JP2010037173A - 防汚性製品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐磨耗性、耐擦傷性、基板との密着性に優れ、しかも、食品等の有機物の焦げ付き汚れや水垢(動物の排泄物等の汚れを含む)の固着防止効果に優れ、特に、高温(300℃以上)での食品等の有機物の焦げ付き汚れを簡単に除去することが可能な防汚性製品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の防汚性製品は、基体の表面に防汚性薄膜を形成してなる防汚性製品であり、この防汚性薄膜は、酸化ジルコニウム(ZrO2)を70質量%以上含有するとともに、その表面から内部にハロゲン元素を浸透または拡散した。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の防汚性製品は、基体の表面に防汚性薄膜を形成してなる防汚性製品であり、この防汚性薄膜は、酸化ジルコニウム(ZrO2)を70質量%以上含有するとともに、その表面から内部にハロゲン元素を浸透または拡散した。
【選択図】なし
Description
本発明は、防汚性製品及びその製造方法に関し、特に、耐摩耗性、耐擦傷性、防汚性薄膜の基体との密着性に優れ、水垢汚れや300℃以上の高温下での食品等の有機物の焦げ付き汚れを簡単に除去することが可能な防汚性製品及びその製造方法に関するものである。
従来より、水垢汚れや食品等の有機物の焦げ付き汚れを簡単に除去することができる防汚性製品として、次のような各種製品が提案されている。
(1)食品の焦げ付き汚れを簡単に除去することができる調理器具としては、耐熱性を有する基材上に、水溶性ジルコニウム化合物や酸化ジルコニウムゾルを塗布し、焼成することにより、ジルコニウム酸化物からなる防汚性薄膜を形成し、食品の焦げ付き汚れを簡単に除去することができるようにした調理器具(特許文献1)。
(1)食品の焦げ付き汚れを簡単に除去することができる調理器具としては、耐熱性を有する基材上に、水溶性ジルコニウム化合物や酸化ジルコニウムゾルを塗布し、焼成することにより、ジルコニウム酸化物からなる防汚性薄膜を形成し、食品の焦げ付き汚れを簡単に除去することができるようにした調理器具(特許文献1)。
(2)セラミックスの表面に、オキシジルコニウム塩水溶液を塗布した後、500℃以下の温度で焼成することにより、透明な撥水性ジルコニア膜を成膜し、防汚性が長時間持続するようにした撥水性セラミックス(特許文献2)。
(3)アルコキシシランまたはその加水分解生成物等のケイ素化合物と、ジルコニウムアルコキシドまたはその加水分解生成物等のジルコミウム化合物とを含む塗布液を、基材の表面に塗布し、熱処理することにより形成した防汚性を有する親水性被膜(特許文献3、4)。
特開2005−321108号公報
特開平10−203882号公報
特開2007−161770号公報
特開2008−111011号公報
(3)アルコキシシランまたはその加水分解生成物等のケイ素化合物と、ジルコニウムアルコキシドまたはその加水分解生成物等のジルコミウム化合物とを含む塗布液を、基材の表面に塗布し、熱処理することにより形成した防汚性を有する親水性被膜(特許文献3、4)。
しかしながら、上述した従来の防汚性薄膜(親水性被膜)においては、耐磨耗性、耐擦傷性、基板との密着性が充分でないために、例えば、清掃の際に擦り洗いした場合、防汚性薄膜(親水性被膜)が製品の基体から剥離し易いという問題点があった。
また、防汚性薄膜(親水性被膜)の水垢の固着防止効果も充分でないために、上記と同様の問題点があった。
さらに、防汚性薄膜(親水性被膜)上に食品等の有機物の焦げ付き汚れが固着した場合、低温(250℃以下)での焦げ付き汚れは比較的簡単に除去することができるものの、高温(300℃以上)での焦げ付き汚れは簡単には除去できないという問題点があった。
また、防汚性薄膜(親水性被膜)の水垢の固着防止効果も充分でないために、上記と同様の問題点があった。
さらに、防汚性薄膜(親水性被膜)上に食品等の有機物の焦げ付き汚れが固着した場合、低温(250℃以下)での焦げ付き汚れは比較的簡単に除去することができるものの、高温(300℃以上)での焦げ付き汚れは簡単には除去できないという問題点があった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、耐磨耗性、耐擦傷性、基板との密着性に優れ、しかも、食品等の有機物の焦げ付き汚れや水垢(動物の排泄物等の汚れを含む)の固着防止効果に優れ、特に、高温(300℃以上)での食品等の有機物の焦げ付き汚れを簡単に除去することが可能な防汚性製品及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、基体の表面に、酸化ジルコニウム(ZrO2)を70質量%以上含有するとともに、表面から内部にハロゲン元素を浸透または拡散してなる防汚性薄膜を形成すれば、耐磨耗性、耐擦傷性、基板との密着性に優れ、しかも、食品等の有機物の焦げ付き汚れや水垢(動物の排泄物等の汚れを含む)の固着防止効果に優れ、特に、高温(300℃以上)での食品等の有機物の焦げ付き汚れを簡単に除去し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の防汚性製品は、基体の表面に防汚性薄膜を形成してなる防汚性製品であって、前記防汚性薄膜は、酸化ジルコニウム(ZrO2)を70質量%以上含有するとともに、その表面から内部にハロゲン元素を浸透または拡散してなることを特徴とする。
本発明の防汚性製品の製造方法は、酸化ジルコニウムゾル、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物及びジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物の群から選択される1種または2種以上のジルコニウム(Zr)成分を含む塗膜形成成分を含有し、前記ジルコニウム(Zr)成分を酸化ジルコニウム(ZrO2)に前記塗膜形成成分を酸化物にそれぞれ換算したときの前記酸化ジルコニウム(ZrO2)の前記酸化物全体量に対する割合が70質量%以上である塗布液を、基体の表面に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を120℃以上の温度にて熱処理して薄膜を形成し、次いで、この薄膜に100℃以下の温度にてハロゲン化合物を接触させることを特徴とする。
