JP2013216989A - ポリエステルモノフィラメントおよび工業用織物 - Google Patents
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Abstract
【課題】工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度および引掛強度の両特性を具備し、従来のポリエステルモノフィラメントと比較して極めて良好な耐摩耗性を備えた、工業用織物の構成素材として好適なポリエステルモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物を提供する。
【解決手段】ポリエステル系樹脂から成るモノフィラメントの表面に、炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aから成る被覆層が形成されたモノフィラメントであって、引張強度が3.0cN/dtex以上、且つ引掛強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とするポリエステルモノフィラメント。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリエステル系樹脂から成るモノフィラメントの表面に、炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aから成る被覆層が形成されたモノフィラメントであって、引張強度が3.0cN/dtex以上、且つ引掛強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とするポリエステルモノフィラメント。
【選択図】 なし
Description
本発明は、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度および引掛強度の両特性を具備し、従来のポリエステルモノフィラメントと比較して極めて良好な耐摩耗性を備えた、工業用織物の構成素材として好適なポリエステルモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物に関するものである。
ポリエステルは優れた機械的特性を有しているため、従来、各種工業用部品、衣料用および工業用繊維材料、各種織物用途などに広く使用されてきており、例えばポリエステルから成る繊維のうち、ポリエチレンテレフタレートモノフィラメントは、抄紙ドライヤーカンバス、抄紙ワイヤー、各種ブラシ、筆毛、印刷スクリーン用紗、釣り糸、ゴム補強用繊維材料などに広く好適に用いられてきている。
しかるにここで、抄紙用の工業用織物などは、実際に使用される際、いずれも駆動ロールや制御ロール、また製造品などに含まれる硬度の高い微粒子などと接触して摩耗することから、それらの構成素材には優れた耐摩耗性が要求されている。
特に、製紙業界においては、従来は酸性紙が主として製造されていたが、紙の経日劣化の問題が顕著になるにしたがい、近年では中性紙への転換が盛んに行われるようになってきており、この酸性紙から中性紙への転換に伴い、填料と呼ばれる紙への充填材が、従来のタルクから炭酸カルシウムに変更されるようになり、ここで用いられる填料の変更が、抄紙工程で使用される織物である抄紙ワイヤーや抄紙ドライヤーカンバスの寿命に影響を及ぼすようになってきた。
すなわち、炭酸カルシウム粒子はタルク粒子と比較して粒子硬度が高いため、抄紙工程に使用される織物の構成素材であるポリエステルモノフィラメントの摩耗劣化を早めてしまい、織物の寿命が短くなるという問題が顕著となってきているのである。
一方、これら填料と抄紙用織物との接触による摩耗劣化を改善する方法としては、ナイロンモノフィラメントをこれら抄紙用織物に使用することが知られている。
しかしながら、ナイロンモノフィラメントを用いた抄紙用織物は、摩耗し難いという利点を有するものの、ポリエステルモノフィラメントからなる織物と比較して、抄紙時の水分の影響により織物の寸法が大きく変化することなど、寸法安定性に致命的な欠点があることから抄紙工程の全工程には使用できないのが実情である。
また、抄紙ドライヤーカンバスにおいては、従来では、その使用環境が高温多湿になることから、ポリエステルモノフィラメントが加水分解劣化することにより織物の強度劣化を来たし、耐久寿命が短いことが大きな問題とされていた。しかし近年では、ポリエステルモノフィラメントからなる織物が加水分解劣化によって寿命を迎えるよりも早く、炭酸カルシウムやカオリンなどの硬い無機顔料からなる填料を含有またはコーティングした紙製品との接触によって著しく摩耗劣化し、織物としての使用に耐えない状態になることが新たな問題として顕在化しており、耐摩耗性を改良したポリエステルモノフィラメントの開発がしきりに望まれるようになってきた。
このような問題点を解決するため、従来様々な提案が行われてきた。
例えば、ポリエチレンテレフタレートに熱可塑性エラストマである熱可塑性ポリウレタンを含有させたモノフィラメントを使用した耐摩耗性の改良された抄紙用織物(例えば、特許文献1参照)が提案されているが、この技術で使用されるモノフィラメントを製造する際には、ポリエチレンテレフタレートの融点以上で溶融紡糸する必要があるため、熱可塑性ポリウレタン中においてウレタン結合およびエーテル鎖の熱分解が発生し、得られるモノフィラメントは工業用として十分な引張強度が得られないという問題があった。
