JP2012205726A - 超音波プローブ及び超音波プローブの製造方法 - Google Patents

超音波プローブ及び超音波プローブの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】振動子の振動に伴う音響特性の劣化を防止する。
【解決手段】振動子部1は、超音波の送受信のために振動する。緩衝層5は、振動子部1の背面側に設けられている。背面材6は、緩衝層5の背面側に設けられ、振動子部1からの超音波を減衰する。緩衝層5は、背面材6よりも大きいポアソン比を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明の実施形態は、超音波プローブ及び超音波プローブの製造方法に関する。
超音波プローブは、超音波を送受信するための圧電振動子を有している。圧電振動子の前面(超音波プローブの生体接触面側の面)には、圧電振動子と生体との音響インピーダンスの不整合を緩和する音響整合層が設けられ、背面には、圧電振動子からの超音波を減衰する背面材が設けられている。圧電振動子は、超音波を送受信する際、機械的に振動する。この振動に起因して背面材も機械的に振動してしまう。背面材の機械的振動は、超音波プローブの音響特性にノイズを与えてしまい、音響特性を悪化させている。
特公昭53−25390号公報
目的は、振動子の振動に伴う音響特性の劣化を防止する超音波プローブ及び超音波プローブの製造方法を提供することにある。
本実施形態に係る超音波プローブは、超音波の送受信のために振動する振動子と、前記振動子の背面側に設けられた緩衝層と、前記緩衝層の背面側に設けられ、前記振動子からの超音波を減衰する背面材と、を具備する超音波プローブであって、前記緩衝層は、前記背面材よりも大きいポアソン比を有する、ことを特徴とする。
本実施形態に係る超音波プローブの概略的な構造を示す図。 従来構造の超音波プローブの音響シミュレーションの結果を示す図。 本実施形態に係る超音波プローブの音響シミュレーションの結果を示す図。 本実施形態の実施例1に係る超音波プローブの製造工程の典型的な流れを示す図。 図4のステップSA1を説明するための図。 図4のステップSA2を説明するための図。 図4のステップSA3を説明するための図。 図4のステップSA4を説明するための図。 図4のステップSA5を説明するための図。 本実施形態の実施例2に係る超音波プローブの製造工程の典型的な流れを示す図。 図10のステップSB1を説明するための図。 図10のステップSB2を説明するための図。 図10のステップSB3を説明するための図。 図10のステップSB4を説明するための図。 図10のステップSB5を説明するための図。 図10のステップSB6を説明するための図。
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる超音波プローブ及び超音波プローブの製造方法を説明する。
図1は、本実施形態に係る超音波プローブの概略的な構造を示す図である。図1に示すように、超音波プローブは、超音波を送受信する振動子部1を有している。振動子部1の前面(生体接触面4s側の面)には、第1音響整合層2が設けられている。第1音響整合層2の前面には、第2音響整合層3が設けられている。第2音響整合層の前面には、音響レンズ4が設けられる。振動子部1の背面(生体接触面4sとは反対側の面)には、緩衝層5が設けられている。緩衝層5の背面には、背面材6が設けられている。ここで、背面材6、緩衝層5、振動子部1、第1音響整合層2、第2音響整合層3、及び音響レンズ4の積層方向を厚み方向に規定する。
振動子部1は、1次元状又は2次元状に配列された複数の圧電振動子(図1に図示せず)を有している。各圧電振動子は、圧電材料からなる圧電体(図1に図示せず)と、圧電体の前面に形成された電極(以下、前面電極と呼ぶ。図1に図示せず)と圧電体の背面に形成された電極(以下、背面電極と呼ぶ。図1に図示せず)とにより構成される。圧電材料としては、例えば、音響インピーダンスが30Mrayl(Mrayl=10kg/ms)以上である圧電セラミックにより形成される。圧電振動子は、超音波診断装置本体からの駆動信号の供給を受けて振動し、超音波を送波する。発生された超音波は、被検体により反射される。反射された超音波は、圧電振動子に受波される。振動子は、超音波を受波すると振動し、電気信号を発生する。発生された電気信号は、超音波診断装置本体に送信される。圧電振動子は、主に厚み方向に振動する。換言すれば、圧電振動子の振動モードは、厚み振動モードである。