本発明の防汚性製品によれば、基体の表面に形成された防汚性薄膜を、酸化ジルコニウム(ZrO2)を70質量%以上含有するとともに、その表面から内部にハロゲン元素を浸透または拡散したので、耐磨耗性、耐擦傷性に優れ、しかも食品等の有機物の焦げ付き汚れや水垢(動物の排泄物等の汚れを含む)の固着防止効果に優れたものとすることができる。
また、清掃の際に擦り洗いしたとしても、防汚性薄膜が基体から剥離する虞がなく、また、高温(300℃以上)にて焦げ付いた焦げ付き汚れも水拭き程度の清掃手段で簡単に除去することができる。
また、清掃の際に擦り洗いしたとしても、防汚性薄膜が基体から剥離する虞がなく、また、高温(300℃以上)にて焦げ付いた焦げ付き汚れも水拭き程度の清掃手段で簡単に除去することができる。
本発明の防汚性製品の製造方法によれば、耐磨耗性、耐擦傷性、食品等の有機物の焦げ付き汚れや水垢(動物の排泄物等の汚れを含む)の固着防止効果に優れ、特に、高温(300℃以上)にて焦げ付いた焦げ付き汚れも水拭き程度の清掃手段で簡単に除去することができる防汚性製品を、簡便かつ効率的に作製することができる。
本発明の防汚性製品及びその製造方法を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
「防汚性製品」
本実施形態の防汚性製品は、基体の表面に防汚性薄膜を形成してなる防汚性製品であって、前記防汚性薄膜は、酸化ジルコニウム(ZrO2)を70質量%以上、好ましくは90質量%以上含有するとともに、その表面から内部にハロゲン元素を浸透または拡散した薄膜であり、食品等の有機物の焦げ付き汚れや水垢(動物の排泄物等の汚れを含む)の固着防止効果に優れたものである。
本実施形態の防汚性製品は、基体の表面に防汚性薄膜を形成してなる防汚性製品であって、前記防汚性薄膜は、酸化ジルコニウム(ZrO2)を70質量%以上、好ましくは90質量%以上含有するとともに、その表面から内部にハロゲン元素を浸透または拡散した薄膜であり、食品等の有機物の焦げ付き汚れや水垢(動物の排泄物等の汚れを含む)の固着防止効果に優れたものである。
ここで、焦げ付き汚れや水垢(動物の排泄物等の汚れを含む)の固着防止とは、焦げ付き汚れや水垢が固着せず、たとえ固着したとしても、固着した焦げ付き汚れや水垢を、基体の表面から、水を含ませた布等で拭くことにより容易に取り除くことができる、ということである。
基体は、防汚性製品の本体を構成するもので、目的とする製品の形状や仕様により様々な形状のものが選択使用される。この基体としては、例えば、便器、洗面器等の衛生陶器、タイル製バスタブ、プラスチィクス製バスタブ等の浴室用設備、キッチンや厨房で使用されるフライパン、鍋、調理用プレート、魚焼き用グリルの水入れ皿、焼き網等の調理用具や各種食器等は勿論のこと、コンロ天板、コンロ部品、オーブン内部品等、食品の調理に用いられる器具や部品、さらには熱機関であるストーブ、ボイラー等が挙げられる。
この基体の材質としては、上記の防汚性薄膜を形成する際の熱処理に耐え得るのであれば格別の制限はなく、ガラス、陶磁器等のセラミックス、プラスチック等の有機物、ステンレス鋼等の金属、琺瑯等の金属複合体を例示することができる。
この基体の材質としては、上記の防汚性薄膜を形成する際の熱処理に耐え得るのであれば格別の制限はなく、ガラス、陶磁器等のセラミックス、プラスチック等の有機物、ステンレス鋼等の金属、琺瑯等の金属複合体を例示することができる。
防汚性薄膜は、酸化ジルコニウム(ZrO2)を70質量%以上、好ましくは90質量%以上含有する薄膜であればよく、特に制限はない。この薄膜の酸化ジルコニウム(ZrO2)以外の成分としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2)が挙げられる。ここで、酸化ジルコニウム(ZrO2)の含有率が70質量%を下回ると、水垢の固着防止効果も充分でなく、更に、低温(250℃以下)での食品の焦げ付き汚れは比較的簡単に除去することができるものの、高温(300℃以上)での焦げ付き汚れは簡単には除去できないので不適当である。
この防汚性薄膜の厚みは0.001μm〜1μmの範囲内であることが好ましい。この厚みが0.001μmを下回ると、防汚性の付与が不充分となり、一方、厚みが1μmを上回ると、防汚性薄膜の耐衝撃性が低下してクラックが入り易くなる。
なお、この防汚性薄膜で干渉色を発生させないようにするためには、この防汚性薄膜の厚みを0.1μm以下とする必要がある。
なお、この防汚性薄膜で干渉色を発生させないようにするためには、この防汚性薄膜の厚みを0.1μm以下とする必要がある。
ハロゲン元素(Cl、F、Br、I)は、100℃以下の温度にて、防汚性薄膜の表面にハロゲン化合物を接触させることにより、この防汚性薄膜の表面から内部に向かって浸透または拡散している。このハロゲン化合物としては、分子中にハロゲン元素を有する化合物であれば特に制限はなく、ハロゲン化水素、ハロゲンガス等が好適である。
この防汚性薄膜の表面近傍におけるハロゲン元素(Cl、F、Br、I)の濃度は、1ppm〜10000ppmの範囲が好ましく、より好ましくは10ppm〜1000ppmの範囲である。
この防汚性薄膜の表面近傍におけるハロゲン元素(Cl、F、Br、I)の濃度は、1ppm〜10000ppmの範囲が好ましく、より好ましくは10ppm〜1000ppmの範囲である。
この防汚性薄膜中におけるハロゲン元素の存在状態としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)を70質量%以上含有する薄膜の少なくとも表層部においては、下記の式(1)に示されるようなジルコニウム元素とハロゲン元素との化学結合が生じている。
