JP2012209295A - フェライト焼結磁石 - Google Patents

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悦志 尾田
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Abstract

【課題】Co含有量を低減させることにより原料コストを低下させるとともに、高いBと高いH/HcJを保持したままHcJを向上させたフェライト焼結磁石の提供。
【解決手段】六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有するフェライト相を主相とし、前記主相よりもLaの原子比率が高いオルソフェライト相を0.2質量%以上2.5質量%以下含有し、金属元素の原子比率を示す一般式:Ca1−x−yLaFe2n−zCo(A元素はBa及び/又はSr)において、x、y及びz並びにモル比を表わすnが、0.2≦x≦0.6、0≦y≦0.2、0.03≦z<0.25、3≦n≦7、及び1−x−y>yを満足し、かつSiをSiO換算で0.2質量%以上1.8質量%以下含有させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、フェライト焼結磁石に関する。
フェライト焼結磁石は、各種モータ、発電機、スピーカ等種々の用途に使用されている。代表的なフェライト焼結磁石として、六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有するSrフェライト(SrFe1219)及びBaフェライト(BaFe1219)が知られている。これらのフェライト焼結磁石は、酸化鉄とストロンチウム(Sr)又はバリウム(Ba)の炭酸塩等とを原料とし、粉末冶金法によって比較的安価に製造される。
近年、環境に対する配慮などから、自動車用電装部品、電気機器用部品等において、部品の小型・軽量化及び高効率化を目的として、フェライト焼結磁石の高性能化が要望されている。特に、自動車用電装部品に用いられるモータには、高い残留磁束密度B(以下、単に「B」という)を保持しながら、薄型化しても減磁しない高い固有保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」という)を有するフェライト焼結磁石が要望されている。
フェライト焼結磁石の磁石特性の向上を図るため、上記のSrフェライトにおけるSrの一部をLa等の希土類元素で置換し、Feの一部をCoで置換することにより、HcJ及びBを向上させる方法が特許文献1や特許文献2によって提案されている。
特許文献1及び2に記載の、Srの一部をLa等の希土類元素で置換し、Feの一部をCo等で置換したSrフェライト(以下「SrLaCoフェライト」という)は、磁石特性に優れることから、従来のSrフェライトやBaフェライトに代わり、各種用途に多用されつつあるものの、さらなる磁石特性の向上も望まれている。
一方、フェライト焼結磁石として、上記SrフェライトやBaフェライトとともに、Caフェライトも知られている。Caフェライトは、CaO−Fe又はCaO−2Feの組成式で表される構造が安定であり、Laを添加することによって六方晶フェライトを形成することが知られている。しかし、得られる磁石特性は、従来のBaフェライトの磁石特性と同程度であり、充分に高くはなかった。
特許文献3は、CaフェライトのB及びHcJの向上、並びにHcJの温度特性の改善を図るため、Caの一部をLa等の希土類元素で置換し、Feの一部をCo等で置換した、20kOe(約1.6MA/m)以上の異方性磁界Hを有するCaフェライト(以下「CaLaCoフェライト」という)を開示しており、この異方性磁界HはSrフェライトに比べて10%以上高い値であると記載している。
しかしながら、CaLaCoフェライトは、SrLaCoフェライトを上回る異方性磁界Hを有するものの、HcJはSrLaCoフェライトと同程度に過ぎず、一方で角型比H/HcJ(以下、単に「H/HcJ」という)が非常に悪く、高いHcJと高いH/HcJとを満足することができず、モータ等の各種用途に応用されるまでには至っていない。
CaLaCoフェライトの磁石特性を改良すべく、種々の提案がなされている。例えば、特許文献4は、各構成元素のモル比及びnの値を最適化し、かつLa及びCoを特定の比率で含有させたCaLaCoフェライトを提案しており、特許文献5は、Caの一部をLaとBaで置換したCaLaCoフェライトを提案しており、特許文献6は、Caの一部をLa及びSrで置換したCaLaCoフェライトを提案している。
特許文献4〜6に記載の発明により、SrLaCoフェライトを超える高いB及び高いHcJを有するCaLaCoフェライト焼結磁石が得られている。しかしながら、特許文献4〜6に記載のフェライト焼結磁石は、高い磁石特性を得るために、一般式Ca1−xLaFe2n−yCoにおいてy=0.3程度のCoを含有しており、現在市場に提供されているSrLaCoフェライト焼結磁石(一般式Sr1−xLaFe2n−yCoにおいてy=0.2程度のCo含有量)に比べ多くのCoを使用せねばならず、原料コストが増大するという問題がある。