第1音響整合層2と第2音響整合層3とは、振動子部1と生体との間の音響インピーダンスの不整合を緩和するために設けられる。第1音響整合層2と第2音響整合層3とは、振動子部1の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンスとの間の音響インピーダンスをそれぞれ有するように形成される。なお、第1音響整合層2は、第2音響整合層3よりも高い音響インピーダンスを有するように形成される。なお生体の音響インピーダンスは、概ね1.5Mraylである。なお、第1音響整合層2は、1次元又は2次元状に配列された複数の第1音響整合素子(図1に図示せず)を有する。同様に、第2音響整合層3は、1次元又は2次元状に配列された複数の第2音響整合素子(図1に図示せず)を有する。なお、本実施形態に係る超音波プローブに含まれる音響整合層は、第1音響整合層2と第2音響整合層3との2つのみに限定されない。本実施形態に係る超音波プローブは、1つの音響整合層を有していても良いし、3つ以上の音響整合層を有していてもよい。
音響レンズ4は、振動子部1から被検体に向けて放射される超音波を収束するために設けられている。音響レンズ4は、第2音響整合層3の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンスとの間の音響インピーダンスを有するように形成される。音響レンズ4は、被検体に接触される生体接触面4sを有している。
緩衝層5は、超音波の送受信に伴う振動子部1の機械的な振動を減衰(ダンピング)するために設けられている。緩衝層5の材料としては、例えば、ポリウレタン系やポリエチレン系等の高分子材料やシリコーン系樹脂材をベース材にした層状構造物が用いられる。緩衝層5の詳細については後述する。
背面材6は、振動子部1の音響的な振動を減衰するために設けられている。換言すれば、背面材6は、振動子部1から背面材6方向に放射された超音波を減衰する。また、背面材6は、振動子部1の構造的な保持材として機能する。具体的には、背面材6は、超音波プローブがリニアプローブの場合、複数の圧電振動子を直線状に保持するため、超音波プローブがコンベックスプローブの場合、複数の圧電振動子を一定の曲率の円弧状に保持するために設けられる。背面材6の材料としては、ポリブタジエンやクロロプレン等のゴム材が用いられる。背面材6は、音響整合による不要な共振が発生しないような音響インピーダンスを有するように形成される。典型的には、背面材6は、2〜7Mraylの音響インピーダンスを有するように形成される。
次に、緩衝層5について詳細に説明する。
従来構造のように緩衝層がない場合、圧電振動子の機械的な振動が背面材に伝播され、背面材が機械的に振動してしまう。背面材の機械的振動により超音波プローブの音響特性が劣化してしまう。また、従来構造のように緩衝層がない場合、ある圧電振動子の機械的振動は、剛性を有する背面材を介して、隣接する圧電振動子に伝播してしまう。隣接する圧電振動子の機械的振動によっても、超音波プローブから放射される超音波の音場が乱れ、超音波プローブの音響特性が劣化してしまう。
緩衝層5は、圧電振動子の機械的振動を背面材6や隣接する圧電振動子に伝播させないために設けられる。そのため、緩衝層5は、背面材6よりも柔軟性を有するように、すなわち、背面材6よりもポアソン比が大きくなるように形成される。ポアソン比は、厚み方向に単位長さ当りαだけ伸ばした(あるいは縮めた)時に、横方向に単位長さ当りβだけ縮む(あるいは伸びる)場合、β/αに規定される。
上述のように背面材6は、超音波の音場の乱れを防止するために、振動子部1や第1音響整合層2、第2音響整合層3の幾何学的な配置を保持するために設けられる。また、背面材6は、超音波減衰能と不要な共振を防止するための音響インピーダンスとを有する必要がある。背面材6は、ゴム材をベースとして形成されているが、これら超音波減衰能と音響インピーダンスとの制約を満たすために様々な添加物が混入されることが多い。結果的に背面材6のポアソン比は、比較的小さく、すなわち、背面材6の剛性は高い。
