JP2012206871A - 耐食性及び耐指紋性に優れた物品及び調理器具並びに耐食性及び耐指紋性に優れた物品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の耐食性及び耐指紋性に優れた物品は、表面粗さRaが0.3μm以上かつ光沢度グロス値が100%以下であり、セラミックス、金属複合体、金属のいずれか1種または2種以上からなる基材の表面に、酸化ジルコニウムを含む皮膜を形成しており、この酸化ジルコニウムを含む皮膜の上に、さらにマグネシウムを含む皮膜が形成されている。
【選択図】なし
Description
アルカリに強い材料としては、白金等の貴金属が知られているが、このような貴金属は非常に高価であり、調理器具に使用する材料としては現実的ではない。
また、耐食性とは別に、調理器具は、人が触れる機会が多いことから、その表面に多くの指紋が付着する。このような調理器具の表面に付着した指紋は、台所や厨房における美観を損なうことから、指紋が見え難くする方法が望まれていた。
また、フッ素樹脂やシリコーン樹脂は基材との密着性が悪く、基材にコーティングした膜が剥離し易いという欠点があった。
例えば、基材の表面にオキシジルコニウム塩を塗布し、熱処理して、この表面に撥水性の酸化ジルコニウム層を形成し、基材の表面に付着した汚れを落ち易くする方法(特許文献1)、あるいは、基材の表面に酸化ジルコニウムを含む皮膜を形成する方法(特許文献2)等が提案されている。
このような酸化ジルコニウム系のコーティング膜は、300℃以上の高温にも耐え、しかも基材との密着性に優れている。
また、調理器具の表面に指紋が付着した場合、台所や厨房における美観を損なうという問題点があり、指紋が見え難くする方法が要望されていた。
前記基材は、セラミックス、金属複合体、金属のいずれか1種または2種以上からなることが好ましい。
この酸化ジルコニウムを含む皮膜の上に、さらにマグネシウムを含む皮膜を形成すれば、アルカリ性物質を含む食材に対する耐食性を損なうこと無く、この虹色発生をさらに防止することができ、指紋の付着に起因する汚れもより見え難くすることができる。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の耐食性及び耐指紋性に優れた物品は、表面粗さRaが0.3μm以上かつ光沢度グロス値が100%以下である基材の表面に、酸化ジルコニウム(ZrO2)を含む皮膜(以下、単にジルコニア皮膜とも称する)を形成してなる物品である。
この基材としては、上記の耐食性及び耐指紋性に優れた物品を形成する際の熱処理に耐え得るのであれば格別の制限はなく、例えば、300℃程度の熱処理に対して耐熱性のあるガラス、結晶化ガラス、陶磁器等のセラミックス、琺瑯等の金属複合体、ステンレス鋼等の金属のいずれか1種または2種以上が挙げられる。
ここで、表面粗さRaを0.3μm以上とした理由は、表面粗さRaが0.3μm未満では、虹色の干渉色の発生が著しくなり、指紋の付着に起因する汚れも目立ち易くなり、美観を損ねるからである。
ここで、光沢度グロス値を100%以下とした理由は、光沢度グロス値が100%を超えると、表面粗さRaと同様、虹色の干渉色の発生が著しくなり、指紋の付着に起因する汚れも目立ち易くなり、美観を損ねるからである。
ここで、酸化ジルコニウム(ZrO2)の含有率が80質量%を下回ると、アルカリ溶融反応に対する耐食性が不十分なものとなるので好ましくなく、一方、含有率が100質量%を超えた場合、アルカリ溶融反応に対する耐食性が飽和してしまい、さらなる効果が得られない。
この厚みが50nmを下回ると、アルカリ溶融反応に対する耐食性が不十分となり、一方、厚みが1000nmを超えると、亀裂が発生する虞があり、調理器具等の表面の美観を損ねる虞がある。
そこで、マグネシウム化合物に酸化ジルコニウムや酸化アルミニウムを添加して耐水性及び耐酸性を向上させることが好ましい。