フェライト焼結磁石の最大の特徴の一つに高い経済性がある。従って、たとえ高い磁石特性を有するフェライト焼結磁石であっても、価格が高いと市場では受け入れられ難い。例えば、CoやLaの価格は、主成分である酸化鉄の十倍から数十倍に相当するため、CoやLaの含有量が多いほどフェライト焼結磁石の価格が上昇することになる。
しかしながら、CaLaCoフェライトにおいて、SrLaCoフェライトと同等のCo含有量(一般式Ca1−xLaFe2n−yCoにおいてy=0.2程度)とすると、磁石特性はSrLaCoフェライトと同等となりCaLaCoフェライトの特徴がなくなってしまう。
特開平10−149910号公報 特開平11−154604号公報 特許第3181559号公報 特開2006−104050公報 国際公開第2007/060757号 国際公開第2007/077811号
本発明の目的は、高いHcJを有するフェライト焼結磁石を安価に提供することであり、特に、磁石特性に優れるCaLaCoフェライトにおいて、Co含有量を低減させることにより原料コストを低下させるとともに、高いBと高いH/HcJを保持したままHcJを向上させ、近年益々強くなる高性能化の要求を満足させ、薄型化しても減磁しない高いHcJを有するフェライト焼結磁石を提供することである。
上記目的に鑑み、発明者らは、Co含有量が一般式Ca1−xLaFe2n−yCoにおいてy=0.2程度のCaLaCoフェライトの磁石特性、特にHcJの向上を図るべく、CaLaCoフェライト焼結磁石の組成と組織の関係について鋭意研究した。その結果、焼結磁石中に、主相となるCaLaCoフェライト相(六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有するフェライト相)以外に、前記主相よりもLaの原子比率が高いオルソフェライト相が特定量存在すると、焼結磁石のHcJが著しく向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のフェライト焼結磁石は、
六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有するフェライト相を主相とし、
前記主相よりもLaの原子比率が高いオルソフェライト相を0.2質量%以上2.5質量%以下含有し、
金属元素の原子比率を示す一般式:Ca1−x−yLaFe2n−zCo(A元素はBa及び/又はSr)において、x、y及びz並びにモル比を表わすnが、
0.2≦x≦0.6、
0≦y≦0.2、
0.03≦z<0.25、
3≦n≦7、及び
1−x−y>y
を満足し、かつSiをSiO換算で0.2質量%以上1.8質量%以下含有することを特徴とする。
前記オルソフェライト相は、0.2質量%以上2.0質量%以下含有されることがより好ましい。
本発明によれば、高いBとH/HcJを保持したままHcJを著しく向上させることができるため、薄型化しても減磁しないフェライト焼結磁石を提供することができる。
本発明によるフェライト焼結磁石を使用することにより、小型・軽量化、高効率化された各種モータ、発電機、スピーカ等の自動車用電装部品、電気機器用部品等を提供することができる。
実施例1のフェライト焼結磁石のリートベルト解析結果を示す図である。 実施例1のフェライト焼結磁石のオルソフェライト相含有量とHcJとの関係を示すグラフである。 実施例1のフェライト焼結磁石のオルソフェライト相含有量とBとの関係を示すグラフである。 実施例1のフェライト焼結磁石のオルソフェライト相含有量とH/HcJとの関係を示すグラフである。 実施例1のフェライト焼結磁石のFE−SEMで観察したBSE像を示す写真である。 実施例1のフェライト焼結磁石の組成範囲を示すグラフである。
本発明のフェライト焼結磁石を構成する主相は、六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有するフェライト相である。一般に、磁性材料、特に焼結磁石は、複数の化合物から構成されており、その磁性材料の特性(物性、磁石特性など)を決定づけている化合物が「主相」と定義される。本発明における主相、すなわち、六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有するフェライト相も、本発明のフェライト焼結磁石の物性、磁石特性などの基本部分を決定づけている。
「六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有する」とは、フェライト焼結磁石のX線回折を一般的な条件で測定した場合に、六方晶のM型マグネトプランバイト構造のX線回折パターンが主として観察されることをいう。
本発明のフェライト焼結磁石には、前記主相に含有されるLaの原子比率(酸素を除く金属元素の原子比率)よりもLaの原子比率が高いオルソフェライト相が含有されている。これが本発明のフェライト焼結磁石の主たる特徴である。
オルソフェライト(orthoferrite)とは、「RFeO」で表わされる希土類元素(R)とFeを含むペロブスカイト構造を有する化合物であり、その磁気構造は反強磁性である。
