JP2012210875A - 船舶用自動操舵装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】制御対象18からの検出方位から外乱を除去した推定値を出力する推定器24と、推定器からの推定値と設定方位から得られる値に対してフィードバックゲインを乗じて命令舵角を出力する状態フィードバック制御器22とを有するフィードバック制御器12を備え、命令舵角に応じて舵角を経て船体に作用させる操舵機及び船体を含む制御対象18と共に閉ループを構成する。フィードバックループの特性多項式と、船体モデルと波浪モデルと舵角オフセットモデルとを推定する多項式からなる推定器24の特性多項式からなる閉ループの特性多項式により、推定器の船体モデルの固有角周波数ωeを設定する。
【選択図】図2
Description
ここでは、推定器の特性多項式として、
と置き、λe2は、波浪モデルが仮に無いとしたときの船体モデルの状態量を推定するための特性多項式であり、ζe、ωeがそれぞれ船体モデルの状態量を推定するための減衰係数、固有周波数としたときに、ωeを操舵系周波数ωfのρ(>1)倍(以下、ρ:推定係数)に設定し、ζeを1/√2に設定するようにして推定器を設計することにより、閉ループ安定性を低下させる要因となる推定角速度のパラメータ不確かさによる推定誤差を低減させることができる、ことを見出した。
前記推定器の特性多項式は、船体モデルと波浪モデルと舵角オフセットモデルとを推定する多項式からなるものとし、それぞれ以下で表し、
本発明で対象とする船舶用自動操舵装置10の保針モードは、図1に示すように操舵機14及び船体16を含む制御対象18を設定方位ψRに船首方位ψを追従させるため、フィードバック制御器12で偏差
の振幅が制限以下と見なせるので操舵機を省略する(δ=δc)。なお設定方位ψRは保針時一定になるため、簡単化のためψR=0とする。
図1に示した制御対象18は、操舵機14を除き、船体モデルと外乱モデルとから構成される。
船体モデルは、図1Aに示される野本の線形モデル
外乱モデルは、図2に示すように、舵角オフセットモデルと波浪モデルとからなる。舵角オフセットモデルは風などに誘起された方位軸回りに作用するモーメントを舵角換算したものとする。波浪モデルは白色ノイズが入力した狭帯域フィルタの出力を方位換算したものとする。
1.3.1 フィードバック制御器
フィードバック制御器12は、図2に示すように状態フィードバック制御器22と推定器(オブザーバ)24とからなる。閉ループ制御系は制御対象18とフィードバック制御器12とから構成し
閉ループ特性行列は、推定誤差を
フィードバックループ、推定ループおよび波浪モデルのノミナル値の特性多項式を
状態フィードバック制御器22において、ノミナル値によるフィードバックループの状態フィードバックゲインを定める。状態フィードバックは図2に示すように、PD制御を用いており、
2次の推定ゲインは、図3Aに示される外乱無しの船体モデルのみで設計される2次推定器におけるk1(=k11)、k2(=k21)である。
特性多項式の設計パラメータと制御パラメータを、以下表1にまとめる。
前章で検討したように、設計は、推定器の減衰係数ζeと推定係数ρに帰着する。まず、特性根で推定根を不安定にさせるパラメータ不確かさを特定し、仕様を定める。次いで、減衰係数ζeを推定ループ単体から推定誤差が低減する適正値を設定する。そして閉ループからρに対する仕様付近の推定根の特性を明らかにし、解の予測値を設定し、ρの求解算法を推定根特性及び予測値から算出する。
2.1.1 特性多項式の導出
(12)式の特性行列の行列式である特性多項式は、ノミナル値による特性多項式とパラメータ不確かさによる多項式との和に整理される。特性多項式を因数分解すると特性根が得られる。すなわち
パラメータ不確かさが閉ループ制御系に及ぼす影響を検討する。特性多項式Dc(s)において、パラメータ不確かさΔa,Δbを開ループゲインと見なせば、根軌跡手法が適用でき、閉ループ安定性を検討できる。開ループ伝達関数GH(s)を(31)式より
