直径を算出する)の範囲のものが好適に使用される。
次に、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントは従来公知の方法で製造できるが、好ましい製造例としては、芯成分となる(A)ポリエステル系樹脂については、あらかじめ予備乾燥を行い、次いでエクストルダー式紡糸機を用いてポリエステル系樹脂の融点以上の温度で溶融させ、また鞘成分については、あらかじめ予備乾燥をした(B)PCT系樹脂と、単独あるいは高濃度に含有してポリエステルマスターバッチペレットとした(C)シリコーン系化合物をそれぞれ計量供給し、芯成分とは別のエクストルダー式紡糸機を用いてPCT系樹脂の融点以上の温度にて溶融混練させるなどの方法を挙げることができる。
芯成分および鞘成分が個別のエクストルダー式紡糸機などで溶融されたポリマーは、各々計量され、別々の配管を通り、複合紡糸金型で合流して口金から押出される。押出された溶融ポリマーは、その後冷却され、引続いて延伸・熱セットすることにより、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを効率的に得ることができる。
さらに、MCD化合物を含有させる場合は、例えば、固体状態のMCD化合物または高濃度にMCDを含有したマスターバッチとして計量供給しても良いが、融点以上に加熱して溶解させた液体状のMCD化合物として各々のエクストルダーの入口、またはエクストルダーのバレルの途中から計量供給する方法が特に好ましい。
かくして得られる本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントは、従来のポリエステルモノフィラメントにはない、高温・高湿条件下における優れた耐加水分解性を発揮するとともに、必要十分な引張強度および引掛強度を兼備することから、例えば、抄紙ワイヤー、抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙機に装着される織物類、サーマルボンド法不織布熱接着工程用ネットコンベア織物、熱処理炉内搬送用ベルト織物もしくは各種フィルター織物といった工業用織物の構成素材として有用なものである。
以下、本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントの実施例に関し、さらに詳細を説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
また、各種特性の評価は次に説明する方法にしたがって行った。
[ポリエステルモノフィラメントのカルボキシル末端基濃度]
(1)10ml試験管に0.5±0.002gのポリエステルモノフィラメントサンプルを秤取する、
(2)o−クレゾール10mlを前記試験管に注入し、100℃で30分間加熱、攪拌しサンプル溶解させる、
(3)試験管の内容液を30mlビーカーに移す(試験管内の残液を3mlのジクロルメタンで洗浄してビーカーに追加する)、
(4)ビーカー内の液温が25℃になるまで放冷する、
(5)0.02NのNaOHメタノール溶液で滴定する、
(6)サンプル無しで前記(1)〜(5)と同様に行い、サンプル滴定に要した0.02NのNaOHメタノール溶液滴定量からポリエステルモノフィラメント106gあたりのカルボキシル末端基当量を求める。
(1)10ml試験管に0.5±0.002gのポリエステルモノフィラメントサンプルを秤取する、
(2)o−クレゾール10mlを前記試験管に注入し、100℃で30分間加熱、攪拌しサンプル溶解させる、
(3)試験管の内容液を30mlビーカーに移す(試験管内の残液を3mlのジクロルメタンで洗浄してビーカーに追加する)、
(4)ビーカー内の液温が25℃になるまで放冷する、
(5)0.02NのNaOHメタノール溶液で滴定する、
(6)サンプル無しで前記(1)〜(5)と同様に行い、サンプル滴定に要した0.02NのNaOHメタノール溶液滴定量からポリエステルモノフィラメント106gあたりのカルボキシル末端基当量を求める。
[ポリステル系樹脂の固有粘度]
オルトクロロフェノール溶液中25℃で測定した粘度より求めた。
オルトクロロフェノール溶液中25℃で測定した粘度より求めた。
[ポリエステルモノフィラメントの引張強度]
JIS−L1013に記載の方法に準拠して、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)を使用して測定し、試料が切断したときの強力を求めた。また、その強力を繊度で割り返して強度(cN/dtex)を算出した。
JIS−L1013に記載の方法に準拠して、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)を使用して測定し、試料が切断したときの強力を求めた。また、その強力を繊度で割り返して強度(cN/dtex)を算出した。
[ポリエステルモノフィラメントの引掛強度]
JIS−L1013に記載の方法に準拠して、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)を使用して測定し、試料が切断したときの強力を求めた。また、その強力を繊度で割り返して強度(cN/dtex)を算出した。
JIS−L1013に記載の方法に準拠して、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)を使用して測定し、試料が切断したときの強力を求めた。また、その強力を繊度で割り返して強度(cN/dtex)を算出した。