一方、酸化ジルコニウム(ZrO2)を70質量%以上含有する薄膜の少なくとも表層部において、下記の式(2)に示されるようなジルコニウム(Zr)元素と酸素(O)元素との化学結合が生じている場合、ジルコニウム(Zr)元素は3個の酸素(O)元素と結合しており、うち1個とは二重結合であり、この二重結合の存在により防汚性薄膜が撥水性を示すこととなる。さらに、下記の式(3)に示されるように、上記の二重結合は、その一部が切断されて−OH 基と化学結合している。
この薄膜では、撥水性により水垢や焦げ汚れが取り除き易くなるものの、ジルコニウム(Zr)元素と化学結合している−OH基が親水性を示すために、水垢や焦げ付き汚れと反応し易く、生じた固着物質は除去困難な汚れとなってしまう。
本実施形態の防汚性薄膜では、上記の式(1)に示すように、ジルコニウム元素にハロゲン元素が化学結合しているので、水垢や焦げ付き汚れとの反応が抑制されることにより、水垢や焦げ付き汚れの固着を防止し、たとえ固着したとしても容易に除去することができる。また、耐摩耗性及び耐擦傷性も向上する。
以上により、耐磨耗性、耐擦傷性、基体との密着性に優れたものとすることができ、また、水垢の固着防止効果に優れたものとすることができる。特に、高温(300℃以上)で焦げ付いた焦げ付き汚れも水拭き程度の清掃手段で簡単に除去することができる。
以上により、耐磨耗性、耐擦傷性、基体との密着性に優れたものとすることができ、また、水垢の固着防止効果に優れたものとすることができる。特に、高温(300℃以上)で焦げ付いた焦げ付き汚れも水拭き程度の清掃手段で簡単に除去することができる。
「防汚性製品の製造方法」
本実施形態の防汚性製品の製造方法は、酸化ジルコニウムゾル、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物及びジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物の群から選択される1種または2種以上のジルコニウム(Zr)成分を含む塗膜形成成分を含有し、前記ジルコニウム(Zr)成分を酸化ジルコニウム(ZrO2)に前記塗膜形成成分を酸化物にそれぞれ換算したときの前記酸化ジルコニウム(ZrO2)の前記酸化物全体量に対する割合が70質量%以上である塗布液を、基体の表面に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を120℃以上の温度にて熱処理して薄膜を形成し、次いで、この薄膜に100℃以下の温度にてハロゲン化合物を接触させる方法である。
本実施形態の防汚性製品の製造方法は、酸化ジルコニウムゾル、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物及びジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物の群から選択される1種または2種以上のジルコニウム(Zr)成分を含む塗膜形成成分を含有し、前記ジルコニウム(Zr)成分を酸化ジルコニウム(ZrO2)に前記塗膜形成成分を酸化物にそれぞれ換算したときの前記酸化ジルコニウム(ZrO2)の前記酸化物全体量に対する割合が70質量%以上である塗布液を、基体の表面に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を120℃以上の温度にて熱処理して薄膜を形成し、次いで、この薄膜に100℃以下の温度にてハロゲン化合物を接触させる方法である。
上記の酸化ジルコニウムゾルとしては、特に制限されるものではないが、例えば、平均粒径が20nm以下、好ましくは10nm以下のものが、100℃〜300℃以下の比較的低温度の熱処理により機械的特性に優れた薄膜を容易に形成し得るので好ましい。なお、平均粒径が20nmを超えるものを用いると、熱処理による焼き締まりが不充分となり、その結果、機械的特性が劣化した薄膜となり、容易に剥離するので好ましくない。
上記のジルコニウムアルコキシドとしては、特に制限されるものではないが、例えば、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシドを例示することができる。これらジルコニウムテトラノルマルブトキシドやジルコニウムテトラプロポキシドは、適度な加水分解速度を有し、しかも、取り扱い易いので、膜質が均一な薄膜を形成することができる。
また、上記のジルコニウムアルコキシドの加水分解物としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジルコニウムテトラノルマルブトキシドの加水分解物、ジルコニウムテトラプロポキシドの加水分解物を例示することができる。この加水分解物の加水分解率としては、特に制限はなく、0モル%超〜100モル%の範囲内のものを使用することができる。
これらジルコニウムアルコキシドやジルコニウムアルコキシドの加水分解物は、吸湿性が高く、非常に不安定であり、さらには、これらを含む塗布液の貯蔵安定性も劣っているので、これらジルコニウムアルコキシドやジルコニウムアルコキシドの加水分解物をキレート化したジルコニウムアルコキシドのキレート化合物、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物を用いることが好ましい。
上記のジルコニウムアルコキシドのキレート化合物としては、ジルコニウムアルコキシドと、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン、アセチルアセトン等のβ−ジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、フェノキシ酢酸エチル等のβ−ケト酸エステル、酢酸、乳酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸等のカルボン酸の群から選択される1種または2種以上の加水分解抑制剤との反応生成物を例示することができる。ここで、加水分解抑制剤とは、ジルコニウムアルコキシドとキレート化合物を形成し、このキレート化合物の加水分解反応を抑制する作用を有する化合物のことである。