ダンピング効果を向上させるため、緩衝層5のポアソン比は、高ければ高いほど良い。背面材6が樹脂材やゴム材で形成され、緩衝層5がシリコーンやウレタン、あるいはその他の樹脂材等をベース材として形成されることを考慮すると、緩衝層5のポアソン比は、例えば、0.4以上に設計されるとよい。なお、本実施形態に係る緩衝層5のポアソン比は0.4以上に限定されない。緩衝層5によるダンピング効果が得られるのであれば、緩衝層5のポアソン比が0.4未満であってもよい。
上述のように背面材6は、振動子部1から背面材6方向に放射された超音波を減衰するために設けられる。超音波は、音響インピーダンスの不連続面で反射されるという物理的性質を有している。本実施形態においては、振動子部1と背面材6との間に緩衝層5が設けられている。緩衝層5と背面材6との音響インピーダンスが異なる場合、緩衝層5と背面材6との境界面で超音波が反射されてしまう。緩衝層5により反射された超音波により、本実施形態に係る超音波プローブから放射される超音波の音場が乱れ、本実施形態に係る超音波プローブの音響特性が劣化してしまう。
緩衝層5と背面材6との境界面における超音波の反射を防止し、振動子部1からの超音波を効率よく背面材6に伝播させるために、緩衝層5の音響インピーダンスは、背面材6の音響インピーダンスに略一致するように設計される。具体的には、緩衝層5の音響インピーダンスと背面材6の音響インピーダンスとの差は、−20%以上+20%以下に調整される。現実的には、緩衝層5の音響インピーダンスを調整して背面材6の音響インピーダンスに近づけることにより、緩衝層5と背面材6との音響インピーダンスを略一致させる。音響インピーダンスの調整方法のために、例えば、緩衝層5のベース材に、金属酸化物やセラミクス材料等を材料とした微粒子等の微小構造体が混入される。なお、本実施形態に係る緩衝層5と背面材6との音響インピーダンスの差は、−20%以上+20%以下に限定されない。緩衝層5と背面材6との境界面における超音波の反射頻度をある程度低減できるのであれば、緩衝層5と背面材6との音響インピーダンスの差は、−20%以下、あるいは+20%以上であってもよい。
緩衝層5のダンピング効果の向上のみを目的とするのであれば、緩衝層5は厚ければ厚いほど良い。しかしながら、緩衝層5が不要に厚い場合、圧電振動子の保持のための機械的剛性が低下し、圧電振動子の幾何的配置が安定しない。結果的に、超音波プローブから放射される超音波の音場が乱れ、超音波プローブの音響特性が劣化してしまう。反対に、緩衝層5が不要に薄い場合、圧電振動子の機械的振動を抑制できない。結果的に背面材6や隣接する圧電振動子に機械的振動が伝播され、やはり超音波プローブから放射される超音波の音場が乱れてしまう。これらの要因を考慮すると、緩衝層5の厚みは、振動子部1から送波される超音波の波長λの略1/2に設計されるとよい。なお、本実施形態に係る緩衝層5の厚みは、略λ/2に限定されない。圧電振動子の幾何学的配置が安定するのであれば、緩衝層5の厚みは、略λ/2よりも厚く設計されても良い。
次に、有限要素解析による音響シミュレーションの結果を参照しながら、本実施形態に係る超音波プローブと従来構造の超音波プローブとの音響特性の違いについて説明する。図2は、従来構造の超音波プローブの音響シミュレーションの結果を示す図であり、図3は本実施形態に係る超音波プローブの音響シミュレーションの結果を示す図である。従来構造の超音波プローブの音響シミュレーションでは、図2の(b)に示すように、背面材、圧電振動子、第1音響整合素子、及び第2音響整合素子の積層構造をモデルとし、圧電振動子の音響インピーダンスを求めた。本実施形態に係る超音波プローブの音響シミュレーションでは、図3の(b)に示すように、背面材、緩衝層、圧電振動子、第1音響整合素子、及び第2音響整合素子の積層構造をモデルとし、圧電振動子の音響インピーダンスを求めた。なお音響シミュレーションにおいて緩衝層の音響インピーダンスは背面材の音響インピーダンスに等しく、緩衝層の厚みはλ程度、緩衝層のポアソン比は略0.45に設定された。