オルソフェライトについては、例えば、特許文献2に、「Rには、Laが必ず含まれる」(段落0034)、「Rが大きすぎると、オルソフェライト等の非磁性の異相が多くなる。」(段落0034)、「元素Rを含むオルソフェライトが生成して飽和磁化が低くなってしまう。」(段落0038)と記載され、Laを含むオルソフェライトの存在を示唆している。
しかしながら、従来、オルソフェライトは異相であり、磁石特性を低下させる原因となるため、得られる磁石には不必要な相と考えられていた。これは、特許文献2に限ったことではなく、多くの先行技術文献に記載されている。つまり、オルソフェライトをできるだけ生成させないようにすることが当業者の技術常識であった。本発明は、前記主相よりもLaの原子比率が高いオルソフェライト相が存在すると焼結磁石のHcJが著しく向上することを見出したものであり、これは当業者の技術常識を覆すものである。
本発明におけるオルソフェライト相は、FE−SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)のEDX(エネルギー分散型X線分光法)分析で測定した結果、主相よりもLaの原子比率が高くなっていた。また、前記オルソフェライト相がフェライト焼結磁石中に0.2質量%以上2.5質量%以下含有されている場合に、BとH/HcJをほとんど低下させることなくHcJが向上する。特に、0.2質量%以上2.0質量%以下含有されている場合は高いBと高いH/HcJが保持される。一方、オルソフェライト相の含有量が0.2質量%未満ではHcJの向上効果が得られず、オルソフェライト相の含有量が2.5質量%を超えるとBが低下する。
オルソフェライト相の含有量(質量%)は、X線や中性子によるフェライト焼結磁石の回折パターンによる検量線法やプロファイルフィッティング法などによって特定することができる。X線回折を例に挙げれば、例えばD8 ADVANCE(Bruker AXS社製)などの市販の粉末X線回折装置を用いて行うことができる。
また、プロファイルフィッティング法では、例えばリートベルト(Rietveld)解析法などが挙げられる。リートベルト解析は、X線回折などで得られた解析パターンに、試料中に含まれると予想される物質の結晶構造から計算される回線パターンをフィッティングさせることで、試料中の構成相の定量(質量分率)解析を行うことができる。リードベルト解析には、例えばTOPAS(Bruker AXS社製)などの市販のリートベルト解析プログラムを用いればよい。また、構成相の結晶構造は、既知の構造を初期構造として用いればよい。例えば、六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有するフェライト相であれば「V.D.Townes,J.H.Fang and A.S.Perotta,Z.Kristallogr.125(1967)p.435」、オルソフェライト相であれば「H.F.McMurdie et al.,Powder Diffr.1(1986)p.269」を参照すればよい。
フェライト焼結磁石は、液相を生成させて焼結を促進させるために、焼成前にSiO、CaCOなどの焼結助剤を添加するのが一般的である。添加された焼結助剤は、そのほとんどが前記主相あるいはオルソフェライト相の粒界で粒界相を形成する。本発明においても、これらの焼結助剤が添加される。従って、本発明のフェライト焼結磁石には、前記主相及びオルソフェライト相以外に、主相及びオルソフェライト相間の粒界あるいは多粒子粒界部に存在する粒界相が含有されている。前記粒界相は、X線回折パターンで観察することが困難であるため、透過電子顕微鏡等で確認することができる。
また、本発明によるフェライト焼結磁石には、主相、オルソフェライト相、前記粒界相以外に、X線回折等により極少量(5質量%以下程度)観察される異相(ヘマタイト相やスピネル相など)や不純物相、あるいは未反応の原料粉末などが存在する場合があり、それらの存在は許容される。前記異相は、前記リートベルト解析法などによって確認することができる。
本発明による、六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有するフェライト相を主相とし、前記主相よりもLaの原子比率が高いオルソフェライト相を0.2質量%以上2.5質量%以下含有するフェライト焼結磁石は、以下の組成から構成される。
金属元素の原子比率を示す一般式:Ca1−x−yLaFe2n−zCo(A元素はBa及び/又はSr)において、x、y及びz並びにモル比を表わすnが、
0.2≦x≦0.6、
0≦y≦0.2、
0.03≦z<0.25、
3≦n≦7、及び
1−x−y>y
を満足し、かつSiをSiO換算で0.2質量%以上1.8質量%以下含有する。
xはLaの含有量を示し、0.2≦x≦0.6である。xが0.2未満では焼結磁石中にオルソフェライト相が含有されなくなるため好ましくない。xが0.6を超えるとオルソフェライト相が増え過ぎBが低下するため好ましくない。LaはLaを除く希土類元素の少なくとも1種でその一部を置換することができる。置換量はモル比でLaの50%以下であることが好ましい。