また、上記のジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物としては、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物と、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン、アセチルアセトン等のβ−ジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、フェノキシ酢酸エチル等のβ−ケト酸エステル、酢酸、乳酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸等のカルボン酸の群から選択される1種または2種以上の加水分解抑制剤との反応生成物を例示することができる。ここで、加水分解抑制剤とは、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物とキレート化合物を形成し、このキレート化合物の加水分解反応を抑制する作用を有する化合物のことである。
この加水分解抑制剤の、ジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムアルコキシドの加水分解物に対する割合は、このジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムアルコキシドの加水分解物に含まれるジルコニウム(Zr)の0.5モル倍〜4モル倍が好ましく、より好ましくは1モル倍〜3モル倍である。
ここで、加水分解抑制剤の割合が0.5モル倍よりも少ないと、塗布液の安定性が不充分なものとなるからであり、一方、4モル倍を上回ると、熱処理した後においても加水分解抑制剤が薄膜中に残留し、その結果、薄膜の硬度が低下するからである。
ここで、加水分解抑制剤の割合が0.5モル倍よりも少ないと、塗布液の安定性が不充分なものとなるからであり、一方、4モル倍を上回ると、熱処理した後においても加水分解抑制剤が薄膜中に残留し、その結果、薄膜の硬度が低下するからである。
これらジルコニウムアルコキシドのキレート化合物、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物としては、ジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウムアルコキシドの加水分解物を溶媒中に溶解し、さらに加水分解抑制剤を添加し、得られた溶媒中にてキレート化反応を生じさせたものであってもよい。
上記の塗布液には、他の塗膜形成成分を含有していてもよい。
この場合、許容される他の塗膜形成成分の含有率は、全ての塗膜形成成分をそれぞれの酸化物に換算したときの、全酸化物合計量に対する他の塗膜形成成分の酸化物の割合が30質量%以下である。このような他の塗膜形成成分としては、ケイ素化合物を例示することができる。
この場合、許容される他の塗膜形成成分の含有率は、全ての塗膜形成成分をそれぞれの酸化物に換算したときの、全酸化物合計量に対する他の塗膜形成成分の酸化物の割合が30質量%以下である。このような他の塗膜形成成分としては、ケイ素化合物を例示することができる。
このケイ素化合物としては、熱処理によりケイ素酸化物となり得るケイ素化合物であれば特に制限はないが、例えば、コロイダルシリカ、ケイ素のアルコキシド、ケイ素のアルコキシドの加水分解物を例示することができる。ケイ素のアルコキシドの加水分解率としては、特に制限はなく、0モル%超〜100モル%の範囲内のものを使用することができる。
上記の溶媒としては、上述したジルコニウム成分、ケイ素化合物を含む場合はジルコニウム成分及びケイ素化合物、を溶解または分散させることのできる溶媒であれば、特に制限なく用いることができ、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の低級アルコールの他、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)等のエーテル類(セロソルブ類)、アセトン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール等のグリコール類、高級アルコール類、エステル類等を挙げることができる。特に、溶媒として水を用いる場合、アルコキシドの加水分解量以上の量の水を含有させると塗布液の安定性が低下するので、アルコキシドの加水分解量より少ない量とする必要がある。
ここで、ジルコニウム成分としてジルコニウムアルコキシドおよび/またはジルコニウムアルコキシドの加水分解物を用いる場合、あるいは、ケイ素化合物としてケイ素のアルコキシドおよび/またはケイ素のアルコキシドの加水分解物を用いる場合には、このジルコニウム成分および/またはケイ素化合物の加水分解反応を制御する触媒を添加してもよい。
この触媒としては、塩酸、硝酸等の無機酸、クエン酸、酢酸等の有機酸等を例示することができる。また、この触媒の添加量は、通常、塗布液中のジルコニウム成分、ケイ素化合物を含む場合はジルコニウム成分及びケイ素化合物の合計量、に対して0.01〜10質量%程度が好ましい。なお、触媒の過剰の添加は、熱処理の際に熱処理炉を腐食する虞があるので好ましくない。
この触媒としては、塩酸、硝酸等の無機酸、クエン酸、酢酸等の有機酸等を例示することができる。また、この触媒の添加量は、通常、塗布液中のジルコニウム成分、ケイ素化合物を含む場合はジルコニウム成分及びケイ素化合物の合計量、に対して0.01〜10質量%程度が好ましい。なお、触媒の過剰の添加は、熱処理の際に熱処理炉を腐食する虞があるので好ましくない。
この点、ジルコニウム成分としてジルコニウムアルコキシドのキレート化合物またはジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物を用い、ケイ素化合物としてコロイダルシリカを用いると、加水分解反応を制御する触媒である酸を添加する必要がなく、したがって、薄膜を形成する際に熱処理を行う熱処理炉を腐食する虞がないので好ましい。
この塗布液においては、塗膜形成成分の含有率は、全ての塗膜形成成分をそれぞれの酸化物に換算したとき、これら酸化物の合計の含有率が0.1質量%以上かつ10質量%以下であることが好ましい。
