JP2012211360A - 溶接熱影響部の靭性と均一伸びに優れた高強度鋼及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高強度で均一伸びが大きく、曲げ加工性に優れ、且つ溶接部の靭性にも優れた鋼材を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.4〜2.5%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cr:1.5〜5.5%、Ti:0.008〜0.030%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.007%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、金属組織のうち、残留オーステナイト(γ)の体積分率が2〜10%であることを特徴とする溶接熱影響部の靭性と均一伸びに優れた高強度鋼。
【選択図】なし
【解決手段】質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.4〜2.5%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cr:1.5〜5.5%、Ti:0.008〜0.030%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.007%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、金属組織のうち、残留オーステナイト(γ)の体積分率が2〜10%であることを特徴とする溶接熱影響部の靭性と均一伸びに優れた高強度鋼。
【選択図】なし
Description
本発明は溶接熱影響部の靭性と均一伸びに優れた高強度鋼及びその製造方法に関するものであり、とくに、曲げ加工が行われた上、アーク溶接により組み立てられる用途に用いられる高強度鋼(特には引張強度が980MPa以上)に関するものである。このような鋼はクレーンのブームやショベルカーのアームなど高強度を要求される用途に好適である。
高強度と延性を兼ね備えた鋼板として残留オーステナイト(γ)鋼板が注目されている。これは鋼中にオーステナイト(γ相)組織が残留しており、マルテンサイト変態開始温度(Ms点)以上の温度で加工変形させると、応力によって残留オーステナイト(以下残留γと呼ぶ)がマルテンサイトに誘起変態して大きな伸びが得られる鋼板である。
特許文献1には、面積分率で残留γを1%以上、ベイニティックフェライトおよびマルテンサイトを合計で80%以上含有し、引張強度が980MPa以上の高強度薄鋼板が開示されている。この文献では残留γが分解して炭化物が生成するのを抑え、所望の残留γを得るためにSiを1.5質量%程度添加している。
また、特許文献2には、残留γ鋼板ではないが、鋼中の介在物間隔を大きくすることで曲げ加工性を向上させた高強度(特には引張強度が880MPa以上)の冷延鋼板が開示されている。
また、特許文献3には残留γを体積分率で2〜10%含有する溶接熱影響部の靭性と均一伸びに優れた鋼板が開示されている。ここに開示されている鋼板は引張強度TS:440〜550MPa、全伸び:20〜28%程度である
一般的に高強度と伸び、高強度と溶接熱影響部の靭性を両立することは困難であるとされるが、強度と伸びを両立する方法として残留オーステナイトを利用することが考えられる。
特許文献1には残留γを含有する引張強度980MPa以上の高強度鋼が開示されているが、ここに開示される技術は薄鋼板を対象としたもので溶接部の靭性は考慮されていない。また、特許文献3には残留γを活用して、均一伸びと溶接熱影響部の靭性の両方に優れる鋼板が開示されている。しかし、この鋼板の引張強度は、440〜550MPa程度であり、本願が目的とする980MPa以上の引張強度には遠く及ばない。
一方、特許文献2には曲げ加工性を向上させた高強度(特には引張強度が880MPa以上)の鋼板が開示されている。しかしながらこの鋼板は薄鋼板を対象としたもので溶接熱影響部の靭性は考慮されていない。
本発明は、引張強度980MPa以上の高強度でありながら均一伸びが大きく、曲げ加工性に優れ、且つ溶接部の靭性にも優れた鋼材を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、以下の通りである。