・Δa>0の場合はフィードバックループが不安定傾向になり、推定ループは間接的に影響する。よって、ζfの調整によって直接改善することができる。
・Δb>0の場合は推定ループが不安定傾向になり、推定根が直接影響し、フィードバックループは間接的に影響する。
推定係数ρが満足すべき仕様は、実際の制御対象の不確定要素、非線形性などを考慮して定める。
外乱モデルを含まない2次推定器の減衰係数ζeはパラメータ不確かさに起因した推定誤差を低減させる値に選ぶ。
(50)式と(28)式とより、Δe1に関連する項を抽出すると、
同様に、(50)式と(28)式とより、Δe2に関連する項を抽出すると、
上記(53)式、(56)式に近い値を減数係数ζeの値として決定することが好ましい。具体的には、ωeTsnが1より十分大きいものと仮定すると、(53)式から減数係数ζeは、
推定係数ρは、(31)式のパラメータ不確かさ項に依存する。まずは、船体パラメータに対応する(33)式に基づいて、ρ2及び2次推定根の特性を把握する。そして、(34)〜(36)式のパラメータ不確かさ項の係数を、(33)式のそれと比較することで、外乱モデルに起因するρi(i=3,4,5)及び3〜5次推定根の特性を把握する。
・4次特性根とその2次推定根とを2次推定係数ρ2及びΔspecに関して解析し、ρ2と2次推定根との予測値を数値解法を利用して求める。
・5〜7次の特性多項式は、4次の特性多項式に基づいて解析し、5〜7次の特性根における推定係数と推定根との予測値をρ2と2次推定根とから求める。
(31)式の4次特性多項式は、
・ζe2 *は増加し、ζe=1/√2に漸近し、ωe2 *は単調増加する。
・ζf2 *、ωf2 *は徐々に変化しなくなり、一定値に近づく。
・Δb’が大きくなるに従って、ζe2 *、ωe2 *の線形範囲が拡大する。
・Δb’/Δspecが大きくなるほど、線形性は向上する。
・ζe2 *,ωe2 *はそれぞれのdζe2 */dρ,dωe2 */dρがほぼ一定と扱え、ζspec付近でほぼ直線近似が成り立つ。
・ζe2 *’はΔb’ /Δspecにほぼ反比例する。このことから、ζe2 *’の予測値を
・ρ2 ’、ωe2 *’はほぼ同値でΔb ’/Δspecにほぼ比例する。
3次推定器は2次推定器に、舵角オフセット成分δoの推定を加えたもので、5次特性多項式は、(34)式から、
4次推定器は2次推定器に波浪成分ψwの推定を加えたもので、6次特性多項式は(35)式から、
5次推定器は2次推定器に舵角オフセット成分δo、波浪成分ψwの推定を加えたもので、3次及び4次の推定根特性を踏襲するものとし、7次特性多項式は(36)式から、次式となる。
Dc7 Δb(s)において、仕様を満たすがωe5 = ρ5ωf>ωwn になった場合、波浪パラメータ条件(表1)に反する。そのときζwn=ζe に変更して再度ρ5 を求める。ノッチフィルター効果(外乱除去比ζwn /ζew)を失うが、ρ5 が小さくなるのでωe5 * を下げローパスフィルタ効果を得ることができる。すなわち(85)式で
2.4節の結果をまとめると、
・推定根のζe2 *, ωe2 * はζspec付近で、ρ2 にほぼ比例する。
・外乱モデルを含むρ5とωe5 * との予測値は、外乱モデルを含まないρ2とωe2 * によって求められる。
推定係数ρを求める算法を示す。求められたρはパラメータ不確かさを印加した閉ループ系において、仕様Δspec, ζspecを満足する。算法は確実な求解法、簡単な処理と少ない計算量とのため、前章で導き出した性質を用いて、3つの段階により構築する。
次の流れを採用する(図9)
(1)(58)式でζe2 *=ζspec になるρ2,ωe2 * を求める(S10)。
(2)(85)式でζe5 *=ζspec になるρ5,ωe5 * を求めるために、(86)式の予測値を初期値に設定する(S20)。またωe5>ωwn のとき(S30でyes)、ζwn=ζe にして(S40)、(2)を繰り返す。