yはA元素の含有量を示し、0≦y≦0.2である。A元素はBa及び/又はSrである。A元素を含有しなくても本発明の効果が損なわれることはないが、A元素を添加することにより、仮焼体における結晶が微細化されアスペクト比が小さくなるため、HcJがさらに向上するという効果を得ることができる。yが0.2を超えると相対的にxが小さくなり、焼結磁石中にオルソフェライト相が含有されなくなるため好ましくない。
zはCoの含有量を示し、0.03≦z<0.25である。前述した特許文献4〜6に記載のCaLaCoフェライト焼結磁石は、Co含有量の最適値が0.3程度であり、それよりも少なくなるとHcJが低下してSrLaCoフェライトよりも磁石特性に優れるというCaLaCoフェライトの特徴が失われる。しかし、本発明では、前記オルソフェライト相の存在によって、Coの含有量が0.3以下の領域においても高いBと高いH/HcJを保持したままHcJを向上させることができる。zが0.03未満ではCoの添加による磁石特性の向上効果が得られない。zが0.25以上になっても磁石特性は低下せずzの増加に伴ってHcJは向上するが原料コストが増大することとなる。従って、一般的なSrLaCoフェライトよりもHcJが高く、かつ原料コストを一般的なSrLaCoフェライトと同等程度にするためにzは0.25未満とする。
Coはその一部をZn、Ni及びMnから選ばれた少なくとも1種で置換することもできる。特に、Coの一部をNi及びMnで置換することにより、磁石特性を低下させずに製造コストを低減することができる。また、Coの一部をZnで置換すると、HcJは若干低下するが、Bを向上させることができる。Zn、Ni及びMnの合計の置換量はモル比でCoの50%以下であるのが好ましい。
nは(Fe+Co)と(Ca+La+A)とのモル比を反映する値で、2n=(Fe+Co)/(Ca+La+A)で表される。nは3≦n≦7である。nが3未満では主相以外の部分の比率が多くなるとともに、仮焼体粒子の形態が過度に扁平になりHcJが大きく低下してしまう。nが7を超えると仮焼体にα−Feが残存し、湿式成形時の成形型のキャビティからスラリー漏れが発生するため好ましくない。
1−x−yはCaの含有量を示し、0.2≦1−x−y≦0.8となる。0.2未満ではB及びH/HcJが低下するため好ましくなく、0.8を超えると焼結磁石中にオルソフェライト相が含有されなくなるため好ましくない。
本発明はCaLaCoフェライトの改良に関する発明であり、A元素よりもCaの含有量が多い。すなわち、1−x−y>yとなっている。
前記の通り、本発明においては、SiO、CaCOなどの焼結助剤が添加される。従って、最終的に得られるフェライト焼結磁石には、添加した量のSi、Caなどが含有されている。Siは、SiO換算で0.2質量%以上1.8質量%以下含有されている。この含有量は、焼結助剤として添加する量と同量である。SiOは、粉末(製造工程中における配合後の原料粉末、仮焼体粉末、粗粉砕粉末など)100質量%に対して0.2質量%以上1.8質量%以下添加する。すなわち、外枠量として添加するため、フェライト焼結磁石における含有量としては若干少なく含有されることになるが、添加量そのものが少量であり、成形時の脱水による流出やFe粉末からの不純物としての混入などによっても大きく増減することはなく、焼結助剤として添加する量とほぼ同量となる。
一方、Caは、配合時に添加するCaCOと焼結助剤として添加するCaCOとを区別することができないので、配合時の添加量と焼結助剤として添加した量とを合計したCaがフェライト焼結磁石に含まれることとなる。前記の組成は、焼結助剤などとして添加されるCaも含めた上での組成範囲となっている。
なお、前記の組成は、金属元素の原子比率で示したが、本発明によるフェライト焼結磁石は「フェライト」であり、「フェライト」とは酸化鉄を主成分とする化合物の総称であって、酸素(O)を必ず含む。酸素(O)を含む組成は以下の通りとなる。
一般式:Ca1−x−yLaFe2n−zCoα(A元素はBa及び/又はSr)において、x、y、z及びα並びにモル比を表わすnが、
0.2≦x≦0.6、
0≦y≦0.2、
0.03≦z<0.25、
3≦n≦7、
1−x−y>y、
LaとFeが3価でCoが2価であり、x=zでかつn=6の時の化学量論組成比を示した場合はα=19である、
を満足し、かつSiをSiO換算で0.2質量%以上1.8質量%以下含有する。
前記酸素(O)を含めたフェライト仮焼体の組成において、酸素のモル数は、Fe及びCoの価数、n値などによって異なってくる。またフェライト焼結磁石においては、還元性雰囲気で焼成した場合の酸素の空孔(ベイカンシー)、フェライト相におけるFeの価数の変化、Coの価数の変化等により金属元素に対する酸素の比率が変化する。従って、実際の酸素のモル数αは19からずれる場合がある。そのため、本発明においては、最も組成が特定し易い金属元素の原子比率で組成を表記している。
本発明においては、基本的に前記組成範囲を満足することによって、フェライト焼結磁石中に、前記主相よりもLaの原子比率が高いオルソフェライト相を0.2質量%以上2.5質量%以下存在させることができる。但し、組成によってオルソフェライト相の存在量が異なるため、前記存在量になるように、組成に応じて適切な製造条件(仮焼温度、仮焼時間、粉砕時間、粉砕粒径、添加物量、焼結温度、焼結温度までの昇温時間、焼結時間など)を選択することが好ましい。特に、前記組成範囲において、x(La)が0.45を超えかつnが4.3以上の範囲、及びx(La)が0.45以下でかつnが4.75以下の範囲であると、製造条件にかかわらず安定して前記オルソフェライト相を含有するフェライト焼結磁石を得ることができる。