第一の発明は、質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.4〜2.5%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cr:1.5〜5.5%、Ti:0.008〜0.030%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.007%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、金属組織のうち、残留オーステナイト(γ)の体積分率が2〜10%であることを特徴とする溶接熱影響部の靭性と均一伸びに優れた高強度鋼である。
第二の発明は、第一の発明に記載の成分を有する鋼を熱間圧延終了後、650℃以上の温度から10℃/s以上の冷却速度で加速冷却し、550℃以下450℃以上の温度で加速冷却を停止し、その後、5℃/s以下の冷却速度で冷却することを特徴とする溶接熱影響部の靭性と均一伸びに優れた高強度鋼の製造方法である。
本発明によれば引張強度が980MPaを超える高強度でありながら均一伸びが大きく、曲げ加工を加えることができ、また溶接熱影響部の靭性も十分な鋼が得られるため、建設機械部品などの高強度が要求される部品に適用でき、さらにその製造も容易となり産業上の効果が大きい。
発明者は、高強度と溶接部靭性、均一伸びの相反する特性の両立化を目指して、最適な組織形態について鋭意研究を重ねた。その結果、ベイナイトの母材中に残留γを一定量以上含有させることで、高強度でありながら高い均一伸びが確保できることを知見した。また残留γの生成とHAZ靭性兼備の観点から、適正な成分系(SiとCrを多量に含有させる)を見出し、本発明を完成した。
以下に本発明の各構成要件の限定理由について説明する。
以下に本発明の各構成要件の限定理由について説明する。
1.成分組成について
本発明の鋼材では、その化学成分組成も適切に調整する必要があるが、各成分の範囲の限定理由は以下の通りである。なお、成分%は、すべて質量%を意味する。
本発明の鋼材では、その化学成分組成も適切に調整する必要があるが、各成分の範囲の限定理由は以下の通りである。なお、成分%は、すべて質量%を意味する。
C:0.15〜0.30%
Cは鋼板の強度を確保するために必要な元素であり、また残留γを確保するために必要な元素である。このためC含有量は0.15%以上とする。しかし、0.30%を超えて含有すると靭性が却って低下するため、C含有量は0.15〜0.30%の範囲とする。好ましくは0.17〜0.25%の範囲である。
Cは鋼板の強度を確保するために必要な元素であり、また残留γを確保するために必要な元素である。このためC含有量は0.15%以上とする。しかし、0.30%を超えて含有すると靭性が却って低下するため、C含有量は0.15〜0.30%の範囲とする。好ましくは0.17〜0.25%の範囲である。
Si:0.4〜2.5%
Siは鋼板の強度を確保するために有効な元素であり、またセメンタイトの生成を抑制し残留γ生成に必要な元素である。このためSi含有量は0.4%以上とする。しかし、2.5%を超えて含有すると溶接熱影響部靭性が却って低下するため、Si含有量は、0.4〜2.5%の範囲とする。好ましくは0.5〜1.8%の範囲である。
Siは鋼板の強度を確保するために有効な元素であり、またセメンタイトの生成を抑制し残留γ生成に必要な元素である。このためSi含有量は0.4%以上とする。しかし、2.5%を超えて含有すると溶接熱影響部靭性が却って低下するため、Si含有量は、0.4〜2.5%の範囲とする。好ましくは0.5〜1.8%の範囲である。
Mn:1.5〜2.5%
Mnは焼入れ性を向上させて鋼板強度を確保する上で有効な元素であり、こうした効果を発揮させるためには、Mnは1.5%以上含有する必要がある。しかし、2.5%を超えて含有すると、母材靭性が劣化するので、Mn含有量は1.5〜2.5%の範囲とする。好ましくは1.7〜2.3%の範囲である。
Mnは焼入れ性を向上させて鋼板強度を確保する上で有効な元素であり、こうした効果を発揮させるためには、Mnは1.5%以上含有する必要がある。しかし、2.5%を超えて含有すると、母材靭性が劣化するので、Mn含有量は1.5〜2.5%の範囲とする。好ましくは1.7〜2.3%の範囲である。
P:0.015%以下
Pは不可避的に混入してくる不純物であり、母材およびHAZの靭性に悪影響を及ぼすのでできるだけ少ない方が好ましい。こうした観点から、P含有量は0.015%以下とする。
Pは不可避的に混入してくる不純物であり、母材およびHAZの靭性に悪影響を及ぼすのでできるだけ少ない方が好ましい。こうした観点から、P含有量は0.015%以下とする。
S:0.005%以下
Sは、鋼板中の合金元素と化合して種々の介在物を形成し、鋼板の延性や靭性に有害に作用する不純物であるので、できるだけ少ない方が好ましい。こうした観点から、S含有量は0.005%以下とする。