マグネシウム化合物は、可視光線に対する屈折率が酸化ジルコニウムより小さいので、虹色発生を抑制し、指紋の付着に起因する汚れも目立たなくする効果がある。
本実施形態の調理器具は、上記の耐食性及び耐指紋性に優れた物品を備えた調理器具であって、300℃以上でも使用可能である。
このような調理器具としては、例えば、キッチンや厨房で使用されるフライパン、鍋、調理用ホットプレート、焼き網等の調理用具、各種食器、コンロ天板、コンロ部品、オーブン内部品等、食品の調理に用いられる器具や部品等が挙げられる。
本実施形態の耐食性及び耐指紋性に優れた物品の製造方法としては、2つの方法が挙げられる。この2つの方法について順次説明する。
A.物品の製造方法−その1
基材の表面を、表面粗さRaが0.3μm以上かつ光沢度グロス値が100%以下となるように調整し、次いで、前記表面にジルコニア皮膜を形成する方法。
表面粗さRaは、テンコールp−10等の表面粗さ測定装置を用いて測定することができる。また、光沢度グロス値は、60°グロスメーターを用いて測定することができる。
このように表面粗さRa及び光沢度グロス値が調製された基材を、洗剤を用いて洗浄した後、水洗にて清浄にしておく。
ジルコニウム化合物としては、ジルコニアゾル、もしくはそれぞれのアルコキシドが好適である。
上記のジルコニアゾルとしては、特に制限されるものではないが、例えば、平均粒径が5nm以下、好ましくは1nm以下のものが、300℃程度の比較的低温度の熱処理により機械的特性に優れた皮膜を容易に形成し得るので好ましい。
このジルコニウムアルコキシドは、吸湿性が高く、非常に不安定であるから、ジルコニウムアルコキシドをキレート化したジルコニウムアルコキシドのキレート化合物を用いることが好ましい。
キレート剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン、アセチルアセトン等のβ−ジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、フェノキシ酢酸エチル等のβ−ケト酸エステル、酢酸、乳酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸等のカルボン酸等を挙げることができる。特に、酸を用いる場合には、弱酸が好ましい。
ジルコニウム化合物の割合が0.1質量%を下回ると、得られた皮膜の膜厚が薄く、耐食性が十分に得られず、一方、10質量%を超えると、皮膜が剥離する要因となる。
このケイ素化合物としては、熱処理によりケイ素酸化物となり得るケイ素化合物であれば特に制限はないが、例えば、コロイダルシリカ、ケイ素のアルコキシドを挙げることができる。
ここで、熱処理温度が250℃を下回ると、得られたジルコニア皮膜の機械的強度が不充分となる。なお、熱処理温度が高すぎると基材が変形する虞があるので、熱処理温度を使用する基材に応じて調整する必要がある。
以上により、基材の表面にジルコニア皮膜を形成することができる。
マグネシウム含有皮膜は、ジルコニア皮膜の表面に、マグネシウム化合物を含む塗布液を塗布し、熱処理することにより、得ることができる。
このアルミニウム化合物としては、アルミナゾル、もしくはそのアルコキシドが好適である。アルコキドとしては、アルミニウムブトキシド、アルミニウムプロポキシド等を挙げることができる。特に、アルミニウムのアルコキシドは、有機溶媒に溶解可能であるから好適である。
マグネシウム化合物の割合がマグネシア換算で10質量%を下回ると、アルカリ溶融反応に対する耐食性が不十分となり、一方、90質量%を超えると、耐水性や耐酸性、あるいは耐摩耗性が低下するから、好ましくない。
マグネシウム化合物の添加方法としては、ジルコニウム化合物やアルミニウム化合物を含む溶液に直接混合する方法が好ましい。