また、ポリエステルに、無機酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、窒化物および炭化物からなる群から選択された20nm〜100nmの厚みと、20:1以下のアスペクト比を有する非層状小板形粒子を配合することにより、ポリエステル繊維の耐摩耗性を向上させる技術(例えば、特許文献2参照)、あるいはポリエステルに加水分解安定剤と平均粒径が100nm以下のケイ素、アルミニウムおよび/またはチタンの酸化物を配合したポリエステル繊維の使用により、工業用布の耐摩耗性を向上させる技術(例えば、特許文献3参照)が提案されているが、これらのポリエステル繊維は、工業用としては十分な引張強度を有するものの、添加する非層状小板形粒子あるいは金属酸化物の粒径が小さいために十分な耐摩耗性が得られず、工業用織物としては実用的ではないという問題を残していた。
さらに、少なくとも一つのスルホン酸基またはスルホン酸金属塩基をもつ化合物を共重合してなる芳香族ポリエステルに、酸化ジルコニウム粒子を添加してなる耐摩耗性に優れた繊維を製造しうるポリエステル組成物(例えば、特許文献4参照)が提案されているが、この組成物から得られるモノフィラメントは、若干の耐摩耗性向上効果は認められるものの、添加したジルコニウム粒子が凝集することに起因して線径変動が大きくなるため、工業用織物として必要な表面平滑性を満足し得ないという問題を有していた。
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものである。
したがって、本発明の目的は、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度および引掛強度の両特性を具備し、従来のポリエステルモノフィラメントと比較して極めて良好な耐摩耗性を備え、工業用織物の構成素材として好適なポリエステルモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明によれば、ポリエステル系樹脂から成るモノフィラメントの表面に、炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aから成る被覆層が形成されたモノフィラメントであって、引張強度が3.0cN/dtex以上、且つ引掛強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とするポリエステルモノフィラメントが提供される。
なお、本発明のポリエステルモノフィラメントにおいては、
前記炭酸カルシウムの含有量が、ポリエステルモノフィラメントの全量100重量部に対して0.5〜3重量部であること、
前記炭酸カルシウムの平均粒子径(粒度分布からの重量50%径)が1〜10μmであること、
前記熱可塑性樹脂Aの融点が200℃以上であること、
前記熱可塑性樹脂Aが共重合ポリエステル樹脂であること、および
前記ポリエステル系樹脂の固有粘度が0.65〜1.30であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられ、これら条件を満足することによって、さらに優れた効果を得ることができる。
前記炭酸カルシウムの含有量が、ポリエステルモノフィラメントの全量100重量部に対して0.5〜3重量部であること、
前記炭酸カルシウムの平均粒子径(粒度分布からの重量50%径)が1〜10μmであること、
前記熱可塑性樹脂Aの融点が200℃以上であること、
前記熱可塑性樹脂Aが共重合ポリエステル樹脂であること、および
前記ポリエステル系樹脂の固有粘度が0.65〜1.30であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられ、これら条件を満足することによって、さらに優れた効果を得ることができる。
また、本発明の工業用織物は、前記ポリエステルモノフィラメントを経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用したことを特徴とし、とりわけ抄紙ドライヤーカンバス、抄紙ワイヤーなどの抄紙用織物に好適に使用できる。
本発明によれば、以下に説明する通り、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度および引掛強度の両特性を有しつつ、従来のポリエステルモノフィラメントと比較して極めて良好な耐摩耗性を備え、工業用織物の構成素材として好適なポリエステルモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物を得ることができる。
以下に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明のポリエステルモノフィラメントを構成するポリエステル系樹脂とは、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのジカルボン酸またはエステル形成誘導体およびジオールまたはエステル形成誘導体から合成されるポリエステル系ポリマーのことである。これらの中でも、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸からなり、またグリコール成分の90モル%以上がエチレングリコールからなるPETが好適である。
PETは、上記のテレフタル酸成分の一部を、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、スルホン酸金属塩置換イソフタル酸などで置き換えたものであってもよい。また、上記のエチレングリコール成分の一部を、例えばプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリアルキレングリコールなどで置き換えたものであってもよい。さらに、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメリット酸、トリメシン酸、硼酸などの鎖分岐剤を少量併用することもできる。