合計の含有率が0.1質量%を下回ると、所定の膜厚の薄膜を形成することが困難となり、一方、合計の含有率が10質量%を超えると、膜厚が所定の膜厚を超えて薄膜が白化したり、剥離したり等の原因となるので好ましくない。
合計の含有率が0.1質量%を下回ると、所定の膜厚の薄膜を形成することが困難となり、一方、合計の含有率が10質量%を超えると、膜厚が所定の膜厚を超えて薄膜が白化したり、剥離したり等の原因となるので好ましくない。
次いで、この塗布液を基体の表面に塗布する。塗布方法としては特に制限はなく、スプレー法、ディップ法、刷毛塗り法等が適用できる。塗布に当たっては、塗布膜の厚みを、熱処理後の膜厚が0.001μm〜1μmの範囲になるように調製することが好ましい。
このようにして得られた塗布膜を120℃以上、より好ましくは200℃以上の熱処理温度にて、通常、10分以上かつ1時間以下の熱処理時間、熱処理し、薄膜を形成する。この熱処理時の雰囲気は特に制限されず、通常、大気雰囲気中で行う。
ここで、熱処理温度が120℃を下回ると、得られた薄膜の膜強度が不充分となる。なお、熱処理温度が高すぎると基体が変形する虞があるので、熱処理温度を使用する基体に応じて調整する必要がある。
ここで、熱処理温度が120℃を下回ると、得られた薄膜の膜強度が不充分となる。なお、熱処理温度が高すぎると基体が変形する虞があるので、熱処理温度を使用する基体に応じて調整する必要がある。
基体がプラスチックの場合には、薄膜の形成に先立って、基体の表面をシランカップリング処理することが好ましい。それは、プラスチックの基体の表面にシランカップリング層を形成しておくと、プラスチックの基体と薄膜との密着性が向上するからである。
シランカップリング剤層は、シランカップリング剤を含むプライマー液をプラスチックの基体の表面に塗布し、熱処理することにより形成される。この熱処理の温度及び時間は、プラスチックの基体が耐え得る範囲内であればよく、特に制限はしないが、通常、熱処理温度は50℃以上かつ200℃以下、熱処理時間は1分以上かつ1時間以下である。
シランカップリング剤を含むプライマー液としては、有機溶媒中にシランカップリング剤を、例えば0.1質量%以上かつ5質量%以下溶解させたものが好適に用いられる。
シランカップリング剤としては、どのような組成のものであっても使用可能であるが、特に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
シランカップリング剤としては、どのような組成のものであっても使用可能であるが、特に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
このようにして、基体の表面に、酸化ジルコニウムを70質量%以上含む薄膜が形成される。
次いで、この薄膜に、ハロゲン化合物を100℃以下の温度で接触させる。この処理を「ハロゲン化処理」と称することもある。
このハロゲン化処理は、例えば、ハロゲン化合物を水および/または有機溶媒を含む溶液中に溶解または分散した液を、スプレー法、ディップ法等の塗布法を用いて薄膜の表面に塗布し、100℃以下の温度で熱処理することで実施することができる。この熱処理を「第2の熱処理」と称する場合もある。
この(第2の)熱処理温度が100℃を超えると、ハロゲン化合物が薄膜の表面から内部に浸透または拡散するまでに揮発してしまい、表層中のハロゲン濃度が薄くなってしまい、ハロゲン化処理の目的を達成できないので好ましくない。
このハロゲン化処理は、例えば、ハロゲン化合物を水および/または有機溶媒を含む溶液中に溶解または分散した液を、スプレー法、ディップ法等の塗布法を用いて薄膜の表面に塗布し、100℃以下の温度で熱処理することで実施することができる。この熱処理を「第2の熱処理」と称する場合もある。
この(第2の)熱処理温度が100℃を超えると、ハロゲン化合物が薄膜の表面から内部に浸透または拡散するまでに揮発してしまい、表層中のハロゲン濃度が薄くなってしまい、ハロゲン化処理の目的を達成できないので好ましくない。
この(第2の)熱処理時の雰囲気は、特に制限されず、通常、大気雰囲気中で行う。また、熱処理時間は、特に制限されないが、熱処理時間が長い程、ハロゲン化合物が薄膜の表面から深部まで浸透し、より深部までハロゲン化処理されるが、ハロゲン化合物が薄膜の少なくとも表層部に浸透または拡散することを考慮すると、通常、10分〜1時間の熱処理で充分である。
また、熱処理時に塗布面を擦ると、薄膜のより深部までハロゲン化合物が浸透し、より深部までハロゲン化処理されるので好ましい。
また、熱処理時に塗布面を擦ると、薄膜のより深部までハロゲン化合物が浸透し、より深部までハロゲン化処理されるので好ましい。
このハロゲン化合物としては、ハロゲン化水素やハロゲンガス等、分子中にハロゲン元素を含む化合物であれば特に制限はない。
このハロゲン化合物を水および/または有機溶媒を含む溶液中に溶解(または分散)した溶液(または分散液)は、酸性とするのが特に好ましい。その理由は、上述のように−OH基と置換するためには、酸性のほうが置換し易いからである。酸としては、特に制限はなく、例えば、硝酸、塩酸等の無機酸、クエン酸、酢酸等の有機酸等を例示することができる。また、ハロゲン化合物を含む溶液(または分散液)に、薄膜の表面への塗布性を改善するために界面活性剤を添加してもよい。
ハロゲン化処理の後、表面に残渣が残ることがあるが、この残渣は水洗等により容易に取り除くことができる。
このハロゲン化合物を水および/または有機溶媒を含む溶液中に溶解(または分散)した溶液(または分散液)は、酸性とするのが特に好ましい。その理由は、上述のように−OH基と置換するためには、酸性のほうが置換し易いからである。酸としては、特に制限はなく、例えば、硝酸、塩酸等の無機酸、クエン酸、酢酸等の有機酸等を例示することができる。また、ハロゲン化合物を含む溶液(または分散液)に、薄膜の表面への塗布性を改善するために界面活性剤を添加してもよい。
ハロゲン化処理の後、表面に残渣が残ることがあるが、この残渣は水洗等により容易に取り除くことができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
「実施例1」