本発明のフェライト焼結磁石の製造方法の一例を以下に説明する。
(a)原料粉末の準備
まず、CaCO、La(OH)、SrCO、BaCO、Fe、Coなどの原料粉末を準備し、前述した組成式に基づき、それぞれ好ましい範囲になるように配合する。原料粉末は、価数にかかわらず、それぞれの金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、塩化物等を制約なく使用することができる。原料粉末を溶解した溶液であってもよい。例えば、Ca化合物としては、Caの炭酸塩、酸化物、塩化物等を使用する。Laの化合物としては、La等の酸化物、La(OH)等の水酸化物、La(CO・8HO等の炭酸塩、あるいはそれらの水和物等を使用する。A元素の化合物としては、Ba及び/又はSrの炭酸塩、酸化物、塩化物等を使用する。鉄化合物としては、酸化鉄、水酸化鉄、塩化鉄、ミルスケール等を使用する。Co化合物としては、CoO、Co、Co等の酸化物、CoOOH、Co(OH)等の水酸化物、CoCO等の炭酸塩、及びCo・mO(mは正の数である)、mCoCO・mCo(OH)・mO等(m、m、mは正の数である)を使用する。
CaCO、Fe及びLa以外の原料粉末は、原料混合時から添加しておいてもよいし、仮焼後に添加してもよい。例えば、(1)CaCO、Fe、La及びCoを配合し、混合及び仮焼した後、仮焼体を粉砕し、成形及び焼結してフェライト焼結磁石を製造しても良いし、(2)CaCO、Fe及びLaを配合し、混合及び仮焼した後、仮焼体にCoを添加し、粉砕、成形及び焼結してフェライト焼結磁石を製造することもできる。
仮焼時の反応促進のため、必要に応じてB、HBO等のBを含む化合物を配合後の原料粉末の合計100質量%に対して1質量%程度添加しても良い。特にHBOの添加は、HcJ及びBのさらなる向上に有効である。HBOの添加量は、0.3質量%以下が好ましい。最も好ましい範囲は0.1質量%以上0.2質量%以下であり、HcJ及びBの向上効果が顕著になる。HBOの添加量が0.05質量%未満では添加効果が十分に発揮されず、0.05質量%以上0.1質量%未満ではBの向上効果は得られるもののHcJの向上効果は少ない。0.2質量%を超えるとBが低下し、0.3質量%を超えるとBの低下が顕著になる。HBOは、焼結時に結晶粒の形状やサイズを制御する効果も有するため、仮焼後(微粉砕前や焼結前)に添加してもよく、仮焼前及び仮焼後の両方で添加してもよい。
原料粉末の配合、混合は、湿式及び乾式のいずれで行ってもよい。スチールボール等の媒体とともに撹拌すると原料粉末をより均一に混合することができる。湿式の場合は、溶媒に水を用いるのが好ましい。原料粉末の分散性を高める目的でポリカルボン酸アンモニウム、グルコン酸カルシウム等の公知の分散剤を用いてもよい。混合した原料スラリーは脱水して混合原料粉末とする。
(b)仮焼
混合後の原料粉末は、電気炉、ガス炉等を用いて加熱することによって、固相反応し、六方晶のM型マグネトプランバイト構造のフェライト化合物を形成する。このプロセスを「仮焼」と呼び、得られた化合物を「仮焼体」と呼ぶ。
仮焼工程は、酸素濃度が5%以上の雰囲気中で行うのが好ましい。酸素濃度が5%未満であると、異常粒成長、異相の生成等を招く。より好ましい酸素濃度は20%以上である。
仮焼工程では、フェライト相が形成される固相反応が温度の上昇とともに進行し、約1100℃で完了する。仮焼温度が1100℃未満では、未反応のヘマタイト(酸化鉄)が残存するため磁石特性が低くなる。一方、仮焼温度が1450℃を超えると結晶粒が成長し過ぎるため、粉砕工程において粉砕に多大な時間を要することがある。従って、仮焼温度は1100℃〜1450℃であるのが好ましく、1200℃〜1350℃であるのがより好ましい。仮焼時間は0.5時間〜5時間であるのが好ましい。
仮焼前にHBOを添加した場合は、フェライト化反応が促進されるため、1100℃〜1300℃で仮焼を行うことができる。
(c)焼結助剤の添加
前記の通り、本発明においては、粉砕工程の前に、仮焼体100質量%に対して、0.2質量%以上1.8質量%以下のSiO及びCaO換算で0.2質量%以上2質量%以下のCaCOを焼結助剤として添加する。この焼結助剤によって、焼成時に液相が生成し焼結を促進させることができ、フェライト焼結磁石のHcJを向上させることができる。SiO、CaCOともに添加量が下限値未満では添加効果が少なく、上限値を超えるとB及びH/HcJが低下するため好ましくない。
なお、SiOは仮焼体に対して添加するのが最も好ましいが、全添加量のうちの一部を仮焼前(原料粉末を配合するとき)に添加することもできる。仮焼前に添加することにより、仮焼時の結晶粒のサイズ制御を行うことができる。
(d)粉砕