さらに、ポリエステル系樹脂の固有粘度は0.65〜1.30が好ましく、さらに0.7〜1.20であればより好ましい。上記の範囲を満足しないと、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度および引掛強度の両特性を満足しにくくなる傾向となる。
次に、本発明のポリエステルモノフィラメントは、上記ポリエステル系樹脂から成るモノフィラメント表面に、炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aから成る被覆層が形成されていることを特徴とする。
従来、ポリエステルモノフィラメントの耐摩耗性を改善する技術としては、無機粒子をモノフィラメントの構成素材であるポリエステル樹脂中に内添する耐摩耗改善技術が多く提案されてきているが、これら技術では、耐摩耗性の向上は図れるものの、添加する無機粒子の影響によって、モノフィラメントの機械的特性の低下が著しく、工業用織物に利用する構成素材として、必要十分な引張強度および引掛強度を同時に実現することが困難であった。
そこで本発明者らは鋭意検討した結果、無機粒子をモノフィラメントの構成素材であるポリエステル樹脂中に内添するのではなく、モノフィラメント表面に無機粒子を含有する熱可塑性樹脂を被覆層として形成させることで、ポリエステルモノフィラメントの引張強度および引掛強度の両特性を犠牲にすることなく、さらに被覆層に含有させる無機粒子に炭酸カルシウムを用いることによって、極めて優れた耐摩耗性をも同時に実現できることを見出し、本発明に至ったのである。
本発明のポリエステルモノフィラメントにおいて、熱可塑性樹脂Aから成る被覆層に含有させる炭酸カルシウムは、石灰石の種類および製法によって軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムに大きく分類されるが、耐摩耗性の観点からは相対的に粗粒である重質炭酸カルシウムが好適に用いられる。
なお、炭酸カルシウムの平均粒子径(粒度分布からの重量50%径)は1〜10μmであることが好ましい。
すなわち、炭酸カルシウムの平均粒子径が1μm以下では粒子凝集性が高いため、熱可塑性樹脂Aから成る被覆層の中で炭酸カルシウム粒子が凝集粗大化し均一な分散状態が得られず、ポリエステルモノフィラメントの耐摩耗性にバラツキが生じるといった好ましくない結果を招きやすくなる。また10μm以上であると、粒子凝集性は低いが粒子径が大きいため、ポリエステルモノフィラメントに線径斑が生じやすくなるため好ましくない。
また、炭酸カルシウムの含有量は、ポリエステルモノフィラメントの全量100重量部に対して0.5〜3重量部であることが好ましい。ここで、炭酸カルシウムの含有量が0.5重量部未満であると耐摩耗性が得られにくい。なお、詳細は後述するが、本発明はポリエステル系樹脂から成るモノフィラメントの表面に、炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aから成る被覆層(以降、炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aからなる被覆層を単に被覆層ということもある)が形成されていることを特徴とするが、ここで炭酸カルシウムの含有量が3重量部以上であると、被覆層においてバインダーの役割を担う熱可塑性樹脂Aの比率が低くなり、ポリエステルモノフィラメントの表面より被覆層が剥離しやすくなり、長時間に亘る耐摩耗性効果が得られにくい傾向となるため好ましくない。
次に、前記被覆層をモノフィラメントの表面に形成させるためには、熱可塑性樹脂Aに炭酸カルシウムを含有させ、これをモノフィラメントの表面に固着させることが重要である。
ここで、モノフィラメントの表面に炭酸カルシウムと同時に被覆させる熱可塑性樹脂Aとしては、ポリアミドやポリエステルといった汎用樹脂が好ましく、特に好適に利用可能な熱可塑性樹脂Aとしては水分散型の熱可塑性樹脂が挙げられ、本発明のポリエステル系樹脂から成るモノフィラメント表面への接着性を考慮すると、とりわけ共重合ポリエステル樹脂が好適に使用される。
また、熱可塑性樹脂Aの融点は、抄紙ドライヤーカンバスや抄紙ワイヤーなどといった抄紙用織物の使用環境を考慮して、200℃以上であることが好ましい。
次に、本発明のポリエステルモノフィラメントは、JIS−L1013に記載の方法に準拠した引張強度が3.0cN/dtex以上で、且つJIS−L1013に記載の方法に準拠した引掛強度が3.0cN/dtex以上であることが必須である。引張強度および引掛強度のどちらか一方でも規定範囲未満の場合は、製織時に糸切れが頻発してしまうばかりか、得られる工業用織物の実用強度までもが低くなるなどの悪影響を及ぼすこととなる。なお、本発明のポリエステルモノフィラメントは、引張強度が3.0cN/dtex以上、且つ引掛強度が3.0cN/dtexであることを必須とするが、それぞれの実質的な強度範囲としては、引張強度が3.0cN/dtex〜7.0cN/dtex、また引掛強度が3.0cN/dtex〜8.0cN/dtexの範囲を満足していることが好ましい。