上記のアルミニウムアルコキシドのキレート化合物としては、アルミニウムアルコキシドとキレート剤との化合物を挙げることができる。
キレート剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン、アセチルアセトン等のβ−ジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、フェノキシ酢酸エチル等のβ−ケト酸エステル、酢酸、乳酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸等のカルボン酸等を挙げることができる。特に、酸を用いる場合には、弱酸が好ましい。
ここで、熱処理温度が250℃を下回ると、得られたマグネシウム含有皮膜の機械的強度が不充分となる。
以上により、ジルコニア皮膜の表面にマグネシウム含有皮膜を積層することができる。
基材の表面を加熱し、次いで、加熱されている前記表面にジルコニウム化合物を含む塗布液を塗布し、前記表面上に表面粗さRaが0.3μm以上かつ光沢度グロス値が100%以下の酸化ジルコニウムを含む皮膜を形成する方法。
このジルコニウム化合物を含む塗布液は、表面温度が250℃以上の基材の表面に付着した段階で、溶媒が蒸発するとともにジルコニウム化合物が反応して酸化ジルコニウムを生じさせる。
これにより、基材の表面に、表面粗さRaが0.3μm以上かつ光沢度グロス値が100%以下のジルコニア皮膜が形成されることとなる。
以上により、基材の表面にジルコニア皮膜を形成することができる。
「実施例1」
結晶化ガラス製のコンロ天板を用意し、このコンロ天板の表面を、3%フッ化アンモニウム溶液にて浸漬腐食して、表面粗さRaを0.4μm、光沢度グロス値を80%に調製し、この表面を洗浄した。
硝酸マグネシウム及びアルミニウムイソプロポキシドを、固形分2質量%、酸化物固形分比がMgO/(Al2O3+MgO)=30%となるように2−プロパノールに溶解し、実施例2の塗布液を作製した。
次いで、この塗布液を、実施例1に準じて得られた皮膜付き基材上に、はけにて塗布し、大気中、600℃にて1時間熱処理し、ジルコニア皮膜の上にマグネシア皮膜が形成された実施例2の皮膜付き基材を作製した。
実施例1の焼付け後の平均膜厚を50nmから200nmに変更した他は、実施例1に準じて実施例3の皮膜付き基材を作製した。
コンロ天板の表面を浸漬腐食しなかった他は、実施例1に準じて比較例1の皮膜付き基材を作製した。
コンロ天板の表面を浸漬腐食しなかった他は、実施例2に準じて比較例2の皮膜付き基材を作製した。
「実施例4」
琺瑯製オーブンキャビティ(オーブン筐体)を用意した。
一方、ジルコニウムテトラブトキシド10質量部、テトラメトキシシラン0.5質量部、アセチルアセトン5質量部、2−プロパノール84.5質量部を混合し、コーティング液を得た。
このジルコニア皮膜の平均膜厚は80nm、表面粗さRaは0.3μm、光沢度グロス値は50%であった。
実施例4に準じて得られた琺瑯製オーブンキャビティの表面に、1質量%の硝酸マグネシウム水溶液を50gスプレー塗装し、次いで、オーブンキャビティを加熱して、400℃にて10分間焼き付けを行い、ジルコニア皮膜の上にマグネシア皮膜が形成された実施例5の皮膜付き基材を作製した。
実施例4の焼付け後の平均膜厚を80nmから200nmに変更した他は、実施例4に準じて実施例6の皮膜付き基材を作製した。
オーブンキャビティを予熱せずに、このオーブンキャビティの表面に実施例4のコーティング液を50gスプレー塗装し、次いで、400℃にて10分間焼き付けを行い、表面にジルコニア皮膜が形成された比較例3の皮膜付き基材を作製した。このジルコニア皮膜の表面粗さRaは0.06μm、光沢度グロス値は90%であった。
オーブンキャビティを予熱しなかった他は、実施例4に準じて、比較例4の皮膜付き基材を作製した。
「実施例7」