図2の(a)と図3の(a)との横軸は周波数f[MHz]、左縦軸は音響インピーダンスの絶対値Z[Ω]、右縦軸は音響インピーダンスの位相θ[deg]に規定されている。実線は位相θの周波数fに対する変化曲線を示し、点線は絶対値Zの周波数fに対する変化曲線を示す。図2の(a)に係る変化曲線では、圧電振動子、第1音響整合層、及び第2音響整合層による3つの共振ピークを確認できる。共振ピークは、絶対値Zあるいは位相θの極大値に規定される。それ以外に、図2の(a)に係る変化曲線では、0.4MHz付近に共振ピークを確認できる。この0.4MHz付近の共振ピークは、背面材の機械的振動に起因するものであり、音響特性に不要なノイズとして悪影響を与えている。一方、図3の(a)に係る変化曲線では、圧電振動子、第1音響整合層、及び第2音響整合層による3つの共振ピークを確認できる。しかし、図3の(a)に係る変化曲線では、0.4MHz付近の不要な共振ピークは消失している。これは、緩衝層により圧電振動子の機械的振動が背面材に伝播することを防止し、背面材の機械的振動が減衰したことによる。
上記構成により本実施形態に係る超音波プローブは、振動子部1と背面材6との間に、背面材6よりもポアソン比が大きい緩衝層5を有している。このような振動子部1、緩衝層5、及び背面材6の幾何学的配置により、振動子部1から背面材6への機械的振動を緩衝層5により低減することができる。また、緩衝層5と背面材6との音響インピーダンスが略一致するように緩衝層5と背面材6とが形成される。この場合、緩衝層5による超音波の反射頻度を低減することができ、振動子部1から背面材6側に放射される不要な超音波を背面材6に効率的に吸収させることができる。従って、振動子部1からの不要な超音波による音場の乱れを低下し、超音波プローブの音響特性を向上することができる。
次に本実施形態に係る超音波プローブの製造方法を実施例1と実施例2とに分けて説明する。実施例1と実施例2とでは、超音波プローブの構造が異なっている。
[実施例1]
実施例1においては、電極引き出し用基板と背面材6との間に緩衝層5が配置される。電極引き出し用基板は、超音波診断装置本体と振動子部1との間における信号の送受信のために設けられ、前面側電極と背面側電極とをチャンネル毎に個別に外部に引き出す機能を有する。電極引き出し用基板としては、例えば、フレキシブルプリント配線板が用いられる。
図4は、実施例1に係る超音波プローブの製造工程の典型的な流れを示す図である。なお以下の説明において、製造される超音波プローブは1次元アレイ型であるとする。
図5に示すように、まず、電極引き出し用基板11、振動子ブロック13、第1音響整合ブロック15、及び第2音響整合ブロック17を積層する(ステップSA1)。具体的には、電極引き出し用基板11の前面に振動子ブロック13が接合され、振動子ブロック13の前面に第1音響整合ブロック15が接合され、第1音響整合ブロック15の前面に第2音響整合ブロック17が接合される。振動子ブロック13は、板形状の圧電体19の前面に前面電極21が形成され、背面に背面電極23が形成された構造物である。前面電極21と背面電極23とは、板形状の圧電体19の両面に、金等の金属でメッキやスパッタリングを施すことにより形成される。第1音響整合ブロック15は、第1音響整合層2の材料からなる板状の構造物である。第2音響整合ブロック17は、第2音響整合層2の材料からなる板状の構造物である。部材の接合には、エポキシ系接着剤やシリコーン系接着剤等の接着剤が用いられる。以下、電極引き出し用基板11、振動子ブロック13、第1音響整合ブロック15、及び第2音響整合ブロック17の積層体を、第1の中間構造体と呼ぶことにする。すなわち、ステップSA1により第1の中間構造体が形成される。
ステップSA1が行われると、図6に示すように、第1の中間構造体19を一方方向に沿って所定の切削ピッチで切削する(ステップSA2)。例えば、第2音響整合層3から電極引き出し用基板11に向けて第1の中間構造体19が切削される。切削は、例えば、ダイシングブレードにより行われる。切削により、振動子ブロック13は複数の圧電振動子27に、第1音響整合ブロック15は複数の第1音響整合素子29に、第2音響整合ブロック17は複数の第2音響整合素子31に分割される。上述のように、複数の圧電振動子27は振動子部1を、複数の第1音響整合素子29は第1音響整合層2を、複数の第2音響整合素子31は第2音響整合層3を構成する。ここで、圧電振動子27、第1音響整合素子29、及び第2音響整合素子31からなる積層体を単に素子33と呼ぶことにする。切削により形成される複数の溝(以下、切削溝と呼ぶことにする。)35は、所定の切削ピッチで配列されている。切削の際、電極引き出し用基板11は、完全に分割されなくても、分割されても良い。なお、複数の素子33がばらばらになることを防止するために、電極引き出し用基板11は、完全に分割されないほうが良い。