また、本発明のポリエステルモノフィラメントの繊維軸方向に垂直な断面の形状(以下、断面形状もしくは断面という)は、丸、楕円、3角、T、Y、H、+、5葉、6葉、7葉、8葉などの多様形状、正方形、長方形、菱形、ドッグボーン状および繭型などいかなる断面形状を有するものでもよい。
ここで、本発明のポリエステルモノフィラメントの直径は、その使用用途に合わせ適宜選択することができるが、通常は0.05〜3mm程度(異形断面の場合は、丸断面面積に換算して直径を算出する)の範囲のものが好適に使用される。
次に、本発明のポリエステルモノフィラメントの好ましい製造方法について例を挙げて説明する。
本発明のポリエステルモノフィラメントは、モノフィラメント表面に炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aから成る被覆層を形成していることを特徴とするが、この被覆層の形成方法としては、オフライン式の別工程で、炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aを、ディップ方式やローラータッチ方式、ノズルやドクター・ナイフ法などによって、従来公知の製法にて製造されたモノフィラメント表面に炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aを塗布し、その後、加熱乾燥させて被覆層を形成する方法が挙げられる。
また、従来公知のモノフィラメントの製造工程において、その製造工程の中に炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aをモノフィラメント表面に塗布する工程を設け、塗布後に加熱乾燥する工程を通過させることにより、オンラインにて被覆層を形成させることも可能である。なお、オンラインにて被覆層を形成させる場合に、熱可塑性樹脂Aを塗布後の加熱乾燥工程は、加熱延伸ゾーンや加熱セットゾーンを兼ねた工程としても何ら支障はない。
ここで、モノフィラメントの表面に、炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aから成る被覆層を形成させる場合には、熱可塑性樹脂Aに添加する炭酸カルシウムを熱可塑性樹脂Aに均一に微分散した状態で被覆させることが、安定した耐摩耗性を得るために望ましい。このため、熱可塑性樹脂Aは、水や有機溶剤を分散剤として溶解あるいは微分散させたエマルションとした状態で炭酸カルシウムを混合することが好ましい。
なお、熱可塑性樹脂Aの分散剤として、炭化水素系、アルコール系、エステル系、ケトン系、エーテル系などの有機溶剤を使用する場合には、塗布した樹脂の乾燥工程に排気、防火、空気清浄設備などを追加する必要があるため、分散剤には水を用いることが好ましい。
ここで、被覆層の厚さの変更は、炭酸カルシウム、熱可塑性樹脂Aおよび分散剤から成るエマルションの液粘度を変更する方法が好ましい。
また、熱可塑性樹脂Aを被覆層としてモノフィラメントの表面に形成させるには、加熱乾燥する必要があり、乾燥条件は熱可塑性樹脂Aの融点より20℃〜50℃高い温度にて加熱乾燥することが好ましい。
かくして得られる本発明のポリエステルモノフィラメントは、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度および引掛強度の両特性を具備し、従来のポリエステルモノフィラメントと比較して極めて優れた耐摩耗性を有することから、各種工業用織物用途の分野で広く用いることが可能であり、中でも長期間に亘る使用が可能となる耐摩耗性向上の要求が強い抄紙ドライヤーカンバス、抄紙ワイヤーなどの抄紙用織物の構成素材として極めて好適である。
以下、本発明のポリエステルモノフィラメントの実施例に関し、更に詳細に説明をするが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、各種特性の評価は次に説明する方法に従って行った。
[炭酸カルシウムの平均粒子径]
粒子のエチレングリコール分散液を水に希釈、光線透過率80〜95%になるように水希釈濃度を調整し、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA700)を用いて、測定温度25℃、循環速度570mL/minで測定した等価球形分布における粒度分布50%の粒子径を平均粒子径とした。
[ポリエステル系樹脂の固有粘度]
オルトクロロフェノール溶液中25℃で測定した粘度より求めた。
[ポリエステル系樹脂の融点]
示差走査熱量測定装置(セイコー電子工業社製DSC220)を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
[ポリエステルモノフィラメントの引張強度]
JIS−L1013に記載の方法に準拠して、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)を使用して測定し、試料が切断したときの強力を求めた。また、その強力を繊度で割り返して強度(cN/dtex)を算出した。
[ポリエステルモノフィラメントの引掛強度]
JIS−L1013に記載の方法に準拠して、引張試験器((株)オリエンテック製 “テンシロン”(登録商標)/UTM−III−100)を使用して測定し、試料が切断したときの強力を求めた。また、その強力を繊度で割り返して強度(cN/dtex)を算出した。
[ポリエステルモノフィラメントの耐摩耗性]
ポリエステルモノフィラメントの一方の先端に0.20cN/dtexの荷重をかけると共に、他方の先端を摺動装置につなぎ、炭酸カルシウム粉末中にてSUS製金属摩擦子(3Φ)と直交、接触させた。次に、試料を往復120回/minの速度で摺動させ、試料が破断するまでの摺動往復回数を破断回数とした。同一試料につき各10本のポリエステルモノフィラメントについて夫々破断するまでの破断回数を測定、平均値を算出し、以下の基準で判断した。