Sは、鋼板中の合金元素と化合して種々の介在物を形成し、鋼板の延性や靭性に有害に作用する不純物であるので、できるだけ少ない方が好ましい。こうした観点から、S含有量は0.005%以下とする。
Cr:1.5〜5.5%
Crは焼入れ性を向上させて鋼板強度を確保する上で有効な元素であり、また焼入れ性を向上させて溶接熱影響部の組織を下部ベイナイトとして溶接部の靭性を確保するために有効である。こうした効果を発揮するには、Crは1.5%以上含有する必要がある。しかし、5.5%を超えて含有すると、溶接部靭性が劣化するので、Cr含有量は1.5〜5.5%の範囲とする。好ましくは2.0〜4.5%の範囲である。
Crは焼入れ性を向上させて鋼板強度を確保する上で有効な元素であり、また焼入れ性を向上させて溶接熱影響部の組織を下部ベイナイトとして溶接部の靭性を確保するために有効である。こうした効果を発揮するには、Crは1.5%以上含有する必要がある。しかし、5.5%を超えて含有すると、溶接部靭性が劣化するので、Cr含有量は1.5〜5.5%の範囲とする。好ましくは2.0〜4.5%の範囲である。
Ti:0.008〜0.030%
Tiは、鋼中にTiNを分散させて圧延前加熱時の残留γ粒の粗大化を防止する効果がある。こうした効果を発揮するには、Tiは0.008%以上含有する必要がある。しかし、0.030%を超えて含有すると、母材および溶接熱影響部(HAZ)の靭性が劣化するので、Ti含有量は0.008〜0.030%の範囲とする。好ましくは0.010〜0.020%の範囲である。
Tiは、鋼中にTiNを分散させて圧延前加熱時の残留γ粒の粗大化を防止する効果がある。こうした効果を発揮するには、Tiは0.008%以上含有する必要がある。しかし、0.030%を超えて含有すると、母材および溶接熱影響部(HAZ)の靭性が劣化するので、Ti含有量は0.008〜0.030%の範囲とする。好ましくは0.010〜0.020%の範囲である。
Al:0.005〜0.1%
Alは脱酸剤として有効な元素であり、0.005%以上含有する必要がある。またAlは残留γの生成を促進する元素であるが、本発明では残留γを生成させる元素としてはSiを0.4%以上含有するので、残留γ生成目的ではAlの含有は必要ないし、また、0.1%を超えてAlを含有すると溶接熱影響部の靭性が劣化するので、Al含有量は0.005〜0.1%の範囲とする。好ましくは0.02%〜0.06%の範囲である。なお、Al含有量は酸可溶Alを測定した。
Alは脱酸剤として有効な元素であり、0.005%以上含有する必要がある。またAlは残留γの生成を促進する元素であるが、本発明では残留γを生成させる元素としてはSiを0.4%以上含有するので、残留γ生成目的ではAlの含有は必要ないし、また、0.1%を超えてAlを含有すると溶接熱影響部の靭性が劣化するので、Al含有量は0.005〜0.1%の範囲とする。好ましくは0.02%〜0.06%の範囲である。なお、Al含有量は酸可溶Alを測定した。
N:0.0005〜0.007%
Nは、Al、Ti等と結合して窒化物を形成して母材組織を微細化させる効果があるとともに、母材圧延前の加熱時および溶接時のγ粒の微細化等に寄与する。こうした効果を発揮させるには、Nは0.0005%以上含有する必要がある。しかし、0.007%を超えて含有すると窒化物が粗大となり結晶粒の微細化効果がなくなり溶接部靭性が低下するので、N含有量は0.0005〜0.007%の範囲とする。好ましくは0.0030〜0.0060%の範囲である。
Nは、Al、Ti等と結合して窒化物を形成して母材組織を微細化させる効果があるとともに、母材圧延前の加熱時および溶接時のγ粒の微細化等に寄与する。こうした効果を発揮させるには、Nは0.0005%以上含有する必要がある。しかし、0.007%を超えて含有すると窒化物が粗大となり結晶粒の微細化効果がなくなり溶接部靭性が低下するので、N含有量は0.0005〜0.007%の範囲とする。好ましくは0.0030〜0.0060%の範囲である。
なお、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
2.金属組織について
本発明では、母材中の残留γの体積分率を2〜10%の範囲とする。残留γの体積分率が2%未満では十分な均一伸びが得られず、残留γの体積分率が10%を超えると、溶接熱影響部の靭性の確保ができなくなるため、母材中の残留γの体積分率は2〜10%の範囲とする。
本発明では、母材中の残留γの体積分率を2〜10%の範囲とする。残留γの体積分率が2%未満では十分な均一伸びが得られず、残留γの体積分率が10%を超えると、溶接熱影響部の靭性の確保ができなくなるため、母材中の残留γの体積分率は2〜10%の範囲とする。