仮焼体は、振動ミル、ボールミル、アトライター等によって粉砕し、粉砕粉とする。粉砕粉の平均粒度は0.4μm〜0.8μm程度(空気透過法)にするのが好ましい。粉砕工程は、乾式粉砕及び湿式粉砕のいずれもよいが、双方を組み合わせて行うのが好ましい。
湿式粉砕は、水及び/又は非水系溶剤(アセトン、エタノール、キシレン等の有機溶剤)を用いて行う。湿式粉砕により、水(溶剤)と仮焼体とが混合されたスラリーが生成される。スラリーには公知の分散剤及び/又は界面活性剤を固形分比率で0.2〜2質量%を添加するのが好ましい。湿式粉砕後は、スラリーを濃縮、混練するのが好ましい。
粉砕工程において、上述したSiO及びCaCOの他に、磁石特性向上のためにCr、Al等を添加することもできる。これらの添加量は、それぞれ5質量%以下であるのが好ましい。
粉砕した粉末には脱水性悪化や成形不良の原因となる0.1μm未満の超微粉が含まれるので、これらの超微粉を除去するために粉砕した粉末に熱処理を施すのが好ましい。熱処理を施した粉末は再度粉砕するのが好ましい。このように、第一の微粉砕工程と、前記第一の微粉砕工程によって得られた粉末に熱処理を施す工程と、前記熱処理が施された粉末を再度粉砕する第二の微粉砕工程とからなる粉砕工程(以下「熱処理再粉砕工程」という)を採用することもできる。
通常の粉砕工程においては0.1μm未満の超微粉が不可避的に生じ、その超微粉の存在によってHcJが低下したり、成形工程において脱水性が悪くなり、成形体に不良を生じたり、脱水に多くの時間がかかることによってプレスサイクルが低下したりする。第一の微粉砕工程によって得られた超微粉を含む粉末に熱処理を施すと、比較的粒径の大きい粉末と超微粉との間で反応が起こり、超微粉の量を減少させることができる。そして、第二の微粉砕工程によって粒度調整やネッキングの除去を行ない、所定粒度の粉末を作製する。これによって、超微粉の量が少なく、粒度分布に優れた粉末を得ることができ、HcJを向上させることができるとともに、成形工程における上記の問題を解決することができる。
熱処理再粉砕工程によるHcJの向上効果を利用すると、第二の微粉砕工程による粉末の粒径を比較的大きく設定しても(例えば平均粒度0.8μm〜1.0μm程度)、通常の粉砕工程によって得られる粉末(平均粒度0.4μm〜0.8μm程度)を用いた場合と同等のHcJが得られる。従って、第二の微粉砕工程の時間短縮が図れるとともに、さらなる脱水性の向上、プレスサイクルの向上を図ることができる。
このように、熱処理再粉砕工程によれば、種々の利点は得られるものの、製造工程の増加に伴うコストアップは避けることができない。しかしながら、熱処理再粉砕工程を採用した場合に得られる磁石特性の改良効果は、従来のフェライト焼結磁石を製造する場合に比べ非常に大きいので、前記コストアップを相殺することができる。従って、本発明において、熱処理再粉砕工程は実用的にも有意義な工程である。
第一の微粉砕は、前述した通常の粉砕と同様であり、振動ミル、ジェットミル、ボールミル、アトライター等を用いて行う。粉砕後の粉末の平均粒度は0.4μm〜0.8μm程度(空気透過法)が好ましい。粉砕工程は、乾式粉砕及び湿式粉砕のいずれでもよいが、双方を組み合わせて行うのが好ましい。
第一の微粉砕工程後に行う熱処理は、600℃〜1200℃で行うのが好ましく、800℃〜1100℃で行うのがより好ましい。熱処理の時間は特に限定しないが、1秒〜100時間が好ましく、1時間〜10時間程度がより好ましい。
熱処理工程後に行う第二の微粉砕は、第一の微粉砕と同様に、振動ミル、ジェットミル、ボールミル、アトライター等を用いて行う。第一の微粉砕工程においてすでに所望の粒径はほとんど得られているので、第二の微粉砕工程においては、主として粒度調整やネッキングの除去を行う。従って、第一の微粉砕工程よりも粉砕時間の短縮等により粉砕条件を軽減するのが好ましい。第一の微粉砕工程と同程度の条件で粉砕を行うと再度超微粉が生成されるため好ましくない。
第二の微粉砕後の粉末の平均粒度は、通常の粉砕工程によって得られるフェライト焼結磁石よりも高いHcJを得たい場合は、通常の粉砕工程と同様に0.4μm〜0.8μm程度(空気透過法)にするのが好ましく、粉砕工程の時間短縮、さらなる脱水性の向上、プレスサイクルの向上等の利点を活用したい場合は、0.8μm〜1.2μm、好ましくは0.8μm〜1.0μm程度(空気透過法)にするのが好ましい。
(e)成形
粉砕後のスラリーは、水(溶剤)を除去しながら磁界中又は無磁界中でプレス成形する。磁界中でプレス成形することにより、粉末粒子の結晶方位を整列(配向)させることができ、磁石特性を飛躍的に向上させることができる。さらに、配向を向上させるために、分散剤、潤滑剤を0.01質量%〜1質量%添加しても良い。また成形前にスラリーを必要に応じて濃縮してもよい。濃縮は遠心分離、フィルタープレス等により行うのが好ましい。
(f)焼成
プレス成形により得られた成形体は、必要に応じて脱脂した後、焼成する。焼成は、電気炉、ガス炉等を用いて行う。焼成は、酸素濃度が10%以上の雰囲気中で行うのが好ましい。酸素濃度が10%未満であると、異常粒成長、異相の生成等を招き、磁石特性が劣化する。酸素濃度は、より好ましくは20%以上であり、最も好ましくは100%である。焼成温度は、1150℃〜1250℃が好ましい。焼成時間は、0.5時間〜2時間が好ましい。焼成工程によって得られる焼結磁石の平均結晶粒径は約0.5μm〜2μmである。