[炭酸カルシウムの平均粒子径]
粒子のエチレングリコール分散液を水に希釈、光線透過率80〜95%になるように水希釈濃度を調整し、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA700)を用いて、測定温度25℃、循環速度570mL/minで測定した等価球形分布における粒度分布50%の粒子径を平均粒子径とした。
[ポリエステル系樹脂の固有粘度]
オルトクロロフェノール溶液中25℃で測定した粘度より求めた。
[ポリエステル系樹脂の融点]
示差走査熱量測定装置(セイコー電子工業社製DSC220)を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
[ポリエステルモノフィラメントの引張強度]
JIS−L1013に記載の方法に準拠して、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)を使用して測定し、試料が切断したときの強力を求めた。また、その強力を繊度で割り返して強度(cN/dtex)を算出した。
[ポリエステルモノフィラメントの引掛強度]
JIS−L1013に記載の方法に準拠して、引張試験器((株)オリエンテック製 “テンシロン”(登録商標)/UTM−III−100)を使用して測定し、試料が切断したときの強力を求めた。また、その強力を繊度で割り返して強度(cN/dtex)を算出した。
[ポリエステルモノフィラメントの耐摩耗性]
ポリエステルモノフィラメントの一方の先端に0.20cN/dtexの荷重をかけると共に、他方の先端を摺動装置につなぎ、炭酸カルシウム粉末中にてSUS製金属摩擦子(3Φ)と直交、接触させた。次に、試料を往復120回/minの速度で摺動させ、試料が破断するまでの摺動往復回数を破断回数とした。同一試料につき各10本のポリエステルモノフィラメントについて夫々破断するまでの破断回数を測定、平均値を算出し、以下の基準で判断した。
破断回数200回以上・・・耐摩耗性が良好である、
破断回数200回未満・・・耐摩耗性が不十分である。
[製織時の工程通過性]
本発明のPETモノフィラメントを経糸および緯糸に使用して平織物を作製した。この平織物を長さ方向に5m製織するに際し、経糸切れおよび緯糸打ち込み時の糸切れ状況を確認し、以下の基準で判断した。
破断回数200回未満・・・耐摩耗性が不十分である。
[製織時の工程通過性]
本発明のPETモノフィラメントを経糸および緯糸に使用して平織物を作製した。この平織物を長さ方向に5m製織するに際し、経糸切れおよび緯糸打ち込み時の糸切れ状況を確認し、以下の基準で判断した。
○・・・経糸切れおよび緯糸打ち込み時の糸切れが、いずれも1回以下であった、
×・・・経糸切れおよび緯糸打ち込み時の糸切れのいずれかが2回以上発生した。
×・・・経糸切れおよび緯糸打ち込み時の糸切れのいずれかが2回以上発生した。
[実施例1]
ポリエステル系樹脂として、固有粘度1.03のPETをエクストルダーの入口より供給し、300℃にて溶融後、計量ポンプにて計量を行い、口金から押出した後、直ちに70℃の温水浴中で冷却固化させて未延伸糸を得た。
ポリエステル系樹脂として、固有粘度1.03のPETをエクストルダーの入口より供給し、300℃にて溶融後、計量ポンプにて計量を行い、口金から押出した後、直ちに70℃の温水浴中で冷却固化させて未延伸糸を得た。
引き続き、前記未延伸糸を常法に従い、合計5.5倍の延伸および0.85倍の熱セットを行ない、断面形状が円形の直径0.40mmのモノフィラメントを得た。
次いで、熱可塑性樹脂Aとして、融点が210℃の共重合ポリエステル樹脂を10重量%、および平均粒子径3.4μmの炭酸カルシウムを3重量%含有させた水系エマルションを作製、これをディップ方式にてモノフィラメント表面へ塗布後、230℃で1分間乾燥して、炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aから成る被覆層を形成させたポリエステルモノフィラメントを得た。
なお、得られたポリエステルモノフィラメントの炭酸カルシウムの含有量は、ポリエステルモノフィラメント全量100重量部に対して1.2重量部であった。得られたポリエステルモノフィラメントの引張強度、引掛強度、耐摩耗性および製織時の工程通過性を表1に示す。
[実施例2〜4]
ポリエステルモノフィラメントの被覆層を形成する炭酸カルシウムの含有量および平均粒子径(粒度分布からの重量50%径)、またはモノフィラメントに使用するポリエステル系樹脂の固有粘度を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法にてポリエステルモノフィラメントを得た。
ポリエステルモノフィラメントの被覆層を形成する炭酸カルシウムの含有量および平均粒子径(粒度分布からの重量50%径)、またはモノフィラメントに使用するポリエステル系樹脂の固有粘度を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法にてポリエステルモノフィラメントを得た。
[比較例1〜3]
ポリエステルモノフィラメントへの炭酸カルシウムの付与方法および含有量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にてポリエステルモノフィラメントを得た。