酸化ジルコニウムゾルとしてナノジルコニア水分散液(平均粒径:5nm、住友大阪セメント製)を固形分濃度が2質量%になるように水で希釈して塗布液を得た。この塗布液を、釉懸けされた陶磁器製品の基体の表面にスプレー法を用いて塗布量10g/m2にて塗布し、大気雰囲気中、300℃にて30分間熱処理し、膜厚が0.1μmの薄膜を形成した。
次いで、この薄膜上に9.5質量%の塩酸を塗布量10g/m2にて塗布し、次いで、室温(25℃)下、ブラシで表面を数回擦り、その後、この表面に生じた残渣を水で洗い流し、基体の表面に防汚性薄膜が形成された実施例1の防汚性製品を得た。
酸化ジルコニウムゾルとしてナノジルコニア水分散液(平均粒径:5nm、住友大阪セメント製)を固形分濃度が2質量%になるように水で希釈して塗布液を得た。この塗布液を、釉懸けされた陶磁器製品の基体の表面にスプレー法を用いて塗布量10g/m2にて塗布し、大気雰囲気中、300℃にて30分間熱処理し、膜厚が0.1μmの薄膜を形成した。
次いで、この薄膜上に9.5質量%の塩酸を塗布量10g/m2にて塗布し、次いで、室温(25℃)下、ブラシで表面を数回擦り、その後、この表面に生じた残渣を水で洗い流し、基体の表面に防汚性薄膜が形成された実施例1の防汚性製品を得た。
次いで、実施例1の防汚性製品の水垢固着防止性を、次のようにして評価した。
すなわち、防汚性薄膜上に水道水を1ml滴下し、大気中、100℃にて1時間加熱して水分を蒸発させた。この防汚性薄膜では、表面に水垢が固着していることは認められたものの、この水垢を水を含ませたスポンジで擦り洗いしたところ、固着した水垢を容易に除去することができた。また、この防汚性薄膜では、その表面には磨耗は認められず、防汚性薄膜の剥離も認められなかった。
また、この防汚性薄膜中に塩素(Cl)が存在することを、X線光電子分光法(XPS法)により確認した。
すなわち、防汚性薄膜上に水道水を1ml滴下し、大気中、100℃にて1時間加熱して水分を蒸発させた。この防汚性薄膜では、表面に水垢が固着していることは認められたものの、この水垢を水を含ませたスポンジで擦り洗いしたところ、固着した水垢を容易に除去することができた。また、この防汚性薄膜では、その表面には磨耗は認められず、防汚性薄膜の剥離も認められなかった。
また、この防汚性薄膜中に塩素(Cl)が存在することを、X線光電子分光法(XPS法)により確認した。
「実施例2」
9.5質量%の塩酸を9.5質量%の臭化水素水溶液に変更した他は、実施例1に準じて実施例2の防汚性製品を得た。
次いで、実施例2の防汚性製品の水垢固着防止性を、実施例1に準じて評価したところ、実施例1と同様、固着した水垢を容易に除去することができた。また、防汚性薄膜には磨耗は認められず、防汚性薄膜の剥離も認められなかった。
また、この防汚性薄膜中に塩素(Cl)が存在することを、X線光電子分光法(XPS法)により確認した。
9.5質量%の塩酸を9.5質量%の臭化水素水溶液に変更した他は、実施例1に準じて実施例2の防汚性製品を得た。
次いで、実施例2の防汚性製品の水垢固着防止性を、実施例1に準じて評価したところ、実施例1と同様、固着した水垢を容易に除去することができた。また、防汚性薄膜には磨耗は認められず、防汚性薄膜の剥離も認められなかった。
また、この防汚性薄膜中に塩素(Cl)が存在することを、X線光電子分光法(XPS法)により確認した。
「実施例3」
9.5質量%の塩酸を9.5質量%のヨウ化水素水溶液に変更した他は、実施例1に準じて実施例3の防汚性製品を得た。
次いで、実施例3の防汚性製品の水垢固着防止性を、実施例1に準じて評価したところ、実施例1と同様、固着した水垢を容易に除去することができた。また、防汚性薄膜には磨耗は認められず、防汚性薄膜の剥離も認められなかった。
また、この防汚性薄膜中に塩素(Cl)が存在することを、X線光電子分光法(XPS法)により確認した。
9.5質量%の塩酸を9.5質量%のヨウ化水素水溶液に変更した他は、実施例1に準じて実施例3の防汚性製品を得た。
次いで、実施例3の防汚性製品の水垢固着防止性を、実施例1に準じて評価したところ、実施例1と同様、固着した水垢を容易に除去することができた。また、防汚性薄膜には磨耗は認められず、防汚性薄膜の剥離も認められなかった。
また、この防汚性薄膜中に塩素(Cl)が存在することを、X線光電子分光法(XPS法)により確認した。
「比較例1」
実施例1にて得られた塗布液を、釉懸けされた陶磁器製品の基体の表面にスプレー法を用いて塗布量10g/m2にて塗布し、大気雰囲気中、300℃にて30分間熱処理し、膜厚が0.1μmの防汚性薄膜が形成された比較例1の防汚性製品を得た。
実施例1にて得られた塗布液を、釉懸けされた陶磁器製品の基体の表面にスプレー法を用いて塗布量10g/m2にて塗布し、大気雰囲気中、300℃にて30分間熱処理し、膜厚が0.1μmの防汚性薄膜が形成された比較例1の防汚性製品を得た。
次いで、この比較例1の防汚性製品の水垢固着防止性を、実施例1に準じて評価したところ、水垢の固着が認められ、この固着した水垢は、水を含ませたスポンジで擦り洗いしても除去することが不可能であった。
なお、この防汚性薄膜には磨耗は認められず、防汚性薄膜の剥離も認められなかった。
なお、この防汚性薄膜には磨耗は認められず、防汚性薄膜の剥離も認められなかった。
「比較例2」
実施例1にて得られた塗布液10gに、9.5質量%の塩酸を10g添加し、比較例2の塗布液を得た。この比較例2の塗布液を、実施例1と同様に、釉懸けされた陶磁器製品の基体の表面にスプレー法を用いて塗布量10g/m2にて塗布し、大気雰囲気中、300℃にて30分間焼き付けて膜厚が0.1μmの防汚性薄膜を形成し、比較例2の防汚性製品を得た。
実施例1にて得られた塗布液10gに、9.5質量%の塩酸を10g添加し、比較例2の塗布液を得た。この比較例2の塗布液を、実施例1と同様に、釉懸けされた陶磁器製品の基体の表面にスプレー法を用いて塗布量10g/m2にて塗布し、大気雰囲気中、300℃にて30分間焼き付けて膜厚が0.1μmの防汚性薄膜を形成し、比較例2の防汚性製品を得た。
次いで、この比較例2の防汚性製品の水垢固着防止性を、実施例1に準じて評価したところ、水垢の固着が認められ、この固着した水垢は、水を含ませたスポンジで擦り洗いしても除去することが不可能であった。