[ポリエステルモノフィラメントの耐加水分解性]
ポリエステルモノフィラメントを100リットルオートクレーブに入れ、121℃の飽和水蒸気で12日間連続処理した後、処理後のポリエステルモノフィラメントおよび未処理(処理前)のポリエステルモノフィラメントの強力を上記の引張強度と同一の方法で測定し、処理前後のポリエステルモノフィラメントの強力保持率を算出し、耐加水分解性の尺度とした。なお、算式は、強力保持率(%)=(処理後ポリエステルモノフィラメントの強力÷処理前ポリエステルモノフィラメントの強力)×100とした。
ポリエステルモノフィラメントを100リットルオートクレーブに入れ、121℃の飽和水蒸気で12日間連続処理した後、処理後のポリエステルモノフィラメントおよび未処理(処理前)のポリエステルモノフィラメントの強力を上記の引張強度と同一の方法で測定し、処理前後のポリエステルモノフィラメントの強力保持率を算出し、耐加水分解性の尺度とした。なお、算式は、強力保持率(%)=(処理後ポリエステルモノフィラメントの強力÷処理前ポリエステルモノフィラメントの強力)×100とした。
〔実施例1〕
芯成分の(A)ポリエステル系樹脂として、固有粘度が1.03のPETを、また鞘成分として(B)PCT系樹脂、およびPETマスターバッチペレットとした(C)シリコーン系化合物について、その組成比がPCT系樹脂:シリコーン系化合物=100:3となるように計量し、各々のエクストルダー式紡糸機に供給した。さらに併せて75℃で加熱溶融させたMCD化合物を、芯成分および鞘成分の各成分100重量部に対してそれぞれ1.27重量部となるようにして各々のエクストルダーの入口より流入させ、各成分に含有させた。それぞれ285℃にて溶融後、複合比率が芯成分:70重量%、および鞘成分:30重量%になるように計量ポンプにて計量を行い、別々の配管を通過させ、ポリマー温度280℃にて複合紡糸金型に合流させ、芯鞘構造を備えた口金から押出した後、直ちに70℃の温水浴中で冷却固化させて未延伸糸を得た。
芯成分の(A)ポリエステル系樹脂として、固有粘度が1.03のPETを、また鞘成分として(B)PCT系樹脂、およびPETマスターバッチペレットとした(C)シリコーン系化合物について、その組成比がPCT系樹脂:シリコーン系化合物=100:3となるように計量し、各々のエクストルダー式紡糸機に供給した。さらに併せて75℃で加熱溶融させたMCD化合物を、芯成分および鞘成分の各成分100重量部に対してそれぞれ1.27重量部となるようにして各々のエクストルダーの入口より流入させ、各成分に含有させた。それぞれ285℃にて溶融後、複合比率が芯成分:70重量%、および鞘成分:30重量%になるように計量ポンプにて計量を行い、別々の配管を通過させ、ポリマー温度280℃にて複合紡糸金型に合流させ、芯鞘構造を備えた口金から押出した後、直ちに70℃の温水浴中で冷却固化させて未延伸糸を得た。
引き続き、前記未延伸糸を常法にしたがい、合計5.5倍の延伸および0.85倍の熱セットを行ない、断面形状が円形の直径0.40mmの芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを得た。得られた芯鞘複合ポリエステルのカルボキシル末端基濃度、引張強度、引掛強度および耐加水分解性の評価結果を表1に示す。
〔実施例2〜7〕
芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントの鞘成分の組成比、芯成分と鞘成分の複合比率、PCT系樹脂の成分、ポリエステル系樹脂の固有粘度、MCD化合物の含有量およびカルボキシル末端基濃度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、断面形状が円形の直径0.40mmの芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを得た。
芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントの鞘成分の組成比、芯成分と鞘成分の複合比率、PCT系樹脂の成分、ポリエステル系樹脂の固有粘度、MCD化合物の含有量およびカルボキシル末端基濃度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、断面形状が円形の直径0.40mmの芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを得た。
〔比較例1〜5〕
芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントの鞘成分の組成比、芯成分と鞘成分の複合比率、PCT系樹脂の成分、ポリエステル系樹脂の固有粘度、MCD化合物の含有量およびカルボキシル末端基濃度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて、断面形状が円形の直径0.40mmの芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを得た。
芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントの鞘成分の組成比、芯成分と鞘成分の複合比率、PCT系樹脂の成分、ポリエステル系樹脂の固有粘度、MCD化合物の含有量およびカルボキシル末端基濃度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて、断面形状が円形の直径0.40mmの芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを得た。