なお、残留γ体積分率は、各試料の深さt/2位置(t:板厚)について鏡面研磨した試験片を、X線回折によって、リーベルト法でα−Fe(200)面とγ−Fe(200)面のピーク強度比から理論強度比を計算によって求め、残留γ分率を求めた。
以上述べた金属組織は、上述した成分組成の鋼を用いて、以下に述べる製造方法で製造することにより得ることができる。
3.製造製造条件について
上述した成分組成を有する鋼を、転炉、電気炉等の溶製手段で常法により溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法等で常法によりスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、溶製方法、鋳造方法については上記した方法に限定されるものではない。
上述した成分組成を有する鋼を、転炉、電気炉等の溶製手段で常法により溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法等で常法によりスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、溶製方法、鋳造方法については上記した方法に限定されるものではない。
なお、本発明において、加熱温度、圧延終了温度、冷却終了温度等の温度は鋼板の平均温度とする。平均温度は、スラブもしくは鋼板の表面温度より、板厚、熱伝導等のパラメータを考慮して、計算により求めたものである。また、冷却速度は、熱間圧延終了後、冷却終了温度(550℃以下450℃以上)までの冷却に必要な温度差をその冷却を行うに要した時間で割った平均冷却速度である。
以下、各製造製造条件について説明する。
加速冷却開始温度:650℃以上、冷却速度:10℃/s以上
650℃以上の温度から加速冷却を開始するのは、これ未満の温度から加速冷却を開始すると粒界フェライトが生成し、母材の強度が低下する上、母材靭性も低下するためである。加速冷却の開始温度は熱間圧延完了後、高いほど好ましく、加速冷却することでベイナイト主体の組織とする。
650℃以上の温度から加速冷却を開始するのは、これ未満の温度から加速冷却を開始すると粒界フェライトが生成し、母材の強度が低下する上、母材靭性も低下するためである。加速冷却の開始温度は熱間圧延完了後、高いほど好ましく、加速冷却することでベイナイト主体の組織とする。
また、冷却速度を10℃/s以上とするのは、ベイナイト主体の組織とするためであり、これ未満の冷却速度で冷却すると粒界フェライトが生成し、母材の強度が低下する上、母材靭性も低下するためである。
冷却停止温度:550℃以下450℃以上
550℃以下450℃以上の温度で加速冷却を停止するのは、ベイナイト変態が完全に終了する前に冷却速度を落として未変態のγにCを拡散、濃化させる時間をとるためである。加速冷却停止後は、変態したベイナイト(α)から未変態γにCが拡散される。未変態γ中にCが濃化するとγが安定化され室温まで変態することなく残留し残留γとなる。
550℃以下450℃以上の温度で加速冷却を停止するのは、ベイナイト変態が完全に終了する前に冷却速度を落として未変態のγにCを拡散、濃化させる時間をとるためである。加速冷却停止後は、変態したベイナイト(α)から未変態γにCが拡散される。未変態γ中にCが濃化するとγが安定化され室温まで変態することなく残留し残留γとなる。
加速冷却停止後の冷却速度:5℃/s以下
加速冷却停止後の冷却速度を5℃/s以下とするのは未変態のγにCを拡散、濃化させる時間をとるためである。これを超える冷却速度ではCを拡散、濃化させる時間が十分ではなく、残留γ量が十分でなくなるからである。
加速冷却停止後の冷却速度を5℃/s以下とするのは未変態のγにCを拡散、濃化させる時間をとるためである。これを超える冷却速度ではCを拡散、濃化させる時間が十分ではなく、残留γ量が十分でなくなるからである。
以上の製造方法によりベイナイトを主体とし残留γを2〜10%含有する組織となり、TSが980MPaを超える高強度でありながら高い一様伸びが得られる。
下記表1に化学成分組成を示す各種鋼を、通常の溶製法によって溶製し、この溶鋼を冷却してスラブとした後、下記表2に示した製造条件で熱間圧延および冷却を行い、各種鋼板(厚み:15mm)を得た。
得られた各鋼板について、母材の残留γ分率、機械的特性(母材の引張特性、母材の衝撃特性)を下記の方法によって測定すると共に、HAZ靭性についても評価した。測定結果を、下記表3、4に示す。
残留γ体積分率の測定
残留γ体積分率は以下のように測定した。各鋼板の深さt/2位置(t:板厚)について鏡面研磨した試験片を、X線回折によって、リーベルト法でα−Fe(200)面とγ−Fe(200)面のピーク強度比から理論強度比を計算によって求め、残留γ分率を求めた。