なお、この防汚性薄膜には磨耗は認められず、防汚性薄膜の剥離も認められなかった。
なお、この防汚性薄膜には磨耗は認められず、防汚性薄膜の剥離も認められなかった。
「比較例3」
薄膜形成時の熱処理条件を大気雰囲気中、90℃にて30分間とした他は、実施例1に準じて、比較例3の防汚性製品を得た。
次いで、この比較例3の防汚性製品の表面を、水を含ませたスポンジで擦り洗いしたところ、防汚性薄膜が剥離した。
薄膜形成時の熱処理条件を大気雰囲気中、90℃にて30分間とした他は、実施例1に準じて、比較例3の防汚性製品を得た。
次いで、この比較例3の防汚性製品の表面を、水を含ませたスポンジで擦り洗いしたところ、防汚性薄膜が剥離した。
「実施例4」
ジルコニウムテトラブトキシド6質量部、アセト酢酸エチル3質量部、2−プロパノール90.3質量部を室温(25℃)下で30分混合して、ジルコニウムテトラブトキシドとアセト酢酸エチルとのキレート化合物を生成させ、次いで、テトラメトキシシラン0.7質量部を添加し、溶液とした。この溶液をエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)で100倍に希釈し、この溶液を実施例4の塗布液とした。
ジルコニウムテトラブトキシド6質量部、アセト酢酸エチル3質量部、2−プロパノール90.3質量部を室温(25℃)下で30分混合して、ジルコニウムテトラブトキシドとアセト酢酸エチルとのキレート化合物を生成させ、次いで、テトラメトキシシラン0.7質量部を添加し、溶液とした。この溶液をエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)で100倍に希釈し、この溶液を実施例4の塗布液とした。
この塗布液中におけるジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO2)に、ケイ素化合物を酸化ケイ素(SiO2)に、それぞれ換算したときの、酸化ジルコニウムの、酸化ジルコニウムと酸化ケイ素の合計量に対する比率は、75質量%であった。
次いで、この塗布液を、セラミックス(結晶化ガラス)製コンロ天板の表面にスプレー法を用いて塗布量10g/m2にて塗布し、大気雰囲気中、500℃にて20分間焼き付けて膜厚が0.02μmの薄膜を形成した。
次いで、この薄膜が形成されたコンロ天板を、塩化ナトリウム(NaCl)を5質量%、酢酸(CH3COOH)を1質量%含む酸性の塩化ナトリウム(NaCl)水溶液に5分間浸漬した。このときの水溶液の温度は20℃であった。
次いで、この薄膜が形成されたコンロ天板を大気雰囲気中、100℃の温度下で20分間熱処理した。その後、水洗して表面の残渣を取り除き、基体の表面に防汚性薄膜が形成された実施例4の防汚性製品を得た。
この防汚性薄膜中に塩素(Cl)が存在することを、X線光電子分光法(XPS法)により確認した。
次いで、この薄膜が形成されたコンロ天板を、塩化ナトリウム(NaCl)を5質量%、酢酸(CH3COOH)を1質量%含む酸性の塩化ナトリウム(NaCl)水溶液に5分間浸漬した。このときの水溶液の温度は20℃であった。
次いで、この薄膜が形成されたコンロ天板を大気雰囲気中、100℃の温度下で20分間熱処理した。その後、水洗して表面の残渣を取り除き、基体の表面に防汚性薄膜が形成された実施例4の防汚性製品を得た。
この防汚性薄膜中に塩素(Cl)が存在することを、X線光電子分光法(XPS法)により確認した。
次いで、この実施例4の防汚性製品の焦げ付き汚れの除去容易性と耐摩耗性を評価した。その評価結果を表1に示す。なお、評価方法は、次のとおりである。
(1)焦げ付き汚れの除去容易性
防汚性薄膜の表面に醤油を1ml滴下し、大気中にて加熱して焦げ付かせた。ここでは、加熱温度を250℃、350℃の2通りとし、加熱時間を1時間とした。
次いで、この焦げ付き汚れを、水を含ませた布切れで水拭きし、焦げ付き汚れが簡単に除去された場合を「良好」、焦げ付き汚れが除去されず残ってしまった場合を「不良」と判定した。
(1)焦げ付き汚れの除去容易性
防汚性薄膜の表面に醤油を1ml滴下し、大気中にて加熱して焦げ付かせた。ここでは、加熱温度を250℃、350℃の2通りとし、加熱時間を1時間とした。
次いで、この焦げ付き汚れを、水を含ませた布切れで水拭きし、焦げ付き汚れが簡単に除去された場合を「良好」、焦げ付き汚れが除去されず残ってしまった場合を「不良」と判定した。
(2)耐摩耗性
防汚性薄膜の表面を、クリーム状のクレンザーを付着させたスポンジを用いて、荷重100g/cm2にて1000回擦った後、薄膜の剥離の有無を目視にて評価した。
防汚性薄膜の表面を、クリーム状のクレンザーを付着させたスポンジを用いて、荷重100g/cm2にて1000回擦った後、薄膜の剥離の有無を目視にて評価した。
「実施例5」
塩化ナトリウム(NaCl)を5質量%、酢酸(CH3COOH)を1質量%含む酸性の塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を、フッ化ナトリウム(NaF)を5質量%、酢酸(CH3COOH)を1質量%含む酸性のフッ化ナトリウム(NaF)水溶液に変更した他は、実施例4に準じて実施例5の防汚性製品を得た。
この防汚性製品の防汚性薄膜中に塩素(Cl)が存在することを、X線光電子分光法(XPS法)により確認した。
この実施例5の防汚性製品を、実施例4に準じて評価した。その結果を表1に示す。
塩化ナトリウム(NaCl)を5質量%、酢酸(CH3COOH)を1質量%含む酸性の塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を、フッ化ナトリウム(NaF)を5質量%、酢酸(CH3COOH)を1質量%含む酸性のフッ化ナトリウム(NaF)水溶液に変更した他は、実施例4に準じて実施例5の防汚性製品を得た。
この防汚性製品の防汚性薄膜中に塩素(Cl)が存在することを、X線光電子分光法(XPS法)により確認した。
この実施例5の防汚性製品を、実施例4に準じて評価した。その結果を表1に示す。
「比較例4」