表1から明らかなとおり、本発明における芯鞘複合ポリエステルモノフィラメント、すなわち芯成分が(A)ポリエステル系樹脂からなり、鞘成分が(B)ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対して、(C)シリコーン系化合物0.5〜20重量部を含有する3成分を必須成分として構成され、かつカルボキシル末端基濃度が8当量/106g以下である芯鞘複合ポリエステルモノフィラメント(実施例1〜7)は、優れた耐加水分解性を有するとともに、必要十分な引張強度および引掛強度を兼備していることから、抄紙ドライヤーカンバスを代表とする工業用織物用途へ用いるポリエステルモノフィラメントとして、極めて好適に利用できるものであることがわかる。
これに対して、本発明の規定を満たさない芯鞘複合ポリエステルモノフィラメント、すなわち芯成分である(A)ポリエステル系樹脂、鞘成分である(B)ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂および(C)シリコーン系化合物の3成分の内、1成分でも規定から外れた芯鞘複合ポリエステルモノフィラメント(比較例1〜4)、またはカルボキシル末端基濃度が規定から外れたポリエステルモノフィラメント(比較例5)などは、耐加水分解性が低く、また引張強度および引掛強度が不十分であることから、抄紙用ドライヤーカンバスを代表とする工業用織物用原糸としての要求特性を満足していないことがわかる。
本発明の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントは、従来技術では実現することのできなかった、高温・高湿条件下における優れた耐加水分解性を発揮するとともに、必要十分な引張強度および引掛強度を兼備していることから、抄紙ドライヤーカンバスを代表とする工業用織物用原糸として極めて好適に利用し得るものであり、産業上の利用価値が極めて高いものである。
Claims (7)
- 芯成分が(A)ポリエステル系樹脂からなり、鞘成分が(B)ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対して、(C)シリコーン系化合物0.5〜20重量部を含有する樹脂組成物からなる芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントであって、カルボキシル末端基濃度が8当量/106g以下であることを特徴とする芯鞘複合ポリエステルモノフィラメント。
- 前記(B)ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂が、シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸とのエステル化合物と、シクロヘキサンジメタノールとイソフタル酸のエステル化合物との共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメント。
- 前記芯成分と鞘成分の複合比率が、芯成分:50〜80重量%および鞘成分:50〜20重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメント。
- 前記(A)ポリエステル系樹脂の固有粘度が0.65〜1.30であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメント。
- 前記芯成分および鞘成分を構成する両成分が、いずれも各成分100重量部に対して、モノカルボジイミド0.1〜3.0重量部を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメント。
- JIS−L1013に記載の方法に準拠した引張強度が3cN/dtex以上、かつJIS−L1013に記載の方法に準拠した引掛強度が3cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメント。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントを経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用してなることを特徴とする工業用織物。
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JP2011078065A JP2012211419A (ja) | 2011-03-31 | 2011-03-31 | 芯鞘複合ポリエステルモノフィラメントおよび工業用織物 |
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JP2020041228A (ja) * | 2018-09-07 | 2020-03-19 | 株式会社クラレ | ポリエステル系複合繊維 |
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- 2011-03-31 JP JP2011078065A patent/JP2012211419A/ja not_active Withdrawn
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