残留γ体積分率は以下のように測定した。各鋼板の深さt/2位置(t:板厚)について鏡面研磨した試験片を、X線回折によって、リーベルト法でα−Fe(200)面とγ−Fe(200)面のピーク強度比から理論強度比を計算によって求め、残留γ分率を求めた。
母材の引張特性の評価
各鋼板のt/2部(t:板厚)の位置から丸棒引張試験片(平行部径:6mm、標点間距離:25mm)を採取し、JIS Z2241に従って引張試験を行うことによって、降伏応力YS(降伏点YP)および引張強さTSを測定した。TSが980MPa以上かつ均一伸び6%以上を合格とした。
各鋼板のt/2部(t:板厚)の位置から丸棒引張試験片(平行部径:6mm、標点間距離:25mm)を採取し、JIS Z2241に従って引張試験を行うことによって、降伏応力YS(降伏点YP)および引張強さTSを測定した。TSが980MPa以上かつ均一伸び6%以上を合格とした。
母材の衝撃特性(靭性)の評価
母材の衝撃特性(靭性)は、Vノッチシャルピー試験を行った。t/2部(t:板厚)から2mmVノッチ試験片(厚み10mm、試験片の長手方向が圧延方向に垂直)を採取し、JIS Z2242に従って試験を実施した。試験温度は0℃とし、n=3で試験を実施し、吸収エネルギーと脆性破面率を測定した。0℃の吸収エネルギーの平均が27J以上を合格とした。
母材の衝撃特性(靭性)は、Vノッチシャルピー試験を行った。t/2部(t:板厚)から2mmVノッチ試験片(厚み10mm、試験片の長手方向が圧延方向に垂直)を採取し、JIS Z2242に従って試験を実施した。試験温度は0℃とし、n=3で試験を実施し、吸収エネルギーと脆性破面率を測定した。0℃の吸収エネルギーの平均が27J以上を合格とした。
HAZ靭性試験
HAZ靭性の評価としてはサブマージアーク溶接(8kJ/mm(10mmt))を行ったときの熱サイクルを模擬した以下の熱サイクルを加えた後、熱サイクルを加えた部分からシャルピー試験片を採取し0℃でシャルピー衝撃試験を行うことで行った。n=3で試験を実施し、吸収エネルギーと脆性破面率を測定した。0℃の吸収エネルギーの平均が27J以上を合格とした。
HAZ靭性の評価としてはサブマージアーク溶接(8kJ/mm(10mmt))を行ったときの熱サイクルを模擬した以下の熱サイクルを加えた後、熱サイクルを加えた部分からシャルピー試験片を採取し0℃でシャルピー衝撃試験を行うことで行った。n=3で試験を実施し、吸収エネルギーと脆性破面率を測定した。0℃の吸収エネルギーの平均が27J以上を合格とした。
溶接再現熱サイクル 加熱温度:1430℃で1秒保持、その後、900℃まで25℃/sで冷却し、900℃以下は冷却速度1℃/sで室温まで冷却。
再現熱サイクル試験片は12mm×12mm×120mmの角棒状のものを鋼板の1/2t(長手方向が圧延方向と垂直)から採取し、中央部分に熱サイクルを加え、ここにシャルピー試験片のノッチがくるように2mmVノッチ試験片(10mmt)を作製し、シャルピー試験を行った。
鋼A1、A2、A3、A4は成分が本発明範囲から外れた比較例である。A1、A2はTSが十分でない上、HAZの靭性も目標を下回っている。A3、A4は、強度は十分であるが母材およびHAZの靭性が低い。
鋼B1、B2、B3は発明例である。強度、均一伸び、母材靭性、HAZ靭性とも目標を満足している。
鋼B4は成分が発明範囲から外れた比較例である。均一伸び、母材靭性、HAZ靭性とも目標を満足していない。
鋼C1、C2、C3は発明例である。強度、均一伸び、母材靭性、HAZ靭性とも目標を満足している。
鋼C4は成分が発明範囲から外れた比較例である。母材靭性、HAZ靭性が目標を満足していない。
鋼D1、D2、D3、D4は成分が発明範囲から外れた比較例である。いずれもHAZの靭性が目標を下回っている。
鋼B1、B2、B3は発明例である。強度、均一伸び、母材靭性、HAZ靭性とも目標を満足している。
鋼B4は成分が発明範囲から外れた比較例である。均一伸び、母材靭性、HAZ靭性とも目標を満足していない。
鋼C1、C2、C3は発明例である。強度、均一伸び、母材靭性、HAZ靭性とも目標を満足している。
鋼C4は成分が発明範囲から外れた比較例である。母材靭性、HAZ靭性が目標を満足していない。
鋼D1、D2、D3、D4は成分が発明範囲から外れた比較例である。いずれもHAZの靭性が目標を下回っている。
実施例1で作製した鋼B1、B2、B3、B4、C1、C2、C3、C4の鋼板を用いて曲げ試験を行った。曲げ試験片は圧延方向に300mm長さで、幅が30mm、厚みは圧延まま(15mm)、N=3を各鋼板から採取し、曲げ試験は曲げ半径50mmで180°まで行った。曲げ試験を行ったのち、割れの有無を確認した。結果を表5に示す。
発明例であるB1、B2、B3、C1、C2、C3は割れが発生することなく曲げることができたが、比較例のB4、C4は割れが発生した。