一方、図7に示すように、背面材6と背面材6よりもポアソン比が大きい緩衝層5とを、例えば、上述の接着剤で接合する(ステップSA3)。この際、緩衝層5と背面材6との間の音響インピーダンスの不整合を低減するため、また、圧電振動子27の幾何学的配置を良好に保持するため、接着剤の厚さは、例えば、10μm以下に抑えられると良い。以下、緩衝層5と背面材6との積層体を、第2の中間構造体37と呼ぶことにする。すなわち、ステップSA3により第2の中間構造体37が形成される。
ステップSA2及びSA3が行われると、図8に示すように、電極引き出し用基板11と緩衝層5とが向かい合うように、切削された第1の中間構造体25と第2の中間構造体37とを例えば、上述の接着剤で接合する(ステップSA4)。これにより緩衝層5が複数の圧電振動子27の背面側に設けられ、背面材6の前面側に設けられる。以下、第1の中間構造体25と第2の中間構造体37との積層体を第1の積層構造体39と呼ぶことにする。すなわち、ステップSA4により第1の積層構造体39が形成される。なお、振動子部1、第1音響整合層2、及び第2音響整合素子3の強度向上等のため、切削溝35にエポキシ系接着剤やシリコーン系接着剤等の接着剤が充填されてもよい。また、切削溝35に充填される接着剤の熱膨張を抑制するため、この接着剤に金属微粒子が混入されてもよい。
ステップSA5が行われると、図9に示すように、音響レンズ4を第2音響整合層3に、例えば、上述の接着剤で接合する(ステップSA5)。これにより超音波プローブが完成する。
実施例1によれば、1回の切削により振動子ブロック13、第1音響整合ブロック15、及び第2音響整合ブロック17を素子状に分割することができる。これにより、後述する実施例2に比して、実施例1は、簡便な製造工程で超音波プローブを製造することができる。
なお、上述のように図4の製造工程は一例であって、実施例1に係る超音波プローブの製造工程はこれに限定されない。例えば、第1の中間構造体25と第2の中間構造体39との接合は、第1の中間構造体25の切削後に限定されず、第1の中間構造体25の切削前に行われても良い。この場合、第1の中間構造体25と第2の中間構造体39との積層体は、第2音響整合層側から背面材6に向けて切削される。この際、加工性の観点から、緩衝層5と背面材6とは切削しない方が良い。この理由としては、例えば、緩衝層5が柔らかいので、緩衝層5を精度良く切削できないおそれがあるためである。他の理由としては、切削の際に緩衝層5がたわみ、圧電振動子27と緩衝層5との接着強度が低減される、というような要因が挙げられる。なお、緩衝層5の切削精度が良好であれば、緩衝層5や背面材6を切削しても良い。
また、上述の製造工程において緩衝層5は、第1の中間構造体25に接合する前に、予め背面材6に接合されるとした。しかしながら、緩衝層5と背面材6とを接合する前に、電極引き出し用基板11の背面に緩衝層5が接合されていてもよい。この場合、電極引き出し用基板11を切削した場合であっても、緩衝層5を切削しなければ、切削により複数の素子33がばらばらに分離することがない。従って、超音波プローブの製造が容易となる。
また、上述の製造工程において超音波プローブは、1次元アレイ型であるとした。しかしながら、実施例1に係る超音波プローブは、2次元アレイ型であっても良い。この場合、第1の中間構造体25は、例えば、ステップSA2において格子状に所定の切削ピッチで切削される。第1の中間構造体25を2次元状に切削することで、振動子ブロック13、第1音響整合ブロック15、及び第2音響整合ブロック17が2次元状に分割される。これにより2次元アレイ型の超音波プローブを製造することができる。
[実施例2]
上述のように、実施例1において緩衝層5は、圧電振動子27に直接的に接していない。従って、圧電振動子27から背面材6に向かう超音波が、電極引き出し用基板11と緩衝層5との境界面で反射されてしまう場合がある。これは、超音波の音場を劣化させる要因になりうる。実施例2においては、電極引き出し用基板11が振動子部1と緩衝層5との間に配置されず、振動子部1の側面に設けられる。
図10は、実施例2に係る超音波プローブの製造工程の典型的な流れを示す図である。なお以下の説明において、製造される超音波プローブは1次元アレイ型であるとする。