(3)求めたρ5をρ(=ωe/ωf)として制御系を構成する(S50)。
ρ(ρ2、ρ5)はその性質を利用して2段階で求める(図10参照)。
初期値を用いて次の処理を行い、ζe *とωe *とを取り出す。
(1)4次式は代数解法によって、最小の減衰係数に対応する2次式の係数を求める。
(2)7次式は任意の数値解法によって求める。具体的には、ベアストウ法 と組立除法とによって、2次式の係数を求め、残りの5次式を因数分解する場合は ニュートン−ラプソン法(初期値ωeo)と代数解法とを用いる。
本発明を数値計算によって検証する。船体パラメータおよび制御パラメータを表3にまとめる。ただし設計パラメータについては表1を参照されたい。また、仕様は(40)、(42)式に従っている。
表3から以下のことが分かる。
・ρ2の変化は微分ゲインf2 のそれより小さいが、ωfTsn に関係する。ρ2 は仕様から判断すると実用範囲の値である。
図11を参照すると
・az /b12:ωfTsn =1 の場合は他の場合より15〜30%大きくなるが、ωfTsn >1 の場合はほぼ近い値を示す。
・(−azz2)/b02 :近似値はaz /b12 の90%弱になり、ρo が大きくなると近似誤差が増加する。
・誤差ρ3~’,誤差ωe3~’:ρo≦0.2とすれば、両者とも5%以内の誤差に収まる。
図12(ωfTsn =1.58を利用)を参照すると
・b14 /b12 、kw:共にrw =1で1に近く、rw =10でほぼ1に収斂する。
・ζe4 *’,ωe4 *’:B4(s)のみの場合(波浪成分Dew(s),Dw(s)を省く)は波浪成分を含む場合より変化量が小さい。
・図14は図13にρo を追加した場合で、ほぼ同様の傾向を示し、オフセットは予測値とほぼ等価である。
・図15はζwn=0.1,ωfTsn を変化させた場合で、ωfTsn =1のrw の低減で急増する。
本発明の求解算法の計算時間を標準算法と比較する。標準算法は既知の推定係数ρsol(
rw) から探索範囲[ρlow,ρhigh]=ρsol (rw)[1/cp,cp]を与えて(Matlab のfminbnd を利用)、(12)式の特性行列から特性根を求め、最小の減衰係数を取り出し、それが仕様と一致する推定係数を求める。計算結果を表4にまとめる。条件:図14,ζwn=0.1である。
推定器を含んだ保針ループに対して、推定根に影響を与えるパラメータ不確かさを特定し、仕様を定め、推定根特性を仕様付近で把握することで、ρの予測値を求めた。外乱モデルなしの2次推定根特性を基に外乱モデルありの推定根特性を解析した。求解算法は数値解と推定根特性とを利用し予測値を初期値に採用した。
12 フィードバック制御器
14 操舵機
16 船体
18 制御対象
22 状態フィードバック制御器
24 推定器
Claims (5)
- 設定方位ψRに検出方位を追従させるべく制御対象を制御する船舶用自動操舵装置であって、制御対象からの検出方位から外乱を除去した推定値を出力する推定器と、推定器からの推定値と設定方位から得られる値に対してフィードバックゲインを乗じて命令舵角を出力する状態フィードバック制御器とを有するフィードバック制御器を備え、命令舵角に応じて舵角を経て船体に作用させる操舵機及び船体を含む制御対象と共に閉ループを構成する船舶用自動操舵装置において、
前記推定器の特性多項式は、船体モデルと波浪モデルと舵角オフセットモデルとを推定する多項式からなるものとし、それぞれ以下で表し、
- 前記パラメータ不確かさΔは、船体パラメータの旋回力ゲインKsnと時定数Tsnの比の不確かさであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の船舶用自動操舵装置。
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