実施例4で得られた塗布液を、セラミックス(結晶化ガラス)製コンロ天板の表面にスプレー法を用いて塗布量10g/m2にて塗布し、大気雰囲気中、500℃にて20分間焼き付けて膜厚が0.02μmの薄膜を形成し、比較例4の防汚性製品を得た。
次いで、この比較例4の防汚性製品を、実施例4に準じて評価した。その結果を表1に示す。
実施例4で得られた塗布液を、セラミックス(結晶化ガラス)製コンロ天板の表面にスプレー法を用いて塗布量10g/m2にて塗布し、大気雰囲気中、500℃にて20分間焼き付けて膜厚が0.02μmの薄膜を形成し、比較例4の防汚性製品を得た。
次いで、この比較例4の防汚性製品を、実施例4に準じて評価した。その結果を表1に示す。
「比較例5」
実施例4で得られた塗布液10gに、9.5質量%の塩酸を10g添加し、比較例5の塗布液を得た。
次いで、この比較例5の塗布液を、セラミックス(結晶化ガラス)製コンロ天板の表面にスプレー法を用いて塗布量10g/m2にて塗布し、大気雰囲気中、500℃にて20分間焼き付けて膜厚が0.02μmの薄膜を形成し、比較例5の防汚性製品を得た。
次いで、この比較例5の防汚性製品を、実施例4に準じて評価した。その結果を表1に示す。
実施例4で得られた塗布液10gに、9.5質量%の塩酸を10g添加し、比較例5の塗布液を得た。
次いで、この比較例5の塗布液を、セラミックス(結晶化ガラス)製コンロ天板の表面にスプレー法を用いて塗布量10g/m2にて塗布し、大気雰囲気中、500℃にて20分間焼き付けて膜厚が0.02μmの薄膜を形成し、比較例5の防汚性製品を得た。
次いで、この比較例5の防汚性製品を、実施例4に準じて評価した。その結果を表1に示す。
「比較例6」
2−プロパノールを89.9質量部に、テトラメトキシシランを1.1質量部にそれぞれ変更した他は、実施例4に準じて比較例6の塗布液を得た。
2−プロパノールを89.9質量部に、テトラメトキシシランを1.1質量部にそれぞれ変更した他は、実施例4に準じて比較例6の塗布液を得た。
この塗布液中におけるジルコニウム成分を酸化ジルコニウム(ZrO2)に、ケイ素化合物を酸化ケイ素(SiO2)に、それぞれ換算したときの、酸化ジルコニウムの、酸化ジルコニウムと酸化ケイ素の合計量に対する比率は、65質量%であった。
比較例6の塗布液を、セラミックス(結晶化ガラス)製コンロ天板の表面にスプレー法を用いて塗布量10g/m2にて塗布し、大気雰囲気中、500℃にて20分間焼き付けて膜厚が0.02μmの薄膜を形成し、比較例6の防汚性製品を得た。
次いで、この比較例6の防汚性製品を、実施例4に準じて評価した。その結果を表1に示す。
次いで、この比較例6の防汚性製品を、実施例4に準じて評価した。その結果を表1に示す。
「比較例7」
塩化ナトリウム(NaCl)を5質量%、酢酸(CH3COOH)を1質量%含む酸性の塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を、フッ化ナトリウム(NaF)を5質量%、酢酸(CH3COOH)を1質量%含む酸性のフッ化ナトリウム(NaF)水溶液に変更した他は、比較例6に準じて比較例7の防汚性製品を得た。
次いで、この比較例7の防汚性製品を、実施例4に準じて評価した。その結果を表1に示す。
塩化ナトリウム(NaCl)を5質量%、酢酸(CH3COOH)を1質量%含む酸性の塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を、フッ化ナトリウム(NaF)を5質量%、酢酸(CH3COOH)を1質量%含む酸性のフッ化ナトリウム(NaF)水溶液に変更した他は、比較例6に準じて比較例7の防汚性製品を得た。
次いで、この比較例7の防汚性製品を、実施例4に準じて評価した。その結果を表1に示す。
本発明の防汚性製品は、基体の表面に形成された防汚性薄膜を、酸化ジルコニウム(ZrO2)を70質量%以上含有するとともに、その表面から内部にハロゲン元素を浸透または拡散したことにより、耐磨耗性、耐擦傷性、食品等の有機物の焦げ付き汚れや水垢(動物の排泄物等の汚れを含む)の固着防止効果に優れ、特に、高温(300℃以上)にて焦げ付いた焦げ付き汚れも水拭き程度の清掃手段で簡単に除去することができるものであるから、その工業的意義は極めて大きいものである。
Claims (2)
- 基体の表面に防汚性薄膜を形成してなる防汚性製品であって、
前記防汚性薄膜は、酸化ジルコニウム(ZrO2)を70質量%以上含有するとともに、その表面から内部にハロゲン元素を浸透または拡散してなることを特徴とする防汚性製品。 - 酸化ジルコニウムゾル、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物及びジルコニウムアルコキシドの加水分解物のキレート化合物の群から選択される1種または2種以上のジルコニウム(Zr)成分を含む塗膜形成成分を含有し、前記ジルコニウム(Zr)成分を酸化ジルコニウム(ZrO2)に前記塗膜形成成分を酸化物にそれぞれ換算したときの前記酸化ジルコニウム(ZrO2)の前記酸化物全体量に対する割合が70質量%以上である塗布液を、基体の表面に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を120℃以上の温度にて熱処理して薄膜を形成し、次いで、この薄膜に100℃以下の温度にてハロゲン化合物を接触させることを特徴とする防汚性製品の製造方法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2011202084A (ja) * | 2010-03-26 | 2011-10-13 | Sumitomo Osaka Cement Co Ltd | 防汚加工製品及びその製造方法 |
JPWO2020054577A1 (ja) * | 2018-09-13 | 2021-08-30 | 住友大阪セメント株式会社 | 防汚皮膜、ガラスセラミックス製品、防汚皮膜形成用塗料、ガラスセラミックス製品の製造方法 |
-
2008
- 2008-08-07 JP JP2008204477A patent/JP2010037173A/ja active Pending
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