図11に示すように、まず、振動子ブロック13、第1音響整合ブロック15、及び第2音響整合ブロック17を積層し、電極引き出し用基板41を振動子ブロック13の側面に接合する(ステップSB1)。具体的には、まず振動子ブロック13の前面に第1音響整合ブロック15を接合し、第1音響整合ブロック15の前面に第2音響整合ブロック17を接合する。そして振動子ブロック13の側面に電極引き出し用基板41を接合する。各部材の接合は、実施例1と同様に、例えば、エポキシ系接着剤やシリコーン系接着剤等の接着剤が用いられる。以下、電極引き出し用基板41、振動子ブロック13、第1音響整合ブロック15、及び第2音響整合ブロック17からなる構造体を、第3の中間構造体43と呼ぶことにする。すなわち、ステップSB1により第3の中間構造体43が形成される。
ステップSB1が行われると、図12に示すように、第3の中間構造体43を振動子ブロック13の背面から第3の中間構造体43の中途まで一方方向に所定の切削ピッチで切削する(ステップSB2)。ステップSB2において第3の中間構造体43は、素子状に完全に分割されないように切削される。例えば、図12においては、第1音響整合ブロック15と第2音響整合ブロック17との境まで切削されている。この場合、振動子ブロック13から複数の圧電振動子27が形成され、第1音響整合ブロック15から複数の第1音響整合素子29が形成される。上述のように、複数の圧電振動子27は振動子部1を、複数の第1音響整合素子29は第1音響整合層2を構成する。しかしながら、本実施形態に係る切削溝45の深さは、これに限定されない。切削溝45は、第3の中間構造体43が切削により完全に分割されなければ、如何なる深さまで形成されてもよい。例えば、図示はしないが、振動子ブロック13と第1音響整合ブロック15との境、振動子ブロック13の中途、第1音響整合ブロック15の中途、又は第2音響整合ブロック17の中途まで切削されてもよい。なお切削は、実施例1と同様に、ダイシングブレードにより行われる。
一方、図13に示すように、背面材6と背面材6よりもポアソン比が大きい緩衝層5とを、例えば、上述の接着剤で接合する(ステップSB3)。ステップSB3により第2の中間構造体37が形成される。なおステップSB3は、ステップSA3と同様なので説明を省略する。
ステップSB2とステップSB3とが行われると、図14に示すように、第2の中間構造体37と切削された第3の中間構造体43とを、緩衝層5が振動子部1(ステップSB2において振動子ブロック13が完全に切削されてない場合、振動子ブロック13)に接触するように接合する(ステップSB4)。以下、第3の中間構造体43と第2の中間構造体37との積層体を第2の積層構造体47と呼ぶことにする。
ステップSB4が行われると、図15に示すように、第3の中間構造体43が複数の素子33に完全に分割されるように、第3の中間構造体43を第2音響整合ブロック17の前面から切削する(ステップSB5)。具体的には、ステップSB5において新たに形成される切削溝49とステップSB2において形成された切削溝45とが連絡するように、ステップSB5における切削部分が位置決めされる。そして、位置決めされた切削部分をダイシングブレード等で切削する。換言すれば、切削溝49が切削溝45に繋がるまで第3の中間構造体43は、第2音響整合ブロック17の前面から切削溝45まで切削される。これにより、振動子ブロック13、第1音響整合ブロック15、及び第2音響整合ブロック17が複数の素子33に分割される。図14の場合、ステップSB5において第2音響整合ブロック17が切削され、第2音響整合ブロック17から複数の第2音響整合素子31が形成される。上述のように、複数の第2音響整合素子31は第2音響整合層3を構成する。なお、振動子部1、第1音響整合層2、及び第2音響整合層3の強度向上等のため、切削溝45及び49にエポキシ系接着剤やシリコーン系接着剤等の接着剤が充填されてもよい。また、切削溝45及び49に充填される接着剤の熱膨張を抑制するため、この接着剤に金属微粒子が混入されてもよい。
ステップSB5が行われると、図16に示すように、音響レンズ4を第2音響整合層3に、上述の接着剤等で接合する(ステップSB6)。これにより超音波プローブが完成する。
実施例2によれば、振動子ブロック13、第1音響整合ブロック15、及び第2音響整合ブロック17からなる第3の中間構造体43を素子状に分割するために、切削工程を2段階に分けている。これは以下の理由による。