ポリエステルモノフィラメントへの炭酸カルシウムの付与方法および含有量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にてポリエステルモノフィラメントを得た。
表1から明らかな通り、本発明におけるポリエステルモノフィラメント、すなわちポリエステル系樹脂から成るモノフィラメント表面に、炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aから成る被覆層が形成され、引張強度が3.0cN/dtex以上、且つ引掛強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とするポリエステルモノフィラメント(実施例1〜4)は、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度および引掛強度の両特性を具備し、極めて良好な耐摩耗性を備えていることから、工業用織物の構成素材として用いるポリエステルモノフィラメントとして、極めて好適に利用できるものであることがわかる。
これに対して、本発明の規定を満たさないポリエステルモノフィラメント、すなわち炭酸カルシウムを含まないポリエステルモノフィラメント(比較例1)、または炭酸カルシウムを内添したポリエステルモノフィラメント(比較例2および3)などは、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして求められる引張強度および引掛強度が不十分であり、また耐摩耗性が低いなど工業用織物用原糸としての要求特性を満足していないことがわかる。
本発明のポリエステルモノフィラメントは、工業用織物に利用するポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張強度および引掛強度の両特性を具備し、従来のポリエステルモノフィラメントと比較して極めて良好な耐摩耗性を備えていることから、工業用織物の構成素材として極めて好適に利用することができる。
Claims (8)
- ポリエステル系樹脂から成るモノフィラメントの表面に、炭酸カルシウムを含有する熱可塑性樹脂Aから成る被覆層が形成されたモノフィラメントであって、引張強度が3.0cN/dtex以上、且つ引掛強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とするポリエステルモノフィラメント。
- 前記炭酸カルシウムの含有量が、ポリエステルモノフィラメントの全量100重量部に対して0.5〜3重量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルモノフィラメント。
- 前記炭酸カルシウムの平均粒子径(粒度分布からの重量50%径)が1〜10μmであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルモノフィラメント。
- 前記熱可塑性樹脂Aの融点が200℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステルモノフィラメント。
- 前記熱可塑性樹脂Aが共重合ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステルモノフィラメント。
- 前記ポリエステル系樹脂の固有粘度が0.65〜1.30であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステルモノフィラメント。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステルモノフィラメントを経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用したことを特徴とする工業用織物。
- 抄紙用織物であることを特徴とする請求項7に記載の工業用織物。
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JP2012087112A JP2013216989A (ja) | 2012-04-06 | 2012-04-06 | ポリエステルモノフィラメントおよび工業用織物 |
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JP2012087112A JP2013216989A (ja) | 2012-04-06 | 2012-04-06 | ポリエステルモノフィラメントおよび工業用織物 |
Publications (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101741464B1 (ko) | 2016-08-29 | 2017-05-30 | 영남대학교 산학협력단 | 열가소성수지가 코팅된 모노필라멘트 코팅사의 연속적인 제조방법 |
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2012
- 2012-04-06 JP JP2012087112A patent/JP2013216989A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR101741464B1 (ko) | 2016-08-29 | 2017-05-30 | 영남대학교 산학협력단 | 열가소성수지가 코팅된 모노필라멘트 코팅사의 연속적인 제조방법 |
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