前記表1の鋼B2を、通常の溶製法によって溶製し、この溶鋼を冷却してスラブとした後、下記表6に示した製造製造条件で熱間圧延および冷却を行い、各種鋼板(厚み:15mm)を得た。
得られた各鋼板について、母材の残留γ分率、機械的特性(母材の引張特性、母材の衝撃特性)を実施例1と同様の方法によって測定した。測定結果を、下記表7に示す。
製造条件1は加速冷却開始温度、加速冷却速度、加速冷却停止温度、加速冷却停止後冷却速度が本発明の範囲の発明例である。強度、均一伸び、母材靭性とも目標を満足している。
製造条件2は加速冷却開始温度が本発明の範囲を下回った比較例である。加速冷却開始が遅れたため粒界にフェライトが生成し、母材靭性が低下し、均一伸びも小さい。
製造条件3は加速冷却速度が本発明の範囲を下回った比較例である。加速冷却速度が小さいため粒界フェライトが生成し、母材靭性が低下し、均一伸びも小さい。
製造条件2は加速冷却開始温度が本発明の範囲を下回った比較例である。加速冷却開始が遅れたため粒界にフェライトが生成し、母材靭性が低下し、均一伸びも小さい。
製造条件3は加速冷却速度が本発明の範囲を下回った比較例である。加速冷却速度が小さいため粒界フェライトが生成し、母材靭性が低下し、均一伸びも小さい。
製造条件4は加速冷却停止温度が本発明の範囲を下回った比較例である。加速冷却停止温度が低いためベイナイト変態が完全に終わってしまい、未変態γに炭素を濃化させることができず残留γ量が不足し、均一伸びが小さい。
製造条件5は加速冷却停止後の冷却速度が本発明の範囲を上回った比較例である。加速冷却停止後の冷却速度が速いため未変態γに炭素を濃化させる十分な時間がなく、残留γ量が不足し、均一伸びが小さい。
製造条件5は加速冷却停止後の冷却速度が本発明の範囲を上回った比較例である。加速冷却停止後の冷却速度が速いため未変態γに炭素を濃化させる十分な時間がなく、残留γ量が不足し、均一伸びが小さい。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.4〜2.5%、Mn:1.5〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cr:1.5〜5.5%、Ti:0.008〜0.030%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.007%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、金属組織のうち、残留オーステナイト(γ)の体積分率が2〜10%であることを特徴とする溶接熱影響部の靭性と均一伸びに優れた高強度鋼。
- 請求項1に記載の成分を有する鋼を熱間圧延終了後、650℃以上の温度から10℃/s以上の冷却速度で加速冷却し、550℃以下450℃以上の温度で加速冷却を停止し、その後、5℃/s以下の冷却速度で冷却することを特徴とする溶接熱影響部の靭性と均一伸びに優れた高強度鋼の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011077123A JP2012211360A (ja) | 2011-03-31 | 2011-03-31 | 溶接熱影響部の靭性と均一伸びに優れた高強度鋼及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2011077123A JP2012211360A (ja) | 2011-03-31 | 2011-03-31 | 溶接熱影響部の靭性と均一伸びに優れた高強度鋼及びその製造方法 |
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JP (1) | JP2012211360A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105986190A (zh) * | 2015-02-25 | 2016-10-05 | 鞍钢股份有限公司 | 一种高强高韧性起重机臂架用管及其制造方法 |
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2011
- 2011-03-31 JP JP2011077123A patent/JP2012211360A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN105986190A (zh) * | 2015-02-25 | 2016-10-05 | 鞍钢股份有限公司 | 一种高强高韧性起重机臂架用管及其制造方法 |
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