焼成工程の後は、加工工程、洗浄工程、検査工程等の公知の製造プロセスを経て、最終的にフェライト焼結磁石を製造する。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
金属元素の原子比率を示す一般式:Ca1−x−yLaFe2n−zCoにおいて、x、y、z、nが表1に示す値となるようにCaCO粉末、La(OH)粉末、Fe粉末及びCo粉末を配合し、前記配合後の粉末の合計100質量%に対してHBO粉末を0.1質量%添加し原料粉末を得た。この原料粉末を湿式ボールミルで4時間混合し、乾燥して整粒した。次いで、大気中において1300℃で3時間仮焼し、得られた仮焼体をハンマーミルで粗粉砕して粗粉砕粉を得た。
前記粗粉砕粉100質量%に対して、SiO粉末を0.6質量%及びCaCOを1.3質量%添加し、水を溶媒とした湿式ボールミルで、空気透過法による平均粒度が0.6μmになるまで微粉砕した。得られた微粉砕スラリーを、溶媒を除去しながら、加圧方向と磁場方向とが平行になるように約1.3Tの磁場をかけながら約50MPaの圧力で成形した。得られた成形体を大気中で、1200℃で1時間焼成し、焼結磁石を得た。
得られた焼結磁石を粉砕し、粉末X線回折装置(リガク製RINT−2400)を用いてX線回折測定を行った。測定条件は、X線源がCu−Kα、出力が45kV、300mAとした。得られた回折パターンをリートベルト解析プログラム(Bruker AXS社製TOPAS)を用いてリートベルト解析を行うことによって焼結磁石中の主相及びオルソフェライト相、並びに存在の可能性が予想されるヘマタイト相の含有量(質量分率)を定量評価した。
リートベルト解析においては、結晶構造では格子定数のみをパラメータとし、分立座標や原子変位パラメータなどは一定の値とした。また、主相に関しては、試料調整時の選択配向が避け難いため、(00l)面での選択配向を考慮した解析とした。なお、主相の結晶構造は「V.D.Townes,J.H.Fang and A.S.Perotta,Z.Kristallogr.125(1967)p.435」を、オルソフェライト相の結晶構造は「H.F.McMurdie et al.,Powder Diffr.1(1986)p.269」を、ヘマタイト相の結晶構造は「E.N.Maslen, V.A.Streltsov,N.R.Streltsova and N.Ishizawa,Acta Cryst.B50(1994)p.435.」を参照した。リートベルト解析による焼結磁石中の構成相の含有量(質量分率)の解析結果を表1に示す。
また、リートベルト解析結果の例を図1に示す。図1は表1における試料No.2の例である。図1において、図中上段に表示される線が試料中に含まれると予想される物質の結晶構造から計算される回折パターン(計算値)であり、その解析パターン中に表示されている+マークが粉末X線回折装置により得られた回折パターン(測定値)である。そして、図中下段に表示される線が前記測定値から計算値を差し引いた差分を示す。また、図中下段の丸印、三角印、四角印は、各構成相のピーク値が現れる2θの位置(度)を示すものであり、丸印は主相、三角印はオルソフェライト相、四角はヘマタイト相を示す。
図1に示す通り、全パターンのフィッティングは精度よく行われていることが分かる。また、この試料ではヘマタイト相が少ないために明確なピークとして確認できないが、主相及びオルソフェライト相は明確に確認することができる。これらの結果から、本発明のフェライト焼結磁石には、六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有するフェライト相からなる主相とし、オルソフェライト相が含有されていることが分かる。
次に、得られた焼結磁石のB、HcJ及びH/HcJを測定した(H/HcJにおいて、Hは、J(磁化の大きさ)−H(磁界の強さ)曲線の第2象限において、Jが0.95Bの値になる位置のHの値)。その結果を表1及び図2〜図4に示す。図2〜図4は表1の試料No.1〜22のデータをプロットしたものであり、黒丸が本発明、白丸が比較例を示し、図2はオルソフェライト相含有量とHcJとの関係、図3はオルソフェライト相含有量とBとの関係、図4はオルソフェライト相含有量とH/HcJとの関係をそれぞれ示す。
表1及び図2〜図4に示す通り、オルソフェライト相の含有量が0.2質量%〜2.5質量%の範囲内にあるとき、200kA/m以上の高いHcJが得られており、B及びH/HcJはほとんど低下していない。特に、オルソフェライト相の含有量が0.2質量%〜2.0質量%の範囲内では高いB及び高いH/HcJが保持されている。
この結果から、オルソフェライト相の含有量を0.2質量%〜2.5質量%に限定した。また、特に好ましい範囲を0.2質量%〜2.0質量%に限定した。このように、本発明は、Co含有量が一般式Ca1−xLaFe2n−yCoにおいてy=0.2程度のCaLaCoフェライト焼結磁石において、高いBと高いH/HcJを保持したまま、HcJを向上させることができる。