実施例2に係る超音波プローブは、振動子部1に直接的に緩衝層5が接する構造を有する。一回の切削で第3の中間構造体43を素子状に分割する場合、例えば、ステップSB2において複数の素子33に分割する場合、土台が無いため圧電振動子27、第1音響整合素子29、及び第2音響整合素子31がばらばらになってしまう。圧電振動子27、第1音響整合素子29、及び第2音響整合素子31がばらばらになってしまうことを防止するためには、ステップSB5において、緩衝層5を土台にして第3の中間構造体43を切削することになる。しかし、緩衝層5は、ポアソン比が大きく柔軟性がある。そのため、緩衝層5を土台にして第3の中間構造体43を切削すると、切削時において第3の中間構造体43が緩衝層5に対して幾何学的に不安定となり、素子分割が良好に行われないおそれがある。
実施例2によれば、ステップSB2及びSB5に示すように、切削工程を2段階に分けている。すなわち、ステップSB2において第3の中間構造体43を中途まで切削し、ステップSB4において緩衝層5と切削された第3の中間構造体43とを接合し、ステップSB5において第3の中間構造体43の残りの切削部分を切削している。このように切削工程を2段階に分けることにより、圧電振動子27、第1音響整合素子29、及び第2音響整合素子31がばらばらになることなく、良好な精度で素子分割することが出来る。
なお、上述の製造工程において超音波プローブは、1次元アレイ型であるとした。しかしながら、実施例2に係る超音波プローブは、2次元アレイ型であっても良い。この場合、第3の中間構造体43は、例えば、ステップSB2において格子状に所定の切削ピッチで中途まで切削され、ステップSB5において残りの切削部分が切削される。このように第3の中間構造体43を2次元状に切削することで、振動子ブロック13、第1音響整合ブロック15、及び第2音響整合ブロック17が2次元状に分割される。これにより2次元アレイ型の超音波プローブを製造することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…振動子部、2…第1音響整合層、3…第2音響整合層、4…音響レンズ、5…緩衝層、6…背面材

Claims (7)

  1. 超音波の送受信のために振動する振動子と、
    前記振動子の背面側に設けられた緩衝層と、
    前記緩衝層の背面側に設けられ、前記振動子からの超音波を減衰する背面材と、
    を具備する超音波プローブであって、
    前記緩衝層は、前記背面材よりも大きいポアソン比を有する、
    ことを特徴とする超音波プローブ。
  2. 前記緩衝層のポアソン比は、0.4以上である、請求項1記載の超音波プローブ。
  3. 前記緩衝層の音響インピーダンスと前記背面材の音響インピーダンスとの差は、−20%以上+20%以下である、請求項1記載の超音波プローブ。
  4. 前記緩衝層は、前記振動子から送信される超音波の波長の略半分以上の厚さを有する、請求項1記載の超音波プローブ。
  5. 超音波の送受信のために振動する振動子と、
    前記振動子の背面側に設けられ、前記振動子による機械的な振動を抑制する緩衝層と、
    前記緩衝層の背面側に設けられ、前記振動子による音響的な振動を減衰する背面材と、
    を具備する超音波プローブ。
  6. 板状の振動子ブロックと音響整合ブロックとを有する構造体を形成し、
    前記構造体を複数の素子に分割するために前記構造体を切削し、
    前記切削された構造体と柔軟性を有する緩衝層とを、前記振動子ブロックの背面側に前記緩衝層が設けられるように接合する、
    ことを具備する超音波プローブの製造方法。
  7. 板状の振動子ブロックと音響整合ブロックとを有する構造体を形成し、
    前記構造体を前記振動子ブロックの背面から前記構造体の中途まで切削し、
    前記切削された構造体と柔軟性を有する緩衝層とを、前記振動子ブロックの背面に前記緩衝層が接触するように接合し、
    前記構造体を複数の素子に分割するために、前記接合された構造体と緩衝層とを前記音響整合層の前面から、前記切削することにおいて前記構造体に形成された切削溝と新たに形成される切削溝とが連絡するように切削する、
    ことを具備する超音波プローブの製造方法。
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