ステンレススチール製フライパンを用意し、このフライパンの表面にヘアライン処理を施して、この表面を研磨し、表面粗さRaを0.5μm、光沢度グロス値を90%に調製し、その後洗浄した。
次いで、このコーティング液に、上記のフライパンを浸漬して引き上げるディップ塗装を行い、次いで、250℃にて30分間焼き付けを行い、表面にジルコニア皮膜が形成された実施例7の皮膜付き基材を作製した。
このジルコニア皮膜の平均膜厚は、0.1μmであった。
硝酸マグネシウム及びジルコニウムブトキシドを、固形分2質量%、酸化物固形分比がMgO/(ZrO2+MgO)=30%となるように2−プロパノールに溶解し、実施例8の塗布液を作製した。
次いで、この塗布液に実施例1に準じて得られた皮膜付き基材を浸漬して引き上げるディップ塗装を行い、大気中、250℃にて1時間熱処理することにより、ジルコニア皮膜の表面にマグネシア及びジルコニア複合酸化物皮膜が形成された実施例8の皮膜付き基材を作製した。
実施例7の焼付け後の平均膜厚を0.1μmから200nmに変更した他は、実施例7に準じて実施例9の皮膜付き基材を作製した。
ヘアライン処理を施さなかった他は、実施例6に準じて、比較例5の皮膜付き基材を作製した。
ヘアライン処理を施さなかった他は、実施例7に準じて、比較例6の皮膜付き基材を作製した。
実施例1〜9の皮膜付き基材及び比較例1〜6の皮膜付き基材各々の膜特性を評価した。評価結果を表1〜表3に示す。
なお、ここでは、皮膜を形成していない結晶化ガラス製のコンロ天板を従来例1、皮膜を形成していない琺瑯製オーブンキャビティを従来例2、皮膜を形成していないステンレススチール製フライパンを従来例3とした。
また、評価方法は次のとおりである。
テンコールp−10(表面粗さ測定装置)を用いて測定した。
(2)光沢度グロス値
60°グロスメーターを用いて測定した。
(3)耐アルカリ性
皮膜付き基材上に炭酸カリウム1gを載せ、500℃にて1時間加熱したときの皮膜における腐食の度合いを目視にて観察した。
(4)干渉色
目視にて評価した。
(5)指紋の見え易さ
目視にて評価した。
さらに、ジルコニアを含む皮膜上にマグネシウムを含む層を積層すると、虹色の発生がさらに抑制され、指紋をさらに見え難くすることができた。
Claims (7)
- 表面粗さRaが0.3μm以上かつ光沢度グロス値が100%以下である基材の表面に、酸化ジルコニウムを含む皮膜を形成してなることを特徴とする耐食性及び耐指紋性に優れた物品。
- 前記酸化ジルコニウムを含む皮膜の上に、さらにマグネシウムを含む皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載の耐食性及び耐指紋性に優れた物品。
- 前記基材は、セラミックス、金属複合体、金属のいずれか1種または2種以上からなることを特徴とする請求項1または2記載の耐食性及び耐指紋性に優れた物品。
- 請求項1ないし3のいずれか1項記載の耐食性及び耐指紋性に優れた物品を備えた調理器具であって、
300℃以上にて使用可能であることを特徴とする調理器具。 - 基材の表面を、表面粗さRaが0.3μm以上かつ光沢度グロス値が100%以下となるように調整し、次いで、前記表面に酸化ジルコニウムを含む皮膜を形成することを特徴とする耐食性及び耐指紋性に優れた物品の製造方法。
- 基材の表面を加熱し、次いで、加熱されている前記表面にジルコニウム化合物を含む塗布液を塗布し、前記表面上に表面粗さRaが0.3μm以上かつ光沢度グロス値が100%以下の酸化ジルコニウムを含む皮膜を形成することを特徴とする耐食性及び耐指紋性に優れた物品の製造方法。
- 前記酸化ジルコニウムを含む皮膜の上に、さらにマグネシウムを含む皮膜を形成することを特徴とする請求項5または6記載の耐食性及び耐指紋性に優れた物品の製造方法。
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