次に、表1における試料No.19の焼結磁石を鏡面研磨して、FE−SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)で観察したBSE像(反射電子像)を図5に示す。BSE像のコントラストは原子番号に依存するため、重元素(Laなど)を多く含む部分が明るく見える。図5には組織の大部分を占める1〜数μmの灰色の粒子と、1μm以下程度の白色の部位と黒色の部位が見られる。コントラスト及びその存在比率からすると、灰色の粒子は主相、白色の部位はオルソフェライト相、黒色の部位は空孔あるいは多粒子粒界部の粒界相であると特定できる。
BSE像全体及び灰色の粒子、並びに図5の図中1及び2に示す領域に存在する白色の部位を、EDX(エネルギー分散型X線分光法)によって組成分析を行なった。その結果を表2に示す。
表2に示す通り、白色の部位はSiを含む場合と含まない場合があるが、いずれも焼結磁石全体及び主相よりもLaが多く含まれており、この白色の部位にオルソフェライト相が存在していると特定できる。これらの結果から、本発明のフェライト焼結磁石に含有されるオルソフェライト相が、主相よりもLaの原子比率が高いオルソフェライト相であるということが分かる。
なお、焼結磁石全体、主相及びオルソフェライト相には、表2に示す元素以外に酸素が含有される。一般に、EDX分析では、硼素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)などの軽元素を定量分析することは困難である。従って、表2においては、軽元素以外の元素の原子比率を表記している。
次に、ICP発光分光分析法によって、前記試料No.19の焼結磁石の組成分析を行った。その結果を表3に示す。また、表3の分析値を、一般式:Ca1−x−yLaFe2n−zCoおけるx、y、z、nに換算した。配合時の組成と併せてその結果を表4に示す。
表3に示す通り、焼結磁石には0.64質量%のSiOが含有されている。前記の通り、本実施例においては、微粉砕前に、焼結助剤として粗粉砕粉100質量%に対して0.6質量%のSiOが添加されており、ほぼ同量のSiOが焼結磁石に含有されていることがわかる。
また、表4に示す通り、焼結磁石組成における1−x−y(Ca含有量)が配合組成に対して増加している。これは、配合後に焼結助剤としてCaCOを1.3質量%添加したためである。1−x−yが大きくなったため、x(La含有量)、z(Co含有量)、nが小さくなっている。このように、配合時の組成と焼結磁石の組成とは若干相違するものの、いずれも本発明の組成範囲を満足している。
図6は、横軸をn、縦軸をx(La含有量)とし、表1における本発明(黒色)と比較例(白色)の組成範囲をプロットしたものである。図6に示す通り、本実施例1の製造条件においては、x(La)が0.45を超えかつnが4.3以上の範囲及びx(La)が0.45以下でかつnが4.75以下の範囲において、オルソフェライト相を0.2質量%以上2.5質量%以下含有するフェライト焼結磁石が得られている。なお、前述の通り、組成に応じて製造条件(仮焼温度、仮焼時間、粉砕時間、粉砕粒径、添加物量、焼結温度、焼結温度までの昇温時間、焼結時間など)を選択することにより、本発明にて限定する組成範囲内でオルソフェライト相を0.2質量%以上2.5質量%以下含有するフェライト焼結磁石が得られる。
実施例2
金属元素の原子比率を示す一般式:Ca1−x−yLaFe2n−zCoにおいて、x、y、z、nが表5に示す値となるようにする以外は実施例1と同様にして焼結磁石を得た。得られた焼結磁石の構成相の定量評価、磁石特性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表5に示す。表5に示すように、z(Co含有量)=0.24及びz=0.15であっても、オルソフェライト相の含有量が0.2質量%〜2.5質量%の範囲内にあれば、200kA/m以上の高いHcJが得られており、B及びH/HcJはほとんど低下しておらず、実施例1のz=0.2の場合と同様の効果が得られることが分かる。
本発明によるフェライト焼結磁石は、各種モータ、発電機、スピーカ等の自動車用電装部品、電気機器用部品等に好適に利用することができ、特に、それら部品の小型・軽量化、高効率化に寄与できる。

Claims (2)

  1. 六方晶のM型マグネトプランバイト構造を有するフェライト相を主相とし、
    前記主相よりもLaの原子比率が高いオルソフェライト相を0.2質量%以上2.5質量%以下含有し、
    金属元素の原子比率を示す一般式:Ca1−x−yLaFe2n−zCo(A元素はBa及び/又はSr)において、x、y及びz並びにモル比を表わすnが、
    0.2≦x≦0.6、
    0≦y≦0.2、
    0.03≦z<0.25、
    3≦n≦7、及び
    1−x−y>y
    を満足し、かつSiをSiO換算で0.2質量%以上1.8質量%以下含有することを特徴とするフェライト焼結磁石。
  2. 前記オルソフェライト相が0.2質量%以上2.0質量%以下含有される請求項1に記載のフェライト焼結磁石。
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